説明

エスカレータ

【課題】エスカレータにおいて、外側デッキボードにおける安全性を考慮した構造とすることである。
【解決手段】エスカレータ10の欄干22は、踏み板14の両側に配置され、移動手摺20を移動可能に保持し、上層階の乗降場11から下層階の乗降場12の間に配置される。
欄干22の基部30は、踏み板14の側の部分である内側デッキボード32と、欄干22を挟んで踏み板14の反対側の外側デッキボード34で構成される。外側デッキボード34は、欄干22の側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有する。より詳しくは、欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に少なくなる下方湾曲形の断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータに係り、特に外側デッキボードにおける安全性を考慮したエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータは、乗客が乗る移動踏み板の両側に、乗客が把持する移動手摺を支える欄干が上層階の乗降場から下層階の乗降場まで配置される。この欄干の基部は、踏み板側のインナーデッキとも呼ばれる内側デッキボードと、欄干を挟んで踏み板の反対側のアウタデッキとも呼ばれる外側デッキボードから構成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、エスカレータの移動手摺に掴まりながらアウタデッキ上に侵入することを防止するために、欄干から外側に水平に延びる侵入防止アームを、エスカレータの乗降口近傍の位置、踏み段の移動方向に沿って所定の間隔で複数個、手摺デッキに取り付けることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エスカレータの安全装置として、乗降部の外側デッキボードの近傍に立設される侵入防止柵について、その長手方向に複数の発光装置と複数の受光装置を、対向位置に配置する構成が開示されている。ここでは、上層階と下層階との間に発光装置と受光装置が設けられるので、エスカレータの移動手摺や侵入防止柵を乗り越えて外側デッキを歩行する乗客を検知して、警報を鳴動させて注意喚起させることができると述べられている。
【0005】
また、特許文献3では、建屋あるいは上層階とエスカレータとの交差部に三角形の保護板を設けるのみでは、子供がエスカレータの欄干から外側に身を乗り出したまま保護板に接近する場合に逃げ遅れることがあることを指摘している。そこで、欄干を構成するデッキボードのうち、アウタデッキに、下層階側からその高さが次第に高くなり、かつ乗客が保護板にぶつかることがないような位置でその高さが頂点となるアーチ型の保護部材を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−172751号公報
【特許文献2】特開2000−219474号公報
【特許文献3】特開2009−263097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、外側デッキボードにおける安全性を考慮して、侵入防止柵を始めとする様々な工夫が提案されている。
【0008】
本発明は、外側デッキボードにおける安全性を考慮したエスカレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエスカレータは、乗客が把持する移動手摺と、移動手摺を移動方向に支持する欄干と、欄干の基部の外側に配置され、乗客の足を支持するには不十分な大きさを有し、あるいは乗客の体重を支持するには不十分な構造を有する外側デッキボードと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、外側デッキボードは、欄干側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータであって、外側デッキボードは、欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に少なくなる下方湾曲形の断面形状を有する装飾板であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエスカレータにおいて、外側デッキボードは、柔軟性を有して内部空間を囲む外壁を有し、外壁に乗客の体重をかけると縮小形状となり、体重をかけることを止めると元の形状に復帰する外形可変構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、エスカレータの外側デッキボードは、乗客の足を支持するには不十分な大きさを有し、あるいは乗客の体重を支持するには不十分な構造を有する。この様な構造を乗客が見れば、外側デッキボードに降りる、外側デッキボードを歩こう等とは考えず、したがって、外側デッキボードにおける安全性が保たれる。
【0014】
また、エスカレータの外側デッキボードは、欄干側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有する。この構造によれば、外側デッキボードの上面について、乗客の足を支持するには不十分な大きさとすることができる。
【0015】
また、エスカレータの外側デッキボードは、欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に少なくなる下方湾曲形の断面形状を有する装飾板である。この構造によれば、装飾性を兼ねながら、外側デッキボードの上面について、乗客の足を支持するには不十分な大きさとすることができる。
【0016】
また、エスカレータの外側デッキボードは、柔軟性を有して内部空間を囲む外壁を有し、外壁に乗客の体重をかけると縮小形状となり、体重をかけることを止めると元の形状に復帰する外形可変構造を有する。このようにすることで、外側デッキボードを、乗客の体重を支持するには不十分な構造とできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態のエスカレータの様子を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のエスカレータの外側デッキボードについての詳細図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のエスカレータの外側デッキボードについて、他の構造を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のエスカレータの外側デッキボードについて、別の構造の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0019】
図1は、エスカレータ10の構成を説明する図である。このエスカレータ10は、上層階の乗降場11から下層階の乗降場12の間を、移動する踏み段に乗客を乗せて運搬する昇降運搬装置としての一般的な機能を有する。
【0020】
踏み板14は、図示されていない無端移動装置に取り付けた乗客運搬用の移動板である。移動手摺20は、踏み板14に乗った乗客が把持する手摺で、踏み板14の移動に同期して移動する機能を有する。欄干22は、踏み板14の両側に配置され、移動手摺20を移動可能に保持する機能を有する固定パネルである。欄干22は、上層階の乗降場11から下層階の乗降場12の間に配置される。
【0021】
欄干22の基部30は、デッキボードと一般的に呼ばれるが、ここでは、踏み板14の側の部分を内側デッキボード32、欄干22を挟んで踏み板14の反対側を外側デッキボード34と呼ぶことにする。通常のエスカレータ構造では、デッキボードの上面は平坦面である。特に、外側デッキボードの上面は適当な広さがあるので、子供がこれに目をつけて、欄干を越えて外側デッキボードに降り、あるいは、乗降場11,12に設けられる侵入防止柵を越えて外側デッキボードに侵入することが考えられる。外側デッキボードにおける安全性を考慮して、そのようなことがないようにすることが、本発明の課題である。
【0022】
図2は、エスカレータ10の外側デッキボード34の詳細を示す図である。右側の図は、欄干22が立てられる方向に沿った断面図で、左側の図は、欄干22の外側から見た様子を示す図である。欄干22は、上層階の乗降場11と下層階の乗降場12の間に斜行して設けられるが、図2の左側の図では、この斜行を平坦なものに書き換えてある。
【0023】
外側デッキボード34は、欄干22の側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有する。より詳しくは、欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に少なくなる下方湾曲形の断面形状を有する。この様な形状を有するので、外側デッキボード34の上面には平坦部分がない。仮に、乗客が外側デッキボード34に足を掛けようとしても、その上面は、乗客の足を支持するには十分な大きさがなく、下方湾曲形の底面まで足が下がることになる。このような形状を乗客が見れば、外側デッキボードに降りる、外側デッキボードを歩こう等とは考えず、したがって、外側デッキボードにおける安全性が保たれる。
【0024】
また、外側デッキボード34の下方湾曲形の側面に施される模様36は、下方湾曲形を利用した装飾である。このように、外側デッキボード34は、装飾板を兼ねる機能を有する。
【0025】
図1,2の外側デッキボード34は、その上面の平坦性をほとんどなくす構造によって、その上面が乗客の足を支持するには不十分な大きさの固定構造としている。これに代えて、見た目は、その上面に適当な平坦性を有しているが、乗客が足を掛けると、図1,2
の形状に変化する構造としてもよい。
【0026】
図3は、外側デッキボード40を、図1,2と同様な下方湾曲形の断面形状を有する固定部42と、外壁に乗客の体重等の圧力をかけると縮小形状となり、乗客の体重等の圧力をかけることを止めると元の形状に復帰する外形可変部44を備える構造とした例を示す図である。
【0027】
このような外形可変部44は、適当な厚さの弾性膜を用い、自然状態の外形が上方湾曲形となるように、弾性膜の両端部を固定部42の上端部と下端部に止めることで得ることができる。弾性膜と固定部42との間は空洞となるが、外気との間に適当な空気抜き穴を設けることがよい。
【0028】
固定部42は、図1,2と同様の下方湾曲形としたが、勿論これ以外の外形としてもよい、例えば、内側デッキボード32と段差のある一様な高さの外形としてもよい。なお、乗客は子供を想定する必要があるので、乗客の体重とは、子供の体重を基準とすることがよい。
【0029】
図4は、図1,2の外側デッキボード34の構造の他のもので、その上面は、乗客の足を支持するには不十分な大きさである例を示す図である。
【0030】
図4(a)は、欄干側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有する外側デッキボード50を示す図である。この外側デッキボード50は、一様な傾斜角度を有している。傾斜角度としては、45度程度から75度程度が好ましいが、これ以外の角度であってもよい。
【0031】
図4(b)は、欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に多くなる上方湾曲形の断面形状を有する。外側デッキボード52を示す図である。
【0032】
図4(c)は、従来技術の平坦面を有する台部62の上面に、欄干側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有する付加部64を設けた外側デッキボード60である。斜面の角度は、図4(a)の場合と同様に、45度から75度程度が好ましいが、勿論これ以外の角度であってもよい。
【0033】
図4(d)は、従来技術の平坦面をけずって、ほとんど上面をなくした外側デッキボード66である。なお、図4(a)から(d)にも、図2で説明した装飾的模様を施すことができる。
【0034】
なお、外側デッキボード部分に触ると、子供には聞こえて、大人には耳障りではない超高周波数の警告音が出力される装置を併用することができる。このような超高周波数の音としては、例えば、15kHz以上の音を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るエスカレータは、一般客を対象とする店舗、公共的場所に設けられるエスカレータに利用できる。
【符号の説明】
【0036】
10 エスカレータ、11,12 乗降場、14 踏み板、20 移動手摺、22 欄干、30 基部、32 内側デッキボード、34,40,50,53,60,66 外側デッキボード、36 模様、42 固定部、44 外形可変部、62 台部、64 付加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が把持する移動手摺と、
移動手摺を移動方向に支持する欄干と、
欄干の基部の外側に配置され、乗客の足を支持するには不十分な大きさを有し、あるいは乗客の体重を支持するには不十分な構造を有する外側デッキボードと、
を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータにおいて、
外側デッキボードは、
欄干側からその外側に向かうにつれて下方に傾斜する斜面を有することを特徴とするエスカレータ。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータにおいて、
外側デッキボードは、
欄干の外側に上端側が接し、上端側から外側に向かうにつれて下方に下がる量が次第に少なくなる下方湾曲形の断面形状を有する装飾板であることを特徴とするエスカレータ。
【請求項4】
請求項1に記載のエスカレータにおいて、
外側デッキボードは、
柔軟性を有して内部空間を囲む外壁を有し、外壁に乗客が体重をかけると縮小形状となり、体重をかけることを止めると元の形状に復帰する外形可変構造を有することを特徴とするエスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153457(P2012−153457A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12457(P2011−12457)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】