説明

エストロゲン補充療法を受けている女性のホルモン不足の治療方法

【課題】女性におけるエストロゲン補充療法に伴う副作用である子宮内膜増殖症が軽減される、医薬組成物の提供。
【解決手段】治療有効量のエストロゲン化合物と、治療有効量の非芳香化アンドロゲン化合物と、医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。前記エストロゲン化合物が、エストロン、17α−エストラジオール、17β−エストラジオール、エキリン、17α−ジヒドロエキリン、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、Δ8,9−デヒドロエストロン、17α−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、17β−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、エチニルエストラジオール等より選択され、前記非芳香化アンドロゲン化合物が、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、ダナゾール等より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2000年12月22日出願の米国仮出願第60/258,142号(この開示全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に、女性におけるホルモン不足の治療方法に関し、特に更年期の女性におけるホルモン不足の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常は中年女性に発生する更年期は、卵巣機能停止として説明することができる。さらに、エストロゲン循環量の実質的な減少が伴う。エストロゲン量の減少に起因する多数の疾患および症状が存在する。代表的な疾患および症状としては、ホットフラッシュ、膣の乾燥および萎縮、知覚異常、性交疼痛、骨粗鬆症、および心疾患の増加が挙げられる。更年期女性へのエストロゲンの投与(「エストロゲン補充療法(estrogen replacement therapy)と呼ばれる)は、依然として、更年期と関連するこのような疾患および症状の主要な治療方法である。骨粗鬆症の治療、および心疾患およびアルツハイマー病の発病の遅延または防止においても、エストロゲンは更年期女性に使用される。
【0004】
子宮内膜増殖症を発症した無傷の子宮を有する女性の場合、エストロゲン補充療法には明確な危険性が存在する。用語「子宮内膜増殖症」は、子宮内層の過剰刺激を意味し、これは子宮内膜または子宮の癌の前駆体である。子宮内膜増殖症の発症は、エストロゲン補充療法において重要な問題である。プランケット(Plunkett)らに付与された米国特許第RE36,247号、およびヒルボネン(Hirvonen)に付与された米国特許第5,043,331号では、プロゲスチンを同時投与するとエストロゲンの作用を鈍化させることが可能なことが述べられている。アンドロゲンまたはエストロゲン補充の子宮内膜増殖症に対する影響の研究は未だ行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エストロゲン類の投与と、非芳香化アンドロゲン(non-aromatizing androgen)類の投与とを組み合わせて、更年期女性の長期エストロゲン療法を実施する。本発明者らは、卵巣切除マウスモデルから得たデータにより、子宮の重量増加で示されるように、芳香化アンドロゲンによるエストロゲン/アンドロゲン療法が、非芳香化エストロゲン/アンドロゲン合剤の治療よりも、子宮に対してより有害な影響を与えることを示した。さらに、芳香化アンドロゲンとエストロゲンとの併用は乳房などの他の組織にも悪影響を与えると推測される。したがって、エストロゲン/アンドロゲン置換療法は、患者が無傷の子宮を有する場合も有さない場合も非芳香化アンドロゲンを使用して実施することが最良である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態においては、ホルモン不足の治療方法は、連続的(continuously)かつ途切れなく(uninterruptedly)、治療有効量のエストロゲンと非芳香化アンドロゲンとの両方を一日用量で(in daily dosage)投与するステップを含む。別の実施形態は、治療方法は、非芳香化エストロゲン化合物(estrogenic compound)を周期的に投与するステップと、アンドロゲン化合物(androgenic compound)を連続的かつ途切れなく投与するステップとを含む。第3の実施形態は、エストロゲン化合物を連続的に投与し、非芳香化アンドロゲン化合物を周期的に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】エストロゲン、テストステロン、またはエストロゲンとテストステロンとの組み合わせの注入計画に対するマウス子宮角重量のグラフである。
【図2】エストロゲン、オキサンドロロン、またはエストロゲンとオキサンドロロンとの組み合わせの注入計画に対するマウス子宮角重量のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書に記載される実施形態を参照しながら、本発明を説明する。これらの実施形態は本発明を例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0009】
一態様によれば、本発明は医薬組成物に関する。この医薬組成物は、治療有効量のエストロゲン化合物と、非芳香化アンドロゲン化合物と、製薬学的に許容可能な担体とを含む。本明細書で使用される「治療有効」量は、患者のホルモン不足を治療するのに十分なエストロゲン化合物および非芳香化アンドロゲン化合物の量である。治療有効量は、当業者の知識と経験の範囲内で、患者の年齢および身体的状態、治療の重要さ、治療期間、同時に実施する治療の性質、および使用される製薬学的に許容可能な担体などの要因によって変動する。製薬学的に許容可能な担体は好ましくは、錠剤またはカプセルなどの固体剤形、特に水性などの液体、経皮パッチ、およびその他の許容される担体であり、その選択は当分野で公知である。
【0010】
エストロゲン量は、更年期女性の全体的な生理学的健康状態と関連がある。これらの量は、ホットフラッシュに対する中枢神経系に正の影響があり、神経伝達を向上させて種々の痴呆を遅延させると考えられている。これらは、脂質量を増加させ、血管拡張および緩和を促進することによって、心血管に対して正の影響が得られる。これらは、膣の健康にも寄与し、局所的な血管拡張作用が得られ、粘膜産生を刺激する。好適なエストロゲン化合物としては、エストロン、17α−エストラジオール、17β−エストラジオール、エキリン、17α−ジヒドロエキリン、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、Δ8,9−デヒドロエストロン、17α−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、17β−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、6−OH エキレニン、6−OH 17α−ジヒドロエキレニン、エチニルエストラジオール、吉草酸エストラジオール、6−OH 17β−ジヒドロエキレニン、ならびにそれらの混合物、抱合体(conjugate)、および塩、ならびにエストロゲンケトン類、およびそれらの対応する17α−ヒドロキシ誘導体類および17−βヒドロキシ誘導体類が挙げられる。エストロゲン化合物は、エストロゲン抱合体として存在してもよい。抱合体は、当業者に既知の種々の抱合体が存在し、例えば硫酸塩およびグルクロニドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。最も好ましいエストロゲン抱合体はエストロゲン硫酸塩である。エストロゲン化合物は、エストロゲン抱合体の塩として存在してもよい。これらの塩は、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、およびピペラジン塩などの種々の塩を含んでもよいが、これらには限定されないことが当業者には理解されている。最も好ましい塩はナトリウム塩である。エストロゲン化合物は天然由来であってもよく、合成されたものであってもよい。好ましくは、治療有効量のエストロゲン化合物は、エストラジオールを経口投与した場合には約0.25〜約3mgであり、好ましくは約0.5〜約2mgである。
【0011】
好適なアンドロゲン化合物としては、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、ダナゾール、それらの製薬学的に許容可能なエステルおよび塩、ならびにそれらの任意の組み合わせといった非芳香化化合物が挙げられる。このようなアンドロゲン化合物は、ステラロイド社(Steraloids Inc.)などの企業から市販されており、それらのカタログ「ステラロイド社のステロイド(Steroids from Steraloids)第12版」において見出だすことができる。芳香化アンドロゲン化合物は、エストロゲンを生成して、エストロゲン性副作用が発生することがある。非芳香化アンドロゲン化合物は多くの場合には芳香化されてエストロゲンになることはない。好ましくは、非芳香化アンドロゲン化合物の治療有効量は、オキサンドロロンの経口投与量を基準にすると約0.25〜約5mgである。
【0012】
エストロゲンおよびアンドロゲンの製剤は、例えば、錠剤類、発泡錠剤類、丸剤類、散剤類、エリキシル剤類、懸濁剤類、乳剤類、液剤類、シロップ剤類、軟ゼラチンカプセル類および硬ゼラチンカプセル類、経皮パッチ類、局所用のゲル類やクリーム類など、腟坐薬類、滅菌注射液類、および滅菌包装された粉末類、舌下錠類、バッカル錠類、口腔内接着系類などの形態であってよい。
【0013】
ある実施形態では、本発明の製剤は、経口投与に好適となりうる固体の医薬組成物として存在する。本発明による固体組成物は、賦形剤による混合および/または希釈が可能である。固体組成物は、例えばカプセル、サシェ、錠剤、紙、またはその他の容器などの形態の担体内部に封入することもできる。賦形剤が希釈剤として機能する場合、その賦形剤は組成物のビヒクル、担体、または媒体として機能するする固体、半固体、または液体の材料であってよい。
【0014】
当業者には種々の好適な賦形剤が知られており、それらはNational Formulary,19:2404−2406(2000)(2404〜2406ページの記載内容全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)において見出すことができる。好適な賦形剤としては、デンプン、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、メタクリル酸樹脂、セラック、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロース挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の製剤は、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピルなどの保存剤、甘味剤、または着香料をさらに含むことができる。ポリオール、緩衝剤、および不活性充填剤を使用することもできる。ポリオールの例としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マルトース、グルコース、ラクトース、デキストロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な緩衝剤としては、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用可能なその他の不活性充填剤としては、当分野で既知であり種々の剤形の製造に有用である充填剤類が挙げられる。必要であるなら、固体配合物は、増量剤および/または造粒剤などの他の成分を含んでもよい。本発明の製剤は、当分野で既知の方法を使用することによって、患者に投与した後で、有効成分を急速放出、持続放出、または遅延放出するように調剤することができる。
【0015】
経口投与用の錠剤を製造するために、本発明の組成物を直接圧縮法で製造することができる。この方法では、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体類、またはゼラチン、およびそれらの混合物などの固体粉末担体、ならびに例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびポリエチレングリコールワックスなどの潤滑剤と、有効薬剤成分を混合することができる。次に、所望の大きさの錠剤を得るために適切な打ち抜き機およびダイを備えた装置を使用して、混合物を錠剤に圧縮することができる。装置の操作パラメータは当業者によって選択することができる。あるいは、経口投与用の錠剤は、湿式造粒法で製造することもできる。有効薬剤成分は、賦形剤および/または希釈剤と混合することができる。固体物質は所望の粒径への粉砕またはふるい分けを実施することができる。結合剤を薬剤に加えることができる。結合剤は、好適な溶媒中に懸濁して均一化することができる。有効成分および助剤を結合剤溶液と混合することもできる。得られた乾燥混合物を溶液で均一に湿らせる。通常、この湿りによって粒子はわずかに凝集し、それにより得られた塊状体は、所望の大きさのステンレス鋼製ふるいに通される。次に、所望の粒径および一貫性を得るために必要であると決定された時間の間、制御された乾燥装置に入れて混合物が乾燥される。乾燥混合物の粒体をふるい分けして、粉末が除去される。乾燥混合物の粒体をふるい分けして、粉末を除去する。この混合物に、崩壊剤、潤滑剤、および/または付着防止剤が加えられる。最後に、所望の大きさの錠剤を得るために適切な打ち抜き機およびダイを備えた装置を使用して、混合物が錠剤に圧縮される。装置の操作パラメータは当業者によって選択することができる。
【0016】
コーティングされた錠剤が望ましい場合は、上記のように調剤したコアを、糖類またはセルロースポリマーの濃縮溶液(アラビアゴム、ゼラチン、タルク、二酸化チタンを含んでもよい)でコーティングすることができる。あるいは揮発性有機溶媒、水性溶媒、または溶媒混合物に溶解させたラッカーでコーティングすることもできる。異なる有効化合物、または異なる有効化合物含有量の錠剤と区別するために、このコーティングに種々の染料を加えることもできる。ある実施形態では、腸溶性コーティング層を含む1以上の層で囲まれたコアに有効成分が存在してもよい。
【0017】
軟ゼラチンカプセル類は、有効成分と植物油との混合物をカプセルが含有するように製造することができる。硬ゼラチンカプセル類は、有効成分の顆粒と、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体、および/またはゼラチンなどの固体粉末担体とを含有することができる。
【0018】
好ましい実施形態の1つでは、本発明の製剤は、本明細書で前述した本発明の組成物を含有し、さらに三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルナバワックス、セルロース、モノオレイン酸グリセリル、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、医薬用グレーズ、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、スクロース、および二酸化チタンといった不活性成分も含有する経口投与錠剤の形態である。このような成分は、ペンシルバニア州フィラデルフィアのワイエスエアスト・ラボラトリーズ(Wyeth−Ayerst Laboratories)より市販されているPremarin(登録商標)(複合エストロゲン錠、USP)中と同様の量で存在しうる。本発明の有効成分を使用する錠剤は、Premarin(登録商標)(複合エストロゲン錠、USP)の0.3mg錠、0.625mg錠、および1.25mg錠と同様の賦形剤を含有しうる。
【0019】
経口投与用の液体製剤は、シロップまたは懸濁液の形態で調製可能であり、例えば、溶液は、有効成分、糖類と、エタノール、水、グリセロール、およびプロピレングリコールの混合物を含有してもよい。所望であれば、このような液体製剤は、着色剤、着香料、およびサッカリンを含有することができる。カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を使用することもできる。
【0020】
上記製剤を非経口投与に使用すべき状況では、このような製剤は、本発明の組成物を含む滅菌水性注射液、非水性溶液、またはそれらの両方を含んでよい。水性注射液が調製される場合、本発明の組成物は、水溶性の製薬学的に許容可能な塩として存在することができる。非経口製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および意図する患者の血液と等張性の製剤を得るための溶質を含有することができる。水性または非水性の滅菌懸濁液は懸濁剤および増粘剤を含有することができる。これらの製剤は、密封アンプルやバイアルなどの単位投与量または複数回投与量の容器に入れることができる。即時注射液および懸濁液を、前述の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は、滅菌凍結乾燥塊中に所定量(例えば25mg)の本発明の組成物を含有し、ラクトース、クエン酸ナトリウム、およびシメチコンも含有する注射液の形態である。上記成分を含有する溶液のpHは、好適な緩衝液(例えば、水酸化ナトリウムまたは塩酸)を使用して調整することができる。再構成は、既知の方法で実施することができ、例えば、2体積%のベンジルアルコールを含む滅菌水を含有する滅菌希釈剤(5ml)を使用することができる。好ましい注射液は、ワイエス−エアスト・ラボラトリーズより市販されるPremarin(登録商標)イントラビナス(Intravenous)と同様のものである。
【0022】
本発明の組成物は、局所投与に好適となるように(例えば、膣クリーム)処方することもできる。これらの製剤は、当業者には既知の種々の賦形剤を含有することができる。好適な賦形剤としては、セチルエステルワックス、セチルアルコール、白蝋、モノステアリン酸グリセリル、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリン酸メチル、ベンジルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、鉱油、水、カルボマー、エチルアルコール、アクリル系接着剤類、ポリイソブチレン接着剤類、シリコーン接着剤類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は、非液化基剤(nonliquefying base)中に存在する本発明の組成物を含有する膣クリームの形態である。非液化基剤は、例えばセチルエステルワックス、セチルアルコール、白蝋、モノステアリン酸グリセリル、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリン酸メチル、ベンジルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、および鉱油などの種々の不活性成分を含有することができる。このような組成物は、ワイエスエアスト・ラボラトリーズより市販されるPremarin(登録商標)膣クリーム(Vaginal Cream)と同様に処方することができる。
【0024】
経膣または直腸投与の投与単位は、本発明の組成物と天然脂質系のポリエチレングリコールとの混合物を含有することができる坐剤の形態で調製することができるし、あるいは植物油またはパラフィン油と混合された有効成分を含有するゼラチン直腸カプセルの形態で調製することもできる。
【0025】
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明する。これらは本発明の例示を意図しており、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0026】
[材料および方法]
本出願人らは、マウスの子宮角の重量に対するエストロゲンおよびテストステロンの影響を調べるための一連の実験を実施した。
【0027】
実験に使用した手順では、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)で注文した卵巣を切除した雌のマウス(これらのマウスは32〜52日齢である)の卵巣切除後、これらのマウスを4つの群に分けた。第1の群のマウスには、テストステロンを7日間毎日注入した。第2の群のマウスには、エストラジオールを7日間毎日注入した。第3の群のマウスには、テストステロンとエストラジオールを7日間毎日注入した。最後に、第4の群のマウスには、対照の賦形剤を7日間毎日注入した。すべての注入は、午前10時に左右の臀部に交互にIMに注入した。エストラジオールおよび/またはテストステロンの1日の注入量は、それぞれのホルモンについて10μg/kgであり、1回の投与量が0.25mlとなるように送達した。
【0028】
注入は以下の手順で実施した。選択したエストラジオールは、シグマ(Sigma)社製の、油に溶解させた17β−エストラジオールであった(17β−エストラジオールE−8875。このエストラジオールは、200μgのホルモンを0.25mlのエタノールに溶解して1000倍のストックとして調製した(0.8mg/1ml=×1000ストック))。次に、10μlのアリコートを、9本の15mlのプラスチック円錐管に供給して凍結した。それぞれの注入につき1つの管を解凍し、9.99mlの食塩水を加え、混合して、0.8μg/1mlの溶液10mlを得た。次に、0.25mlをそれぞれの動物に注入した。
【0029】
選択されたテストステロンは、ブリストル・マイヤー・スクイブ(Bristol Myers Squib)製のエナント酸テストステロン(Delatestryl(商標))であった。テストステロンは、200mg/lmlのテストステロンが入ったボトルから1.0mlのツベルクリンシリンジで0.15mlを取り出して調製した。次に、24.9mlのエタノールを50mlのプラスチック円錐管に入れた。続いて、0.1mlのテストステロンを、シリンジの24.9mlのエタノールで溶解した。こうして1000倍ストック0.8mg/1mlを調製した。エストラジオールの手順と同様に、次に、10μlのアリコートを、9本の15mlプラスチック円錐管に供給して凍結した。それぞれの注入につき1つの管を解凍し、9.99mlの食塩水を加え、混合して、0.8μg/1mlの溶液10mlを得た。次に、0.25mlを各動物に注入した。注入は20gの動物を基準にした。マウスの実際の体重当たりの注入量は、体重によって調整することができ、すなわち19g〜24g(0.238ml〜0.3ml)に調整することができる。
【0030】
7日間の注入後、管腔に注射してマウスを安楽死させた。次にマウスを秤量した。正中線開腹の後、2ml〜5mlの血液を心臓から採取した。この血液を凝固させ、続いて遠心分離して、得られた血清を回収して、−80℃で保存した。次に子宮角を識別して、膣から卵巣の位置まで切除し(卵巣および子宮傍結合組織は切除せず)、秤量し(すなわちRtおよびLt子宮角の湿潤時重量)、アルミ箔の上に別々に置き、90℃のオーブンで24時間加熱して子宮角の乾燥重量を求めた。
【0031】
表1は、この実験から得られたデータを示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1をグラフにしたものを図1に示す。この図は、テストステロンとエストラジオールの併用による相加効果を示している。この相加効果は、子宮内膜増殖症に対する負の効果である。これは、エストロゲンの子宮、および乳房組織などの他の組織に対する負の影響は、テストステロンなどの芳香化アンドロゲンの同時投与で増幅されることを意味する。エストロゲンのみを投与した場合のように、プロゲスチンがこの効果を抑制するかどうかは知られていない。
【0034】
第2の実験も上記手順を使用して実施した。唯一の違いは、テストステロンの代わりにオキサンドロロンを使用したことであった。オキサンドロロンは、もとのバイアルの20mgの粉末を1.0mlのDMSOに溶解して調製した。次に、100μlのアリコートを10個の新しいバイアルに供給し(それぞれ2mg/バイアル、すなわち20μg/μl)、1つを除いてすべてのバイアルは−20℃で凍結した。これら9本の凍結バイアルを本明細書では「オリジナルストック」と呼ぶ。
【0035】
続いて、20μg/μlのオキサンドロロン100μlを含有するオリジナルストックのバイアルの1つを、400μlのDMSOを加えることによってDMSOで1:5に希釈した。これによって、4μg/μlのオキサンドロロン溶液が得られる。次に50μlのアリコートを10本のバイアルに供給し(それぞれ0.4μg/μl、すなわち20μg/50μlを含有)、そのうちの9本を凍結した。実験におけるこの項の凍結バイアルを本明細書では「希釈ストック」と呼ぶ。
【0036】
1つの希釈ストックを取り出し、24.95mlの食塩水で希釈して、20μg/25mlのオキサンドロロン(すなわち0.2μg/0.25ml)を得た。次に0.5mlのアリコートを20本のバイアルに供給して凍結した。残りの15mlは廃棄した。注入の日に、それぞれのバイアルを解凍し、20gのマウスを基準にして0.25mlを注入した。注入量は、マウスの実際の体重あたりで調整することができ、すなわち19g〜24g(0.238ml〜0.3ml)に調整することができる。
【0037】
最後の日の注入が終わってから、マウスを秤量した後、CO室で安楽死させた。2ml〜5mlの血液を心臓から採取した。時間をかけてこの血液を凝固させ、続いて遠心分離して、得られた血清を回収して,−80℃で保存した。長手方向に腹部を切開して開腹した。次に、子宮角を確認し、右子宮角を膣から卵巣の位置まで切除した(卵巣および子宮傍結合組織は切除せず)。この方法を左子宮角でも繰り返した。両方の子宮角を秤量して、子宮角の湿潤に重量を求めた。次に、子宮角をアルミホイル上に置き、90℃のオーブンで24時間加熱した。続いて子宮角の乾燥時重量を測定した。
【0038】
表2は、この実験から得られたデータを示している。
【0039】
【表2】

【0040】
表2をグラフにしたものが図2に示されている。図2では、エストラジオール+オキサンドロロンによって相加効果が得られないことを示している。その代わり、結果は減少効果(reduction effect)である。したがって、エストラジオールとオキサンドロロンを併用すると、治療の必要な女性のホルモン不足の治療に有用である。
【0041】
これらの実施例は、錠剤の嚥下が困難であるマウスやその他の動物に適している。ヒトに使用する場合、好ましい実施形態は錠剤、カプセル、経皮パッチなどである。
【0042】
本明細書では、本発明の代表的な好ましい実施形態について開示しており、特殊な用語を使用しているが、これらは一般的で説明的な意味でのみ使用しており、請求項に記載される本発明の範囲の限定を意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性におけるエストロゲン補充療法のための医薬であって、前記療法に伴う子宮内膜増殖症が軽減されることを特徴とする医薬の製造における、エストロゲン化合物と非芳香化アンドロゲン化合物との使用。
【請求項2】
前記エストロゲン化合物と非芳香化アンドロゲン化合物とが、連続的かつ途切れなく投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記エストロゲン化合物が周期的に投与され、前記非芳香化アンドロゲン化合物が連続的かつ途切れなく投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記エストロゲン化合物が連続的かつ途切れなく投与され、前記非芳香化アンドロゲン化合物が周期的に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記エストロゲン化合物が、エストロン、17α−エストラジオール、17β−エストラジオール、エキリン、17α−ジヒドロエキリン、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、Δ8,9−デヒドロエストロン、17α−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、17β−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、エチニルエストラジオール、吉草酸エストラジオール、6−OH エキレニン、6−OH 17α−ジヒドロエキレニン、6−OH 17β−ジヒドロエキレニン、ならびにそれらの混合物、抱合体、および塩からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記非芳香化アンドロゲン化合物が、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、ダナゾール、それらの製薬学的に許容可能なエステルおよび塩、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記エストロゲン化合物が、0.1〜3mgのエストラジオール投与量に相当し、非芳香化アンドロゲン化合物が、0.1〜10mgの経口投与量に相当する、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
プロゲスチン化合物の使用をさらに含み、該プロゲスチン化合物が一日用量で投与される、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
女性におけるエストロゲン補充療法のための医薬組成物であって、ここで、前記医薬組成物は、前記療法に伴う子宮内膜増殖症が軽減されることを特徴とし、
治療有効量のエストロゲン化合物と、
治療有効量の非芳香化アンドロゲン化合物と、
医薬的に許容可能な担体と
を含む組成物。
【請求項10】
前記エストロゲン化合物が、エストロン、17α−エストラジオール、17β−エストラジオール、エキリン、17α−ジヒドロエキリン、17β−ジヒドロエキリン、エキレニン、17α−ジヒドロエキレニン、17β−ジヒドロエキレニン、Δ8,9−デヒドロエストロン、17α−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、17β−Δ8,9−デヒドロエストラジオール、エチニルエストラジオール、吉草酸エストラジオール、6−OH エキレニン、6−OH 17α−ジヒドロエキレニン、6−OH 17β−ジヒドロエキレニン、ならびにそれらの混合物、抱合体、および塩からなる群より選択される請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記非芳香化アンドロゲン化合物が、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、ダナゾール、それらの製薬学的に許容可能なエステルおよび塩、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量のプロゲスチン化合物をさらに含む、請求項9に記載の医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−77149(P2010−77149A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268655(P2009−268655)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2002−559040(P2002−559040)の分割
【原出願日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【出願人】(504263303)バー・ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】