説明

エゾウコギの枝及び/又は葉の抽出物、その製造方法及びその用途

【課題】 薬効の期待されないエゾウコギの茎や枝から有効成分を抽出した抽出物を提供する。
【解決手段】エゾウコギの茎及び/または枝をアルカリ電解水で抽出して得られるエゾウコギ抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あまり薬効の期待されないエゾウコギの茎や枝から有効成分を抽出した抽出物、その製造方法及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エゾウコギ(学名:Acanthopanax senticosus harms)は、ウコギ科ウコギ属に属する植物である。エゾウコギには滋養強壮作用、鎮静作用、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用等の薬理作用があることが公知である。
【0003】
特に、エゾウコギの根の抽出物は、薬効が高く薬事法で認可されている(非特許文献1)。
【0004】
エゾウコギの根の抽出物には、エレウテロサイドB、イソフラキシジン、エレウテロサイドB1、エレウテロサイドE等の多糖類が含まれており、これらの作用により上述の薬理作用を奏するものと考えられているが詳細は不明である。
【0005】
エゾウコギの根以外の茎や枝から抽出した抽出物中の多糖類の組成は、根の抽出物の多糖類の組成と異なっており、茎や枝の抽出物は根の抽出物と比較すると薬効が劣っており、健康補助食品として使用されている。
【非特許文献1】厚生省薬務局長通達「無承認無認可医薬品の取締りについて」の別紙「医薬品に関する基準」、IのIの(1)(b)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、薬効の期待されないエゾウコギの茎や枝から有効成分を抽出した抽出物、その製造方法及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねたところ、本発明者は特定の抽出溶媒でエゾウコギの茎や枝を抽出することにより課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は下記に関するものである。
(1) エゾウコギの茎及び/または枝をアルカリ電解水で抽出して得られるエゾウコギ抽出物。
(2) エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出することを特徴とする(1)に記載のエゾウコギ抽出物の製造方法。
(3) エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出した抽出物を含むことを特徴とするサプリメント。
(4) エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出した抽出物を含むことを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエゾウコギの茎及び/又は枝からアルカリ電解水で抽出した抽出物は、薬効が高く、ダイエット用のサプリメントや飲食品として好適である。
【0010】
本発明のエゾウコギの茎及び/又は枝からアルカリ電解水で抽出した抽出物が、ダイエット効果を奏することの詳細な理由は不明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の原料となるエゾウコギの茎や枝は、エゾウコギの茎や枝を乾燥し、裁断したものを用いればよい。
【0012】
本発明の抽出溶媒は、アルカリ電解水である。本発明におけるアルカリ電解水とは、
隔膜でアノード室とカソ−ド室に仕切られた隔膜電解槽に水を供給してカソ−ド電解により生成したアルカリ性の電解水のことである。
【0013】
アルカリ電解水で抽出するための条件は、例えば、逆浸透膜処理水をカソ−ド電解して
生成したアルカリ性電解水に細断したエゾウコギの茎及び枝を浸漬した後、アルカリ性電解水を加熱して抽出すればよい。
【0014】
アルカリ電解水でエゾウコギの茎や枝を抽出した抽出物中のエレウテロサイドB、イソフラキシジン、エレウテロサイドB1、エレウテロサイドEの組成は、従来法で抽出したエゾウコギの茎や枝の抽出物の組成と異なり、むしろ根の抽出物の組成と近いものである(図1参照)。エゾウコギの茎及び/又は枝のアルカリ電解水抽出物のエレウテロサイドB、イソフラキシジン、エレウテロサイドB1、エレウテロサイドEの組成は、各々0.01〜0.3、0.01〜0.2、0.01〜0.3、0.1〜0.5の範囲にある。
【0015】
本発明の抽出物は、エゾウコギの茎や枝を抽出したままの液状でも良く、抽出液を濃縮したコンク品でもよく、抽出液を乾燥した粉末品でもよい。
【0016】
本発明の抽出物は、凍結乾燥して、粉末化し、リン酸カルシウム、セルロース、アルギン酸、ステアリン酸カルシウム、ショ糖等と配合してサプリメントとすることができる。
【0017】
本発明のサプリメントは後述の実施例から分かるように、ダイエット用のサプリメントとして好適である。
【0018】
本発明の抽出物は、飲料水、ドリンク、茶の飲料やビスケットのような食品に配合することにより、ダイエット効果が期待できる。
参考例1
実施例で使用したアルカリ電解水は、以下のように調製した。まず、図1に示す電解槽を用いて、逆浸透膜処理水をアノード室1とカソ−ド室6に供給して、pHが〜10の水を生成した。
【実施例1】
【0019】
(1)抽出
乾燥エゾウコギ原木(茎主体)を針状に切断し、25gに対して溶媒250gを加え、80〜100℃にて溶媒抽出を行った。それぞれ室温まで冷却後、濾紙にてろ過し、抽出液量、エキス濃度、比重、pHを測定した。抽出液量とエキス濃度より抽出率(100gより抽出された乾燥エキスのg数)を求めた。抽出条件と測定結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
(2)成分分析
抽出物を液体クロマトグラフ法によりエゾウコギの特徴5成分を測定した。測定結果を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表2中、「通常水抽出1」とは電解無処理の水を80〜100℃に加熱して抽出した例を示す。
意味し、「通常水抽出2」とは熱水抽出1と同様な条件で抽出した別の例を意味する。
【0024】
表2の測定結果を、クロロゲン酸を1とした場合のエレウテロサイドB、イソフラキシジン、エレウテロサイドB1、エレウテロサイドEの重量比をグラフ化した(図2)。グラフ中「根」とあるのは、エゾウコギの根を熱水抽出した抽出物を測定したものである。
【0025】
表2及び図2の結果から明らかなように、本発明のエゾウコギの茎のアルカリ電解水抽出物の有効成分の組成は、従来の熱水抽出物の組成と異なり、むしろ根の熱水抽出物の組成に近いものであった。
【実施例2】
【0026】
本実施例では、アルカリ電解水抽出エゾウコギエキスの抗肥満効果を様々なパラメータから検証を行い、既存の水抽出エゾウコギエキスの抗肥満効果との違いを明らかにする。
【0027】
効果確認試験には以下の動物を用いた。
【0028】
a.使用動物
SD雄性ラット4週令を購入後、1週間の予備飼育を行い、実験に使用した。
【0029】
b.グループ
・H2O,ND:普通食(360 kcal/100g)自由摂取ラット 6匹(図中、「普通食」と表示)
・H2O,HFD35%:βカゼイン5%入り35%ラード入り高脂肪(630 kcal/100g)食自由摂取ラット 6匹(図中、「高脂肪食」と表示)
・AlkaliASH5%,HFD:アルカリ電解水抽出エゾウコギエキス5%入り高脂肪食(630 kcal/100g)自由摂取ラット 6匹(図中、「電解水抽出」と表示)
・ASH5%,HFD:普通の水抽出エゾウコギエキス0.5%入り高脂肪食(630 kcal/100g)自由摂取ラット 6匹(図中、「通常水抽出」と表示)
【0030】
これらのラットを予備飼育後、5週間、それぞれの処置を行った。
【0031】
試験結果は以下のとおりまとめられる。
【0032】
(1)アルカリ電解水抽出エゾウコギエキスの体重増加率への影響(図3)
高脂肪食投与ラットは、普通食投与ラットに比べ1日あたり平均約1.9倍の体重増加が認められた。高脂肪食条件下、通常の水抽出ASHエキスは、高脂肪食単独投与ラットに比べ1日あたり平均約27%の体重抑制を示した。一方、アルカリ電解水抽出エキスは、高脂肪食単独投与ラットに比べ1日あたり平均約42-49%の体重抑制を示し、アルカリ電解水抽出エキスによる作用の増強効果が明らかとなった。
【0033】
(2)アルカリ電解水抽出エゾウコギエキスの内臓脂肪への影響(図4)
高脂肪食投与ラットは、普通食投与ラットに比べ約2.7内臓脂肪組織重量の増加が認められた。高脂肪食条件下、通常の水抽出ASHエキスは、高脂肪食単独投与ラットに比べ約26%脂肪重量の低下を示した。一方、アルカリ電解水抽出エキスは、高脂肪食単独投与ラットに比べ約52%の低下作用を示した。アルカリ電解水抽出エキスによる作用の増強効果が明らかとなった。
【0034】
(3)血中中性脂肪値に対するアルカリ電解水抽出エゾウコギエキスの効果(図5)
ラットへの高脂肪食投与は、血中中性脂肪値が、普通食に比較して上昇傾向を示した。アルカリ電解水抽出エキスは、高脂肪食による血中中性脂肪値の上昇を顕著に抑制し、さらに、通常水抽出エキスに比較しても抑制した。
【0035】
(4)血糖値に対するアルカリ電解水抽出エゾウコギエキスの効果(図6)
高脂肪食による血糖値の上昇は、アルカリ電解水抽出エキスや水抽出ASH5%エキスにより顕著に抑制された。また、アルカリ電解水抽出エキスは、ASH5%エキスの効果をさらに増強していることも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のエゾウコギの茎や枝の抽出物は、ダイエット効果が期待できるので、ダイエット用のサプリメントや飲食品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】アルカリ電解水を生成する電解装置。
【図2】エゾウコギ抽出物中の有効成分の構成比を示したグラフ。
【図3】体重増加量を示すグラフ。
【図4】脂肪細胞面積率を示すグラフ。
【図5】血中中性脂肪値を示すグラフ。
【図6】血糖値を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾウコギの茎及び/または枝をアルカリ電解水で抽出して得られるエゾウコギ抽出物。
【請求項2】
エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出することを特徴とする請求項1に記載のエゾウコギ抽出物の製造方法。
【請求項3】
エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出した抽出物を含むことを特徴とするサプリメント。
【請求項4】
エゾウコギの茎及び/又は枝をアルカリ電解水で抽出した抽出物を含むことを特徴とする飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44887(P2008−44887A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221846(P2006−221846)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(506112340)株式会社レドックス (3)
【Fターム(参考)】