説明

エキス末配合錠剤

【課題】べたつきを有するエキス末を含有し、実用的な崩壊性を有し、べたつかない錠剤を提供すること。
【解決手段】エキス末30〜70質量部、無機物2.5〜10質量部、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを合計20〜67.5質量部含有し、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムの質量比が50/100〜300/100であることを特徴とする錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風通聖散等のエキス末を含有する錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキス末とは、生薬や漢方薬を抽出し、濃縮及び乾燥して得られたものである。防風通聖散等に代表されるエキス末はべたつきがあり、吸湿しやすく、粉体流動性が悪く、非常に取り扱い難い。
【0003】
そのため、この粉体を取扱い易くするために、エキス末を造粒して、顆粒とした後に、打錠により錠剤を得る湿式打錠法が一般的に用いられている。しかし、湿式打錠法では、エキス末の造粒工程を必要とするため、製造のコストが高いという問題がある。
【0004】
これに対し、エキス末に賦形剤や流動化剤などの添加剤を添加し、粉体のままで打錠し、錠剤を得る直接打錠法は、造粒工程を必要としないため、製造コストの削減に魅力的な方法である。しかし、エキス末の強いべたつきが原因となり、直接打錠により得られた錠剤では、べたつきの抑制が困難であり、崩壊が遅延し、日本薬局方収載の崩壊時間の要件を満たす事が困難であった。
【0005】
従来、崩壊性の悪い錠剤に対して、処方中の添加剤、例えば崩壊剤の種類や配合量を吟味したり、界面活性剤等を添加したり、崩壊性や溶出性を向上させる方法が採用されてきた。しかし、エキス末は一日あたりの服用量は、多いもので6000mgと、合成医薬品の有効成分の服用量と比較して多く、服用感を向上させる目的で、賦形剤、崩壊剤等の添加剤の量を少なく抑える必要がある。そのため、実用的な錠剤硬度、錠剤摩損度、崩壊時間の要件を満たす錠剤を得ることが非常に困難であった。
【0006】
特に、べたつきを有するエキス末の代表例である防風通聖散と添加剤を配合し、直接打錠して得られた錠剤としては、べたつきがなく、崩壊時間の短いものはなかった。
【0007】
加えて、べたつき改善を目的として、湿式打錠法において、軽質無水ケイ酸カルシウム等とエキス末を水添しながら充分混練、混合する方法が知られているが、製造工程が長く、コストが高価になるという問題点があった。また、直接打錠法において得られた錠剤をコーティングすることが知られているが、製造工程が長く、製造コストが高価になるという問題点があった。
【0008】
特許文献1では、防風通聖散と不溶性食物繊維とを含有した防風通聖散配合製剤が開示されている。防風通聖散と不溶性食物繊維とを併用することによって、防風通聖散の風味を改善する方法である。
【0009】
特許文献2では、漢方エキス粉末、繊維素グリコール酸および炭酸水素ナトリウムが配合されてなる漢方エキス含有錠剤組成物が開示されている。さらに、無水ケイ酸を配合することも開示されている。また、漢方エキス粉末に無水ケイ酸および水を添加して撹拌造粒する工程と、得られた造粒物に繊維素グリコール酸および炭酸水素ナトリウムを混合する工程とを含む漢方エキス含有錠剤組成物の製造方法も開示されているが、この製造方法は、水を添加しており、直接打錠法ではない。
【0010】
特許文献3では、薬効成分を軽質無水ケイ酸で表面改質し、直接打錠可能な流動性の向上した薬効成分含有表面改質粉体を得て、次いで賦形剤を混合し、直接打錠することによって、速崩壊型錠剤を得る方法が開示されている。更に、酸化チタンやエリスリトールを用いた乾式コーティングと、上記表面改質とを組み合わせた多層表面改質によって、打錠障害が解消されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−242328号公報
【特許文献2】WO2004/006945号パンフレット
【特許文献3】WO00/54752号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
べたつき改善を目的として特許文献3の方法を試みたが、崩壊時間が著しく遅延した。湿式打錠法においては、軽質無水ケイ酸が導水管となって錠剤の崩壊時間が短くなると言われているが、直接打錠法において、乾燥エキス末のべたつきを改善することを目的として、軽質無水ケイ酸を添加すると、崩壊時間が著しく悪化することがわかった。
【0013】
上記のように、様々な検討がなされているが、崩壊性が高く、べたつかない錠剤は未だ得られていない。
本発明の課題は、べたつきを有するエキス末を含有し、実用的な崩壊性を有し、べたつかない錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するための研究を重ねた結果、エキス末と、無機物と、結晶セルロースと、クロスカルメロースナトリウムとを含む錠剤とすることで達成できることを見いだした。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0015】
1)エキス末30〜70質量部、無機物2.5〜10質量部、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを合計20〜67.5質量部含有し、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムの質量比が50/100〜300/100であることを特徴とする錠剤。
2)エキス末が、「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分の生薬エキス末又は漢方エキス末であることを特徴とする上記1)記載の錠剤。
3)クロスカルメロースナトリウムの膨潤度が、10〜22cm3であることを特徴とする上記1)又は2)記載の錠剤。
4)無機物が二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウムのいずれか1種以上であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の錠剤。
5)エキス末が、防風通聖散であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の錠剤。
6)結晶セルロースが、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積4〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であることを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の錠剤。
7)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.265cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする上記1)〜6)のいずれかに記載の錠剤。
8)「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分である生薬エキス末または漢方エキス末と無機物を混合し、
その後、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを加えて混合し、
直接打錠法で圧縮成型することを特徴とする上記1)〜7)のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
9)結晶セルロースが、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積4〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であることを特徴とする上記8)記載の錠剤の製造方法。
10)結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.265cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする上記8)又は9)記載の錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、重量CVが1.0%以下、錠剤硬度が70〜300N、崩壊時間が10〜30分、摩損度が0.5%以下であり、べたつかない錠剤が、簡便に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本発明は、エキス末、無機物、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを特定の質量比で含有した錠剤である。
【0018】
<防風通聖散エキス末>
本実施形態において、エキス末とは、生薬や漢方薬を抽出し、濃縮及び乾燥して得られたものである。特に、べたつきを有するエキス末が好適である。 本実施形態において、べたつきとは、錠剤を素手でつまみ、つまんだ指をはなした時、錠剤が指に付着することをいう。定量的には、エキス末と測定用結晶セルロースとして「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分であるものを、べたつきがあるエキス末とした。
【0019】
具体的な測定方法としては、エキス末と結晶セルロースの「セオラスPH−101」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を1:1で混合し、単発打錠機(MODEL−1321DW;アイコーエンジニアリング)で、錠剤(直径9mmΦ、13R、重量300mg)の硬度が80Nとなるように打錠し、日本薬局方収載の崩壊試験(純水、ディスクなし)により、崩壊時間を測定し、崩壊時間が5分以上のものを、べたつきがある崩壊が遅延するエキス末と判定した。
下記に、べたつきを有するエキス末の具体例を表1と表2に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
ここで、べたつきがあるエキス末の代表例である防風通聖散について以下で説明する。
防風通聖散の植物原料としては、具体的には、例えばマオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)、レンギョウ(Forsythia suspense Vahl, Forsythia viridissima Lindley)、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa, Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、センキュウ(Cnidium officinale Makino)、サンシン(Gardenia jasminoides Ellis)、ハッカ(Mentha arvensis Linne var. piperascens Malinvaud)、ボウフウ(Saposhnikovia divaricata Schischkin)、ダイオウ(Rheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinable Baillon, Rheum coreanum Nakaiまたはそれらの種間雑種)、ビャクジュツ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura, Atractylodes ovata De Candolle)、キキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、オウゴン(Scutellariae baicalensis Georgi)、ボウショウ(芒硝:硫酸ナトリウム)、カッセキ(滑石:天然含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素含有物)およびセッコウ(石膏:含水硫酸カルシウム)である。
【0023】
これらの植物原料は、日本薬局方に準じて使用部位が規定されている。本発明において使用し得る防風通聖散の調製は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)に準じて行い得る。
【0024】
本実施形態において、好ましい防風通聖散エキス末としては、「防風通聖散乾燥エキスA」、「防風通聖散乾燥エキスAM」、「防風通聖散乾燥エキスE」、「防風通聖散乾燥エキスEM」(日本粉末株式会社製)、および「防風通聖散料乾燥エキス−C」、「防風通聖散料乾燥エキス−F」(アルプス薬品工業株式会社製)等の商品が挙げられる。
また、上記したエキス末は、2種以上を組み合わせてもよい。
【0025】
<無機物>
本実施形態において、無機物としては、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム及びこれらの混合物が好ましい。
【0026】
<結晶セルロース>
本実施形態において、結晶セルロースは、白色の結晶性粉末であり、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製したものである。
結晶セルロースは、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積4〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であるものが好ましい。
【0027】
また、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.265cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする結晶セルロースが好ましい。
【0028】
市販品としては、「セオラスPH−101」、「セオラスPH−102」、「セオラスPH−200」、「セオラスPH−301」、「セオラスPH−302」、「セオラスKG−802」、「セオラスKG−1000」、「セオラスUF−702」、「セオラスUF−711」(商品名)(旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。特に結晶セルロースを多く添加する場合は、成形性と流動性の良いものが望ましい。
【0029】
打錠工程において、オープンフィーダーで打錠する場合、「セオラスUF−702」、「セオラスUF−711」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を用いることが好ましい。攪拌フィーダーで打錠する場合、「セオラスKG−802」、「セオラスKG−1000」(商品名)(旭化成ケミカルズ)を用いることが好ましい。流動性はよいが成形性の低い、「セオラスPH−101」、「セオラスPH−102」、「セオラスPH−301」、「セオラスPH−302」では、高速での打錠時に、キャッピング様の打錠障害が発生する場合がある。セルロースの物性の測定方法は以下の通りである。
【0030】
(1)平均重合度
第13改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された銅エチレンジアミン溶液粘度法により測定した値を平均重合度とする。
【0031】
(2)75μm以下の粒子の平均L/D
エアージェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)を用い、JIS標準篩75μmで篩過した粒子の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、装置:Hyper700,ソフトウエア:Imagehyper)、粒子に外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を粒子のL/Dとした。粒子の平均L/Dとしては少なくとも粒子400個の平均値とした。但し、個々の粒子は絡まりがないように予めばらけた状態にして測定する必要がある。
【0032】
(3)乾燥粒子の平均粒子径(μm)
粉体試料の平均子粒径は、ロータップ式篩振盪機(「シーブシェーカーA型」(商品名)平工作所製)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより粒度分布を測定し、累積重量50%粒径を平均粒子径とした。
【0033】
(4)見掛け比容積[cm/g]
100cmのガラス製メスシリンダーに、粉体試料を定量フィーダーなどを用いて2〜3分かけて粗充填し、粉体層上面を筆のような軟らかい刷毛で水平にならし、その容積を読みとる。読み取った容積を、粉体試料の重量で除した値である。粉体の重量は容積が70〜100cm程度になるように適宜決定する。
【0034】
(5)見掛けタッピング比容積[cm/g]
市販粉体物性測定機(「パウダーテスターT−R型」ホソカワミクロン製)を用い、100cmカップに粉体を充填し、180回タッピングした後、カップの体積を、カップに充填されて残る粉体層の重量で除して求めた。
【0035】
(6)安息角(°)
杉原式安息角測定器(スリットサイズ奥行10x幅50x高さ140mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、セルロース粉末を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。
【0036】
(7)粒子内細孔容積(cm/g)
「オートポア9520型」(商品名)(島津製作所(株)製)を用い、水銀ポロシメトリーにより細孔分布を求めた。測定に用いた各試料粉体は、室温で15時間減圧乾燥したものを使用した。初期圧20kPaの測定により、得られた細孔分布から、細孔径が0.1〜10μmの範囲で測定された細孔容積を粒子内細孔容積として算出した。
【0037】
(8)結晶形
X線ディフラクトメーターによりX線回折を行い、そのX線パターンにより判定した。
【0038】
(9)比表面積(m/g)
マイクロメリティクス(株)製、商品名、TriSTARを用い、吸着ガスとして窒素を使用しBET法により測定した。各試料粉体を約1gずつセルに仕込み測定した。測定に用いた各試料粉体は、110℃で3時間減圧乾燥したものを使用した。
【0039】
<クロスカルメロースナトリウム>
本実施形態の錠剤は、崩壊性の観点から、クロスカルメロースナトリウムを含有する。クロスカルメロースナトリウムは、膨潤度が10〜22cm3であるものが好ましい。例えば「キッコレート」ND−200等が、市販品として挙げられる。
【0040】
<その他成分>
本発明の錠剤は、エキス末、無機物、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム以外の、その他の成分を含んでも良い。
その他の成分としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0041】
賦形剤としては、トレハロース、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトースなどの糖類、キシリトール、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール類、コメ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機類等が挙げられる。
【0042】
崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン等が挙げられる。
【0043】
結合剤としては、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等が挙げられる。
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0044】
滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0045】
矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、l−メントールなどが挙げられる。
【0046】
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール等が挙げられる。着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、リボフラビンなどが挙げられる。
【0047】
甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア等が挙げられる。
【0048】
界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0049】
<質量比について>
本実施形態の錠剤は、エキス末を30〜70質量部、無機物を2.5〜10質量部、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを合計20〜67.5質量部含有する。
エキス末は、一日あたりの服用量が多く、多いものでは6000mgというものもある。そのため配合量を30質量部未満にすると、一日あたりの服用量を満たすために、摂取する錠剤の数が多くなり、服用感が悪化する。一方、配合量が70質量部を超えると、添加剤の添加量を減らす必要があり、エキス末のべたつきと崩壊遅延を抑制できなくなる。好ましくは、40〜70質量部、より好ましくは50〜70質量部である。
【0050】
無機物の配合量は、2.5〜10質量部である。2.5質量部以上であれば、錠剤のべたつきが改善される。添加する程、べたつきの改善には効果があるが、10質量部を超えると崩壊時間が遅延する。好ましくは5〜10質量部である。
【0051】
結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムは合計20〜67.5質量部である。より好ましくは、20〜45質量部である。更に、べたつき、崩壊遅延を改善し、実用硬度、実用摩損度とするために、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムの質量比は、50/100〜300/100である。50以上であれば、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムの量が十分であり、崩壊性が高い錠剤が得られる。また、300以下であれば、結晶セルロースの量が十分であり、硬度、摩損度が優れた錠剤が得られる。従って、上記質量比の範囲とすることによって、実用崩壊時間、実用硬度、実用摩損度を満足する、錠剤が得られるのである。
【0052】
また、錠剤に対して、エキス末を30〜70質量%含むことが好ましい。より好ましくは、50〜70質量%である。
【0053】
<製造方法>
以下で、本発明の錠剤の製造方法について説明する。
まず、混合粉体を得る方法を述べる。上記のエキス末と無機物を先に混合する。混合する装置は、一般的なバーチカルグラニュレーター、V型混合機、タンブラー型ミキサーなどを用いることができる。簡易的には、混合粉体をポリ袋に入れ、混合しても構わない。次に、結晶セルロースと、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムを添加し混合することにより、混合粉体が得られる。先に、べたつきを有するエキス末と無機物を混合することによって、エキス末のべたつきを抑えることができる。また、トレハロース等、糖類の添加は崩壊を改善する効果があり、添加剤として好ましく、添加量は5〜40重量%が好ましい。
【0054】
次に混合粉体から直接打錠法により錠剤を得る方法を述べる。エキス末、無機物、結晶セルロース、崩壊剤を含む混合粉体を、一般的な装置であるバーチカルグラニュレーター、V型混合機、タンブラー型ミキサーなどで混合し、打錠機に投入し、圧縮成形することで、簡便に錠剤が得られる。
【0055】
打錠機としては、「リブラ2」(商品名)、「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)(菊水製作所製)等の市販品のロータリー打錠機を挙げることができる。粉末を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさにより攪拌フィーダーやオープンフィーダーなどフィーダーの種類を選択することができる。また、簡易的には、「MODEL−1321DW」(商品名)(アイコーエンジニアリング製)、「Tab Flex」(商品名)(岡田精工製)等の単発打錠機が挙げられる。
【0056】
本実施形態の錠剤は、優れた崩壊性を有し、またべたつきがない錠剤である。好ましくは、錠剤硬度70〜300N、重量CV1.0%以下、崩壊時間10〜30分、摩損度0.5%以下である錠剤である。より好ましくは、錠剤硬度100N〜200N、崩壊時間は10〜20分である。
加えて、本実施形態の錠剤は、直接打錠法によって簡便に得ることができる。
【実施例】
【0057】
本発明を実施例に基づいて説明する。
本願の実施例、比較例で用いられる物性の測定方法及び条件は以下のとおりである。
【0058】
<錠剤のべたつき評価>
得られた錠剤(直径9.5mmΦ、13.5R、重量360mg)のべたつきの評価は、モニター(べたつきに敏感な人)10名に、素手で触ってもらい下記の基準で判定した。
○:素手でつまみ、つまんだ指をはなした時、指に付着しない錠剤の個数が、10個中 10個である。
×:素手でつまみ、つまんだ指をはなした時、10個中1個以上が指に付着した。
【0059】
<錠剤硬度>
シュロインゲル硬度計で、錠剤を破壊するのに必要な荷重を求め、錠剤10個の平均値を算出した。
【0060】
<錠剤の崩壊試験>
日本薬局方収載の一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液には水を用い、ディスクを使用しない方法で、錠剤の崩壊時間を測定し、錠剤6個の平均値を算出した。
【0061】
<錠剤の摩損度試験>
第15改正日本薬局方、製剤総則に従って実施した。一定速度の25rpmで回転する円筒中に錠剤を20錠入れ、中板により錠剤の落下を繰り返した。4分間回転させ、円筒内の錠剤を取り出した。破損分離した粉及び小粒子を篩別除去して質量を測定し、質量減をもとの質量に対する百分率で示した。
【0062】
<重量CV>
打錠により得られた錠剤10錠の重量を測定し、平均重量と、重量の標準偏差を求め、(標準偏差/平均重量)×100(%)で定義される変動係数を重量CVという。重量CVが小さいほど、重量のばらつきが小さいことを意味する。重量CV1%以下が実用範囲内であり、良好な重量CVである。
以下では、本実施形態におけるエキス末として、べたつきがあるエキス末の代表例である防風通聖散を用いて実験を行った。
【0063】
[実施例1]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、無機物としてアエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):85g、クロスカルメロースナトリウムとしてキッコレートND−200(ニチリン化学)100gを添加し、3分間ポリ袋中で手混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、さらにポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0064】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間12.8分、摩損度0.01%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0065】
[実施例2]
結晶セルロースをセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例1と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度87N、崩壊時間12.5分、摩損度0.21%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0066】
[実施例3]
結晶セルロースをセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例1と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度83N、崩壊時間12.5分、摩損度0.22%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0067】
[実施例4]
結晶セルロースをセオラスPH−101(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例1と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度97N、崩壊時間13.4分、摩損度0.22%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0068】
[比較例1]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、無機物(二酸化ケイ素を主成分とする)タルク25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ):50g、UF−702(旭化成ケミカルズ):50g、崩壊剤としてα化デンプンであるSWELLSTAR PD−1(旭化成ケミカルズ):85gを添加し、3分間ポリ袋中で手で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0069】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度68N、崩壊時間28.2分、摩損度0.35%でありであり、硬度、崩壊性、摩損度は実用範囲内であったが、べたつきがあった。
【0070】
[比較例2]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、結晶セルロースとしてセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ):50g、UF−702(旭化成ケミカルズ):50g、崩壊剤としてクロスホビドンであるXL−10:110gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0071】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度60N、崩壊時間28.3分、摩損度0.25%であり、硬度、崩壊性、摩損度は実用範囲内であったがべたつきがあった。
【0072】
[比較例3]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、セオラスKG−1000(旭化成ケミカルズ):50gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ):50g、SWELLSTAR PD−1:110gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0073】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度90N、崩壊時間27.8分、摩損度0.18%であり、硬度、崩壊性、摩損度は実用範囲内であったがべたつきがあった。
【0074】
[比較例4]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ):50g、キッコレートND−200(ニチリン化学)135gを添加し、3分間ポリ袋中で混合した。
【0075】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度30N、崩壊時間15.0分、摩損度1.5%であり、錠剤のべたつきはなかったが硬度、摩損度ともに実用範囲外であった。
【0076】
[比較例5]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):50g、キッコレートND−200(ニチリン化学)135gを添加し、3分間ポリ袋中で混合した。
【0077】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度42N、崩壊時間15.2、摩損度1.0%であり、錠剤のべたつきはなかったが硬度、摩損度ともに実用範囲外であった。
【0078】
[比較例6]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):50g、キッコレートND−200(ニチリン化学)135gを添加し、3分間ポリ袋中で混合した。
【0079】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度36N、崩壊時間15.3分、摩損度0.80%であり、錠剤のべたつきはなかったが硬度、摩損度ともに実用範囲外であった。
【0080】
[比較例7]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):140g、キッコレートND−200(ニチリン化学)45gを添加し、3分間ポリ袋中で混合した。
【0081】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度130N、崩壊時間32分、摩損度0.03%であり、錠剤のべたつきはなかったが崩壊性が実用範囲外であった。
以上実施例1〜4及び比較例1〜7の結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例1〜4の結果から、結晶セルロースの種類を変えても、実用範囲内の錠剤が得られることが分かる。
【0084】
[実施例5]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):150g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):135g、トレハロース−P(旭化成ケミカルズ)140g、キッコレートND−200(ニチリン化学)50gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0085】
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度135N、崩壊時間15.3分、摩損度0.19%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0086】
[実施例6]
結晶セルロースをセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例5と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度130N、崩壊時間16.2分、摩損度0.20%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0087】
[実施例7]
結晶セルロースをセオラスPH−101(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例5と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度167N、崩壊時間16.3分、摩損度0.00%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0088】
[実施例8]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):315g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):60g、キッコレートND−200(ニチリン化学)100gを添加し、3分間ポリ袋中で手混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手混合した。
ロータリー打錠機(「クリーンプレス・コレクト12HUK」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤を オープンフィーダー、ターンテーブル回転数54rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度103N、崩壊時間15.5分、摩損度0.17%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0089】
[実施例9]
結晶セルロースをセオラスPH−301(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例8と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度86N、崩壊時間14.3分、摩損度0.21%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0090】
[実施例10]
結晶セルロースをセオラスPH−101(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例8と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度114N、崩壊時間15.6分、摩損度0.08%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
以上実施例5〜10の結果を表4に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
[実施例11]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)50gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):110g、キッコレートND−200(ニチリン化学)50gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
ロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数30rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度100N、崩壊時間12.7分、摩損度0.05%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった
【0093】
[実施例12]
結晶セルロースをセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例11と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度75N、崩壊時間12.1分、摩損度0.28%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった
【0094】
[実施例13]
結晶セルロースをセオラスPH−101(旭化成ケミカルズ)としたこと以外は実施例11と同様にして、錠剤を作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度86N、崩壊時間12.9分、摩損度0.24%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった
【0095】
[実施例14]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):290g、アエロジル−200(日本アエロジル)50gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):85g、キッコレートND−200(ニチリン化学)100gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
ロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤を攪拌フィーダー、ターンテーブル回転数30rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度123N、崩壊時間12.8分、摩損度0.01%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0096】
[実施例15]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):350g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−711(旭化成ケミカルズ):83.5g、キッコレートND−200(ニチリン化学)41.5gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0097】
ロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数30rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度138N、崩壊時間23.6分、摩損度0.05%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0098】
[実施例16]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):350g、アエロジル−200(日本アエロジル)2.5gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):83.5g、キッコレートND−200(ニチリン化学)41.5gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):25gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0099】
ロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数30rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度129N、崩壊時間23.6分、摩損度0.08%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
【0100】
[実施例17]
防風通聖散料エキス−F(アルプス薬品工業):350g、アエロジル−200(日本アエロジル)25gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG−10)で10分混合し(ブレード回転数400rpm、チョッパー回転数2000rpm)、その後、結晶セルロースとしてセオラスUF−702(旭化成ケミカルズ):83.5g、キッコレートND−200(ニチリン化学)41.5gを添加し、3分間ポリ袋中で混合し、植物性ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業):2.5gを加え、ポリ袋中にて30秒手で混合した。
【0101】
ロータリー打錠機(「リブラ2」(商品名)菊水製作所製)で打錠し、打錠圧12kNで重量360mg、直径9.5mmΦ、13.5Rの錠剤をオープンフィーダー、ターンテーブル回転数50rpmにて作製した。
打錠障害なく打錠でき、得られた錠剤は硬度94N、崩壊時間26.6分、摩損度0.10%であり、硬度、崩壊性、摩損度、べたつきともに実用範囲内であった。
以上実施例11〜17の結果を表5に示す。
【0102】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の錠剤は、べたつきがなく、崩壊性が良好である。また、エキス末の代表例である防風通聖散は、メタボリックの治療薬として有効なエキス末であり、その防風通聖散を含む錠剤においても、好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキス末30〜70質量部、無機物2.5〜10質量部、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムを合計20〜67.5質量部含有し、結晶セルロースとクロスカルメロースナトリウムの質量比が50/100〜300/100であることを特徴とする錠剤。
【請求項2】
エキス末が、「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分の生薬エキス末又は漢方エキス末であることを特徴とする請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
クロスカルメロースナトリウムの膨潤度が、10〜22cm3であることを特徴とする請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】
無機物が二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウムのいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
エキス末が、防風通聖散であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
結晶セルロースが、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積4〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.265cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤。
【請求項8】
「セオラスPH−101」(旭化成ケミカルズ製)、「AVICEL、PH−101」(FMC社製)、「EMCOCEL、50M」(JRS社製)、「VIVAPOR、101P」(JRS社製)、「COMPRECEL、101QD」(明台社製)から選ばれる結晶セルロースとの等量混合物を圧縮して得られる錠剤硬度80Nの錠剤の崩壊時間が5〜60分である生薬エキス末または漢方エキス末と無機物を混合し、
その後、結晶セルロースと崩壊剤を加えて混合し、
直接打錠法で圧縮成型することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【請求項9】
結晶セルロースが、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/Dが2〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見掛け比容積4〜7cm/g、見掛けタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であることを特徴とする請求項8記載の錠剤の製造方法。
【請求項10】
結晶セルロースが、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.265cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満であることを特徴とする請求項8又は9記載の錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−1474(P2012−1474A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137156(P2010−137156)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】