説明

エチレンと2−ブテンのメタセシス及び/又は二重結合異性化用の触媒

オレフィン類の二重結合異性化方法を開示する。この方法は、上記オレフィンの少なくとも一部をその異性体に転化させるために、オレフィン類を含む流体流を、活性化塩基性金属酸化物異性化触媒を含む固定床と接触させることを含み得る。本明細書に開示する上記異性化触媒は、従来の触媒と比べてサイクル間の失活を減少し得、従って触媒ライフサイクル全体にわたって高活性を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する実施形態は、概して、例えばスチームクラッキング又は流動式接触分解のように、主としてメタセシスによるCのオレフィン類のプロピレンへの転化のための分解法からのC〜Cの炭化水素留分の処理に関する。さらに詳しくは、本明細書に開示する実施形態は、エチレンと2−ブテンのメタセシス、及び/又は平衡に応じた1−ブテンの2−ブテンへの異性化又は2−ブテンの1−ブテンへの異性化のための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,223,895号に例証されているような典型的なオレフィンプラントには、メタン及び水素を除去するためのフロントエンド脱メタン塔、次いでエタン、エチレン及びCアセチレンを除去するための脱エタン塔が存在する。この脱エタン塔からの缶出液は、C〜Cまでの炭素数の範囲の化合物の混合物からなる。この混合物は、典型的には分留によって種々の炭素数に分離し得る。
【0003】
留分(主としてプロピレン)は、生成物として取り出され、最終的にはポリプロピレンの製造あるいはプロピレンオキシド、クメン、又はアクリロニトリルなどの化学合成に使用される。メチルアセチレン及びプロパジエン(MAPD)不純物は、分留又は水素化によって除去しなければならない。水素化が、好ましい。その理由は、これらの高不飽和C化合物の幾つかは、最後にはプロピレンになり、それによって収量を増加させるからである。
【0004】
のアセチレン類、ブタジエン、イソ及びノルマルブテン、並びにイソ及びノルマルブタンからなるC留分は、様々な方法で処理することができる。典型的な水蒸気分解装置のC留分は、以下の成分を重量%で含有する。
【表1】

【0005】
典型的には、ブタジエンとCアセチレン類が、最初に取り出される。これは、水素化又は抽出のいずれかによって達成できる。抽出を用いる場合には、残存する1−ブテンと2−ブテンは、本質的には最初の供給原料の比率と同じ比率で残存する。水素化を用いる場合には、ブタジエンの水素化から得られる最初の生成物は、1−ブテンである。その後に、1−ブテンを2−ブテンに変える水素異性化が、同じ反応系内で起こる。この反応の程度は、水素化系内の触媒と反応条件に依存する。しかし、「過剰水素化」と、ブテン類からのブタン類の生成とを回避するために、水素異性化の程度を制限することが一般的によく行われている。これは、後工程のためのブテン供給原料の損失に相当するであろう。上記混合物中に残存するブテン類は、ノルマルオレフィン類(1−ブテン、2−ブテン)とイソオレフィン類(イソブテン)からなる。上記混合物中のC類のバランスは、最初の供給原料に由来するイソブタンとノルマルブタンの両方と、水素化工程で生成したものと、少量の未転化又は未回収ブタジエンとからなる。
【0006】
ブテン類は、多くの用途を有し、多くの方法においては、所定の分子内の二重結合の異性化を行うことが望ましい。二重結合異性化は、分子の構造を変化させない分子内の二重結合の位置の移動である。これは、分子の構造が変化する骨格異性化(最も典型的にはイソ体とノルマル体の間の相互変化に相当する)とは異なる。骨格異性化は、二重結合の異性化と全く異なるメカニズムによって進行する。骨格異性化は、典型的には促進酸性触媒を使用して生じる。
【0007】
二重結合異性化は、平衡制限反応である。1−ブテンと2−ブテン(シスとトランス)の間の平衡について、内部オレフィン(2−ブテン)は、低い温度を好む。純ブテン−1又は純ブテン−1あるいはこれらの混合物から開始すると、反応は、ブテン−2のブテン−1への平衡比まで移動するであろう。そこには二つの主な反応経路が存在する。一つは、反応が典型的には貴金属触媒上で、水素の存在下で、低い温度で生じる水素異性化であり、他方は、反応が一般に塩基性金属酸化物触媒上で、高い温度で生じ、水素を使用しない非水素異性化である。
【0008】
二重結合の水素異性化は、水素化反応器で生じ得る。水素異性化反応は、貴金属触媒(Pt又はPdなど)上で少量の水素を使用し、中程度の温度で生じ、一方、非水素異性化は、水素を使用せず、典型的には塩基性金属酸化物触媒を高い温度で用いる。二重結合の水素異性化は、通常、内部オレフィン(例えば、1−ブテンとは対照的に2−ブテン)を最大にするために中程度の温度で行う。その理由は、熱力学的平衡は、低い温度では内部オレフィンに都合が良いからである。この技術は、通常、後工程のために内部オレフィンを製造する必要がある場合に好まれる。プロピレンを調製するための2−ブテンのエチレノリシスが、このような反応である。エチレノリシス(メタセシス)反応は、2−ブテン+エチレン→2プロピレンである。混合ノルマルブテン類(1−ブテン及び2−ブテン)は、典型的には、メタセシス用の供給材料として使用され、水素異性化は、供給材料中の2−ブテンを最大にするためにメタセシス反応の前工程で用いられる。
【0009】
しかし、二重結合異性化は、独立した異性化反応器で又はメタセシスと共に、水素を使用せずに独立して生じることもでき、典型的には高い温度で塩基性金属酸化物触媒を用いる。内部オレフィン類は、温度が上昇すると混合物中では主としてノルマルブテンのままであるが、平衡によってαオレフィン(1−ブテン)の形成が増加する。水素の不存在下で塩基性金属酸化物触媒を使用すると、水素異性化系から生じるであろう水素化によるパラフィンの生成が除外される。
【0010】
2-ブテンのエチレノリシス(メタセシス)は、メタセシス触媒上で、高温、例えば300℃で生じる。しかし、2−ブテンのみが、このメタセシス反応に関与する。1−ブテンとエチレンのメタセシス反応は、非生成反応であると考えられる。その理由は、このメタセシス反応の生成物は、本質的に反応剤と同じであるからである。従って、メタセシス中に同時に同量の1−ブテンを2−ブテンに転化させることでプロピレンの生成を最大にすることが都合がよい。これらの条件下では、非水素異性化が用いられ、典型的には、塩基性金属酸化物異性化触媒は、両方の反応を同時に進行させるためにメタセシス触媒と物理的に混合される。
【0011】
異性化を伴う従来のメタセシスは、上記のように、プロピレンを生成するために混合ノルマルブテン類(1−ブテンと2−ブテンの両方)とエチレンの反応を含む。これらの反応は、塩基性金属酸化物異性化触媒と組み合わせて担持させた又は担持させないVIA族又はVIIA族の金属酸化物メタセシス触媒の存在下で生じる。メタセシス用の典型的な触媒は、シリカに担持させた酸化タングステンであるか又はアルミナに担持させた酸化レニウムである。オレフィン類のメタセシスに適した触媒の例は、例えば米国特許第6,683,019号に記載されている。
【0012】
しかし、1−ブテンを2−ブテンに変え、継続した反応を可能にするために、メタセシス反応器内で二重結合異性化触媒を用いることが一般的である。典型的な二重結合異性化触媒としては、担持させた又は担持させない塩基性金属酸化物(IIA族)が挙げられる。特に、水素異性化は、高められた反応温度では、必要とされる水素がオレフィン反応剤の一部をパラフィン類にまで飽和して、生成物の収量を減少させるので、好ましくない。例えば、米国特許第6,875,901号には、粉末、ペレット、押出物などの形態であってもよい高純度酸化マグネシウム触媒などの塩基性金属酸化物触媒を使用するオレフィン類の異性化方法が開示されている。酸化マグネシウムや酸化カルシウムは、メタセシス触媒と物理的に混合されていてもよいこのような二重結合異性化触媒の例である。イソブテンのノルマルブテンへの骨格異性化用の同等の助触媒は、存在しない。メタセシス触媒と同時混合二重結合異性化触媒との両方を用いる従来のメタセシス系の場合には、ブタジエンは、二重結合異性化触媒の急速な汚濁を避けるために500ppm未満のレベルまで除去しなければならない。メタセシス触媒それ自体は、最大10,000ppmまでのブタジエンを許容できる。
【0013】
イソブテンは、典型的にはメタセシス反応工程の前に供給原料から除去される。イソブテンとエチレンの反応は、非生成性であり、それ自体及び/又は他のC類とのメタセシス反応は、過剰のエチレンの存在下では制限される。非生成反応は、本質的に触媒サイトを占有するが、生成物を生成しない。メタセシス装置まで供給原料中に残ることが許容されれば、この非反応種の濃度が高まり収容限界を作り出すであろう。イソブテン除去のための選択肢は、イソブテンをメタノールと反応させてメチル第三ブチルエーテル(MTBE)を生成させるか又は分留によってブテン類からイソブテンを分離することを含む。米国特許第6,358,482号には、メタセシスの前にC混合物からイソブテンを除去することが開示されている。このスキームは、さらに、米国特許第6,075,173号及び第5,898,091号に反映されている。米国特許第6,580,009号には、限定されたエチレン留分からプロピレンとヘキサンを製造する方法が開示されている。0.05〜0.60のブテン類(n−ブテン類と表す)に対するエチレンのモル比について、ラフィネートII流が、C供給原料として使用される。ラフィネートII流は、定義によれば、イソブテン除去後の流れである。C流からのイソブテンの除去は、米国特許第5,087,780号に記載されているように、イソブテンを除去するため及び1−ブテンを2−ブテンに異性化させることによって高い効率でn−ブテン類を回収する両方のために、組み合わせた接触蒸留水素異性化脱イソブテン化装置を用いることによっても達成し得る。
【0014】
高温二重結合異性化触媒もまた、メタセシス触媒及び/又はエチレンの不存在下で二重結合異性化だけのために使用される。例えば、1−ブテンは、ある種のグレードのポリエチレンの製造に重要なコモノマーである。1−ブテンは、米国特許第6,875,901号に記載されているように分留と組み合わせた2−ブテンの異性化によって得られる。また、米国特許第6,727,396号に記載されているように、このような異性化触媒は、内部ヘキセン異性体(2−及び3−ヘキセン)の1−ヘキセンへの異性化において有用である。1−ヘキセンもまた、ポリエチレン用の重要なコモノマーである。この場合、メタセシスが、1−ブテンとそれ自体との間で起こる(1−ブテン+1−ブテン→エチレン+3−ヘキセン)。この反応は、上記と同様のメタセシス触媒を使用するが、重要なことに、メタセシス工程への供給材料は、高濃度1−ブテンでなければならない。高濃度1−ブテンの流れを生成させるために米国特許第6,875,901号に記載されているように、塩基性金属酸化物異性化触媒が使用される。次いで、1−ブテンは、その工程において異性化機能を特異的に回避するメタセシスのみに供せられる。次いで、得られる3−ヘキセンが、別の高温−非水素異性化二重結合異性化工程に供せられる。このような異性化の利点は、α−オレフィンについて高い温度で都合のよい平衡であること及びオレフィン類をパラフィン類に水素化するために存在する水素がないことである。
【0015】
メタセシス触媒と二重結合異性化触媒は、触媒毒に極めて感受性である。触媒毒としては水、CO、オキシゲネート類(MTBEなど)、硫黄化合物、窒素化合物、及び重金属が挙げられる。これらの触媒毒の除去を保障するためにメタセシス反応系の上流に保護層を用いることが、一般的によく行われている。触媒毒が除去され、新たな触媒毒がその後に導入されない限りは、これらの保護層がメタセシス反応系の直前にあるか又はさらに上流にあるかは問題ではない。典型的な保護層吸着剤は、アルミナ及び活性化アルミナである。塩基性金属酸化物、例えば酸化マグネシウム及び/又は酸化カルシウムを保護層材料として使用することも可能である。低い温度では、これらは、水を吸着し、メタノールなどのオキシゲネート類と反応して水と二酸化炭素を形成する能力を有する。形成された水は、その後に他の塩基性酸化物によって吸着される。
【0016】
メタセシス反応は、オレフィン二重結合の位置と個々の分子の立体構造に非常に感受性である。一対のオレフィン類は、表面に吸着し、二重結合のいずれかの側の炭素基と二重結合の位置を交換する。メタセシス反応は、生成性、半生成性又は非生成性として分類できる。上記のように、非生成反応は、本質的に反応が生じないという結果をもたらす。二重結合がメタセシス反応によって移動する場合には、新しい分子は、元の吸着された分子と同じであり、従って生成反応が生じない。これは、対称性を有するオレフィン同士の間の反応又はエチレンとαオレフィン類の間の反応に典型的である。十分に生成性の反応が生じる場合には、分子がそのサイトを占める配向がどうであれ、新たな生成物が生じる。二個のプロピレン分子を形成するエチレンと2−ブテンの間の反応は、十分に生成性の反応である。半生成反応は、立体的に阻害される。オレフィン類の対が、一つの配向で吸着する場合には、二重結合が移動すると、新しい生成物が形成される。あるいは、これらオレフィン類が異なる立体配置で吸着する場合には、二重結合が移動すると、同一のオレフィン類が形成され、従って新しい生成物が形成されない。種々のメタセシス反応が、異なる速度で(十分に生成性の反応は、通常は半生成反応よりも早い)及びプロピレンに対する種々の重量選択性で進行する。表2に、エチレンと種々のブテン類間の反応及びブテン類自体の間の反応を要約する。
【0017】
表に記載した反応は、エチレンとの基本反応(反応1、4及び5)並びに種々のCオレフィン類同士の間の反応を表す。全Cオレフィン類(イソブテンを含む)からのプロピレンに対する選択性と、反応に関与するノルマルCオレフィン類からのプロピレンに対する選択性との間で区別することが特に重要である。イソブテンと2−ブテンの反応(反応6)は、プロピレンと分岐C分子を生成する。この反応について、プロピレンは、全C類から37.5重量%の選択性で生成する(反応2と同様)が、ノルマルC類(2−ブテン)からは75重量%の選択性で生成する。定義のために、従来のメタセシスは、Cオレフィン流とエチレンの反応として定義される。しかし、C流はまた、供給原料としてエチレンの不存在下で反応することができる。この反応は、自動又は自己メタセシスと呼ばれる。この場合に、反応2、3、6、及び7が、唯一可能な反応であり、供給原料組成に応じた速度で生じるであろう。
【表2】

【0018】
プロピレン製造のための従来のメタセシスにおいて、焦点は、プロピレンを製造するために反応1を最大にすることにある。これは、プロピレンに対する選択性を最大にするであろう。そのため、過剰のエチレンが、ブテン類とそれら自体との反応の程度を低下させるのに使用される(反応2、3、6、及び7)。理論比は、n−ブテン類に対するエチレンのモル比が1/1であるか又は重量比が0.5であるが、従来のメタセシスでは、反応2、3、6、及び7を最小にするために著しく大きい比率、典型的には1.3又はそれよりも大きいモル比を用いるのが一般的である。エチレン過剰の条件下で、イソブテンと1−ブテンの両方はエチレンと反応しない(反応4及び5参照)という事実により、二つのプロセス順序が用いられる。最初に、イソブテンが、メタセシスの前に除去される。イソブテンが除去されない場合には、n−ブテン類が高収率を達成するために再循環されるのにつれてイソブテンが増加するであろう。次に、メタセシス触媒と混合された酸化マグネシウムなどの二重結合異性化触媒を含むことによって、1−ブテンが2−ブテンに異性化される。この触媒は、骨格異性化(イソブテンをノルマルブテン類に)を引き起こさないが、二重結合を1位から2位に移動させるだけであることが注目される。従って、過剰のエチレンを用いて操作し、反応の前にメタセシス供給原料からイソブテンを取り除き、二重結合異性化触媒を用いることによって、反応1が最大化される。
【0019】
上記のように、酸化マグネシウム触媒は、同じ反応器で二重結合異性化とメタセシスの両方を行うためにメタセシス触媒と混合されてもよい。このような系において、酸化マグネシウムは、二つの機能を果たす。第1に、酸化マグネシウムは、保護層として働き、種々のオキシゲネート類と水を吸着してメタセシス触媒を保護する。メタセシス反応の高い温度では、その吸着能は、周囲温度に近い温度での吸着能よりもはるかに小さいが、この機能は、前述したような保護層によるバルク触媒毒除去の後の重要な第2の触媒毒吸着工程を提供する。第2に、上記のように、エチレンと1−ブテンの反応は、非生成性である。1−ブテンは、本質的にエチレンと反応しないことから、1−ブテンが再循環流中に増加するであろう。1−ブテンの増加を避けるために、2−ブテンは反応中に枯渇するため二重結合異性化触媒(酸化マグネシウムなど)を使用して、1−ブテンを2−ブテンに異性化してもよい。
【0020】
二重結合異性化触媒(酸化マグネシウムなど)は、約5mmの有効径を有する錠剤の形態で現在商業的に使用されている。本明細書で使用する有効径とは、非球形粒子が、球形に成型された場合に有するであろう直径を指す。これらの錠剤は、ブテン類だけを処理する場合には良好な異性化活性を示す。しかし、このような錠剤は、エチレンの存在下で、短時間でのみ1−ブテンの2−ブテンへの異性化について活性を示す。また、その性能は、反応サイクルの回数が増加するのにつれて徐々に悪化する。数回の再生/反応サイクルの後に、その異性化についての活性は低い。この性能不足は、時間と共に系内の1-ブテンの急速な増加を招き、再循環を油圧的に制限することによって反応器性能を制限し、経済的に得ることができるブテン類のプロピレンへの全転化を制限する。同様の活性の喪失は、内部オレフィンから末端オレフィンを製造するための二重結合異性化触媒単独としてこれらの触媒を操作する時に経験する。
【0021】
触媒粒子のサイズが小さいほど反応サイクル中によりよい性能を示すことは当該業界では周知である。これは、内部物質移動抵抗の低下に起因する。これは、反応剤が触媒サイトにより多くアクセスすることを可能にする。物質移動抵抗を低下させることによって、改善された反応性が達成される。しかし、再生サイクルによる活性の喪失は、改善されない。再生の結果として活性の喪失は、有効径の関数として単純な物質移動限界によるものではなく、例えば、コークス除去に必要な高い温度によって生じる焼結による触媒粒子(任意のサイズ)の表面積の減少によるものである。
【0022】
酸化マグネシウム触媒の性能を改善するために、幾つかの試みがなされている。例えば、米国特許第6,875,901号には、ある種の不純物、例えばリン、硫黄、遷移金属などを制限することによって酸化マグネシウム異性化触媒の失活速度の改良が開示されている。しかし、エチレンの存在下での失活は、相変わらず問題がある。
【0023】
上記のように、メタセシス工程の全体の性能を改善でき、プロピレン収量を増加させ、1−ブテン再循環パージを減少させる塩基性金属酸化物二重結合異性化触媒に対する要求が依然としてある。また、内部オレフィン類の末端オレフィン類への単純二重結合異性化、例えばブテン−2のブテン−1への単純二重結合異性化あるいはヘキセン−2又はヘキセン−3のヘキセン−1への単純二重結合異性化のためのこれらの触媒の改良型に対する要求もある。これらの系の両方について、サイクル間の失活を減少させることで、触媒ライフサイクル全体にわたってより高い活性を維持することに対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
一つの態様において、本明細書に開示する実施形態は、オレフィンの少なくとも一部をその異性体に転化させるために、オレフィン類を含む流体流を、構造安定剤を含有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒を含む固定床と接触させることを含む、オレフィン類の二重結合異性化方法に関する。
【0025】
別の態様において、本明細書に開示する実施形態は、オレフィンの少なくとも一部をその異性体に転化させるために、オレフィン類を含む流体流を、0.25mm〜4.0mmの範囲の有効径を有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒を含む固定床と接触させることを含む、オレフィン類の二重結合異性化方法に関する。
【0026】
別の態様において、本明細書に開示する実施形態は、n−ブテン類、イソブテン、及びパラフィン類を含む炭化水素流を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン類及びパラフィン類を含む重質C留分とを含む少なくとも二つの留分に分留することと、エチレンと上記重質C留分とを、構造安定剤を含有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒とメタセシス触媒とを含む固定床反応器に供給することと、1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化させるために、上記重質C留分を上記活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒と接触させることと、プロピレン、パラフィン類、未反応エチレン、並びに未反応1−ブテン及び2−ブテンを含むメタセシス生成物を形成するために、エチレンと、上記2−ブテンの少なくとも一部とを、メタセシス触媒と接触させることとを含む、プロピレンの製造方法に関する。
【0027】
別の態様において、本明細書に開示する実施形態は、n−ブテン類、イソブテン、及びパラフィン類を含む炭化水素流を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン類及びパラフィン類を含む重質C留分とを含む少なくとも二つの留分に分留することと、0.25〜4.0mmの間の有効径を有し且つ安定剤を含んでいない活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒とメタセシス触媒とを含む固定床反応器に、エチレンと上記重質C留分とを供給することと、1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化させるために、上記重質C留分を上記活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒と接触させることと、
プロピレン、パラフィン類、未反応エチレン、並びに未反応1−ブテン及び2−ブテンを含むメタセシス生成物を形成するために、エチレンと、上記2−ブテンの少なくとも一部とを、メタセシス触媒と接触させることとを含む、プロピレンの製造方法に関する。
【0028】
その他の態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、熱老化の関数として、構造安定剤を含むMgO錠剤のBET表面積の変化のグラフ表示である。
【0030】
【図2】図2A及び2Bは、650℃での過酷熱老化後の種々のサイズのMgO錠剤のBET表面積と細孔構造の変化のグラフ表示である(触媒有効径は2A=5mm、2B=3mm)。
【0031】
【図3】図3は、本明細書に開示する実施形態の触媒を使用する異性化及びメタセシス方法の単純化したプロセスフローダイアグラムである。
【0032】
【図4】図4は、エチレンの存在下で使用した場合の、典型的な酸化マグネシウム触媒と比較した本明細書に開示する実施形態の触媒の経時触媒活性のグラフ例示である。
【0033】
【図5】図5は、最初のサイクルと5回目のサイクルの両方に関して、プロピレンのためのメタセシス作用における異なる粒子サイズのMgO触媒の累積老化全体にわたる1−ブテン転化の比較のグラフ例示である。
【詳細な説明】
【0034】
一つの態様において、本明細書に開示する実施形態は、構造安定剤を添加することによって多重再生全体にわたる異性化触媒の表面積の安定性の改良に関する。別の態様において、本明細書に開示する実施形態は、安定剤を添加せずに異性化触媒の有効径の減少による多重再生全体にわたる異性化触媒の表面積の安定性の改良に関する。
【0035】
別の態様において、本明細書に開示する実施形態は、一般に、主としてメタセシスによってCオレフィン類をプロピレンに転化させるための分解方法(スチームクラッキング又は流動接触分解など)からのCからC炭化水素留分の処理に関する。さらに詳しくは、本明細書に開示する実施形態は、エチレンと2−ブテンのメタセシス用及び/又は内部オレフィン類の末端オレフィン類への異性化、例えば2−ブテンの1−ブテンへの異性化用の触媒に関する。
【0036】
有用な異性化触媒としては、塩基性金属酸化物、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、及び酸化リチウム単独又はこれらの組み合わせを挙げ得る。他の酸化物、例えば酸化ナトリウム又は酸化カリウムを、促進剤として触媒に配合してもよい。ある実施形態において、異性化において使用する触媒は、酸化マグネシウム(MgO)であり得る。ある態様は、酸化マグネシウムに関して本明細書に記載されるが、前述の他の塩基性金属酸化物もまた、本明細書に開示する実施形態の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0037】
酸化マグネシウム二重結合異性化触媒は、熱サイクル(再生サイクルの回数)によって老化する。熱サイクルの効果を、種々のMgO触媒(5mm錠剤について)についてBET表面積及び細孔サイズ測定並びに粉末X線回折(XRD)を使用して調べた。存在するデータの分析により、MgO触媒が多重再生処理によって焼結(平均細孔径の増大と共に表面積の減少)を示すことが明らかにされる。
【0038】
XRDデータもまた、一次MgOピークが再生のサイクルの増加と共に鋭くなることを示す。これは、デバイ−シェラー式を使用してピーク幅測定値から得られる平均微結晶サイズ推定値に基づいて、MgOの平均微結晶サイズが多重サイクルの再生処理と共に増大することを示す。この結果は、多重サイクル再生が結晶の成長を招くことを示す。結晶の成長は、表面積の減少をもたらし、このようにしてXRDデータにより、失活が確認される。
【0039】
これらの分析は、MgO触媒が多重再生サイクルを経るにつれて、BET表面積が、平均微結晶サイズ及び平均細孔径の対応する増大と共に著しく減少することを示す。この間欠再生による多重サイクル全体にわたる触媒の物理的失活は、二重結合異性化のための触媒活性の失活をもたらす。徐々に短くなるサイクルの長さは、MgO触媒の物理的失活の結果として観察される。
【0040】
30重量%のSiO(Ludox AS−30、Aldrich chemicals)を含んでいるシリカ結合剤水溶液を使用してシリカを、5mmのMgO錠剤(MGO)に加えて、MGO−A及びMGO−Bを調製した。試料MGO−C及びMGO−Dは、湿式含浸法で調製した。乾燥「状態のままで」MgOペレットを、SiO含有水溶液(MGO−CについてはLudox+蒸留水、又はMGO−Dについてはケイ酸ナトリウム+蒸留水)に加えた。過剰液の少量を除去した後に、湿潤ペレットを120℃で24時間オーブン乾燥した。
【0041】
変性MgO及び標準MgO試料について、多様なBET/細孔サイズ/細孔容積の測定を行った。上記の120℃でオーブン乾燥した変性MgO試料(MGO−A、MGO−B、MGO−C、及びMGO−D)について、標準BET脱気プロトコール(350℃まで5℃加熱、16時間保持)下で全ての初期BET測定を行った。次いで、使用済みBET試料を、さらに循環加熱処理に使用した。各加熱処理サイクルは、停滞空気中で5℃/分の温度勾配で、550℃で12時間恒温処理し、その後の120℃まで冷却することからなっていた。全ての加熱処理試料についてのBET測定は、さらに脱気せずに行った(「そのままで」測定した)。
【0042】
図1に見られるように、表面積の最も顕著な減少が、全てのMgO試料についてまさに最初のサイクルで生じ、その後の暴露は、比較的影響が小さい。全ての処理試料が、元の試料に比べて著しく高い表面積の向上を示す。試料MGO−A、MGO−B及びMGO−Cは、シリカの添加によって表面積安定化効果を示す。
【0043】
MgOは、FCC(面心立方)構造をもつイオン性化合物である。MgOの結晶構造の点欠陥は、ショットキー欠陥である。欠陥は、逆荷電イオンがその格子サイトを離れ、空孔を作ると形成する。MgOの場合には、酸素空孔とマグネシウム空孔の両方が存在する。しかし、焼結は、酸素空孔の拡散によって制御される。MgOに対するドーパント様、NaF又はLiFの添加は、イオン空孔濃度を確実に調整でき、これに対してAl又はSiOは、例えば、焼結用阻害剤として作用するであろう。+2よりも低い電荷を有するドーパント(例えば、NaF又はLiF)として陽イオンの添加は、焼結速度を増大させるのに作用するであろうが、これに対してシリカなどの+2よりも高い電荷を有する陽イオンの添加は、それを阻害するであろう。
【0044】
MgOに対する少量のコロイドシリカの添加は、図1に示すように多重加熱処理サイクル後にMgOの表面積の安定性を向上させる。ケイ酸ナトリウムを添加した試料MGO−Dは、高められた温度で表面積の維持に対して悪影響を及ぼすことが予測されるNa(Mg2+の電荷よりも低い電荷を示す陽イオン)を含んでいるので、これらの特性を示さないことは興味深い。
【0045】
シリカ、アルミナ、又はジルコニアなどの化合物又はその混合物の形態の構造安定剤の添加により、MgO錠剤の熱安定性を得ることができることが観察されている。本明細書に開示する実施形態の構造安定剤は、次の元素:Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Y、Zr、Mo及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含有し得る。例えば、構造安定剤は、触媒の重量の約0.04〜約40%(構造安定剤、触媒金属(一つ又は複数)及び支持材料(一つ又は複数)の合計重量に基づいて)の範囲の量で使用し得る。幾つかの実施形態において、構造安定剤は、シリカ、アルミナ、及び天然クレー、例えばカオリナイトの少なくとも一つを含む結合剤の形態である。他の実施形態において、構造安定剤は、MgAlO、及びMg−Alハイドロタルサイトの分解により形成される混合金属酸化物の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0046】
5mm以上の有効径を有する酸化マグネシウム二重結合異性化触媒は、パイロット試験で急速な失活を示す。このような活性の急速な喪失は、新しい触媒又は再生触媒として、上記方法を経済的に実行できる可能性を低くし、酸化マグネシウムの異性化触媒としての幅広い使用を妨げる。
【0047】
より小さい触媒直径が、触媒粒子自体の内部で内部物質移動抵抗を低下させることによって所定の触媒の性能を向上し得ることは、周知である。より小さい直径の触媒粒子は、より短い細孔を有し、従って分子は、活性部位に到達する移動距離が短い。粒子の有効径を小さくすると、反応サイクル内で触媒の全体活性を向上させることが知られている。
【0048】
本出願の発明者らは、意外にも、異性化触媒の有効径を小さくすると、実際に、時間と共に観察される失活を減少させるであろうということを見出した。具体的には、本発明者らは、より小さい有効径の異性化触媒は、その後の再生の後に表面積の減少を少なくし、従って全体的性能を向上させることを見出した。これは、異性化触媒が併用されるメタセシスと、異性化単独との両方に該当する。利点としては、長い異性化触媒サイクル時間、高い全ブテン類転化率、及び高い生産、例えばメタセシス反応器でエチレンの存在下で使用した場合の高いプロピレン収量が挙げられる。
【0049】
より小さい有効径の意外な利点は、安定剤を使用しない場合であってもMgO触媒の安定性を改善できることである。図2A及び2Bは、二つの異なる粒度5mm及び3mmそれぞれのMgO触媒のBET表面積に対する熱老化の影響を示す。熱老化は、650℃で24時間行った。この650℃の高温での熱老化は、MgO触媒について過酷熱老化試験であると考えられる。3mmの小さい粒度では、触媒のBET表面積は、過酷熱老化後に、5mm粒子のBET表面積よりも約55%大きい(36m/gに対して56m/g)ことが明らかに認めることができる。
【0050】
二重結合異性化触媒のより小さい有効径の効果は、二重にある。第1に、知られている高い活性が、ブテン類の二重結合異性化中に観察される。しかし、意外にも、上記触媒の安定性もまた改善され、低いサイクル間失活をもたらす。これは、直接に、多重サイクル全体にわたる触媒性能の維持につながり、従って触媒の寿命を著しく増大させる。
【0051】
本明細書に開示する実施形態の異性化触媒、例えば酸化マグネシウムは、5.0mm未満の有効径、他の実施形態では4.0mm未満の有効径、他の実施形態では3.2mm未満の有効径、他の実施形態では3.0mm未満の有効径、他の実施形態では2.8mm未満の有効径、他の実施形態では2.5mm未満の有効径、他の実施形態では2.0mm未満の有効径、他の実施形態では1.75mm未満の有効径、他の実施形態では1.5mm未満の有効径、他の実施形態では1.4mm未満の有効径、他の実施形態では1.0mm未満の有効径、及びさらに他の実施形態では0.7mm未満の有効径を有し得る。触媒粒子の有効径は、同様の表面対体積比を有する同等の球の直径として定義される。
【0052】
本明細書に開示する実施形態の異性化触媒は、ペレット、押出物などの形態であり得る。米国特許第6,875,901号には粉末が有用な触媒形態であると述べられているが、固定床又は充填床での粉末の使用に付随する高い圧力低下のために、異性化触媒が、メタセシス触媒と混合され、商業的固定床反応器又は固定床異性化反応器でエチレンの存在下で使用される場合には、粉末は商業的に使用されない。従って、固定床反応器で典型的に使用されない粉末及びさらに微細な材料は、具体的には、本明細書に開示する実施形態の触媒から除外される。
【0053】
本明細書に開示する実施形態の異性化触媒は、固定床反応器と共に使用し得る又は触媒蒸留構造物として形成し得る異性化触媒であり、従ってペレット、球、押出物などの形態の異性化触媒は、典型的には他の実施形態では少なくとも0.25mmの有効径、他の実施形態では少なくとも0.3mmの有効径、他の実施形態では少なくとも0.4mmの有効径、及びさらに他の実施形態では少なくとも0.5mmの有効径を有し、この場合に上記異性化触媒は、安定剤を含む。
【0054】
また、本明細書に開示する実施形態の異性化触媒は、固定床反応器と共に使用し得る又は触媒蒸留構造物として形成し得る異性化触媒であり、従ってペレット、球、押出物などの形態の異性化触媒は、典型的には他の実施形態では少なくとも0.25mmの有効径を有し且つ安定剤を使用しない場合には4.0mmの最大有効径を有し、他の実施形態では少なくとも0.5mmの有効径を有し且つ安定剤を使用しない場合には3.5mmの最大有効径を有する。上記の有効径を有する異性化触媒は、多数の方法で製造し得る。例えば、上記の実施形態の有効径を有する触媒球を製造し得る。他の実施形態において、触媒は、より大きな直径でより高い表面対体積比を得るために成形し得る。例えば、中空円筒、三つ葉状粒子、成形押出物、又はより小さい直径であるがより長い長さをもつ押出物を、調製し得る。例えば、米国特許第7,351,393号明細書に開示されている星型押出物に類似する星型押出物を、使用し得る。これらの成形触媒は、同等の有効径の球と比べて固定床の圧力低下を減少させるのに利点を有する。他の実施形態において、上記異性化触媒は、支持体の表面に沈着させ、大きな支持体上に有効成分の「卵殻」又は薄層を形成し得る(卵殻触媒については、有効径は、活性物質で被覆されるか又は活性物質を含浸する触媒の部分のみに対して算出し得る)。これらの技法及びその他の技法は、本明細書に開示する実施形態の異性化触媒の有効径を小さくするのに使用し得る。
【0055】
本明細書に開示する二重結合異性化触媒は、固定床反応器、蒸留塔反応器、及び当該技術で公知のその他の反応器において、種々の内部オレフィン類(2−ブテンなど)を、α−オレフィン化合物(1−ブテンなど)に転化させるために使用し得る。ブテン類について以下に記載するが、2−ペンテンの1−ペンテンへの転化、2−又は3−ヘキセンの1−ヘキセンへの転化、2−又は3−ヘプテンの1−ヘプテンへの転化なども考慮される。特に、本明細書に開示する実施形態の触媒は、2−ブテンの1−ブテンへの異性化とプロピレンを形成するための2−ブテンとエチレンのメタセシスとを同時に行う方法に有用であり、この場合には異性化反応は、エチレンの存在下で行ってもよい。
【0056】
本明細書に開示する方法に対する混合C供給材料は、スチームクラッキング装置又は流動接触分解(FCC)単位装置からのような、C、CからC、及びCからC分解装置流出液を含んでいるCからC6+炭化水素を含んでいてもよい。Cオレフィン類の混合物を含んでいる他の精製炭化水素流も使用し得る。C、C及び/又はC成分が供給材料中に存在する場合には、上記の流れは、一次C留分、CからC留分、又はCからC留分をもたらすために予備分留してもよい。
【0057】
供給材料流に含まれるC成分としては、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、及びブタジエンを挙げ得る。幾つかの実施形態において、混合C供給材料は、メタセシス反応用のノルマルブテンに富む供給材料を提供するために予備処理される。例えば、ブタジエンがC供給材料中に存在する場合には、ブタジエンは、水素化又は抽出によって除去し得る。他の実施形態においては、混合ブテン類供給材料は、ブタジエンの水素化の後に又は水素化と同時に、水素異性化条件に供して1−ブテンを2−ブテンに転化させ得、イソブテンは、分留によって2−ブテン流から分離される。
【0058】
次いで、エチレン及びノルマルブテン類は、メタセシス官能性及び異性化官能性の両方を有する触媒を入れてある反応器に供給して、1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化させ且つ2−ブテンをエチレンと反応させてメタセシス生成物としてプロピレンを形成し得る。エチレンは、少なくとも0.5のn−ブテン類に対するエチレンの比率、他の実施形態では少なくとも1.0のn−ブテン類に対するエチレンの比率、他の実施形態では0.5〜約2.5の範囲のn−ブテン類に対するエチレンの比率、及びさらに他の実施形態では約1.0又は1.5〜約2.0のn−ブテン類に対するエチレンの比率を維持するための比率で反応器に供給し得る。触媒メタセシス反応器に入れる触媒は、公知のメタセシス触媒、例えば支持体上のVIB族及びVIIB族金属の酸化物であり得る。触媒支持体は、任意の種類の支持体であることができ、アルミナ、シリカ、これらの混合物、ジルコニア、及びゼオライトを含むことができる。メタセシス触媒の他に、メタセシス反応器に入れる触媒としては、上記の有効径を有する二重結合異性化触媒、例えば酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを挙げ得、さらに多重サイクル全体にわたって安定な二重結合オレフィン異性化活性を維持するように安定剤を含んでいてもよいし又は含んでいなくてもよい。
【0059】
本明細書に開示する実施形態の触媒が有用であり得るメタセシスプロセスの例を、図3に例証する。n−ブテン類、イソブテン、及びパラフィン類を含んでいる混合C流は、フローライン10を経由してセパレータ12に供給し得、そこでC類を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン類を含む重質C留分とを含有する少なくとも二つの留分に分離し得る。軽質C留分は、セパレータ12から塔頂留出留分としてフローライン14を経由して回収し得る。
【0060】
重質C留分は、缶出液留分としてフローライン16を経由して回収し、メタセシス反応器18に供給し得る。エチレンは、フローライン20及び/又は22を経由して反応器18に同時に供給し得る。メタセシス反応器18は、従来のメタセシス触媒と、本明細書に開示する実施形態の異性化触媒の一つ以上の層24とを含み得る。メタセシス触媒と異性化触媒は、例えば上記両方の触媒を単一層に連続的に装填するか又は上記両方の触媒を別個の層として反応器に配置することによって、単一層に混合し得るし又は直列反応器に配置し得る。
【0061】
メタセシス反応器18からの排出液は、フローライン26を経由して分離装置28に供給し得る。分離装置は、例えば、上記排出液を複数の炭素数の群に分離するための蒸留装置を含んでいてもよい。例示するように、分離装置28は、メタセシス生成物を少なくとも四つの留分、例えばフローライン30を経由して回収されるエチレン含有留分、フローライン32を経由して回収されるプロピレン含有留分、フローライン34を経由して回収されるC留分、及びフローライン36を経由して回収されるC5+留分に分留し得る。
【0062】
フローライン30を経由して回収されるC留分の一部は、フローライン38を経由して装置から排出し得る。所望ならば、フローライン30を経由して回収されるエチレンの少なくとも一部を、フローライン22を経由してメタセシス反応器18にエチレン供給原料として再循環し得る。
【0063】
フローライン34を経由して回収されるC留分の少なくとも一部は、フローライン40を経由してセパレータ12に再循環し得、一部は、必要に応じてフローライン42を経由して除去し得る。例示しないが、フローライン34を経由して回収されるC留分は、別法として、メタセシス反応器18又は別の下流処理単位装置に再循環し得る。さらに、炭化水素流がブタンを含んでいる場合には、上記方法は、セパレータ12において炭化水素供給材料を分留する前にブタジエン類の少なくとも一部を水素化する水素化段階を含んでいてもよい。
【0064】
本明細書に開示する実施形態の異性化触媒は、また異性化触媒をエチレンに暴露させ得る、例えば特に米国特許第6,777,582号、同第7,214,841号、及び同第7,223,895号の一つ以上に開示されているかもしれない他の方法においても有用であり得る。
【0065】
[実施例]
【0066】
シリカを、構造安定剤として5mm市販MgO錠剤に加えた。シリカを、コロイドシリカ結合剤の形態で又はケイ酸ナトリウムとして、上記5mm市販MgO錠剤に加えた。上記錠剤の熱安定性を、多重熱サイクルの後に上記5mm錠剤のBET表面積を測定することによって調べた。各熱サイクルは、上記錠剤を空気中で550℃で12時間処理することによって行った。
【0067】
(実施例1)
【0068】
5mmMgO錠剤(MGO)に、30重量%のシリカ(Ludox、AS−30、Aldrich chemicals)を含有するコロイドシリカ溶液を湿潤含浸させることによって、触媒MGO−Aを調製した。含浸後に、この触媒を、120℃で24時間乾燥した。MGO−Aのシリカ含有量は、XRFにより0.81重量%であると測定された。初期BET表面積は、350℃で16時間、標準BET脱気した後に測定した。熱サイクルは、550℃で12時間行った。それぞれの加熱処理後に、触媒を、次の熱サイクルの前に120℃に12時間冷却した。図1は、熱老化の後の触媒MGO−AについてBET表面積の減少を示す。BET表面積の顕著な減少が、最初の熱サイクルの後に観察される。しかし、2回目の熱サイクルの後に、MGO−AのBET表面積は、安定する。比較において、未処理5mmMgO錠剤(MGO)は、さらに4回目の熱サイクルまで、どのサイクルの後にもBET表面積をさらに減少し続ける。
【0069】
(実施例2)
【0070】
触媒MGO−Aと同様の方法で、5mmMgO錠剤(MGO)に、30重量%のシリカ(Ludox、AS−30、Aldrich chemicals)を含有するコロイドシリカ溶液を湿潤含浸させることによって、触媒MGO−Bを調製した。含浸後に、この触媒を120℃で24時間乾燥した。MGO−Bのシリカ含有量は、XRFにより0.81重量%であると測定された。初期BET表面積は、350℃で16時間、標準BET脱気した後に測定した。熱サイクルは、550℃で12時間行った。それぞれの加熱処理後に、触媒を、次の熱サイクルの前に120℃に12時間冷却した。図1は、熱老化の後の触媒X052−L2についてBET表面積の減少を示す。BET表面積の顕著な減少が、最初の熱サイクルの後に観察される。しかし、2回目の熱サイクルの後に、MGO−BのBET表面積は、安定する。比較において、未処理5mmMgO錠剤(MGO)は、どのサイクルの後にもBET表面積をさらに減少し続ける。
【0071】
(実施例3)
【0072】
実施例1及び2と同様の方法で、5mmMgO錠剤(MGO)に、30重量%のシリカ(Ludox、AS−30、Aldrich chemicals)を含有するコロイドシリカ溶液を湿潤含浸させることによって、触媒MGO−Cを調製した。含浸後に、この触媒を120℃で24時間乾燥した。MGO−Cのシリカ含有量は、XRFにより1.14重量%であると測定された。初期BET表面積は、350℃で16時間、標準BET脱気した後に測定した。熱サイクルは、550℃で12時間行った。それぞれの加熱処理の後に、触媒を、次の熱サイクルの前に120℃に12時間冷却した。図1は、熱老化の後の触媒MGO−CについてBET表面積の減少を示す。BET表面積の顕著な減少が、最初の熱サイクルの後に観察される。しかし、2回目の熱サイクル後に、MGO−CのBET表面積は安定する。比較において、未処理5mmMgO錠剤(MGO)は、どのサイクルの後にもBET表面積をさらに減少し続ける。
【0073】
(実施例4)
【0074】
5mmMgO錠剤(MGO)にケイ酸ナトリウムの溶液を湿潤含浸させることによって、触媒MGO−Dを調製した。含浸後に、この触媒を120℃で24時間乾燥した。MGO−Dのシリカ含有量は、XRFにより1.40重量%であると測定された。初期BET表面積は、350℃で16時間、標準BET脱気した後に測定した。熱サイクルは、550℃で12時間行った。それぞれの加熱処理後に、触媒を、次の熱サイクルの前に120℃に12時間冷却した。図1は、熱老化の後の触媒MGO−DについてBET表面積の減少を示す。BET表面積の顕著な減少が、最初の熱サイクルの後に観察される。MGO−Dは、4回目の熱サイクルまでどのサイクルにおいてもBET表面積を失い続ける。MGO−Dは、Mg2+の電荷よりも低い陽イオンを示す、Naを含み、高められた温度で表面積の維持に悪影響を及ぼすことが予期される。MGO−Dは、これもどのサイクルの後にもBET表面積を減少し続ける5mmMgO錠剤(MGO)に似ている。
【0075】
上記実施例に記載のように、MgO錠剤の構造安定性は、構造安定剤を加えることによって改善することができる。
【0076】
より小さい有効径を使用すると、MgO触媒の安定性を、安定剤を添加しない場合でも改善できることも見出された。熱老化は、650℃で24時間行った。この650℃の高い温度での熱老化は、MgO触媒について過酷な熱老化であると考えられる。
【0077】
(実施例5)
【0078】
安定剤を使用せずに調製した5mmMgO錠剤を、650℃で24時間処理することによって苛酷熱老化に供した。図2は、苛酷熱老化後の上記錠剤の細孔容積及びBET表面積の変化を示す。上記5mmMgO錠剤の初期BET表面積は、202m/gであり、熱老化後には上記表面積は、36m/gに減少した。また、平均細孔径は、3〜10nmの広い範囲であるが小さい直径から約28nmに増大する。熱老化の後に、半値全幅(FWHM)は、15.2nmであると測定された。
【0079】
(実施例6)
【0080】
上記と同じMgOを使用し、安定剤を使用しないで、3mmMgO錠剤を調製した。次いで、この錠剤を、650℃で24時間処理することによって苛酷熱老化に供した。図2は、苛酷熱老化後の上記錠剤の細孔容積とBET表面積の変化を示す。5mmMgO錠剤の初期BET表面積は、183m/gであり、熱老化後にはその表面積は、56m/gに減少した。また、平均細孔径は、約8nmの小さい直径から約18nmに増大した。熱老化後に、半値全幅(FWHM)は、6.2nmであると測定された。実施例5の5mmMgO錠剤を、実施例6の3mmMgO錠剤と比較すると、小さい有効径の錠剤は、苛酷熱老化処理後に高いBET表面積を保持している。また、熱老化後の平均細孔径は、5mmMgO錠剤と比べて3mmMgO錠剤の方が小さい。細孔分布も、上記の二つのサイズについて半値全幅(FWHM)の相違によって認められるように、5mmMgO錠剤と比べて熱老化後の3mmMgO錠剤の方が狭い。3mm錠剤は、5mm錠剤の15.2のFWHMと比べて6.2nmのFWHMを示す。
【0081】
上記の実施例に記載のように、MgO触媒の安定性の改善は、より小さい有効径の触媒を使用することによって達成される。
【0082】
本明細書に開示する実施形態の酸化マグネシウム触媒の性能を、従来の酸化マグネシウム触媒の性能と、それぞれメタセシス触媒を使用せずに1−ブテンの2−ブテンへの異性化についてエチレンの存在下で比較する。触媒を比較する他に、異性化反応の平衡が制限され、平衡では、純2−ブテンのC供給材料は、600°Fの温度で操作すると、約72〜75%の転化率を示すことが認められる。これは、反応温度で約3.6の2−ブテン/1−ブテンの平衡比に相当する。同様に、純1−ブテンの供給材料は、上記と同じ平衡比に達するために約22%の転化率を示すであろう。
【0083】
(実施例7)
【0084】
酸化マグネシウム触媒を、5.5の長さ対直径比率を有する5mmペレットとして調製する。この触媒を、異性化反応器に装填し、乾燥不活性雰囲気中で、350℃で60時間加熱して水と二酸化炭素の実質的に全ての活性に影響を及ぼす量を除去する。
【0085】
次いで、上記触媒を、エチレンの存在下で1−ブテンの2−ブテンへの異性化のための異性化活性について試験する。異性化反応は、400psig及び600°F並びに5.4の重量毎時空間速度(WHSV)で行う。エチレンと1−ブテンを、エチレン:1−ブテンが1.8:1の比率で反応器に供給する。
【0086】
上記実験の結果を、図4に示す。図4に示すように純1−ブテン(2−ブテン/1−ブテン比が0)から開始すると、低いWHSVであっても、触媒は、最初に平衡に達することができず、わずか1.5の2−ブテン対ブテン−1比に達する。触媒の活性は、累積老化と共に急速に低下する。
【0087】
(実施例8)
【0088】
2.9mm(6×8メッシュ)の有効径を有する酸化マグネシウム触媒を調製する。この触媒を、異性化反応器に装填し、乾燥不活性雰囲気で、350℃で60時間加熱して水と二酸化炭素の実質的に全ての活性に影響を及ぼす量を除去する。
【0089】
次いで、上記触媒を、エチレンの存在下で1−ブテンの2−ブテンへの異性化のための異性化活性について試験する。実験を、実施例7と同じようにして行った。
【0090】
この実験の結果も図4に示す。同様の条件下で、小さい有効径2.9mmを有する触媒は、最初に平衡に到達し得るが、活性は、時間と共に急速に低下する。
【0091】
(実施例9)
【0092】
1.35mm(12×18メッシュ)の有効径をもつ酸化マグネシウム触媒を調製する。この触媒を、異性化反応器に装填し、乾燥不活性雰囲気中で、350℃で60時間加熱して水と二酸化炭素の実質的に全ての活性に影響を及ぼす量を除去する。
【0093】
次いで、上記触媒を、エチレンの存在下で1−ブテンの2−ブテンへの異性化のための異性化活性について試験する。異性化反応は、実施例7及び8と同じ条件で行う。
【0094】
この実験の結果も図4に示す。図4に見られるように、1.35mmの有効径をもつ触媒粒子は、最初に平衡に達し、約3.5の生成物2−ブテン対1−ブテン比を有する。また、この小さい有効径の触媒は、長時間にわたって活性/性能を維持し、酸化マグネシウムg当たり約2400gのn−ブテン類供給材料の累積老化後に、約3.3の生成物2−ブテン対1−ブテン比に低下する。
【0095】
(実施例10)
【0096】
0.64mm(20×10メッシュ)の有効径をもつ酸化マグネシウム触媒を調製する。この触媒を、異性化反応器に装填し、乾燥不活性雰囲気中で、350℃で60時間加熱して水と二酸化炭素の実質的に全ての活性に影響を及ぼす量を除去する。
【0097】
次いで、上記触媒を、エチレンの存在下で1−ブテンの2−ブテンへの異性化のための異性化活性について試験する。異性化反応は、実施例7〜9と同じ条件で行う。
【0098】
この実験の結果も図4に示す。図4に見られるように、0.64mmの有効径をもつ触媒粒子は、最初に平衡に達し、約3.5の生成物2−ブテン対1−ブテン比を有する。また、この小さい有効径の触媒は、長時間にわたって活性/性能を維持し、酸化マグネシウムg当たり約4000gのn−ブテン類供給材料の累積老化後に約3.2の生成物2−ブテン対1−ブテン比まで低下する。
【0099】
当業者は、小さい有効径を有する触媒が、物質移動限界の低下に基づいて、1−ブテンの2−ブテンへの異性化の反応速度を向上させることを予測し得る。物質移動抵抗の低下は、上記で観察されたような挙動、すなわち異性化が平衡に長時間達することを可能にする活性の上昇をもたらすであろう。
【0100】
しかし、上記のように、サイクル内の活性の他に多重サイクル全体にわたる触媒活性の改善が、意外にも小さい有効径を有するMgO触媒について観察された。
【0101】
小さい有効径を使用すると、MgO触媒の安定性を改善できることが見出された。また、小さい有効径を使用すると、サイクル間再生に耐えるMgO触媒の安定性を改善できることも見出された。5mmMgO錠剤と3mmMgO錠剤の両方を、安定剤を加えずに、1−ブテンの2−ブテンへの異性化と、プロピレンを生成するためのエチレンと2-ブテンのメタセシスとの両方を含むプロピレンを製造するためのメタセシス条件下で試験した。
【0102】
メタセシス反応は、2−ブテンとエチレンの間でのみ生じる(1−ブテンとエチレンは、非生成性反応である)ので、エチレンと1−ブテンのみからなる供給材料を使用すると、所定のメタセシス転化率に達するために最も必要とされる異性化任務が提供されるであろう。また、供給材料の純度に応じて、1−ブテンと2−ブテンの間にさらなる相互転化が存在し、平衡が得られる場合には排出液中に約3.6の1−ブテンに対する2−ブテンの比率をもたらす。この比率は、供給原料が反応温度で上記平衡比率よりも1−ブテンに富む場合には、サイクル内で及び多重サイクル全体にわたってこの両方で異性化触媒が老化するにつれて低下するであろう。
【0103】
(実施例11)
【0104】
試験を、異性化用のMgO錠剤と、メタセシス用のWO/SiO触媒とを含む混合層で行った。この試験は、315℃の温度、12のWHSV、及び400psigの圧力で行った。供給原料は、エチレン/1−ブテンのモル比が1.8の純1−ブテンとエチレンからなっていた。二つの触媒は、一方を3mmの有効径に錠剤化し、他方を5mmの有効径に錠剤化した以外は、同じ方法で調製した。次いで、これらの触媒を、それぞれ同じ試験プロトコールに供した。試験プロトコールは、次の順序からなっていた。
1.触媒を活性化させ、上記のように315℃で反応サイクルに供した。試験は、1-ブテン転化率の低下によって証明されるように失活が認められるまで操作することを可能にした。
2.触媒は、500℃の温度で沈着したコークスを燃焼させ、次いで550℃でNパージすることによって再生させた。次いで、この触媒を冷却し、次の反応サイクルのために活性化させた。
3.24時間の第2の反応サイクルを完結させて触媒上に若干のコークスを沈着させた。24時間後に、この触媒を工程2のようにして再生させた。
4.工程3を、さらに2回繰り返すことで、その時点まで全部で4回のサイクルを経た触媒混合物がもたらされた。
5.次いで、5回目の反応サイクルは、1-ブテン転化率の低下によって証明されるように失活が認められるまで反応を操作することを可能にして完結させた。
【0105】
サイクル1とサイクル5の両方の間の1−ブテン転化率を、図5に3mmMgO錠剤と5mm錠剤の両方について示す。転化率は、相対1−ブテン転化率を基準として示す。参考のために、平衡1−ブテン転化率を、1.0の相対転化率として示す。
【0106】
3mmMgO錠剤のサイクル1性能は、平衡に近く、1200kgのn−ブテン類供給材料/kg触媒の累積老化まで安定であったことを認めることができる。累積老化のさらなる増加に関して、触媒の失活が観察され、2600kgのn−ブテン類供給材料/kg触媒の累積老化で、0.66の相対1−ブテン転化率が観察された。3mmMgO錠剤のサイクル5性能は、平衡よりもわずかに低く、サイクル1転化率に極めて類似することを認めることができる。また、サイクル5についての1−ブテン転化率は、1100kgのn−ブテン類供給原料/kg触媒の累積老化まで安定であった。累積老化のさらなる増加に関して、触媒の失活が観察され、1800kgのn−ブテン類供給原料/kg触媒の累積老化で、0.81の相対1−ブテン転化率が観察された。
【0107】
5mm錠剤について、5mmMgO錠剤のサイクル1性能が、平衡よりもかなり低い(0.91の相対1−ブテン転化率)ことを認めることができる。また、5mmMgO錠剤のサイクル1についての1−ブテン転化率は、試験全体を通じて3mmMgO錠剤のサイクル1よりも著しく低かった。5mmMgO錠剤の失活速度もまた、それぞれの最初のサイクルにおいて、3mmMgO錠剤よりもはるかに高かった。サイクル1での5mmMgO錠剤の1−ブテン転化率は、決して安定ではなく、操作の開始から連続的に失活した。1975kgのn−ブテン類供給原料/kg触媒の累積老化で、わずか0.46の相対1−ブテン転化率が観察された。
【0108】
5mmMgO錠剤のサイクル5性能も、平衡よりもかなり低い(0.90の相対1−ブテン転化率)ことを認めることができる。5mmMgO錠剤の失活速度もまた、それぞれの5回のサイクルにおいて、3mmMgO錠剤よりもはるかに高かった。サイクル5における5mmMgO錠剤の失活速度もまた、その最初のサイクルにおける失活速度よりも著しく高かった。これは、3mmMgO錠剤についてのサイクル5の結果と明らかに著しく異なる。サイクル1からサイクル5までの触媒性能の劣化は、3mmMgO錠剤と比べて5mmMgO錠剤の場合にははるかに悪かった。1044kgのn−ブテン類供給原料/kg触媒の累積老化で、わずか0.44の相対1−ブテン転化率が観察された。
【0109】
当業者は、より小さい有効径をもつ触媒が、物質移動限界の低下に基づくように、1−ブテンの2−ブテンへの異性化の反応速度を向上させることを予測し得る。これは、サイクル1について3mmの有効径と5mmの有効径の間の性能の相違を説明するであろう。しかし、意外にも、サイクル中の失活速度の著しい低下が、小さい有効径をもつMgO触媒で観察された。また、サイクル間の性能の劣化が、より小さい有効径をもつMgO触媒を使用することによって減少することも観察された。これは、より小さい有効径について物質移動抵抗の単純な低下によって説明できない。
【0110】
上記のように、本明細書に開示する実施形態は、プロピレンを製造するための、1−ブテンの2−ブテンへの異性化用及び2−ブテンとエチレンのメタセシス用の触媒を提供する。約3.2mmよりも小さい有効径をもつ本明細書に開示する異性化触媒は、エチレンの存在下であっても1−ブテンの2−ブテンへの異性化について優れた活性を示し得る。また、このような触媒は、エチレンの存在下で、時間と共に失活速度の低下と長い触媒寿命を示す。都合の良いことに、本明細書に開示する実施形態の触媒は、組み合わせた異性化/メタセシス反応器の全性能、例えばより長い異性化触媒サイクル時間、より高い全ブテン類転化率、及びより多い生産、例えばメタセシス反応器でエチレンの存在下で使用した場合には高いプロピレン収量を向上し得る。
【0111】
本開示は、限定された数の実施形態を含むが、この開示の利点を得る当業者には、本開示の範囲から逸脱しないその他の実施形態に想到し得ることが分かるであろう。従って、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの少なくとも一部をその異性体に転化させるために、オレフィン類を含む流体流を、構造安定剤を含有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒を含む固定床と接触させることを含む、オレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項2】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項3】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項4】
上記構造安定剤が、元素Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Y、Zr、Mo及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項5】
上記触媒が上記構造安定剤を0.04重量%〜40重量%含む、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項6】
上記構造安定剤が、シリカ、アルミナ、及び天然クレーの少なくとも一つを含むバインダーの形態である、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項7】
上記構造安定剤が、化合物及び混合物の少なくとも一つを含む、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項8】
上記触媒が約0.25mm〜約5.0mmの範囲の有効径を有する、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項9】
上記触媒が約0.5mm〜約3.2mmの範囲の有効径を有する、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項10】
上記触媒が錠剤又は押出物の形態である、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項11】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒の初期活性は、少なくとも等モル量のエチレンの存在下で、600°Fの温度及び400psigの圧力で純1−ブテンを2−ブテンに転化させることによって測定される、1−ブテンに対する2−ブテン生成物比が少なくとも3である、請求項1に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項12】
オレフィンの少なくとも一部をその異性体に転化させるために、オレフィン類を含む流体流を、0.25mm〜4.0mmの範囲の有効径を有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒を含む固定床と接触させることを含む、オレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項13】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項12に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項14】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が酸化マグネシウムを含む、請求項12に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項15】
上記触媒の有効径が約0.5mm〜約3.2mmの範囲にある、請求項12に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項16】
上記触媒が錠剤又は押出物の形態である、請求項12に記載のオレフィン類の二重結合異性化方法。
【請求項17】
n−ブテン類、イソブテン、及びパラフィン類を含む炭化水素流を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン類及びパラフィン類を含む重質C留分とを含む少なくとも二つの留分に分留することと、
エチレンと上記重質C留分とを、構造安定剤を含有する活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒とメタセシス触媒とを含む固定床反応器に供給することと、
1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化させるために、上記重質C留分を上記活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒と接触させることと、
プロピレン、パラフィン類、未反応エチレン、並びに未反応1−ブテン及び2−ブテンを含むメタセシス生成物を形成するために、エチレンと、上記2−ブテンの少なくとも一部とを、メタセシス触媒と接触させることと、
を含む、プロピレンの製造方法。
【請求項18】
エチレン留分、プロピレン留分、及びC留分を回収するために、上記メタセシス生成物を分留することをさらに含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項19】
上記C留分の少なくとも一部を、炭化水素流の分留に再循環させることをさらに含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項20】
上記エチレン留分の少なくとも一部を、上記固定床反応器に再循環させることをさらに含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項21】
上記固定床反応器に供給するn−ブテンに対するエチレンの比率を約0.5〜約2.5の範囲内に維持することをさらに含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項22】
上記の供給するn−ブテンに対するエチレンの比率が少なくとも1.0である、請求項21に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項23】
上記メタセシス触媒が上記異性化触媒と混合される、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項24】
上記固定床反応器が、上記メタセシス触媒の層と上記異性化触媒の層とを含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項25】
上記炭化水素流がブタジエンをさらに含み、上記方法が分留の前に上記ブタジエンの少なくとも一部を水素化することをさらに含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項26】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項27】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が酸化マグネシウムを含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項28】
上記構造安定剤が、元素Si、Al、Zr、Mn、Cr、Fe、Y及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項29】
上記触媒が、上記構造安定剤を0.04重量%〜40重量%含む、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項30】
上記構造安定剤が、シリカ、アルミナ及び天然クレーの少なくとも一つを含む結合剤の形態である、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項31】
上記触媒が、約0.25mm〜約5.0mmの範囲の有効径を有する、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項32】
上記触媒が、約0.5mm〜約3.2mmの範囲の有効径を有する、請求項17に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項33】
n−ブテン類、イソブテン、及びパラフィン類を含む炭化水素流を、イソブテンを含む軽質C留分と、n−ブテン類及びパラフィン類を含む重質C留分とを含む少なくとも二つの留分に分留することと、
0.25〜4.0mmの間の有効径を有し且つ安定剤を含んでいない活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒とメタセシス触媒とを含む固定床反応器に、エチレンと上記重質C留分とを供給することと、
1−ブテンの少なくとも一部を2−ブテンに転化させるために、上記重質C留分を上記活性化された塩基性金属酸化物異性化触媒と接触させることと、
プロピレン、パラフィン類、未反応エチレン、並びに未反応1−ブテン及び2−ブテンを含むメタセシス生成物を形成するために、エチレンと、上記2−ブテンの少なくとも一部とを、メタセシス触媒と接触させることと、
を含む、プロピレンの製造方法。
【請求項34】
エチレン留分、プロピレン留分、及びC留分を回収するために、上記メタセシス生成物を分留することをさらに含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項35】
上記C留分の少なくとも一部を、炭化水素流の分留に再循環させることをさらに含む、請求項343に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項36】
上記エチレン留分の少なくとも一部を、上記固定床反応器に再循環させることをさらに含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項37】
上記固定床反応器に供給するn−ブテンに対するエチレンの比率を約0.5〜約2.5の範囲内に維持することをさらに含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項38】
上記供給されるn−ブテンに対するエチレンの比率が少なくとも1.0である、請求項37に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項39】
上記メタセシス触媒が上記異性化触媒と混合される、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項40】
上記固定床反応器が、上記メタセシス触媒の層と上記異性化触媒の層とを含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項41】
上記炭化水素流がブタジエンをさらに含み、上記方法が分留の前に上記ブタジエンの少なくとも一部を水素化することをさらに含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項42】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、及びこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項43】
上記塩基性金属酸化物異性化触媒が酸化マグネシウムを含む、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項44】
上記触媒が、約1.0mm〜約3.5mmの範囲の有効径を有する、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項45】
上記触媒が、約1.5mm〜約3.2mmの範囲の有効径を有する、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項46】
上記触媒が、錠剤又は押出物の形態である、請求項33に記載のプロピレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−520348(P2012−520348A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501037(P2012−501037)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040528
【国際公開番号】WO2011/011173
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(500443589)ラマス テクノロジー インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】