説明

エスカレータのベルト滑り検出装置

【課題】エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを、自動的にかつ正確に検出することができるようにする。
【解決手段】 ベルト滑り検出装置60は、電動機26のトルクを制御する電動機トルク制御部62と、電動機26の出力軸32の回転を検出する電動機回転検出部64と、減速機28の入力軸36の回転を検出する減速機回転検出部66と、ベルト44の滑りを判断する滑り判断部68とを有する。滑り判断部68が、エスカレータ10の停止時に電動機26が所定のトルクを出力したときに、電動機回転検出部64と減速機回転検出部66が検出する検出結果に基づいて、ベルト44の滑りを判断するので、ベルト44の滑りを、自動的にかつ正確に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを検出するエスカレータのベルト滑り検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータの構成について、図1,2を用いて説明する。図1は、従来のエスカレータ全体の斜視図である。図2は、従来のエスカレータの側方断面図である。
【0003】
エスカレータ110は、図1に示されるように、乗り口112aと降り口(図示せず)とからなる一対の乗降口112の間をガイドレール(図示せず)等に沿って循環走行する複数の踏段114と、循環走行する複数の踏段114と同期して欄干116の外周に沿ってスライドする移動手すり118とを備えている。
【0004】
エスカレータ110の乗降口112には、乗降板120が設置されている。乗降板120は、エスカレータ110が設置される建屋の床面(図示せず)と面一になるように設けられている。乗降板120と踏段114との間には、乗客の足下が踏段114に巻き込まれることを防止するコムプレート122が設けられている。コムプレート122の先端には、くし124が取り付けられている。くし124は、踏段114に形成されるクリート(図示せず)に噛み合う。くし124が、クリートと噛み合うことにより、異物、ゴミなどがエスカレータ110の内部へ侵入することを防止する。
【0005】
また、エスカレータ110は、図2に示されるように、エスカレータ110を駆動する電動機126と、電動機126の回転速度を減速する減速機128と、減速機128から駆動力を受ける駆動スプロケット130とを有する。
【0006】
電動機126は、出力軸132を有する。この出力軸132の端部には、電動機プーリ134が取り付けられている。減速機128は、入力軸136と出力軸138とを有する。入力軸136の端部には、減速機プーリ140が取り付けられ、出力軸138の端部には、チェーンスプロケット142が取り付けられている。電動機プーリ134と減速機プーリ140との間には、ベルト144が巻き掛けられている。駆動スプロケット130とチェーンスプロケット142との間には、駆動チェーン146が巻き掛けられている。また、駆動スプロケット130には、無端状に延び複数の踏段114が連結された踏段チェーン148が巻き掛けられている。
【0007】
電動機126の動作により、電動機126から出力された駆動力が減速機128を介して駆動スプロケット130に伝達される。駆動スプロケット130に伝達された駆動力が踏段チェーン148を送ることにより、踏段チェーン148に取り付けられた複数の踏段114が循環走行することとなる。循環走行する踏段114は、乗り口側の乗降板120の下方を経て乗り口112aにおいて乗客を乗せた後、降り口で乗客を降ろす。そして、踏段114は、降り口から降り口側の乗降板(図示せず)の下方を経て降り口側反転部(図示せず)へ移動し、降り口側反転部で反転した後に、乗り口側反転部150へ移動する。そして、踏段114は、乗り口側反転部150で再び反転した後に、乗り口側に乗降板120の下方を経て乗り口112aに移動する。このようにして、踏段チェーン148に取り付けられた複数の踏段114は循環走行する。
【0008】
したがって、エスカレータ110の利用者は、踏段114と同期してスライドする移動手すり118に手を掛けて、乗り口側の乗降板120の下方から乗り口112aに移動してきた踏段114にタイミング良く乗る必要がある。
【0009】
従来のエスカレータ110に用いられるベルト114においては、一般的に、保守員による定期的な保守点検でベルト114のテンションや摩耗などのチェックが行われる。そして、テンション不足や摩耗の進行によりベルト114に滑りが生じていると保守員が判断した場合、保守員によりテンションの調整やベルト114の交換などの保守作業が行われる。このように、ベルト114の状態は定期点検でしか確認することができないため、定期点検以外の時期にベルト114の状態が悪化しても、それを把握することは困難であった。
【0010】
下記特許文献1には、電動機と、電動機の駆動により乗りかごを昇降させる油圧ポンプとの間に取り付けられたVベルトのテンション不足を検出する油圧式エレベータの制御装置が記載されている。この制御装置には、電動機の回転数を検出する電動機回転数検出器と、油圧ポンプの回転数を検出する油圧ポンプ回転数検出器とが接続され、これらの検出器から回転数信号が制御装置に入力されるように構成されている。制御装置は、電動機と油圧ポンプの回転数が同期していないと判断した場合、Vベルトのテンション不足を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−20053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1の制御装置によれば、保守員がVベルトを点検することなく、Vベルトのテンション不足を検出することができる。しかしながら、上記特許文献1の制御装置は、油圧式エレベータの運転中にVベルトのテンション不足を検出するため、検出結果の信頼性に問題があった。具体的には、以下のような理由のためである。
【0013】
油圧式エレベータの運転中、昇降する乗りかご内の乗員の人数は様々である。すなわち、乗員の人数が0のときもあれば、設定された定員の数のときもある。このように、エレベータの運転中においては、乗りかごの人数が一定ではないので、このときに乗りかごから油圧ポンプに掛かる負荷は一定ではなく変動する。油圧ポンプに掛かる負荷が変動すると、Vベルトの状態(テンションの状態)が同じであっても、制御装置の検出結果が変わってしまう可能性がある。例えば、Vベルトが劣化しているときに油圧ポンプに掛かる負荷が大きいと、Vベルトが滑って電動機と油圧ポンプの回転数が同期しなくなり、制御装置がVベルトのテンション不足を検出する。しかし、同様にVベルトが劣化しているにもかかわらず、油圧ポンプに掛かる負荷が小さいと、Vベルトの滑りが発生せずに、制御装置がVベルトのテンション不足を検出することができないおそれがある。
【0014】
このように、従来のエスカレータに、上記特許文献1のような技術を用いたとしても、エスカレータの運転中に減速機に掛かる負荷が変動するため、ベルトの滑りを正確に検出することができないという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを、自動的にかつ正確に検出することができるエスカレータのベルト滑り検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを検出するエスカレータのベルト滑り検出装置において、電動機のトルクを制御する電動機トルク制御部と、電動機の出力軸の回転を検出する電動機回転検出部と、減速機の入力軸の回転を検出する減速機回転検出部と、エスカレータの停止時に電動機トルク制御部が電動機から所定のトルクを出力させたときに、電動機回転検出部と減速機回転検出部が検出する検出結果に基づいて、ベルトの滑りを判断する滑り判断部と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、滑り判断部は、電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転しない場合、ベルトに滑りが発生していると判断することができる。
【0018】
また、滑り判断部は、電動機の出力軸が回転せず、かつ減速機の入力軸が回転しない場合、ベルトに滑りが発生していないと判断することができる。
【0019】
また、滑り判断部は、電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転する場合、ベルトに滑りが発生していないと判断することができる。
【0020】
また、電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転する場合、電動機トルク制御部が電動機から所定のトルクより小さいトルクを出力させて、滑り判断部がベルトの滑りを判断することができる。
【0021】
さらに、減速機には入力軸を制動するブレーキが設けられ、このブレーキの動作により、エスカレータを停止させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエスカレータのベルト滑り検出装置によれば、エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを、自動的にかつ正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のエスカレータ全体の斜視図である。
【図2】従来のエスカレータの側方断面図である。
【図3】エスカレータの側方断面図である。
【図4】エスカレータのベルト滑り検出装置の構成を示す図である。
【図5】エスカレータのベルト滑り検出装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るエスカレータのベルト滑り検出装置の実施形態について、図に従って説明する。
【0025】
まず、エスカレータ10の構成について図3を用いて説明する。エスカレータ10は、乗り口12aと降り口(図示せず)とからなる一対の乗降口12の間をガイドレール(図示せず)等に沿って循環走行する複数の踏段14と、循環走行する複数の踏段14の幅方向の両側に立設された欄干16とを備えている。欄干16の外周には、踏段14の循環走行と同期してスライドする移動手すり18が掛け渡されている。
【0026】
エスカレータ10の乗降口12には、乗降板20が設置されている。乗降板20は、エスカレータ10が設置される建屋の床面(図示せず)と面一になるように設けられている。乗降板20と踏段14との間には、乗客の足下が踏段14に巻き込まれることを防止するコムプレート22が設けられている。コムプレート22の先端には、くし24が取り付けられている。くし24は、踏段14に形成されるクリート(図示せず)に噛み合う。くし24が、クリートと噛み合うことにより、異物、ゴミなどがエスカレータ10の内部へ侵入することを防止する。
【0027】
また、エスカレータ10は、エスカレータ10を駆動する電動機26と、電動機26の回転速度を減速する減速機28と、減速機28から駆動力を受ける駆動スプロケット30とを有する。
【0028】
電動機26は、出力軸32を有する。この出力軸32の端部には、電動機プーリ34が取り付けられている。減速機28は、入力軸36と出力軸38とを有する。入力軸36の端部には、減速機プーリ40が取り付けられ、出力軸38の端部には、チェーンスプロケット42が取り付けられている。電動機プーリ34と減速機プーリ40との間には、ベルト44が巻き掛けられており、電動機26から出力される駆動力を減速機28に伝達する。ベルト44は、例えばVベルトである。Vベルトは、一本であっても、複数本であってもよい。駆動スプロケット30とチェーンスプロケット42との間には、駆動チェーン46が巻き掛けられており、減速機28から出力される駆動力を駆動スプロケット30に伝達する。また、駆動スプロケット30には、無端状に延び複数の踏段14が連結された踏段チェーン48が巻き掛けられている。
【0029】
電動機26の動作により、電動機26から出力された駆動力が減速機28を介して駆動スプロケット30に伝達される。駆動スプロケット30に伝達された駆動力が踏段チェーン48を送ることにより、踏段チェーン48に取り付けられた複数の踏段14が循環走行することとなる。循環走行する踏段14は、乗り口側の乗降板20の下方を経て乗り口12aにおいて乗客を乗せた後、降り口で乗客を降ろす。そして、踏段14は、降り口から降り口側の乗降板(図示せず)の下方を経て降り口側反転部(図示せず)へ移動し、降り口側反転部で反転した後に、乗り口側反転部50へ移動する。そして、踏段14は、乗り口側反転部50で再び反転した後に、乗り口側に乗降板20の下方を経て乗り口12aに移動する。このようにして、踏段チェーン48に取り付けられた複数の踏段14は循環走行する。
【0030】
また、エスカレータ10は、ベルト44の滑りを検出するベルト滑り検出装置60を有する。本発明に係るベルト滑り検出装置(以下、単に検出装置という)60の構成について図4を用いて説明する。
【0031】
検出装置60は、電動機26のトルクを制御する電動機トルク制御部62と、電動機26の出力軸32の回転を検出する電動機回転検出部64と、減速機28の入力軸36の回転を検出する減速機回転検出部66と、ベルト44の滑りを判断する滑り判断部68とを有する。
【0032】
電動機トルク制御部62は、電動機26に電力を供給するインバータ(図示せず)を介して、電動機26に接続されている。電動機トルク制御部62は、駆動指令をインバータに送り、その駆動指令に対応する電力をインバータに発生させ、電動機26を回転させる。電動機トルク制御部62からの駆動指令により、電動機26は任意のトルクを出力することができる。電動機トルク制御部62は検出装置60に接続されており、滑り検出動作を開始するとき、電動機26が所定のトルクTr1を出力するように、検出装置60から電動機トルク制御部62に駆動指令が出力される。ここで、所定のトルクTr1とは、通常運転時に、エスカレータ10を動作させるために必要なトルクであり、エスカレータ10に最大の負荷が掛かったときに動作させることができるトルクとすることができる。
【0033】
電動機回転検出部64は、電動機26の出力軸32の反出力側の端部、すなわち電動機プーリ34が設けられている端部とは反対側の端部に設けられている。電動機回転検出部64は、例えばエンコーダであり、電動機26の出力軸32の回転に応じて速度回転信号を生成する。速度回転信号はパルス信号である。電動機回転検出部64は検出装置60に接続されており、電動機回転検出部64からの信号が検出装置60に入力される。
【0034】
減速機回転検出部66は、減速機28の入力軸36であって、減速機プーリ40と減速機28との間に設けられている。減速機回転検出部66は、例えばエンコーダであり、減速機28の入力軸36の回転に応じて速度回転信号を生成する。速度回転信号はパルス信号である。減速機回転検出部66は検出装置60に接続されており、減速機回転検出部66からの信号が検出装置60に入力される。
【0035】
滑り判断部68は、エスカレータ10の停止時に電動機トルク制御部62が電動機26から所定のトルクTr1を出力させたときに、電動機回転検出部64と減速機回転検出部66とが検出する検出結果に基づいて、ベルト44の滑りを判断する。以下、滑り判断部68の判断方法について、ベルト44に滑りが発生している場合と、ベルト44に滑りが発生していない場合とに分けて具体的に説明する。
【0036】
まず、ベルト44に滑りが発生している場合について説明する。ベルト44が劣化すると、ベルト44のテンションが低下し、ベルト44が滑り易くなる。このような状況のときに、エスカレータ10を停止させたまま電動機26から所定のトルクTr1を出力させると、エスカレータ10が停止しているので減速機28の入力軸36は回転しない。しかし、ベルト44が滑ってしまうので、電動機26の出力軸32だけが回転してしまう。これらの状況を、電動機回転検出部64と減速機回転検出部66とが検出して検出装置60に出力する。すなわち、電動機回転検出部64は、電動機26の出力軸32が回転したことを検出して検出装置60に出力し、減速機回転検出部66は、減速機28の入力軸36が回転していないことを検出して検出装置60に出力する。滑り判断部68は、検出装置60に送られたこれらの検出結果、すなわち電動機26の出力軸32が回転し、かつ減速機28の入力軸36が回転していないという結果に基づいて、ベルト44に滑りが発生していると判断する。
【0037】
次に、ベルト44に滑りが発生していない場合について説明する。ベルト44が劣化していない、すなわち正常であると、ベルト44のテンションも正常であり、通常運転時においてベルト44は滑らない。このような状況のときに、エスカレータ10を停止させたまま電動機26から所定のトルクTr1を出力させると、エスカレータ10が停止しているので減速機28の入力軸36は回転しない。また、ベルト44が滑らないので、電動機26の出力軸32も回転しない。これらの状況を、電動機回転検出部64と減速機回転検出部66とが検出して検出装置60に出力する。すなわち、電動機回転検出部64は、電動機26の出力軸32が回転していないことを検出して検出装置60に出力し、減速機回転検出部66は、減速機28の入力軸36が回転していないことを検出して検出装置60に出力する。滑り判断部68は、検出装置60に送られたこれらの検出結果、すなわち電動機26の出力軸32が回転せず、かつ減速機28の入力軸36が回転していないという結果に基づいて、ベルト44に滑りが発生していないと判断する。
【0038】
また、電動機26から出力された所定のトルクTr1が、エスカレータ10を停止させる制動力より大きくなってしまう場合がある。この場合、ベルト44が滑らずに電動機26の駆動力が減速機28に伝達されれば、減速機28の入力軸36が回転してエスカレータ10が動いてしまう。よって、滑り判断部68は、電動機26の出力軸32が回転し、かつ減速機28の入力軸36が回転する場合についても、ベルト44に滑りが発生していないと判断する。
【0039】
ここで、エスカレータ10を停止させる構成について説明する。減速機28には、入力軸36を制動するブレーキ70が設けられている。ブレーキ70は、減速機28の入力軸36の反入力側の端部、すなわち減速機プーリ40が設けられている端部とは反対側の端部に設けられている。ブレーキ70の動作により、入力軸36がロックされるので、エスカレータ10を停止させることができる。ブレーキ70は検出装置60に接続されており、滑り検出動作を開始するとき、ブレーキ70が入力軸32を制動するように、検出装置60からブレーキ70に指令が出力される。
【0040】
次に、ベルト44の滑りを検出する場合における検出装置60の制御動作について、図5を用いて説明する。なお、検出装置60が制御動作するときは、通常運転時以外のときである。通常運転時以外のときであれば、いつでも滑り検出動作を行うことができ、例えば毎日または一週間毎に滑り検出動作を行うこともできる。
【0041】
まず、ステップS101において、ブレーキ70が動作し、減速機28の入力軸36がロックされてエスカレータ10を停止させる。
【0042】
ステップS102において、電動機26から所定のトルクTrが出力する。そして、各検出器64,66により、電動機26の出力軸32と減速機28の入力軸36との回転の有無が検出される。
【0043】
ステップS103において、電動機26の出力軸32が回転したか否かが判断される。出力軸32が回転した場合、ステップS104に進む。一方、出力軸32が回転していない場合、ステップS106に進む。ステップS106においては、電動機26の出力軸32が回転していないので、当然に減速機28の入力軸36も回転していないことを確認し、ステップS107に進む。ステップS107においては、ベルト44の滑りが検出されずにベルト44が正常であると判断される。
【0044】
ステップS104において、減速機28の入力軸36が回転したか否かが判断される。入力軸36が回転していない場合、ステップS105に進み、ステップS105において、ベルト44の滑りが検出される。一方、入力軸36が回転した場合、ステップS107に進み、ベルト44が正常であると判断される。
【0045】
なお、減速機28の入力軸36が回転したか否かの判断(ステップS104)を先に行い、その後に、電動機26の出力軸32が回転したか否かの判断(ステップS103)を行うこともできる。また、これらの判断を同時に行ってもよい。
【0046】
本実施形態の検出装置60によれば、自動的にベルト44の滑りを検出することができるので、保守員の省力化を図ることができる。また、定期点検以外のときにベルト44の滑りを検出することができるので、ベルト44の劣化を早期に発見することができ、未然に故障等を予防することができる。また、滑り検出動作を行うとき、電動機26から所定のトルクTr1が出力され、ブレーキ70によって減速機28の入力軸36にはブレーキ70から定常の制動力が働き、検出条件が常に一定であるため、正確にベルト44の滑りを検出することができる。また、ブレーキ70の制動力は、通常運転時に減速機28の入力軸36に掛かる負荷より大きいため、通常運転時には検出できない僅かなベルト44の滑りでも検出することができる。
【0047】
本実施形態の検出装置60においては、滑り判断部68が、電動機26の出力軸32が回転し、かつ減速機28の入力軸36が回転する場合についても、ベルト44に滑りが発生していないと判断する場合について説明したが、この構成に限定されない。電動機26の出力軸32が回転し、かつ減速機28の入力軸36が回転する場合、滑り判断部68はベルト44の滑りを判断せずに、検出装置60は、電動機26に所定のトルクTr1より小さいトルクTr2を出力させ、もう一度、滑り判断部68によりベルト44の滑りを判断させることもできる。電動機26から出力されたトルクTr2がブレーキ70の制動力より小さくなると、減速機28の入力軸36が回転しないので、滑り判断部68は、電動機26の出力軸32の回転の有無にだけで正確にベルト44の滑りを判断することができるからである。
【符号の説明】
【0048】
10 エスカレータ、26 電動機、28 減速機、32 出力軸、36 入力軸、44 ベルト、60 ベルト滑り検出装置、62 電動機トルク制御部、64 電動機回転検出部、66 減速機回転検出部、68 滑り判断部、70 ブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータを駆動する電動機と、電動機の回転速度を減速する減速機との間に取り付けられたベルトの滑りを検出するエスカレータのベルト滑り検出装置において、
電動機のトルクを制御する電動機トルク制御部と、
電動機の出力軸の回転を検出する電動機回転検出部と、
減速機の入力軸の回転を検出する減速機回転検出部と、
エスカレータの停止時に電動機トルク制御部が電動機から所定のトルクを出力させたときに、電動機回転検出部と減速機回転検出部が検出する検出結果に基づいて、ベルトの滑りを判断する滑り判断部と、
を有することを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータのベルト滑り検出装置において、
滑り判断部は、電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転しない場合、ベルトに滑りが発生していると判断する、
ことを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータのベルト滑り検出装置において、
滑り判断部は、電動機の出力軸が回転せず、かつ減速機の入力軸が回転しない場合、ベルトに滑りが発生していないと判断する、
ことを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のエスカレータのベルト滑り検出装置において、
滑り判断部は、電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転する場合、ベルトに滑りが発生していないと判断する、
ことを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載のエスカレータのベルト滑り検出装置において、
電動機の出力軸が回転し、かつ減速機の入力軸が回転する場合、電動機トルク制御部が電動機から所定のトルクより小さいトルクを出力させて、滑り判断部がベルトの滑りを判断する、
ことを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のエスカレータのベルト滑り検出装置において、
減速機には入力軸を制動するブレーキが設けられ、このブレーキの動作により、エスカレータを停止させる、
ことを特徴とするエスカレータのベルト滑り検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159128(P2010−159128A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2573(P2009−2573)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】