説明

エスカレーターの異常検知システム及び異常検知方法

【課題】エスカレーターに対する異常な乗り込みを確実に検出することができるようにする。
【解決手段】エスカレーターの乗り口近傍の所定位置を通過する踏段を撮像手段7によって撮影し、その画像データから、上記所定位置を通過する利用者の人数を利用者人数判定手段11によって所定の単位時間毎に判定する。そして、利用者人数判定手段11によって判定された単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターへの異常な乗り込みを検知するための異常検知システム及び異常検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利用者の安全等を考慮してエスカレーターの監視を行う場合、その監視方法の一つとして、モニターに映し出された画像を監視員が監視する方法が考えられる。即ち、エスカレーター周辺やエスカレーター利用者をカメラで撮影し、モニターに映し出されたカメラ画像を監視員が監視する。しかし、このような監視方法では、長時間の緊張を強いられる監視員の負担が大きく、また、疲労や気の緩み等から監視員が異常の発生を見落としてしまう恐れがあった。
【0003】
このような問題に対し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、従来技術として、カメラによって撮影された画像データからエスカレーター利用者が転倒したことや、利用者が移動手摺の外側に乗り出していることを検出し、注意喚起や踏段の減速、停止等の適切な処理を行うものが提案されている(特許文献1及び2参照)。
また、他の従来技術として、カメラによって撮影された画像データからエスカレーターの乗降口の混雑具合を判定し、その判定結果に基づき、踏段の走行速度を適切に選択するものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−265163号公報
【特許文献2】特開平11−60132号公報
【特許文献3】特開2007−55727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エスカレーターでは、各利用者の乗り込み自体が適正であっても、輸送能力を大幅に超えるような乗り込みが継続すると、駆動装置に掛かる負荷が徐々に過大になり、場合によっては駆動装置がその負荷に耐え切れなくなって正常な運転が実施できなくなってしまう。上記特許文献1乃至3に記載のものも含め従来のエスカレーターでは、このような乗り込みの異常を検出することができず、上記問題を解決することはできなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エスカレーターに対する異常な乗り込みを確実に検出することができるエスカレーターの異常検知システム及び異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエスカレーターの異常検知システムは、エスカレーターの乗り口近傍の所定位置を通過する踏段を撮影する撮像手段と、撮像手段からの画像データに基づいて踏段上の人物を検出することにより、所定位置を通過する利用者の人数を所定の単位時間毎に判定する利用者人数判定手段と、利用者人数判定手段によって判定された単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する異常判定手段と、を備えたものである。
【0008】
この発明に係るエスカレーターの異常検知方法は、エスカレーターの乗り口近傍の所定位置を通過する踏段を撮影する撮像手段を備えたエスカレーターの異常検知方法であって、撮像手段からの画像データに基づいて踏段上の人物を検出することにより、利用者人数判定手段によって、所定位置を通過する利用者の人数を所定の単位時間毎に判定するステップと、利用者人数判定手段によって判定された単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、エスカレーターに対する異常な乗り込みを確実に検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの異常検知システムを示す構成図である。
【図2】図1に示す異常検知システムを備えたエスカレーターを示す側面図である。
【図3】利用者人数判定手段の機能を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの異常検知システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの異常検知システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの異常検知システムを示す構成図、図2は図1に示す異常検知システムを備えたエスカレーターを示す側面図である。なお、以下においては、エスカレーターの一例として下階から上階への移動の際に利用される上りのエスカレーターについて具体的に説明し、他の例についてはその説明を省略する。
【0013】
図1及び図2において、1は上下階床間に架け渡されたエスカレーターの主枠、2は下部乗降口(本実施の形態においては、乗り口)、3は上部乗降口(本実施の形態においては、降り口)、4は踏段、5は踏段4の両側に設けられた移動手摺、6は踏段4や移動手摺5の制御等、エスカレーター全体の制御を司る制御盤である。上記踏段4はエスカレーターの利用者が乗り口2から降り口3間を移動する際に乗るためのものである。この踏段4の走行速度や停止といった各種制御は、上記制御盤6によって行われる。
【0014】
7はエスカレーターの乗り口2の上方に設けられた撮像手段(カメラ等)、8はエスカレーターの利用者に対して文字等を表示して情報を提供する表示手段(LEDディスプレイ等)、9は利用者に対して音声によって情報を提供するアナウンス手段である。
撮像手段7は、乗り口2近傍の所定位置を通過する踏段4を上方から撮影できるように、その撮影範囲が適宜設定されている。即ち、エスカレーターを利用して上階に移動する利用者は、乗り口2から踏段4上に移動した後、踏段4が上記所定位置を通過する際に、上記撮像手段7によって上方から撮影される。
【0015】
表示手段8及びアナウンス手段9は、乗り口2や降り口3、中間傾斜部の上方等に適宜設置されるものであり、エスカレーター利用者に対して種々の情報を報知する機能を有している。なお、表示手段8及びアナウンス手段9は、利用者に対してエスカレーターに関する情報を報知する手段の一例として示したものである。即ち、可能であれば、表示手段8及びアナウンス手段9の何れか一方によって上記機能を実現しても良いし、利用者に情報を提供する他の手段によって上記機能を実現しても良い。
【0016】
10は制御盤6や撮像手段7、表示手段8、アナウンス手段9が接続された制御装置である。この制御装置10は、撮像手段7によって撮影された画像データやエスカレーターの運転情報等からエスカレーターに対する乗り込み状態を判定する機能、並びに、その判定結果に応じた各機器の動作を制御する機能を備えている。具体的に、上記各機能を実現するため、制御装置10には、利用者人数判定手段11、異常判定手段12、記憶手段13、制御手段14、通報手段15、警告手段16が備えられている。
【0017】
利用者人数判定手段11は、撮像手段7からの画像データに基づいて踏段4上の人物を検出することにより、上記所定位置を通過する利用者の人数を所定の単位時間毎に判定する機能を有している。なお、画像データから人物を検出する機能は、人物検出手段17に備えられている。
以下に、図3も参照して、利用者人数判定手段11の具体的な機能について説明する。なお、図3は、利用者人数判定手段の機能を説明するための図であり、エスカレーターの乗り口2付近を上方から見た様子を示している。
【0018】
図3において、実線の矢印を囲む実線の各丸は止まっている利用者を、破線の矢印を囲む破線の各丸は歩いている利用者(歩行者)を示している。また、7aは撮像手段7によって撮影されるエリア(以下、「撮影範囲7a」という)、17aは人物検出手段17が人物検出を行うエリア(以下、「検知範囲17a」という)である。
【0019】
撮像手段7は、乗り口2近傍の所定位置に達した踏段4とこの踏段4上の利用者(止まっている利用者及び歩いている利用者)とを含む撮影範囲7aを上方から撮影し、その画像データを制御装置10に対して出力する。制御装置10では、先ず、人物検出手段17が、撮像手段7から送信されてきた画像データから上記検知範囲17aを抽出し、その抽出した部分を解析して上記検知範囲17a内の人物を検出する。なお、この人物検出手段17の機能は、例えば、特開2008−84269号公報に記載された具体的手段を採用することにより実現することができる。そして、利用者人数判定手段11は、人物検出手段17による検出の結果に基づき、検知範囲17a内の利用者人数を上記単位時間毎に検出する。
【0020】
なお、図3に示す例では、検知範囲17aは、その前後幅(踏段4の走行方向の幅)が踏段4の前後幅と同等に設定され、左右幅が踏段4の左右幅よりも僅かに大きく踏段4の両側にはみ出る程度に設定されている。このため、利用者人数判定手段11の判定周期を踏段4の走行速度等に合わせて適宜設定することにより、踏段4毎の利用者人数の検出が可能となる。
【0021】
そして、異常判定手段12は、利用者人数判定手段11によって判定された上記単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する。
【0022】
具体的に、異常判定手段12は、単位時間毎の利用者人数の情報に基づき、エスカレーターの乗り込み状態が所定の条件に該当するか否かによって異常及び正常の判定を行う。例えば、エスカレーターの利用者は、一般に、歩行しているか否かに関わらず、図3に示すように、一つ置きに踏段4に乗車する。即ち、利用者間には、通常、その前後に踏段4の1つ分の間隔が形成される。このため、異常判定手段12は、利用者が間隔を空けずに乗車した状態が所定時間継続した場合やかかる状態の発生頻度が高い場合に、乗り込みの異常(所定の乗り込み異常状態)を検出する。
【0023】
また、他の乗り込み異常状態を判定するため、異常判定手段12には、乗車人数判定手段18が備えられている。この乗車人数判定手段18は、利用者人数判定手段11によって判定された利用者人数を過去の所定期間分加算することにより、エスカレーター全体(或いはエスカレーターの所定の一部)の乗車人数を判定する。そして、異常判定手段12は、乗車人数判定手段18によって検出された乗車人数から、エスカレーターに過度の負担が掛かっていると判断した場合に、乗り込みの異常(所定の乗り込み異常状態)を検出する。
【0024】
なお、異常判定手段12が乗り込み異常状態を判定するための各種パラメーター(例えば、後述の利用者人数基準値、継続時間基準値、乗車人数基準値等)は、記憶手段13に予め記憶されている。
【0025】
また、異常判定手段12は、所定の乗り込み異常状態を検出すると、制御手段14、通報手段15、警告手段16に対して動作指令を出力し、その異常状態に応じた動作を各種機器に行わせる。
具体的に、制御手段14は、制御盤6を制御する機能を有しており、異常判定手段12から動作指令が入力されることにより、異常状態に応じた動作(踏段4の速度切り替えや停止等)をエスカレーターに行わせる。
【0026】
また、通報手段15は、外部に通報する機能を有しており、異常判定手段12から動作指令が入力されることにより、異常状態に応じた通報をエスカレーターの管理者や保守会社等に対して行う。
警告手段16は、利用者に対して注意や警告を行う機能を有しており、異常判定手段12から動作指令が入力されることにより、表示手段8やアナウンス手段9を制御して、異常状態に応じた注意或いは警告を利用者に対して行う。
【0027】
下記表1は、アナウンス手段9から行われる具体的なアナウンスの内容を示している。アナウンス手段9は、異常判定手段12の判定結果に応じて、例えばA乃至Cに示すアナウンスを行い、利用者に対する注意喚起を行う。
【0028】
【表1】

【0029】
次に、図4及び図5に基づき、上記構成を有する異常検知システムの具体的な動作について説明する。図4及び図5はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの異常検知システムの動作を示すフローチャートである。なお、図4及び図5に示す動作フローは、幅1000mmの踏段4が備えられたエスカレーターにおいて乗り込みの異常検知を行う場合を示している。また、記憶手段13には、2段階の利用者人数基準値と、2種類の継続時間基準値と、1種類の乗車人数基準値とが予め記憶されている。
【0030】
利用者人数基準値は、所定の乗り込み異常状態を判定する際の一条件として、利用者人数判定手段11によって判定された利用者人数と比較されるものである。記憶手段13には、例えば、第1利用者人数基準値として2人が、第2利用者人数基準値として3人が記憶されている。なお、幅600mmの踏段4が備えられたエスカレーターにおいては、例えば、第1利用者人数基準値として1人を、第2利用者人数基準値として2人を予め記憶手段13に記憶しておく。
【0031】
また、継続時間基準値は、所定の乗り込み異常状態を判定する際の一条件として、所定の状態が継続する時間(継続時間)と比較されるものである。記憶手段13には、例えば、第1継続時間基準値及び第2継続時間基準値が記憶されている。
また、乗車人数基準値は、所定の乗り込み異常状態を判定する際の一条件として、乗車人数判定手段18によって判定された乗車人数と比較されるものである。本実施の形態においては、例えば、乗り口2及び降り口3間に配置されている各踏段4に利用者が2人ずつ乗っている時の利用者全体の人数を100%として、70%に相当する人数を上記乗車人数基準値として記憶手段13に記憶している。
【0032】
制御装置10では、先ず、エスカレーターに対する乗り込みの異常を判定するための条件設定を行う。具体的には、記憶手段13からエスカレーターの階高情報Hを、制御盤6からエスカレーター(踏段4)の速度情報Sを取得する(S101、S102)。次に、S102で取得した速度情報Sに基づき、1つの踏段4の通過時間、即ち、走行中の踏段4の踏面先端がある位置に到達してからその踏段4の踏面後端がその位置を通過し終わるまでに必要な時間を演算し、その演算結果を単位時間Tとして更新する(S103)。また、S101及びS102で取得した階高情報Hと速度情報Sとに基づき、1つの踏段4が乗り口2から降り口3まで走行するのに必要な時間を演算し、その演算結果を走行時間Tとして更新する(S104)。
【0033】
異常判定を行うための条件設定が終了すると、制御装置10では、次に、撮像手段7から送信されてくる画像データに基づき、利用者人数判定手段11により、上記単位時間T当たりの利用者人数Pを検出する(S105)。即ち、S105に示すこの処理により、乗り口2近傍の所定位置を通過した踏段4毎に、踏段4上の利用者の人数がカウントされる。
【0034】
そして、異常判定手段12は、S105において検出された単位時間T当たりの利用者人数Pに基づき、エスカレーターに対する乗り込み異常の有無の判定を行う。
【0035】
具体的に、異常判定手段12では、先ず、記憶手段13から第2利用者人数基準値(3人)を取得し、S105において検出された単位時間T当たりの利用者人数Pと第2利用者人数基準値との比較を行う(S106)。ここで、単位時間T当たりの利用者人数Pが3人以上である場合は、他の条件(例えば、利用者人数Pが3人以上である状態の継続時間や頻度等)に関わらず、1つの踏段4に3名が乗っている旨の乗り込み異常状態を判定する(S107)。かかる場合、異常判定手段12は、警告手段16及び通報手段15に対して動作指令を出力し、例えば、アナウンス手段9から上記表1に示すアナウンスAを放送させるとともに、管理者或いは保守会社への通報を行う(S108、S109)。
【0036】
S106において単位時間T当たりの利用者人数Pが3人未満であると判定された場合、及び、利用者人数Pが3人以上と判定された後にS108及びS109の各動作を実施した場合、異常判定手段12は、次に、記憶手段13から第1利用者人数基準値(2人)を取得し、S105において検出された単位時間T当たりの利用者人数Pと第1利用者人数基準値との比較を行う(S110)。
【0037】
ここで、単位時間T当たりの利用者人数Pが2人以上である場合、異常判定手段12は、上記利用者人数Pが2人以上である状態が継続している時間(継続時間D)を計測(継続時間Dのカウントを開始、或いは、それまでに継続時間Dのカウントが開始されていればカウントを継続)する(S111)。そして、異常判定手段12は、記憶手段13から第1継続時間基準値Dを取得し、上記継続時間Dと第1継続時間基準値Dとの比較を行う(S112、S113)。
【0038】
ここで、継続時間Dが第1継続時間基準値Dを超えている場合、異常判定手段12は、1つの踏段4に2人の利用者が乗った状態が連続していると判断し、乗り込み異常、即ち、警告レベルの混雑状態を検出する(S114)。かかる場合、異常判定手段12は、警告手段16及び通報手段15に対して動作指令を出力し、警告レベルの混雑状態が検出されたことによる所定の動作を各機器に対して行わせる。具体的に、異常判定手段12は、アナウンス手段9から上記表1に示すアナウンスBを放送させるとともに、管理者或いは保守会社への通報を行う(S115、S116)。そして、S119の処理に進む。
【0039】
なお、S110において単位時間T当たりの利用者人数Pが2人未満であると判定された場合、異常判定手段12は、踏段4毎の乗り込みは正常に行われていると判断し、上記継続時間Dをクリアする(S117)。また、異常判定手段12は、それまでに所定の乗り込み異常状態が検出されていればその異常検出を解除し、異常検出に伴う動作、例えば、表示やアナウンス、通報等を停止して(S118)、S119に進む。
また、S113において継続時間Dが第1継続時間基準値D以下であると判定された場合、異常判定手段12は、計測中の継続時間DをクリアすることなくS119に進む。
【0040】
S119では、異常判定手段12は、乗車人数判定手段18によって、その時点におけるエスカレーター全体の乗車人数Pを演算する。具体的に、乗車人数判定手段18は、現在から上記走行時間T前までに検出された利用者人数Pを全て加算することにより、上記乗車人数Pを求める。そして、異常判定手段12は、記憶手段13から乗車人数基準値Pを取得し、S119において演算された乗車人数Pとこの乗車人数基準値Pとの比較を行う(S120、S121)。
【0041】
ここで、乗車人数Pが乗車人数基準値P以上である場合、異常判定手段12は、上記乗車人数Pが乗車人数基準値P以上である状態が継続している時間(継続時間E)を計測(継続時間Eのカウントを開始、或いは、それまでに継続時間Eのカウントが開始されていればカウントを継続)する(S122)。そして、異常判定手段12は、記憶手段13から第2継続時間基準値Eを取得し、上記継続時間Eと第2継続時間基準値Eとの比較を行う(S123、S124)。
【0042】
S124において、継続時間Eが第2継続時間基準値Eを超えていることが判定されると、異常判定手段12は、乗車人数超過の乗り込み異常を検出する(S125)。かかる場合、異常判定手段12は、警告手段16及び制御手段14、通報手段15に対して動作指令を出力し、乗車人数超過が検出されたことによる所定の動作を各機器に対して行わせる。具体的に、異常判定手段12は、アナウンス手段9から上記表1に示すアナウンスCを放送して注意喚起を行う(S126)。また、異常判定手段12は、制御盤6によって踏段4を停止させるとともに、管理者或いは保守会社への通報を行う(S127、S128)。
【0043】
なお、S121において乗車人数Pが乗車人数基準値P未満であると判定された場合、異常判定手段12は、エスカレーター全体に対する乗り込みは正常に行われていると判断し、上記継続時間Eをクリアする(S129)。また、異常判定手段12は、それまでに所定の乗り込み異常状態が検出されていればその異常検出を解除する(S130)。
なお、S124において継続時間Eが第2継続時間基準値E以下であると判定された場合、異常判定手段12は、継続時間Eの計測を継続させる。
【0044】
そして、以上の処理が終了すると、制御装置10は、S101に戻り、1つ後方を走行する踏段4について、上記と同様の処理を行う。
【0045】
この発明の実施の形態1によれば、エスカレーターに対する異常な乗り込みを確実に検出することができ、その検出結果に応じた制御を適切に実施できるようになる。
即ち、上記構成の異常検知システムは、エスカレーターの乗り口2付近の踏段4を撮像手段7によって撮影し、その画像データから、乗り場2付近の所定位置を通過する単位時間毎の利用者人数の情報を得て、所定の乗り込み異常状態を判定する。このため、実際の利用者の乗り込み状態に基づく正確な判定が可能となり、例えば、エスカレーターの駆動装置に掛かる負荷が過大になる前に、適切な対処を行うことができるようになる。
【0046】
また、記憶手段13内の利用者人数基準値や継続時間基準値、乗車人数基準値等を適切に設定しておくことにより、エスカレーターの種類や型式等に合わせた適切な判定が可能となる。このため、上記構成を有する異常検知システムは、新規エスカレーターのみならず、既設のエスカレーターにも容易に適用することができる。
【0047】
なお、上記図4及び図5に基づく動作説明では、S110において単位時間T当たりの利用者人数Pが2人以上である場合に、利用者人数Pが2人以上である状態が継続している時間(継続時間D)を計測する場合について説明した。しかし、異常判定手段12は、S111において、利用者人数Pが2人以上である状態が発生する頻度を計測しても良い。かかる場合、異常判定手段12は、記憶手段13から所定の第1頻度基準値を取得し、上記計測した頻度と第1頻度基準値との比較を行う。そして、異常判定手段12は、上記計測した頻度が第1頻度基準値を超えている場合に、乗り込み異常を判定する。
【0048】
また、異常判定手段12は、S111乃至S113において、利用者人数Pが2人以上である状態が継続している時間とかかる状態の発生頻度との双方を計測し、それぞれの計測値について、基準値との比較を行っても良い。この場合、異常判定手段12は、例えば、継続時間及び頻度の何れか一方が対応の基準値を超えた場合に、乗り込み異常を判定する。
【0049】
同様に、異常判定手段12は、S122において、乗車人数Pが乗車人数基準値P以上である状態が発生する頻度を計測しても良い。かかる場合、異常判定手段12は、記憶手段13から所定の第2頻度基準値を取得し、上記計測した頻度と第2頻度基準値との比較を行う。そして、異常判定手段12は、上記計測した頻度が第2頻度基準値を超えている場合に、乗り込み異常を判定する。また、異常判定手段12は、S122乃至S124において、乗車人数Pが乗車人数基準値P以上である状態が継続している時間とかかる状態の発生頻度との双方を計測し、それぞれの計測値について、基準値との比較を行っても良い。この場合、異常判定手段12は、例えば、継続時間及び頻度の何れか一方が対応の基準値を超えた場合に、乗り込み異常を判定する。
【符号の説明】
【0050】
1 主枠、 2 下部乗降口(乗り口)、 3 上部乗降口(降り口)、 4 踏段、
5 移動手摺、 6 制御盤、 7 撮像手段、 7a 撮影範囲、 8 表示手段、
9 アナウンス手段、 10 制御装置、 11 利用者人数判定手段、
12 異常判定手段、 13 記憶手段、 14 制御手段、 15 通報手段、
16 警告手段、 17 人物検出手段、 17a 検知範囲、
18 乗車人数判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターの乗り口近傍の所定位置を通過する踏段を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段からの画像データに基づいて前記踏段上の人物を検出することにより、前記所定位置を通過する利用者の人数を所定の単位時間毎に判定する利用者人数判定手段と、
前記利用者人数判定手段によって判定された前記単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する異常判定手段と、
を備えたことを特徴とするエスカレーターの異常検知システム。
【請求項2】
所定の第1利用者人数基準値が記憶された記憶手段と、
を更に備え、
異常判定手段は、利用者人数判定手段によって判定された利用者人数が前記第1利用者人数基準値以上である場合に、前記利用者人数が前記第1利用者人数基準値以上である状態の継続時間又は頻度に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のエスカレーターの異常検知システム。
【請求項3】
記憶手段に、第1利用者人数基準値よりも大きな値を有する第2利用者人数基準値が記憶され、
異常判定手段は、利用者人数判定手段によって判定された利用者人数が前記第2利用者人数基準値以上である場合に、前記利用者人数が前記第2利用者人数基準値以上である状態の継続時間や頻度に関わらず、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のエスカレーターの異常検知システム。
【請求項4】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数を過去の所定期間分加算することにより、エスカレーター全体又は所定の一部の乗車人数を判定する乗車人数判定手段と、
を更に備え、
異常判定手段は、前記乗車人数判定手段によって判定された乗車人数が所定の乗車人数基準値以上である場合に、前記乗車人数が前記乗車人数基準値以上である状態の継続時間又は頻度に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のエスカレーターの異常検知システム。
【請求項5】
エスカレーターの乗り口近傍の所定位置を通過する踏段を撮影する撮像手段を備えたエスカレーターの異常検知方法であって、
前記撮像手段からの画像データに基づいて前記踏段上の人物を検出することにより、利用者人数判定手段によって、前記所定位置を通過する利用者の人数を所定の単位時間毎に判定するステップと、
前記利用者人数判定手段によって判定された前記単位時間毎の利用者人数に基づき、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とするエスカレーターの異常検知方法。
【請求項6】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数が所定の第1利用者人数基準値以上である場合に、前記利用者人数が前記第1利用者人数基準値以上である状態の継続時間を計測するステップと、
前記計測された継続時間が所定の第1継続時間基準値を超えた場合に、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のエスカレーターの異常検知方法。
【請求項7】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数が所定の第1利用者人数基準値以上である場合に、前記利用者人数が前記第1利用者人数基準値以上である状態の頻度を計測するステップと、
前記計測された頻度が所定の第1頻度基準値を超えた場合に、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のエスカレーターの異常検知方法。
【請求項8】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数が、第1利用者人数基準値よりも大きな値を有する第2利用者人数基準値以上であるか否かを判定するステップと、
前記利用者人数が前記第2利用者人数基準値以上である場合に、前記利用者人数が前記第2利用者人数基準値以上である状態の継続時間や頻度に関わらず、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のエスカレーターの異常検知方法。
【請求項9】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数を過去の所定期間分加算することにより、エスカレーター全体又は所定の一部の乗車人数を判定するステップと、
前記判定された乗車人数が所定の乗車人数基準値以上である場合に、前記乗車人数が前記乗車人数基準値以上である状態の継続時間を計測するステップと、
前記計測された継続時間が所定の第2継続時間基準値を超えた場合に、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5から請求項8の何れかに記載のエスカレーターの異常検知方法。
【請求項10】
利用者人数判定手段によって判定された利用者人数を過去の所定期間分加算することにより、エスカレーター全体又は所定の一部の乗車人数を判定するステップと、
前記判定された乗車人数が所定の乗車人数基準値以上である場合に、前記乗車人数が前記乗車人数基準値以上である状態の頻度を計測するステップと、
前記計測された頻度が所定の第2頻度基準値を超えた場合に、エスカレーターに対する所定の乗り込み異常状態を判定するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5から請求項8の何れかに記載のエスカレーターの異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208841(P2010−208841A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59724(P2009−59724)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【出願人】(000176730)三菱プレシジョン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】