説明

エタノールの製造方法

【課題】バイオエタノールの製造方法として、セルロースを酵素糖化させて得た糖を発酵させてエタノールを得る方法等が知られているが、これらはバイオマスから直接エタノールを得るものではなく、複数の工程を要するため、バイオマスから直接エタノールを効率よく得る方法を提供する。
【解決手段】葛の茎と葛根とグルコースと麹とからなる混合物を発酵させてエタノールを得る、エタノールの製造方法である。混合物はスラリー状であることが好ましい。麹に代えて麹に含まれる発酵菌や酵素が用いられてもよい。発酵用に酵母(イースト)が用いられてもよい。混合物には葛の葉が含まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオエタノールの製造方法として、例えば、バイオマスの水スラリーを圧力4〜40MPaに加圧し、加圧された水スラリーを火力発電装置のボイラから供給される蒸気と反応器内で熱交換させることにより前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃の範囲の温度に加熱して前記バイオマスに含有されるヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成し、生成された糖を発酵させるエタノールの製造方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)また、セルロースを酵素糖化させて得た糖を発酵させてエタノールを得る方法が知られている。(例えば、特許文献2参照)
これらはバイオマスから直接エタノールを得るものではなく、複数の工程を要する。
【特許文献1】特開2008−182925号公報
【特許文献2】特開2008−161125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、バイオマスから直接エタノールを効率よく得る方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の要旨とするところは、葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させることを特徴とするアルコールの製造方法であることにある。
【0005】
また、本発明の要旨とするところは、葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる酒であることにある。
【0006】
さらに、本発明の要旨とするところは、葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる発酵物の残渣からなる肥料であることにある。
【0007】
またさらに、本発明の要旨とするところは、葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる発酵物の残渣からなる飼料であることにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、バイオマスから直接エタノールを効率よく得る方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、発酵母体として葛を用い発酵させるエタノールの製造方法である。
【0010】
詳しくは、葛の茎と葛根とグルコースと麹とからなる混合物を発酵させてエタノールを得る、エタノールの製造方法である。混合物はスラリー状であることが好ましい。麹に代えて麹に含まれる発酵菌や酵素が用いられてもよい。発酵用に酵母(イースト)が用いられてもよい。混合物には葛の葉が含まれていてもよい。
【0011】
この混合物は水2000重量部に対して、葛の茎(葉付き)500〜1300乾燥重量部、葛根50〜200重量部、グルコース200〜400重量部、米麹100〜200重量部、パン酵母10〜30重量部を含むことが好ましい。
【0012】
本発明のエタノールの製造方法においては、葛の茎と葛根とグルコースとからなる発酵母体に水を加えた原料スラリーを、殺菌のため80〜100℃に加熱したのち35℃以下に冷却し、麹やイーストを加えて好ましくは30〜36℃で3日間ほど発酵させることが好ましい。あるいは、熱水に葛の茎と葛根とグルコースとを加えた後冷却してなる原料スラリーを、麹や酵母を加えて好ましくは30〜36℃で3日間ほど発酵させることが好ましい。発酵母体には他の種類のデンプンなどが添加されてもよい。
【0013】
本発明により、エタノールを効率よく製造できる。この液は精製して酒として飲用できる。
【0014】
原料スラリーは例えば葛の葉付きの茎を0.5〜5mmに粉砕して葛根粉とグルコースと水を加えて得ることができる。
【0015】
また、発酵後のスラリー(発酵物)の残渣(搾りかす)は植木用に肥料として用いると、植木が普通の植木より輝いて見える。
【0016】
また、発酵後のスラリー(発酵物)の残渣(搾りかす)は牛馬等の家畜が好んで食する飼料として用いることができる。
【0017】
本発明において用いられる麹としては、米麹のほかに麦麹、豆麹、蘇鉄麹、黒麹など各種の麹が挙げられる。麹に代えてビールの絞りかすや葡萄酒の絞りかすや焼酎の絞りかす、あるいはこれらに含まれる発酵菌や酵素を用いることができる。
【実施例1】
【0018】
葉付きの葛の茎を自然乾燥後5mmほどに粉砕した粉砕物900g、グルコース250g、葛根粉100gを2リットルの水に投入し攪拌し原料スラリーを得た。この原料スラリーを90℃に加熱後33℃まで自然冷却したのち、米麹150g、パン酵母20gをこの原料スラリーに加えスラリーとしたのち、33℃で3日間発酵させた。発酵後のスラリーを搾って1.6リットルの液を得た。この液のアルコール濃度をATAGO社製のアルコール濃度測定器(PET−109)で測定したところ11.4wt%であった。この液を蒸留精製して得た水溶液は酒として良好かつ独特の風味があり飲用可能であった。発酵後のスラリーの搾りかすは馬、牛の餌として好適に使用できた。また、発酵後のスラリーの搾りかすをさざんかに施肥したところ、1週間後通常のさざんかに比べて葉につやがあり輝いて見えた。
【0019】
発酵後のスラリーを搾って得た1.6リットルの液のうち1.2リットルに水2.3リットルを加えて蒸留用液Aとした。蒸留用液Aの比重(d20)は0.985であった。この蒸留用液Aのうち3232gに精製水768gを加えた4000gの蒸留用液Bを減圧蒸留し、さらに膜分離して113.8gのエタノールを得た。
【0020】
[比較例]
グルコース250g、葛根粉100gを2リットルの水に投入し攪拌し原料スラリーを得た。この原料スラリーを90℃に加熱後33℃まで自然冷却したのち、米麹150g、パンイースト20gをこの原料スラリーに加えスラリーとしたのち、33℃で3日間発酵させた。発酵後のスラリーから汲み上げて採取した液のアルコール濃度をATAGO社製のアルコール濃度測定器(PET−109)で測定したところ10.8wt%であった。
【0021】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させることを特徴とするエタノールの製造方法。
【請求項2】
葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる酒。
【請求項3】
葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる発酵物の残渣からなる肥料。
【請求項4】
葛の茎と葛根とグルコースとを含む発酵母体を発酵させてなる発酵物の残渣からなる飼料。


【公開番号】特開2010−99029(P2010−99029A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274265(P2008−274265)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(597150865)
【Fターム(参考)】