説明

エスカレータ

【課題】エスカレータにおいて、老人や子供や障害者がエスカレータを利用する場合に、より安全で不自由なく安心して利用できるようにすることである。
【解決手段】エスカレータ10において、被検知部44および検知部52の一方が設けられ、乗降口の床板12,14のうち少なくとも乗口側の床板と、踏板42の長手方向と直行する方向の踏板縁部に被検知部44および検知部52の他方が設けられる踏板42と、踏板42の移動によって被検知部44が検知部52に近接したときに報知を行う報知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータに係り、特に、高低差のある乗降口を移動するエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、駅構内やデパートといった商業施設等の様々な場所でエスカレータが設けられており、多くの人がエスカレータを利用している。利用者の中には、老人や子供や障害者がいるため、特に、老人や子供や障害者がエスカレータを利用する場合に、安全で不自由なく安心して利用できるエスカレータが設置されることが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、踏板の両側に設けられる欄干の下部に欄干デッキボードを有する乗客コンベアにおいて、乗降口における踏板と乗降口の床板との境界が存在することを示すために、触覚的に認識可能な立体形状の標識部を踏板と乗降口の床板の境界の近傍に位置する欄干デッキボードに設け、さらに、踏板と乗降口の床板の境界位置に対応する手摺上の特定位置に向けて風を送風する送風機とを併設したものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−163564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成を用いることにより、例えば、視覚障害者が乗降口の床板に進入したときに、手摺においた手によって送風機からの風を受けることで踏板と乗降口の床板の境界を認識することができる。しかし、特許文献1の構成では、踏板と乗降口の床板との境界は認識することができるが、視覚障害者が踏板に乗るタイミングを認識することが困難となる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、老人や子供や障害者がエスカレータを利用する場合に、より安全で不自由なく安心して利用できるエスカレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエスカレータは、被検知部および検知部の一方が設けられ、乗降口の床板のうち少なくとも乗口側の床板と、踏板の長手方向と直行する方向の踏板縁部に被検知部および検知部の他方が設けられる踏板と、踏板の移動によって被検知部が検知部に近接したときに報知を行う報知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、被検知部は、発光素子を含んで構成され、検知部は、受光素子を含んで構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、報知部は、被検知部が検知部に近接したことを音によって報知することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、報知部は、乗降口の両側に設けられ乗降口の床板の上方の予め定められた所定の高さに音を伝える音源装置であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、乗降口の床板に視覚障害者を案内する点字ブロックを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成のエスカレータによれば、乗口側の床板に設けられる検知部と踏板の縁部に設けられる被検知部が近接したときに報知が行われる。したがって、エスカレータの利用者は、ある一定の周期の報知のタイミングに合わせて踏板に乗り込むことができる。
【0013】
また、上記構成のエスカレータによれば、被検知部と検知部との近接が音によって報知される。したがって、エスカレータの利用者が、例えば視覚障害者である場合にも、その周期的な音のタイミングに合わせて踏板に乗り込むことができる。
【0014】
また、上記構成のエスカレータによれば、乗降口の床板の上方における所定の高さに音によって報知が行われる。したがって、所定の高さを乗降口の床板に人が立ち止まった場合の顔の辺りの高さに設定することで、エスカレータの利用者が、例えば視覚障害者である場合にも、その周期的な音のタイミングに合わせて踏板に乗り込むことができる。
【0015】
また、上記構成のエスカレータによれば、乗降口の床板に視覚障害者を案内する点字ブロックを設けているため、エスカレータの利用する視覚障害者が乗降口に進入した場合に、より安全に一端停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、報知部の報知の方法は、音声によって報知を行うものとして説明するが、人が視覚、聴覚、触覚によって認識できるものであればよく、例えば送風機による風を用いることで報知を行ってもよい。また、以下では、検知部は乗降口の床板に設けられ、被検知部が踏板に設けられるものとして説明するが、検知部が踏板に設けられ、被検知部が乗降口の床板に設けられていてもよい。また、以下では、被検知部と検知部は、発光素子と受光素子を用いて相互に近接していることを検知するものとして説明するが、被検知部が検知部に近接していることを検知できればよく、例えば、磁気センサによって、被検知部が検知部に近接していることを検知するものとしてもよい。また、この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態であるエスカレータ10を側面方向から示した図である。エスカレータ10は、高低差のある乗降口の床板12と乗降口の床板14との間で乗客4を移動させる装置である。エスカレータ10は、乗客4が乗る踏板42と、それぞれの踏板42が連結されるステップチェーン(図示せず)と、ステップチェーンを駆動する主駆動装置18と、移動手摺22と、欄干部24と、トラス34と、被検知部44、検知部52とを含んで構成される。
【0018】
主駆動装置18は、エスカレータ10を駆動する駆動力を出力する装置で、例えば、電動機と減速歯車等から構成される。主駆動装置18により出力された駆動力は、図示していない駆動伝達手段を介してステップチェーン及び図示していない移動手摺チェーンに伝達される。
【0019】
移動手摺22は、乗客4が手を添え、または掴むことができるものであり、欄干部24は、踏板42が移動する際に、乗客4の体がエスカレータ10外に出ることを防止する役割を果たす。
【0020】
トラス34は、エスカレータ10の自重および積載荷重をささえる構造部分である。トラス34の内部には、主駆動装置18の他、図示していない制御盤や移動手摺駆動装置等が組み込まれている。トラス34は、ステンレス等の適当な強度を有する材料で構成されている。なお、図1においては、トラス34内の構造を見えるようにするために、一部取り外して描いている。
【0021】
図2は、乗降口の床板12と踏板42付近の拡大図である。乗降口の床板12は、乗客4が踏板42に乗り込む前に一端立ち止まる部分であり、その表面には乗客4の滑り止め加工が施されている。なお、乗降口の床板14も乗降口の床板12と同様の構造である。エスカレータ10においては、乗降口の床板12が乗口側となっており、乗降口の床板14が降口側となっている。
【0022】
踏板42は、乗客4が一人または二人乗れる程度の大きさを有する。エスカレータ10が運行する際に、複数の踏板42は、地面に対して水平な状態を保ちつつ移動する。また、踏板42にはスリップ防止等のための溝が複数設けられている。
【0023】
被検知部44は、踏板42において、踏板42の長手方向と直行する方向の踏板42の縁部の中央部に設けられる。また、被検知部44は、踏板42の面と垂直方向に向けて発光する発光素子を含んで構成され、踏板42がトラス34の内部であって乗降口の床板12の下部を移動している途中に後述する検知部52と近接したときに、その光が検知部52によって受光されるような位置に設けられている。
【0024】
検知部52は、乗降口の床板12において、乗客4の進行方向の略中央の位置に配置され、受光素子を含んで構成される。また、検知部52は、トラス34の内部であって乗降口の床板12の下部を移動する踏板42に設けられた被検知部44からの光を受光できる位置に設けられている。また、検知部52は、音を発生する音源装置も含んで構成されており、被検知部44からの光を受光した際に乗降口の床板12の上方に向けて、例えば「ピッ」といった機械音を発生する。したがって、検知部52は、被検知部44からの光を受光するセンサとしての機能と、光を受光したときに音を発生する報知部としての機能も有している。なお、上記では、検知部52からは「ピッ」といった機械音を発生するものとして説明するが、例えば「踏板が出ます」といった具体的な音声による案内を行うものであってもよい。
【0025】
続いて、上記構成からなるエスカレータ10の動作について図1等を参照して説明する。エスカレータ10を利用する人が、例えば、視覚障害者である乗客4の場合に、乗客4は、まず乗降口の床板12に進入する。そして、エスカレータ10が可動している場合には、上記で述べたように、踏板42は地面に対して水平な状態を保ちつつ移動している。このとき、乗降口の床板12の下部であってトラス34の内部においても踏板42が移動しており、乗降口の床板12に設けられた検知部52が踏板42に設けられた被検知部44からの光を受光した場合には、検知部52から乗降口の床板12の上方に向けて、「ピッ」といった機械音を発生される。また、踏板42は、エスカレータ10に同じ形状のものが複数存在し、それぞれの踏板42の同じ箇所に被検知部44が設けられていることから、エスカレータ10が可動している場合に乗降口では一定の周期で「ピッ・・・ピッ・・・ピッ」という機械音が発せられる。したがって、乗客4は、その音によって乗降口の床板12から踏板42が出てくるタイミングを掴むことができるため、その機械音に合わせて踏板42に乗り込むことができる。
【0026】
次に、図3を参照して本発明の第2実施形態であるエスカレータ11について説明する。図3は、エスカレータ11を上方から見た様子を示す図である。ここで、エスカレータ11は、上記第1実施形態のエスカレータ10とほぼ同様の構成を有するため、同一構成要素には同一符号を付して重複することとなる説明を援用によって省略し、異なる構成およびその作用について説明する。エスカレータ11は、音源部60が設けられている点がエスカレータ10と相違するため、以下では、特に、音源部60ついて詳細な説明を行う。
【0027】
音源部60は、エスカレータ11の乗降口の両側にある欄干部24にそれぞれ設けられる音源装置であって、それぞれの音源部60から乗降口の床板12の中央付近の上方であって乗客4の顔の高さが位置するあたりに向けて音を発する。また、音源部60は、図示していない通信ケーブルを介して検知部52と接続され、検知部52が被検知部44からの光を受光したときに、検知部52から出力を受け取って、「ピッ」といった機械音を発生する報知部として機能する。
【0028】
続いて、上記構成からなるエスカレータ11の動作について図3を参照して説明する。エスカレータ11を利用する人が、例えば視覚障害者である乗客4の場合に、乗客4は、まず乗降口の床板12に進入する。ここで、上記で説明したように踏板42の移動によって、検知部52は、ある一定の周期で被検知部44からの光を受光するため、音源部60から乗客4の顔の高さあたりに向けて、一定の周期で「ピッ・・・ピッ・・・ピッ」という機械音が発せられる。これにより、乗客4は、よりいっそう正確に機械音を聞き取ることができる。したがって、乗客4は、その音によって乗降口の床板12から踏板42が出てくるタイミングを掴むことができ、その機械音に合わせて踏板42に乗り込むことができる。
【0029】
次に、図4を参照して本発明の第3実施形態であるエスカレータ13について説明する。図4は、図2と同様に、乗降口の床板12と踏板42付近の拡大図である。ここで、エスカレータ13は、上記第1実施形態のエスカレータ10とほぼ同様の構成を有するため、同一構成要素には同一符号を付して重複することとなる説明を援用によって省略し、異なる構成およびその作用について説明する。エスカレータ13は、点字ブロック70が設けられる点でエスカレータ10と相違する。以下では、特に、点字ブロック70について詳細な説明を行う。
【0030】
点字ブロック70は、視覚障害者に配慮するために突起のついた視覚障害者誘導ブロックであって、乗降口の床板12において検知部52の手前に配置される。点字ブロック70は、ここでは、点々のついたタイルであって「止まれ」を意味する。なお、点字ブロック70の色は、弱視者が点字ブロックを視認しやすいようにするために黄色にしている。
【0031】
続いて、上記構成からなるエスカレータ13の動作について図4を参照して説明する。エスカレータ13を利用する人が、例えば視覚障害者である乗客4の場合に、乗客4は、まず乗降口の床板12に進入する必要がある。ここで、乗客4がそのまま進入すると乗降口の床板12と踏板42との境界近辺が分かりにくいという問題があるが、点字ブロック70が設けられることにより、乗降口の床板12と踏板42との境界近辺を容易に把握でき、乗客4は、より安全に停止することができる。さらに、上記と同じ要領で乗客4は、音によって乗降口の床板12から踏板42が出てくるタイミングを掴むことができ、その機械音に合わせて踏板42に乗り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態であるエスカレータを側面方向から示した図である。
【図2】本発明の第1実施形態であるエスカレータの乗降口の床板と踏板付近の拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態であるエスカレータを上方から見た様子を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態であるエスカレータの乗降口の床板と踏板付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
4 乗客、10,11,13 エスカレータ、12,14 乗降口の床板、18 主駆動装置、22 移動手摺、24 欄干部、34 トラス、42 踏板、44 被検知部、52 検知部、60 音源部、70 点字ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知部および検知部の一方が設けられ、乗降口の床板のうち少なくとも乗口側の床板と、
踏板の長手方向と直行する方向の踏板縁部に被検知部および検知部の他方が設けられる踏板と、
踏板の移動によって被検知部が検知部に近接したときに報知を行う報知部と、
を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータにおいて、
被検知部は、発光素子を含んで構成され、
検知部は、受光素子を含んで構成されることを特徴とするエスカレータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエスカレータにおいて、
報知部は、
被検知部が検知部に近接したことを音によって報知することを特徴とするエスカレータ。
【請求項4】
請求項3に記載のエスカレータにおいて、
報知部は、
乗降口の両側に設けられ乗降口の床板の上方の予め定められた所定の高さに音を伝える音源装置であることを特徴とするエスカレータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のエスカレータにおいて、
乗降口の床板に視覚障害者を案内する点字ブロックを設けることを特徴とするエスカレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−202980(P2009−202980A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45371(P2008−45371)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】