説明

エストラジオール誘導体またはエストラトポン誘導体を含有する徐放性眼内インプラント、ならびに関連する製造法

生体適合性眼内インプラントが、抗新脈管形成剤、例えばエストラジオール誘導体またはエストラトポン、および長期間にわたる抗新脈管形成剤の眼への放出を容易にするのに有効な生分解性ポリマーを含有する。インプラントの治療薬を、生分解性ポリマーマトリックス、例えば、ポリビニルアルコールを実質的に含有しないマトリックスと合わしうる。インプラントを眼に配置して、1つまたはそれ以上の眼疾患、例えば、新脈管形成、眼腫瘍等の発生を治療または減少しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法、特に、インプラントを配置した眼に治療薬の長時間放出を与える眼内インプラント、ならびに、例えば、新生血管形成、新脈管形成、腫瘍成長等を治療または減少させるための、そのようなインプラントの製造法および使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
新脈管形成、血管形成過程は、癌、黄斑変性および関節炎を包含する多くの生物学的疾患に関係づけられてきた。病理学的新脈管形成の阻害に関する治療可能性が生じたことによって、多くの研究活動が行われた結果、臨床的有用性を示す種々の抗新脈管形成化合物が発見されている。Folkmanらによる2−メトキシエストラジオール(2MEまたは2ME2)の発見は、エストランステロイドファミリーによる有効な抗新脈管形成活性の証拠を示し、かつ、これまでに見出された最も有効な、内因性の哺乳類用チューブリン重合阻害剤を提供している(米国特許第5504074号)。さらに、Fotsisらは、2−メトキシエストラジオールが、インビトロ抗有糸分裂特性、および細胞増殖の可逆阻害を示すが、融合性培養物は影響されないことを示している(Fotsisら、Nature 1994, 368, 237参照)。前臨床試験および臨床試験は、2−メトキシエストラジオールが、いくつかの脈管形成疾患の治療に有望であることも示している。
【0003】
2−メトキシエストラジオールは、哺乳類系における内因性エストラジオールの代謝産物である。それは、細胞増殖の阻害において、いくつかの生物学的活性を示す。2−メトキシエストラジオールによる内皮細胞のアポトーシスは、新脈管形成の阻害を生じる。特に、2−メトキシエストラジオールは、血管内皮増殖因子(VEGF)の誘発による角膜新生血管形成を阻害する。さらに、2−メトキシエストラジオールは、コルヒチン結合部位で結合することによるチューブリン重合の阻害によって、新脈管形成活性を示すことが報告されている。2−メトキシエストラジオールに対して、コルヒチンは最少選択性を示し、極めて細胞傷害性であり、その結果、その臨床使用はこの低い治療指数のために限定されてきた。2−メトキシエストラジオールの発見以来、構造−活性相関の研究によっていくつかの2−置換エストラジオール誘導体が得られ、これらは、コルヒチン結合部位へのより高い親和性を示し、かつ癌細胞系におけるより高い細胞傷害性反応も示してきた。2−メトキシエストラジオールおよびこれらの関連化合物の充分な臨床可能性の研究が続けられているが、観測された2−メトキシエストラジオールの抗新脈管形成活性と、チューブリンへのその結合能力との関係についてはほとんど知られていない。
【0004】
2−メトキシエストラジオールは、広範囲の腫瘍モデルにおいて経口的に活性であり、実質的に非毒性の投与量において腫瘍成長を阻害する。転移拡散を阻害する2−メトキシエストラジオールの能力は、疾患の種々の段階において、その癌治療に関する治療的有用性を増加させる(Pribludaら、"2-Methoxyestradiol: An endogenous antiangiogenic and antiproliferative drug candidate", Cancer and Metastasis Reviews, 19: 173-179(2000))。
【0005】
2−メトキシエストラジオールの抗腫瘍作用は、Schumacherら、"The physiological estrogen metabolite 2-methoxyestradiol reduces tumor growth and induces apoptosis in human solid tumors", J Cancer Res Clin Oncol. 127:405-410(2001)に記載されている。
【0006】
Millerら("Synthesis and Structure-Activity Profiles of A-Homoestranes, the Estratopones", J. Med. Chem. 40:3836-3841(1997))は、多くのコルヒチン/2−メトキシエストラジオール混成物を記載している。これらの混成物は、ステロイド核のC-2、C-3またはC-4位置にケト官能性を有するA環トロポン系を有する。大部分の混成物は、チューブリンの重合を阻害した。
【0007】
米国特許第6713081号は、ポリビニルアルコールから製造され、制御的または持続的に眼に治療薬を送達するのに使用される眼球インプラント器具を開示している。該インプラントは、眼において、結膜下または硝子体内に配置しうる。
【0008】
眼への配置用の生体適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬物送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬物放出用の新規薬物送達システム、ならびにそのようなシステムの製造法および使用法を提供する。該薬物送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムおよび方法は、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約2ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。
【0011】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および該治療成分に付随した薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、1つまたはそれ以上の抗新脈管形成化合物を含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。例えば、治療成分は、エストラジオール誘導体、エストラトポンまたはそれらの組合せを含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれのみから成ってよい。または、治療成分は、アナコルテートを含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれのみから成ってよい。薬剤放出持続成分は、治療成分に付随して、インプラントが配置された眼への所定量の抗新脈管形成化合物、例えば、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの放出を持続させる。所定量の抗新脈管形成化合物は、眼にインプラントが配置されてから約1週間より長い期間にわたって眼に放出され、眼の症状、例えば、新生血管形成、新脈管形成、腫瘍成長等の減少または治療に有効である。
【0012】
1つの態様において、眼内インプラントは、エストラジオール誘導体、およびポリビニルアルコールを実質的に含有しない生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。エストラジオール誘導体は、眼疾患を治療するのに有効な量のエストラジオール誘導体を持続的にインプラントから放出させるのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスを伴う。眼内インプラントは、生分解性または生体内分解性であり、長期間にわたって、例えば1週間より長い期間、例えば約3ヶ月またはそれ以上〜約6ヶ月またはそれ以上にわたって、眼へのエストラジオール誘導体の持続放出を与える。特定のインプラントにおいて、エストラジオール誘導体は2−メトキシエストラジオールである。
【0013】
他の態様において、眼内インプラントは、エストラトポンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。エストラトポンは、眼疾患を治療するのに有効な量のエストラトポンを持続的にインプラントから放出させるのに有効な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスを伴う。眼内インプラントは、生分解性または生体内分解性であり、長期間にわたって、例えば1週間より長い期間、例えば約3ヶ月またはそれ以上〜約6ヶ月またはそれ以上にわたって、眼へのエストラトポンの持続放出を与える。エストラトポンを含有するインプラントは、ポリビニルアルコールを含有してもしなくてもよい。
【0014】
他の態様において、眼内インプラントは、アナコルテート、および前記と同様の生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。
【0015】
前記のインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性ポリマーの混合物であってもよく、または該マトリックスは、単一型の生分解性ポリマーを含んで成ってもよい。例えば、マトリックスは、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーを含んで成ってよい。
【0016】
本発明のインプラントの製造法は、抗新脈管形成化合物と、1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーとを組み合わすかまたは混合することを含む。次に、該混合物を押し出すかまたは圧縮して、単一組成物を形成しうる。次に、単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに好適な個々のインプラントを形成しうる。
【0017】
インプラントを眼領域に配置して、種々の眼疾患を治療することができ、例えば、新生血管形成、新脈管形成、腫瘍成長等に関連した少なくとも1つの症状を治療、予防または軽減しうる。
【0018】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0019】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0020】
本発明の付加的局面および利点は、特に添付の図面に関連して考慮する場合に、以下の説明および請求の範囲に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書に記載するように、1つまたはそれ以上の眼内インプラントの使用による治療薬の制御および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を向上させることができる。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含んで成り、1つまたはそれ以上の医薬的に活性な薬剤、例えば抗新脈管形成剤、例えば、エストラジオール誘導体、エストラトポンまたはアナコルテートを、長期間にわたって放出するように配合される。インプラントは、1つまたはそれ以上の望ましくない眼症状の1つまたはそれ以上の症状を、治療、予防および/または軽減させるために、眼の領域に直接的に、治療有効量の1つまたはそれ以上の薬剤を与えるのに有効である。従って、患者を、繰り返しの注入、または自己投与点眼剤の場合の、単に限定されたバーストの活性剤への暴露による非効率的な治療に付すのではなく、単一投与によって、治療薬が、それらを必要とする部位で使用され、しかも長期間にわたって維持される。
【0022】
本明細書の開示による眼内インプラントは、治療成分、および治療成分に付随する薬剤放出持続成分を含んで成る。本発明によれば、治療成分は、抗新脈管形成剤、例えばエストラジオール誘導体またはエストラトポンまたはアナコルテートまたはそれらの組合せを含んで成るか、またはそれから本質的に成るか、またはそれのみから成る。薬剤放出持続成分は、インプラントを配置した眼への有効量の治療成分の放出を持続させるために、治療成分に付随している。治療成分は、インプラントを眼に配置してから約1週間より長い期間にわたって放出され、1つまたはそれ以上の眼症状、例えば、新生血管形成、新脈管形成、腫瘍成長等の少なくとも1つの症状を治療および/または減少させるのに有効である。
【0023】
定義
本発明の説明のために、用語の文脈が異なる意味を示す場合を除いて、このセクションで定義されるように以下の用語を使用する。
【0024】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、サイズ設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0025】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0026】
本明細書において使用する場合、「エストラジオール誘導体」は、チューブリンと結合し、微小管形成を阻害し、かつ/または1つまたはそれ以上の抗有糸分裂特性を示す化合物を意味する。本明細書において使用する場合、「エストラジオール誘導体」という用語は、コルヒチンを含まない。
【0027】
本明細書において使用する場合、「エストラトポン」は、2−メトキシエストラジオールから誘導される化合物である(Millerら、Synthesis and Structure-Activity Profiles of A-Homoestranes, the Estratopones, J. Med. Chem. 40:3836-3841,1997)。エストラトポンは、A−ホモエストラジオール誘導体と称される場合もある。本明細書の開示に関して、それは、特定のタイプのエストラジオール誘導体であり、より詳しくは、2−メトキシエストラジオールとコルヒチンとの混成物であると理解しうる。
【0028】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0029】
本明細書において使用する場合、「付随する」は、混合するか、分散するか、結合するか、覆うか、または包囲することを意味する。
【0030】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼球領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0031】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0032】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0033】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0034】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0035】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0036】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0037】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0039】
様々な期間にわたって薬剤装入量を放出することができる眼内インプラントが開発されている。これらのインプラントは、眼、例えば眼の硝子体に挿入された場合に、治療レベルの抗新脈管形成化合物、例えば、エストラジオール誘導体またはエストラトポンまたはアナコルテートを、長期間にわたって(例えば、約1週間またはそれ以上)与える。開示されるインプラントは、眼症状、例えば後眼症状(新生血管形成、腫瘍、新脈管形成などを含む)を治療するのに有効である。
【0040】
本発明の1つの態様において、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の1つのタイプである。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに有効である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスを伴うエストラジオール誘導体を含んで成る。マトリックスは、インプラントを眼の領域または眼の部位、例えば眼の硝子体に配置してから約1週間より長い期間にわたって、所定量のエストラジオール誘導体の放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0041】
インプラントのエストラジオール誘導体は、一般に、チューブリンモノマー上のコルヒチン結合部位において相互作用する薬剤であり、該薬剤は、チューブリン重合および新脈管形成を阻害しうる。本発明のインプラントに有用なエストラジオール誘導体の例は、米国特許第5504074号に記載されている。簡単に言えば、本発明のインプラントのエストラジオール誘導体は、下記の式で示される化合物であってよい:
【化1】

[式中、
I. Ra〜Roは、下記のように定義され:
A) Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Ri、Rj、Rk、RL、Rm、Roは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rgは、-R1-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Br、-Iまたは-C≡CHであるか;または
B) Ra、Rb、Rc、Rf、Rk、RL、Roは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rd、Re、Ri、Rmは、それぞれ独立して、=O、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rgは、=O、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Br、-Iまたは-C≡CHであり;
II. Z'は、下記のように定義され:
A) Z'は、Xであり、Xは、
【化2】

であるか;または
B) Z'は、
【化3】

であり、ここで、Rnは、-R1、-OR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;X'は前記のように定義されるXであるか、またはX'は>C=Oであり;
III. Z''は、下記のように定義され:
A) Z''は、Yであり、Yは、
【化4】

であり、ここで、nは0〜6であるか;または
B) Z''は、
【化5】

であり、ここで、Rpは、-R1、-OR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;YはIII(A)に定義した通りであり;
IV. 但し、Rb、Rc、Rd、Rc、Ri、Rj、Rk、RL、RmおよびRoが、それぞれHであり、
Rfが、-CH3であり、
Rgが、-OHであり、
Z'が、>COHであり、かつ
Z''が、>CH2であるとき、
Raは-Hでないものとし;
前記の各式において、R1およびR2は、それぞれ独立して、-H、または6個までの炭素原子を有する置換または非置換アルキル、アルケニルまたはアルキニル基である]。
【0042】
特定のインプラントにおいて、エストラジオール誘導体は、下記の式で示される2−メトキシエストラジオール(AGN 202231)である:
【化6】

【0043】
これらのインプラントは、エストラジオール誘導体の塩を含有してもよい。本発明化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩、硫酸塩または二硫酸塩、燐酸塩または酸性燐酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0044】
従って、インプラントは、エストラジオール誘導体、例えば、2−メトキシエストラジオール、その塩、およびそれらの混合物を含んで成るか、それから本質的に成るか、またはそれのみから成る治療成分を含有しうる。そのようなインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、好ましくは、実質的に無ポリビニルアルコールであり、言い換えれば、ポリビニルアルコールを含有しない。
【0045】
他の態様において、生分解性眼内インプラントは、エストラトポンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含んで成る。そのような態様において、生分解性ポリマーマトリックスは、ポリビニルアルコールを含有してよいが、好ましくは、該マトリックスは実質的に無ポリビニルアルコールである。そのようなインプラントに使用されるエストラトポンの例は、米国特許第6271220号に記載され、下記の式で示しうる:
【化7】

[式中、Aは、下記の一般式で示される縮合トロポンであり:
【化8】

ここで、Xは 水素、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ニトロ、C1〜C12アルケニル、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、SR、NR2、OSO3、OSO2NR2、HNSO3、NHSO2NR2、SSO3、SSO2NR2等から成る群から選択され、ここで、Rは、水素またはC1〜C6アルキルである]。一般に、Rはトロポンのカルボニル成分に隣接するように選択される。
【0046】
好ましくは、Xは、水素、クロロ、ブロモ、メトキシおよびエトキシから成る群から選択される。
【0047】
最も好ましくは、インプラントの化合物において、Aは、下記の一般式で示される縮合トロパンである:
【化9】

[式中、Xは先に記載した通りである]。
【0048】
特定のインプラントにおいて、エストラポンは、下記の式で示される:
【化10】

[式中、Aは、下記の一般式で示される縮合トロポンであり;
【化11】

ここで、Xは、H、Cl、Br、メトキシおよびエトキシから成る群から選択される]。
【0049】
他のインプラントにおいて、エストラトポンは、下記の式で示される化合物である:
【化12】

[式中、Aは、
【化13】

であり、ここで、Xは、クロロおよびブロモから成る群から選択される]。
【0050】
他のインプラントにおいて、エストラトポンは、下記の式で示される化合物である:
【化14】

[式中、Aは、
【化15】

であり、ここで、Xは、メトキシである]。
【0051】
前記のインプラントは、エストラジオール誘導体含有インプラントと同様に、エストラトポン塩、およびエストラトポンとエストラトポン塩との組合せを含有してもよい。
【0052】
他のエストラジオール誘導体およびエストラトポンは、従来法、例えば、当業者に既知の慣例化学合成法によって得られる。治療に有効なエストラジオール誘導体およびエストラトポンを、従来スクリーニング法を使用して、例えば、生体外アッセイにおいてチューブリン重合の阻害量を測定することによるか、または前記化合物の有効性を確認するのに使用しうる他のアッセイによって、スクリーニングし同定しうる。
【0053】
エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンは、粒状または粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに閉じ込めうる。一般に、眼内インプラントにおけるエストラジオール誘導体および/またはエストラトポン粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均粒度を有する。あるインプラントにおいて、粒子は、約3000ナノメートル未満のオーダーの有効平均粒度を有しうる。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効平均粒度を有しうる。他のインプラントにおいて、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒度、さらに他の態様においては、約200ナノメートル未満の粒度を有しうる。
【0054】
インプラントのエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンは、好ましくは、インプラントの重量に対して約10%〜90%である。より好ましくは、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンは、インプラントの重量に対して約20%〜約80%である。好ましい態様において、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンは、インプラントの重量の約40%(例えば、30%〜50%)を占める。他の態様において、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンは、インプラントの重量の約60%を占める。
【0055】
インプラントに使用される好適なポリマー材料または組成物は、眼に適合性、即ち生体適合性であり、それによって、眼の機能または生理機能に実質的障害を生じない材料を包含する。そのような材料は、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性である。
【0056】
有用なポリマー材料の例は、有機エステルおよび有機エーテルから誘導され、かつ/またはそれらを含有する材料であって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じる材料(モノマーを含む)であるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等から誘導され、かつ/またはそれらを含有するポリマー材料を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマー材料は、付加または縮合重合体、好都合には縮合重合体であってよい。ポリマー材料は、架橋または非架橋、例えば軽架橋以下であってよく、例えば、ポリマー材料の約5%未満または約1%未満が架橋されている。多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素の少なくとも1つ、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。制御薬物送達のための被包形成を記載しているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, p.39-90に示されているポリマーを、本発明のインプラントに使用しうる。
【0057】
他に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せのポリマーを包含する。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくり侵食されるポリマーまたはポリマー材料が得られ、一方、ラクテートラセミ体を使用することによって、侵食が実質的に促進される。
【0058】
有用な多糖類の例は、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、水不溶性であることを特徴とし、分子量が例えば約5kD〜500kDの、カルボキシメチルセルロースエステルであるが、それらに限定されない。
【0059】
関心がもたれる他のポリマーは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性の場合もある、ポリビニルアルコール(例えば、エストラトポンを含有するインプラント用)、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組合せであるが、それらに限定されない。本明細書に記載するように、インプラントが2−メトキシエストラジオールまたは他のエストラジオール誘導体を含有する場合、インプラントはポリビニルアルコールを実質的に含有しない。
【0060】
本発明に使用されるポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬物送達システムの製造におけるポリマーの使い易さ、少なくとも約6時間の、好ましくは約1日より長い、生理環境における半減期、硝子体の粘度を有意に増加させないこと、および水不溶性を包含しうる。
【0061】
マトリックスの形成のために含有される生分解性ポリマー材料は、酵素的または加水分解的に不安定になりやすいことが望ましい。水溶性ポリマーを、加水分解的または生分解的に不安定な架橋で架橋させて、有用な水不溶性ポリマーが得られる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを使用するか、ポリマー混合物の使用、ポリマーが末端酸根を有するか、に依存して広く変化させることができる。
【0062】
インプラントに使用されるポリマー組成物の相対平均分子量も、ポリマーの生分解性、従ってインプラントの長時間放出プロフィールを調節するのに同じく重要である。種々の分子量の同じかまたは異なるポリマーの組成物を、インプラントに含有させて、放出プロフィールを調節しうる。特定のインプラントにおいて、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kD、一般に約10〜約54kD、より一般的には約12〜約45kDである。
【0063】
いくつかのインプラントにおいて、グリコール酸と乳酸のコポリマーを使用し、生分解速度をグリコール酸/乳酸の比率によって調節する。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含有する。ホモポリマー、または等しくない比率を有するコポリマーは、分解に対してより抵抗性である。グリコール酸/乳酸の比率は、インプラントの脆性にも影響を与え、より大きい形状には、より柔軟性のインプラントが望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のパーセントは、0〜100%、好ましくは約15〜85%、より好ましくは約35〜65%にすることができる。いくつかのインプラントにおいて、50/50 PLGAコポリマーが使用される。
【0064】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2つまたはそれ以上の生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。例えば、インプラントは、第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含有しうる。1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーは、末端酸根を有してよい。
【0065】
分解性ポリマーからの薬剤放出は、いくつかのメカニズム、またはメカニズムの組合せの結果である。これらのメカニズムのいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔流路からの拡散、および侵食である。侵食は、本体または表面、またはその両方の組合せであることができる。本明細書に記載するように、眼内インプラントのマトリックスは、眼への移植から1週間より長い期間にわたって、所定量のエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの放出を持続させるのに有効な速度で、薬剤を放出しうる。特定のインプラントにおいて、治療量のエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンを、約1ヶ月より長い期間、さらには約6ヶ月間またはそれ以上にわたって放出させる。
【0066】
生分解性眼内インプラントの1つの例は、ポリビニルアルコールを実質的に含有せず、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含有する生分解性ポリマーマトリックスを伴う2−メトキシエストラジオールを含んで成る。インプラントは、インプラント重量の約40%〜約70%の量の2−メトキシエストラジオールを含有しうる。そのような混合物は、インプラントを眼に配置してから約2ヶ月間〜約4ヶ月間にわたって、治療有効量の2−メトキシエストラジオールの放出を持続させるのに有効である。
【0067】
生分解性ポリマーマトリックスを含有する眼内インプラントからのエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの放出は、初期放出バースト、次に、放出されるエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの量の漸増を含む場合があり、または該放出は、エストラジオール誘導体および/またはエストラポンの初期放出遅延、次に、放出増加を含む場合もある。インプラントが実質的に完全に分解した場合、放出されたエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンのパーセントは、約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示するインプラントは、眼に配置してから約1週間後までは、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンを完全には放出しないか、または約100%を放出しない。
【0068】
インプラントの寿命にわたって、インプラントからのエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの比較的定速の放出を与えることが望ましい場合がある。例えば、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンが、インプラントの寿命にわたって、1日当たり約0.01μg〜約2μgの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの配合に依存して変化して、増加するかまたは減少する場合もある。さらに、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの放出プロフィールは、1つまたはそれ以上の直線部分および/または1つまたはそれ以上の非直線部分を含みうる。一旦、インプラントが分解または侵食しはじめたら、放出速度はゼロより大きいことが好ましい。
【0069】
インプラントは、モノリシックである(即ち、1つまたはそれ以上の活性剤がポリマーマトリックス全体に均一に分散されている)か、または被包され、その場合、活性剤の貯留部がポリマーマトリックスによって被包されている。製造容易性により、モノリシックインプラントが、被包形態より一般に好ましい。しかし、被包された貯留部型インプラントによって得られるより優れた調節は、薬剤の治療レベルが狭い幅内にあるいくつかの状況において有利な場合もある。さらに、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンを含有する治療成分を、マトリックス中に不均質に分散させてもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第二部分に対してより高い濃度のエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンを有する部分を含有してよい。
【0070】
本明細書に開示する眼内インプラントは、針での投与用に、約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの大きさ、外科的移植による投与用に、1mmより大、または2mmより大、例えば3mm〜10mmの大きさであってよい。ヒトの硝子体腔は、例えば1〜10mmの長さを有する種々の形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒形ペレット(例えばロッド)であってよい。または、インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒形ペレットであってもよい。
【0071】
インプラントは、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を容易にするように、少なくとも幾分柔軟性であってもよい。インプラントの全重量は、一般に約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってよい。非ヒト個体に関しては、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存してより大きいかまたはより小さくてよい。例えば、ウマの約30mLおよびゾウの約60〜100mLと比較して、ヒトは約3.8mLの硝子体容量を有する。ヒトに使用される大きさのインプラントを、他の動物に応じて大きくするかまたは小さくし、例えばウマ用のインプラントは約8倍大きくし、または、例えばゾウ用のインプラントは26倍大きくしうる。
【0072】
例えば、中心が1つの材料で形成され、表面が同じかまたは異なる組成物の1つまたはそれ以上の層を有し、層が架橋しているか、または異なる分子量、異なる密度または多孔率等であるインプラントを製造することができる。例えば、薬剤の初期ボーラスを急速に放出することが望ましい場合、中心が、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーで被覆されたポリラクテートであってよく、それによって初期分解速度を増加しうる。または、中心が、ポリラクテートで被覆されたポリビニルアルコールであってもよく、それによって、外側のポリラクテートの分解時に、中心が溶解し、眼から急速に流れ出るようにしうる。
【0073】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球体、円板、プラク等を包含する任意の形状であってよい。インプラントの大きさの上限は、インプラントに関する許容性(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、取扱い容易性等のような要因によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱い容易性のために、少なくとも約0.5mm×0.5mm、一般に約3〜10mm×5〜10mm、厚さ約0.1〜1.0mmである。繊維を使用する場合、繊維の直径は、一般に約0.05〜3mmであり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmである。球体は、直径約0.5μm〜4mmであり、他の形状の粒子に匹敵する容量を有しうる。
【0074】
インプラントの大きさおよび形は、放出速度、治療期間、および移植部位における薬剤濃度を調節するために使用することもできる。より大きいインプラントは、比例的により高い投与量を送達するが、表面積/質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。移植部位に適合させるために、インプラントの特定の大きさおよび形状を選択する。
【0075】
エストラジオール誘導体および/またはエストラトポン、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0076】
本明細書に開示される眼内インプラントに含有されるエストラジオール誘導体および/またはエストラトポンに加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0077】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0078】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0079】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0080】
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0081】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0082】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0083】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0084】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0085】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0086】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0087】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。本明細書に示すように、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0088】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。
【0089】
さらに、インプラントは、溶解促進成分を含有していない実質的に同じインプラントと比較して、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分を含有しうる。例えば、インプラントは、エストラジオール誘導体および/またはエストラトポンの溶解性を増加させるのに有効なβ−シクロデキストリンを含有しうる。β−シクロデキストリンは、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用しうる。特定のインプラントにおいて、β−シクロデキストリンは、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で使用される。
【0090】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。
【0091】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のエストラジオール誘導体またはエストラトポンの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0092】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0093】
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0094】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0095】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0096】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0097】
本発明のインプラントは、眼の症状、例えば、新脈管形成、新生血管形成および有糸分裂に関連した眼の症状を、治療または減少させるのに有効な所定量のエストラジオール誘導体またはエストラトポンを放出するように構成される。特に、新生血管形成を減少させ、眼の腫瘍を治療する方法に、インプラントを使用しうる。
【0098】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状を予防するために、前記のエストラジオール誘導体またはエストラトポンまたは他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0099】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0100】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0101】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0102】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0103】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)。
【0104】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0105】
遺伝性疾患:
網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti's Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫、オースラー−ウェーバー症候群。
【0106】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0107】
腫瘍:
腫瘍、固形腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば、血管腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫に関連した網膜疾患;RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0108】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、眼炎症性および免疫性疾患、眼血管機能不全、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障等。
【0109】
1つの態様において、インプラント、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントを配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントを投与することを含みうる。
【0110】
少なくとも1つの態様において、患者における新生血管形成または新脈管形成を減少させる方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のエストラジオール誘導体またはエストラトポンを含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからのエストラジオール誘導体またはエストラトポンの長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0111】
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)エストラジオール誘導体、例えば2−メトキシエストラジオール、またはエストラトポンを含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントを含有する容器、およびb)使用説明書。使用説明書は、インプラントの取扱い方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用により予期される事柄を含みうる。
【実施例】
【0112】
実施例1
エストラジオール誘導体またはエストラトポンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含有するインプラントの製造および試験
2−メトキシエストラジオール、または任意の前記エストラトポンの式によって示されるエストラトポンを、生分解性ポリマー組成物と、ステンレス鋼乳鉢において合わすことによって、生分解性インプラントを製造する。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0113】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬物送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0114】
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0115】
生体外放出試験を、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行うことができる。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換する。
【0116】
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用することができ、検出器は264nmに設定することができる。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であってよい。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めることができる。
【0117】
インプラント用に選択されるポリマーは、例えば、Boehringer IngelheimまたはPurac Americaから得ることができる。ポリマーの例は、RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLG(50/50)である。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは、酸末端基または末端酸根を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、ならびにPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【0118】
実施例2
2ME2を含有する粒子生分解性インプラントの製造方法
2ME2(AGN 202231)をAllerganから入手し、使用前に、その粒度をボールミル(MM200、Retsch, USA)によって約40μmに減少させた。PLGA/PLA原材料はBoehringer Ingelheim, Inc、Purac America Inc.またはBirmingham Polymers, Inc.から入手した。
【0119】
実施例3
生分解性インプラントからの2ME2の生体外放出
振とう水浴(Precision)中37℃において、0.5%β−シクロデキストリン(β-CD)を含有する0.05M KH2PO4溶液(pH4.4)中で、2ME2放出を試験した。2ME2薬物送達システムを、媒質20mL中でインキュベーションした。各試料採取時に、媒質を、新しい媒質と完全に交換した。HPLC[Symmetry C18カラム(4.6×75mm、3.5μm、周囲温度で平衡)を取り付けたWaters 2690 Separation Module、およびWaters 996ホトダイオードアレー検出器(285nmに設定)から成り、アセトニトリル/水(35/65容量比)中の1%酢酸を移動相として流速1.0mL/分において使用]によって、薬剤濃度を測定した(2)。任意の試料注入を開始する前に、少なくとも30分間にわたってカラムを移動相で平衡させた。
【0120】
各溶媒中で過剰2ME2をインキュベーションし、音波処理し、試料を濾過および前記HPLCアッセイに付すことによって、種々の溶媒への2ME2の溶解度を測定した。有効性を測定するために、HPLCへの注入前に、DDSをアセトニトリルに溶解させ、移動相によって適切な濃度に希釈した。
【0121】
2ME2の溶解度を、種々の溶媒において測定し、結果を表1に示す。燐酸カリウム(KH2PO4)中の0.5%β−シクロデキストリン(β-CD)、酢酸カリウム(KOAc)中の0.5%β-CD、および生理食塩水中の0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における2ME2は、優れた溶解性を示したと考えられる。しかし、KH2PO4溶液は、2ME2の優れたpH安定性を示し、従って、KH2PO4中の0.5%β-CDを、この試験における放出試験媒質として選択した。
【0122】
【表1】

【0123】
配合物識別名、薬剤添加量および製剤形態を包含する配合物の特徴を表2に示す。配合物を、750μmノズルから押出してフィラメントにするか、または熱間圧縮してウエハにした。
【0124】
インプラント用に選択したポリマーは、Boehringer Ingelheim、Purac America Inc.、またはBirmingham Polymers, Inc.から入手した。ポリマーは、RG752、RG755、R203、Purac PDLG(50/50)およびBPI PLGAであった。RG752は、(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG755は、75:25(D,L−ラクチド:グリコリド)の比率のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり; R203は、100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG752、RG755、R203およびPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.6、0.3および0.2dL/gである。RG752、RG755、R203およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11200、40000、14000および9700ダルトンである。
【0125】
【表2】

【0126】
配合物1〜12(F1〜F12)の有効性を測定し、結果を図1に示す。全ての配合物は、極めて優れた有効性を示したが、但し、F2およびF10は、比較的大きい標準偏差をそれぞれ有する高有効性(116%)および低有効性(90%)を示した。これは、配合の間に2ME2およびポリマー材料を処理することが困難であることから生じうる。
【0127】
0.5%β-CDを含有する燐酸塩溶液中の配合物1、3、5、7、9および11(ロッド形態)からの2ME2放出を、図2に示す。F1およびF9配合物は、同様の放出プロフィールを示した。2ME2の約20%が、初めの60日間に放出され、次の40日間に完全に放出された。F9における低含有量(5%)のβ-CDは、薬剤放出において重要な役割を果たしていなかった。2ME2の10%未満が、F3およびF7から56日以内に放出され、従って、放出試験を終了させた。遅い放出は、高疎水性ポリマーに起因すると考えられる。F5およびF11については、かなり速い薬剤放出が観測された。それぞれ、ほぼ40日間および60日間で、2ME2の約90%がF5およびF11から放出された。
【0128】
0.5%β-CDを含有する燐酸緩衝溶液中の配合物2、4、6、8、10および12(ウエハ形態)からの2ME2の放出を、図3に示す。F2およびF10ウエハ配合物は、前記のF1およびF9(それらのロッド対応物)と同様の放出プロフィールを示した。2ME2の10%未満が、60日以内にF4およびF8から放出されたが、F4に関して、第60日〜第105日に有意なバースト作用が観測され、F8に関して、第60日後にごく限定された量の2ME2が継続して放出された。異なる形態にもかかわらず、同じポリマーを使用して製造されたF5およびF6は、同様の放出プロフィールを示した。F11(ロッド対応物)と同様に、2ME2の約90%が60日間でF12から放出され、初めの3週間に遅い薬剤放出を示した。
【0129】
より直線的な放出プロフィールを得るために、さらに配合研究を行った。配合物13〜17をロッド形態に形成し、0.5%β-CDを含有する燐酸塩溶液におけるそれらの放出プロフィールを図4に示す。比較のために、F1およびF11の放出プロフィールも含めた。F13およびF16に関しては、2ME2の約35%が、初めの70日間で放出され、次に、第119日において完全に薬剤が放出された。F13とF16の、ポリマーおよびβ-CDの比率における共に5%の違いは、70日後までは放出プロフィールに有意な差異を生じなかったと考えられる。F14は、より直線的な放出プロフィールを示し、60%より多くが第80日までに放出された。F15に関しては、初めの4週間において、極めて遅い放出段階が見られ、次の3週間にわたって薬剤の70%より多くが放出され、その後、その放出試験を終了させた。F17に関しては、最初の9週間において、2ME2の60%より多くが放出され、3ヶ月後に薬剤放出が終了した。
【0130】
種々の2ME2薬剤添加量において種々のPLGAまたはPLAを使用して、合計17の2ME2(AGN 202231)配合物を、ロッドまたはウエハ形態に形成した。放出媒質スクリーニングは、KH2PO4溶液中0.5%β-CDが、2ME2の高い溶解性およびpH安定性の両方を達成したことを示した。ロッド形態の配合物は、ウエハ形態の配合物より高い有効性を示した。同様の薬剤放出プロフィールが、同じ成分を含有する配合物において、それらの形態に関係なく見られた。比較的一貫した薬剤放出を、2ヶ月間(例えばF11)または4ヶ月間(例えばF14)にわたって維持することができた。
【0131】
実施例4
増殖性糖尿病性網膜症を治療するための2ME2含有眼内インプラントの使用
眼検査において、糖尿病性網膜症に罹患した48才の男性糖尿病患者が、新生血管形成が両方の眼の視神経の近くに生じていると診断される。医師は、2−メトキシエストラジオール(2ME2)を含有する生分解性眼内インプラントでの治療を薦める。0.5%β-CD中に500μgの2ME2を含有する1つ(1000μg)のインプラントを、患者のそれぞれの眼に配置する。インプラントは、PLGAポリマーマトリックスから製造したロッドの形態である。患者の眼の検査を、12ヶ月間にわたって毎週行う。新生血管形成は、インプラントの埋込みから約10日以内に抑制されたと考えられる。患者は、その1年間を通して、視神経におけるどのような血管成長も経験していない。
【0132】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0133】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】配合物の数に対する含量均一性を示すグラフであり、各配合物の有効性を反映している。
【図2】37℃の0.5%β−シクロデキストリン溶液中における、種々の生分解性ポリマーを使用した生分解性2−メトキシエストラジオール含有インプラント(ロッド(rods))の、累積放出プロフィールを示すグラフである。
【図3】37℃の0.5%β−シクロデキストリン溶液中における、種々の生分解性ポリマーを使用した生分解性2−メトキシエストラジオール含有インプラント(ウエハ(wafers))の、累積放出プロフィールを示す図2と同様のグラフである。
【図4】37℃の0.5%β−シクロデキストリン溶液中における、種々の生分解性ポリマーを使用した生分解性2−メトキシエストラジオール含有インプラント(ロッド)の、累積放出プロフィールを示す図3と同様のグラフである。配合物は、本明細書に記載する13〜17、1および11である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストラジオール誘導体;および
生分解性ポリマーマトリックスであって、ポリビニルアルコールを実質的に含有せず、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって、インプラントからの所定量のエストラジオール誘導体の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックス
を含んで成る生分解性眼内インプラント。
【請求項2】
エストラジオール誘導体が、下記の式で示される化合物である請求項1に記載のインプラント:
【化1】

[式中、
I. Ra〜Roは、下記のように定義され:
A) Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Ri、Rj、Rk、RL、Rm、Roは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rgは、-R1-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Br、-Iまたは-C≡CHであるか;または
B) Ra、Rb、Rc、Rf、Rk、RL、Roは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rd、Re、Ri、Rmは、それぞれ独立して、=O、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;Rgは、=O、-R1、-OR1、-OCOR1、-SR1、-F、-NHR2、-Br、-Iまたは-C≡CHであり;
II. Z'は、下記のように定義され:
A) Z'は、Xであり、Xは、
【化2】

であるか;または
B) Z'は、
【化3】

であり、ここで、Rnは、-R1、-OR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;X'は前記のように定義されるXであるか、またはX'は>C=Oであり;
III. Z''は、下記のように定義され:
A) Z''は、Yであり、Yは、
【化4】

であり、ここで、nは0〜6であるか;または
B) Z''は、
【化5】

であり、ここで、Rpは、-R1、-OR1、-SR1、-F、-NHR2、-Brまたは-Iであり;YはIII(A)に定義した通りであり;
IV. 但し、Rb、Rc、Rd、Rc、Ri、Rj、Rk、RL、RmおよびRoが、それぞれHであり、
Rfが、-CH3であり、
Rgが、-OHであり、
Z'が、>COHであり、かつ
Z''が、>CH2であるとき、
Raは-Hでないものとし;
前記の各式において、R1およびR2は、それぞれ独立して、-H、または6個までの炭素原子を有する置換または非置換アルキル、アルケニルまたはアルキニル基である]。
【請求項3】
エストラジオール誘導体が、2−メトキシエストラジオール、その塩、およびその混合物である請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
付加的な眼科的に許容される治療薬をさらに含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
エストラジオール誘導体が、生分解性ポリマーマトリックスに分散している請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
溶解促進成分を含有していない実質的に同じインプラントと比較して、エストラジオール誘導体の溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分をさらに含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
溶解促進成分がβ−シクロデキストリンを含んで成る請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
β−シクロデキストリンを、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用する請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
β−シクロデキストリンを、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で使用する請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
マトリックスが、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、それらの誘導体、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのポリマーを含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
マトリックスが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
マトリックスが、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
マトリックスが、眼の硝子体にインプラントを配置してから1ヶ月より長い期間にわたって、インプラントからの所定量のエストラジオール誘導体の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
エストラジオール誘導体が2−メトキシエストラジオールであり、マトリックスが、約2ヶ月〜約6ヶ月にわたって治療有効量の2−メトキシエストラジオールの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
眼の硝子体に配置するように構成された請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
エストラジオール誘導体が、インプラントの約40wt%〜約70wt%の量で使用される2−メトキシエストラジオールであり、生分解性ポリマーマトリックスが、インプラントの約30wt%〜約60wt%の量のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
ロッド、ウエハまたは粒子として形成された請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
押出法によって形成された請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
エストラトポン;および
生分解性ポリマーマトリックスであって、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって、インプラントからの所定量のエストラトポンの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックス
を含んで成る生分解性眼内インプラント。
【請求項20】
エストラトポンが、下記の式で示される化合物である請求項19に記載のインプラント:
【化6】

[式中、Aは、下記の一般式で示される縮合トロポンであり:
【化7】

ここで、Xは、H、Cl、Br、メトキシおよびエトキシから成る群から選択される]。
【請求項21】
エストラトポンが、下記の式で示される化合物である請求項19に記載のインプラント:
【化8】

[式中、Aは、
【化9】

であり、ここで、Xは、クロロおよびブロモから成る群から選択される]。
【請求項22】
エストラトポンが、下記の式で示される化合物である請求項19に記載のインプラント:
【化10】

[式中、Aは、
【化11】

であり、ここで、Xはメトキシである]。
【請求項23】
付加的な眼科的に許容される治療薬をさらに含んで成る請求項19に記載のインプラント。
【請求項24】
エストラトポンが、生分解性ポリマーマトリックスに分散している請求項19に記載のインプラント。
【請求項25】
溶解促進成分を含有していない実質的に同じインプラントと比較して、エストラジオール誘導体の溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分をさらに含んで成る請求項20に記載のインプラント。
【請求項26】
溶解促進成分がβ−シクロデキストリンを含んで成る請求項25に記載のインプラント。
【請求項27】
β−シクロデキストリンを、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用する請求項26に記載のインプラント。
【請求項28】
マトリックスが、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、それらの誘導体、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのポリマーを含んで成る請求項19に記載のインプラント。
【請求項29】
マトリックスが、ポリビニルアルコールを実質的に含有しない請求項19に記載のインプラント。
【請求項30】
マトリックスが、眼の硝子体にインプラントを配置してから1ヶ月より長い期間にわたって、インプラントからの所定量のエストラトポンの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する請求項19に記載のインプラント。
【請求項31】
眼の硝子体に配置するように構成された請求項19に記載のインプラント。
【請求項32】
エストラトポンが、インプラントの約20wt%〜約80wt%の量で使用され、生分解性ポリマーマトリックスが、インプラントの約20wt%〜約80wt%の量のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んで成る請求項19に記載のインプラント。
【請求項33】
ロッド、ウエハまたは粒子として形成された請求項19に記載のインプラント。
【請求項34】
押出法によって形成された請求項19に記載のインプラント。
【請求項35】
エストラジオール誘導体またはエストラトポンおよび生分解性ポリマー成分の混合物を押出して、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって所定量のエストラジオール誘導体またはエストラトポンのインプラントからの放出を持続させるのに有効な速度で分解する生分解性物質を形成する
工程を含んで成る生分解性眼内インプラントの製造法。
【請求項36】
混合物が、2−メトキシエストラジオールおよび生分解性ポリマーから基本的に成る請求項35に記載の方法。
【請求項37】
押出工程の前に、エストラジオール誘導体またはエストラトポンをポリマー成分と混合する工程をさらに含んで成る請求項35に記載の方法。
【請求項38】
エストラジオール誘導体またはエストラトポンおよびポリマー成分が、粉末形態である請求項35に記載の方法。
【請求項39】
ポリマー成分が、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、およびそれらの組合せから成る群から選択されるポリマーを含んで成る請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ポリマー成分が、ポリビニルアルコールを実質的に含有しない請求項35に記載の方法。
【請求項41】
生分解性眼内インプラントを患者の眼に配置することによって、患者の眼における望ましくない新脈管形成を特徴とする眼疾患を治療するための生分解性眼内インプラントである薬剤であって、該インプラントが、(i)エストラジオール誘導体、およびポリビニルアルコールを実質的に含有しない生分解性ポリマーマトリックス、または(ii)エストラトポンおよび生分解性ポリマーマトリックスを含んで成り、該インプラントが、患者の眼における新脈管形成を減少させるのに有効な量のエストラジオール誘導体またはエストラトポンのインプラントからの放出を持続させるのに有効な速度で分解する薬剤。
【請求項42】
網膜眼疾患を治療するのに有効な請求項41に記載の薬剤。
【請求項43】
眼疾患が、眼腫瘍、血管機能不全、ベーチェット病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障およびオースラー−ウェーバー症候群から成る群から選択される疾患である請求項41に記載の薬剤。
【請求項44】
インプラントを眼の後部に配置する請求項41に記載の薬剤。
【請求項45】
トロカールを使用してインプラントを眼に配置する請求項41に記載の薬剤。
【請求項46】
注射器を使用してインプラントを眼に配置する請求項41に記載の薬剤。
【請求項47】
エストラジオール誘導体またはエストラトポンに加えて、治療薬を患者に投与する請求項41に記載の薬剤。
【請求項48】
エストラジオール誘導体が、2−メトキシエストラジオール、その塩、およびその混合物である請求項41に記載の薬剤。
【請求項49】
抗新脈管形成剤;および
生分解性ポリマーマトリックスであって、ポリビニルアルコールを実質的に含有せず、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって、インプラントからの所定量の抗新脈管形成剤の放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックス
を含んで成る生分解性眼内インプラント。
【請求項50】
アナコルテート;および
生分解性ポリマーマトリックスであって、インプラントを眼に配置してから少なくとも約1週間にわたって、インプラントからの所定量のアナコルテートの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する生分解性ポリマーマトリックス
を含んで成る生分解性眼内インプラント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−535367(P2007−535367A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510884(P2007−510884)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/014257
【国際公開番号】WO2005/110366
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】