説明

エア注入バルブおよび車両のホイールアッセンブリ

【課題】 横装填式かつランフラット式のホイールアッセンブリにおいて、エアの再注入経路を確保する。
【解決手段】 ホイールアッセンブリは、ホイールAと、ホイールAのリム本体11に装着されたエア注入バルブ40と、リム本体11の外周に装着されたタイヤCおよび環状のランフラット用中子Bとを装備している。リム本体11のほぼ円筒形状をなす中間領域の外周面には、その全周のうちの一箇所に収容凹部18が設けられ、この収容凹部18にエア注入バルブ40のヘッド部41が収容され、収容凹部18の底壁をエア注入バルブ40の管部42が貫通している。管部42の第1エア通路43に対して、ヘッド部41の第2エア通路44がほぼ直交して連なり、その先端がヘッド部41の外周面に開口している。第2エア通路44の先端が開口する面部分と収容凹部18の内周面との間には、エアが吹出すための吹出空間18xが形成され、この吹出空間18xがタイヤC内部の空間に連通している.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールに装着されタイヤへの空気充填に用いられるエア注入バルブの構造の改良に関し、さらにこの改良されたエア注入バルブを装備した車両のホイールアッセンブリの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、横装填式かつランフラット式の車両のホイールアッセンブリは公知である。
横装填式とは、タイヤを傾けることなく、軸方向に移動させだけでホイールに装填できる構造を言う。この構造では、ホイールのリムは、リム本体とサイドリングとを有している。リム本体の一方の周縁部にはリムフランジ部が形成されており、他方の周縁縁にはサイドリング装着部が形成されている。そしてリム本体にタイヤを装填した後に、サイドリングを装着してタイヤの脱落を防いでいる。このような横装填式の構造を採用する場合、リム本体はタイヤ装着のためのリムドロップ部を有さず、中間の比較的広い領域にわたってほぼ円筒形状をなしている。
【0003】
ランフラット式とは、タイヤのエア圧が低下した時でも車両を安定して走行可能にする構造を言う。その構造では、リムの外周に環状の中子を装着し、エア圧低下の際には変形したタイヤを中子で支えるようになっている。この中子は、緩衝パッドとこの緩衝パッドを介してリムに装着される中子本体とを備えているのが一般的である。
【0004】
上記横装填式かつランフラット式のホイールアッセンブリでは、エア注入バルブとランフラット用中子との干渉が問題となる。横装填式ではリム本体の円筒または円筒に近い領域にエア注入バルブを装着するため、エア注入バルブのヘッド部(エア吹出部)がリム本体の外周面から突出して中子の緩衝パッドと干渉するのである。
そのため、上記特許文献1では、リム本体の外周と中子の緩衝パッドの内周に、対峙する環状溝をそれぞれ形成し、これら環状溝間にエア注入バルブのヘッド部を収容させている。
【特許文献1】特開平10−211807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成では、エア圧低下時に車両を走行させると緩衝パッドが変形してヘッド部の頂面に開口するエア通路を塞いだり、中子がリム幅方向にずれて緩衝パッドがヘッド部の頂面に乗りエア通路を塞ぐため、再度のエア注入が困難になる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、車両のホイールのリム外周側に配置されるヘッド部と、このリムを貫通してリム内周から突出する管部とを備えたエア注入バルブにおいて、上記管部の第1エア通路に対して、上記ヘッド部の第2エア通路がほぼ直交して連なり、その先端が上記ヘッド部の外周面に開口していることを特徴とする。
この構成によれば、第2エア通路からの圧縮エアがヘッド部の頂面ではなく外周面から吹出すようにしたため、横装填式,ランフラット式のホイールアッセンブリに用いた場合に、緩衝パッドがヘッド部の外周面に接しても、ヘッド部の第2エア通路が塞がらず、エア注入経路を確保することができる。
【0007】
好ましくは、上記第2エア通路が複数形成されている。これによりエア注入経路をより一層確実に維持することができる。
【0008】
さらに本発明は、ホイールと、このホイールのリムに装着された上記構成のエア注入バルブと、このリムの外周に装着されたタイヤおよび環状のランフラット用中子とを装備し、上記リムが、一方の周縁部にリムフランジ部を有し他方の周縁部にサイドリング装着部を有するリム本体と、このリム本体のサイドリング装着部に装着されるサイドリングとを備え、上記中子が、弾性材からなる緩衝パッドと、この緩衝パッドを介してリム本体の外周に装着される中子本体とを備えた車両のホイールアッセンブリにおいて、上記リム本体のほぼ円筒形状をなす中間領域の外周面には、その全周のうちの一箇所に収容凹部が設けられ、上記エア注入バルブのヘッド部が上記リム本体の収容凹部に収容され、上記エア注入バルブの管部がこの収容凹部の底壁を貫通してリム本体内周から突出しており、上記ヘッド部の外周面において第2エア通路の先端が開口する面部分と収容凹部の内周面との間には、エアが吹出すための吹出空間が形成され、この吹出空間がタイヤ内部の空間に連通していることを特徴とする。
この構成によれば、エア注入バルブのヘッド部の頂面に接しても、第2エア通路を塞ぐことがなく、圧縮エアを第2エア通路から吹出空間に吹出してタイヤに充填させることができる。
【0009】
好ましくは、上記収容凹部が上記リム本体のいずれか一方の周縁部に近接して設けられ、上記中子の緩衝パッドが上記収容凹部とエア注入バルブのヘッド部の一部を覆い、上記吹出空間が、上記タイヤのビード部と緩衝パッドの間の空隙を介してタイヤ内部の空間に連なる。
この構成によれば、吹出空間に吹出した圧縮エアをタイヤのビード部と緩衝パッドの間の空隙を介してタイヤに充填させることができる。
【0010】
好ましくは、上記リム本体の外周には周方向に延びるとともに上記収容凹部の吹出空間に連なる連通溝が形成され、上記緩衝パッドの上記収容凹部側の周縁部には、緩衝パッドの厚み方向に貫通する切欠が形成され、この切欠が上記リム本体の連通溝に連なる。
これによれば、中子がリムの幅方向に位置ずれしてタイヤビード部と緩衝パッドとの間の空隙が無くなった場合でも、吹出し空間に吹出した圧縮エアをリム本体の連通溝と緩衝パッドの切欠を介してタイヤに充填させることができる。
さらに好ましくは、上記リムの収容凹部の内周面はほぼリム幅方向に延びる一対の平坦な係止面を有し、上記エア注入バルブのヘッド部の外周面もほぼリム幅方向に延びる一対の平坦な係止面を有し、これら係止面同士が当たることにより、上記ヘッド部が回り止めされており、上記エア注入バルブの第2エア通路は2本形成されてほぼリム幅方向に延びる直線上に配置され、 上記収容凹部内周面とヘッド部外周面との間には、上記2本の第2エア通路に対応して2つの吹出空間が形成され、これら2つの吹出空間は上記係止面と隣接する浅い切欠を介して連なっており、上記連通溝はタイヤのビード部に近い方の吹出空間に連なっている。これによれば、ヘッドの回り止めをしても、2つの第2エア通路,2つの吹出空間を介して圧縮エアを充填することができる。
【0011】
好ましくは、上記緩衝パッドの内周には周方向に延びるとともに上記収容凹部の吹出空間に連なる連通溝が形成され、上記緩衝パッドの上記収容凹部側の周縁部には、緩衝パッドの厚み方向に貫通する切欠が形成され、この切欠が上記緩衝パッドの連通溝に連なる。
これによれば、中子がリムの幅方向に位置ずれしてタイヤビード部と緩衝パッドとの間の空隙が無くなった場合でも、吹出空間に吹出した圧縮エアを緩衝パッドの連通溝と切欠を介してタイヤに充填させることができる。
【0012】
本発明の一態様では、上記リム本体は、上記リムフランジ部を有する筒部材と、上記サイドリング装着部を有する筒部材と、これら筒部材間に配置された中間の筒部材とを有し、隣接する筒部材同士が溶接されており、中間の筒部材は、円筒面をなす外周面を有するとともに、全周にわたって内周側に突出する厚肉部を有し、この厚肉部に上記収容凹部が形成されている。
これにより、リム本体は複雑な断面形状でありながら、容易に製作することができる。
【0013】
他の態様では、上記リム本体の中間領域に穴が形成され、この穴を塞ぐ閉塞板の周縁部がリム本体の内周面に溶接され、これら穴と閉塞板とで、上記収容凹部が形成されている。
これによれば、収容凹部を形成するためにリム本体に全周にわたる厚肉部を形成せずに済み、リム本体の軽量化,低コスト化を図ることができる。
【0014】
さらに他の態様では、上記リム本体の中間領域に穴が形成され、この穴を閉塞部材で塞ぐようになっており、この閉塞部材は、底壁とこの底壁から起立する挿入部とを有し、底壁の周縁部が挿入部外周面から張り出しており、上記閉塞部材の挿入部が上記穴に挿入され、挿入部の周縁部とリム本体の外周面側の穴周縁とが溶接されるとともに、上記底壁の周縁部とリム本体の内周面とが溶接され、この挿入部に上記収容凹部が形成されている。
これによれば、リム本体の軽量化,低コスト化を図ることができるとともに、2箇所の溶接により閉塞部材のリム本体への固定および両者の間の気密性を確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エア注入経路を確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6を参照しながら説明する。図1は車両のホイールアッセンブリの要部を示す。このホイールアッセンブリは、ホイールAとランフラット用中子BとタイヤCとを備えている。
【0017】
ホイールAは、リム10とディスク20とを有している。リム10は、上記中子BとタイヤCを中心軸に沿って移動させることにより装着可能な構造いわゆる横装填式構造をなしている。
【0018】
上記横装填式リム10の構成を概略的に説明すると、リム10は、リム本体11と、サイドリング12とを有している。リム本体11の一方側(図1の左側)の周縁部にはリムフランジ部11aとこれに隣接するビードシート部11bが形成されており、他方側(図1の右側)の周縁部(ディスク20の外周縁を溶接した周縁部)にはサイドリング装着部11cが形成されている。
【0019】
リム本体11は通常のホイールに見られるようなリムドロップを含んでおらず、上記左右の周縁部間の中間領域は円筒形状をなしている。この中間領域において、サイドリング装着部11c側の比較的狭い領域11xは、緩衝パッド32の位置決めのためにリムフランジ部11a側の比較的広い領域11yに比べて若干小径をなし、サイドリング装着部11cと同径をなしている。これら領域11x,11yの外周面は円滑な円筒面をなしている。なお、この領域11xは、サイドリング装着部11cとともに領域11yと同径であってもよいし、領域11y,サイドリング装着部11cより小径であってもよい。
【0020】
タイヤCは、中子Bを収容した状態でリム本体11の右側から装填される。この装填後にリム本体11のサイドリング装着部11cにサイドリング12を装着し、さらにロックリング13を装着してサイドリング12の抜け止めを行なう。なお、リム本体11外周とサイドリング12との間にはシールリング14が介在される。
【0021】
上記サイドリング12は、リムフランジ部12aとビードシート部12bとを有している。タイヤCのビード部はビードシート部11b,12bに乗り、リムフランジ部11a,12aに係止されている。
【0022】
上記中子Bは環状をなし、剛性のある中子本体31とゴム等の弾性材からなる緩衝パッド32とを有している。中子本体31は複数の部材を連結してなり、緩衝パッド32を介してリム本体11を締め付けるようになっている。緩衝パッド32の外周面には中子本体31の内周側を収容する広くて浅い環状の凹部32aが形成されており、両者間の横ずれが防止されている。緩衝パッド32は、リム本体11の領域11yの全領域と、領域11xの過半の領域に接している。
【0023】
次に、本発明の要部をなすエア注入バルブ40(以下、単にバルブと称す)と、このバルブ40を装着するための特殊なリム10の構造について詳述する。
図1に示すように、バルブ40は、リム10の外周側に配置されたヘッド部41(エア吹出部)と、リム10を貫通する管部42(エア注入部)とを有している。
【0024】
上記バルブ40のヘッド部41は平板状をなし、図4に示すように、その外周面は互いに平行をなして直線的に延びる2つの係止面41aと2つの円弧面41bとを有している。
【0025】
図1に示すように、上記バルブ40の管部42は鈍角に折れ曲がった形状をなし、2つの真直部42a,42bを有している。ヘッド部41側の真直部42aはヘッド部41と直交している。
【0026】
図2に示すように、上記管部42は全長にわたる第1エア通路43を有している。上記ヘッド部41は、第1エア通路43と直交してヘッド部41の径方向に延びる第2エア通路44を有している。第1エア通路43の先端は管部42の先端で開口し、キャップ45で閉じられている。真直部42bには、逆止弁が設けられている。
【0027】
図2、図4に示すように、上記第2エア通路44は第1エア通路43を起点にして2本形成されており、一直線上に配置されている。これら第2エア通路44の先端は、ヘッド部41の2つの円弧面41bにそれぞれ開口している。
【0028】
次に、上記バルブ40を装着するためのリム10の構造について説明する。図1〜図3に示すように、上記リム本体11は、3つの筒部材15,16,17を溶接することにより得られる。図2において溶接部を符号11wで示す。
【0029】
左側の筒部材15は、上述のリムフランジ部11a,ビードシート部11bを有するとともに、径の大きな中間領域11yと、径の小さな中間領域11xの一部を有している。また、右側の筒部材17はサイドリング装着部11cを有している。
【0030】
中間の筒部材16は、径の小さな中間領域11xの大部分を構成し、内周側に突出する厚肉部16aを有している。中間の筒部材16の外周面は、円滑な円筒面をなして左右の筒部材15,17の隣接部位と面一をなしている。
【0031】
図2〜図5に良く示されているように、上記筒部材16の厚肉部16aの外周面には、その全周のうちの一箇所に収容凹部18が形成されている。この収容凹部18に上記バルブ40のヘッド部41が収容されている。収容凹部18の深さはヘッド部41の厚さとほぼ等しく、そのためヘッド部41の頂面は筒部材16の外周面とほぼ面一となっている。
【0032】
上記収容凹部18の底壁はリム本体11の径方向と直交する平板形状をなしている。換言すれば、収容凹部18の底面は、リム本体11の径方向と直交する平坦面をなしている。
上記収容凹部18の底壁には貫通孔18hが形成されており、この貫通孔18hをバルブ40の管部42が貫通してリム10の内周から突出している。この管部42の真直部42aには、雄ネジが形成されており、この雄ネジに螺合するナット47を締め付けることにより、収容凹部18の底壁をバルブ40のヘッド部41とナット47で挟むようになっている。これにより、エア注入バルブ40の固定がなされている。
収容凹部18の底壁とバルブ40のヘッド部41との間は、Oリング45でシールされている。
【0033】
図4に最も良く示されているように、上記収容凹部18の内周面は、互いに平行をなしてほぼリム幅方向に直線的に延びる2つの係止面18aと、2つの円弧面18bとを有している。2つの係止面18aの間隔は上記バルブ40のヘッド部41の2つの係止面41aの間隔とほぼ同じか若干広く、これら係止面18a,41aが当たることにより、バルブ40の回り止めがなされている。
【0034】
上記収容凹部18の2つの円弧面18b間の間隔はヘッド部41の2つの円弧面41b間の間隔より広く、そのためヘッド部41の収容凹部18への収容状態において、円弧面18b,41b間に、空気が吹出す吹出空間18xが形成されている。2つの吹出空間18xは、ヘッド部41を介してリム幅方向に対峙している。
【0035】
上記収容凹部18は更に、上記係止面18bに隣接するとともに両端が上記一対の吹出空間18xに連なる浅い切欠18yを有している。
【0036】
上記リム本体11の筒部材16の外周面には、一方の(サイドリング12側の)吹出空間18xおよび切欠18yの端部に連なる溝19が周方向に全周にわたって形成されている。
【0037】
上記中子Bの正常な装着状態では、緩衝パッド32は、収容凹部18を部分的に塞ぐとともに、収容状態のヘッド部41を部分的に覆うようになっている。緩衝パッド32は、リム本体11の外周面に接するとともにヘッド部41の頂面にも接している。
【0038】
上記緩衝パッド32のサイドリング12側の周縁とサイドリング12およびタイヤCのビード部との間には空隙50が形成されている。上記サイドリング12側の吹出空間18xは緩衝ビード32に塞がれず開放されており、上記空隙50を介してタイヤCの内部空間に連通されている。
【0039】
上記緩衝パッド32のサイドリング12側の周縁部には、周方向に等しい間隔,例えば60°間隔で切欠32xが形成されている。これら切欠32xはサイドリング12側に開放されるとともに、緩衝パッド32の肉厚方向に貫通している。
なお、中子Bの正常な装着状態では、複数の切欠32xの1つをリム本体11の収容凹部18に対応させるのが好ましい。
【0040】
本実施形態では、緩衝パッド32の内周面にも、上記切欠32xに連なる連通溝32yが全周にわたって形成されている。
【0041】
上記構成をなすホイールアッセンブリの作用について説明する。上述したようにタイヤC,中子Bをリム10に装着し、サイドリング12等を装着した後で、バルブ40の管部42の先端から圧縮エアを注入する。注入された圧縮エアは、第1エア通路43および2つの第2エア通路44を通り、2つの吹出空間18xへ吹出す。
【0042】
一方(サイドリング12側)の吹出空間18xに吹出された圧縮空気は、緩衝パッド32のサイドリング12側の周縁部とサイドリング12およびタイヤCのビード部との間の空隙50を通って、タイヤCに充填される。他方(サイドリング12の反対側)の吹出空間18xに吹出された圧縮空気は、切欠18yを通り更に上記空隙50を通ってタイヤCに充填される。
【0043】
なお、中子Bが正常装着状態にあり、緩衝パッド32の切欠32xの1つが収容空間18に対応した位置にある状態では、吹出空間18xに吹出した圧縮空気はこの切欠32xをも通ってタイヤCに充填される。
【0044】
タイヤCのエア圧が低下した時には、タイヤCは車両重量により変形する。この際、リム11に装着された中子BがタイヤCを介して車両重量を受け持つことができ、車両をエア注入可能な場所まで安定して走行させることができる。
【0045】
上記中子Bによる走行後にタイヤCへのエアの再充填がなされる。この走行時に緩衝パッド32が変形することがあるが、エアの再充填に支障は生じない。本実施形態ではヘッド部41の第2エア通路44がヘッド部41の頂面ではなく外周面に開口しているので、緩衝パッド32の変形によって第2エア通路44が塞がれることはなく、圧縮エアの注入経路を確保できるからである。
【0046】
また、図6に示すように中子Bがリム10の軸方向にずれて、緩衝パッド32のサイドリング12側の周縁部がタイヤCのビード部に当たったり、サイドリング12に当たると、緩衝パッド32とタイヤCとの間の空隙50(図2参照)が無くなる。また、上記中子Bが周方向にもずれて、緩衝パッド32の切欠32xがリム10の収容空間18と一致しなくなることもある。
【0047】
上記のように空隙50が無くなる場合でも、吹出空間18xに吹出した圧縮エアはタイヤCへの再充填が可能である。吹出空間18xに吹出した圧縮エアは、リム本体11の外周に形成した連通溝19または緩衝パッド32の内周面に形成した連通溝32yを通り、さらに緩衝パッド32の切欠32xを通ってタイヤCに充填できるからである
【0048】
なお、本実施形態ではリム本体11を3つの筒部材により構成したが、その理由を説明する。リム本体11には収容凹部18を形成するための厚肉部を必要とするが、リム本体11の左右周縁部は複雑な断面形状をなしているので、この厚肉部を付加すると、リム本体全体の断面形状が複雑さを増し、製作するのに困難が伴なう。そこで、厚肉部16aを必要とする中間の領域を左右領域とは別部材にし、その結果として3つの筒部材15〜17となったのである。
ただし、リム本体11を3つの筒部材15〜17ではなく1つの筒部材により構成してもよい。また、中間の筒部材16と左右いずれか一方の筒部材15,17に相当する領域を1つの筒部材により構成してもよい。
【0049】
以下、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。これら実施形態において先行して説明する実施形態に対応する構成部については、図中同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
図7〜図9に示す第2実施形態では、リム本体11はほぼ均等厚さの1つの筒部材により形成されている。収容凹部18は、リム本体11の領域11xに形成した穴60と、この穴60をリム本体11の内周側から塞ぐ閉塞板61とで画成されている。閉塞板61は円形の平板形状をなしその周縁部がリム本体11の内周面に溶接されている。この閉塞板61は収容凹部18の底壁を構成し、ヘッド部41を設けるための平坦な底面を提供する。
【0051】
図10〜図12に示す第3実施形態でも、リム本体11はほぼ均等厚さの1つの筒部材により形成されている。リム本体11の領域11xに円形の穴65が形成され、この穴65にソケット66(閉塞部材)が挿入されている。このソケット66は、底壁66aと、この底壁66aから起立する低い円柱形状の挿入部66bとを有している。底壁66aの周縁部は、挿入部66bの外周面から張り出している。ソケット66の挿入部66bを挿入した状態で、底壁66aの周縁部をリム本体11の内周面に溶接するとともに、挿入部66bの周縁部をリム本体11の外周面における穴65周縁に溶接することにより、ソケット66がリム本体11に固定されている。
なお、上記挿入部66bの外周面からの張り出し部は、挿入深さを一定にする役割を担うが、無くてもよい。
【0052】
上記挿入部66bの頂面は、リム本体11の領域11xの外周面とほぼ面一をなしている。上記挿入部66bには、収容凹部18が形成されるとともに、この収容凹部18をリム本体11の連通溝19に連ねるための短い溝66xが形成されている。
【0053】
図13に示す第4実施形態では、ほぼ均等厚さの1つの筒部材からなるリム本体11をプレス加工することにより、収容凹部18が形成されている。
図14に示す第5実施形態では、ヘッド部41には第2エア通路44のみならず、ヘッド部41の頂面に開口する第3エア通路44Aが形成されている。この第3エア通路44Aは、第1エア通路43の延長線上に配置され、第2エア通路44と直交している。
【0054】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、中子の位置ずれが比較的少量に留まること等により、この位置ずれがあっても吹出空間18xが緩衝パッド32で完全に塞がらず、緩衝パッド32とタイヤビード部との間の空隙50が確保できる場合には、連通溝19,32yや切欠32xは省いてもよい。また、連通溝19、32yのいずれか一方形成するだけでもよい。
連通溝19、32yは、緩衝パッドの複数の切欠32xの間隔以上あれば、全周になくてもよい。
吹出空間18xを画成する対峙面18b,41bは円弧面でなくてもよい。
また、バルブ40の回り止め構造は省略してもよい。この場合、ヘッド部41外周面と収容凹部18内周面とは全周にわたって離間していてもよい。
収容凹部18はサイドリング12の反対側のリムフランジ部11aに近づけるように設けてもよい。
第2エア通路は、第1エア通路の端から一方向に延びて、外周面の1箇所に開口するようにしてもよい。この場合、この第2エア通路の開口端に連なる吹出空間は1箇所に形成するだけでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態をなすエア注入バルブ付き車両用ホイールアッセンブリの一部を示す断面図である。
【図2】同実施形態のホイールアッセンブリの要部を拡大して示す断面図である。
【図3】同実施形態のリム本体の収容凹部を拡大して示す断面図である。
【図4】同実施形態の収容凹部の平面図である。
【図5】図4中V−V線に沿う収容凹部の断面図である。
【図6】同実施形態において、中子がホイールの周方向および軸方向にずれた状態を示す図2相当図である。
【図7】本発明の第2実施形態をなすホイールアッセンブリの要部拡大断面図である。
【図8】同第2実施形態の収容凹部の平面図である。
【図9】図8中IX−IX線に沿う収容凹部の断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態をなすホイールアッセンブリの要部拡大断面図である。
【図11】同第3実施形態の収容凹部の平面図である。
【図12】図11中XII−XII線に沿う収容凹部の断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態をなす収容凹部の拡大断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態をなすバルブの縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
A ホイール
B 中子
C タイヤ
10 リム
11 リム本体
11a リムフラジ部
11x,11y 中間のほぼ円筒形状をなす領域
12 サイドリング
15〜17 筒部分
16a 厚肉部
18 収容凹部
18a 係止面
18x 吹出空間
18y 切欠
19 連通溝
31 中子本体
32 緩衝パッド
32x 切欠
32y 連通溝
40 エア注入バルブ
41 ヘッド部(エア吹出部)
41a 係止面
42 管部(エア注入部)
43 第1エア通路
44 第2エア通路
50 空隙
60 穴
61 閉塞板
65 穴
66 ソケット(閉塞部材)
66a 底壁
66b 挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールのリム外周側に配置されるヘッド部と、このリムを貫通してリム内周から突出する管部とを備えたエア注入バルブにおいて、
上記管部の第1エア通路に対して、上記ヘッド部の第2エア通路がほぼ直交して連なり、その先端が上記ヘッド部の外周面に開口していることを特徴とするエア注入バルブ。
【請求項2】
上記第2エア通路が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエア注入バルブ。
【請求項3】
ホイールと、このホイールのリムに装着された請求項1または2に記載のエア注入バルブと、このリムの外周に装着されたタイヤおよび環状のランフラット用中子とを装備し、
上記リムが、一方の周縁部にリムフランジ部を有し他方の周縁部にサイドリング装着部を有するリム本体と、このリム本体のサイドリング装着部に装着されるサイドリングとを備え、
上記中子が、弾性材からなる緩衝パッドと、この緩衝パッドを介してリム本体の外周に装着される中子本体とを備えた車両のホイールアッセンブリにおいて、
上記リム本体のほぼ円筒形状をなす中間領域の外周面には、その全周のうちの一箇所に収容凹部が設けられ、
上記エア注入バルブのヘッド部が上記リム本体の収容凹部に収容され、上記エア注入バルブの管部がこの収容凹部の底壁を貫通してリム本体内周から突出しており、上記ヘッド部の外周面において第2エア通路の先端が開口する面部分と収容凹部の内周面との間には、エアが吹出すための吹出空間が形成され、この吹出空間がタイヤ内部の空間に連通していることを特徴とする車両のホイールアッセンブリ。
【請求項4】
上記収容凹部が上記リム本体のいずれか一方の周縁部に近接して設けられ、上記中子の緩衝パッドが上記収容凹部とエア注入バルブのヘッド部の一部を覆い、上記吹出空間が、上記タイヤのビード部と緩衝パッドの間の空隙を介してタイヤ内部の空間に連通していることを特徴とする請求項3に記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項5】
上記リム本体の外周には周方向に延びるとともに上記収容凹部の吹出空間に連なる連通溝が形成され、
上記緩衝パッドの上記収容凹部側の周縁部には、緩衝パッドの厚み方向に貫通する切欠が形成され、この切欠が上記リム本体の連通溝に連なることを特徴とする請求項4に記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項6】
上記リムの収容凹部の内周面はほぼリム幅方向に延びる一対の平坦な係止面を有し、上記エア注入バルブのヘッド部の外周面もほぼリム幅方向に延びる一対の平坦な係止面を有し、これら係止面同士が当たることにより、上記ヘッド部が回り止めされており、
上記エア注入バルブの第2エア通路は2本形成されてほぼリム幅方向に延びる直線上に配置され、
上記収容凹部内周面とヘッド部外周面との間には、上記2本の第2エア通路に対応して2つの吹出空間が形成され、これら2つの吹出空間は上記係止面と隣接する浅い切欠を介して連なっており、上記連通溝はタイヤのビード部に近い方の吹出空間に連なっていることを特徴とする請求項5に記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項7】
上記緩衝パッドの内周には周方向に延びるとともに上記収容凹部の吹出空間に連なる連通溝が形成され、
上記緩衝パッドの上記収容凹部側の周縁部には、緩衝パッドの厚み方向に貫通する切欠が形成され、この切欠が上記緩衝パッドの連通溝に連なることを特徴とする請求項4に記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項8】
上記リム本体は、上記リムフランジ部を有する筒部材と、上記サイドリング装着部を有する筒部材と、これら筒部材間に配置された中間の筒部材とを有し、隣接する筒部材同士が溶接されており、中間の筒部材は、円筒面をなす外周面を有するとともに、全周にわたって内周側に突出する厚肉部を有し、この厚肉部に上記収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項9】
上記リム本体の中間領域に穴が形成され、この穴を塞ぐ閉塞板の周縁部がリム本体の内周面に溶接され、これら穴と閉塞板とで、上記収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の車両のホイールアッセンブリ。
【請求項10】
上記リム本体の中間領域に穴が形成され、この穴を閉塞部材で塞ぐようになっており、この閉塞部材は、底壁とこの底壁から起立する挿入部とを有し、底壁の周縁部が挿入部外周面から張り出しており、
上記閉塞部材の挿入部が上記穴に挿入され、挿入部の周縁部とリム本体の外周面側の穴周縁とが溶接されるとともに、上記底壁の周縁部とリム本体の内周面とが溶接され、この挿入部に上記収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の車両のホイールアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−326383(P2007−326383A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157021(P2006−157021)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】