説明

エアバッグ装置

【課題】ベントホールを終始閉塞しないエアバッグの構成を、カバー部材に安価な材料を用い、かつ、単純な製造工程にて実現する。
【解決手段】エアバッグ10における、排気孔中心点21と、排気孔中心点21からエアバッグ10の外形形状までの距離が最も短くなる部位とを含む断面を定義する。エアバッグ10の膨張状態において、前述の断面におけるエアバッグ10の外形形状の曲率が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に、排気孔中心点21が配置される様に、エアバッグ10に排気孔20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に関するものであり、特に側面衝突用のサイドエアバッグ装置において、エアバッグに設けられる膨張用ガスの排気孔に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載され、特に側面衝突用に用いられて、主に乗員が着座するシートの背もたれに取付けられるサイドエアバッグ装置では、該エアバッグ装置が作動してエアバッグが膨張した後、乗員を良好に拘束するために膨張用ガスを排気する孔(穴,ベントホール)を設けるにあたって、車両構成物(例えばドアトリム等)に塞がれてしまわない様にしたり、排気される膨張用ガスが、直接乗員側に向かって流出しない様な工夫がなされている。そういった工夫の1つとして、特許文献1の様に、ベントホールを乗員側に設けるとともに、該ベントホールに覆い(カバー部材)を設けて、膨張用ガスの流出方向が直接乗員側とならない様にしているものがある。
【0003】
この様なカバー部材を設ける際、エアバッグの膨張時に、このカバー部材がベントホールを終始閉塞してしまわない様にするためには、特許文献2又は特許文献3の様に、カバー部材に弛み部、若しくは、余剰部を設けることとするか、特許文献4又は特許文献5の様に、カバー部材を弾性部材で形成して、膨張用ガスの圧力によって、カバー部材が伸縮自在となる様にしておく方法が考えられる。しかしながら、この様な方法では、カバー部材をエアバッグに取付けて固定するための作業として、弛み部等を設ける工程が必要となる等、エアバッグの製造工程が煩雑になって、製品の製造費が嵩んだり、高価な伸縮自在の材料をカバー部材として採用することで、製品の材料費が嵩む等、製品の原価コスト面で、改善の余地が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−518622号公報
【特許文献2】特開平04−002543号公報
【特許文献3】特表2010−510131号公報
【特許文献4】実開平06−032227号公報
【特許文献5】特開平07−323806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来の技術では、ベントホールを終始閉塞しないエアバッグの構成を、カバー部材に安価な材料を用い、かつ、単純な製造工程にて実現できていない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアバッグと、エアバッグに、膨張用ガスを供給するインフレータとからなるエアバッグ装置であって、エアバッグは、乗員拘束時に膨張用ガスを排気するための排気孔を備えるとともに、排気孔の全体をエアバッグの外部側から覆うカバー部材を備え、カバー部材は、エアバッグの非膨張状態において、排気孔と、排気孔の周囲とを平面状に配置した際、排気孔及び排気孔の周囲に対して平面状に重合する様に配設されるとともに、開口部となる部位を除いて、排気孔の周囲においてエアバッグの本体に結合されており、排気孔は、排気孔における中心である排気孔中心点と、排気孔中心点からエアバッグの外形形状までの距離が最も短くなる部位とを含む断面において、エアバッグの膨張状態における、エアバッグの外形形状の曲率が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に、排気孔中心点が配置されていることを特徴とする。
【0007】
前述のエアバッグ装置では、更に、エアバッグの非膨張状態において、排気孔と、排気孔の周囲と、カバー部材とを、平面状に配置した際、開口部の両端部を結んだ第1線分の長さが、第1線分に平行であって、排気孔の外形で最大となる第2線分の長さに対して、長いことが望ましい。
【0008】
前述のエアバッグ装置では、更に、エアバッグの非膨張状態において、排気孔と、排気孔の周囲と、カバー部材とを、平面状に配置した際、第2線分の長さが、第2線分と直交して、排気孔の外形で最大となる第3線分の長さに対して、長いことが望ましい。
【0009】
前述のエアバッグ装置では、更に、エアバッグの本体が、2枚のパネル材を重合してなることが望ましい。
【0010】
前述のエアバッグ装置では、更に、排気孔が、パネル材の外周結合部の近傍若しくは外周を形成する折り返し部の近傍に設けられていることが望ましい。
【0011】
前述のエアバッグ装置では、更に、外周結合部若しくは折り返し部に対して、第1線分は、排気孔中心点よりも近い領域に配置されていることが望ましい。
【0012】
前述のエアバッグ装置では、更に、外周結合部は、第1線分よりも外側に突出する様に形成されていることが望ましい。
【0013】
前述のエアバッグ装置では、更に、カバー部材は、パネル材と同じ材質からなることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアバッグ装置では、排気孔中心点が、膨張状態におけるエアバッグの外形形状の曲率が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に配置されているため、エアバッグの膨張状態において、カバー部材が自立的にエアバッグの本体から離れる様な態様となる。しかも、カバー部材をエアバッグの本体に取付けるにあたっては、排気孔と排気孔の周囲とを平面状に配置しておき、そこにカバー部材を平面状に重合して、結合するだけで良いことから、カバー部材を弛ませて保持しておくなどの工程作業が不要となり、エアバッグの製造工程を単純なものとすることが出来て、製品の製造に係る原価コストの低減に寄与することとなる。また、カバー部材として、特に伸縮自在な材料を用いる必要がないため、製品の材料に係る原価コストの低減に寄与することとなる。
【0015】
また、前述のエアバッグ装置では、開口部における第1線分の長さを、排気孔における第2線分に対して長くする分、カバー部材が自立した際の、カバー部材とエアバッグ本体とで形成される開口の面積が増えることとなるため、好都合である。
【0016】
また、前述のエアバッグ装置では、排気孔における第2線分の長さを、排気孔における第3線分に対して長くする分、エアバッグの膨張状態において、第2線分方向に沿って排気孔が変形し易くなり、より一層、カバー部材の自立的な態様が促進され、前述の開口の面積が増えることとなるため、好都合である。
【0017】
また、前述のエアバッグ装置では、エアバッグの本体を、2枚のパネル材を重合してなり、エアバッグの非膨張状態において、エアバッグ全体が平面状となる、所謂、平面バッグであり、エアバッグの外周結合部の形成時(結合時)に、カバー部材を同時にエアバッグの本体に結合することが可能となり、一層、製品の製造に係る原価コストの低減に寄与することとなる。
【0018】
また、前述のエアバッグ装置では、膨張状態におけるエアバッグの外形形状の曲率が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となり易い、外周結合部の近傍若しくは折り返し部の近傍に、排気孔が設けられることとなり、排気孔の設定を簡便に行うことが可能となって、好都合である。
【0019】
また、前述のエアバッグ装置では、第1線分と排気孔中心点との位置関係を前述の態様とすることにより、エアバッグの膨張状態において、第1線分を折れ曲がり線として、カバー部材が折れ曲がってしまった場合においても、排気孔の大半はカバー部材に覆われた状態を維持することとなり、好都合である。
【0020】
また、前述のエアバッグ装置では、第1線分と外周結合部との位置関係を前述の態様とすることにより、エアバッグの膨張状態において、第1線分における両端部間の外周結合部は、該両端部間に掛かる張力の影響を直接的に受け難いため、第1線分と交差(直交)する方向へ伸びようとすることが規制され難くなることとなり、その結果、第2線分方向に沿った排気孔の変形も規制され難くなることから、カバー部材の自立的な態様も規制され難くなり、前述の開口の面積の減少を抑制することとなるため、好都合である。
【0021】
また、前述のエアバッグ装置では、カバー部材をエアバッグの本体を形成するパネル材と同じ材質の材料を用いることにより、材料の歩留まりの向上を図ることができることから、製品の材料に係る原価コストの低減に寄与することとなる。また、第2線分方向に沿った排気孔の変形に際し、カバー部材が、その変形に追従して伸びることがないため、カバー部材の自立的な態様が促進され、前述の開口の面積が増えることとなるため、好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明のエアバッグ装置のエアバッグを車両の左方向から見た側面図である。(実施例1)
【図2】図2はエアバッグ本体を形成するパネル材を平面状に開いて置いた状態を示す図である。(実施例1)
【図3】図3はカバー部材を平面状に置いた状態を示す図である。(実施例1)
【図4】図4は図1のエアバッグの排気孔周辺を拡大した拡大図である。(実施例1)
【図5】図5は図4で表す部分の膨張状態を示す側面図である。(実施例1)
【図6】図6は図1のA−A部位の概略断面図である。(実施例1)
【図7】図7は図5のB−B部位の概略断面図である。(実施例1)
【図8】図8は本発明の別例のエアバッグ装置のエアバッグを車両の左方向から見た側面図である。(実施例2)
【図9】図9は本発明の更に別例のエアバッグ装置のエアバッグを車両の左方向から見た側面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、実施例では、サイドエアバッグ装置を例に採り説明するが、本発明を適用可能なエアバッグ装置としては、これに限られるものではなく、本発明は、運転席用エアバッグ装置や、膝保護用エアバッグ装置等の他のエアバッグ装置にも、適用可能である。
【実施例1】
【0024】
実施例1のサイドエアバッグ装置は、乗員の肩部から腰部にかけての側面部分を保護出来る様に、乗員の着座するシートの背もたれの内部に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、サイドエアバッグ装置を車両(自動車)に搭載させた際の車両の上下・左右・前後に対応するものである。
【0025】
サイドエアバッグ装置は、折り畳まれたエアバッグ10と、エアバッグ10の内部に挿入されて、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレータと、インフレータに外装されてインフレータを保持するリテーナと、折り畳まれたエアバッグ10の折り畳み状態を維持するラッピングシートとを、備えて構成されている。なお、本発明の主要部分はエアバッグ10における排気孔20であるため、エアバッグ10を除いて、サイドエアバッグ装置を構成する他の部材については特に図示しない。
【0026】
図1から図7に示す様に、エアバッグ10は、エアバッグ本体11と、カバー部材30とからなる。エアバッグ本体11は、1枚のパネル材12からなる。このパネル材12は、図2に示す様に、その中心線CLを軸として線対称の形状をなしており、紙面上の左側が車外側パネル13であり、右側が車内側パネル14である。そして、車内側パネル14には、膨張用ガスを排気するための排気孔20が設けられている。エアバッグ本体11は、このパネル材12を、中心線CLを折り返し線として、車外側パネル13の上に車内側パネル14が載る様に平面状に重合し、中折り部17を2箇所の折り線18に沿って折り曲げてエアバッグ本体11の内部に収納される様に挿入した後、中心線CLを折り返し線として折り返された部分(折り返し部15)を除いた外周部分を結合することにより、袋状に形成されるもので、所謂平面バッグと呼ばれる構成となっている。なお、パネル材12には、インフレータをエアバッグ10の内部へ挿入するための挿入口を形成する、スリット19が設けられており、この挿入口は、中折り部17を形成する際に、同時に形成される。エアバッグ本体11の外周部分の結合にあたっては、糸を用いた縫製が一般的であるが、接着によることとしても良く、縫製と接着を併用することとしても良い。また、縫製の場合、その部分を目止めするシール材を塗布しても良い。なお、エアバッグ本体11は、車外側パネル13と車内側パネル14とが互いに独立した部材(換言すれば、中心線CLで分断された部材)を重合して形成しても良い。この場合は、分断されている部分も外周部分と同様に結合されて、エアバッグ本体11が袋状に形成されることとなる。この実施例1では、エアバッグ本体11の外周部分の結合部位16(外周結合部)を縫製(外周縫製)にて結合している。この縫製は平面的に行われるため、人の手による立体的かつ複雑な縫製作業を必要とせず、工業用ミシン等の機械作業によって簡便に行うことが可能となって、単純な製造工程で製造出来るため、製品の製造の原価コスト抑制に寄与することとなる。なお、この実施例1では、外周縫製(結合部位16)は本縫いにて縫われており、1条の縫製のみで描かれているが、5mm程の間隔を置いて、その外側にもう1条の縫製を施し、2条の本縫い縫製としても良い。また、縫製の強度等が充分であれば、本縫い以外の他の縫製(例えば、チェーンステッチ等)を採用しても良い。
【0027】
パネル材12は、ナイロン若しくはポリエステル繊維から製造された糸を織ることでなる織布を用いることが望ましい。この織布は、可撓性を有し、金属シート等の硬質部材と比べれば、若干伸びる性質を有するが、所謂ゴム製シート等の弾性材料からなるシート状の部材に比べれば、遥かに伸び難い性質の部材である。この織布には、必要に応じて、膨張用ガスの透過(漏れ)を抑制するためのコーティング材が塗布されていても良い。このコーティング材は、織布の全体に塗布されていても良く、部分的に塗布されていても良い。更に、このコーティング材には、ナイロンやシリコン、ウレタンといった、一般的な樹脂若しくはゴム系の材料からなるコーティング材を、適宜選択して良い。なお、この実施例1のパネル材12では、エアバッグ本体11の内部側の面となる側(膨張用ガスが充填される側)の全面にコーティング材が塗布されており、エアバッグ本体11の外部側の面には塗布されていない。また、実施例1のパネル材12は、ナイロン系の繊維からなる織布にナイロン樹脂系のコーティング材を塗布した1枚布であるが、例えば、上側をコーティング材が塗布されない、所謂ノンコート布とし、下側には何等かのコーティングを施した、所謂コート布として、それ等を接続して1枚の布とする様に、複数のパネル材から形成する様にしても良い。また、パネル材12には、インフレータを収納する部位に対する補強布や、エアバッグ10の膨張に耐え得る様な補強が必要となる部位には、適宜、必要に応じて補強布が取付けられていても良い。
【0028】
エアバッグ本体11を袋状に形成するにあたっては、エアバッグ本体11の外側から排気孔20の全体がカバー部材30で覆われる様に、予め車内側パネル14に対して、カバー部材30を結合部位31で結合しておくと良い。この結合作業にあたっては、先ず、カバー部材30を平面状に配置し、その上にパネル材12を平面状に重合して、所定の結合部である結合部位31で結合すれば良い。この結合に際しても、縫製や接着、それ等の併用等、適宜、任意の結合方法を採用して良いが、この実施例1では、縫製(固定用縫製)によって結合している。この縫製は平面的に行われるため、人の手による立体的かつ複雑な縫製作業を必要とせず、工業用ミシン等の機械作業によって簡便に行うことが可能であり、製造の原価コスト抑制に寄与することとなる。なお、この実施例1では、固定用縫製(結合部位31)は本縫いにて縫われており、1条の縫製のみが施されている。また、この実施例1では、カバー部材30はエアバッグ本体11の外周結合部(結合部位16,外周縫製)の補強部材の役割も果たしているため、車外側パネル13に対しても、カバー部材30の線対称形状となる部材が取付けられている。なお、カバー部材30は、エアバッグ本体11を袋状に形成する際の外周部分の結合部位16の縫製も利用して、車内側パネル14に結合されており、結合部位16を共用することで、一層、製造の原価コスト抑制に寄与しているが、この点を考慮しなければ、結合部位31同様の結合として、結合部位16を共用しないこととしても良い。なお、このエアバッグ10は、外周部分を縫製にて結合した後、表裏(内外)を反転させない、所謂反転レスバッグとして形成されているが、カバー部材30が、エアバッグ10の外側に配置される様に適宜変更することにより、表裏(内外)を反転させる、所謂反転バッグとして形成しても良い。
【0029】
カバー部材30は、車内側パネル14に結合されていない部分を有しており、この部分が開口部40を形成する。開口部40は、カバー部材30と、車内側パネル14とで囲まれた部分である。エアバッグ10を平面状に配置した際、開口部40の両端部間を結ぶ線分を第1線分S1と定義する。この両端部は、カバー部材30と結合部位16とが交差する部位であり、図1における上側の端部を第1端部32とし、下側の端部を第2端部33として、それぞれ定義する。カバー部材30は、エアバッグ10を平面状に配置した状態で、第1線分S1よりもエアバッグ10の外形形状側に突出するフラップ部34を有する。このフラップ部34は、エアバッグ10が平面状態あれば、第1線分S1を折れ曲がり線として、自由に折れ曲がることが出来る。このフラップ部34の外形形状は、エアバッグ10を平面状に配置した状態で、エアバッグ10の外形形状側に向かって突出する、緩やかな円弧状に形成されており、その更に外側に、略相似形状の円弧状に、結合部位16としての縫製(外周縫製)が形成されている。なお、第1線分S1は、第1直線L1上に存在する線分である。ところで、カバー部材30における車内側パネル14に結合されていない部分としては、開口部40以外に非結合部41が存在する。この非結合部41は開口部40や排気孔20から充分(少なくとも、第2端部33から、第1線分S1の長さ以上)に離れた部位にある。また、この非結合部41における外周縫製(結合部位16)と固定用縫製(結合部位31)との距離は、充分(少なくとも、後述する第3線分S3の長さ以下)に短い。従って、この非結合部41は開口部40の様に確実に開口するものではなく、実質上、閉塞された状態となる。なお、この閉塞状態を、より一層確実なものとするため、開口部40の領域を除いた第2端部33の近傍で、外周縫製(結合部位16)に対して固定用縫製(結合部位31)が交差する様に、固定用縫製(結合部位31)を延設する等の設定を施すこととしても良い。
【0030】
このカバー部材30は、ナイロン若しくはポリエステル繊維から製造された糸を織ることでなる織布を用いることが望ましい。この織布は、可撓性を有し、金属シート等の硬質部材と比べれば、若干伸びる性質を有するが、所謂ゴム製シート等の弾性材料からなるシート状の部材に比べれば、遥かに伸び難い性質の部材である。このカバー部材30は、パネル材12ほど膨張用ガスの透過性(漏れ)に対する要求が厳しくないため、コーティング材が塗布されない、所謂ノンコート布を用いているが、必要であれば、コーティング材が塗布された、所謂コート布を用いることとしても良い。いずれにしても、エアバッグ10に用いる織布(基布)と同じ材質のものを用いる様にすれば、織布としての材料の歩留まりが向上し、製品の材料の原価コストの抑制に寄与することとなる。特に、ノンコート布を選択した場合は、最も安価となる。なお、実施例1のカバー部材30は、前述した様に補強部材の役割も果たすべく、図3に示される様に、上下方向に長い略「への字」形状をなしている。
【0031】
エアバッグ10の内部には、リテーナを外装したインフレータが挿入され、必要に応じて、その挿入部(前述した挿入口)が綴じられる。そして、エアバッグ10を所定の形状に折り畳み、その折り畳み状態を維持するラッピングシートで包めば、サイドエアバッグ装置が完成する。なお、前述した工程の順序は、適宜入れ替わっても良い。このエアバッグ10を用いるサイドエアバッグ装置は、エアバッグ本体11の車内側パネル14に排気孔20が設けられているため、車内側が乗員側となることから、右側の座席の背もたれの内部における車外側(右側)に配設されることとなる。左側の座席の乗員に対するサイドエアバッグ装置の場合は、このエアバッグ10の左右を逆に構成したものを用いれば良い。
【0032】
図1に示されるエアバッグ10を用いるサイドエアバッグ装置は、乗員の肩部から腰部にかけての側面部分を保護する様に構成されており、エアバッグ10の外形形状(特に結合部位16としての、外周縫製の形状)について、特に上側の前後方向(図の紙面上では左右方向)に幅が広い部分は、乗員の肩部から胸部(肋骨)の辺りを保護し、下側の前後方向(図の紙面上では左右方向)に幅の狭い部分は、乗員の腹部から腰部の辺りを保護する。そして、この前後方向の幅が異なる境界部分は、外周縫製がS字状の曲線を描く様に形成されている。なお、排気孔20は、外周縫製のS字状の曲線部の中間点(変曲点H)より上側となる位置に配設されている。
【0033】
図1及び図4に示す様に、エアバッグ10(エアバッグ本体11)を平面状に配置した際(詳述すれば、エアバッグ10の非膨張状態において、排気孔20と、排気孔20の周辺の部位を、平面状に配置した際)、この排気孔20の外形形状に対して中心となる点を排気孔中心点21と定義する。また、排気孔中心点21から、エアバッグ10の外形形状(この実施例では、結合部位16としての外周縫製に沿った外形形状)までの距離が最も短くなる部位であって、エアバッグ10の外形形状上に存在する点を、最接近点Dと定義する。そして、この排気孔中心点21と最接近点Dを通る直線を、断面線LAと定義する。また、この排気孔中心点21と最接近点Dとの間の部位を、最短部S0と定義する。また、この排気孔中心点21を通り、かつ、前述の第1直線L1に直交する直線を、第2直線L2と定義する。更に、この第1直線L1と第2直線L2とを含む平面を第1平面と定義する。前述の断面線LAは、この第1平面上に存在する直線である。更に、第1直線L1に直交し、かつ、排気孔20の上側(第1端部32側)の端点である第1端点22を通る直線を第3直線L3と定義する。更に、第1直線L1に直交し、かつ、排気孔20の下側(第2端部33側)の端点である第2端点23を通る直線を第4直線L4と定義する。そして、この第3直線L3と第4直線L4との距離を示す線分を、第2線分S2と定義する。この第2線分S2は、第1直線L1に平行であって、排気孔20の外形での長さが最大となる線分である。また、第1直線L1に平行(換言すれば、第2直線L2に直交している)であり、かつ、排気孔20の前側(排気孔中心点21よりも第1直線L1に近い側)の端点である第3端点24を通る直線を第5直線L5と定義し、第1直線L1に平行(換言すれば、第2直線L2に直交している)であり、かつ、排気孔20の後側(排気孔中心点21よりも第1直線L1に遠い側)の端点である第4端点25を通る直線を第6直線L6と定義する。そして、この第5直線L5と第6直線L6との距離を示す線分を、第3線分S3と定義する。この第3線分S3は、第1直線L1に直交し、排気孔20の外形での長さが最大となる線分である。なお、図5は、図4で表す部分のエアバッグ10の膨張状態を示す側面図である。
【0034】
図6は、図1におけるエアバッグ10を平面状に配置した際のA−A部位の断面であり、この断面は、前述の第1平面に直交し、断面線LAを含む平面である。なお、図1においては、最短部S0は直線状であり、断面線LA上に存在する。図7は、図5におけるエアバッグ10の膨張状態でのB−B部位の断面であり、この断面は、エアバッグ10が膨張した際に湾曲する最短部S0を含む様に形成される平面であって、断面線LBを含む平面である。この最短部S0(断面線LB)を含む平面(断面)は、エアバッグ10Bの膨張状態によって定義される平面(断面)であるため、実際のエアバッグ10の膨張状態においては、前述の断面線LAを含む平面(断面)と完全には厳密に一致しない場合が出てくることが考えられるが、理論的には同一の平面である。また、この最短部S0(断面線LB)を含む平面(断面)は、エアバッグ10の車外側パネル13に、排気孔中心点21に対応する仮想中心点26を定義し、エアバッグ10の膨張状態において、この仮想中心点26と排気孔中心点21と最接近点Dとの3点で形成される平面としても定義可能であり、前述の最短部S0(断面線LB)を含む平面(断面)や、断面線LAを含む平面(断面)と、理論的には同一の平面である。なお、この図6及び図7では、構成を分り易くするために、模式的な図として、車外側パネル13や車内側パネル14及びカバー部材30が外周縫製(結合部位16)や固定用縫製(結合部位31)にて縫製されている部分を若干離れた態様で描いているが、実際には密着している。同様に、図7における最短部S0についても、パネル材12における外形形状(結合部位16)近傍の屈曲を、模式的な図として故意に大きく描いているが、実際には、エアバッグ10の内面側がスムーズな曲面を形成する様な態様となる。
【0035】
図7に示す様に、エアバッグ10には、エアバッグ10の膨張状態(詳述すれば、膨張用ガスが充分に供給されずエアバッグ10の形状が安定しない膨張初期や、膨張用ガスの大半が抜けてエアバッグ10の形状が安定しない膨張終期を除いた、エアバッグ10の形状が最も安定している膨張完了状態と、その膨張完了状態の前後で、比較的エアバッグ10の形状が安定している膨張状態を指すが、ここでは簡便のために、膨張完了状態を前提として説明する)において、エアバッグ10の外形形状の曲率R1が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に排気孔中心点21が配置される様に、排気孔20が形成されている。この様に、膨張状態におけるエアバッグ10の外形形状の曲率R1が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域は、特に、平面バッグの外周部分に形成され易く、この様な外周部分は、結合されてなる外周結合部(結合部位16,外周縫製)や、折り返し部15で形成されている。また、開口部40の開口量をより多く確保する観点からは、少なくとも結合部位31(固定用縫製)が存在する領域まで、曲率R1が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となっていることが望ましい。ところで、前述の複合形状について詳述すれば、少なくとも2つの半径100mm以下で異なる曲率が連続して隣り合って形成される形状のことを指す。換言すれば、その複合形状(曲線)上の任意の2点における曲率が、半径100mm以下の円弧であれば良く、その2点間についても、半径100mmを超えた円弧となることなく、滑らかに繋がっていれば良い。なお、排気孔20は、第1直線L1に沿う方向に長い、長円形状(角丸長方形)に形成されている。
【0036】
ここで、排気孔20における排気孔中心点21が、断面線LB上に存在し、エアバッグ10の上側の領域の略中央である点Eの部位に設けられている場合を考えてみる。この場合、この点Eの部位におけるエアバッグ10の外形形状の曲率R2は、半径100mmを大きく超えて、略直線に近い、非常に緩やかな曲線を描いているため、カバー部材30に開口部40が設けられていたとしても、カバー部材30は車内側パネル14の形状(曲率R2)に容易に追従してしまうため、開口部40は実質的に閉塞した状態が保たれることとなり、カバー部材30に伸縮自在な材料を適用する等の手段を講じない限り、開口部40を開口させることが困難である。しかしながら、本発明によれば、エアバッグ10の膨張状態において、エアバッグ10の外形形状の曲率R1が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に排気孔中心点21が配置される様に、排気孔20が形成されているため、カバー部材30における、車内側パネル14に結合された結合部位16(外周縫製)及び結合部位31(固定用縫製)は、車内側パネルの形状(曲率R1)に強制的に追従することとなるが、結合されていない開口部40(詳述すれば、カバー部材30におけるフラップ部34の端末部35)は、車内側パネルの形状(曲率R1)に追従出来ないため、浮き上がる様な態様となる。即ち、カバー部材30が自立的にエアバッグ10の本体(エアバッグ本体11)から離れる様な態様となる。従って、前述した様に、カバー部材30に安価な材料を用い、かつ、単純な製造工程にて、ベントホール(排気孔20)を終始閉塞しないエアバッグ10の構成を実現していることとなる。なお、本発明では、エアバッグ10の膨張状態において、最低限、排気孔20の排気孔中心点21が、エアバッグ10の外形形状の曲率R1が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に配置される様に、排気孔20が形成されていれば良いが、より効果を向上させるべく、排気孔20全体が、前述の領域内に配置される様に形成されていることが望ましい。
【0037】
なお、この曲率R1は、エアバッグ10の膨張時において、カバー部材30におけるフラップ部34の端末部35の浮き上がる様な態様を更に確実なものとするため、半径80mm以下の円弧若しくはその複合形状となる様に設定することが望ましい。また、テザー等の、エアバッグ10の膨張形状を規制する手段を用いずにエアバッグ10を形成する際には、半径20mm未満の円弧若しくはその複合形状となる様に設定することが困難なため、半径20mm以上の円弧若しくはその複合形状となる様に設定することが望ましい。なお、この実施例1のエアバッグ10では、曲率R1が半径50mm以上、かつ、80mm以下となる様に設定している。
【0038】
このエアバッグ10の構成では、第1線分S1の長さを、第1直線L1に平行であって、排気孔20の外形で最大となる第2線分S2の長さに対して、長くなる様に設定している。この様に設定することにより、カバー部材30におけるフラップ部34の端末部35が、エアバッグ本体11の車内側パネル14から浮き上がる際は、この端末部35が湾曲し、フラップ部34は3次元的な曲面を形成することとなるため、第1線分S1を折れ曲がり線として折れ曲がることが容易には出来なくなり、端末部35が湾曲する分、開口部40の両端部(第1端部32と第2端部33)間の直線的距離が相対的に短くなる。仮に、第1線分S1と第2線分S2とを同じ長さに設定した場合は、前述の直線的距離が、第2線分S2より短くなってしまうため、開口部40の開口面積を出来るだけ大きく確保しようとする観点からは、芳しくない。従って、第1線分S1の長さは、第2線分S2より長く設定し、前述の直線的距離が相対的に短くなった場合においても、第2線分S2と同等か、それより長くなる様にしておくことが好ましい。但し、余りに長く設定しても、今度はフラップ部34が自重で垂れ下がってしまう怖れが出てくるため、第1線分S1の長さは、第2線分S2に対して、1.2倍から3.0倍程度に設定することが望ましく、更に望ましくは、1.5倍から2.5倍程度に設定することが望ましい。なお、この実施例1では、約2倍に設定している。
【0039】
また、このエアバッグ10の構成では、第2線分S2の長さを、第1直線L1と直交して、排気孔20の外形で最大となる第3線分S3の長さに対して、長く設定している。エアバッグ10が膨張した際、この排気孔20は、この第3線分S3に沿う方向に広がる様に変形し易い(換言すれば、図6における排気孔20の長さL7が、図7における排気孔20の長さL8まで、見掛け上長くなる)ため、排気孔20の近傍において、第2直線L2に沿う方向における車内側パネル14の見掛け上の長さが、カバー部材30における同様の部位の見掛け上の長さよりも長くなることとなり、カバー部材30が浮き上がる様な態様が、一層促進されることとなる。仮に、第2線分S2と第3線分S3とを同じ長さに設定した場合は、前述の第3線分S3に沿う方向に広がる様な変形が抑制される態様となり、カバー部材30の浮き上がる様な態様が抑制されてしまうことから、開口部40の開口面積を出来るだけ大きく確保しようとする観点からは、芳しくない。従って、第2線分S2の長さは、第3線分S3より長く設定することが好ましい。但し、余りに長く設定しても、相対的に第1線分S1が長くなって、前述の様にフラップ部34が自重で垂れ下がる怖れが出てくるため、第2線分S2の長さは、第3線分S3に対して、2倍から6倍程度に設定することが望ましく、更に望ましくは、3倍から5倍程度に設定することが望ましい。なお、この実施例1では、約4倍に設定している。
【0040】
また、このエアバッグ10の構成では、外周結合部(結合部位16,外周縫製)に対して、第1線分S1を、排気孔中心点21よりも近い領域に配置している。換言すれば、排気孔中心点21は、第1線分S1よりも、外周結合部(結合部位16,外周縫製)から離れた位置に存在している。仮に、排気孔中心点21を、第1線分S1よりも外周結合部(結合部位16,外周縫製)に近い位置に配設した場合、排気孔20の大半はカバー部材30のフラップ部34に覆われる態様となる。エアバッグ10の膨張が安定しているときは、排気孔20がこの部位に配置されていたとしても、フラップ部34は第1線分S1を折れ曲がり線として折れ曲がる怖れは少ないため、こういった仕様でも構わないが、エアバッグ10の膨張が安定しない、膨張初期や膨張終期では、第1線分S1を折れ曲がり線としてフラップ部34が捲れてしまい、排気孔20が充分に覆われない場合が懸念される。その点、排気孔中心点21を、第1線分S1よりも、外周結合部(結合部位16,外周縫製)から離れた位置に配設する様にすれば、エアバッグ10の膨張が安定しない、膨張初期や膨張終期においても、排気孔20の半分以上の領域が、フラップ部34以外のカバー部材30によって確実に覆われる態様となって、好ましい。更に好ましくは、排気孔20の殆どの領域を、第1線分S1よりも、外周結合部(結合部位16,外周縫製)から離れた位置に配設することが望ましい。
【0041】
また、このエアバッグ10の構成では、外周結合部(結合部位16,外周縫製)は、第1線分S1よりも外側に突出する様に形成されている。詳細には、前述した様に、フラップ部34の外形形状が、エアバッグ10を平面状に配置した状態で、エアバッグ10の外形形状側に向かって突出する、緩やかな円弧状に形成されており、その更に外側に、略相似形状の円弧状に、結合部位16としての縫製(外周縫製)が形成されている。仮に、この外周結合部(結合部位16,外周縫製)を、第1線分S1よりも内側に引き込む様に形成した場合(換言すれば、このエアバッグ10において、変曲点Hより若干下方側の領域に、排気孔20を形成した場合)、エアバッグ10の膨張時に、外周結合部(結合部位16,外周縫製)が、更に内側へ引き込む様な態様となり、開口部40の両端部(第1端部32と第2端部33)間の直線的距離が相対的に短くなるものの、フラップ部34は単なる余剰部となって、車外側パネル13に取付けられた同様の部材と接触し合う態様となり、却って開口部40を閉塞する態様となり易いことから、あまり芳しくない。その点、外周結合部(結合部位16,外周縫製)を、第1線分S1よりも外側に突出する様に形成しておけば、カバー部材30と、同様の部材とが、開口部40の近傍で接触し合う可能性が低くなり、好ましい。更に好ましくは、外周結合部(結合部位16,外周縫製)を、カバー部材30の端末部35よりも外側に突出する様に形成しておくことが望ましい。
【実施例2】
【0042】
実施例2のエアバッグ10Aは、図8に示される様に、実施例1のエアバッグ10に対して、排気孔20Aの配置位置が異なるだけである。ここでは、エアバッグ10との相違点についてのみ、説明する。
【0043】
排気孔20Aは、エアバッグ10Aの外形形状(特に結合部位16としての、外周縫製の形状)の、下側の前後方向(図の紙面上では左右方向)に幅が狭い部分の前方側(図の紙面上では左側)に設けられている。エアバッグ10との大きな違いは、第1線分S1Aに対して、結合部位16(外周結合部,外周縫製)が略一致する様に直線状に配設されている点である。従って、このエアバッグ10Aは、エアバッグ10の様に、外周結合部(結合部位16,外周縫製)が、第1線分S1Aよりも外側に突出する様に形成されてはいないが、その点を除けば、後はエアバッグ10と何等変わらず、エアバッグ10と同様の効果が得られる。但し、開口部40を確実に形成するため、フラップ部34は設けない方が良く、端末部35Aは、第1線分S1Aと略一致する様に直線状に配設することが望ましい。なお、エアバッグ10Aの、下側の前後方向(図の紙面上では左右方向)に幅の狭い部分の前方側(図の紙面上では左側)に、排気孔20Aを設ける構成としても良い。なお、この実施例2における第1端部32A及び第2端部33Aは、外周縫製(結合部位16)と固定用縫製(結合部位31A)との交点となる部位が該当する。
【実施例3】
【0044】
実施例3のエアバッグ10Bは、図9に示される様に、実施例1のエアバッグ10に対して、排気孔20Bの配置位置が異なるだけである。ここでは、エアバッグ10との相違点についてのみ、説明する。
【0045】
排気孔20Bは、エアバッグ10Bの外形形状の後方側(図の紙面上では右側)に設けられている。エアバッグ10との大きな違いは、第1線分S1Bに対して、折り返し部15が略一致する様に直線状に配設されている点である。従って、このエアバッグ10Bは、エアバッグ10の様に、外周結合部(結合部位16,外周縫製)に相当する折り返し部15が、第1線分S1Bよりも外側に突出する様に形成されてはいないが、その点を除けば、後はエアバッグ10と何等変わらず、エアバッグ10と同様の効果が得られる。但し、開口部40を確実に形成するため、フラップ部34は設けない方が良く、端末部35Bは、第1線分S1Bと略一致する様に直線状に配設することが望ましい。なお、この実施例3における第1端部32B及び第2端部33Bは、折り返し部15と固定用縫製(結合部位31B)との交点となる部位が該当する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
前述した様に、実施例1から3では、シートの背もたれの内部に配設するタイプのサイドエアバッグ装置を例に説明してきたが、サイドエアバッグ装置の例としては、これに限らず、背もたれの外側に配設されるタイプや、ドアトリムの内部に配設されるタイプでも、本発明を適用することが可能である。また、実施例1から3のサイドエアバッグ装置の例としては、乗員の肩部から腰部にかけての側面部分を保護するタイプを例に説明してきたが、これに限らず、胸部のみを保護するタイプや、頭部から胸部にかけて保護するタイプ、頭部から腰部にかけて保護するタイプ等、様々な保護領域のサイドエアバッグ装置への適用も可能である。
【0047】
更に、平面バッグに適用する例としては、膝保護用エアバッグ装置や、運転席用エアバッグ装置の他、側面衝突時に乗員の頭部を主に保護する頭部保護エアバッグ装置への適用も可能である。更に、前述の必要な条件を満たす構成であれば、平面バッグに限らずとも良く、様々なエアバッグ装置への適用が可能である。また、この実施例1から3では、サイドエアバッグ装置において、エアバッグ10・10A・10Bの膨張時に、常時排気孔20・20A・20Bが閉塞されずに開口状態を保つことが可能かつ、その排気孔20・20A・20Bから排気される膨張用ガスが、直接乗員の居る方向へ流出しない様に、その膨張用ガスの流れを規制するためのカバー部材30を設けた構成としているが、前述の目的とは異なる目的であっても、構成として必要であれば、適宜、所望のエアバッグ装置におけるエアバッグの適用可能な部位に、本発明の排気孔20・20A・20B及びカバー部材30に係る配置構成を適用して良い。
【0048】
更に、実施例1から3では、カバー部材30で覆われた排気孔20・20A・20Bを1つのみ、エアバッグ10・10A・10Bに設ける構成としているが、必要に応じて、適宜排気孔を増設しても良い。その際、増設する排気孔に対してカバー部材30が不要であれば、カバー部材30を省略することとしても良い。
【符号の説明】
【0049】
10 エアバッグ
10A エアバッグ
10B エアバッグ
11 エアバッグ本体
12 パネル材
13 車外側パネル
14 車内側パネル
15 折り返し部
16 結合部位
17 中折り部
18 折り線
19 スリット
20 排気孔
20A 排気孔
20B 排気孔
21 排気孔中心点
22 第1端点
23 第2端点
24 第3端点
25 第4端点
26 仮想中心点
30 カバー部材
31 結合部位
31A 結合部位
31B 結合部位
32 第1端部
32A 第1端部
32B 第1端部
33 第2端部
33A 第2端部
33B 第2端部
34 フラップ部
35 端末部
35A 端末部
35B 端末部
40 開口部
41 非結合部
CL 中心線
D 最接近点
E 点
H 変曲点
LA 断面線
LB 断面線
L1 第1直線
L2 第2直線
L3 第3直線
L4 第4直線
L5 第5直線
L6 第6直線
L7 排気孔の長さ
L8 排気孔の長さ
R1 曲率
R2 曲率
S0 最短部
S1 第1線分
S1A 第1線分
S1B 第1線分
S2 第2線分
S3 第3線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグと、
前記エアバッグに、膨張用ガスを供給するインフレータとからなるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、
乗員拘束時に前記膨張用ガスを排気するための排気孔を備えるとともに、
前記排気孔の全体を前記エアバッグの外部側から覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、
前記エアバッグの非膨張状態において、前記排気孔と、前記排気孔の周囲とを平面状に配置した際、
前記排気孔及び前記排気孔の周囲に対して平面状に重合する様に配設されるとともに、
開口部となる部位を除いて、前記排気孔の周囲において前記エアバッグの本体に結合されており、
前記排気孔は、
前記排気孔における中心である排気孔中心点と、前記排気孔中心点から前記エアバッグの外形形状までの距離が最も短くなる部位とを含む断面において、
前記エアバッグの膨張状態における、前記エアバッグの外形形状の曲率が半径100mm以下の円弧若しくはその複合形状となる領域に、前記排気孔中心点が配置されていることを特徴とする、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの非膨張状態において、前記排気孔と、前記排気孔の周囲と、前記カバー部材とを、平面状に配置した際、
前記開口部の両端部を結んだ第1線分の長さが、前記第1線分に平行であって、前記排気孔の外形で最大となる第2線分の長さに対して、長いことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグの非膨張状態において、前記排気孔と、前記排気孔の周囲と、前記カバー部材とを、平面状に配置した際、
前記第2線分の長さが、前記第2線分と直交して、前記排気孔の外形で最大となる第3線分の長さに対して、長いことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグの本体が、2枚のパネル材を重合してなることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記排気孔が、前記パネル材の外周結合部の近傍若しくは外周を形成する折り返し部の近傍に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記外周結合部若しくは前記折り返し部に対して、前記第1線分は、前記排気孔中心点よりも近い領域に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記外周結合部は、前記第1線分よりも外側に突出する様に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記パネル材と同じ材質からなることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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