説明

エアバッグ

【課題】縫い目を伴うことなく接着剤により与えられる継ぎ目構造を有するエアバッグを提供する。
【解決手段】接着剤構造60によって接合される内側パネル50及び外側パネル52のファブリック層Fを含むエアバックの断面を示す。接着剤構造60は、接着剤の上面62が外側パネル52と接触して接着し、接着剤の下面64が内側パネル50と接触して接着する。接着剤60の幅Xは、エアバックの急速膨張とエアバックの加圧側Pで膨張ガスによってエアバックが膨張するときの内側パネル50と外側パネル52との間の急速な分離とに対して継ぎ目構造を仕立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2010年1月27日に出願された米国仮特許出願第61/298,786号(その全体が参照することにより本願に組み入れられる)の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本出願は一般に自動車のエアバッグの分野に関する。より具体的には、この出願は、強度を維持しつつ重量及びコストを減少させるように改良されたクッション継ぎ目を有するべく構成されるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0003】
2つ以上のパネルを互いに合わせることにより形成されるエアバッグクッションを有する車両で用いるエアバッグを構成することが知られている。少なくとも2つのエアバッグクッションパネルを合わせるために継ぎ目を使用することが知られており、この場合、継ぎ目は、合わせられるパネルの分離(すなわち、相対的な移動)を減少又は防止するために、一般に400−2400デニールの糸又は編糸から形成される複数のステッチから成る縫い目を含む。更に、接着剤又は封止剤をパネルの隣接する相互接続される表面に塗布して、縫い目を形成する糸から成る複数のステッチにより形成される複数の開口(又は、穴)を通じて膨張ガスが逃げるのを防止することが知られている。これらのエアバッグは、縫い目が継ぎ目の強度又は構造的一体性を与えるように構成され、一方、封止剤がエアバッグクッションパネルとステッチとの間の隙間を満たしてシールする。したがって、最適な構造のため、エアバッグは、一般に、縫い目の強度及びパネルの強度がほぼ同様となるように構成される。縫い目の強度を高めるため、糸の直径又はサイズが増大される場合があり、或いは、高い引張強度を有する材料が使用される場合がある。エアバッグクッションのファブリック(編織体)パネル(fabric panel)の強度を高めるため、高デニール(すなわち、重量)パネルが使用される場合があり、或いは、パネルが高強度材料から形成される場合がある。
【0004】
継ぎ目の構造的一体性を与えるために縫い目を使用して構成されるエアバッグの主要な欠点は、縫い目が縫い針によってエアバッグクッションのファブリックパネルに穴又はボイドを形成し、それにより、継ぎ目の近傍でエアバッグパネルの強度が低下し、そのため、継ぎ目でのこの強度低下に対応するべく、一般的にはファブリック厚さ(すなわち、デニール)又はファブリック強度を増大させることにより、パネルを過大形成しなければならないという点である。パネル強度低下は、縫い目が適用されるときに継ぎ目の近傍で生じる。これは、縫い目が、糸又は編糸のそれぞれの通過毎にエアバッグパネルに穴又はボイドを形成するからである。それぞれの針穴は、荷重を受けるとき、また、しばしば、パネルが展開中に晒される高温及び高応力を受けるときに、穴の近傍のパネルに応力集中をもたらして、穴が伸長し、それにより、パネルの裂けが伝播する。縫い目の近傍でのパネルの強度低下は、局所的な高応力継ぎ目領域に対応するように形成されるパネル全体に影響を及ぼし、また、継ぎ目領域は一般にクッション領域全体のうちの僅かな割合であるため、パネルが過大形成され、効率が悪い。同じファブリックの2つの層又は2枚のパネルを接合する縫い目を有する継ぎ目は、縫い目を有さない同じファブリックの単一シートと比べてパネルの強度を60%低下させることが分かってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高いクッション内圧により引き起こされるクッションパネルの分離によってもたらされる高い応力に耐えることができる接着剤を含むようにエアバッグが構成され、それにより、継ぎ目の構造的一体性が与えられて、縫い目を排除できることが有益である。したがって、縫い目によって引き起こされる応力集中が排除されるため、低デニール材料を含むようにエアバッグクッションパネルを更に効率的に形成することができる。接着剤の使用は、縫い目のコストを排除するとともに縫い目の組み付けコストを排除することにより、エアバッグクッションのコストを低減する。また、接着剤の使用は、エアバッグシステムの大きさ及び重量も減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、エアバッグは、インフレータブルチャンバ(inflatable chamber)と、インフレータブルチャンバの壁を形成するファブリックパネル(fabric panel)と、継ぎ目構造(structural seam)とを含むことができ、継ぎ目構造(structural seam)は接着剤のみを含む。すなわち、継ぎ目構造は縫い目を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1はエアバッグの一実施形態を含む自動車の典型的な実施形態の斜視図である。
【0008】
【図2】図2はエアバッグが展開された図1の自動車の斜視図である。
【0009】
【図3】図3は少なくとも1つの継ぎ目構造を含むように構成される図1の自動車などの車両で用いるサイドカーテンエアバッグクッションの典型的な実施形態の側面図である。
【0010】
【図4】図4はエアバッグの内面にコーティング層を伴う典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0011】
【図5】図5はコーティング層を伴わない典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0012】
【図6】図6はエアバッグの内面及び外面にコーティング層を伴う典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0013】
【図7】図7は典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0014】
【図8】図8は接着剤の2つの部分によって形成された典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0015】
【図9】図9は非対称な形状を伴う典型的な継ぎ目構造の断面図である。
【0016】
【図10】図10は少なくとも1つの継ぎ目構造を含むように構成される図1の自動車などの車両で用いるサイドカーテンエアバッグクッションの他の実施例の側面図である。
【0017】
【図11】図11はシートの車外側から展開されるサイドインパクトエアバッグを示す図1の自動車などの車両の内部車室の助手席側の斜視図である。
【0018】
【図12】図12は少なくとも1つの継ぎ目構造を含む図4の自動車などの車両で用いるサイドインパクトエアバッグの一例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
エアバッグシステム(例えば、サイドインパクト、フロントインパクト)は、正面衝突、側部衝突、又は、転倒事象などの動的な車両事象中に搭乗者を負傷から守るのに役立つように車両に位置付けられる。エアバッグシステムはインフレータブルエアバッグクッションを含んでもよく、該エアバッグクッションは、動的な車両事象中に展開して、インフレータ又は他のガス発生装置を用いてエアバッグクッション内に急速に圧入されるガスにより膨張する。インフレータ又はモジュールは、ガスをほぼ瞬時に発生させてエアバッグシステムのインフレータブルエアバッグクッション内へ高い体積流量のガスを圧入するために、点火装置又は他のエアバッグ膨張装置などの装置を使用してもよい。エアバッグクッション又はエアバッグは、車両におけるほぼ任意の場所の中に格納されてその場所から展開されてもよい。例えば、エアバッグクッションは、シートアセンブリのシートバックの内側(すなわち、ファーサイドエアバッグ)[[この語句は正しい?]]又は外側(すなわち、サイドエアバッグ)対向面内に格納されてその面から展開されてもよく、ダッシュボード又はステアリングコラム内から展開されてもよく、或いは、車両のルーフレール内から展開されてもよい。エアバッグは、一般に、エアバッグを圧縮してシートアセンブリのシートバック又は車両のルーフレールなどの小さい格納領域内に嵌め込むために、折り畳んで丸めるプロセスによってパッケージングされる。エアバッグは、車両の任意の着座配列(seating row)(例えば、第1、第2、第3)で位置する搭乗者に対して保護を与えるために使用されてもよい。エアバッグは、サイドカーテンエアバッグ、サイドエアバッグ、膝エアバッグ、及び、長枕、パッセンジャエアバッグ、ドライバ側エアバッグ、及び、当分野で使用される他のエアバッグを含む。本発明は、これらのタイプのエアバッグのいずれかと共に使用されてもよい。当業者であれば分かるように、本明細書中に記載されるエアバッグ及びエアバッグシステムは、任意のエアバッグ及びエアバッグシステムと共に含まれてもよく、本明細書中に記載される実施例及び例図によって限定されない。
【0020】
図1を参照すると、自動車10の典型的な実施形態が示されている。車両10は、内部車室12と、ドライバ側14と、助手席側16とを有することができる。また、車両10は本発明に係るエアバッグを更に含むことができる。例えば、車両10は、車両の助手席側の前後の搭乗者に対して保護を与えるために、図2の例では展開された状態で示されるサイドカーテンエアバッグ20を含むことができる。
【0021】
図3を参照すると、車両で用いるサイドカーテンエアバッグ20の一例が、折り畳んで車両に設置する前の状態で示されている。図3の例に示されるように、サイドカーテンエアバッグ20は、インフレータブルチャンバを有するエアバッグクッション22と、膨張ガスの発生又は解放によってエアバッグクッション22のインフレータブルチャンバを膨張させるためのインフレータ(図示せず)とを含むことができる。サイドカーテンエアバッグ22は、車両のルーフレール内に格納されてそこから展開されてもよい。一例によれば、エアバッグクッション22は、少なくとも1つの継ぎ目構造24(又は、接着継合構造)によって外側パネルに合わせられる内側パネルを含み、その場合、内側パネル及び外側パネルがインフレータブルチャンバの壁を形成する。他の例によれば、エアバッグクッションは、任意の数の継ぎ目構造を使用して互いに合わせられる任意の数のパネルを含んでもよい。エアバッグクッションは、クッションをインフレータに取り付けるためのインフレータカップリング26を更に含んでもよい。
【0022】
本明細書中で論じられる任意のエアバッグで使用されてもよい継ぎ目構造は、エアバッグ部分を接合する、例えば2つの異なるエアバッグパネルを互いに接合する或いはエアバッグファブリックの2つの部分を互いに単に接合するための接着剤を含む。継ぎ目構造は、縫い目を含まず、接着剤のみに限定されてもよい。
【0023】
一例によれば、エアバッグクッション(本明細書中で論じられる任意のタイプのエアバッグであってもよい)は、インフレータブルチャンバを含んでおり、インフレータブルチャンバの壁を形成する1つ以上のファブリックパネルから形成されてもよい。例えば、エアバッグは、エアバッグクッションのほぼ全周にわたって延びる継ぎ目構造によって外側パネルに合わせられる内側パネルを含むことができ、継ぎ目構造は、設置前のエアバッグクッションの折り畳まれない面積と、展開時に膨張ガスによって満たされたエアバッグクッションの展開容積との両方を規定する。他の例によれば、継ぎ目構造24は、パネルを接合する外周縁上の継ぎ目構造24に加えて或いはそれに代えて、図3の例に示されるように膨張されるエアバッグの内部の中に位置してもよい。また、図3の例に示されるような高応力位置28が本明細書中で論じられる継ぎ目構造を含むことができる。
【0024】
そのようなエアバッグパネルは、クッションの要件及びジオメトリ(geometry)に合わせられたファブリック引張強度を有する任意の適したデニールの編織されたファブリック材料(woven fabric panel)から形成されてもよい。接着剤の継ぎ目構造において縫い目を欠くことにより、エアバッグの重量を低くするとともに車両の重量を節約して燃費を向上させるのに有利な低デニールのファブリックがこの発明で有利に使用されてもよい。エアバッグの継ぎ目に縫い目を含む従来のエアバッグはエアバッグのファブリックを弱め、それにより、エアバッグは、縫い目のこの脆弱効果を相殺するために(高い強度を有する)高いデニールを必要とする。しかしながら、高デニールのファブリックが高い強度を与えるとはいえ、高デニールのファブリックは、重量も増大させて、低デニールファブリックから形成されるエアバッグよりも重いエアバッグを生成する。
【0025】
例えば、縫い目を伴わない420デニールファブリックの引張試験は約3000N/50mmの引張強度を示し、一方、サイズ138#の縫糸で縫い付けられた420デニールファブリックは約1200N/50mmの引張強度を示す。この例は、エアバッグパネルのために使用されるファブリックにおける縫い目の脆弱効果を明らかにしており、この脆弱効果は、通常は、低デニールファブリックよりも高い強度を有する高デニールファブリックを使用することにより相殺される。
【0026】
この発明に係るエアバッグパネルは、例えば100〜約420デニール、又は、特に100〜400デニール未満、100〜315デニール、又は、100〜210デニールのデニールを有することができる。とりわけ、エアバッグパネルは、315デニール、210デニール、又は、100デニールのデニールを有することができる。エアバッグパネルは、50mm当たり1200N(1200N/50mm)、800N/50mm、又は、800N/50mm未満のファブリック引張強度を有する材料から形成されてもよい。当業者であれば分かるように、エアバッグパネルは、特定の用途を満たすように仕立てられてもよく、必要とされる継ぎ目強度に応じて設定されてもよい様々なファブリック引張強度を有するべく構成されてもよい。ファブリックエアバッグパネルは、任意の適した或いは必要とされる形状、例えば図面に示される形状を形成するために、平坦な状態にカットされてもよい。ファブリック材料は、ナイロン又は当分野で使用される任意の他の材料であってもよい。
【0027】
エアバッグパネルはコーティングを更に含んでもよい。コーティングは、高温耐性があってもよく、エラストマー、シリコン、アクリル、ポリウレタン、又は、他の適した材料であってもよい。コーティングは、エアバッグの展開中に高圧膨張ガスが、編織されたパネルの孔を通じて逃げるのを防止する或いはかなり減少させるために、編織されたファブリックパネルの編織糸(woven yarn)(又は、繊維)間に形成される開口(又は、ボイド)を満たすことができる。コーティングは、エアバッグパネルの両側に適用されてもよく、或いは、一方側だけに選択的に適用されてもよい。
【0028】
図4の例に示されるように、エアバッグは、内側ファブリックパネル32、外側ファブリックパネル34、及び、接着剤層によって形成される継ぎ目構造30を含むことができる。内側パネル32は、コーティングされない外面(すなわち、接着剤構造(structural adhesive)36の層と反対側の内側パネル32の表面)と、接着剤36の下面38と接触するコーティング40を有する内面とを含んでもよい。外側エアバッグパネル34は、図4に示されるように、コーティングされない外面と、接着剤構造36の上面37と接触して該上面に合わせられてもよいコーティング42を有する内面とを含んでもよい。このように、接着剤構造は、接着剤構造36を介して内側パネル32と外側パネル34とを互いに合わせる縫い目を伴わない継ぎ目構造を形成する。そのような継ぎ目構造、例えば図4の例に示される継ぎ目を構成するために使用される1つの方法は、最初に接着剤構造36の層を内側パネル32の内面に塗布することである。外側パネル34の内面は、接着剤構造36の上面37と接触するように位置してもよい。その後、エネルギ源(例えば、熱、高周波)が継ぎ目構造30に加えられて、継ぎ目構造30の接着剤構造36が硬化(又は、活性化)され、コーティングされたパネルと接着剤構造との間の貼着が高められてもよい。また、クッションを圧縮して、接着剤構造に対するパネルの貼着を更に高めるために、クッションパネルの外面に圧力が加えられてもよい。
【0029】
図5は、内側パネル32、外側パネル34、及び、接着剤36を含むが、コーティング層を伴わず、そのため、接着剤36の上面37が外側パネル34と直接に接触して貼着できるとともに、接着剤36の下面36が内側パネル32と直接に接触して貼着できる、エアバッグ用の継ぎ目構造30の他の例を示している。したがって、内側パネル及び外側パネルは、図5の例に示されるように、接着剤構造36の介在層を使用して互いに直接に合わせられてもよい。
【0030】
他の典型的な実施形態によれば、外側パネル及び内側パネルの両方が内面及び外面の両方にコーティングを含んでもよい。図6は、エアバッグパネルの外面及び内面の両方がコーティングの層を有するように、コーティングを伴って内側パネル32、外側パネル34、及び、接着剤36を含む、エアバッグ用の継ぎ目構造30の他の例を示している。図6の例では、内側パネル32の外面がコーティング44の層を有し、内側パネルの内面がコーティング40の層を有し、一方、外側パネル34は、その内面にコーティング42の層を有するとともに、その外面にコーティング46の層を有する。したがって、内側パネル及び外側パネルは、図6の例に示されるように、接着剤構造の介在層を使用して互いに合わせられてもよい。
【0031】
継ぎ目構造は、接着剤構造の層を含むように構成されてもよい。そのような接着剤層は、例えば、クッションのファブリック部分又はパネルを合わせるためにエアバッグファブリックの部分又はパネル間の介在層として設けられてもよい。接着剤構造の層は、熱硬化シリコン、高粘度ゴム、他の適した材料(例えば、アクリル、ポリウレタン)、又は、材料の任意の組み合わせから形成されてもよい。接着剤構造が両方のパネルに対して同時に塗布されてもよく、或いは、接着剤構造が最初に内側パネルなどの第1のパネルに塗布されてもよく、その後、外側パネルなどの第2のパネルが第1のパネルと反対側の接着剤構造に合わせられ(例えば、接触され)てもよい。また、クッションパネルを貼着して継ぎ目構造を形成する接着剤構造の硬化を容易にする或いは向上させるために、エネルギを入力するプロセスが利用されてもよい。一例によれば、エネルギ源は、熱の形態で、例えば、パネルと接着剤構造との間で適切な接触を確保するために圧縮力と併せて使用されてもよいヒートプレスの形態で入力されてもよい。他の例によれば、エネルギ源は、高周波又はマイクロ波などの波の形態で入力されてもよい。この例は、構造接着ボンドを硬化させるために、制御された温度を必要とする硬化チャンバ又は装置を波放射装置(wave emitting device)と置き換えてもよく、それにより、製造可能性が高まり、より良い効率によってスループットが高まる。他の例によれば、エアバッグクッションパネルに対する接着剤の貼着を高めるために圧力が使用されてもよい。圧力は、単独で使用されてもよく、或いは、硬化を促進するために電波などの他の硬化イネイブラ(curing enabler)と併せて使用されてもよい。例えば、継ぎ目構造は、接着剤構造の層の硬化を容易にするために、所定の圧力が所定の時間にわたって加えられてもよい。また、接着剤構造の層の硬化は、単に時間によって室温で引き起こされてもよく、湿度の増大など、湿度によって引き起こされてもよく、ポリウレタン又はネオプレン材料を使用するときなど、高周波によって引き起こされてもよく、或いは、感圧材料(例えば、アクリルなど)を使用するときなど、圧力によって引き起こされてもよい。
【0032】
本明細書中に記載される継ぎ目構造又は接着剤構造の層は、非対称な或いは変化する断面形状を有してもよく、又は、特定の顧客要件を満たすように仕立てられてもよい複数の部分に設けられてもよい。図7は、接着剤構造60によって接合される内側パネル50及び外側パネル52のファブリック層Fを含むエアバッグの断面の一例を示しており、接着剤構造60は、該接着剤の上面62が外側パネル52と接触して接着し、接着剤の下面64が内側パネル50と接触して接着する。接着剤構造60の層によって形成される継ぎ目構造は、例えば図7の例に示されるような略長方形状の断面を有してもよい。接着剤60の幅Xは、エアバッグの急速膨張とエアバッグの加圧側Pで膨張ガスによってエアバッグが膨張するときの内側パネル50と外側パネル52との間の急速な分離とに対して継ぎ目構造を仕立てる、例えば適合させるべく調整され或いは変化されてもよい。
【0033】
接着剤構造の層の幅(すなわち、上面と下面との長さ)は、例えば膨張ガスによって引き起こされる変化し得るクッション内圧を維持するために、エアバッグのための強度要件に基づいて仕立てられてもよい。例えば、接着剤構造の層の幅Xは3mmと25mmとの間であってもよい。エアバッグ展開中に、エアバッグクッションの内圧は、エアバッグの加圧側Pからの膨張ガスの突然の流入に起因して急速に高まり、そのため、内側パネルと外側パネルとの間の継ぎ目構造で分離力が増大し、それにより、比較的高速で継ぎ目構造(すなわち、接着剤構造と合わせられる各パネルとの間)へ与えられる高い応力がもたらされる。
【0034】
一例によれば、図8の例に示されるように、接着剤構造70の層は、複数のビード(bead)を含むように構成されてもよい。接着剤70の上面76は外側パネル52に接触して接着でき、また、接着剤70の下面74はエアバッグの内側パネル50に接触して接着できる。図8の例に示されるように、接着剤70の層は、エアバッグの内部に近い接着剤の第1のビード72と、エアバッグの外部及び外周縁に近い第2のビード74とを含むことができるが、例えば3つ、4つ、或いは、それ以上の数のビードなど、他の形態及び数のビードが使用されてもよい。各ビードは、本明細書中に記載される形状及び幅を有することができ、また、接着剤の全体の幅は、図7に示される接着剤の例と同じ或いはそれ以上の幅、例えば3−25mm以上の幅であってもよい。ビードは、同じ接着剤から形成されてもよく、或いは、異なる接着剤から形成されてもよい。例えば、エアバッグの内部に近接して位置して膨張ガスに晒される第1のビード72は、第1のビード72によって膨張ガスから遮断されてもよい第2のビード74の接着剤よりも比較的高い耐熱性を有する接着剤から形成されてもよい。例えば、第1のビード72がシリコン接着剤から形成されてもよく、第2のビード74がアクリル接着剤から形成されてもよい。また、内側ビード72は、エアバッグの膨張と内側パネル及び外側パネルの急速な分離とによってもたらされる応力のかなりの部分を吸収するようになっていてもよく、第2のビード74が応力の残りの部分を吸収するように作用する。このように、第1の或いは内側のビードは、膨張力の衝撃に耐えるための犠牲層としての役目を果たすことさえでき、外側ビード又は残りのビードは継ぎ目構造を維持する役目を果たす。この例に記載される継ぎ目構造は、後述する非対称な或いは変化する断面を有する継ぎ目構造に比べて高い強度を与えてもよい。複数のビードが直列に構成され、それにより、1つのビードが1つ或いは2つの他のビードに実質的に隣接しており、また、ビード間に隙間を伴ってビードが互いに離間されてもよく、或いは、ビードが互いに接触するように隣接してもよい。
【0035】
他の例によれば、接着剤構造の層は、例えば、上面82が第1のパネル52と接触して接着し且つ下面84が第2のパネル50と接触して接着する接着剤80の一例を示す図9の例に示されるように、非対称な或いは変化する断面を有してもよい。そのような接着剤80は、長方形の形態を成す層と比べて高い強度を与えてもよい。図9の例に示されるように、接着剤は略台形形状を有することができ、該接着剤の厚さはエアバッグの内側からエアバッグの外側へ減少する。
【0036】
エアバッグ展開中に継ぎ目構造にもたらされる高い応力により、高い分離力及び剥離力に耐えるべく高い強度及び高い接着特性の両方を有する接着剤構造が必要となる。接着剤構造(例えば、高粘度ゴム、熱硬化シリコンなど)は、コーティングされていないままのエアバッグクッションを構成するために使用されるファブリック糸(fabric yarn)用に特に構成されていてもよく、或いは、エアバッグパネルを互いに合わせるために必要な高い強度及び高い接着特性を有するようにコーティングされるエアバッグクッション用に特に構成されてもよい。接着剤構造は、継ぎ目の構造的一体性を与えるとともに、エアバッグパネル間に構造的な組み合わせを与えるために従来のエアバッグが使用する縫い目を排除できる。縫い目が排除されるため、縫い目を縫うプロセスによってエアバッグクッションパネルに形成される針穴により引き起こされる応力集中が排除され、したがって、パネルのデニールを減少させることができる。このように、接着剤構造は、クッションパネルの継ぎ目領域を弱める縫い合わせによって引き起こされる応力集中を排除することにより、より効率の良いエアバッグ構造を可能にする。応力集中は、応力集中を引き起こす縫い目を除去することにより排除され或いは最小限に抑えられてもよい。低デニールパネルは質量が低く、そのため、エアバッグクッションの展開時間を減少させ得る。例えば、低デニールファブリックのパネルと、エアバッグクッションのパネルを合わせるための継ぎ目構造の強度を与える接着剤構造とを含むように構成されるエアバッグクッションは、同じ膨張可能容積を与えるように構成され且つ同じインフレータを伴って構成される更に重いデニールのファブリックから形成される従来のパネルと比べて急速に展開してもよいし、同じ相対クッション強度を依然として与え(すなわち、ほぼ同様の分離力に耐える)てもよい。
【0037】
継ぎ目構造の接着剤構造は、他の材料から形成されてもよく、また、典型的な実施形態によれば、エアバッグクッションの合わせられる隣接パネルよりも強力となるように構成されてもよい。例えば、800N/50mmのファブリック引張強度を有するパネルを伴って構成されるエアバッグは、少なくとも800N/50mmの継ぎ目構造引張強度を有するように構成されてもよい。当業者であれば分かるように、この形態は、限定しようとするものではなく、単なる1つの形態を表わしているにすぎず、また、構造接着継ぎ目を有するエアバッグクッションは、様々な顧客の要求を満たすために様々な強度を有するように仕立てられてもよい。継ぎ目構造によって合わせられたクッションを最も弱い強度部分として有するように構成されるエアバッグが最適なクッション重量を可能にし、最も効率の良い形態を与える。
【0038】
本明細書中に記載されるように、継ぎ目構造は、当分野で使用される様々なエアバッグで使用されてもよい。図10の例に示されるように、図1の車両などの車両のルーフレール内に格納されてそこから展開されてもよいサイドカーテンエアバッグ90は、折り畳んで車両に設置する前の状態で示されている。サイドカーテンエアバッグ90は、膨張ガスをエアバッグクッション92へ供給するためにインフレータカップリング94に合わせられるインフレータ(図示せず)を含んでもよく、エアバッグクッション92は、エアバッグクッションのほぼ全周にわたって延びるとともにクッションの内側の内部テザー(internal tether)でも延びる継ぎ目構造96によって外側パネルに合わせられる内側パネルを含む。継ぎ目構造96は、設置前のエアバッグクッションの折り畳まれない面積及び展開中に膨張ガスにより満たされるエアバッグクッションの展開容積の両方を規定することができる。エアバッグクッションは、従来の材料から形成されてもよく、コーティングされ或いはコーティングされなくてもよい。
【0039】
図11は、自動車の助手席側100の一例を示している。自動車の助手席側100はシート102を含んでもよく、該シートはシートクッション104とシートバック106とを含む。一例によれば、シートバック106は、図11に示されるように、シートバックの側部など、シートバック内に格納されてそこから展開されてもよいサイドインパクトエアバッグモジュール又はシステム110を更に含む。
【0040】
図12は、車両のシート内に格納されてそこから展開されてもよい、折り畳んで車両に設置する前の状態で示される典型的なサイドインパクトエアバッグ110の側面図である。サイドカーテンエアバッグ110は、クッション112と、膨張ガスの発生又は解放によってエアバッグクッション112を膨張させるためにインフレータカップリング114に接続されるインフレータ(図示せず)とを含んでもよい。クッション112は、エアバッグクッション112のほぼ全周にわたって延びる継ぎ目構造116によって合わせられる少なくとも1枚のパネルを含むことができ、継ぎ目構造116は、設置前のエアバッグクッションの折り畳まれない面積及び展開中に膨張ガスにより満たされるエアバッグクッションの展開容積の両方を規定する。本明細書中に記載されるように、エアバッグクッションパネルは、従来の材料から形成されてもよく、コーティングされ或いはコーティングされなくてもよい。
【0041】
本明細書中に記載される継ぎ目構造は、エアバッグクッションの任意の数のパネル間を合わせる任意の数の接着剤構造の層を含むように構成されてもよい。接着剤構造の層(例えば、連続した層)が両方のパネルに対して同時に塗布されてもよく、或いは、接着剤構造の層が最初に第1のパネルに塗布され、或いは合わせられてもよく、その後、第2のパネルが、合わせられる第1のパネル及び接着剤構造に合わせられてもよい。接着剤構造の層は、シリコン、アクリル、又は、必要とされる粘着性及び強度特性を有する他の有用な材料から形成されてもよい。接着剤構造の各層は、クッションの外側パネルの内面に接着するための上面と、上面と反対側に形成され且つクッションの内側パネルの内面に接着するための下面とを含む(図7及び図8の例に示されるような)略長方形形状の断面を有してもよい。接着剤構造の各層の幅(すなわち、上面及び下面の長さ)は、展開中に特定のクッション内圧を維持するために必要とされる強度などのエアバッグのための強度要件に基づいて仕立てられてもよい。接着剤構造の層は、接着剤構造の隣り合う層に近接して或いは接触して位置してもよく、或いは、接着剤構造の隣り合う層同士の間に隙間が存在するように位置してもよい。また、接着剤構造層は、異なるグレードのシリコン接着剤など、異なるグレードの接着剤から形成されてもよい。
【0042】
継ぎ目構造は、クッションの少なくとも1枚のパネル間を合わせる接着剤構造の少なくとも1つの層を含むように構成されてもよい。一例によれば、継ぎ目構造は、エアバッグクッションの任意の2枚のパネル間を合わせる接着剤構造の1つの層を含むように構成されてもよい。接着剤構造の層は、シリコン、アクリル、又は、必要とされる粘着性及び強度特性を有する他の適した貼着可能な材料から形成されてもよい。接着剤構造の層は、クッションの第1のパネルの内面に接着するための上面と、上面と反対側に形成され且つクッションの第2のパネルの内面に接着するための下面とを含む(図9の例に示されるような)略台形形状などの任意の有用な断面を有してもよい。接着剤構造の層の上面は、パネル同士が相対的な角度だけオフセットされるエアバッグ形態に対応するべく、接着剤構造の層の下面に対して任意の角度を成してもよい。
【0043】
当業者であれば分かるように、本明細書中に開示される接着剤構造を伴う継ぎ目構造は、サイドインパクトエアバッグ及びサイドカーテンエアバッグに限定されず、任意のエアバッグで用いるように構成されてもよい。また、本明細書中に開示される接着剤構造を伴う継ぎ目構造は、エアバッグパネルが接着に抗する材料でコーティングされ得る時であってもエアバッグパネルを合わせるために高い接着特性を有するように構成されてもよい。接着剤構造を伴う継ぎ目構造は、継ぎ目の構造的一体性を与えるように構成され、したがって、エアバッグパネル間に構造的な組み合わせを与えるために従来のエアバッグが使用する縫い目を含む必要性が排除される。針で縫うことが排除されることで、縫合工程によってエアバッグクッションパネルに形成される針穴により引き起こされる応力集中が排除され、これにより、パネルの質量を減少させることができ、その結果、コストが低減される。このように、接着剤構造は、クッションパネルの継ぎ目領域を弱める応力集中を排除することにより、より効率の良いエアバッグ構造を可能にする。
【0044】
本明細書中で用いられる用語「おおよそ」、「約」、「ほぼ」、及び、同様の用語は、この開示の主題が関連する当業者による一般的な許容される用法と調和する広義の意味を有するべく意図されている。この開示を精査する当業者であれば分かるように、これらの用語は、記載され、請求された特定の特徴の説明を、これらの特徴の範囲を与えられた正確な数値範囲に限定することなく可能にするように意図されている。したがって、これらの用語は、記載され、請求された前述した主題の実体のない或いはささいな改良又は変更が、添付の請求項に記載される本発明の範囲内に入ると見なされることを示唆するように解釈されるべきである。
【0045】
なお、様々な実施形態を説明するために本明細書中で使用される用語「典型的な」は、そのような実施形態が想定し得る実施形態の想定し得る例、表示、及び/又は、例示であることを示唆するべく意図される(また、そのような用語は、そのような実施形態が必然的に特別な或いは最高の実施例であることを暗示するように意図されない)ことに留意すべきである。
【0046】
本明細書中で使用される用語「合わせられる」、「接続される」等は、2つの部材を互いに直接的にあるいは間接的に接合することを意味する。そのような接合は、固定されてもよく(例えば、取り外し不能)或いは移動できてもよい(例えば、取り外し可能又は解放可能)。そのような接合は、2つの部材によって、或いは、互いに一体に或いは2つの部材と一体に単一の一体物として形成される任意の更なる中間部材と2つの部材とによって、或いは、互いに取り付けられる任意の更なる中間部材と2つの部材とによって達成されてもよい。
【0047】
本明細書中での要素の位置への言及(例えば、「上」、「下」、「よりも上側」、「よりも下側」など)は、単に図面中の様々な要素の方向を説明するために使用される。なお、様々な要素の方向が他の典型的な実施形態にしたがって異なってもよく、また、そのような変化が本開示によって包含されるように意図されることに留意すべきである。
【0048】
様々な典型的な実施形態に示されるエアバッグの構造及び配置が単なる例示であることに留意することは重要である。この開示では幾つかの実施形態のみについて詳しく説明してきたが、この開示を精査する当業者であれば容易に分かるように、本明細書中に記載される主題の新規な教示内容及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの変形が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの値、取り付け方法、材料の使用、色、方向などの変更)。例えば、一体に形成されるように示される要素が複数の部分又は要素から構成されてもよく、要素の位置が逆にされ或いは変えられてもよく、また、別個の要素又は位置の性質又は数が変更され或いは異なってもよい。任意のプロセス又は方法ステップの順序又は並びが別の実施形態にしたがって変更され或いは並べ直されてもよい。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な典型的実施形態の構造、動作状態、及び、配置において、他の置き換え、修正、変更、及び、省略がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭乗者を保護するためのエアバッグであって、
インフレータブルチャンバと、
前記インフレータブルチャンバの壁を形成するファブリックパネルと、
前記ファブリックパネル上に位置し、前記インフレータブルチャンバの境界を形成し、接着剤のみを含む継ぎ目構造と、を備えるエアバッグ。
【請求項2】
前記ファブリックパネルが約100〜400未満のデニールを有する請求項1のエアバッグ。
【請求項3】
前記ファブリックパネルが約100〜315のデニールを有する請求項2のエアバッグ。
【請求項4】
前記ファブリックパネルが約210のデニールを有する請求項2のエアバッグ。
【請求項5】
前記継ぎ目構造が接着剤の少なくとも2つのビードを含む請求項1のエアバッグ。
【請求項6】
前記ビードが同じ接着剤から形成される請求項5のエアバッグ。
【請求項7】
前記ビードが異なる接着剤から形成される請求項6のエアバッグ。
【請求項8】
前記ビードのうちの1つが、インフレータブルチャンバに隣接して位置し、エアバッグを膨張させるために使用される膨張ガスに晒されるように構成されるとともに、他のビードの接着剤よりも大きい耐熱性を有する接着剤を備える請求項7のエアバッグ。
【請求項9】
前記接着剤が非対称な断面を有する請求項1のエアバッグ。
【請求項10】
第2のファブリックパネルを備え、
前記継ぎ目構造が、少なくとも2つのファブリックパネルが互いに接合されるエアバッグの縁部に位置する請求項1のエアバッグ。
【請求項11】
前記継ぎ目構造がインフレータブルチャンバによって取り囲まれる請求項1のエアバッグ。
【請求項12】
前記ファブリックパネルに塗布されるコーティングを更に備え、該コーティングが接着剤と直接に接触する請求項1のエアバッグ。
【請求項13】
前記接着剤が前記ファブリックパネルと直接に接触する請求項1のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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