説明

エスリカルバゼピンアセタートの経口懸濁製剤

エスリカルバゼピンアセタート及び医薬として許容し得る液体ビヒクルを含む、経口懸濁製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、活性医薬成分(API)エスリカルバゼピンアセタートを含む製剤、及びそれらの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、エスリカルバゼピンアセタートを含む経口懸濁製剤、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
(背景)
エスリカルバゼピンアセタート(ESL、S(-)-10-アセトキシ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド)は、カルバマゼピン(CBZ)と、5-カルボキサミド置換基を有するジベンズアゼピン核を共有するが、10,11-位置で構造的に異なる、新規な電位型ナトリウムチャネル(VGSC)遮断薬である(BENES, J., PARADA, A., FIGUEIREDO, A.A., ALVES, P.C., FREITAS, A.P., LEARMONTH, D.A., CUNHA, R.A., GARRETT, J. & SOARES-DA-SILVA, P, (1999),「新規な10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-5-カルボキサミド誘導剤の抗痙攣薬及びナトリウムチャネル遮断特性(Anticonvulsant and sodium channel-blocking properties of novel 10,11- dihydro-5H-dibenz[b,f]azepine-5-carboxamide derivatives)」、J. Med Chem., 42, 2582-2587を参照されたい。)。
【化1】

【0003】
この分子変化は、代謝の差異、すなわち、カルバマゼピン-10,11エポキシドなどの毒性エポキシド代謝物の形成の抑制、及び代謝物及び複合体のエナンチオマー又はジアステレオマーの不必要な産生の抑制(HAINZL, D., PARADA, A.及びSOARES-DA-SILVA, P. (2001), 「2つの新しい抗てんかん薬の代謝及びそれらの主要な代謝産物S(+)-及びR(-)-10,11-ジヒドロ-10-ヒドロキシカルバマゼピン(Metabolism of two new antiepileptic drugs and their principal metabolites S(+)- and R(-)-10,11-dihydro-10-hydroxy carbamazepine)」, Epilepsy Res, 44, 197-206を参照されたい。)を、医薬活性を失うことなく(上記のBenesの参考文献を参照されたい。)、もたらす。
【0004】
ESLは、例えば、癲癇、また、感情障害、神経因性疼痛及び他の疼痛障害を治療する際の抗痙攣薬として有効である。
【0005】
錠剤は、多くの場合、飲み込んで投与するのが困難であり、適切でないので、小児用の医薬製剤の調製は、さらなる懸念を引き起こす。液体製剤、例えば、シロップ又は懸濁液が、好まれ得る。しかし、このような液体製剤の化学的安定性(例えば、製剤成分の分解及び不純物の生成の制限)、及び物理的安定性(例えば、粘性、溶解性、性状、pHの維持、並びに遅い沈殿及び相分離- ケーキングの抑制)の維持において問題が起こる。さらに、ESLは、水溶性に乏しい薬剤であり、懸濁製剤として製剤化するのをより困難にする。
【0006】
例えば、該製剤の化学的安定性の制御において課題が存在し得る。例えば、エスリカルバゼピンアセタートは、分解して、エスリカルバゼピン、R-リカルバゼピン及び/又はR-リカルバゼピンアセタートを形成し得る。このような分解産物の形成を最小にすることが重要である。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、エスリカルバゼピンアセタートを含む経口懸濁製剤を提供することである。
【0008】
より詳しくは、本発明の目的は、良好な物理的及び化学的安定性を有するエスリカルバゼピンアセタートを含む経口懸濁製剤を提供することである。
【0009】
(発明の開示)
本発明の一態様に従って、エスリカルバゼピンアセタート及び医薬として許容し得る液体ビヒクルを含む経口懸濁製剤を提供する。
【0010】
本発明の経口懸濁製剤は、下記に更に詳述されるような付加的な医薬として許容し得る賦形剤を用いて、有利に製剤化される。特に、該経口懸濁製剤は、懸濁化剤及び/又は湿潤剤をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の別の態様に従って、エスリカルバゼピンアセタートを医薬として許容し得る液体ビヒクルと組み合わせて含む、経口懸濁製剤の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の経口懸濁製剤は、低レベルの沈殿作用(減少又は固化がない)及び撹拌における容易な再分散などの良好な物理的安定性特性を有する。加えて、該製剤は、例えば、約10〜約70μmの広範囲にわたるAPI粒径で使用することができる。さらに、該製剤は、良好な性状、例えば、泡の少ない生成、並びに懸濁液の均一性及び低い沈殿物圧密(低い相分離)を示す。
【0013】
(詳細な説明)
本発明は、治療的有効量のエスリカルバゼピンアセタート及び医薬として許容し得る液体ビヒクルを含む経口懸濁製剤を提供する。
【0014】
本明細書中に使用されるように、特に明記しない限り、化合物の「治療的有効量」は、疾患若しくは障害の治療若しくは管理において治療的な利点を提供するか、又は疾患若しくは障害に伴う一つ以上の症状を予防、遅延若しくは最小化するのに十分な量である。化合物の治療的有効量は、単独で、又は他の治療法と組み合わせて、疾患又は障害の治療又は管理において治療的な利点を提供する治療薬の量を意味する。用語「治療的有効量」は、全体の治療を改善し、疾患若しくは障害の症状若しくは原因を低下させ、予防し、若しくは回避するか、又は他の治療薬の治療有効性を向上する量を含む。
【0015】
活性成分、エスリカルバゼピンアセタートは、懸濁製剤の約1〜約10w/v%、好ましくは、製剤の約3〜約7w/v%、より好ましくは、製剤の約4〜約6w/v%、最も好ましくは、製剤の約5w/v%の量で存在する。
【0016】
好ましくは、液体ビヒクルは、懸濁製剤の約85〜約95w/v%、より好ましくは、懸濁製剤の約90〜約95w/v%の量で存在する。
【0017】
液体ビヒクルは、水性ベース媒体、例えば、本明細書中に記載されているように、水、プロピレングリコール、ソルビトール水溶液、水性緩衝液、又はこれらのうちの2つ以上の混合物を含むことができる。
【0018】
従って、好ましい実施態様において、液体ビヒクルは、約6.8〜約7.0、好ましくは、約6.9の範囲のpHを有する緩衝液を含む。好ましくは、緩衝液は、リン酸緩衝液、より好ましくは、高緩衝能を有するリン酸緩衝液であり、例えば、このような緩衝液を含む製剤のpHは、最終的な経口懸濁製剤において、3pH単位以下、好ましくは、2pH単位以下の範囲内で変化する。望ましくは、緩衝液は、液体ビヒクルの約50〜約90vol%の量、すなわち、経口懸濁製剤の約45〜約85w/v%の量で存在する。任意に、緩衝液は、製剤の約50〜約90vol%の量で存在する。ある実施態様において、緩衝液は、リン酸二水素カリウム及び水と、水酸化ナトリウム又は水酸化ナトリウム及び水性塩酸(HCl(aq))とを使用して形成される。しかし、代わりに、緩衝液は、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウム二水和物とを使用して形成される。いずれの場合においても、適当な量の水を加え、最終的なpHを、必要に応じて、水酸化ナトリウム及び/又はHCl(aq)を使用して設定することができる。特定の緩衝液の例は、以下の通りである:
(1)緩衝液を次のプロセスにより形成した:約3.5gのリン酸二水素カリウムを、1000mLのビーカーに移し、800mLの水で溶解した;1gの固体水酸化ナトリウム及び1.43gのHCl(conc.)を加えた。量を、水で1000mLにした。pHを、[リン酸塩] = 0.026 M及び[NaCl] = 0.091 Mとなるように、1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液、又は1 mol/LのHCl水溶液で6.9±0.05に設定した。
(2)緩衝液を、次のプロセスにより形成した:約6.80gのリン酸二水素カリウムを、1000mLのビーカーに移し、800mLの水で溶解した;1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液33mLを加え、量を水で1000mLにした。pHを、[リン酸塩] = 0.050 M及び[NaCl] = 0.088 Mとなるように、1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で6.90±0.05に設定した。
(3)緩衝液を、次のプロセスにより形成した:酸/塩基共役緩衝液−約3.4gのリン酸二水素カリウムを、1000mLのビーカーに移し、800mLの水で溶解した;4.45gのリン酸水素二ナトリウム二水和物を加え、量を水で1000mLにした。pHを、[リン酸塩] = 0.056 M及び[NaCl] = 0.087 Mとなるように、1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液又は1 mol/LのHCl溶液で6.90±0.05に設定した。
(4)緩衝液を、次のプロセスにより形成した:約6.8gのリン酸二水素カリウムを、1000mLのビーカーに移し、800mLの水で溶解した;8.9gのリン酸水素二ナトリウム二水和物を加え、量を水で1000mLにした。pHを、[リン酸塩] = 0.113 M及び[NaCl] = 0.176 Mとなるように、1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液又は1 mol/LのHCl水溶液で6.90±0.05に設定した。
【0019】
液体ビヒクルがソルビトール水溶液を含む場合、液体ビヒクルの約50vol%より上のソルビトール水溶液の存在が、懸濁液の溶解特性に有意な低下をもたらしたが、液体ビヒクルの約10vol%より下のソルビトール水溶液の存在は、経口懸濁製剤の有意な相分離をもたらしたことを発見した。従って、好ましくは、ソルビトール水溶液は、液体ビヒクルの約10〜約50vol%の量、すなわち、経口懸濁製剤の約9〜約45w/v%の量で存在する。任意に、ソルビトール水溶液は、製剤の約10〜約50vol%の量で存在する。
【0020】
また、液体ビヒクルにおけるソルビトール水溶液の使用は、製剤の安定性、特に広範囲にわたるESL粒径全体の物理的安定性(例えば、相分離の低下、及び再分散性の容易性増加)を向上し、ソルビトール水溶液が懸濁化剤としてキサンタンガムと組合わせて使用される場合、安定性の相乗作用があることを発見した。
【0021】
従って、特定の好ましい実施態様において、液体ビヒクルは、ソルビトール水溶液を含むことができる。ソルビトール水溶液が存在する場合、ソルビトールは、好ましくは、約50〜約90w/v%の量の水溶液で使用される。好ましくは、ソルビトールは、約70w/v%(すなわち、約28.5〜約31.5部の水において、約68.5〜約71.5w/v%、好ましくは、約30部の水において、約70部のソルビトール)を含む。
【0022】
上記のように、懸濁化剤としてキサンタンガム及び液体ビヒクル中のソルビトール水溶液の組合せは、特に有効であり、懸濁化剤及び液体ビヒクルの他の組合せよりも安定な製剤もたらすことを発見した。また、キサンタンガム及びソルビトール水溶液のこの組合せは、経口懸濁液に、本明細書において他で定義される所望の粘性を提供することも発見した。
【0023】
特に、この組合せは、製剤に、良好な粘性、低い沈殿作用、及び約30分〜約2時間などの広範囲の撹拌時間に渡って、許容できる製剤を形成する能力を提供する。
【0024】
従って、好ましい実施態様において、経口懸濁製剤は、懸濁化剤をさらに含む。懸濁化剤は、アカシアゴム、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラトニア、綿実油、デキストリン、ブドウ糖、ゼラチン、グアールガム、水素化植物油I型、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリラート、アルギン酸ナトリウム、デンプン、アルファ化デンプン、ステアリン酸、キサンタンガム、スクロース、及びゼインから選択され得る。ある実施態様において、懸濁剤は、微結晶性セルロースであり得る。ある実施態様において、懸濁化剤は、微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Avicel(商標)RC-591)の組合せであってもよい。
【0025】
ある実施態様において、キサンタンガムは、懸濁化剤として特に有効であり得る。さらに、キサンタンガムは、経口懸濁製剤の良好な粘性を提供することを発見した。例えば、本発明の製剤は、約120〜約450cPの範囲、又は約150〜約300cPの範囲、又は約180cP〜約400cPの範囲、又は約200cP〜約380cPの範囲、又は約250〜約350cPの範囲の粘性を有することが望ましい。キサンタンガムは、キサンタンガムの広範囲の濃度に渡って、この範囲の粘性を提供することを発見した。このように、キサンタンガムが使用される場合、粘性は、ゴムの濃度の変化にあまり影響されない。好ましくは、懸濁化剤は、懸濁製剤の約0.1〜約0.5w/v%、すなわち、懸濁液100mLあたり約0.1mg〜約0.5mg、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5w/v%、最も好ましくは、懸濁製剤の約0.2〜約0.3w/v%の量で存在する。
【0026】
好ましい実施態様において、製剤は、湿潤剤をさらに含む。適切な湿潤剤は、例えば、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンズアルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000などのマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリソルベート(例えば、TWEEN(商標))、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ホスフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(すなわち、PVP)、チロキサポール(スペリノン又はトリトンとしても知られている)、及びこれらの組合せを含む。湿潤剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート80であり得る。あるいは、湿潤剤は、湿潤剤としてポリオキシエチレンステアレート(ポリ(エチレングリコール)ステアレートとしても知られている)、特に、ポリオキシ100ステアレートであってもよい。Myrj(商標)59P、別名Myrj(商標)S100、(ポリエチレングリコール100ステアレート)が、湿潤剤として特に適切であることを発見した。また、このような経口懸濁製剤において一般的に使用される量と比較して、非常に少ない量の湿潤剤を使用できることを発見した。例えば、当該分野の手引書(「医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」, 第4版, American Pharmaceutical Association, 2003)には、湿潤剤を0.5〜5w/v%の量で使用しなければならないと記載されているが、本発明の経口懸濁製剤は、懸濁製剤の約0.1〜約0.5w/v%の範囲の湿潤剤を含む。望ましくは、湿潤剤は、約0.05〜約5w/v%、最も好ましくは、製剤の約0.1〜約0.5w/v%、例えば、製剤の0.1、0.2、0.3、0.4、0.5w/v%の量で存在する。
【0027】
ポリオキシエチレンステアレート、特に、ポリオキシ100ステアレート、特に、Myrj(商標)59Pの使用は、エスリカルバゼピンアセタートの湿潤性を改善するとともに、製剤のエスリカルバゼピンアセタート粒子の均一性の改善をも提供する。それは、これらの2つの特徴の改善において、懸濁化剤、例えば、キサンタンガムを用いて、若干の相乗効果を示すこともできる。
【0028】
好ましい実施態様において、製剤は、抗菌薬をさらに含む。適切な抗菌薬は、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、パラ-ヒドロキシ安息香酸エチル、パラ-ヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム、プロピルパラベン、パラ-ヒドロキシ安息香酸プロピル、パラ-ヒドロキシ安息香酸プロピルナトリウム、メチルパラベン、パラ-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム,メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、重亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、ビフェニル、ジフェニル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、チアベンダゾール、ナイシン、ナタマイシン、ピマラシン(Pimaracin)、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサミン、ホルムアルデヒド、二炭酸ジメチル、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝石、硝酸カリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム及び無水物、二酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、乳酸、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸カリウム、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、抗菌薬は、メチルパラベン及びプロピルパラベンの組合せである。望ましくは、抗菌薬は、懸濁製剤の約0.1〜約0.5w/v%、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5w/v%、最も好ましくは、約0.15〜約0.25w/v%の合計量で存在する。
【0029】
ある実施態様において、製剤は、他の医薬として許容し得る賦形剤、例えば一つ以上の甘味料及び/又は一つ以上の香味料をさらに含む。
【0030】
適切な甘味料は、当業者に周知であり、グルコネート、アスパルテーム、シクラメート、サッカリンナトリウム、キシリトール及びマルチトール又はそれらの混合物から選択される。
【0031】
本製剤において、甘味料は、最適には、サッカリンナトリウムである。甘味料が存在する場合、甘味料は、好ましくは、懸濁製剤の約0.05〜約0.15w/v%、例えば、懸濁製剤の0.05、0.075、0.1又は0.15w/v%の量で提供される。
【0032】
適切な香味料は、当業者に周知であり、チョコレート、バブルガム、ココア、コーヒー、フルーツ香味料(セイヨウミザクラ、バナナ、ブドウ、桃、及びキイチゴなど)、ペパーミントの油、スペアミントの油、オレンジの油、ミント香味料、アニス香味料、蜂蜜香味料、バニラ香味料、茶香味料及びビジョザクラ香味料、並びに様々なフルーツ酸、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、及び酒石酸、又はそれらの混合物から選択される。本製剤において、香味料は、ゴールデンシロップ香味料、キイチゴ香味料、キャラメル香味料、バブルガム香味料などから選択され、それらの組み合わせを含む。香味料が存在する場合、香味料は、好ましくは、懸濁製剤の約0.05〜約5w/v%、例えば、懸濁製剤の0.1、 0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5w/v%で提供される。
【0033】
従って、本発明の好適な経口投与製剤は、以下を含む:
エスリカルバゼピンアセタート − 製剤の約4〜約6w/v%
キサンタンガム − 製剤の約0.2〜約0.3w/v%
ポリオキシ100ステアレート − 製剤の約0.2〜約0.3w/v%
液体ビヒクル − 製剤の約85〜約95w/v%
緩衝液 − 液体ビヒクルの約50〜約90vol%
ソルビトール水溶液 − 液体ビヒクルの約10〜約50vol%。
より好ましくは、本製剤は、以下の一つ以上をさらに含む:
メチルパラベン及びプロピルパラベン − 製剤の約0.1〜約0.3w/v%
甘味料 − 製剤の約0.05〜約0.15w/v%
香味料 − 製剤の約0.05〜約5w/v%。
【0034】
本製剤中のソルビトール水溶液は、好ましくは、約60〜約80w/v%ソルビトール、より好ましくは、約65〜約75w/v%ソルビトール、及び最も好ましくは、約70w/v%ソルビトールを含む。
【0035】
製剤は、任意に所望の分量、典型的には、50mL、100mL、150mL又は200mLで提供され得る。一般的に、製剤は、所望の分量に適したサイズの瓶に入れて提供される。
【0036】
典型的には、製剤は、10mg/kg/日〜30mg/kg/日の活性成分、エスリカルバゼピンアセタートを送達するように投与されるであろう。
【0037】
典型的には、製剤は、1200mg/日、又は1800mg/日、例えば、200、400、600、800、1000、1200、1400、1600又は1800mg/日の活性成分を送達するように投与されるであろう。ある実施態様において、製剤は、200、400、600、800、1000、1200、又は1800 mg/日の活性成分を送達するように投与されるであろう。
【0038】
製剤は、製剤の治療的に有効な分量を測定し、かつ、それを患者に経口的に投与することによって、その必要がある患者に投与することができる。典型的な治療的に有効な投与量は、製剤の約4〜約40mL、例えば、約8〜約20mLである。ある実施態様において、典型的な治療的に有効な投与量は、製剤の約8〜約20mLである。製剤は、本明細書に引用により取り込まれているWO2006/121363に更に記載されているように、1日1回で有利に投与することができる。
【0039】
本発明の製剤は、特に、小児用として好ましい。製剤は、特に、癲癇、神経因性疼痛、及び他の疼痛状態、例えば、片頭痛及び線維筋痛の治療に好ましい。また、それは、他の障害、例えば、感情障害、分裂情動障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、又は変性及び虚血後の疾患における神経機能変性の治療に使用することもできる。
【0040】
感情障害の例を挙げると、うつ病、月経前不快性障害、分娩後うつ病、閉経後うつ病、拒食症、神経性過食症、及び神経変性関連抑うつ症状がある。
【0041】
分裂情動障害の例を挙げると、分裂抑鬱性症候群、精神分裂病、極端な精神病状態(extreme psychotic state)、分裂躁病症候群、不快性及び攻撃的挙動、偶発性異常制御又は間欠性爆発性障害、及び境界性人格障害がある。
【0042】
双極性障害の例を挙げると、ラピッドフルクテーション(rapid fluctuations)(ラピッドサイクラー(rapid cyclers))、躁鬱病障害、急性躁病、気分エピソード(mood episode)、並びに躁病及び低躁病エピソードを伴う、不安定な双極性障害がある。
【0043】
注意障害の例を挙げると、注意欠陥多動障害、及び他の注意障害、例えば、自閉症などがある。
【0044】
不安障害は、状態、例えば、社会的不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック、強迫神経症障害、アルコール依存症、投薬停止症候群、及び渇望を含む。
【0045】
本開示の方法に従って治療され得る神経因性疼痛、神経因性疼痛関連障害、及び疼痛状態は、例として、三叉神経、疱疹、疱疹後及び癆の神経痛、糖尿病神経因性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、灼熱痛、線維筋痛、及び非求心性神経動作症候群、例えば、腕神経叢剥離を含む、神経因性疼痛及び関連痛覚過敏を含む。ある実施態様において、神経因性疼痛及び関連痛覚過敏は、三叉神経、疱疹、疱疹後及び癆の神経痛、糖尿病神経因性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、灼熱痛、及び非求心性神経動作症候群、例えば、腕神経叢剥離を含む、神経因性疼痛及び関連痛覚過敏から選択される。
【0046】
感覚運動障害の例を挙げると、下肢静止不能症候群、痙縮、半側顔面痙攣、夜間発作性失調症、脳虚血関連運動(brain ischemia associated motor)及び感受性欠損(sensitive deficits)、パーキンソン病及びパーキンソン病様障害、抗精神病薬により誘発された運動障害、遅行性顔面麻痺、エピソード夜間放浪(episodic nocturnal wandering)、及び筋緊張症がある。
【0047】
典型的な前庭障害は、耳鳴り又は他の内耳/蝸牛興奮性関連疾患、例えば、ニューロン損失、聴力障害、突発性難聴、めまい及びメニエール病などを含む。
【0048】
当業者は、これらの状態が典型的なもののみであることを理解し、他の疾患及び状態が本開示の範囲内であると考慮されることを本開示から理解するであろう。
【0049】
本発明の別の態様に従って、上記の経口懸濁製剤の製造方法であって、(1)好ましくは約6.9のpHを有する水性緩衝液を調製すること;(2)該緩衝液に懸濁化剤を加えること;(3)該緩衝液に湿潤剤を加えること;(4)該緩衝液にエスリカルバゼピンアセタートを加えること;及び(5)該緩衝液にソルビトール水溶液を加えることを含む、前記製造方法を提供する。好ましくは、工程(1)〜(5)は、粘性などの満足な特性を維持するように上記の順序で実施され、必要に応じて、材料の添加時及び/又は後に製剤を撹拌する。
【0050】
好ましくは、緩衝液は、本明細書中に記載されているものである。好ましくは、工程(1)は、本明細書中に記載されているように実施される。好ましくは、懸濁化剤、湿潤剤、ソルビトール溶液、抗菌薬、甘味料及び/又は香味料は、本明細書中に記載されているものである。
【0051】
抗菌薬、甘味料及び/又は香味料は、存在する場合、好ましくは、工程(4)及び(5)の間、又は工程(4)の時に加えることもできる。一実施態様において、抗菌薬を、工程(4)の時に加え、甘味料及び/又は香味料を、工程(4)と工程(5)の間で加える。
【0052】
湿潤剤及び懸濁化剤を、工程(2)において緩衝液に加える場合、他の製剤成分の量(含量)が影響を受けること、例えば、抗菌薬含量が減ることに留意した。湿潤剤とは別に先に懸濁化剤を加えることにより、この問題を回避した。
【0053】
また、抗菌薬は、工程(1)の後に連続してそれを加えることは、製剤のpH安定性に影響を及ぼしたので、他の賦形剤の後に加えることが有利であることを発見した。類似の作用は、ESLを工程(1)の後に連続して加える場合に、ESLの添加で見られ、さらに、この成分を工程(1)の後に連続して加える場合、ESL含量が減少した。
【実施例】
【0054】
特定の実施態様は、以下の非限定的な実施例において例示される。物質及び方法、双方に対する多くの変更が、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく実施できることは、当業者にとって明らかであろう。
【0055】
(実施例1)
次の典型的な組成物を、下記の方法によって、調製した。
【表1】

【0056】
組成物は、以下の通りに製造した:
− 緩衝液(pH 6.9)を、以下の通りに調製した:
約3.4gのリン酸二水素カリウムを、1000mLのビーカーに移し、800mLの水で溶解した;4.45gのリン酸水素二ナトリウム二水和物を加え、量を水で1000mLにした。pHを、[リン酸塩] = 0.056 M及び[NaCl] = 0.087 Mとなるように、1 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液又は1 mol/LのHCl水溶液で6.9±0.05に設定した。
− キサンタンガムを、緩衝液 pH 6.9に加え、撹拌下で1時間浸漬させた(IKA(商標)位置6*)。
− その後、ポリオキシ100ステアレート(Myrj(商標)59P)を、混合物に加え、30分間攪拌させた(IKA(商標)位置6*)。
− ESLを、撹拌下で懸濁液に加え、その後、1時間撹拌(IKA(商標)位置6*)する前に、メチルパラベン及びプロピルパラベンを加えた。
− サッカリンナトリウム及び香味料を加え、ソルビトール70%で仕上げた量を、撹拌下でゆっくり加えた。懸濁液を、1時間攪拌させた(IKA(商標)位置6*)。
− 瓶を、200mLの得られた懸濁液で満たした。
* IKA(商標)攪拌機を使用する好適な設定を指す。
【0057】
(実施例2)
次の典型的な組成物も、下記の方法によって、調製した。
【表2】

【0058】
上記の本発明は、請求項の範囲内で変更できることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的有効量のエスリカルバゼピンアセタート、及び医薬として許容し得る液体ビヒクルを含む、経口懸濁製剤。
【請求項2】
懸濁化剤を更に含む、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記懸濁化剤が、キサンタンガムである、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
前記懸濁化剤が、前記製剤の0.1〜0.5w/v%の量で存在する、請求項2又は3記載の製剤。
【請求項5】
湿潤剤を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の製剤。
【請求項6】
前記湿潤剤が、ポリオキシエチレンステアレートである、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
前記湿潤剤が、ポリオキシ100ステアレートである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
前記湿潤剤が、前記製剤の0.05〜5 w/v%の量で存在する、請求項5、6又は7記載の製剤。
【請求項9】
抗菌薬を更に含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の製剤。
【請求項10】
前記抗菌薬が、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンを含む、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
前記抗菌薬が、前記製剤の0.1〜0.5w/v%の量で存在する、請求項9又は10記載の製剤。
【請求項12】
前記液体ビヒクルが、前記製剤の85〜95w/v%の量で存在する、請求項1〜11のいずれか1項記載の製剤。
【請求項13】
前記液体ビヒクルが、6.8〜7.0の範囲のpHを有する緩衝液を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項14】
前記緩衝液が、前記液体ビヒクルの50〜90vol%の量で存在する、請求項13記載の製剤。
【請求項15】
前記液体ビヒクルが、ソルビトール水溶液を含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項16】
前記ソルビトール水溶液が、前記液体ビヒクルの10〜50vol%の量で存在する、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
以下を含む、経口投与製剤:
エスリカルバゼピンアセタート − 前記製剤の40〜60 mg/mL
キサンタンガム − 前記製剤の2〜3 mg/mL
ポリオキシ100ステアレート − 前記製剤の2〜3 mg/mL
緩衝液 − 0.7 mL
ソルビトール水溶液 − 1 mLへ。
【請求項18】
前記ソルビトール水溶液が、65〜75w/v%のソルビトールを含む、請求項16又は17記載の製剤。
【請求項19】
エスリカルバゼピンアセタートを含む経口懸濁製剤の物理的安定性を改善するように、キサンタンガムと組み合わせたソルビトール溶液の使用。
【請求項20】
前記製剤の容量に基づいて9〜45w/v%のソルビトール水溶液、及び前記製剤の容量に基づいて0.2〜0.3w/v%のキサンタンガムを使用することを含む、請求項19記載の使用。
【請求項21】
エスリカルバゼピンアセタートを含む経口懸濁製剤の製造方法であって、(1)緩衝液を調製すること;(2)該緩衝液に懸濁化剤を加えること;(3)該緩衝液に湿潤剤を加えること;(4)該緩衝液にエスリカルバゼピンアセタートを加えること;及び(5)該緩衝液にソルビトール水溶液を加えることを含む、前記製造方法。
【請求項22】
前記懸濁化剤が、キサンタンガムである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記懸濁化剤が、前記製剤の0.1〜0.5w/v%の量で加えられる、請求項21又は請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記湿潤剤が、ポリオキシ100ステアレートである、請求項21〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記湿潤剤が、最終的な製剤の0.05〜5w/v%の量で加えられる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝液が、6.8〜7.0の範囲のpHを有する、請求項21〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
調製された緩衝液が、最終的な製剤の45〜85w/v%を構成する、請求項21〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
工程(1)〜(5)が、順番に実施される、請求項21〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
抗菌薬が、工程(4)の時に加えられる、請求項21〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記抗菌薬が、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記抗菌薬が、最終的な製剤の0.1〜0.5w/v%の量で加えられる、請求項29又は請求項30記載の方法。
【請求項32】
香味料が、工程(4)と工程(5)の間で加えられる、請求項21〜31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
甘味料が、工程(4)と工程(5)の間で加えられる、請求項21〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記ソルビトール水溶液が、最終的な製剤の9〜45w/v%の量で存在する、請求項21〜33のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2013−504569(P2013−504569A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528773(P2012−528773)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/PT2010/000038
【国際公開番号】WO2011/031176
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(596095518)バイアル−ポルテラ アンド シーエー,エス.エー. (25)
【Fターム(参考)】