説明

エストロンスルファターゼインヒビターとしての非ステロイド多環式環スルファメート誘導体、それらの調製および使用

【課題】E1-STSの阻害に適切であるが、エストロゲン効果を有しないかまたはエストロゲン効果が最小限である化合物を提供すること。
【解決手段】化合物が記載される。特に、非ステロイドスルファメート化合物が記載される。この化合物は、エストロンスルファターゼのインヒビターとしての使用に適切である。この化合物は、2つ以上の環を有する多環式環構造を有し、ここで、少なくとも2つの環がエストロンのAおよびB環を模倣する。好ましくは、この化合物は一般式(A)を有し、ここで、R1〜R6は、独立して、H、ハロ、ヒドロキシ、スルファメート、アルキルおよび置換された変形体またはその塩から選択されるが;ここで、R1〜R6の少なくとも1つは、スルファメート基であり;そしてここで、XはO、S、NH、置換N、CH2、または置換Cの任意の1つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物に関する。
【0002】
特に、本発明は、非ステロイド化合物および非ステロイド化合物を含有する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
証拠は、エストロゲンが内分泌依存組織(例えば、乳房および子宮内膜)における腫瘍の増殖の促進に関係する主要なマイトジェンであることを示唆する。血漿エストロゲン濃度は、乳ガンを有するまたは有しない女性において類似するが、乳腫瘍エストロンおよびエストラジオールレベルは、正常乳組織または血液におけるレベルよりも顕著に高い。インサイチュでのエストロゲン合成は、腫瘍における高レベルのエストロゲンに対して重要な寄与をすると考えられ、それゆえ、エストロゲン生合成の特異的インヒビターは、内分泌依存腫瘍の処置に対して潜在的に価値がある。
【0004】
過去20年にわたって、アンドロゲン前駆体(アンドロステンジオン)をエストロンに変換するアロマターゼ経路のインヒビターの開発にかなりの興味がもたれている。しかし、現在、エストロンスルファターゼ(E1-STS)経路、すなわち、エストロンスルフェートのエストロンへの(E1SからE1への)加水分解は、アロマターゼ経路とは反対に、乳腫瘍におけるエストロゲンの主要源である証拠がある1,2。この理論は、アロマターゼインヒビター(例えば、アミノグルテチミドおよび4-ヒドロキシアンドロステンジオン)により処置された乳ガンを有する閉経後の女性における血漿エストロゲン濃度の穏やかな低下により3,4、およびこれらのアロマターゼインヒビター処置患者における血漿E1S濃度が比較的高く保持されているという事実により支持される。非結合エストロゲン(20分)と比較して血液中でのE1Sの長い半減期(10〜12時間)5、ならびに肝臓もしくは正常および悪性乳組織における高レベルのステロイドスルファターゼ活性もまた、この理論を支持する6
【0005】
PCT/GB92/01587は、新規ステロイドスルファターゼインヒビター、およびエストロン依存腫瘍(特に、乳ガン)の処置に使用するための、このインヒビターを含む薬学的組成物を教示する。これらのステロイドスルファターゼインヒビターは、スルファメートエステル(例えば、N,N-ジメチルエストロン-3-スルファメートおよび好ましくは、エストロン-3-スルファメート(「EMATE」としても知られている))である。
【0006】
EMATEは、インタクトなMCF-7細胞(0.1μM)でE1-STS活性の99%以上の阻害を示すので、強力なE1-STSインヒビターである。EMATEはまた、時間依存および濃度依存様式でE1-STS酵素を阻害し、これはEMATEが活性部位指向イナクチベーターとして作用することを示す7,8。EMATEは本来E1-STSの阻害のために設計されたが、デヒドロエピアンドロステロンスルファターゼ(DHA-STS)もまた阻害し、エストロゲンステロイドアンドロステンジオールの生合成の調節において中心的役割を有すると考えられる酵素である8,9。また、現在、アンドロステンジオールは、乳腫瘍増殖のプロモーターとしてさらにより重要であり得ることを示唆する証拠がある10。EMATEはまた、経口または皮下のいずれかで投与された場合、ラット肝臓E1-STS(99%)およびDHA-STS(99%)活性のほぼ完全な阻害が生じるので、インビボにて活性である11。さらに、EMATEは、ラットにおいて記憶促進効果を有することが示されている14。マウスにおける研究は、DHA-STS活性と一部の免疫応答の調節との間の関係を示唆している。これは、ヒトにおいても生じ得ると考えられる15,16。EMATE中のスルファメート部分の架橋O-原子は、阻害活性にとって重要である。従って、エストロン-3-N-スルファメート(4)およびエストロン-3-S-スルファメート(5)のように3-O-原子が他のヘテロ原子により置換される場合(図1)、これらのアナログは弱い非時間依存イナクチベーターである12
【0007】
E1-STSの阻害に最適な効力は、EMATEにおいて達成され得るが、エストロンはスルファターゼ阻害の間に放出され得8,12、そしてEMATEおよびそのエストラジオール同種(congener)はエストロゲン活性を有し得ることが可能である13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、E1-STSの阻害に適切であるが、エストロゲン効果を有しないかまたはエストロゲン効果が最小限である化合物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面により、エストロンスルファターゼのインヒビターとしての使用に適切な非ステロイドスルファメート化合物が提供される。ここで、この化合物は、少なくとも第1環および第2環を有する多環式環構造を有し;ここで、第1環および第2環はエストロンのAおよびB環を模倣し;そしてここで、多環式環構造はテトラヒドロナフトールではない。
【0010】
好ましくは、第1環または第2環のいずれかはα,β−不飽和ラクトン基を含む。
【0011】
好ましくは、第1環はフェノール環である。
【0012】
好ましくは、化合物は2環式環構造を有する。
【0013】
好ましくは、化合物は一般式(A)を有する(図8を参照)。式(A)において、R1〜R6は、独立して、H、ハロ、ヒドロキシ、スルファメート、アルキルおよび置換された変形体(substitutedvariant)またはその塩から選択されるが;ここで、R1〜R6の少なくとも1つは、スルファメート基であり;そしてここで、XはO、S、NH、置換N、CH2、または置換Cの任意の1つである。
【0014】
好ましくは、XはOである。
【0015】
好ましくは、化合物のスルファメート基がスルフェート基で置換され、スルフェート化合物を形成する場合、スルフェート化合物はステロイドスルファターゼ(E.C.3.1.6.2)活性を有する酵素により加水分解され得る。
【0016】
より好ましい実施態様では、化合物はステロイドスルファターゼ(E.C.3.1.6.2)活性を有する酵素により加水分解され得ない。
【0017】
本発明の第2の局面により、非ステロイド化合物が提供される。ここで、この化合物は、一般式(B)を有する(図8を参照)。式(B)において、R1〜R6は、独立して、H、ハロ、ヒドロキシ、スルファメート、アルキルおよび置換された変形体またはその塩から選択されるが;ここで、R1〜R6の少なくとも1つは、スルファメート基である。
【0018】
本発明の第3の局面により、化合物4-メチルクマリン7-O-スルファメートが提供される。
【0019】
本発明の第4の局面により、薬剤(pharmaceutical)としての使用のための本発明による非ステロイド化合物が提供される。
【0020】
本発明の第5の局面により、エストロンスルファターゼの阻害のための本発明による非ステロイド化合物が提供される。
【0021】
本発明の第6の局面により、本発明による非ステロイド化合物;ならびに薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤を含有する薬学的組成物が提供される。
【0022】
本発明の第7の局面により、エストロンスルファターゼの阻害用の薬剤の製造における、本発明による非ステロイド化合物の使用が提供される。
【0023】
本発明の第8の局面により、本発明による化合物の調製プロセスが提供され、このプロセスはクマリンを硫酸化する工程を包含する。
【0024】
本発明の第9の局面により、本発明による化合物の調製プロセスが提供され、このプロセスはクマリンをスルファモイル化(sulphamaylating)する工程を包含する。
【0025】
式(A)または式(B)のアルキル基は、飽和または不飽和および/または置換または非置換であり得る、任意の適切な直鎖または分枝鎖アルキル基であり得る。アルキル基は、環式アルキル基であり得る。例えば、R1-6の少なくとも2つが結合し、さらなる環式部分を形成する。
【0026】
好ましくは、R1〜R5は、独立して、H、アルキルおよびハロアルキルから選択され;好ましくはここで、R1〜R5は、独立して、H、C1〜C6アルキルおよびC1-6ハロアルキルから選択される。
【0027】
好ましくは、R1〜R5は、独立して、H、C1-3アルキルおよびC1-3ハロアルキルから選択される。
【0028】
好ましくは、R1〜R5は、独立して、H、メチルおよびハロメチルから選択される。
【0029】
好ましくは、R6はOSO2NH2である。
【0030】
好ましくは、化合物は、図2に化合物12〜16として示される化合物の任意の1つである。
【0031】
好ましくは、化合物は、4-メチルクマリン-7-O-スルファメートである。
【0032】
式(A)または式(B)において、R1〜R6の2つ以上は、共に結合し、さらなる環式構造を形成し得る。このような化合物の代表例は、一般式(C)(図8を参照)を有し、ここで、R3〜R6の任意の1つは、スルファメート基であり、そしてnは整数である。代表的には、R6は、スルファメート基である。代表的なスルファメート基は-OS(O)(O)-NH2である。好ましくは、nは3〜10、好ましくは3〜7の整数である。必要に応じて、式(C)の(CH2)n基は置換アルキル鎖であり得る。
【0033】
一般式(C)の範囲内の代表的化合物は、化合物(D)(ここでnは3である)、化合物(E)(ここでnは4である)、化合物(F)(ここでnは5である)、化合物(G)(ここでnは6である)、化合物(H)(ここでnは7である)として図9に示される。これらの化合物について、R6は式-OS(O)(O)-NH2のスルファメート基であり、R3〜R5のそれぞれはHである。
【0034】
本明細書中で使用される用語「スルファメート」は、スルファミン酸のエステル、またはスルファミン酸のN-置換誘導体のエステル、あるいはそれらの塩を含む。従って、この用語は、式-O-S(O)(O)-N(R7)(R8)の官能基を含み、ここで、R7およびR8は、独立して、H、ハロ、直鎖または分枝鎖アルキル(これらは飽和または不飽和および/または置換または非置換であり得る)、アリール、または任意の他の適切な基から選択される。好ましくは、R7およびR8の少なくとも1つはHである。好ましい実施態様では、R7およびR8のそれぞれがHである。
【0035】
本明細書中で使用される用語「模倣」は、その通常の意味、すなわち、異なる構造を有するが、類似の機能的効果を有するという意味で使用される。
【0036】
本発明の非ステロイド化合物の重大な利点は、インビボで強力であり、エストロゲン活性が小さく、それゆえ、「非エストロゲン化合物」と考えられ得ることである。本明細書中で使用される用語「非エストロゲン化合物」は、エストロゲン活性を示さないか、または実質的に示さない化合物を意味する。
【0037】
従って、本発明は、低下したエストロゲン活性を有する非ステロイド化合物を提供する。この点に関して、本発明の非ステロイド化合物はE1-STSインヒビターとして作用する。
【0038】
別の利点は、化合物がホルモン活性を示すかまたは誘起する化合物へ代謝され得ないことである。
【0039】
本発明の化合物はまた、経口活性である点で有利である。
【0040】
本発明の化合物はさらに、不可逆的な効果を有し得る点で有利である。
【0041】
本発明の化合物はさらに、DHA-STSをも阻害し得る点で有利である。
【0042】
従って、好ましい実施態様では、非ステロイド化合物は、乳ガンの処置に有用である。さらに、非ステロイド化合物は、非悪性状態の処置、例えば、自己免疫疾患の予防、特に低年齢から薬剤が投与される必要があり得る場合に有用である。
【0043】
本発明による特に好ましい非ステロイド化合物は、4-メチルクマリン-7-O-スルファメートである。この化合物は、EMATEと類似の様式で時間依存および濃度依存インヒビターとして作用する点で、特に有利である。この非ステロイド化合物の別の重大な利点は、経口活性な不可逆化合物であることである。さらに、この非ステロイド化合物は、ホルモン活性を有する化合物へ代謝されない。
【0044】
従って、本発明のより好ましい実施態様は、4-メチルクマリン-7-O-スルファメートおよび薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤を含有する薬学的組成物に関する。
【0045】
従って、本発明は、スルファターゼインヒビターとしての使用に適切な非ステロイド化合物に関する。
【0046】
強力なインビボスルファターゼインヒビターであることに加えて、本発明の化合物は、低下したかまたは最小限のエストロゲン活性を有するか、あるいはエストロゲン活性を有しない。
【0047】
研究は、本発明のスルファメートが、EMATEと類似の効力で用量依存様式で、インタクトなMCF-7細胞において酵素E1-ETSを阻害することを示している。
【0048】
好ましいクマリンスルファメートの中で、クマリン-7-O-スルファメートを伴う4-メチルクマリン-7-O-スルファメートがインビトロで最も活性であるようである。この点に関して、4-メチルクマリン-7-O-スルファメートは、インタクトなMCF-7乳ガン細胞において、10μMでE1-STSを93.3%阻害した(380nMのIC50)。この不活化は、EMATEと類似の方法で、時間依存および濃度依存インヒビターであることを示した。4-メチルクマリン-7-O-スルファメートはまた、10μMで胎盤ミクロソームデヒドロエピアンドロステロンスルファターゼを93.6%阻害した。この化合物はまた、処置され卵巣摘出したラットの子宮重量の顕著な増加がないことにより分かったように、低下したエストロゲン活性を示す。
【0049】
化合物はまた、強力な経口活性を有する。
【0050】
本発明の非ステロイド化合物、特に好ましいクマリンスルファメートは、非ステロイドスルファターゼ阻害の最適化にとって重要な化合物を表す。化合物はまた、内分泌依存ガンの処置以外の治療的使用(例えば、自己免疫疾患の処置)を有すると考えられる。
【0051】
本発明は、さらに以下を提供する。
項目1.エストロンスルファターゼのインヒビターとしての使用に適切な非ステロイドスルファメート化合物であって、少なくとも第1環および第2環を有する多環式環構造を有し;ここで、該第1環および該第2環がエストロンのAおよびB環を模倣し;そしてここで、該多環式環構造がテトラヒドロナフトールではない、化合物。
項目2.前記第1環または前記第2環のいずれかがα,β−不飽和ラクトン基を含む、項目1に記載の非ステロイドスルファメート化合物。
項目3.前記第1環がフェノール環である、項目1または2に記載の非ステロイド化合物。
項目4.前記化合物が2環式環構造を有する、項目1から3のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目5.前記化合物が一般式(A)を有し、ここで、R1〜R6が、独立して、H、ハロ、ヒドロキシ、スルファメート、アルキルおよび置換された変形体またはその塩から選択されるが;ここで、R1〜R6の少なくとも1つがスルファメート基であり;そしてここで、XがO、S、NH、置換N、CH2、または置換Cの任意の1つである、項目1から4のいずれか1項に記載の非ステロイドスルファメート化合物。
項目6.XがOである、項目5に記載の非ステロイドスルファメート化合物。
項目7.前記化合物がステロイドスルファターゼ(E.C.3.1.6.2)活性を有する酵素により加水分解され得ない、項目1から6のいずれか1項に記載の非ステロイドスルファメート化合物。
項目8.非ステロイド化合物であって、一般式(B)を有し、ここで、R1〜R6が、独立して、H、ハロ、ヒドロキシ、スルファメート、アルキルおよび置換された変形体またはその塩から選択されるが;ここで、R1〜R6の少なくとも1つがスルファメート基である、非ステロイド化合物。
項目9.R1〜R5が独立して、H、アルキルおよびハロアルキルから選択され;好ましくはここで、R1〜R5が独立して、H、C1〜C6アルキルおよびC1-6ハロアルキルから選択される、項目8に記載の非ステロイド化合物。
項目10.R1〜R5が独立して、H、C1-3アルキルおよびC1-3ハロアルキルから選択される、項目9に記載の非ステロイド化合物。
項目11.R1〜R5が独立して、H、メチルおよびハロメチルから選択される、項目10に記載の非ステロイド化合物。
項目12.R6がOSO2NH2である、項目8から11のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目13.前記化合物が図2に化合物12〜16として示される化合物の任意の1つである、項目1から12のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目14.前記化合物が4-メチルクマリン-7-O-スルファメートである、項目1から13のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目15.薬剤としての使用のための、項目1から14のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目16.エストロンスルファターゼを阻害するための、項目1から15のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物。
項目17.項目1から14のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物;および薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤を含有する、薬学的組成物。
項目18.エストロンスルファターゼを阻害するための薬剤の製造における、項目1から14のいずれか1項に記載の非ステロイド化合物の使用。
項目19.項目1から18のいずれか1項に記載の化合物を調製するプロセスであって、クマリンを硫酸化する工程を包含する、プロセス。
項目20.項目1から19のいずれか1項に記載の化合物を調製するプロセスであって、クマリンをスルファモイル化する工程を包含する、プロセス。
項目21.実質的に本明細書に記載される、非ステロイド化合物。
項目22.実質的に本明細書に記載される非ステロイド化合物を調製するプロセス。
【0052】
ここで、本発明は添付の図面を参照して実施例のみにより記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
実施例
本発明の化合物は、Packman合成ステップを含むプロセスにより調製され得る。Packman合成は、当該分野で公知である。
【実施例】
【0054】
クマリンのスルファモイル化
クマリンのスルファモイル化の一般的手順は、以下の通りであった。適切なクマリンの無水DMF(クマリンの1gあたり約40ml)溶液を水素化ナトリウム(60%分散物、1当量)により、0℃、N雰囲気下で処理した。水素の発生が終わった後、トルエン中の塩化スルファモイル(約0.68M、1.5当量)を添加し、そして室温まで一晩加温した後に反応混合物を水に注ぎ、次いで粗製生成物をクエンチした。酢酸エチル(150ml)中の有機フラクションをブラインで徹底的に洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そしてエバポレートした。得られた粗製生成物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、続いて再結晶して、対応するスルファメートを得た。すべての新しい化合物は、分光分析および燃焼分析により十分に定性した。4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)の合成を図4に示す。
【0055】
この一般的手順に従い、化合物13-16(図2に示す)、すなわち、クマリン-7-O-スルファメート(13)、4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)、3,4,8-トリメチルクマリン-7-O-スルファメート(15)および4-(トリフルオロメチルクマリン)-7-O-スルファメート(16)を調製した。これらの化合物の合成のより詳細な内容を以下に示す。
【0056】
化合物12(図2に示す)の合成もまた以下に説明する。
【0057】
クマリン-7-O-スルファメート(13)の調製
上記の一般的手順に従い、7-ヒドロキシクマリン(500mg、3.082mmol)から粗製生成物(605mg)を得、これをシリカ(200g)上で、クロロホルム/アセトン(8:1、500ml;4:1、1000ml、次いで2:1、500ml)を用いる勾配溶出により分画した。エバポレートにより、第二のフラクションからクリーム黄色残渣(389mg、52.3%)を得、これを酢酸エチル/ヘキサン(1:1)で再結晶して、(13)を鈍い白色結晶として得た(239mg)。
【0058】
分析データは、以下の通りであった:
【0059】
【数1】

4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)の調製
上記の一般的手順に従い、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン(500mg、2.753mmol)から粗製生成物(633mg)を得、これをシリカ(200g)上で、クロロホルム/アセトン(8:1、500ml;4:1、1000ml、2:1、500ml、次いで1:1、500ml)を用いる勾配溶出により分画した。エバポレートにより、第2のフラクションからクリーム黄色残渣(425mg、60.5%)を得、これをアセトン/クロロホルム(3:5)で再結晶して、(14)を無色の斜方晶系の結晶として得た(281mg)。
【0060】
分析データは、以下の通りであった:
【0061】
【数2】

3,4,8-トリメチルクマリン-7-O-スルファメート(15)の調製
上記の一般的手順に従い、7-ヒドロキシ-3,4,8-トリメチルクマリン(1.0g、4.896mmol)から粗製生成物(1.33g)を得、これを熱酢酸エチルで再結晶して238mgの出発クマリンを得た。母液をエバポレートし、そして得られた白色の残渣(1.13g)をシリカ(200g)上で、エーテルにより分画した。第2のフラクションを回収し、エバポレートし、そして得られた残渣(519mg、37.4%)をアセトン/ヘキサン(1:2)で再結晶して、(15)を淡黄色の結晶として得た(312mg)。
【0062】
分析データは、以下の通りであった:
【0063】
【数3】

4-(トリフルオロメチル)クマリン-7-O-スルファメート(16)の調製
上記の一般的手順に従い、7-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-クマリン(0.90g、3.911mmol)から粗製生成物(1.20g)を得、これをシリカ(200g)上で、エーテル/クロロホルム(1:4)により分画した。第3のフラクションからの残渣(392mg)をさらに、シリカ(100g)上で、エーテルでの分画により精製した。次いで、第1のフラクションを回収して残渣(295mg、24.4%)を得、これを酢酸エチル/ヘキサン(1:3)で再結晶して、(16)を白色の針状結晶として得た(160mg)。
【0064】
分析データは、以下の通りであった:
【0065】
【数4】

7-(スルホキシ)-4-メチルクマリンナトリウム塩(12)の調製
乾燥ピリジン(20ml)中の7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン(1.0g、5.676mmol)の溶液に、N雰囲気下で(図3)、三酸化硫黄-ピリジン複合体(complex)(1.8g、11.35mmol、2当量)を添加し、そして反応混合物を一晩攪拌した。ピリジンの除去の後、得られたクリーム色のシロップにメタノール(20ml)を添加し、そして得られた明黄色溶液を、メタノール中の水酸化ナトリウム(1M、約18ml)の滴下により塩基性化(pH〜8)した。形成した明黄色懸濁液を濾過し、そして沈殿物を、さらなるメタノールで洗浄した。次いで、ろ液を30〜40mlまで濃縮し、そして沈殿が完了するまでエーテル(合計120ml)を少しずつ添加した。明るいベージュ色の沈殿物を回収し(711mg)、そしてその582mgをメタノール/エーテル(1:1)から再結晶して、(12)を明るいクリーム黄色結晶として得た(335mg)。
【0066】
分析データは、以下の通りであった:
【0067】
【数5】

他のデータは、以下の通りであった:
化合物12は、塩基(例えば、メタノール中の水酸化ナトリウム)中で安定であるが、酸性条件下では、安定ではない。さらに、メタノール中の水酸化ナトリウム(<3当量)による反応混合物の不完全な塩基性化は、(12)の分解をもたらす。過剰の三酸化硫黄-ピリジン複合体を消費して中性の硫酸ナトリウムを得るためには、2当量の水酸化ナトリウムが必要である。従って、不十分な量の水酸化ナトリウムは、硫酸水素ナトリウムの形成をもたらし、これは酸性である。化合物12は、高温に対して、不安定であるようである。なぜなら、1つの実験において、固体状の(12)を90℃で4時間加熱した後に、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンへの完全な分解が示されているからである。
【0068】
インビトロテスト
上記のクマリンスルファメートを、それがE1-STS活性を阻害する能力について、インタクトなMCF-7乳ガン細胞または胎盤ミクロソーム(100,000gフラクション)を用いて、実質的に以前に記載した通りに、テストした。
【0069】
化合物(12)が、E1-STSのための基質として作用し得ることを試験するために、100μgの化合物を、胎盤ミクロソームとともに、EMATE(10μM)の存在下または非存在下で、1時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに形成した非複合体化クマリンを、ジエチルエーテルで抽出した。溶媒をエバポレートした後、酢酸エチル/メタノール(80:20)を溶出液として用いるTLCにより残渣を試験した。ここで、クマリンスルフェート(12)および7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンは、それぞれ、0.79および0.95のR値を有した。化合物(12)を胎盤ミクロソームとともにインキュベートした後、非複合体化7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンのみを検出した。反応混合物中のEMATEの包含は、E1-STSによる化合物(12)の加水分解を減少させ、クマリンスルフェートが実際にスルファターゼの基質であること示した。
【0070】
クマリン-7-O-スルファメート(13)、4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)、3,4,8-トリメチルクマリン-7-O-スルファメート(15)および4-(トリフルオロメチル)クマリン-7-O-スルファメート(16)による、インタクトなMCF-7乳ガン細胞におけるエストロンスルファターゼの用量依存阻害は、図5から理解され得る。アッセイは、本質的に、以前に記載された通りに行われた(7、8)。25cmフラスコ中のインタクトなMCF-7細胞の単層を、[H]エストロンスルフェート(2nM)および0.1〜10μMのクマリンスルファメートとともに、20時間、37℃でインキュベートした。H-標識されたエストロンおよび形成したエストラジオールの合計量を測定することにより、エストロンスルファターゼ活性を決定した。未処理細胞中のスルファターゼ活性は、100〜200fmol/20時間/10細胞であった。それぞれの点は、3回の測定の(平均±標準偏差)を示す。
【0071】
すべての調製されたクマリンスルファメートのうち、遊離の親クマリンは、10μMまででテストされた場合、E1-STS阻害活性をほとんど示さなかったか、または示さなかった。しかし、対照的に、4つのすべてのクマリンスルファメート(化合物13〜16)は、エストロンスルファターゼ阻害活性を、用量依存様式で阻害し(図5)、そして10μMでの阻害は、71.5%(化合物16について)から93.3%(化合物14について)の範囲であった。インタクトなMCF-7細胞を用いて測定した、化合物14(最も効果的なインヒビター)によるE1-STSの阻害についてのIC50は、380nMであった。
【0072】
4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)によるエストロンスルファターゼの時間および濃度依存不活性化は、図6から理解され得る。胎盤ミクロソーム(200μg)を、(14)(コントロール、●;0.5μM、△そして10μM、★)とともに、0〜30分間、37℃でプレインキュベートし、続いて、デキストラン-木炭と10分間、4℃でインキュベートした。デキストラン-木炭を、遠心分離により沈降させ、次いで、上澄みの少量ずつを、[H]エストロンスルフェート(20μM)とともに1時間、37℃でインキュベートし、残存するスルファターゼ活性について評価した。各濃度において、2回づつの実験を行った。ただし、残存活性についてのアッセイは、各実験のそれぞれにおいて異なる回数行った。
【0073】
EMATEに関して、化合物14は、E1-STS活性を、時間および濃度依存様式で、二相様式(biphasicfashion)で、阻害し(図6)、類似の作用のメカニズム(2つの活性部位残基の潜在的な化学的修飾)を示した。10μMにおいて、酵素をインヒビターとともに20分間プレインキュベートした後、化合物14は、もとのE1-STS活性を、95%減少させた。
【0074】
さらなる実験により、化合物14が、同じ濃度で、胎盤ミクロソームDHA-STS活性を93.6%阻害したことが明らかになった。
【0075】
インビボテスト
化合物14がエストロゲン性活性を有するかどうかを試験するために、そしてまたインビボでそれがE1-STSを阻害する能力をテストするために、卵巣切除が行われた14日後、それをラットに投与した(1mg/kg皮下、プロピレングリコール中5日間)。
【0076】
化合物14の投与は、これらのラットの子宮重量の顕著な増加をもたらさず(データは示さず)、化合物14が、減少したエストロゲン性アゴニスト特性を示したことを示した。これらの動物から得られた子宮におけるE1-STS活性は、未処理の動物における活性と比較して、89.4%阻害された。
【0077】
予備的なデータはまた、ラットにおける強力な経口活性を、化合物14について例証しており、これは、EMATEについて観察されたものに類似している。
【0078】
これらのインビボでの結果に加えて、他の一連のラット(それぞれの重量約200g)に、4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(化合物14)を、プロピレングリコール中で、経口的に、単回用量(SD)かまたは7日間毎日(多回用量、MD)のいずれかで、受容させた。
【0079】
SDまたはMDの後に回収された白血球(wbc)におけるスルファターゼ活性の阻害を評価した。スルファターゼ活性は、標識されたエストロンスルフェートを基質として用い、そしてエストロンの放出を測定して、アッセイした。
【0080】
結果を、図7および以下の表に示す:
用量 mg/kg %阻害
SD MD
0.1 72 65
1.0 85 85
0.0 96 89
類似の結果が肝臓細胞において見いだされた。
【0081】
従って、化合物14は、強力な経口活性を示す。
【0082】
本発明の他の改変もまた、当業者には明らかである。
【0083】
【数6】

【0084】
【数7】

【0085】
【数8】

【0086】
【数9】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、エストロン(1)、エストロンスルフェート(2)、EMATE(3)およびステロイドスルファメート(4−5)の公知の構造を示す。
【図2】図2は、7-ヒドロキシクマリン(11)、7-(スルフォキシ)-4-メチルクマリン(12)およびクマリンスルファメート(13-16)の構造を示す。
【図3】図3は、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンの硫酸塩化;MeOH中、ピリジン/SO3-ピリジン錯体、NaOH(経路a)を示す。
【図4】図4は、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンのスルファモイル化;トルエン中、NaH/DMF、H2NSO2Cl(経路b)を示す。
【図5】図5は、クマリン-7-O-スルファメート(13)、4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)、3,4,8-トリメチル-クマリン-7-O-スルファメート(15)および4-(トリフルオロメチル)クマリン-7-O-スルファメート(16)による、インタクトなMCF-7乳ガン細胞におけるエストロンスルファターゼの用量依存阻害を示す。
【図6】図6は、4-メチルクマリン-7-O-スルファメート(14)による、エストロンスルファターゼの時間依存および濃度依存不活化を示す。
【図7】図7はグラフである。
【図8】図8は式(A)、(B)および(C)を表す。
【図9】図9は式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の非ステロイドスルファメート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−1723(P2008−1723A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240240(P2007−240240)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【分割の表示】特願平9−529125の分割
【原出願日】平成9年2月17日(1997.2.17)
【出願人】(500232695)ステリックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】