説明

エステル合成用触媒及びエステルの製造方法

【課題】高効率で、エステル交換反応により目的とするエステル化合物を合成する方法及び該方法に使用できる触媒を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される化合物又は一般式PR(R;アルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基)で表される有機ホスフィン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物と、を含有するエステル合成用触媒を用いて、エステル交換反応により、目的とするエステル化合物を合成する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル合成用触媒及びエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル化合物は、天然物として広く存在し、また、各種材料、並びに食品及び化粧品添加物等に広く利用されている。かかるエステル化合物の合成方法として、エステル交換反応が知られている。エステル交換反応は、アルコールの組み替えを利用して、原料のエステル化合物から新たなエステル化合物を合成する方法である。
【0003】
エステル交換反応は、エステル合成方法の一つとして実験室のみならず産業レベルでも用いられている。その汎用性は、単純なエステル化合物の合成だけでなく、天然物に多く見られるマクロラクトン骨格の構築、ラクトンの開環重合、及びラセミ化合物の光学分割等の多岐に渡る。よって、エステル交換反応は、有機合成において実用性の高い反応の一つである。そして、エステル交換反応の収率を高めるために、エステル交換反応用の触媒の開発が進められている。
【0004】
非特許文献1〜5には、エステル交換反応用の触媒として、酵素、チタン(IV)アルコキシド、アルキルスズ、サマリウムヨージド、及びN−ヘテロサイクリックカルベンが記載されている。また、非特許文献6には、フルオロアルキルスズ触媒は高い活性を示すことが記載されている。
【0005】
更に、非特許文献7には、エステル交換反応用の触媒として、ランタン(III)トリイソプロポキシド([La(Oi−Pr)])が記載されている。非特許文献8には、エステル交換反応用の触媒として、ランタン(III)トリストリフルオロメチルスルホニウム塩([La(OTf)])が記載されている。特許文献1には、ランタントリスアセチルアセトネートを触媒として用いたエステル交換反応により、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタレート単量体を製造する方法が記載されている。
【0006】
【非特許文献1】Enzyme Microb. Technol. 1993, 15, 367.
【非特許文献2】Tetrahedron Lett. 1998, 39, 4223.
【非特許文献3】J. Org. Chem. 1991, 56, 5307.
【非特許文献4】J. Org. Chem. 1996, 61, 3088.
【非特許文献5】J. Org. Chem. 2003, 68, 2812.
【非特許文献6】Adv. Synth. Catal. 2002, 344, 84.
【非特許文献7】Chem. Lett. 1995, 246.
【非特許文献8】J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 1559.
【特許文献1】特表2002−506843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高効率で、エステル交換反応により目的とするエステル化合物を合成する方法及び該方法に使用できる触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエステル合成用触媒は、(A)下記一般式(1)で表される化合物又は一般式PR(R;アルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基)で表される有機ホスフィン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物と、を含有することを特徴とする。
【0009】
【化1】

(式中、上記R及びRは、それぞれ独立して一価の炭化水素基である。上記R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。)
【化2】

(式中、上記R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、電子求引性基、又はその他の置換基である。但し、上記R〜R10の少なくとも1つは電子求引性基である。また、上記電子求引性基が、ハロゲン原子及びハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基以外の電子求引性基の場合、該電子求引性基の数は0〜3である。)
【0010】
本発明のエステル化合物の製造方法は、本発明のエステル合成用触媒を用いてエステル交換反応を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高効率で、エステル交換反応により目的とするエステルを合成することができる。特に、本発明によれば、基質であるエステル又はアルコールを過剰に用いなくても、高効率でエステル交換反応により目的とするエステルを合成することができる。また、本発明の触媒は、従来の金属又はカルベンを用いた触媒と比べて入手及び取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(I)エステル合成用触媒
本発明のエステル合成用触媒(以下、単に「本発明の触媒」という。)は、(A)上記一般式(1)で表される化合物又はPRで表される有機ホスフィン化合物(以下、「(A)成分」という。)と、(B)上記一般式(2)で表される化合物(以下、「(B)成分」という。)と、を含有することを特徴とする。上記(A)成分は塩基として機能し、上記(B)成分は酸として機能する。本発明の触媒は、この酸及び塩基を併用することにより、高い触媒活性を示す。
【0013】
(1)(A)成分
上記一般式(1)において、上記R及びRは、それぞれ独立して一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。
【0014】
上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基(以下、「アルキル基等」と総称する。)の炭素数には特に限定はない。上記アルキル基の炭素数は、通常1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3である。また、上記アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、通常2〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4である。上記アルキル基等が環状構造の場合、上記アルキル基等の炭素数は、通常4〜12、好ましくは4〜10、更に好ましくは5〜8、より好ましくは6〜8である。
【0015】
上記アルキル基等の構造には特に限定はない。上記アルキル基等は、直鎖状でもよく、側鎖を有していてもよい。上記アルキル基等は、鎖状構造でもよく、環状構造(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びシクロアルキニル基)でもよい。また、上記アルキル基等は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。更に、上記アルキル基等は、炭素原子及び水素原子以外の原子を1個又は2個以上含んでいてもよい。例えば、上記アルキル基等は、置換基として、炭素原子及び水素原子以外の原子を含む置換基を有していてもよい。また、上記アルキル基等は、鎖状構造中又は環状構造中に炭素原子及び水素原子以外の原子を1個又は2個以上含んでいてもよい。上記炭素原子及び水素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。上記シクロアルキル基として具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び2−メチルシクロヘキシル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びイソプロペニル基が挙げられる。上記シクロアルケニル基として具体的には、例えば、シクロヘキセニル基が挙げられる。
【0017】
上記アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基(以下、「アリール基等」と総称する。)の炭素数には特に限定はない。上記アリール基等の炭素数は通常6〜15、好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜10である。
【0018】
上記アリール基等の構造には特に限定はない。上記アリール基等は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記アリール基等に含まれる芳香環は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。この置換基の位置は、o−、m−、及びp−のいずれでもよい。上記置換基として具体的には、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、アルキル基、アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、及びアルコキシ基の1種又は2種以上が挙げられる。これらの置換基が芳香環に位置する場合、該置換基の位置は、o−、m−、及びp−のいずれでもよい。
【0019】
上記アリール基として具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、メトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、エトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、並びにビフェニリル基等が挙げられる。上記アリールアルキル基として具体的には、ベンジル基、メトキシベンジル基(o−、m−、及びp−)、エトキシベンジル基(o−、m−、及びp−)、並びにフェネチル基が挙げられる。上記アリールアルケニル基として具体的には、例えば、スチリル基及びシンナミル基が挙げられる。
【0020】
上記R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。該環の構造には特に限定はない。例えば、その環員数は、通常、窒素原子を含めて4員環〜10員環、好ましくは5員環〜8員環とすることができる。その環員数は通常、5員環又は6員環である。上記環は、その構造中にヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等)を含んでいてもよい。更に、上記環は、他の置換基を有していてもよい。また、上記環は、その構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0021】
上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。また、上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。例えば、上記R及びRは、いずれも水素原子とすることができる。また、上記一般式(1)において、上記R及びR並びに上記R及びRの一方のみが互いに結合して環を形成してもよい。更に、上記一般式(1)において、上記R及びR並びに上記R及びRの両方が互いに結合して環を形成してもよい。上記環の構造には特に限定はない。例えば、その環員数は、通常、窒素原子を含めて4員環〜10員環、好ましくは5員環〜8員環とすることができる。その環員数は通常、5員環又は6員環である。上記環は、その構造中にヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等)を含んでいてもよい。更に、上記環は、他の置換基を有していてもよい。また、上記環は、その構造中に不飽和結合を有していてもよい
【0022】
上記PRは、有機ホスフィン化合物の1種である。該Rは、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基である。該アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の種類及び構造には、上記R及びRの説明が妥当する。上記Rとして具体的には、例えば、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、及びt−ブチル基等)が挙げられる。上記PRに含まれる3個のRは、同一構造でもよく、異なる構造でもよい。
【0023】
(2)(B)成分
上記一般式(2)で表される化合物において、上記R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、電子求引性基、又はその他の置換基である。但し、上記R〜R10の少なくとも1つは電子求引性基である。また、式中、ハロゲン原子及びハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基以外の電子求引性基の数は0〜3である。
【0024】
上記電子求引性基の種類及び構造には特に限定はない。上記電子求引性基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等の1種又は2種以上)、ハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基(以下、「ハロゲン化炭化水素基」という。)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等)、アルキルカルボニル基(メチルカルボニル基及びエチルカルボニル基等)、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、スルホン酸基、並びにスルホニル基が挙げられる。上記電子求引性基として好ましくは、ハロゲン原子又はハロゲン化炭化水素基である。
【0025】
上記ハロゲン化炭化水素基は、一価の炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がハロゲン原子に置換されている構造である限り、その種類及び構造には特に限定はない。上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。また、上記ハロゲン化炭化水素基中に含まれる上記ハロゲン原子の数にも特に限定はない。該ハロゲン原子の数は1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上とすることができる。更に、上記ハロゲン原子が2個以上含まれている場合、各ハロゲン原子は同じ原子でもよく、異なる原子でもよい。
【0026】
上記一価の炭化水素基の種類及び構造にも特に限定はない。該一価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記一価の炭化水素基の種類及び構造は、上記R及びRの説明が妥当する。上記一価の炭化水素基として具体的には、例えば、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基)が挙げられる。
【0027】
上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10、好ましくは1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基の水素原子の1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上の水素原子がハロゲン原子に置換された基が挙げられる。また、上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6、好ましくは2〜4、更に好ましくは炭素数2又は3のアルケニル基の水素原子の1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上の水素原子がハロゲン原子に置換された基が挙げられる。
【0028】
上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、以下の基が挙げられる。下記式中、Xはハロゲン原子である。また、下記式中、Rは水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。該一価の炭化水素基の種類及び構造は、上記R及びRの説明が妥当する。また、上記Rはハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アルケニル基でもよい。上記Rとして好ましくは、水素原子、炭素数1〜6(好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2)のアルキル基及びハロゲン化アルキル基、並びに炭素数2〜6(好ましくは2〜4、更に好ましくは2又は3)のアルケニル基及びハロゲン化アルケニル基である。尚、下記式中、上記Rが2個存在する場合、各Rは同じ基でもよく、異なる基でもよい。
【0029】
【化3】

【0030】
上記ハロゲン化炭化水素基として具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、及び1,1−ジクロロメチル基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)で表される化合物において、上記その他の置換基の種類及び構造には特に限定はない。
【0032】
上記一般式(2)で表される化合物において、上記R〜R10は、少なくとも1つが上記電子求引性基である限り、その種類及び構造には特に限定はない。例えば、上記一般式(2)で表される化合物において、上記電子求引性基の数は1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より好ましくは4以上とすることができる。勿論、上記R〜R10の全てを上記電子求引性としてもよい。例えば、上記電子求引性基が上記ハロゲン原子又は上記ハロゲン化炭化水素基の場合、上記ハロゲン原子又は上記ハロゲン化炭化水素基の数は1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より好ましくは4以上とすることができる。この場合、上記一般式(2)で表される化合物は、上記ハロゲン原子及び上記ハロゲン化炭化水素基の一方のみを含んでいてもよく、両者を含んでいてもよい。また、上記電子求引性基がハロゲン原子の場合、上記R〜R10の全てを上記ハロゲン原子とすることができる。
【0033】
但し、上記一般式(2)で表される化合物において、上記電子求引性基が、「ハロゲン原子及びハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基」以外の電子求引性基の場合、該電子求引性基の数は0〜3である。該電子求引性基の数が4以上であると、一般式(2)で表される化合物の酸性度が高くなり過ぎて安定性が低下し、その結果、触媒活性が低下するので好ましくない。
【0034】
また、上記一般式(2)で表される化合物の各芳香環に含まれる上記電子求引性基の数は同じでもよく、異なっていてもよい。例えば、上記一般式(2)において、上記R〜Rの少なくとも1つは上記電子求引性基であり、上記R〜R10の少なくとも1つは上記電子求引性基とすることができる。
【0035】
更に、上記電子求引性基の位置にも特に限定はない。上記電子求引性基の位置として、通常はm−位(R、R、R、及びR10)である。例えば、上記一般式(2)で表される化合物において、上記R、R、R、及びR10の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つを上記電子求引性基とすることができる。例えば、上記R、R、R、及びR10の少なくとも2つ、好ましくは3つ、更に好ましくは全てを上記ハロゲン原子又は上記ハロゲン化炭化水素基とすることができる。尚、上記一般式(2)で表される化合物の各芳香環に含まれる上記電子求引性基の位置は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0036】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、以下の一般式で表される化合物が挙げられる。下記式中、上記R5’〜R10’は、上記電子求引性基、好ましくは上記ハロゲン原子又は上記ハロゲン化炭化水素基である。
【化4】

【0037】
(3)その他
本発明の触媒において、上記(A)成分と上記(B)成分との割合にも特に限定はない。上記(B)成分の割合は、上記(A)成分1mol%に対して0.5〜1.5mol%、好ましくは0.5〜1.3mol%、更に好ましくは0.7〜1.3mol%である。上記(B)成分の割合が上記範囲内であると、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0038】
本発明の触媒を得る方法には特に限定はない。例えば、本発明の触媒は、溶媒中に上記(A)成分及び上記(B)成分を添加することにより得ることができる。上記(A)成分及び上記(B)成分の配合割合は、上記の割合の範囲とすることができる。上記溶媒としては、低極性又は非極性有機溶媒を用いることができる。また、上記溶媒は1種の溶媒でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。上記低極性有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、アニソール、トルエン、ベンゼン、及びクロロベンゼンが挙げられる。また、上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)が挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタンが挙げられる。
【0039】
本発明の触媒は、上記(A)成分及び上記(B)成分を含む限り、その組成には特に限定はない。本発明の触媒は、上記(A)成分及び上記(B)成分以外の他の成分を含んでいてもよい。本発明の触媒の形態には特に限定はない。本発明の触媒は、溶媒中に存在していてもよく、該溶媒を留去して残渣として存在していてもよい。更に、本発明の触媒は、調製した状態でそのまま用いてもよい。また、本発明の触媒は、触媒として単離することなく、例えば、反応溶媒中で形成させ、そのまま引き続き反応に用いてもよい。
【0040】
本発明の触媒は、エステル化合物の合成、特に原料であるエステル化合物とアルコールとを反応させ、目的とするエステル化合物を得るエステル交換反応を触媒することができる。よって、上記触媒は、エステル交換反応用触媒として利用することができる。
【0041】
(II)エステル化合物の製造方法。
本発明のエステル化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)は、本発明の触媒を用いてエステル交換反応を行うことを特徴とする。尚、以下、エステル交換反応において、基質であるエステル化合物及びアルコールを「基質エステル化合物」及び「基質アルコール」という。
【0042】
本発明の製造方法において、基質エステル化合物の種類及び構造には特に限定はない。上記基質エステル化合物はモノエステル化合物でもよく、ジエステル化合物等の多価エステル化合物でもよい。
【0043】
上記基質エステル化合物をRCOOR’で表した場合(R;カルボン酸由来の一価の炭化水素基、R’;アルコール由来の一価の炭化水素基)、該R及びR’の種類及び構造には特に限定はない。上記Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記R’としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基の種類及び構造は、本発明の触媒の上記R及びRの説明が妥当する。尚、上記R及びR’が不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の数にも特に限定はない。
【0044】
上記基質エステル化合物の上記Rとして好ましくは、鎖状アルキル基又は鎖状アルケニル基である。上記Rとして好ましくは、炭素数1〜12、更に好ましくは1〜10、より好ましくは2〜9の鎖状アルキル基又は鎖状アルケニル基である。また、上記基質エステル化合物の上記R’として好ましくは、炭素数1〜6、好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3のアルキル基及びアルケニル基である。上記基質エステル化合物の上記Rとして具体的には、例えば、下記一般式(I)〜(III)の構造が挙げられる。下記一般式(I)〜(III)において、Rは水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の種類及び構造は、本発明の触媒の上記R及びRの説明が妥当する。上記Rはとして好ましくは水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4のアルキル基、アルケニル基及びアリール基である。
【0045】
【化5】

【0046】
上記基質エステル化合物として具体的には、例えば、カルボン酸メチルエステル、カルボン酸エチルエステル、カルボン酸アリルエステル、及びカルボン酸ビニルエステルが挙げられる。また、上記基質エステル化合物として具体的には、例えば、フェニル酢酸エステル及びケイ皮酸エステル(いずれも芳香環は置換基を有していてもよい。)、並びに炭素数5〜12の鎖状アルキル基及び炭素数5〜12のアルケニル基が挙げられる。
【0047】
本発明の製造方法において、上記基質アルコールの種類及び構造には特に限定はない。上記基質アルコールは一価アルコールでもよく、二価以上の多価アルコールでもよい。また、上記基質アルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールのいずれでもよい。上記基質アルコールとして好ましくは第1級アルコール又は第2級アルコールであり、より好ましくは第1級アルコールである。
【0048】
上記基質アルコールをR−OHで表した場合(R;一価の炭化水素基)、該Rの種類及び構造には特に限定はない。上記Rとしては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基の種類及び構造は、本発明の触媒の上記R及びRの説明が妥当する。尚、上記Rが不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の数にも特に限定はない。
【0049】
上記基質アルコールの上記Rとして好ましくは、炭素数1〜12、好ましくは1〜10のアルキル基及びアルケニル基、炭素数4〜12、好ましくは炭素数4〜10のシクロアルキル基及びシクロアルケニル基、並びにアリールアルキル基である。上記基質アルコールとしてより具体的には、例えば、メタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0050】
本発明の製造方法において、目的のエステル化合物の種類及び構造には特に限定はない。上記目的のエステル化合物は、上記基質エステル化合物及び上記基質アルコールの組み合わせにより適宜選択することができる。
【0051】
本発明の製造方法において、上記基質エステル化合物及び上記基質アルコールの割合にも特に限定はない。本発明の製造方法において、上記基質エステル化合物と上記基質アルコールとのモル比は、1:(0.5〜2.5)、好ましくは1:(0.5〜2)、更に好ましくは1:(0.8〜1.8)、更に好ましくは1:(0.8〜1.5)、特に好ましくは1:(0.8〜1.2)とすることができる。エステル交換反応は可逆反応である。よって、エステル交換反応では、生成物側に平衡を偏らせるために、通常、原料のエステル又はアルコールの一方を化学量論以上用いる必要がある。しかし、原料を過剰に用いた場合、反応後に原料が残り、非経済的である共に、余剰の原料の処理が問題となる。しかし、本発明の製造方法では、上記モル比が上記範囲内でも、高効率でエステル交換反応により、目的のエステルを得ることができる。その結果、余剰の基質の発生を抑制できるので好ましい。
【0052】
本発明の製造方法において、エステル交換反応を行う溶媒の種類には特に限定はない。該溶媒としては低極性又は非極性有機溶媒を用いることができる。また、上記溶媒は1種の溶媒でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。上記低極性有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アニソール、トルエン、ベンゼン、及びクロロベンゼンが挙げられる。また、上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)が挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、及びヘプタンが挙げられる。上記溶媒として上記脂肪族有機溶媒を用いると、基質エステル化合物及び基質アルコールの割合(モル比)が1:1に近い場合でも、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。また、上記溶媒としてオクタンを用いると、かさ高いエステル又はアルコールを基質として用いても、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0053】
本発明の製造方法では、本発明のエステル合成用触媒を用いてエステル交換反応を行う。本発明の製造方法では、反応系に上記(A)成分及び上記(B)成分が存在する限り、本発明のエステル合成用触媒の具体的な用法に特に限定はない。例えば、本発明の製造方法では、予め調製した本発明のエステル合成用触媒を反応溶媒に添加することにより、反応溶媒中に上記(A)成分及び上記(B)成分を存在させることができる。また、本発明の製造方法では、反応溶媒に上記(A)成分及び上記(B)成分を添加することにより、反応溶媒中に上記(A)成分及び上記(B)成分を存在させてもよい。反応溶媒に上記(A)成分及び上記(B)成分を添加する場合、その添加順序には特に限定はない。上記(A)成分及び上記(B)成分のいずれか一方を添加した後で他方を添加してもよく、又は両者を同時に添加してもよい。
【0054】
本発明の製造方法において、上記(A)成分及び上記(B)成分の量には特に限定はない。上記(A)成分及び上記(B)成分の量は、それぞれ独立に、基質エステル化合物に対して0.5〜15mol%、好ましくは1〜12mol%、更に好ましくは2〜10mol%である。また、上記(A)成分と上記(B)成分との割合にも特に限定はない。上記(B)成分の割合は、上記(A)成分1mol%に対して0.5〜1.5mol%、好ましくは0.5〜1.3mol%、更に好ましくは0.7〜1.3mol%である。上記(B)成分の割合が上記範囲内であると、高収率で目的のエステル化合物が得られるので好ましい。
【0055】
本発明の製造方法において、エステル交換反応の反応条件には特に限定はない。該反応条件は、基質エステル化合物及び基質アルコールの種類及び構造等に応じて適宜選択することができる。反応時間としては、例えば、1〜48時間、好ましくは1〜24時間とすることができる。また、反応温度としては、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜130℃とすることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限られない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0057】
(1)エステル交換反応(I)
触媒として様々な酸性化合物及び塩基性化合物を用いて、エステル交換反応を行い、収率を調べた。
【0058】
スターラーチップを入れた10mlナスフラスコに、ソックスレー管及びコールドフィンガーを取り付けて、反応装置とした。上記ソックスレー管は、上記ナスフラスコの上部に連結されている。次いで、ソックスレー管にモレキュラーシーブス4A(MS4A)(3.50g)を入れた。該MS4Aは、予め電子レンジで乾燥処理(700Wで1分間加熱後、減圧下で室温に冷えるまで乾燥する操作を3回行う)をした。上記MS4Aは、エステル交換反応で生成するメタノールを吸着するために加えた。
【0059】
上記反応装置内を減圧下で加熱乾燥した後、窒素充填した。窒素気流下、ヘプタン中、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(12.2mg、0.1mmol)及び1,3−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]チオ尿素(50.0mg、0.1mmol)を含有する混合溶液(5ml)を上記反応装置内に加えた。室温で1時間撹拌後、それぞれ蒸留した無水ベンジルアルコール(541mg、5mmol)及びフェニル酢酸メチル(751mg、5mmol)を加え、90℃に熱した油浴を用いて6時間加熱還流し、エステル交換反応を行った。室温に戻した後、反応溶液をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてヘキサン−酢酸エチル混合溶媒で分離・精製した。その結果、目的のベンジルエステルが無色透明の油状物質として得られた。反応溶液をH−NMRにより分析したところ、目的のフェニル酢酸ベンジルの収率は91%であった。
【0060】
以下に示す各酸性化合物及び塩基性化合物を触媒として用いて、上記と同様の方法により、エステル交換反応を行い、目的のエステル化合物を合成した。用いた触媒の種類及びエステル化合物の収率を以下に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、触媒として、1,3−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]チオ尿素(以下、単に「チオ尿素化合物」という。)のみ用いた場合、及びDMAPのみを用いた場合のいずれも、殆ど触媒活性を示さなかった。これに対し、両者を併用した場合、収率が91%であり、著しい触媒活性が認められた。また、上記DMAPの代わりに、トリn−ブチルホスフィンを用いた場合、上記DMAPよりは低いが、比較的高い触媒活性が認められた。
【0063】
一方、上記チオ尿素化合物の代わりに、他の酸性化合物(カテコール、リン酸、及び硫酸)をDMAPと併用した場合も、触媒活性は極めて低かった。特に、硫酸を用いても触媒活性が極めて低かったことに鑑みれば、単に酸性化合物の酸性が高ければよいというものではないことが分かる。更に、上記DMAPの代わりに、塩基性の強い1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを上記チオ尿素化合物と併用した場合も、殆ど触媒活性を示さなかった。この結果から、上記DMAPの代わりに、塩基性の強い化合物(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及びキヌクリジン等)を用いた場合、殆ど触媒活性を示さないか、極めて触媒活性は低いと考えられる。
【0064】
(2)エステル交換反応(II)
触媒として、種々の上記(A)成分と上記チオ尿素化合物とを併用し、エステル交換反応を行い、収率を調べた。
【0065】
上記(A)成分として以下に示す化合物を用いた。また、反応条件を以下の条件とする他は、上記(1)と同様の方法により、エステル交換反応を行い、目的のエステル化合物を合成した。用いた触媒の種類及びエステル化合物の収率を以下に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2より、上記(A)成分としてアミノピリジン系化合物を用いた場合、ホスフィン系化合物を用いた場合よりも収率が高かった。よって、上記(A)成分として、特に上記一般式(1)で表される化合物がより好ましいことが分かる。また、アミノピリジン系化合物では、DMAP(一般式(1)のR及びRがメチル基)よりも、ピロリジノピリジン(一般式(1)のR及びRが互いに結合して環を形成している。)の方がより収率が高かった。
【0068】
(3)エステル交換反応(III)
触媒として、種々の上記(B)成分と4−ピロリジノピリジンとを併用し、エステル交換反応を行い、収率を調べた。
【0069】
触媒として4−ピロリジノピリジン及び以下に示す化合物を用いた。反応条件を以下の条件とする他は、上記(1)と同様の方法により、エステル交換反応を行い、目的のエステル化合物を合成した。用いた触媒の種類及びエステル化合物の収率を以下に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表3より、m位にトリフルオロメチル基が4つ有する上記チオ尿素化合物は、最も収率が高かった。上記チオ尿素化合物からトリフルオロメチル基を1つ減らした化合物では、酸性度が下がり、上記チオ尿素化合物より僅かに収率が低い(60%)が、依然として十分な触媒活性を有していた。一方、上記チオ尿素化合物のトリフルオロメチル基をニトロ基に変えた場合、加熱反応中にかなりの量の化合物が分解してしまい、触媒活性が著しく低下した。尚、チオ尿素ではなく、トリフルオロメチル基を有する尿素を用いたところ、触媒活性が殆ど認められなかった。
【0072】
(4)エステル交換反応(IV)
種々の基質エステル化合物及び基質アルコールを用いてエステル交換反応を行い、収率を調べた。
【0073】
基質エステル化合物として、下記に示すエステル化合物を用いた。反応条件を以下の条件とする他は、上記(1)と同様の方法により、エステル交換反応を行い、目的のエステル化合物を合成した。エステル化合物の収率を以下に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
基質エステル化合物として下記に示すエステル化合物を用い、反応条件を以下の条件とする他は、上記(1)と同様の方法により、エステル交換反応を行い、目的のエステル化合物を合成した。エステル化合物の収率を以下に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
表4より、フェニルアセテート、シンナメート、カプレートでは、溶媒としてヘプタンを用いた加熱還流により、高い収率を示した。一方、α位付近が立体的に込み合っているベンゾエートやシクロヘキシカルボキシレートでは、反応性が低下している(触媒及びアルコールが基質に接近しにくくなるためと考えられる。)。しかし、溶媒としてオクタンを用い、加熱温度を高めて加熱還流を行うにより、高い収率を示した。
【0079】
また、メチルエステル以外のエステルについても調べた。その結果、表5より、エチルエステルはメチルエステルと比べて収率が低かった。一方、アリルエステルでは、メチルエステルよりも若干収率が高かった。また、ビニルエステルは、脱離するビニルアルコールがアルデヒドとなるため、平衡が生成物側に偏るので、他のエステルに比べかなり反応性が高かった。
【0080】
次に基質アルコールの基質一般性を調べた。その結果、表6より、ベンジルアルコールが最も収率が高かった。また、他の第1級アルコールは、ベンジルアルコールよりは低いものの、高い収率を示した。また、第2級アルコールでは、第1級アルコールと比較して更に収率が低かったが、比較的高い触媒活性を示していた。
【0081】
(5)エステル交換反応(V)
触媒として、上記チオ尿素化合物及び4−ピロリジノピリジンを用いた。反応条件を以下の条件とする他は、上記(1)と同様の方法により、エステル交換反応を行い、以下に示すエステル化合物を合成した。エステル化合物の収率を以下に示す。
【0082】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される化合物又は一般式PR(R;アルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基)で表される有機ホスフィン化合物と、(B)下記一般式(2)で表される化合物と、を含有することを特徴とするエステル合成用触媒。
【化1】

(式中、上記R及びRは、それぞれ独立して一価の炭化水素基である。上記R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。上記Rは、水素原子又は上記Rと互いに結合して環を形成している一価の炭化水素基である。)
【化2】

(式中、上記R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、電子求引性基、又はその他の置換基である。但し、上記R〜R10の少なくとも1つは電子求引性基である。また、式中、ハロゲン原子及びハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基以外の電子求引性基の数は0〜3である。)
【請求項2】
上記R及びRは一価の炭化水素基であり、且つ互いに結合して環を形成している請求項1記載のエステル合成用触媒。
【請求項3】
上記R〜Rの少なくとも1つは上記電子求引性基であり、上記R〜R10の少なくとも1つは上記電子求引性基である請求項1又は2記載のエステル合成用触媒。
【請求項4】
上記R、R、R、及びR10の少なくとも2つは上記電子求引性基である請求項1乃至3のいずれかに記載のエステル合成用触媒。
【請求項5】
上記電子求引性基は、ハロゲン原子又はハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基である請求項1乃至4のいずれかに記載のエステル合成用触媒。
【請求項6】
上記ハロゲン原子を少なくとも1個含有する一価の炭化水素基は、以下のいずれかの基である請求項5記載のエステル合成用触媒。
【化3】

(式中、上記Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルケニル基である。上記Xはハロゲン原子である。)
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のエステル合成用触媒を用いてエステル交換反応を行うことを特徴とするエステル化合物の製造方法。
【請求項8】
基質であるエステル化合物は、カルボン酸メチルエステル、カルボン酸エチルエステル、カルボン酸アリルエステル、又はカルボン酸ビニルエステルである請求項7記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項9】
基質であるアルコールは、第1級アルコールである請求項7又は8記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項10】
基質であるエステル化合物とアルコールとのモル比が1:(0.5〜2.5)である請求項7乃至9のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−238007(P2008−238007A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80053(P2007−80053)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 電気通信回線を通じて発表 掲載年月日:平成19年2月20日 掲載アドレス:http://www.chemistry.or.jp/nenkai/index.html http://www.chemistry.or.jp/nenkai/87haru/nenkai−87−prog.html#C 7 http://www.chemistry.or.jp/nenkai/87haru/nenkai−87−prog.pdf 刊行物に発表 発行者名:社団法人日本化学会 刊行物名:「化学と工業」 2007年3月号 第60巻第3号 発行年月日:平成19年3月1日 刊行物に発表 発行者名:社団法人日本化学会 刊行物名:日本化学会第87春季年会(2007) 講演予稿集II 発行年月日:平成19年3月12日 電気通信回線を通じて発表 掲載年月日:平成19年3月12日 掲載アドレス:http://www.csj.jp/nenkai/index.html#6 https://www1.csj.jp/nenkai/87haru/prep87_block_pdf/87haru_08A.pdf
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】