説明

エキスパンデッド・メタル・フィルタ

管状フィルタを製造するために、エキスパンデッド・メタル・シートが使用される。エキスパンデッド・メタル・シートは、シートがそれ自体で巻かれたときに入れ子状態を減少させるように配列された開口部の多数の列を有する。特に、開口部のサイズ、または開口部の列の間のピッチおよび開口部のサイズの両方は、エキスパンデッド・メタル・シートが巻かれたときに、入れ子状態を減少させるように様々である。前記フィルタは、外周溝、点荷重プロセスにより生じる丸コーナ、開口部間のテキスチャー付き表面、および/またはエキスパンデッド・メタル・シートの非穿孔区域により生じる蛇行内部通路を含み得る。エキスパンデッド・メタル・シートは、高い熱伝導率を有する材料、例えば、スズが被覆された炭素鋼からなっていて差し支えない。中でも、前記フィルタは、自動車のエアバッグ用のインフレータの装薬により生じる熱を吸収し、スラグを捕捉するために、インフレータに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国法典第35編第119条(e)項の下、2006年9月21日に出願された米国仮特許出願第60/846381号および2006年10月14日に出願された米国仮特許第60/851719号の優先権を主張し、2008年3月27日に国際公開第2008/036788号パンフレットとして英語で発行された、2007年9月20日に出願された国際出願第PCT/US2007/078971号の一部継続出願である、2009年3月19日に出願された同時係属出願である米国特許出願第12/407204号の一部継続出願である。米国特許出願第12/407204号、国際出願第PCT/US2007/078971号、および米国仮特許出願第60/846381号と同第60/851719号の内容をここにその全てを引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、エキスパンデッド・メタル・シート(expanded metal sheet)であって、シートがそれ自体で巻かれたときに開口部が揃い入れ子状態(nest)になりにくいように、変更可能なサイズの開口部、変更可能な開口部ピッチ、または変更可能なサイズの開口部と変更可能な開口部ピッチの両方を有するエキスパンデッド・メタル・シート、そのシートを製造する方法、そのシートから製造されたフィルタ、およびそのフィルタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
A. エキスパンデッド・メタル・シート
エキスパンデッド・メタル・シートには、消火活動に使用するためのマットから、自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタまで、様々な用途が見出されている。このシートは、様々な様式で製造できる。例えば、エキスパンデッド・メタル・シートは、金属シートを用意し、そのシートを刺して多数のスリットを生成し、このスリットの方向に対して垂直にシートを引っ張ってスリットを引き延ばし、シートに開口部を提供することによって、製造できる。エキスパンデッド・メタル・シートを製造するための別の一般的な方法は、穴を開け、開口部を冷間成形することによるものである。この開口部は、その最終形状のためにしばしば「ダイヤモンド」と呼ばれる。穴を伴うシートの最終長さは元の長さより長く、よって、シートは広げられて(エキスパンデッドされて)おり、形成された開口部もまた広げられている。
【0004】
それゆえ、詳細は特定のプロセスに依存して様々であるが、エキスパンデッド・メタル・シートは、典型的に、シートに穿孔を生成するためにパンチの歯またはビットの列を使用することにより製造される。パンチに面するシートの側は、穿孔の周りに凹みを有し、シートの反対側は、穿孔の周りに対応する隆起部分であるまくれを有する。穿孔の規則性により、シートが積み重ねられたり、丸められたり、巻かれたり、または他の様式で重なる関係に配置されたときに、穿孔が入れ子状態(nesting)になり、まくれの存在が、入れ子配置でその構造を係止し得る。各穿孔に伴うまくれは、エキスパンデッド・メタル・シートが容易に摺動しないように、特に、同様のシートの周りに丸められたり巻き上げられたりしたときで、それ自体と接触していないときに、摩擦の増加した区域も形成する。
【0005】
B. 自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタ
自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタは、多数の厳しい基準を満たす必要がある。そのようなフィルタは、エアバッグの装薬が着火したときに生成される多量の破片(debris)を捕捉する機能を果たす。この破片は、エアバッグを損傷させ、エアバッグから放出されると、エアバッグが配備された車両の乗員を傷付け得る。その上、破片は、しばしば、人にとって化学的に有害である。
【0006】
この破片を制御するために、自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタは、その濾過機能において非常に効果的である必要がある。それでも、フィルタは、装薬により生じるガスをエアバッグに迅速に到達させ、エアバッグを膨張させることもできなければならない。すなわち、フィルタは、過剰なレベルの背圧を生じることができない。さらに、フィルタは、強力な爆発の最中に、これらの相反する基準、すなわち、低い背圧での効果的な濾過という基準を満たす必要がある。これらの基準の他に、フィルタは、エアバッグに進入する膨張ガスの流れをより均一にするための拡散器として、またガスが、エアバッグやエアバッグにより保護されている人に害を与えないように、ガスの温度を減少させるのに役立つヒートシンクとしての機能も果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの検討事項に加え、コストが常に、大量生産商品、特に自動車業界に使用される商品の課題である。その結果、エアバッグ用インフレータのための低コストでも効果の高いフィルタを製造する努力が引き続き、広範囲に行われてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、エキスパンデッド・メタル・シートがそれ自体で巻かれたときに入れ子状態を減少させるように配列された多数の列の開口部を有するシートを有してなる管状フィルタであって、シートは巻かれて管を形成し、管の方向を固定するように溶接されており、
(a) エキスパンデッド・メタル・シートは、幅と軸を有する大型金属シートから形成され、
(b) エキスパンデッド・メタル・シートは、大型金属シートにより形成された長い縁と大型金属シートの一部として切断された短い縁を有し、
(c) 開口部が、大型金属シートにスリットを形成し、そのスリットを軸方向に引き延ばすことにより形成され、
(d) 開口部の列の間のピッチ、開口部のサイズ、または開口部の列の間のピッチと開口部のサイズの両方が、エキスパンデッド・メタル・シートがそれ自体で巻かれたときに入れ子状態を減少させるように変えられる(例えば、開口部の列の間のピッチが、半径方向に隣接する開口部が入れ子状に重ならないように、巻かれたフィルタのエキスパンデッド・メタル・シートの所定の部分により画成された円周の関数として変えられる)、
管状フィルタが開示される。
【0009】
第2の態様によれば、フィルタを製造する方法において、
(a) 幅と軸を有する金属シートを提供し、
(b) シートにスリットを形成し、そのスリットをシートの軸方向に引き延ばして、多数の列の開口部を形成し、
(c) 工程(b)において製造されたシートから、より小さなシートを切断し、
(d) 工程(c)のより小さなシートをそれ自体で巻いて、管を形成し、
(e) 工程(d)の管を溶接により固定する、
各工程を有してなり、
工程(b)において、多数の列の開口部が、より小さなシートがそれ自体で巻かれて管を形成したときに入れ子状態を減少させるように配置されている(例えば、開口部の列の間のピッチ、開口部のサイズ、または開口部の列の間のピッチと開口部のサイズの両方が、より小さなシートがその自体で巻かれたときに入れ子状態を減少させるように変えられる)、
方法が開示される。
【0010】
第3の態様によれば、多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルを有してなる管状フィルタであって、エキスパンデッド・メタルは、多数の開口部を有し、開口部のない少なくとも1つの区域を含み、その区域が、フィルタ内のガスの円周方向流を生じるものである管状フィルタが開示される。
【0011】
第4の態様によれば、実質的に円筒の外面を有する多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルを有してなる管状フィルタであって、エキスパンデッド・メタルは多数の開口部を有し、実質的に円筒の外面は円周溝を含むものである管状フィルタが開示される。
【0012】
第5の態様によれば、内腔、実質的に円筒の外面、および内腔と実質的に円筒の外面との間に延在する実質的に平らな端部区域を有する多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルを有してなる管状フィルタであって、エキスパンデッド・メタルは多数の開口部を有し、実質的に円筒の外面と実質的に平らな端部区域との間の交差部により形成された角が、点荷重プロセスにより丸められている管状フィルタが開示される。
【0013】
第6の態様によれば、多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルを有してなる管状フィルタであって、エキスパンデッド・メタルは多数の開口部を有し、開口部の少なくともいくつかの間のエキスパンデッド・メタルの表面が、その表面に亘りガスの層流を減少させるようにテキスチャーが付けられている管状フィルタが開示される。
【0014】
第7の態様によれば、多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルを有してなる管状フィルタであって、エキスパンデッド・メタルは多数の開口部を有し、エキスパンデッド・メタルが第1の金属からなり、その少なくとも1つの表面が、その熱伝導率が第1の金属のものよりも少なくとも25%高い第2の金属により被覆されている管状フィルタが開示される。
【0015】
第8の態様によれば、多数の列の開口部を有してなるエキスパンデッド・メタル・シートであって、隣接する列の間の間隔が一定ではなく、その金属が耐食性であるエキスパンデッド・メタル・シートが開示される。
【0016】
第9の態様によれば、多数の列の開口部を有してなるエキスパンデッド・メタル・シートであって、隣接する列の間の間隔が一定ではなく、シートが、引き延ばし前に別の金属によりメッキされ、そのメッキが触媒性であるエキスパンデッド・メタル・シートが開示される。
【0017】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明白であるか、またはここに記載された本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0018】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されている。
【0019】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。明細書および図面に開示された本発明の様々な態様および特徴は、任意の組合せおよび全ての組合せで称して差し支えないことが理解されよう。例えば、第3から第7の態様は、1枚のシート内で異なるピッチおよび/または開口部サイズを有していないエキスパンデッド・メタル・シートを使用したフィルタに使用して差し支えなく、例えば、これらの態様は、個々のエキスパンデッド・メタル・シートを互いに溶接することによって構成されたフィルタに使用して差し支えなく、ここで、個々のシートの少なくともいくつかは、ピッチおよび/または開口部サイズが互いに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エキスパンデッド・メタル・シートおよびそのシートからフィルタを製造する実施の形態の説明図
【図2】本開示の実施の形態によるフィルタの端部図
【図3A】1つの部分に開口部を有し、別の部分には開口部がないシートの説明図
【図3B】図3Aのシートを巻くことにより形成された管の説明図
【図3C】図3Aのシートを巻くことにより形成された管の説明図
【図4A】穿孔の2つの帯環を有する巻かれたエキスパンデッド・メタル・シートの説明図
【図4B】ワイヤが巻き付けられた図4Aに物品の説明図
【図5】本開示の特定の態様により構成したエキスパンデッド・メタル・フィルタの写真
【図6】ここに開示したエキスパンデッド・メタル・フィルタに使用できるエアバッグ用インフレータの筐体の写真
【図7】インフレータの火薬の配置後の図6の筐体の内部チャンバを示す写真
【図8】インフレータの火薬の配置後の図6の筐体の内部チャンバおよびフィルタの表面を示す写真
【図9】そのピッチおよび/またはサイズがエキスパンデッド・メタル・ストリップの長手方向に沿って異なる開口部を有するストリップの代表的特徴を示す説明図。この図は、一定の縮尺で描かれておらず、実際に使用した区域の数は、図に示したものより多くても少なくても差し支えない
【図10A】そのピッチおよび/またはサイズがエキスパンデッド・メタル・ストリップの長手方向に沿って異なる開口部を有するストリップの代表的特徴を示す説明図。図10Aは、一定の縮尺で描かれておらず、図10Bおよび10Dに示された区域の全てを示すものではない
【図10B】ガスの蛇行経路を生成するために設計されたフィルタの断面図
【図10C】円C内の図10Bのフィルタの部分の拡大断面図
【図10D】図10Bの面に対して垂直な面の図10Bのフィルタの断面図
【図11A】金属のストリップに一対の溝を生成するのに適した設備の断面図
【図11B】円B内の図11Aの設備の一部の拡大断面図
【図12A】面取りコーナーを有するフィルタおよびそのフィルタの筐体の一部分の断面図
【図12B】円B内の図12Aのフィルタと筐体の一部分の拡大断面図
【図13A】丸コーナーを有するフィルタおよびそのフィルタの筐体の一部の断面図
【図13B】円B内の図13Aのフィルタと筐体の一部分の拡大断面図
【図14A】点荷重プロセスを使用したフィルタへの丸コーナーの形成を示す正面図
【図14B】点荷重プロセスを使用したフィルタへの丸コーナーの形成を示す側面図
【図15】テキスチャー付き表面を有する金属ストリップの形成に使用するためのローラの表面の写真
【発明を実施するための形態】
【0021】
A. エキスパンデッド・メタル・フィルタおよびそのようなフィルタを製造する方法
以下の議論は主に、自動車(車両)のエアバッグ用インフレータのためのフィルタ(「点火装置エアバッグ用インフレータ」「破片フィルタ」または「クーラント」としても知られている)に関し、ここに開示された方法および装置が、以下の用途のための洗浄できるフィルタを含む、オイル、空気、および他の液体とガスのためのフィルタなどの他のタイプのフィルタにも適用できることが理解されよう。自動車のエアバッグ用インフレータは当該技術分野において公知であるので、例示の実施の形態の説明を分かりにくくしないように、詳細は省かれている。
【0022】
上述したように、ある態様において、本開示は、(i)変更可能なピッチおよび/または変更可能な開口部を有するエキスパンデッド・メタル・シートから製造されたフィルタおよび(ii)そのようなフィルタを製造する方法に関する。シートは、開口部の隣接する列の間の異なる間隔を有し得、例えば、シートが製造設備に供給される速度、穿孔速度、および/または伸長の量を変えることにより製造できる。特に、1つの実施の形態において、本開示は、多数の列の開口部を有するエキスパンデッド・メタル・シートであって、隣接する列の間隔が一定ではないエキスパンデッド・メタル・シートを提供する。
【0023】
ある態様において、本開示は、穿孔の列が、シートの長手方向に対して、また穿孔の少なくとも1つの他の列に対して、垂直に割り出されて(indexed)いるエキスパンデッド・メタル・シートを提供する。別の態様において、穿孔プロセスにより生じる凸部(および凹部)をなくすために、またより滑らかな側面を有するシートを製造するために平らにされたエキスパンデッド・メタル・シートが提供される。多くの用途に関して、そのような平滑化は必要ないが、例えば、開口部のサイズの校正に関しては有用であり得る。
【0024】
製造方法に関して、さらに別の実施の形態において、本開示は、シートの移動(長手)方向に対して垂直に穿孔器具を割り出すことにより、間隔が変更可能な穿孔を有するシートを製造する方法を提供する。この割出しは、もちろん、所定の列の穿孔が先の列の穿孔の中点に位置する、エキスパンデッド・メタル製品の製造に使用される従来の割出しに加えてのものである。別の実施の形態において、本開示は、(a)シートの長手方向に沿って不連続工程によりある長さのメタル・シートを供給し、(b)穿孔して、穿孔の列を形成して、穿孔シートを製造し、(c)穿孔シートを縦方向に引き延ばして、穿孔を開口部へと細長くし、エキスパンデッド・メタル・シートを製造することによって、エキスパンデッド・メタル・シートを製造する方法であって、前記供給により、穿孔の列の間の間隔が変更可能になる方法を提供する。
【0025】
本開示は、多数の列の開口部を有するエキスパンデッド・メタル・シートから構成された自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタであって、シートが円筒に巻かれ、溶接部により固定され、開口部の隣接する列の間の間隔が、異なる隣接する列の間で様々であるフィルタを提供する。
【0026】
メタル・フィルタにおける入れ子状態が、開口部の隣接する列の間の間隔が異なる変更可能なピッチのエキスパンデッド・メタル・シートを使用することによって、減少する。そのようなフィルタは、シートが設備に供給される速度、穿孔速度、伸長の量、および/またはシートが必要に応じて平らにされる量を変えることによって製造される。入れ子状態は、パンチを横に割り出すことにより、多数の穿孔において異なる穿孔サイズを使用することにより、またはこれらの技法の組合せによって、減少させても差し支えない。このフィルタは、強度を増強させるためにワイヤを巻き付けても差し支えない。
【0027】
図1を参照すると、本開示のある態様によるエキスパンデッド・メタル・シートの製造は、メタル・ストリップまたはシート101のロールから始まる(例えば、約9インチ(約23cm)幅、これは、助手席用エアバッグのためのフィルタを製造するために6インチ(約15cm)に、運転手用エアバッグについては約1.5インチ(約4cm)に切断して差し支えないが、設備に応じて、どのような幅を使用しても差し支えない)。エアバッグ用インフレータのためのフィルタについて、SS304、309、310、409、410、または430などのステンレス鋼を使用して差し支えない。様々な用途にとって、C1006からC1008までの炭素鋼がしばしば好ましい。また、以下に論じるように、伝導率がより高い第2の金属、例えば、スズにより被覆された炭素鋼がいくつかの用途にとっては有益であり得る。エキスパンデッド・メタルが使用される環境に応じて、シート形態で入手できる他の金属組成物を使用しても差し支えない。
【0028】
シートは最初にプレス103に供給され、そこで、多数の歯またはビット107を有するパンチ105が、ちょうど打抜き加工動作におけるように、その歯がシートを穿孔するように動かされ、次いで、パンチが取り除かれる。互いに同一であることが好ましいビットの外形は、シートにスリットが形成されるようなものであることが好ましい。ビットの外形に応じて、ビットの穿孔深さにより、形成されるスリットの長さが決まる、穿孔が深いほど、スリットは長くなり、それゆえ、引き延ばし後に、最終的な構造がより開くことができる。エアバッグ用インフレータのためのフィルタについて、開口部は、シートの開口区域、シートの気孔率、またはフィルタに要求される他のパラメータについてのエアバッグ製造業者の仕様に基づくサイズに製造される。
【0029】
シートは、それによってシートの長手方向の前進を正確に制御できるサーボモータ(図示せず)または他の機構により進められることが好ましい。シートの前進は、穿孔時にシートが静止しているように、不連続工程で行われることが好ましい。好ましくはないが、連続的に動かされるシートに、歯を持つローラを使用しても差し支えない。
【0030】
次いで、プレスにおいて製造された穿孔シートがストレッチャー109に供給され、そこで、スリットがダイヤモンド形状の穴に開くように、ディファレンシャル・ローラが穿孔シートを軸方向に(すなわち、移動方向に沿って)引き延ばす(もちろん、六角形の開口部を形成するために、六角形ビットを使用しても差し支えなく、または他のビット形状を使用しても差し支えないが、ダイヤモンドに形成されるスリットが、最も一般的な形状である)。
【0031】
スリット形成および伸長は別々の操作として行っても差し支えないが、微細なパターンを形成すべき場合には、同じ動作で同じ歯により、スリット形成および伸長を行うことにより、エキスパンデッド・メタル・シートを製造することがしばしば好ましい。この操作中に、その材料は平らな下刃の上に垂れ下がり、角度の付いた上歯またはビットがシートにスリットを形成し、次いで、シート内に留まる。シートは下に曲がり、歯に関連するこの曲げにより形成された角度により、シートの引き延ばし動作が生じる。その結果、シートは、歯の穿孔深さによって、多かれ少なかれ、引き延ばされる。このようにして達成される引き延ばし量は、典型的に20〜25%の範囲にあるが、37%ほど大きくても差し支えない。スリット形成と引き延ばしの手法と比べると、一工程手法は、ダイヤモンドよりも三角形のような形状を有する穿孔(開口部)を形成する。スリット形成と引き延ばしが別々の手法に関するように、一工程手法は、(i)金属シートにスリットを形成し、(ii)このスリットを金属の縦軸の方向に引き延ばすことにより、開口部を形成するが、二工程ではなく、一工程で行う。
【0032】
ソフトウェアを実行しているコンピュータ制御装置113に接続されているカメラ111、および随意的なモニタ115を含むビデオ制御システムが、穴または開口区域を検査し、(パラメータが制御装置に入力された後に)穿孔が仕様の範囲内にあるか否かを確認できる。図示されていないが、カメラは、トラック上に可動式に載置され、シートが前進するときにシートを横断させられる。カメラは、好ましくは一列全体を(移動方向に対して横に)、より好ましくは隣接する数列を視野内で捕捉する。ソフトウェアは、開口部のサイズおよび/または形状(外形)を検査して、個々の開口部、または開口区域(実際のまたは推定または計算された)が仕様の範囲内にあるか否かを判定する。パンチとストレッチャーの間に第2のカメラを配置し、同様のハードウェアおよびソフトウェアにより、最初の穿孔が仕様の範囲内にあるか否かを判定しても差し支えない。製品がその仕様の範囲内にあるか否かを判定するための計算は、典型的に、パンチにより形成された開口部を透過する光に基づく(適切なソフトウェアは、IMAGE PROのブランドで、メリーランド州、シルバー・スプリング所在のメディア・サイバーネティクス社(Media Cybernetics, Inc.)から市販されている)。
【0033】
1つのパンチが示されているが、多数のパンチを使用して、異なる穿孔間隔、外形、および/または深さを提供しても差し支えない。例えば、2つのパンチを任意の所望の順序でいくつのストロークまたはサイクルで(第1のパンチを、第2のパンチと交互に、もしくは2倍または半分の回数で、もしくは2回おきになど)循環させても差し支えない。そのプレスにより形成される隣接する列が互いからずれているように、少なくとも1つのプレスが横方向に左右に割り出されることが好ましい(ここに用いたように、穿孔の「列」は、シートの長さに対して横方向であることが好ましいが、シートの長手方向に対して角度が付けられたプレスを有することも可能である)。
【0034】
ビデオ制御システムは、エキスパンデッド・メタル・シートの光学検査を行い、製品が仕様の範囲内にあるか否かを判定する。プロセスを進める、戻す、または仕様を変えるように変更させるために、シートの前進は、穿孔の長手方向の間隔を変えるために、サーボモータを調節する(コンピュータ制御装置により)ことにより、変更される。あるいは、穿孔シートが引き延ばされる量を増減させるために、ストレッチャーが調節される。シートが丸められたときに、隣接する層の入れ子状態および/または半径方向に隣接する開口部の整合をさらに避けるために、両方を調節しても差し支えない。
【0035】
変更可能なピッチを提供する方法の1つは、シートの前進を徐々に変えることである。例えば、列の間の間隔を徐々に増加させ、次いで、元に値に戻すことができる(例えば、500ミル(約12.5mm)の初期間隔で、ノコギリ波のように、1ミル(約0.025mm)から15ミル(約0.375mm)以下まで増加させ、次いで、初期間隔に戻す;または変化は、正弦波または三角形のような波形であって差し支えない;または不規則)。変更可能なピッチを有することにより、入れ子状態になる可能性を大幅に減少させることができる。変更可能なピッチを提供する別の方法は、ピッチを、巻かれたフィルタ内のシートの所定の部分により画成される円周の関数として変えさせ、よって、半径方向に隣接する開口部が入れ子状態にならないことである。この手法は、2つの半径方向に隣接する周囲層に対応するエキスパンデッド・メタル・シート上の区域の間でピッチの変更を徐々に行うことにより、変更可能なピッチの手法と組み合わせても差し支えない、例えば、その変化は、2から5のプレスサイクルに亘り行っても差し支えない。このようにして、2つのピッチの間の移行区域の広がりすぎを避けることができる。ほとんどの移行に関して、広がりすぎは問題ではなく、それゆえ、ピッチの徐々の変更は必要ない。
【0036】
エキスパンデッド・メタル・シートは、1つのまたは対のローラ121により平らにできる。シートは、どのような相当な程度まで圧縮される必要はなく、平坦化が開口部を閉じてしまうほどの程度まで圧縮されないことが好ましい。ビデオ制御システムのカメラ(もしくは第2または第3のカメラ)が平滑化工程後に配置されても差し支えなく、その場合、平滑化の程度、およびその結果としての開口部の閉鎖を調節することが、所望の開口区域を達成するために調節できる追加のパラメータであることが認識されよう。まくれを平滑化すると、2つの目的が達成される。まくれは、高摩擦接触の区域を表す。平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シートは、巻かれたり、丸められたした場合、それ自体に対してより容易に摺動できる。平坦化の結果として増加した表面積により、溶接電流を増加させることができ、増加した接触面積のために溶接強度が高くなる。上述したようなこれらの利点に加え、平坦化が開口部を一定の大きさにする。平坦化自体は、抗入れ子状態に実質的に寄与せず、それゆえ、ほとんどの用途に関して、不要な費用を避けるために、この追加の加工工程は使用されないであろう。
【0037】
自動車のエアバッグ用インフレータのためのフィルタの製造において、あるフィルタの外形は、多孔質壁を有する円筒である。そのような装置を製造するために、引き続き図1について、平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シートは、個々の1枚のシート125に切断され(123)、これら1枚のシートを、ことによると異なる開口区域を有する、別の(平坦化された)エキスパンデッド・メタル・シート127に重複して配置し、溶接機129により(好ましくは電気溶接による)互いに取り付けることができる。次いで、接合された複合シートは、シリンダ131へと巻かれ、溶接機133によりシリンダにメッシュの縁が固定される。適切なIDおよびOD(内径と外径)を生成するために、溶接されたメッシュシリンダ135は、必要に応じて可動式内壁を有する雌型137内に配置され、必要に応じて膨張性であるマンドレル139がシリンダの中心内腔に挿入される。最終的なフィルタの所望のIDおよびODは、シリンダを所望の放射状外形および寸法に冷間成形するための、必要に応じて膨張性であるマンドレルと、必要に応じて収縮性である型の組合せにより達成される。この手法は、個々の1枚のシートの相当な量の溶接を含むので、平坦化は、上述したように、2枚の非平坦化シートとは対照的に、エキスパンデッド・メタルの2枚の平坦化されたシートを互いに溶接するときに、より強力な溶接を行えるので、有益であり得る。1枚のシートを溶接する手法の別の選択肢は、一定のピッチを使用し、1枚のシートを互いに溶接する前に90°だけ選択された1枚のシートを単純に回転させる(例えば、1枚おきに、隔枚になど)ことである。重ねて、この手法は相当な溶接を含むので、平坦化は有益であり得る。
【0038】
平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シートの多重巻き上げにより形成されるこれらのフィルタの製造において、穿孔の入れ子状態は全く観察されなかった。減少した入れ子状態およびまくれの排除により、所定の半径距離においてより多くのフィルタ層が可能になる。したがって、設計により指定のODが要求される場合、より大きいIDを提供できる。同様に、指定のIDにより、より小さいOD、それゆえ全体でより小さい装置が得られる。入れ子状態は有害である。何故ならば、半径方向に隣接する開口部の入れ子状態によるシートの整合におけるシフトで、フィルタ端部(シリンダの上端および/または下端)の寸法は仕様から外れないが、それにもかかわらず、隣接するフィルタ層の間に開放通路を提供してしまうからである。隣接する層における開口部がほぼ整合されている場合でさえも、まくれがなければ、開口部が整合する傾向(ある開口部のまくれが、隣接する開口部内に置かれる)、それゆえ、濾過効率が減少する傾向がなくなる。
【0039】
平坦化されたシートの溶接強度は、シートが平坦化されていない場合に達成された強度の2倍である。スポット溶接は典型的に、溶接電流がオペレータにより調節される装置により自動化される。固定電流に設定すると、まくれ区域は均一ではなく、溶接電流が流れる接触表面積が溶接毎に様々であるので、平坦化されていないエキスパンデッド・メタル・シートを溶接する場合、一貫性のない溶接部が生じてしまう。エキスパンデッド・メタル・シートが平坦化されている場合、表面積がより大きくなり、それゆえ、より大きい溶接電流を使用できる。平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シートを溶接するために溶接電流を2倍にすると、まくれを有するシートの溶接強度の2倍超の溶接強度、並びにより一貫した溶接強度がもたらされた。
【0040】
上述したフィルタは、シリンダへと巻かれた2枚のエキスパンデッド・メタル・シートから製造されている。巻き上げ中、フィルタが多数の反復層、または各々異なる半径距離で異なる中間層を有するように、1つ以上の中間層を加えても差し支えない。例えば、図2は、巻かれた円筒形フィルタの端部(または断面)を示しており、ここで、第1の平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シート201が溶接部205により第2の平坦化されたエキスパンデッド・メタル・シート203に接合されており、巻き上げは、第1のシートから始まっている。所定の位置または巻き上げの量で、層間に織物207が挿入され、その所定の位置から半径方向外方の位置で、メタル・シートの層間にメタル・スクリーン209が挿入されている。メタル・シートの最も外側の層は、溶接部211によりそれ自体に取り付けられている。このように形成されたフィルタは、異なる材料の多数の濾過層を有する。
【0041】
図3Aは、穿孔され引き延ばされ、穿孔されていない区域305の間に配置された部分303を有するエキスパンデッド・メタル・シート301を示している。中実(未穿孔)区域の後に穿孔を再開するときに、穿孔を徐々に開始することが好ましく、中実区域が、穿孔すべき区域の下流に存在する場合、最初の数回のパンチが、パンチがシートを2つに切断する傾向を避けるためにシートに穿孔しないことが好ましい。シートは、元のシートにより形成された長縁L、長いシートからの一部分として切断された(図1に示されるような)短縁Sを有する。あるエアバッグの設計は、膨張ガス(爆発または圧縮ガス、もしくはそれらの組合せによるいずれか)の流れを特定の方向に向けることを必要とする。例えば、カーテン型エアバッグは、ガスを線状の広がりに沿って向けることを必要とするであろう。あるいは、エアバッグ集成体が取り付けられる区域が、エアバッグと流体連通するのに利用できる部分のみを有してもよい。図3Aにおけるシートは、軸として、短い側部を接続する線を使用して、巻き上げても差し支えない。この場合、長い側部は、重複し、溶接されて、図3Bに示される構造を有するフィルタを形成し、ここで、フィルタの端部は穿孔されておらず、中央区域のみが穿孔されている。あるいは、シートを、軸として、長い側部を接続する線を使用して、巻き上げても差し支えなく、これにより、図3Cに示される構造が得られる。シート301は1つの穿孔区域を有するものとして示されているが、未穿孔区域により隔てられた多数の穿孔区域を形成して(それらの区域に亘りパンチしないことにより)、図3Bに示されるようなフィルタであるが、図示された1つの穿孔帯環とは対照的に、図4Aに示されるような未穿孔区域により隔てられた2つの穿孔帯環を有するフィルタを形成しても差し支えない。先の実例に鑑みて、様々な部分を穿孔するか、または穿孔せずに残して差し支えなく、ガス流を所望のように向けるように所定の区域でのみ穿孔を有する管状フィルタを提供するために、シートを切断し、巻き上げて差し支えないことが明白である。
【0042】
開口部のパターンは、パンチのビットの配置およびシートの直線移動の関数としてのパンチ速度により決定される。入れ子状態を避けることは、この基本設計の様々な改変により行って差し支えない。上述したように、ビットの異なる配列を有する(例えば、他のパンチから横にずれている)多数のパンチを使用しても差し支えない。パンチングの速度は、上述したように、隣接する開口部の間の距離(ピッチ)を増加させるように変更させ、次いで、元に戻して循環させて差し支えない。例えば、シートの移動は、離間距離が15ミル(約0.375mm)となるまで、ピッチが、先にパンチした列から1ミル(約0.025mm)ずつ増加するように調節することができ、次いで、そのプロセスを逆にする(1ミル(約0.025mm)ずつ減少させる)か、または初めから再度開始する。特定のフィルタの仕様を考えると、ピッチは、巻き上げられたフィルタにおけるシートの所定の部分により画成された円周の関数として変えても差し支えなく、よって、半径方向に隣接する開口部は入れ子状態にならない。入れ子状態を防ぐためのさらに別の方法は、各列が先の列から横方向にずれるように1つ以上のパンチを横方向に割り出すことによるものである。他の方法に関するように、パンチは、固定量だけ左右に、または所定のずれが達成されるまで一方向に所定の量だけ、次いで、戻すように、割り出しても差し支えない。例えば、所定の列において中心間距離(開口部について)を使用して、次の列は、次のパンチで30%横方向にずらして割り出し、所定の回数に亘り、次のパンチでさらに30%ずらして割り出し、以下同様にし、次いで、元に位置に戻しても差し支えない。フィルタの仕様に基づいて、フィルタにおけるシートのどの部分の位置をも知ることにより、半径方向に隣接する開口部の入れ子状態を避けるために、どのように開口部を変える必要があるかを決定するための直接的な計算が可能になる。入れ子状態の可能性を減少させるために、以下に記載するものを含む、これの技法の内のいずれの1つまたは組合せを使用しても差し支えない。
【0043】
入れ子状態を減少させるためのさらに別の方法は、開口部のサイズを変えることである。どの列の開口部のサイズも、パンチの全て、または2つ毎に、または任意の数毎にパンチの停止位置を変えることなどにより、パンチの深さを変更することによって、変えることができる。2つ以上のパンチを使用する場合、各パンチは、異なるパンチ深さに設定する、および/または別のパンチと異なるサイズのビットを有する、および/または異なる外形のビットを有しても差し支えない。
【0044】
本発明のエキスパンデッド・メタル物品をワイヤ巻き上げと組み合わせても差し支えない。例えば、所望のように穿孔されたシートを、端部が接するようにマンドレル上に巻き上げ、次いで、この穿孔基体の周りに、ワイヤを所望のパターンで巻き付ける。巻付けは、中実(未穿孔)区域を強化する、面取り端部を提供する、および/または穿孔を部分的に被覆することができる。ワイヤの巻き付けにより、シートの縁を溶接する必要がなくなる。図4Bは、ワイヤがその上に巻き付けられた3つの別個の区域307を有する図4Aの装置を示している。ワイヤは、ガス充填の爆発力に耐える上での装置の強度を増加させる。巻き付け309が面取り端部(または面取り端部の近似)の外形を提供している一端が示されている。ワイヤが巻き付けられた穿孔シートは、ワイヤの巻き付けを固定するために、焼結しても、または蝋付けしても差し支えない。既存の穿孔上に巻き付ける場合、効果的な開口空間(すなわち、結果として生じる圧力降下)を所望の程度までさらに増加させるまたは調整するために、巻き付けを使用しても差し支えない。
【0045】
上述の実施の形態は、エアバッグ集成体のためのフィルタを具体的に参照して説明してきたが、電極などの物品への用途および織物エアバッグ・フィルタに使用されるたたみ織り(Dutch weave)を置き換えるための他の用途がある。始めにより薄いシートが使用されると、より小さな穴が可能になり、「マイクロ」エキスパンデッド・メタルの製造が可能になる。ある従来技術の穿孔メタル・シート・フィルタは、追加の濾過のためにセラミック紙中間層を使用した。その代わりに、セラミック紙の代わりに、マイクロエキスパンデッド・メタル・シート(厚さが10ミル(約0.25mm)未満の、箔と考えられるほど十分に薄い)を使用して差し支えない。ほとんどの場合、本開示により製造される物品は、濾過に使用される。
【0046】
B. 用途
先に開示の典型的な用途において、エキスパンデッド・メタル・シートは、多数の層、例えば、3層から20層の層を有する構造を製造するために、それ自体に巻き上げられている。最初の360度の巻き上げ(第1層)はスポット溶接により固定して差し支えなく、残りの層は、所望の外形に到達するまで互いの周りに連続的に巻かれる。次いで、最も外側の層は、スポット溶接により固定して差し支えない。強化目的のために、フィルタの内部の円周層の1つ以上に、スポット溶接を加えても差し支えない。しかしながら、そのような追加のスポット溶接は、エアバッグ・フィルタに必要な強度レベルを達成するためには一般に必要ない。
【0047】
図5は、このようにして構成したエアバッグ用インフレータのためのフィルタ13を示している。図6は、フィルタ13が中に挿入される内部チャンバを有するインフレータの筐体15の一例を示している。図示された筐体は、ハンドル用エアバッグのためのものであり、それゆえ、ステアリング・コラム内に搭載するのに適した全体として「パンケーキ」形状を有する。他のタイプのエアバッグ、例えば、カーテン・エアバッグのための筐体は、いくぶん異なる形状を有し、それゆえ、フィルタ13の形状は、そのようなエアバッグのために異なっていてよい。形状は異なっていてよいが、同じ基本的な非入れ子構造が使用される。
【0048】
図6に示されるように、筐体15は複数の開口17を含み、それら開口により、インフレータの装薬により生成されたガスが、筐体を出て、筐体の外側辺りに固定されたエアバッグ(図示せず)を膨張させることができる。典型的な装薬は、硝酸アンモニウム系であり、「スラグ(slag)」として当該技術分野に知られている、多量の粒状破片を生成する。図7および8は、装薬が爆発した後のフィルタ13の内径に捕捉されたスラグ残留物21を示している。この図の参照番号23は、爆発前のフィルタ13の内径内に位置する主な装薬を爆発させる上で使用される筐体の点火ポートを示す。図7および8の観察により、フィルタ13が作動しなければならない条件の感触が得られる。これらの図を、爆発前のフィルタを示す図5と比べると、使用中にフィルタが曝露される極度の圧力および熱の条件が分かる。
【0049】
フィルタ13を構成する上で、エキスパンデッド・メタル・シートの長手方向に沿った開口部またはピッチもしくはその両方は、円周巻き毎に通常変わり、エキスパンデッド・メタルの追加の層毎に円周が増加するという点で、構築されたパターンは、フィルタが巻かれるときに、増加した区域長さを示す。図9は、エキスパンデッド・メタル・シート5の長手方向に沿って使用できるデザインの代表的なタイプを示しており、ここで、参照番号7は、入れ子状態を減少させるために選択されたピッチおよび/または開口部のサイズを有するエキスパンデッド・メタル・シートの区域を表し、参照番号9は、非穿孔区域(以下参照)を表す。入れ子状態の検討に加え、穴のサイズは、所望のガス流挙動に基づいて選択することができる。それゆえ、フィルタの外面での拡散効果を達成するために、フィルタの最も内側の層により大きな開口部を、続いて、より微細であるが目詰まりしない開口部を、再び、より大きな開口部を使用して差し支えない。もちろん、用途の仕様に基づいて、他の組合せを使用して差し支えない。
【0050】
図9における長さL1、L2およびL3(並びにこの図に示された他の区域の長さと図10Aにおける長さ)は、一般に、増加する半径に関連する円周長さの増加を考慮するように異なる。この図と図10Aにおける区域の長さは、一定の縮尺で描かれておらず、円周巻きの入れ子状態を減少させるために使用される構造のタイプを単に示していることに留意されたい。また、実際のフィルタに使用される区域の数は、これらの図に示された数よりも多くても少なくても差し支えない。
【0051】
変更可能なピッチおよび/または開口部のサイズを使用することによって、様々な利点を達成できる。例えば、微細なピッチおよび/または微細な開口部のサイズを使用することによって、粒子の保持率および全体の性能を最適にできる。より一般に、入れ子状態を減少させる/なくすことによって、エアバッグシステムの製造業者にとって最重要である、フィルタを通る流れの標準偏差の相当な減少を含む一貫性が著しく改善される。
【0052】
C. 蛇行経路
図10は、フィルタを通るガス流のための蛇行経路を形成するための非穿孔区域9の使用を示している。穿孔パターン内にあるこれらの非穿孔区域または小片により、集成されたフィルタにジグザグ状のガス経路が生じる。そのような経路は、エアバッグの装薬により生じる粒子を捕捉するのに望ましい。特に、ガスが方向を変化させられる度毎に、その速度プロファイルは変化し、これにより、ガス流中で運ばれる粒子が沈着し(plate out)、フィルタ内に捕捉される。エアバッグ用インフレータのためのフィルタの主な目的の1つは、装薬により生じる粒子を捕捉することであり、それゆえ、フィルタの粒子捕捉能力の改善が、エアバッグシステムの製造業者にとって重要である。
【0053】
非穿孔区域9は、ガスがこれらの区域を通過できないが、その区域の縁に到達するまでその区域に沿って移動し、そこで再び、フィルタから出る経路を見つけるために方向を変えなければならないので、そのような方向変化を生じる。それゆえ、非穿孔区域は、フィルタを通るガスの単純な半径方向流に対する障壁として働く。
【0054】
このジグザグが図10Cに示されており、ここで、図10Cは、図10Bの円C内のフィルタ13の部分の拡大図である。図10Cにおける矢印は、フィルタを通るガス流を表す。ガス流経路は、方向変化が数多く非常に複雑であり、これがガス流から粒子を除去するのに役立つのが明らかである。
【0055】
図10において、非穿孔区域9は、エキスパンデッド・メタル・シート5の全幅に亘り延在する。所望であれば、この非穿孔区域は、シートの幅に部分的にしか亘らなくても差し支えなく、例えば、一方の縁、両方の縁、縁の間の1つ以上の位置、またはこれらの組合せに穿孔区域があっても差し支えない。ある用途に関して、そのようなより複雑なパターンが、粒子保持の必要性と背圧の必要性とのバランスを取る上で役立ち得る。
【0056】
しかしながら、配置されると、非穿孔区域の使用により、ガス流が、フィルタ本体内の少なくともある程度の円周流を含むこととなる。非穿孔区域により生じる円周流は、穿孔の間の平均空間より大きい距離、例えば、5倍超に亘る。ある実施の形態、例えば、図10Bおよび10Dに示された実施の形態において、フィルタの内径から外径まで実質的に全ての可能な流路は、穿孔の間の平均距離より大きい距離に亘り、半径方向流および少なくともある程度の円周流の両方を含む。
【0057】
フィルタの全ての層が非穿孔区域を有する必要があるわけではないことに留意すべきである。むしろ、いくつかの層は、例えば、最初の数層と最後の数層は、主に半径方向流を示し、他の層、例えば、中間層は、半径方向流と実質的に円周流の組合せを示して差し支えない。
【0058】
D. 円周溝
図6に示されるように、筐体15は複数の開口17を含み、その中を通って、エアバッグの装薬により生じたガスが筐体から排出される。典型的に、これらの開口は、1つの横断面内にあるが、ある場合には、2つの横断面内にある2列の開口が使用される。図6〜8に示されるように、開口は、1つまたは複数の横断面内にあっても、典型的に、フィルタ13を受容する筐体の内部チャンバに対して対照に配置されていない。
【0059】
開口は、エアバッグの装薬により生じるガスの唯一の出口であるので、開口17が、エアバッグの配備中ずっと開いたままであることが重要である。実際に、フィルタ13および、特に、フィルタの外部の外被は、フィルタの内径内で起こる爆発の結果として膨張し得る。そのような膨張は、開口17の近傍の空間を含む、フィルタと筐体との間の管状の半径方向マニホールド空間を減少および/または閉鎖し、それによって、燃焼圧を増加させ得る。
【0060】
一連の実験により、フィルタの外面に形成された溝は、フィルタの残りのサイズが増加するという事実にもかかわらず、爆発中に実質的に形状を維持することが分かった。これらの実験は、過酷な条件下での実験、すなわち、最大の装薬および250°F(約121℃)を使用した実験を含んだ。この250°F(約121℃)の温度は、車両が相当な期間に亘り日向に放置された場合に生じる得る最高温度を表すので、選択した。フィルタ13を形成するために使用される金属などの金属の物理的性質が温度の上昇と共に劣化するので、高温条件下での試験を行った。
【0061】
これらの実験に基づいて、爆発中に生じる圧力によるフィルタの変形の結果として開口17へのアクセスが減少する問題は、(i)フィルタの実質的に円筒の外面に円周溝3を含ませ、(ii)集成された筐体において、溝が開口17の円周環と整合されていることを確実にすること、により克服できると結論付けられた。
【0062】
上述したように、開口17は、典型的に、フィルタが受容されるチャンバの中央平面からずれている。したがって、フィルタがたった1つの溝を有する場合で、フィルタが内腔内に誤った向きに挿入された場合、開口17へのアクセスは危うくなり得る。この可能性に対処するために、筐体中に挿入されたときに、溝の一方が、フィルタの向きに関係なく筐体の開口に整合されるように、フィルタ13の外面に2つの溝3が形成される。これもまた上述したように、ある筐体は、複数の列の開口を有する。そのような場合、多数の対の溝3がフィルタ13の外面に形成され、筐体に挿入されたときに、フィルタの向きに関係なく、一方の溝が開口の各列と整合される。例えば、筐体が2つの密接な間隔の列の開口を有する場合、フィルタは、2つの群にまとめられた4つの溝を有し、各群の溝の間の間隔は、それらの群の間の間隔よりも小さい。
【0063】
溝3は、様々な形状を有し得、様々な様式で製造され得る。一般に、溝は、許容範囲の全て、すなわち、累積したまたは重なった許容範囲が、たまたま一方向にある場合でさえ、開口上にあるように十分に広いべきである。実際、弓形断面を有する溝が、V形断面を有する溝よりも、高い圧力に耐えることが分かった。また、フィルタを形成するためにエクスパンデッド・メタル・シートをそれ自体に巻く前にそのシートに溝を形成することが、巻きが完了した後にフィルタの外面に形成された溝よりも、爆発圧によりよく耐えられる溝を形成することが分かった。
【0064】
溝の使用に加え、フィルタの膨張は、フィルタを形成するために使用される金属の引張強度を増加させることによっても減少できる。増加した引張強度はフィルタのフープ強度を増加させ、それゆえ、フィルタの外被の増加が最小になる。
【0065】
図11は、フィルタに巻かれているときの、エキスパンデッド・メタル・シートに溝3を形成するために使用できる装置を示している。図示したように、第1のローラ41は凹部47を含み、第2のローラ39は凸部45を含む。エキスパンデッド・メタル・シートは、このシートの横向き動作を制限するように働くガイド43により、ローラの間に通される。ガイド43は、ローラの間のアライメントも維持する、例えば、ローラ39は、横方向に浮動することができ、ガイド43が、ローラ39を捉え、これをローラ41に整合させるために使用される。あるいは、溝構造を有する1つの加圧ローラが、空圧により、水圧により、またサーボモータにより、フィルタに巻かれているときに、そのフィルタの表面に押し付けられ、それによって、フィルタに溝形状を押し付けても差し支えない。さらに別の代案として、フィルタが完全に巻かれ、溶接された後、フィルタが回転されて溝を形成するときに、フィルタの実質的に円筒の面に凹凸(contoured)溝ローラを押し付けても差し支えない。しかしながら、この後者の手法は、エキスパンデッド・メタル・シートが巻かれているときに、溝がそのシートに形成される手法よりも、爆発に関連する力にそれほど耐えられない溝を形成することが分かった。
【0066】
E. 丸コーナー
フィルタのコーナーに半径を適用することにより、鋭角または面取りコーナーのいずれよりも、インフレータの筐体内にフィルタが実質的に良好に封止されることが実験的に決定された。ここで、良好な封止は、インフレータの装薬がフィルタの中央内腔内で点火されたときに、筐体から放出される火炎の最大長さを減少させるものを意味する。当該技術分野に知られているように、そのような火炎の長さは、爆発中のエアバッグの筐体の高速写真撮影を使用して判定できる。
【0067】
図6、12および13に示されているように、インフレータの筐体は典型的に丸コーナーを有する(これらの図における参照番号19参照)。図12は、面取りコーナー29を有するフィルタ13の丸コーナー19との係合を示しており、一方で、図13は、丸コーナーを有するフィルタの係合を示している。実験を行う前に、面取りコーナーに関連する点接触は、点荷重によるそのコーナーの変形、それゆえ、筐体が集成されるときにフィルタが筐体の壁に押し付けられたときと、次いで、装薬により生じる圧力によって、フィルタと筐体の壁との間に適合シール(custom seal)を生じることが予測されるので、面取りコーナーのほうが丸コーナーよりも良好に機能することが予測される。
【0068】
しかしながら、実際は、丸コーナーが面取りコーナーよりも実質的に良好であったことが分かった。それゆえ、図12の面取りコーナーから図13の丸コーナーへの切換えにより、フィルタの中央内腔内で装薬が点火したときに筐体から放出される火炎の最大長さが25%超減少した。面取りコーナーは直角コーナーよりも良好であったが、丸コーナーほどではなかった。直角コーナーと比べると、丸コーナーは、筐体から放出される火炎の最大長さが実質的に25%超、例えば、50%超減少した。丸コーナーは、粒子の保持においても、面取りコーナーと直角コーナーの両方より良好であった。
【0069】
一般に、フィルタのコーナーの平均半径は、筐体の平均内径の±10%以内、好ましくは±5%以内であるべきである。また、コーナーの丸み付けは、点荷重プロセスを使用して行う必要がある。特に、半径の機械加工は、個々のフィルタ層の構造強度が低いために、適していない。研削も、金属および有機両方の研削残留物がフィルタ構造体中に堆積し、除去するのが、不可能ではないとしても、難しいので、実行可能ではない。そのような研削残留物は、エアバッグの装薬が爆発したときに放出され、それゆえ、フィルタにより捕捉されない破片を表す。圧印または成形ガイド内で一工程で半径を形成することは実際的ではない。何故ならば、フィルタの柱強度は、そのような操作に関連する相当な力を支えるのに適していないからである。
【0070】
点荷重プロセスは、これの他の手法に関する問題を克服する。そのようなプロセスは、金属を除去せずにコーナーを緻密にし、それゆえ、研削に関連する破片の問題が避けられる。任意の所定の時間で、そのプロセスは、大きい力をフィルタの縁の円周の小さな区域に印加し、それゆえ、フィルタの強度特徴に関連する問題が避けられる。
【0071】
点負荷は、様々な様式で実質できる。例えば、軌道式リベット打ち機におけるように、作業面上で適切な半径を持つ1つ以上の回転軸を、フィルタのコーナーの点に印加し、そのコーナーの円周に沿って動かして、丸コーナーを生成できる。あるいは、図14に示したタイプの装置を使用しても差し支えない。
【0072】
このシステムにおいて、図14Bの湾曲した矢印により示されるように、ローラ33およびフィルタ13の両方が回転する。特に、フィルタ13は、比較的高速で駆動され、ローラ33は、このフィルタと接触させられて、フィルタとの摩擦係合の結果としてフィルタとは反対の向きに回転する。フィルタ13はローラ33の開口35内に嵌り、図14Bに最もはっきりと示されているように、その開口とフィルタは、それらが出合う1つのラインに沿ってしか接触しない。したがって、フィルタとローラ33を係合させるためにそれらの間に印加される力は、この接触ラインの反対の端部でしかフィルタの2つのコーナーに印加されない、すなわち、フィルタのコーナーは点荷重により変形される。開口35のコーナーの半径は、±10%(好ましくは、±5%)内で筐体の半径に合致し、それゆえ、図13Bに示されるように、点荷重の結果により、フィルタの実質的に円筒の外面25と実質的に平らな端部区域21との間にフィルタコーナーが形成され、これは、筐体のコーナー19の内径に密接に合致する。
【0073】
F. テキスチャー付け
上述したように、エアバッグ用インフレータのフィルタの目的の1つは、インフレータの装薬の爆発により生じる破片(粒子)を捕捉することにある。先にも論じたように、粒子は、フィルタを通って流れるガスが方向変化を経たときに、フィルタにより捉えられる傾向にある。層流は、ガスが方向を変える流れの正反対である。そのような流れの発生を最小にするために、フィルタを構成するエキスパンデッド・メタルの表面にテキスチャーを付けることができる。そのようなテキスチャー付けは、穿孔される(引き延ばされる)前または後にメタル・シートに行って差し支えなく、予めテキスチャーを付けることが、より一般的な手法である。
【0074】
金属表面にテキスチャーを付けることによって、比較的平らな平面が一連の数千もの山谷に変わり、それゆえ、シートの表面積が20%まで増加する。高温ガスがその上を通過する境界にこの追加の表面積を有すると、フィルタの濾過効率が劇的に増加する。濾過を改善することに加え、テキスチャー付き表面は、フィルタへの熱伝達も増加させる。上述したように、エアバッグの装薬により生じるガスを、それらがエアバッグに到達する前に冷却することが、エアバッグのフィルタの機能の内の1つである。
【0075】
どのような特定の動作理論にも拘束することを意図するものではないが、増加した濾過効率および爆発ガスの向上した冷却の両方は、テキスチャー付き表面での高いレイノルズ数を有する乱流の生成によるものであると考えられる。そのような乱流は、無作為渦、渦巻、および他の流れ変動を生じる傾向にある内力により左右される。これらの無作為渦、渦巻、および流れ変動は、ガスをフィルタの表面により長く保持し、それによって、より多くの粒子をフィルタ上に堆積させ、より多くの熱エネルギーをフィルタと交換する。
【0076】
粒子の捕捉について、ガス流の方向に対して垂直なテキスチャー付き表面の山谷は、追加の粒子除去に、特に、微細な粒子除去に寄与する。これらの山谷、ガス流から粒子をねばり強く捕まえ、除去する機構を提供する。
【0077】
ガスが、フィルタを構成するメタル・ストリップの両面と接触するので、テキスチャー付けはストリップの両面に行われることが好ましいが、所望であれば、片面のテキスチャー付けを使用しても差し支えない。テキスチャー付けは、当該技術分野で公知の様々な様式で行って差し支えない。より効率的な様式の1つは、表面に刻印されたパターンを有するエンボス・ローラにストリップを通すことである。ローラ上にパターンは、手作業、レーザエッチング、EDM、ホビング、またはそれらの組合せを含む、当該技術分野に公知の多数の方法で行って差し支えない。エンボス・ローラの使用の代案として、レーザ、酸エッチング、刻み付け、サンドブラスト(例えば、遠心サンドブラスト装置により)、またはそれらの組合せを使用して、ストリップの表面に直接テキスチャーを付けても差し支えない。しかしながら、形成されると、テキスチャー付き表面の線形特徴密度Dは、15〜500特徴/インチ(約2.5cm)の範囲にあり得、特徴の振幅は0.5/D以下である。
【0078】
図15は、エアバッグのフィルタを製造するのに使用されるメタル・ストリップにテキスチャーを付けるために使用できる、中にテキスチャー付けパターン37が形成されたエンボス・ロールの表面の写真である。この図の米国の1セントコインが、使用できるパターンのタイプの縮尺を示す。この図に示されるように、全体のパターンは、各ブロックの溝が隣接するブロックの溝に直角になっている、市松模様である。メタル・ストリップに転写されたときに、このタイプのパターンは、ガスがストリップの表面を流れるときに、ガスの層流を示す能力を著しく減少させる。このパターンは、流路を変動させてさえも、ガス流から粒子を捕らえることもできる。
【0079】
G. 被覆金属(例えば、メッキ金属)
上述したように、エアバッグ・インフレータ・システムにおいて、粒子を捕捉することに加え、点火爆発からの広がる高温ガスを冷却するためにも、フィルタが利用される。フィルタの冷却能力は、インフレータの性能への大きい影響を有する。
【0080】
第1の金属より伝導率が大きい、例えば、少なくとも25%大きい、第2の金属により被覆された少なくとも1つの表面を有する第1の金属からなる1つ以上のエキスパンデッド・メタル・ストリップからフィルタを形成することにより、広がるガスからフィルタへの追加の熱伝導を、第1の金属のみにより提供される熱伝導を超えて達成できる。ここに用いたように、「金属、メタル」という単語は、純粋な金属および金属合金を含む。
【0081】
爆発中、熱エネルギーが対流によりフィルタに伝達される。インフレータの装薬の爆発全体はたった約20ミリ秒しかかからないので、対流伝達に使用できる時間は短い。したがって、フィルタと高温ガスとの間の境界にある高熱伝導性外層を有することには、多大な利点がある。この高い熱伝導率のために、メッキにより製造されるもののような第2の金属の薄層でさえも、熱のフィルタへの局部伝達およびフィルタ本体に亘り熱の分布の両方が向上する。
【0082】
第1と第2の金属に様々な金属を使用して差し支えない。例えば、第1の金属は炭素鋼であって差し支えなく、第2の金属はスズまたはスズ合金であって差し支えない。軟鋼は、約26W/mKから約38W/mKの範囲の熱伝導率を有するのに対し、純粋なスズの熱伝導率は約64W/mKである。上述したように、自動車産業について大量生産品を製造する場合、最優先の検討事項はコストである。缶詰工場での使用のために、スズメッキ炭素鋼は入手し易い。非メッキ材料よりもいくぶん高価であるが、スズメッキされたエキスパンデッド・メタルを使用することにより増加する熱効率により、フィルタの全体の質量を減少させることができ、これは、スズメッキされた炭素鋼の費用のわずかな増加を相殺できるどころではない。
【0083】
先の検討事項に加え、使用される前にフィルタを腐食から保護する必要があることもあり、これは、その時は、搭載されてから何年もたっているかもしれない。点火インフレータに使用されるフィルタ位置が2つある。第1に、フィルタは、発射薬と共に密閉チャンバの内部にある。第2に、フィルタは、密閉チャンバの外部にあり、それゆえ、錆びたり腐食したりし得る雰囲気に曝露される。過去において、腐食の問題は、フィルタを構成するためにステンレス鋼を使用することにより、または火器への青焼なまし法に似た、仕上がったフィルタへの熱青焼なまし操作を行うことにより、対処してきた。そのような青焼なまし法では、錆びを遅らせる酸化物がフィルタの金属表面に形成される。
【0084】
エキスパンデッド・メタル・シートから製造されたフィルタに関する、スズメッキ炭素鋼の利点は、材料の元々備えた耐食性である。ほとんどの場合、スチール・シートは、引き延ばし動作が行われる前にメッキされ、それによって、穿孔され、広げられた穴がいくぶん保護されていないままになるが、シートの大半は、それでもスズメッキで被覆されている。また、実験研究により、穿孔器具は、引き延ばし動作中にスズメッキのいくらかを開口に引っ張り、それらの開口は、シートの表面と同じほどの耐食性を示さないが、それでもまだ開口の保護が増していることが示された。
【0085】
H. 触媒被覆
他の実施の形態において、ここに開示された物品は、触媒組成物により被覆しても差し支えなく、それゆえ、触媒の担体(基体)として働く。触媒担体として使用される場合、シートは、309または310ステンレス鋼もしくはクロムおよび必要に応じてアルミニウムを含むものなどの耐食性合金から製造されることが好ましい。例えば、半径流フィルタに類似した構成において、被覆基体は、芝刈り機、リーフブロワー、またはチェーンソーなどの、手持ち式または小さな装置のための触媒コンバータとして機能できる。あるいは、シートをアコーディオン式に折り畳んで(すなわち、ひだをつけ、折り畳む)、隣接する折り目が異なる開口パターンを有し、ガスを蛇行して流し、そのような被覆装置の表面の多くを接触させる。従来のSCR触媒は、石炭火力発電所に使用するための基体上にウォッシュコートされたチタン−バナジウム組成物、または燃料の部分酸化および他の改質操作に使用されるセリア触媒である(米国特許第7271127号明細書)。あるいは、物品は、触媒コンバータに使用されるシリカおよび/またはアルミナ被覆などの、触媒組成物の塗布前に表面積を増加させるウォッシュコートを有しても差し支えなく、それらの被覆は、続いて、典型的に白金、パラジウム、および/またはロジウムを有する触媒組成物により被覆される。エアバッグのフィルタに有用な物品を製造するエキスパンデッド・メタル・シートのずれた開口を使用して達成できる同じ蛇行性により、小さい面積において長い流路が望ましい、任意のフィルタおよび触媒用途に有用な類似の物品が製造される。そのような装置は、排ガス触媒コンバータに加え、排ガスフィルタとして使用しても差し支えなく、このフィルタは加熱により再生できる(ディーゼル微粒子フィルタなど)。
【0086】
先の記載は、説明を意味し、制限するものではない。様々な変更、改変、および付加が、本明細書の精読の際に当業者には明白となるであろうし、それらは、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲および精神に含まれることが意味される。
【0087】
例えば、長手方向に沿って変更可能な穿孔パターン(すなわち、ピッチおよび/または開口部サイズにおける変動)を有するエキスパンデッド・メタルの少なくとも1つのストリップから構成されるフィルタが好ましいが(例えば、エアバッグの充填の高い一貫性および形成された状態の低レベルの真円度のために)、各ピースの長さに亘り均一である異なる穿孔パターンを有するエキスパンデッド・メタルのピースを互いに溶接することによって製造されたフィルタと共に本開示の様々な態様を実施しても差し支えない。特に、制限するものではなく、本開示の蛇行経路、円周溝、丸コーナー、テキスチャー付け、および被覆金属の態様は、エキスパンデッド・メタル・フィルタを製造するためのこの後者の手法と共に使用して差し支えなく、本開示のこれらの態様に関する以下に述べられる請求項は、エキスパンデッド・メタル・フィルタを製造するための手法、並びに公知のまたは後に開発される他の手法の両方を網羅することが意図されている。
【符号の説明】
【0088】
3 溝
5,125,127,201,203,301 エキスパンデッド・メタル・シート
7 エキスパンデッド・メタル・シートの変更可能な区域
9,305 エキスパンデッド・メタル・シートの非穿孔区域
13 管状フィルタ
15 エアバッグ用インフレータの筐体
17 エアバッグ用インフレータの筐体の開口
19 エアバッグ用インフレータの筐体の丸コーナー
21 フィルタにより捕捉された破片
23 エアバッグ用インフレータの筐体の点火ポート
25 フィルタの実質的に円筒の外面
27 フィルタの丸コーナー
29 フィルタの面取りコーナー
31 フィルタの実質的に平らな端部区域
33 点荷重ローラ
35 点荷重ローラの溝
37 テキスチャー付けパターン
39 雄ローラ
41 雌ローラ
43 ガイド
45 凸部
47 凹部
101 メタル・ストリップまたはシートのロール
103 プレス
105 パンチ
107 歯またはビット
109 ストレッチャー
111 カメラ
113 コンピュータ制御装置
115 モニタ
121 ローラ
123 カッター
129,133 溶接機
131 シリンダ
135 溶接されたメッシュシリンダ
137 雌型
139 マンドレル
205,211 溶接部
207 織物
209 メタル・スクリーン
303 エキスパンデッド・メタル・シートの穿孔部分
307 ワイヤが巻き付けられる区域
309 ワイヤ巻き付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルから構成された管状フィルタであって、前記エキスパンデッド・メタルが、多数の開口部を有し、開口部のない区域を少なくとも1つ含み、前記区域が前記フィルタ内にガスの円周流を生じることを特徴とする管状フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタが内径と外径を有し、該内径から該外径までの実質的に全ての可能な流路が、前記開口部間の平均距離よりも長い距離に亘り、半径方向流および少なくともある程度の円周流の両方を含むことを特徴とする請求項1記載の管状フィルタ。
【請求項3】
実質的に円筒形の外面を有する多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルから構成された管状フィルタであって、前記エキスパンデッド・メタルが、多数の開口部を有し、前記実質的に円筒形の外面が円周溝を含むことを特徴とする管状フィルタ。
【請求項4】
前記外面が2つの円周溝を含むことを特徴とする請求項3記載の管状フィルタ。
【請求項5】
前記溝が弓形断面を有することを特徴とする請求項3記載の管状フィルタ。
【請求項6】
前記溝が、前記エキスパンデッド・メタルがそれ自体で巻かれる前に、該エキスパンデッド・メタルに形成されることを特徴とする請求項3記載の管状フィルタ。
【請求項7】
集成体において、
(a) エアバッグ用インフレータのための筐体であって、管状フィルタを受容するためのチャンバおよびガスを該チャンバから排出させるための開口の円周環を有する筐体、および
(b) 前記筐体内にある請求項3記載の管状フィルタ、
を備え、
前記管状フィルタの円周溝が、前記筐体の開口の円周環と整合されていることを特徴とする集成体。
【請求項8】
集成体において、
(a) エアバッグ用インフレータのための筐体であって、該筐体が管状フィルタを受容するためのチャンバおよびガスを該チャンバから排出させるための開口の円周環を有し、前記開口の円周環が前記筐体の中央平面からずれている筐体、および
(b) 前記筐体内にある請求項4記載の管状フィルタ、
を備え、
前記管状フィルタの円周溝の内の1つだけが、前記筐体の開口の円周環と整合されていることを特徴とする集成体。
【請求項9】
中央内腔、実質的に円筒形の外面、および前記中央内腔と前記実質的に円筒形の外面との間に延在する実質的に平らな端部区域を有する多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルから構成された管状フィルタであって、前記エキスパンデッド・メタルが多数の開口部を含み、前記実質的に円筒形の外面と前記実質的に平らな端部区域との間の交差部により形成されたコーナーが、点荷重プロセスにより丸められていることを特徴とする管状フィルタ。
【請求項10】
集成体において、
(a) エアバッグ用インフレータのための筐体であって、該筐体が、実質的に円筒形の側壁区域および端部壁区域を含む内壁を有するチャンバを備え、前記実質的に円筒形の側壁区域と前記端部壁区域との間の交差部により形成されるコーナーが丸められている筐体、および
(b) 前記筐体内にある請求項9記載の管状フィルタ、
を備え、
前記管状フィルタの丸コーナーが、インフレータの装薬が前記フィルタの中央内腔内で点火されたときに前記筐体から放出される火炎の最大長さが、コーナーが丸められていないフィルタと比べて、少なくとも25パーセント減少するように、前記チャンバの丸コーナーと係合することを特徴とする集成体。
【請求項11】
インフレータの装薬が前記フィルタの中央内腔内で点火されたときに前記筐体から放出される火炎の最大長さが、コーナーが丸められていないフィルタと比べて、少なくとも50パーセント減少することを特徴とする請求項10記載の集成体。
【請求項12】
前記フィルタの丸コーナーの平均半径が、前記筐体のチャンバの丸コーナーの平均半径の±10パーセントであることを特徴とする請求項10記載の集成体。
【請求項13】
多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルから構成された管状フィルタであって、前記エキスパンデッド・メタルが多数の開口部を有し、前記開口部の少なくともいくつかの間の該エキスパンデッド・メタルの表面が、該表面上のガスの層流を減少させるようにテキスチャーが付けられていることを特徴とする管状フィルタ。
【請求項14】
前記テキスチャーが、15特徴/インチから500特徴/インチ(約25mm)の範囲にある線形特徴密度Dを有することを特徴とする請求項13記載の管状フィルタ。
【請求項15】
前記特徴の振幅が0.5/D以下であることを特徴とする請求項14記載の管状フィルタ。
【請求項16】
多層管を形成するようにそれ自体で巻かれたエキスパンデッド・メタルから構成された管状フィルタであって、前記エキスパンデッド・メタルが多数の開口部を有し、該エキスパンデッド・メタルが第1の金属からからなり、該第1の金属の少なくとも1つの表面が、その熱伝導率が該第1の金属のものよりも少なくとも25%高い第2の金属により被覆されていることを特徴とする管状フィルタ。
【請求項17】
前記第1の金属が炭素鋼であり、前記第2の金属がスズであることを特徴とする請求項16記載の管状フィルタ。
【請求項18】
前記スズが前記炭素鋼上にメッキされていることを特徴とする請求項17記載の管状フィルタ。
【請求項19】
多数の列の開口部を含むエキスパンデッド・メタル・シートであって、隣接する列の間の間隔が一定ではなく、前記メタルが耐食性であることを特徴とするメタル・シート。
【請求項20】
前記メタルが、所望の形状に形成され、次いで、ウォッシュコートされることを特徴とする請求項19記載のメタル・シート。
【請求項21】
前記ウォッシュコートが触媒であることを特徴とする請求項20記載のメタル・シート。
【請求項22】
多数の列の開口部を含むエキスパンデッド・メタル・シートであって、隣接する列の間の間隔が一定ではなく、a)前記シートが、引き延ばされる前に別のメタルによりメッキされ、b)前記メッキが触媒であることを特徴とするメタル・シート。
【請求項23】
前記メッキにより、元のメタルに改善された熱伝導率が与えられることを特徴とする請求項22記載のシート。
【請求項24】
前記メッキにより、元のメタルに追加の耐食性が与えられることを特徴とする請求項22記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−520767(P2012−520767A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500942(P2012−500942)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/027728
【国際公開番号】WO2010/107956
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508307584)エイシーエス インダストリーズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】