エタノール産生のための胞子形成欠損好熱性微生物
胞子形成を妨げる改変を含み、前記改変は天然型spo0A遺伝子を不活化する、好熱性微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノール産生に適する微生物の生産に関する。特に、本発明は、胞子形成を妨げる微生物の改変に関する。
【背景技術】
【0002】
胞子形成は、胞子または内生胞子として知られている、成長期の細胞の休眠期細胞型への転換に関与する多段階の発生プロセスである。胞子は、好ましくない条件下での広範な時間にわたる分散および生存に適しており、数々の植物、藻、および細菌(例えばバチルス種)の生活環の一部を形成する。
【0003】
胞子形成への開始に対する主要な調節因子は、DNA結合タンパク質であるSpo0A(ステージ0胞子形成タンパク質A)であり、転写因子の応答調節因子ファミリーの一員である。5つのヒスチジン自己リン酸化酵素(autokinase)(KinA,KinB,KinC,KinDおよびKinE)をコードする遺伝子および2つの応答タンパク質(Spo0BおよびSpo0F)をコードする遺伝子を含む、多数の他の遺伝子はまた、胞子形成の開始の制御に関与している(非特許文献1)。Spo0Aの活動は、環境シグナルを認識しかつ統合して胞子形成を開始する、多要素リン酸リレーによって支配されている(非特許文献2)。調節N末端ドメインのリン酸化において、Spo0A−Pは、胞子形成に関与する遺伝子を活性化する「0Aボックス」として知られているDNA配列要素と結合する。N末端がリン酸化されるまで不活性であるSpo0AのC末端ドメインの欠失は、胞子形成に否定的な表現型を示す(非特許文献3)。
【0004】
Spo0Aはまた、直接的または間接的に、バチルス サブチリス(B. subtilis)における500を超える遺伝子の発現の活性化または抑制に影響を及ぼしており、これにより、制御下で調節遺伝子を介して遺伝子転写の全体的なパターンを間接的に媒介する(非特許文献1)。
【0005】
胞子形成は、異化代謝産物抑制にさらされやすいため、グルコースまたは容易に代謝される他の炭素源の存在は、野生型細胞による胞子形成を阻害する。特に、グルコースは、Spo0AおよびSpo0Fの転写を抑制することが知られている(非特許文献4)。
【0006】
商業的な発酵プロセスでは、2つの主要な理由により、胞子は望ましくない:
1.胞子形成は有機体による活性代謝を休止させ、その結果、所望の代謝産物の形成が減少または停止する。
2.胞子形成している微生物は、取扱いおよび封じ込めの制御がより難しく、これにより、健康および安全を含む環境的な理由で商業的なプロセスの微生物の生存を避け、かつ、商業的な株の制御されていない放出をも妨げることが望ましい。
【0007】
細菌が適切な基質を代謝する一般的なプロセスは、解糖である。解糖は、ATP生成に伴い、グルコースをピルビン酸(pyruvate)に変換する一連の反応である。代謝エネルギーの生成におけるピルビン酸の末路は、微生物および環境条件に依存して多様である。ピルビン酸の4つの主要な反応を図5に示す。
【0008】
第一に、好気性条件下では、多くの微生物は、クエン酸回路を用いてエネルギーを生成し、ピルビン酸のアセチル補酵素Aへの転換は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)によって触媒されるだろう。
【0009】
第二に、嫌気性条件下では、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)によって触媒されることにより、所定のエタノール産生有機体が、ピルビン酸をアセトアルデヒドへと脱カルボキシル化することにより、アルコール性発酵が実行され、引き続くNaDHによるアセトアルデヒドのエタノールへの還元は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって触媒される。
【0010】
第三の反応はまた、嫌気性条件で生じる、ピルビン酸のアセチルCoAへの転換であり、ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)によって触媒される。続いて、酵素であるアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AcDH)によって、アセチルCoAがアセトアルデヒドへと転換され、ADHによって触媒されるアセトアルデヒドの還元によって、エタノールが産生される。
【0011】
第四のプロセスは、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)による触媒を経て起こる、ピルビン酸の乳酸(lactate)への転換である。
【0012】
嫌気性発酵を生来行う微生物を用いて、または、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子およびアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込んだ組み換え微生物の使用を介して、エタノール産生のために微生物を使用することに多大な興味が集まっている。
【0013】
特許文献1は、エタノールの形成を促進するために、天然型LDHおよびPFL遺伝子を不活化する改変を含み、PDC遺伝子、PDH遺伝子およびADH遺伝子を上方制御する微生物を開示する。
【0014】
微生物からのエタノール産生について、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/038019号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Molle et al.; Mol. Microbiol.; 2003,50(5):1683-1701
【非特許文献2】Trach KA, et al; Mol. Microbiol.1993; 8(1):69-79
【非特許文献3】Rowe-Magnus DA, et al; J.Bacteriol.; 2000; 182(15):4352-4355
【非特許文献4】Myseliwiec,TH et al; J. Bacterial.; 1991; 173(6):1911-1919
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、芽胞形成(spore-forming)好熱性微生物におけるSpo0A遺伝子の阻害が、微生物のエタノール耐性を高め、かつ代謝をも増加させ、その結果、エタノール等の代謝最終産生物の産生率が増加するという驚くべき知見に基づく。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、好熱性微生物は、野生型と比較して胞子形成を減少させる改変を含み、第1の改変は天然型spo0A遺伝子を不活化する。
【0019】
前記微生物は、天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(および任意にピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子)の不活化を介して、エタノール産生の増加を行うためにさらに改変されていてもよい。さらに、改変は、天然型ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上方制御または活性ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の導入によって行われることができる。
【0020】
微生物は、アミラーゼ遺伝子の発現の増加によって、澱粉からのエタノール産生を増加させる改変をさらに含んでいてもよい。
【0021】
本発明の微生物は、野生型と比較して、エタノール産生の増加およびエタノール耐性の増加を示す。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、エタノールを産生する方法は、C3糖、C5糖、またはC6糖あるいはそのオリゴマーの存在下で適切な条件にて、上記の定義にしたがって微生物を培養する工程を含む。
【0023】
添付する図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、Spo0Aのヌクレオチド配列(配列番号1)である。
【図2】図2は、Spo0Aのアミノ酸配列(配列番号2)である。
【図3】図3は、プラスミドpTMO14(配列番号4)を説明する。
【図4】図4は、PDH複合体の仮説プロモーター領域および遺伝子を説明する。
【図5】図5は、ピルビン酸の4つの主要な反応を説明する。
【図6】図6は、pGEM(登録商標)−Tイージーベクターを説明する。
【図7】図7は、プラスミドpTMO31(配列番号3)を説明する。
【図8】ゲオバチルス サーモグルコシダシウス(G . thermoglucosidasius)から単離されたゲノムDNAから読み取られた4480塩基対からなるSpo0Aおよび周辺遺伝子の構成を模式的に説明する。
【図9】図9は、Spo0A遺伝子を分断する2つの取り組みの概要を説明する。
【図10】図10は、元来のSpo0A遺伝子と比較した、Spo0Aノックアウト物の予想されるPCR産物のサイズを説明する。
【図11】図11は、エタノール蒸気が培養液から分離された場合(脱気)およびエタノール蒸気が培養液から分離されない場合における、8w/v%セルビオースおよび2%酵母抽出物を含む培地中のTM242の発酵特性の変化を示すグラフである。
【図12a】図12aは、8w/v%セルビオースおよび2w/v%酵母抽出物を含む培地中のTM242の発酵特性を示すグラフである。
【図12b】図12bは、同じ培地におけるTM444の発酵特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、胞子形成を妨げる好熱性微生物の改変に関する。
【0026】
本発明は、胞子形成の阻害がエタノール耐性の増加に関与し、バッチ発酵プロセスにおいて微生物により産生されるエタノールのさらなる高収率化を達成することができるという驚くべき知見に基づく。非芽胞形成微生物はまた、胞子形成微生物よりも操作および制御が容易であるため、プロセス上の利点を有する。
【0027】
さらに、代謝増加に起因して、胞子形成が妨げられるよりも速い速度で発酵が完了へと進行することが明らかになっている。
【0028】
微生物を改変して天然型Spo0A遺伝子を不活化することによって、胞子形成を妨げることができ、好ましくは、Spo0A遺伝子の少なくとも一部を欠失させるか、または、標的となる遺伝子の分断によって胞子形成を妨げることができる。好ましくは、改変の結果として、微生物は、胞子形成が全体的に欠損している。
【0029】
Spo0A遺伝子(配列番号1)のコード配列を図1に示す。Spo0A遺伝子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)を図2に示す。このコード配列を用いて、当業者は、標的であるspo0Aに対して、異なる機構を経てspo0A遺伝子の不活化を達成することが可能である。spo0A遺伝子が、遺伝子配列またはその一部の欠失により不活化される場合、好ましくはC末端領域の欠失であることが好ましい。
【0030】
遺伝子を不活化する方法は、本明細書に開示されているように、遺伝子配列の知識に基づき、当業者に明らかであろう。
【0031】
遺伝子配列は欠失されていてもよいし、または、付加的なDNAを挿入して遺伝子の発現を妨害することにより不活化されていてもよい。
【0032】
標的となる遺伝子を破壊させる方法は当該技術分野ではよく知られており、例えば、染色体上の標的遺伝子に温度感受性プラスミドを融合することを含む。プラスミドの融合は、標的遺伝子全体を欠失させてもよく、または、非機能的な遺伝子の一部を完全な遺伝子と置換させてもよい。このことは、関心がある前記遺伝子を含む配列を単離すること、前記遺伝子の一部を切り取ること、残余の断片を増幅すること、これらの断片を温度感受性プラスミドに複製すること、および、次いで標的微生物を前記プラスミドで形質転換することによって達成することができる。本発明は、spo0A遺伝子を不活化する特定の方法に限定されないが、プラスミドpTMO31を用いた適切な技術の詳細な説明が「実施例」の欄に提供されている。
【0033】
微生物はいずれの好熱性微生物であってもよいが、微生物はバチルス(Bacillus)種であることが好ましい。特に、微生物はゲオバチルス(Geobacillus)種の野生型微生物(特に、ゲオバチルス サーモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius))であることが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、改変のために選ばれる微生物はいわゆる「野生型」である。すなわち、「野生型」は、本明細書に記載された変異に加えて、実験室で産生されるいずれの変異をも含まない。微生物は、好熱性細菌を含むことが期待される環境的サンプルから単離されてもよい。単離された野生型微生物は、胞子形成する能力を有しているだろう。さらに、単離された野生型微生物は、ピルビン酸からエタノールを産生する能力を有しているだろうが、改変されていない、乳酸が主要な発酵産生物である可能性が高い。単離物は、好熱性温度にて六炭糖および/または五炭糖ならびにそのオリゴマー存在下で生育する能力について選択される。
【0035】
本発明の微生物は、発酵プロセスで使用可能な所定の望ましい特性を有することが好ましい。微生物は制限システムを有さないのが好ましく、これにより、インビボ(in vivo)でのメチル化の必要性をなくすことができる。加えて、微生物は、3w/v%以上のエタノール(好ましくは5−10w/v%のエタノール、より好ましくは20w/v%以下のエタノール)で安定であるべきである。微生物は、セルロース、セルビオース、ヘミセルロース、澱粉およびキシランを含むC3糖、C5糖、およびC6糖(またはこれらのオリゴマー)を基質として利用する能力を有しているべきである。微生物は高頻度で形質転換可能であることが好ましい。さらに、微生物は、毎時0.3以上の希釈率を支持する、継続的な培地中における生育率を有するべきである。
【0036】
微生物は好熱性細菌であることができ、40℃−85℃の温度範囲で生育するものであることができる。好ましくは、微生物は50℃−70℃の温度範囲内で生育するものであることができる。加えて、微生物は、pH8以下の条件(特にpH4.5−pH6.9)で生育することが望ましい。
【0037】
本発明の好ましい微生物は、本明細書にてTM443およびTM444として同定され、それぞれNCIMB寄託番号41591および41588としてNCIMBリミテッド(NCIMB limited, Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA)に寄託されている。
【0038】
本発明の好熱性微生物はさらに、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH)の発現を妨害するように改変されていてもよい。
【0039】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化は、ピルビン酸からの乳酸への分解を妨げるのに役立ち、これにより、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼを用いた、ピルビン酸からエタノールへの分解を(適切な条件下で)促進する。乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、該遺伝子内の欠失または該遺伝子の欠失により分断されていることが好ましい。
【0040】
乳酸デヒドロゲナーゼに対する核酸配列は今では知られている。この配列を用いて、当業者は乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を標的にして、異なる機構を経て該乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化を達成することができる。トランスポゾンの挿入によって、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化が可能である。しかしながら、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子配列またはその遺伝子配列の一部の欠失によって、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が不活化されるのが好ましい。トランスポゾンの不活化が用いられる場合にしばしば生じる、該遺伝子配列の再活性化の困難さを避けるため、欠失が好ましい。好ましい実施形態では、プラスミドと微生物染色体との間で自然な相同組み換えまたは融合を達成する温度感受性プラスミドの融合によって乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が不活化される。好ましい実施形態では、温度感受性プラスミドは、図3に示されるpTMO14(配列番号4)である。抗菌剤への耐性に基づいて染色体成分を選択することができる。乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子への融合を、単一の交差組み換え事象または二重(またはそれ以上)の交差組み換え事象によって生じさせてもよい。
【0041】
微生物はまた、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(PDH)を上方制御するように改変されていてもよい。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上方制御は、ピルビン酸のアセチルCoAへの転換を促進し、妥当な条件下で、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて、アセトアルデヒドおよび最終的にはエタノールを産生するのに使用可能である。PDHの上方制御のさらなる利点は、グルコース取り込みおよび解糖への阻害効果を有するピルビン酸のレベルを低下させる点である。これにより、エタノールの産生がさらに促進される。PDHは、大きな酵素複合体であり、3つのユニット−E1:ピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC1.2.4.1,EC4.1.1.1ではない)、E2:ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ、およびE3:ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼである。この複合体は、NAD、FAD、補酵素Aリポ酸、およびチアミンピロホスフェート(TPP)を含むいくつかの共要素を要求する。E1ユニットはαサブユニットおよびβサブユニットの異種二量体であるため、この複合体に対する4つの遺伝子コードはしばしば、pdhA、pdhB、pdhC、およびpdhD(それぞれE1α、E1、E2βおよびE3)として記載される。PDC(EC4.1.1.1)がTPPを要求するのと同様に、PDHのE1ユニットはTPPを要求し、類似の脱カルボキシル化反応を触媒するが、補酵素Aおよびリポ酸の存在下で−他の酵素ユニットにて実行される−生成物は、アセトアルデヒドよりもむしろアセチルCoAである。しかしながら、PDHのE1ユニットがPDHの他のユニットと複合体を形成しない場合、E1ユニットのPDCの活性が測定される(Lessard & Perham; The Journal of Biological Chemistry; 1994, 269;14, 10378-10383; Tomar et al; Applied Microbiology and Biotechnology; 2003, 62, 76-82; Frank et al; Science; 2004, 306; Oct 29, 872-876, supplementary data)。したがって、アセトアルデヒドがアセチルCoAよりも多く産生されるように、EC1.2.4.1のPDC活性がPDHの上方制御によって高められてもよい。また、LDHが不活化された株で観察されたピルビン酸障害を除去し、副生成物として酢酸(acetate)および蟻酸(formate)がより少なく産生されるように、高いPDH活性が求められる。
【0042】
これを達成するために、PDH遺伝子およびその周辺配列は、標準の「ゲノムウォーキング(genome walking)技術を用いて単離された。約8.8k塩基のDNAが単離されかつ配列が決定されて、図4および表1に示される下記の遺伝子を含むことが発見された。
【0043】
【表1】
【0044】
仮説プロモーター領域が図4(矢印)に示されている−pdhAの起点から上流にあるもの、およびpdhBの前方にある潜在的な第2プロモーターである。PDHクラスターにおける第2プロモーターの前述の例は、バチルス サブチリスに対して報告されているが(Gao et al; Journal of Bacteriology, 2002, 184:10, 2780-2788)、記載されている大部分のPDH遺伝子クラスターは、該クラスターの上流にあるただ1つのプロモーターを有する(Neveling et al; Biochimica Acta; 1998 1385. 367-372)。上方制御は、当該技術分野で知られている技術を用いて実行可能である。特に、適切なプロモーター配列またはエンハンサー配列をPDH複合体の上流に導入することによって、上方制御を行うことができる。
【0045】
この酵素複合体は、好気性条件および嫌気性条件の両方において機能することが知られているが(Carlsson et al; Infection and Immunity; 1985, 49(3):674-678)、一般には、ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)その嫌気性同等物とともに、好気性酵素であると考えられている(Ch 15; Principles of Biochemistry; Lehninger, Nelson & Cox; 2nd Ed, Worth Publishers, New York, 1993, p447)。両方の酵素は、解糖にて形成されたピルビン酸をアセチルCoAに変換し、TCA回路に栄養を供給するが、TCA回路は好気性条件下でのみ完全に機能する。しかしながら、嫌気性条件を用いることが望ましいため、本発明における使用では、嫌気性条件で機能するプロモーターが好ましい。このように、嫌気性条件下で働くと考えられている、酵素に対するプロモーター、一例として、国際特許出願番号PCT/GB2007/03699(この参照によって本明細書に包含される)に記載されているように、LDHプロモーター(ゲオバチルス ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)NCA1503由来のP_ldh)、PFLプロモーター(バチルス セレウスATCC14579およびゲオバチルス サーモグルコシダシウスNCIMB11955由来のP_pfl)、フェレドキシンプロモーター(ゲオバチルス ステアロサーモフィルスDSM13240由来のP_ferrA)を用いることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、さらなる改変が導入されてPDCの活動が高められ、これによりピルビン酸のアセトアルデヒドへの転換が促進される。このことは、E2(EC2.3.1.12)が不活化されることにより実行可能である。不活化は、LDHの不活化と類似する方法で実行可能であるが、分断(disruption)のターゲットとしてE2遺伝子が用いられる。
【0047】
さらなる実施形態では、本発明の微生物は、ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化する改変を含み、これにより、ピルビン酸のアセチルCoAおよび蟻酸への転換が阻害/低減される。ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の「嫌気性同等物(counterpart)」であり、ピルビン酸をアセチルCoAおよび蟻酸(formate)に転換する(図6参照)。アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AcHD)を介してアセチルCoAをエタノールへと転換することが可能であるが、蟻酸は、エタノール産生有機体の生育を阻害する可能性を有する望ましくない副生成物である。
【0048】
PFLは、エタノール産生に対して代謝フラックスを促進するために、ノックアウトの標的として選択され、エタノール合成の残留経路の酸化還元バランスを改善する。この研究の付加的な利点は、蟻酸産生の除去である。トランスポゾン挿入を介してPFLの活性を不活化することができ、遺伝子欠失または部分的な遺伝子欠失は、変更されたフェノタイプの継続のために抗生物質の選択に依存しない突然変異体を生じさせる。しかしながら、遺伝子配列または遺伝子配列の一部の欠失によって、ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化するのが好ましい。トランスポゾンの不活化が用いられる場合にしばしば生じる遺伝子配列の再活性化の困難性が避けられるため、欠失が好ましい。本実施形態では、嫌気性条件下でのエタノール産生が増加するように、微生物が、乳酸デヒドロゲナーゼの不活化およびピルビン酸デヒドロゲナーゼの上方制御の両方を含むのが好ましい。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、微生物はまた、上方制御されたピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む。これらの遺伝子の発現は、エタノールが主要な発酵産生物となるように代謝の方向を変える酵素の産生をもたらす。当業者に理解され得るように、PDC遺伝子がEC4.1.1.1である場合、この遺伝子は異種であり、この遺伝子を発現カセットに挿入することができる。PDC遺伝子がEC1.2.4.1である場合、この遺伝子は上方制御された相同遺伝子である可能性がある。ADH遺伝子は異種または相同であってもよい。天然型遺伝子が使用される場合、該天然型遺伝子は当該分野で知られている方法によって上方制御されてもよい。好ましくは、PDCおよびADHは微生物内で発現される。ザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)を含むザイモモナス(Zymomonas)種を含む、嫌気性発酵を通常行う微生物から前記遺伝子を得てもよい。
【0050】
微生物への遺伝子の調製および組み込み方法は知られており、例えば、Ingram et al, Biotech & BioEng, 198; 58 (2 and 3): 204- 214および米国特許第5916787号に掲載されており、その内容は本参照によって本明細書に組み込まれる。当業者によって理解され得るように、遺伝子をプラスミドに導入してもよく、または染色体に遺伝子を統合してもよい。
【0051】
本発明の好熱性微生物はさらに、野生型と比較してアミラーゼ遺伝子の発現が増加するように改変されていてもよい。このような改変は、国際公開番号2009/022158号に詳細に記述されており、その内容は本参照によって本明細書に組み込まれる。この改変により、微生物は、澱粉を、ピルビン酸の形成およびその後のエタノールの形成のための解糖基質としても利用可能なグルコースモノマー単位に加水分解することができる。したがって、この改変により、安価、豊富でかつ精製されていない植物材料からのエタノールの産生を増加させることができる。
【0052】
アミラーゼの発現および酵素活性を増加させる方法は、遺伝子の転写を制御する強い上流プロモーターの使用、天然型アミラーゼ遺伝子よりも高い頻度で発現される付加的なアミラーゼ遺伝子の組み込み、または、より活性が高いアミラーゼ遺伝子の発現を含む。本明細書において「強いプロモーター」という用語は、細胞内の可溶性タンパク質の0.5%よりも高いレベルにて、相当するタンパク質を発現するプロモーターをいう。
【0053】
好ましい実施形態では、異種アミラーゼ遺伝子は、α−アミラーゼ(α−1,4−グルカン−4−グルカノハイドロラーゼ,EC3.2.1.1)をコードする。前記アミラーゼ遺伝子はゲオバチルス種由来、特に、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来であることが好ましい。
【0054】
α−アミラーゼ遺伝子のコード配列は解明されており、遺伝子の単離および増幅を行うことができる技術は当該分野でよく知られている。本発明の微生物に、野生型と比較してアミラーゼの発現を増加させるために、アミラーゼ遺伝子は、好熱性微生物によるエタノール産生を好む低通気条件または嫌気性条件下で作動する強いプロモーターの制御下におくことが好ましい。プロモーターは好ましくはldhプロモーターであり、自己移植であってもよいが、異種であることが好ましく、アミラーゼ遺伝子と同種由来であることが最も好ましい。適切なプロモーターの例には、限定されないが、G.ステアロサーモフィルスNCA1503由来のP_Jdh、G.ステアロサーモフィルスDSM13240由来のP_ferrA、およびバチルス セレウスATCC14579由来のP_pflが含まれる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、一連の異なる強いプロモーターは、発現をさらに高めるために、アミラーゼ遺伝子の上流に配置される。適切な強いプロモーターの例には、限定されないが、グリセルアルデヒド三リン酸プロモーター(P_GAPDH)およびG.ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)NCA1503由来のアミラーゼプロモーターが含まれる。
【0056】
P_ldhの核酸配列も知られており、アミラーゼ遺伝子の上流にプロモーター配列を複製および集合させる技術は当業者に知られている。
【0057】
多数の制限部位を含む、適切なプラスミドまたは発現ベクターに、プロモーター/アミラーゼ配列を複製することができる。pGEM(登録商標)−Tイージーベクター(図6)等の商業的に入手可能な多くの適切な発現ベクターが存在する。P_ldh/アミラーゼ構造体を特定の断片として切り取るのに制限酵素を用いることができ、当該構造体は、ピルビン酸蟻酸リアーゼノックアウトプラスミドを使用することができるpTMO31(図7、配列番号3)等の温度感受性プラスミドにおいて、相当する制限部位に融合することができる。アミラーゼ遺伝子/ldhプロモーターを含むプラスミド構造体は次いで、引き続くゲノムDNAとの相同組み換えを用いて、本発明の微生物にエレクトロポレーションされることができる。アンピシリンまたはカナマイシン等の抗生物質に対する耐性に基づいて染色体成分を選択することができる。アミラーゼ活性はまた、例えばプレートアッセイにおいて澱粉がない区域として可視化させることができる。培地は好ましくは、1w/v%以上の澱粉であり、好ましくは10w/v%以上の澱粉であり、最も好ましくは20w/v%以上の澱粉である。澱粉は可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい(例えば粒澱粉)。
【0058】
以下の実施例において、添付の図面を参照して本発明の実施形態をこれから説明するが、本発明は実施例によって例示されるものであり、本発明は実施例によって限定されない。
【実施例】
【0059】
2つの異なるSpo0Aノックアウト構造体は、図8に示されるように、転写に関してアウトオブフレームspo0A分断に影響を受ける可能性がある、標的であるSpo0Aに隣接する他の胞子形成遺伝子を考慮して開発された。
【0060】
したがって、図9に概要が示されるように、アウトオブフレーム(out-of-frame)ノックアウトカセットおよびインフレーム(in-frame)ノックアウトカセットが産生された。アウトオブフレームカセットは、spo0A遺伝子の429塩基対領域を除去し、除去された当該領域を改変Notl制限部位と置き換えることにより生成され、spo0A欠失を含む断片のPCR増幅のためのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに対して、インフレームカセットは、自然発生する150塩基対のMscl−Mucl断片を除去することにより構築された。
【0061】
残存する断片は、pUC19に挿入されるEcoRI/SnaBI pUB110断片由来の5.1k塩基のプラスミドであるpTMO31に複製された。pTMO31のプラスミドマップが図3に示されており、pTMO31の核酸配列は配列番号7に相当する。ヌクレオチド1−239、2634−2791および2848−5082はpUC19由来であり、ヌクレオチド240−2633はpUB110由来であり、残留ヌクレオチド(2792−2848)は多重クローニング部位(MCS)に相当する。
【0062】
得られたプラスミドは次に、以下に設定されるように、他の改変を組み込んだゲオバチルス微生物を形質転換するために用いられた。後に詳述するように、形質転換の方法、初期統合(primary integration)、および二重交差変異体の選択を介した安定化が、様々な株バックグラウンド(背景)に採用された。
【0063】
【0064】
[結果]
(TM242でのSpo0A変異体の発生)
全部で20個の推定初期要素(4個のインフレームおよび16個のアウトオブフレーム)のTM242(NCIMB受託番号41589)を、2TY培地にて60℃で2周期生育させて継代培養させた。これらの各培地からの細胞をTGP培地に配置し、次いで、最終濃度12.5μg/mlのカナマイシンを含むTGP上で複製した。分裂したspo0A遺伝子を用いた推定二重交雑変異体を示す全部で13個(5個のインフレームおよび8個のアウトオブフレーム)のカナマイシン感受性株を同定した。
【0065】
以下の処方にしたがって作製されたDifco胞子形成培地(DSM)が、変異体の胞子形成能力を実証するために用いられた。生長細胞を殺す処理を行う前および後に試験が行われた。
【0066】
【0067】
ddH2Oを用いて体積が1リットルに調整され、pHは7.6に調整された。次いで、溶液は加圧滅菌処理され、さらに50℃に放冷される。下記殺菌溶液(および抗生物質(必要に応じて))を使用前に加えた。
【0068】
【0069】
TM242に対する希釈シリーズおよびそのアウトオブフレームのSpo0A陰性子孫の一つであるTM443を、両株を90℃で30分間加熱処理する前後にTGPに配置した。加熱処理前では、TM242およびTM443は、各希釈物において同程度の生育を示した。しかしながら、加熱処理後では明確な差が生じた。各希釈物ではTM242が依然生育を示すのに対して、加熱処理前より少ないにも関わらず、希釈なしの(neat)培地パッチにおいてでさえも、TM443のプレートでは生育が確認されなかった。このことは、TM242は胞子形成が可能であるが、TM443は胞子形成できないことを示唆している。今までこれらの株を胞子形成させるためにあらゆることを行ってきたが、これらの株は胞子形成する能力がないことを示唆している。
【0070】
加えて、ゲノムDNAがTM242二重交差変異体から単離され、図10に示されるように、spo0A領域の側面に位置するプライマーO/Spo0A1bFおよびO/Spo0A2Rとともに、当該ゲノムDNAがPCR反応においてテンプレートとして使用された。PCR産物が各テンプレートに対して生成され、特定の制限酵素消化によって分析された。これらの制限消化によって生成されたDNA断片は、spo0A遺伝子のアウトオブフレーム変異体を示す株のうちの2つと一致し、1つの株はインフレーム欠失を示す。サザンハイブリダイゼーション分析によってこれらの結果が確定された。これにより、a)標的であるspo0A遺伝子がノックアウトされ、およびb)このことがこれらの株における胞子形成の消失をもたらしているということを結論付けることができる。
【0071】
(Spo0A陰性株の発酵特性)
より低い糖濃度でのSpo0A陰性株の改善された発酵特性は、下記の処方にしたがって作製された尿素培地(USM)を用いて実証された。
【0072】
【0073】
上記の成分は脱イオン水に添加され、下記のフィルター殺菌済試薬が添加された。
【0074】
【0075】
表2Aおよび表2Bに示されるように、制御された発酵条件(1Lバッチ、3w/v%のグルコースを含むUSM、1w/v%の酵母抽出物、pH6.8、60℃、通気管理:OD>5.0まで1L/分および600rpm、続いて0.2L/分および300rpm)において、アウトオブフレーム変異体TM444は、TM242よりも速く糖を消費することができ、インフレーム変異体TM448およびTM450は能力が劣るようである。
【0076】
【表2A】
【0077】
【表2B】
【0078】
表2Bに示されるように、TM443の通気後のスイッチのエタノール収率は、親株であるTM242のエタノール収率と同等であるのに対して、TM444に関しては若干改善された。しかしながら、より重要なことは、表2Aに示されるように、より低い糖濃度(3w/v%グルコース)において、TM443およびTM444は、TM242によりもかなり速く糖消費を完了する。このことは、商業的な発酵プロセスにおいて優位な利点である。これらの発酵において、TM444およびTM443が3%(w/v)の糖濃度でより迅速に糖を利用できることは特筆に値する。このことは、より多くの発酵バッチを繰り返すことができ、エタノールの総産生が大きく増加する点で有用である。
【0079】
TM242と比較してTM444のエタノール耐性が高められたことが、図11に説明されている。発酵中に産生されるエタノールが気相へと分離されて発酵液から除去される場合にのみ、TM242による8w/v%のセルビオースの発酵が完了へと進行しうることが明らかになった。図11に示されるように、エタノール蒸気が発酵中に発酵槽から除去された(すなわち「脱気」)場合、TM242は、発酵の終了までにすべてのセルビオースを利用することができ、液からエタノール蒸気の除去を行わないで発酵した場合と比較して、産生されたエタノールの最終的な総濃度が増加した。興味深いことに、TM444によって十分に発酵された同じ発酵培地については、エタノール蒸気を除去する必要がなかった。これは、TM444が改善されたエタノール耐性を発揮するためである。
【0080】
TM444の改善された発酵特性が図12aおよび図12bにさらに示されており、図12aおよび図12bは、8w/v%のセルビオースおよび2w/v%の酵母抽出物を含む培地におけるTM242およびTM244それぞれの発酵曲線を示す。2つのグラフを比較することにより、高い糖濃度では、TM444は約10時間で糖消費を完了するのに対して、TM242が用いられた場合には、いくらかの糖が18時間後(すなわち発酵完了時)に未だ残存していたことを確認することができる。さらに、図12aに示されるTM242に関するエタノールのピークは、図12bに示されるTM444のエタノールのピークよりもかなり低かった(TM444が729mMであるのに比べて、TM242では527mM)。
【0081】
これにより、図11、図12aおよび図12bに提示されたデータから、高い糖濃度において、本発明の胞子形成欠損変異株は親株と比較して、改善されたエタノール耐性、さらに高い糖消費率、およびさらに高いエタノール総収率を示すと結論付けることができる。
【0082】
[TM333におけるSpo0A変異体の生成]
さらなる研究では、Spo0A遺伝子のTM333の推定初期要素は、抗生物質を用いずに2TY液にて2連続周期で継代培養された。継代培養の最終周期からの細胞を連続的に希釈して、TGP培地で生育させた。潜在的に二重交雑を示すカナマイシン感受性コロニーがレプリカ平板によって同定された。PCR分析と胞子形成試験との組み合わせを経て、TM333のアウトオブフレーム胞子形成欠損誘導体であるTM486が、エタノール産生に関して有用な株として同定された。TM486株はNCIMBリミテッド(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA)に寄託されており、その受託番号はNCIMB41587である。
【0083】
この株は、親株であるTM333に存在するamyS遺伝子を含み、より高いエタノール耐性、迅速なフィードストック消費、および、より高いアミラーゼ活性に起因する澱粉ベースのフィードストックを効率的に代謝する能力とともに、spo0A変異に関連する、より高いエタノール産生という複合的な利点を提供する。
【0084】
本明細書において言及されたすべての刊行物の内容は、本参照によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノール産生に適する微生物の生産に関する。特に、本発明は、胞子形成を妨げる微生物の改変に関する。
【背景技術】
【0002】
胞子形成は、胞子または内生胞子として知られている、成長期の細胞の休眠期細胞型への転換に関与する多段階の発生プロセスである。胞子は、好ましくない条件下での広範な時間にわたる分散および生存に適しており、数々の植物、藻、および細菌(例えばバチルス種)の生活環の一部を形成する。
【0003】
胞子形成への開始に対する主要な調節因子は、DNA結合タンパク質であるSpo0A(ステージ0胞子形成タンパク質A)であり、転写因子の応答調節因子ファミリーの一員である。5つのヒスチジン自己リン酸化酵素(autokinase)(KinA,KinB,KinC,KinDおよびKinE)をコードする遺伝子および2つの応答タンパク質(Spo0BおよびSpo0F)をコードする遺伝子を含む、多数の他の遺伝子はまた、胞子形成の開始の制御に関与している(非特許文献1)。Spo0Aの活動は、環境シグナルを認識しかつ統合して胞子形成を開始する、多要素リン酸リレーによって支配されている(非特許文献2)。調節N末端ドメインのリン酸化において、Spo0A−Pは、胞子形成に関与する遺伝子を活性化する「0Aボックス」として知られているDNA配列要素と結合する。N末端がリン酸化されるまで不活性であるSpo0AのC末端ドメインの欠失は、胞子形成に否定的な表現型を示す(非特許文献3)。
【0004】
Spo0Aはまた、直接的または間接的に、バチルス サブチリス(B. subtilis)における500を超える遺伝子の発現の活性化または抑制に影響を及ぼしており、これにより、制御下で調節遺伝子を介して遺伝子転写の全体的なパターンを間接的に媒介する(非特許文献1)。
【0005】
胞子形成は、異化代謝産物抑制にさらされやすいため、グルコースまたは容易に代謝される他の炭素源の存在は、野生型細胞による胞子形成を阻害する。特に、グルコースは、Spo0AおよびSpo0Fの転写を抑制することが知られている(非特許文献4)。
【0006】
商業的な発酵プロセスでは、2つの主要な理由により、胞子は望ましくない:
1.胞子形成は有機体による活性代謝を休止させ、その結果、所望の代謝産物の形成が減少または停止する。
2.胞子形成している微生物は、取扱いおよび封じ込めの制御がより難しく、これにより、健康および安全を含む環境的な理由で商業的なプロセスの微生物の生存を避け、かつ、商業的な株の制御されていない放出をも妨げることが望ましい。
【0007】
細菌が適切な基質を代謝する一般的なプロセスは、解糖である。解糖は、ATP生成に伴い、グルコースをピルビン酸(pyruvate)に変換する一連の反応である。代謝エネルギーの生成におけるピルビン酸の末路は、微生物および環境条件に依存して多様である。ピルビン酸の4つの主要な反応を図5に示す。
【0008】
第一に、好気性条件下では、多くの微生物は、クエン酸回路を用いてエネルギーを生成し、ピルビン酸のアセチル補酵素Aへの転換は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)によって触媒されるだろう。
【0009】
第二に、嫌気性条件下では、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)によって触媒されることにより、所定のエタノール産生有機体が、ピルビン酸をアセトアルデヒドへと脱カルボキシル化することにより、アルコール性発酵が実行され、引き続くNaDHによるアセトアルデヒドのエタノールへの還元は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって触媒される。
【0010】
第三の反応はまた、嫌気性条件で生じる、ピルビン酸のアセチルCoAへの転換であり、ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)によって触媒される。続いて、酵素であるアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AcDH)によって、アセチルCoAがアセトアルデヒドへと転換され、ADHによって触媒されるアセトアルデヒドの還元によって、エタノールが産生される。
【0011】
第四のプロセスは、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)による触媒を経て起こる、ピルビン酸の乳酸(lactate)への転換である。
【0012】
嫌気性発酵を生来行う微生物を用いて、または、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子およびアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を組み込んだ組み換え微生物の使用を介して、エタノール産生のために微生物を使用することに多大な興味が集まっている。
【0013】
特許文献1は、エタノールの形成を促進するために、天然型LDHおよびPFL遺伝子を不活化する改変を含み、PDC遺伝子、PDH遺伝子およびADH遺伝子を上方制御する微生物を開示する。
【0014】
微生物からのエタノール産生について、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/038019号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Molle et al.; Mol. Microbiol.; 2003,50(5):1683-1701
【非特許文献2】Trach KA, et al; Mol. Microbiol.1993; 8(1):69-79
【非特許文献3】Rowe-Magnus DA, et al; J.Bacteriol.; 2000; 182(15):4352-4355
【非特許文献4】Myseliwiec,TH et al; J. Bacterial.; 1991; 173(6):1911-1919
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、芽胞形成(spore-forming)好熱性微生物におけるSpo0A遺伝子の阻害が、微生物のエタノール耐性を高め、かつ代謝をも増加させ、その結果、エタノール等の代謝最終産生物の産生率が増加するという驚くべき知見に基づく。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、好熱性微生物は、野生型と比較して胞子形成を減少させる改変を含み、第1の改変は天然型spo0A遺伝子を不活化する。
【0019】
前記微生物は、天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(および任意にピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子)の不活化を介して、エタノール産生の増加を行うためにさらに改変されていてもよい。さらに、改変は、天然型ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上方制御または活性ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の導入によって行われることができる。
【0020】
微生物は、アミラーゼ遺伝子の発現の増加によって、澱粉からのエタノール産生を増加させる改変をさらに含んでいてもよい。
【0021】
本発明の微生物は、野生型と比較して、エタノール産生の増加およびエタノール耐性の増加を示す。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、エタノールを産生する方法は、C3糖、C5糖、またはC6糖あるいはそのオリゴマーの存在下で適切な条件にて、上記の定義にしたがって微生物を培養する工程を含む。
【0023】
添付する図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、Spo0Aのヌクレオチド配列(配列番号1)である。
【図2】図2は、Spo0Aのアミノ酸配列(配列番号2)である。
【図3】図3は、プラスミドpTMO14(配列番号4)を説明する。
【図4】図4は、PDH複合体の仮説プロモーター領域および遺伝子を説明する。
【図5】図5は、ピルビン酸の4つの主要な反応を説明する。
【図6】図6は、pGEM(登録商標)−Tイージーベクターを説明する。
【図7】図7は、プラスミドpTMO31(配列番号3)を説明する。
【図8】ゲオバチルス サーモグルコシダシウス(G . thermoglucosidasius)から単離されたゲノムDNAから読み取られた4480塩基対からなるSpo0Aおよび周辺遺伝子の構成を模式的に説明する。
【図9】図9は、Spo0A遺伝子を分断する2つの取り組みの概要を説明する。
【図10】図10は、元来のSpo0A遺伝子と比較した、Spo0Aノックアウト物の予想されるPCR産物のサイズを説明する。
【図11】図11は、エタノール蒸気が培養液から分離された場合(脱気)およびエタノール蒸気が培養液から分離されない場合における、8w/v%セルビオースおよび2%酵母抽出物を含む培地中のTM242の発酵特性の変化を示すグラフである。
【図12a】図12aは、8w/v%セルビオースおよび2w/v%酵母抽出物を含む培地中のTM242の発酵特性を示すグラフである。
【図12b】図12bは、同じ培地におけるTM444の発酵特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、胞子形成を妨げる好熱性微生物の改変に関する。
【0026】
本発明は、胞子形成の阻害がエタノール耐性の増加に関与し、バッチ発酵プロセスにおいて微生物により産生されるエタノールのさらなる高収率化を達成することができるという驚くべき知見に基づく。非芽胞形成微生物はまた、胞子形成微生物よりも操作および制御が容易であるため、プロセス上の利点を有する。
【0027】
さらに、代謝増加に起因して、胞子形成が妨げられるよりも速い速度で発酵が完了へと進行することが明らかになっている。
【0028】
微生物を改変して天然型Spo0A遺伝子を不活化することによって、胞子形成を妨げることができ、好ましくは、Spo0A遺伝子の少なくとも一部を欠失させるか、または、標的となる遺伝子の分断によって胞子形成を妨げることができる。好ましくは、改変の結果として、微生物は、胞子形成が全体的に欠損している。
【0029】
Spo0A遺伝子(配列番号1)のコード配列を図1に示す。Spo0A遺伝子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)を図2に示す。このコード配列を用いて、当業者は、標的であるspo0Aに対して、異なる機構を経てspo0A遺伝子の不活化を達成することが可能である。spo0A遺伝子が、遺伝子配列またはその一部の欠失により不活化される場合、好ましくはC末端領域の欠失であることが好ましい。
【0030】
遺伝子を不活化する方法は、本明細書に開示されているように、遺伝子配列の知識に基づき、当業者に明らかであろう。
【0031】
遺伝子配列は欠失されていてもよいし、または、付加的なDNAを挿入して遺伝子の発現を妨害することにより不活化されていてもよい。
【0032】
標的となる遺伝子を破壊させる方法は当該技術分野ではよく知られており、例えば、染色体上の標的遺伝子に温度感受性プラスミドを融合することを含む。プラスミドの融合は、標的遺伝子全体を欠失させてもよく、または、非機能的な遺伝子の一部を完全な遺伝子と置換させてもよい。このことは、関心がある前記遺伝子を含む配列を単離すること、前記遺伝子の一部を切り取ること、残余の断片を増幅すること、これらの断片を温度感受性プラスミドに複製すること、および、次いで標的微生物を前記プラスミドで形質転換することによって達成することができる。本発明は、spo0A遺伝子を不活化する特定の方法に限定されないが、プラスミドpTMO31を用いた適切な技術の詳細な説明が「実施例」の欄に提供されている。
【0033】
微生物はいずれの好熱性微生物であってもよいが、微生物はバチルス(Bacillus)種であることが好ましい。特に、微生物はゲオバチルス(Geobacillus)種の野生型微生物(特に、ゲオバチルス サーモグルコシダシウス(Geobacillus thermoglucosidasius))であることが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、改変のために選ばれる微生物はいわゆる「野生型」である。すなわち、「野生型」は、本明細書に記載された変異に加えて、実験室で産生されるいずれの変異をも含まない。微生物は、好熱性細菌を含むことが期待される環境的サンプルから単離されてもよい。単離された野生型微生物は、胞子形成する能力を有しているだろう。さらに、単離された野生型微生物は、ピルビン酸からエタノールを産生する能力を有しているだろうが、改変されていない、乳酸が主要な発酵産生物である可能性が高い。単離物は、好熱性温度にて六炭糖および/または五炭糖ならびにそのオリゴマー存在下で生育する能力について選択される。
【0035】
本発明の微生物は、発酵プロセスで使用可能な所定の望ましい特性を有することが好ましい。微生物は制限システムを有さないのが好ましく、これにより、インビボ(in vivo)でのメチル化の必要性をなくすことができる。加えて、微生物は、3w/v%以上のエタノール(好ましくは5−10w/v%のエタノール、より好ましくは20w/v%以下のエタノール)で安定であるべきである。微生物は、セルロース、セルビオース、ヘミセルロース、澱粉およびキシランを含むC3糖、C5糖、およびC6糖(またはこれらのオリゴマー)を基質として利用する能力を有しているべきである。微生物は高頻度で形質転換可能であることが好ましい。さらに、微生物は、毎時0.3以上の希釈率を支持する、継続的な培地中における生育率を有するべきである。
【0036】
微生物は好熱性細菌であることができ、40℃−85℃の温度範囲で生育するものであることができる。好ましくは、微生物は50℃−70℃の温度範囲内で生育するものであることができる。加えて、微生物は、pH8以下の条件(特にpH4.5−pH6.9)で生育することが望ましい。
【0037】
本発明の好ましい微生物は、本明細書にてTM443およびTM444として同定され、それぞれNCIMB寄託番号41591および41588としてNCIMBリミテッド(NCIMB limited, Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA)に寄託されている。
【0038】
本発明の好熱性微生物はさらに、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH)の発現を妨害するように改変されていてもよい。
【0039】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化は、ピルビン酸からの乳酸への分解を妨げるのに役立ち、これにより、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼを用いた、ピルビン酸からエタノールへの分解を(適切な条件下で)促進する。乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、該遺伝子内の欠失または該遺伝子の欠失により分断されていることが好ましい。
【0040】
乳酸デヒドロゲナーゼに対する核酸配列は今では知られている。この配列を用いて、当業者は乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を標的にして、異なる機構を経て該乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化を達成することができる。トランスポゾンの挿入によって、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の不活化が可能である。しかしながら、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子配列またはその遺伝子配列の一部の欠失によって、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が不活化されるのが好ましい。トランスポゾンの不活化が用いられる場合にしばしば生じる、該遺伝子配列の再活性化の困難さを避けるため、欠失が好ましい。好ましい実施形態では、プラスミドと微生物染色体との間で自然な相同組み換えまたは融合を達成する温度感受性プラスミドの融合によって乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が不活化される。好ましい実施形態では、温度感受性プラスミドは、図3に示されるpTMO14(配列番号4)である。抗菌剤への耐性に基づいて染色体成分を選択することができる。乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子への融合を、単一の交差組み換え事象または二重(またはそれ以上)の交差組み換え事象によって生じさせてもよい。
【0041】
微生物はまた、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(PDH)を上方制御するように改変されていてもよい。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上方制御は、ピルビン酸のアセチルCoAへの転換を促進し、妥当な条件下で、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて、アセトアルデヒドおよび最終的にはエタノールを産生するのに使用可能である。PDHの上方制御のさらなる利点は、グルコース取り込みおよび解糖への阻害効果を有するピルビン酸のレベルを低下させる点である。これにより、エタノールの産生がさらに促進される。PDHは、大きな酵素複合体であり、3つのユニット−E1:ピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC1.2.4.1,EC4.1.1.1ではない)、E2:ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ、およびE3:ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼである。この複合体は、NAD、FAD、補酵素Aリポ酸、およびチアミンピロホスフェート(TPP)を含むいくつかの共要素を要求する。E1ユニットはαサブユニットおよびβサブユニットの異種二量体であるため、この複合体に対する4つの遺伝子コードはしばしば、pdhA、pdhB、pdhC、およびpdhD(それぞれE1α、E1、E2βおよびE3)として記載される。PDC(EC4.1.1.1)がTPPを要求するのと同様に、PDHのE1ユニットはTPPを要求し、類似の脱カルボキシル化反応を触媒するが、補酵素Aおよびリポ酸の存在下で−他の酵素ユニットにて実行される−生成物は、アセトアルデヒドよりもむしろアセチルCoAである。しかしながら、PDHのE1ユニットがPDHの他のユニットと複合体を形成しない場合、E1ユニットのPDCの活性が測定される(Lessard & Perham; The Journal of Biological Chemistry; 1994, 269;14, 10378-10383; Tomar et al; Applied Microbiology and Biotechnology; 2003, 62, 76-82; Frank et al; Science; 2004, 306; Oct 29, 872-876, supplementary data)。したがって、アセトアルデヒドがアセチルCoAよりも多く産生されるように、EC1.2.4.1のPDC活性がPDHの上方制御によって高められてもよい。また、LDHが不活化された株で観察されたピルビン酸障害を除去し、副生成物として酢酸(acetate)および蟻酸(formate)がより少なく産生されるように、高いPDH活性が求められる。
【0042】
これを達成するために、PDH遺伝子およびその周辺配列は、標準の「ゲノムウォーキング(genome walking)技術を用いて単離された。約8.8k塩基のDNAが単離されかつ配列が決定されて、図4および表1に示される下記の遺伝子を含むことが発見された。
【0043】
【表1】
【0044】
仮説プロモーター領域が図4(矢印)に示されている−pdhAの起点から上流にあるもの、およびpdhBの前方にある潜在的な第2プロモーターである。PDHクラスターにおける第2プロモーターの前述の例は、バチルス サブチリスに対して報告されているが(Gao et al; Journal of Bacteriology, 2002, 184:10, 2780-2788)、記載されている大部分のPDH遺伝子クラスターは、該クラスターの上流にあるただ1つのプロモーターを有する(Neveling et al; Biochimica Acta; 1998 1385. 367-372)。上方制御は、当該技術分野で知られている技術を用いて実行可能である。特に、適切なプロモーター配列またはエンハンサー配列をPDH複合体の上流に導入することによって、上方制御を行うことができる。
【0045】
この酵素複合体は、好気性条件および嫌気性条件の両方において機能することが知られているが(Carlsson et al; Infection and Immunity; 1985, 49(3):674-678)、一般には、ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)その嫌気性同等物とともに、好気性酵素であると考えられている(Ch 15; Principles of Biochemistry; Lehninger, Nelson & Cox; 2nd Ed, Worth Publishers, New York, 1993, p447)。両方の酵素は、解糖にて形成されたピルビン酸をアセチルCoAに変換し、TCA回路に栄養を供給するが、TCA回路は好気性条件下でのみ完全に機能する。しかしながら、嫌気性条件を用いることが望ましいため、本発明における使用では、嫌気性条件で機能するプロモーターが好ましい。このように、嫌気性条件下で働くと考えられている、酵素に対するプロモーター、一例として、国際特許出願番号PCT/GB2007/03699(この参照によって本明細書に包含される)に記載されているように、LDHプロモーター(ゲオバチルス ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)NCA1503由来のP_ldh)、PFLプロモーター(バチルス セレウスATCC14579およびゲオバチルス サーモグルコシダシウスNCIMB11955由来のP_pfl)、フェレドキシンプロモーター(ゲオバチルス ステアロサーモフィルスDSM13240由来のP_ferrA)を用いることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、さらなる改変が導入されてPDCの活動が高められ、これによりピルビン酸のアセトアルデヒドへの転換が促進される。このことは、E2(EC2.3.1.12)が不活化されることにより実行可能である。不活化は、LDHの不活化と類似する方法で実行可能であるが、分断(disruption)のターゲットとしてE2遺伝子が用いられる。
【0047】
さらなる実施形態では、本発明の微生物は、ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化する改変を含み、これにより、ピルビン酸のアセチルCoAおよび蟻酸への転換が阻害/低減される。ピルビン酸蟻酸リアーゼ(PFL)は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の「嫌気性同等物(counterpart)」であり、ピルビン酸をアセチルCoAおよび蟻酸(formate)に転換する(図6参照)。アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AcHD)を介してアセチルCoAをエタノールへと転換することが可能であるが、蟻酸は、エタノール産生有機体の生育を阻害する可能性を有する望ましくない副生成物である。
【0048】
PFLは、エタノール産生に対して代謝フラックスを促進するために、ノックアウトの標的として選択され、エタノール合成の残留経路の酸化還元バランスを改善する。この研究の付加的な利点は、蟻酸産生の除去である。トランスポゾン挿入を介してPFLの活性を不活化することができ、遺伝子欠失または部分的な遺伝子欠失は、変更されたフェノタイプの継続のために抗生物質の選択に依存しない突然変異体を生じさせる。しかしながら、遺伝子配列または遺伝子配列の一部の欠失によって、ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化するのが好ましい。トランスポゾンの不活化が用いられる場合にしばしば生じる遺伝子配列の再活性化の困難性が避けられるため、欠失が好ましい。本実施形態では、嫌気性条件下でのエタノール産生が増加するように、微生物が、乳酸デヒドロゲナーゼの不活化およびピルビン酸デヒドロゲナーゼの上方制御の両方を含むのが好ましい。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、微生物はまた、上方制御されたピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む。これらの遺伝子の発現は、エタノールが主要な発酵産生物となるように代謝の方向を変える酵素の産生をもたらす。当業者に理解され得るように、PDC遺伝子がEC4.1.1.1である場合、この遺伝子は異種であり、この遺伝子を発現カセットに挿入することができる。PDC遺伝子がEC1.2.4.1である場合、この遺伝子は上方制御された相同遺伝子である可能性がある。ADH遺伝子は異種または相同であってもよい。天然型遺伝子が使用される場合、該天然型遺伝子は当該分野で知られている方法によって上方制御されてもよい。好ましくは、PDCおよびADHは微生物内で発現される。ザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)を含むザイモモナス(Zymomonas)種を含む、嫌気性発酵を通常行う微生物から前記遺伝子を得てもよい。
【0050】
微生物への遺伝子の調製および組み込み方法は知られており、例えば、Ingram et al, Biotech & BioEng, 198; 58 (2 and 3): 204- 214および米国特許第5916787号に掲載されており、その内容は本参照によって本明細書に組み込まれる。当業者によって理解され得るように、遺伝子をプラスミドに導入してもよく、または染色体に遺伝子を統合してもよい。
【0051】
本発明の好熱性微生物はさらに、野生型と比較してアミラーゼ遺伝子の発現が増加するように改変されていてもよい。このような改変は、国際公開番号2009/022158号に詳細に記述されており、その内容は本参照によって本明細書に組み込まれる。この改変により、微生物は、澱粉を、ピルビン酸の形成およびその後のエタノールの形成のための解糖基質としても利用可能なグルコースモノマー単位に加水分解することができる。したがって、この改変により、安価、豊富でかつ精製されていない植物材料からのエタノールの産生を増加させることができる。
【0052】
アミラーゼの発現および酵素活性を増加させる方法は、遺伝子の転写を制御する強い上流プロモーターの使用、天然型アミラーゼ遺伝子よりも高い頻度で発現される付加的なアミラーゼ遺伝子の組み込み、または、より活性が高いアミラーゼ遺伝子の発現を含む。本明細書において「強いプロモーター」という用語は、細胞内の可溶性タンパク質の0.5%よりも高いレベルにて、相当するタンパク質を発現するプロモーターをいう。
【0053】
好ましい実施形態では、異種アミラーゼ遺伝子は、α−アミラーゼ(α−1,4−グルカン−4−グルカノハイドロラーゼ,EC3.2.1.1)をコードする。前記アミラーゼ遺伝子はゲオバチルス種由来、特に、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来であることが好ましい。
【0054】
α−アミラーゼ遺伝子のコード配列は解明されており、遺伝子の単離および増幅を行うことができる技術は当該分野でよく知られている。本発明の微生物に、野生型と比較してアミラーゼの発現を増加させるために、アミラーゼ遺伝子は、好熱性微生物によるエタノール産生を好む低通気条件または嫌気性条件下で作動する強いプロモーターの制御下におくことが好ましい。プロモーターは好ましくはldhプロモーターであり、自己移植であってもよいが、異種であることが好ましく、アミラーゼ遺伝子と同種由来であることが最も好ましい。適切なプロモーターの例には、限定されないが、G.ステアロサーモフィルスNCA1503由来のP_Jdh、G.ステアロサーモフィルスDSM13240由来のP_ferrA、およびバチルス セレウスATCC14579由来のP_pflが含まれる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、一連の異なる強いプロモーターは、発現をさらに高めるために、アミラーゼ遺伝子の上流に配置される。適切な強いプロモーターの例には、限定されないが、グリセルアルデヒド三リン酸プロモーター(P_GAPDH)およびG.ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)NCA1503由来のアミラーゼプロモーターが含まれる。
【0056】
P_ldhの核酸配列も知られており、アミラーゼ遺伝子の上流にプロモーター配列を複製および集合させる技術は当業者に知られている。
【0057】
多数の制限部位を含む、適切なプラスミドまたは発現ベクターに、プロモーター/アミラーゼ配列を複製することができる。pGEM(登録商標)−Tイージーベクター(図6)等の商業的に入手可能な多くの適切な発現ベクターが存在する。P_ldh/アミラーゼ構造体を特定の断片として切り取るのに制限酵素を用いることができ、当該構造体は、ピルビン酸蟻酸リアーゼノックアウトプラスミドを使用することができるpTMO31(図7、配列番号3)等の温度感受性プラスミドにおいて、相当する制限部位に融合することができる。アミラーゼ遺伝子/ldhプロモーターを含むプラスミド構造体は次いで、引き続くゲノムDNAとの相同組み換えを用いて、本発明の微生物にエレクトロポレーションされることができる。アンピシリンまたはカナマイシン等の抗生物質に対する耐性に基づいて染色体成分を選択することができる。アミラーゼ活性はまた、例えばプレートアッセイにおいて澱粉がない区域として可視化させることができる。培地は好ましくは、1w/v%以上の澱粉であり、好ましくは10w/v%以上の澱粉であり、最も好ましくは20w/v%以上の澱粉である。澱粉は可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい(例えば粒澱粉)。
【0058】
以下の実施例において、添付の図面を参照して本発明の実施形態をこれから説明するが、本発明は実施例によって例示されるものであり、本発明は実施例によって限定されない。
【実施例】
【0059】
2つの異なるSpo0Aノックアウト構造体は、図8に示されるように、転写に関してアウトオブフレームspo0A分断に影響を受ける可能性がある、標的であるSpo0Aに隣接する他の胞子形成遺伝子を考慮して開発された。
【0060】
したがって、図9に概要が示されるように、アウトオブフレーム(out-of-frame)ノックアウトカセットおよびインフレーム(in-frame)ノックアウトカセットが産生された。アウトオブフレームカセットは、spo0A遺伝子の429塩基対領域を除去し、除去された当該領域を改変Notl制限部位と置き換えることにより生成され、spo0A欠失を含む断片のPCR増幅のためのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに対して、インフレームカセットは、自然発生する150塩基対のMscl−Mucl断片を除去することにより構築された。
【0061】
残存する断片は、pUC19に挿入されるEcoRI/SnaBI pUB110断片由来の5.1k塩基のプラスミドであるpTMO31に複製された。pTMO31のプラスミドマップが図3に示されており、pTMO31の核酸配列は配列番号7に相当する。ヌクレオチド1−239、2634−2791および2848−5082はpUC19由来であり、ヌクレオチド240−2633はpUB110由来であり、残留ヌクレオチド(2792−2848)は多重クローニング部位(MCS)に相当する。
【0062】
得られたプラスミドは次に、以下に設定されるように、他の改変を組み込んだゲオバチルス微生物を形質転換するために用いられた。後に詳述するように、形質転換の方法、初期統合(primary integration)、および二重交差変異体の選択を介した安定化が、様々な株バックグラウンド(背景)に採用された。
【0063】
【0064】
[結果]
(TM242でのSpo0A変異体の発生)
全部で20個の推定初期要素(4個のインフレームおよび16個のアウトオブフレーム)のTM242(NCIMB受託番号41589)を、2TY培地にて60℃で2周期生育させて継代培養させた。これらの各培地からの細胞をTGP培地に配置し、次いで、最終濃度12.5μg/mlのカナマイシンを含むTGP上で複製した。分裂したspo0A遺伝子を用いた推定二重交雑変異体を示す全部で13個(5個のインフレームおよび8個のアウトオブフレーム)のカナマイシン感受性株を同定した。
【0065】
以下の処方にしたがって作製されたDifco胞子形成培地(DSM)が、変異体の胞子形成能力を実証するために用いられた。生長細胞を殺す処理を行う前および後に試験が行われた。
【0066】
【0067】
ddH2Oを用いて体積が1リットルに調整され、pHは7.6に調整された。次いで、溶液は加圧滅菌処理され、さらに50℃に放冷される。下記殺菌溶液(および抗生物質(必要に応じて))を使用前に加えた。
【0068】
【0069】
TM242に対する希釈シリーズおよびそのアウトオブフレームのSpo0A陰性子孫の一つであるTM443を、両株を90℃で30分間加熱処理する前後にTGPに配置した。加熱処理前では、TM242およびTM443は、各希釈物において同程度の生育を示した。しかしながら、加熱処理後では明確な差が生じた。各希釈物ではTM242が依然生育を示すのに対して、加熱処理前より少ないにも関わらず、希釈なしの(neat)培地パッチにおいてでさえも、TM443のプレートでは生育が確認されなかった。このことは、TM242は胞子形成が可能であるが、TM443は胞子形成できないことを示唆している。今までこれらの株を胞子形成させるためにあらゆることを行ってきたが、これらの株は胞子形成する能力がないことを示唆している。
【0070】
加えて、ゲノムDNAがTM242二重交差変異体から単離され、図10に示されるように、spo0A領域の側面に位置するプライマーO/Spo0A1bFおよびO/Spo0A2Rとともに、当該ゲノムDNAがPCR反応においてテンプレートとして使用された。PCR産物が各テンプレートに対して生成され、特定の制限酵素消化によって分析された。これらの制限消化によって生成されたDNA断片は、spo0A遺伝子のアウトオブフレーム変異体を示す株のうちの2つと一致し、1つの株はインフレーム欠失を示す。サザンハイブリダイゼーション分析によってこれらの結果が確定された。これにより、a)標的であるspo0A遺伝子がノックアウトされ、およびb)このことがこれらの株における胞子形成の消失をもたらしているということを結論付けることができる。
【0071】
(Spo0A陰性株の発酵特性)
より低い糖濃度でのSpo0A陰性株の改善された発酵特性は、下記の処方にしたがって作製された尿素培地(USM)を用いて実証された。
【0072】
【0073】
上記の成分は脱イオン水に添加され、下記のフィルター殺菌済試薬が添加された。
【0074】
【0075】
表2Aおよび表2Bに示されるように、制御された発酵条件(1Lバッチ、3w/v%のグルコースを含むUSM、1w/v%の酵母抽出物、pH6.8、60℃、通気管理:OD>5.0まで1L/分および600rpm、続いて0.2L/分および300rpm)において、アウトオブフレーム変異体TM444は、TM242よりも速く糖を消費することができ、インフレーム変異体TM448およびTM450は能力が劣るようである。
【0076】
【表2A】
【0077】
【表2B】
【0078】
表2Bに示されるように、TM443の通気後のスイッチのエタノール収率は、親株であるTM242のエタノール収率と同等であるのに対して、TM444に関しては若干改善された。しかしながら、より重要なことは、表2Aに示されるように、より低い糖濃度(3w/v%グルコース)において、TM443およびTM444は、TM242によりもかなり速く糖消費を完了する。このことは、商業的な発酵プロセスにおいて優位な利点である。これらの発酵において、TM444およびTM443が3%(w/v)の糖濃度でより迅速に糖を利用できることは特筆に値する。このことは、より多くの発酵バッチを繰り返すことができ、エタノールの総産生が大きく増加する点で有用である。
【0079】
TM242と比較してTM444のエタノール耐性が高められたことが、図11に説明されている。発酵中に産生されるエタノールが気相へと分離されて発酵液から除去される場合にのみ、TM242による8w/v%のセルビオースの発酵が完了へと進行しうることが明らかになった。図11に示されるように、エタノール蒸気が発酵中に発酵槽から除去された(すなわち「脱気」)場合、TM242は、発酵の終了までにすべてのセルビオースを利用することができ、液からエタノール蒸気の除去を行わないで発酵した場合と比較して、産生されたエタノールの最終的な総濃度が増加した。興味深いことに、TM444によって十分に発酵された同じ発酵培地については、エタノール蒸気を除去する必要がなかった。これは、TM444が改善されたエタノール耐性を発揮するためである。
【0080】
TM444の改善された発酵特性が図12aおよび図12bにさらに示されており、図12aおよび図12bは、8w/v%のセルビオースおよび2w/v%の酵母抽出物を含む培地におけるTM242およびTM244それぞれの発酵曲線を示す。2つのグラフを比較することにより、高い糖濃度では、TM444は約10時間で糖消費を完了するのに対して、TM242が用いられた場合には、いくらかの糖が18時間後(すなわち発酵完了時)に未だ残存していたことを確認することができる。さらに、図12aに示されるTM242に関するエタノールのピークは、図12bに示されるTM444のエタノールのピークよりもかなり低かった(TM444が729mMであるのに比べて、TM242では527mM)。
【0081】
これにより、図11、図12aおよび図12bに提示されたデータから、高い糖濃度において、本発明の胞子形成欠損変異株は親株と比較して、改善されたエタノール耐性、さらに高い糖消費率、およびさらに高いエタノール総収率を示すと結論付けることができる。
【0082】
[TM333におけるSpo0A変異体の生成]
さらなる研究では、Spo0A遺伝子のTM333の推定初期要素は、抗生物質を用いずに2TY液にて2連続周期で継代培養された。継代培養の最終周期からの細胞を連続的に希釈して、TGP培地で生育させた。潜在的に二重交雑を示すカナマイシン感受性コロニーがレプリカ平板によって同定された。PCR分析と胞子形成試験との組み合わせを経て、TM333のアウトオブフレーム胞子形成欠損誘導体であるTM486が、エタノール産生に関して有用な株として同定された。TM486株はNCIMBリミテッド(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen AB21 9YA)に寄託されており、その受託番号はNCIMB41587である。
【0083】
この株は、親株であるTM333に存在するamyS遺伝子を含み、より高いエタノール耐性、迅速なフィードストック消費、および、より高いアミラーゼ活性に起因する澱粉ベースのフィードストックを効率的に代謝する能力とともに、spo0A変異に関連する、より高いエタノール産生という複合的な利点を提供する。
【0084】
本明細書において言及されたすべての刊行物の内容は、本参照によって本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型と比較して胞子形成を減少させる改変を含む、好熱性微生物。
【請求項2】
前記改変は、天然型spo0A遺伝子を不活化する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記改変は、前記天然型spo0A遺伝子の少なくとも一部の欠失を含む、請求項2に記載の微生物。
【請求項4】
前記改変は、前記天然型spo0A遺伝子の欠失した部分を、制限部位をコードするDNAで置換することをさらに含む、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記制限部位はNotl制限部位である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
前記微生物はゲオバチルス種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物は、ゲオバチルス サーモグルコシダシウスである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項8】
天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を不活化する改変をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項9】
前記天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項8に記載の微生物。
【請求項10】
前記天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子中に融合要素を含まない、請求項8または9に記載の微生物。
【請求項11】
天然型ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化する改変をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項12】
前記天然型ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を上方制御する改変を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項14】
前記ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上流に遺伝子プロモーターが挿入されており、
前記遺伝子プロモーターは嫌気性条件で機能する、請求項13に記載の微生物。
【請求項15】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を高める改変をさらに含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項16】
前記改変は、ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ遺伝子(EC2.3.1.12)を不活化する、請求項15に記載の微生物。
【請求項17】
前記ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項15または16に記載の微生物。
【請求項18】
前記微生物は、異種ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項19】
前記微生物は、異種アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項20】
前記微生物は、3w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項21】
前記微生物は、10w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項22】
前記微生物は、20w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項23】
前記微生物は、高頻度で形質転換可能である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項24】
前記微生物は、40℃〜85℃(好ましくは50℃〜70℃)の温度で生育する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項25】
前記微生物は、TM443(受託番号41591)またはTM444(受託番号41588)として同定される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項26】
嫌気性条件で機能するプロモーターの制御下で異種アミラーゼ遺伝子を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項27】
前記プロモーターは、ldhプロモーターである、請求項26に記載の微生物。
【請求項28】
前記ldhプロモーターは、異種である、請求項27に記載の微生物。
【請求項29】
前記ldhプロモーターは、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項28に記載の微生物。
【請求項30】
前記アミラーゼ遺伝子は、一連の強力なプロモーターの制御下にある、請求項26に記載の微生物。
【請求項31】
前記強力なプロモーターは異種である、請求項30に記載の微生物。
【請求項32】
前記強力なプロモーターは、アミラーゼプロモーターを含む、請求項31に記載の微生物。
【請求項33】
前記プロモーターは、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項31または32に記載の微生物。
【請求項34】
前記アミラーゼ遺伝子は、ゲオバチルス種由来である、請求項26〜33のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項35】
前記アミラーゼ遺伝子は、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項26〜34のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項36】
前記アミラーゼ遺伝子は、αアミラーゼ(EC3.2.1.1)をコードする、請求項26〜35のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項37】
C3糖、C5糖またはC6糖あるいはそのオリゴマーの存在下で適切な条件にて、請求項1〜36のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程を含む、エタノールの産生方法。
【請求項38】
40℃〜70℃の温度で行われる、請求項37に記載のエタノールの産生方法。
【請求項39】
前記温度が52℃〜65℃である、請求項38に記載のエタノールの産生方法。
【請求項40】
前記微生物はpH4.0〜8.0にて培地中に保持される、請求項37〜39のいずれか1項に記載のエタノールの産生方法。
【請求項41】
1w/v%以上の澱粉を含む培地で、請求項26〜36のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程を含む、エタノールの産生方法。
【請求項42】
前記培地は、10w/v%以上の澱粉を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記培地は、20w/v%以上の澱粉を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項1】
野生型と比較して胞子形成を減少させる改変を含む、好熱性微生物。
【請求項2】
前記改変は、天然型spo0A遺伝子を不活化する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記改変は、前記天然型spo0A遺伝子の少なくとも一部の欠失を含む、請求項2に記載の微生物。
【請求項4】
前記改変は、前記天然型spo0A遺伝子の欠失した部分を、制限部位をコードするDNAで置換することをさらに含む、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記制限部位はNotl制限部位である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
前記微生物はゲオバチルス種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物は、ゲオバチルス サーモグルコシダシウスである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項8】
天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を不活化する改変をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項9】
前記天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項8に記載の微生物。
【請求項10】
前記天然型乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子中に融合要素を含まない、請求項8または9に記載の微生物。
【請求項11】
天然型ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子を不活化する改変をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項12】
前記天然型ピルビン酸蟻酸リアーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を上方制御する改変を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項14】
前記ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の上流に遺伝子プロモーターが挿入されており、
前記遺伝子プロモーターは嫌気性条件で機能する、請求項13に記載の微生物。
【請求項15】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を高める改変をさらに含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項16】
前記改変は、ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ遺伝子(EC2.3.1.12)を不活化する、請求項15に記載の微生物。
【請求項17】
前記ジヒドロリポアミドトランスアセチラーゼ遺伝子またはその一部が欠失している、請求項15または16に記載の微生物。
【請求項18】
前記微生物は、異種ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項19】
前記微生物は、異種アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項20】
前記微生物は、3w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項21】
前記微生物は、10w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項22】
前記微生物は、20w/v%以上のエタノールを含む培地で安定である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項23】
前記微生物は、高頻度で形質転換可能である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項24】
前記微生物は、40℃〜85℃(好ましくは50℃〜70℃)の温度で生育する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項25】
前記微生物は、TM443(受託番号41591)またはTM444(受託番号41588)として同定される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項26】
嫌気性条件で機能するプロモーターの制御下で異種アミラーゼ遺伝子を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項27】
前記プロモーターは、ldhプロモーターである、請求項26に記載の微生物。
【請求項28】
前記ldhプロモーターは、異種である、請求項27に記載の微生物。
【請求項29】
前記ldhプロモーターは、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項28に記載の微生物。
【請求項30】
前記アミラーゼ遺伝子は、一連の強力なプロモーターの制御下にある、請求項26に記載の微生物。
【請求項31】
前記強力なプロモーターは異種である、請求項30に記載の微生物。
【請求項32】
前記強力なプロモーターは、アミラーゼプロモーターを含む、請求項31に記載の微生物。
【請求項33】
前記プロモーターは、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項31または32に記載の微生物。
【請求項34】
前記アミラーゼ遺伝子は、ゲオバチルス種由来である、請求項26〜33のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項35】
前記アミラーゼ遺伝子は、ゲオバチルス ステアロサーモフィルス由来である、請求項26〜34のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項36】
前記アミラーゼ遺伝子は、αアミラーゼ(EC3.2.1.1)をコードする、請求項26〜35のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項37】
C3糖、C5糖またはC6糖あるいはそのオリゴマーの存在下で適切な条件にて、請求項1〜36のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程を含む、エタノールの産生方法。
【請求項38】
40℃〜70℃の温度で行われる、請求項37に記載のエタノールの産生方法。
【請求項39】
前記温度が52℃〜65℃である、請求項38に記載のエタノールの産生方法。
【請求項40】
前記微生物はpH4.0〜8.0にて培地中に保持される、請求項37〜39のいずれか1項に記載のエタノールの産生方法。
【請求項41】
1w/v%以上の澱粉を含む培地で、請求項26〜36のいずれか1項に記載の微生物を培養する工程を含む、エタノールの産生方法。
【請求項42】
前記培地は、10w/v%以上の澱粉を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記培地は、20w/v%以上の澱粉を含む、請求項42に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【公表番号】特表2012−507274(P2012−507274A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533836(P2011−533836)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051487
【国際公開番号】WO2010/052499
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507364137)ティーエムオー リニューアブルズ リミティド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051487
【国際公開番号】WO2010/052499
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507364137)ティーエムオー リニューアブルズ リミティド (7)
【Fターム(参考)】
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