説明

エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物およびプロセス

本発明は、(a)二核クロム(II)錯体;(b)R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリル、C1−C10アルキル、アリールおよび置換アリールから独立して選択され、PNPN−単位またはPNPNP−単位が必要に応じて環系の一部である、一般構造(A)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−Hまたは(B)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−PR67のリガンド;および(c)活性剤または助触媒を有してなる触媒組成物、並びにエチレンの重合かのためのプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
直鎖状アルファオレフィン(LAO)は、洗浄剤、合成潤滑剤、コポリマー、可塑剤用アルコールおよび他の多くの重要な製品の製造にとって非常に有用な中間体である。エチレンのオリゴマー化によるそのようなLAOの製造業者は、例えば、シェル(SHELL)社、ビーピー(BP)社、サビック(SABIC)社、アモコ(AMOCO)社、シェブロン・フィリップス(CHEVRON PHILIPS)社など数多くある。これらの金属触媒によるエチレンオリゴマー化プロセスの全ての本質的な問題は、数学的分布(シュルツ・フローリーまたはポアソン分布)にしたがうLAO混合物の精製であり、この混合物は、分離するのが難しく、その組成は、市場の要望に適合しないことが多い。この技術的かつ経済的に不満の残る状況を解決するために、技術的制限を克服し、非選択的なエチレンオリゴマー化反応をより選択的なプロセスに転換するという重大な関心事がある。最近、これらの取組みは主に、エチレンの1−ヘキセンの選択的三量体化(レビュー:非特許文献1)並びにエチレンの1−オクテンへの選択的四量体化(最近のレビュー:非特許文献2)に集中している。
【0003】
エチレンの1−ヘキセンへの三量体化およびエチレンの1−オクテンへの四量体化に関する特許がすでにいくつか公知である。これらの場合のほとんどにおいて、広範囲の異なるリガンド系および活性剤(主族の金属アルキル化合物などの)と組み合わされて異なるクロム前触媒が利用された。
【0004】
クロム化合物、有機アルミニウム活性剤および異なるリガンドを有する、従来技術のクロム系のエチレン三量体化触媒は、例えば、特許文献1から14に列記されたものである。ここに、様々なキレートおよび非キレート供与体リガンドおよび多数のCr(III)前駆錯体がクレームされた。特許文献15において、酢酸クロム(II)などのCr(II)錯体が、既に記載され利用されているCr(III)錯体以外に、適切なリガンド系としての置換シクロペンタジエンと共にクレームされた。特許文献16において、例えば、酢酸クロム(II)などのCr(II)錯体がクレームされている。このクレームされたリガンドは、ビス(2−ジフェニルホスフィノ−エチル)アミンとその誘導体である。
【0005】
従来技術のエチレン四量体化触媒としては、三量体化プロセスのために同じ形態またはわずかに改変された形態で使用されてきた、多数の異なる遷移金属化合物、有機アルミニウム活性剤または異なるリガンドが挙げられる。四量体化に関する特許には、特許文献17から26がある。これらの特許文献のほとんどにおいて、得られたオレフィンの混合物は、1−オクテンを25重量%以下しか含有していない。つい最近の出願のいくつかにおいて、異なるPNP−および類似のキレート供与体リガンドが、Cr(III)錯体のみと共にクレームされた(特許文献27および28)。これらの出願は、エチレンのオリゴマー化において、1−ヘキセンをごくわずかしか同時に生成せずに1−オクテンに対する高い選択性(70質量%まで)が達成できることを示した最初のものであった。形成された9員環系(クロマシクロノナン(chromacyclononane))が、70質量%の選択性でのエチレンの1−オクテンへの選択的四量体化の理由であると指摘された。
【0006】
一般に公知の選択的エチレン三量体化と四量体化の触媒およびプロセスでは、いくつかの欠点に対処しなければならない。これらの触媒は、副反応経路からの副生成物のために、所望の生成物である1−ヘキサンおよび/または1−オクテンに対して低い選択性しか示さない。さらに、限られた純度の生成物しか得られない、すなわち、異性化、分岐オレフィン形成などのため、特定のC6−またはC8−内の選択性が低減してしまう。また、ワックスの形成、すなわち、重質の長鎖の高炭素数生成物の形成が検出される。このことは、高分子(ポリエチレン、分岐および/または架橋ポリエチレン)の形成にも当てはまり、これにより、生成物の収率が著しく損なわれ、設備のファウリング(fouling)が生じてしまう。さらに、従来技術のプロセスでは、不十分な回転率と触媒活性しか示さず、このため生成物1kg当たりのコストが高くつくことを述べておかねばならない。通常、リガンドは合成が難しいために、入手し難く、触媒コストが高くつく。この触媒性能は、微量不純物の影響を受けやすく、触媒成分は、しばしば、技術環境における取扱いが難しい。従来技術のプロセスは、通常、厳しい反応条件、すなわち、高温と高圧を必要とし、そのため、投資費用、保全費およびエネルギー費が高くつく。最後に、助触媒/活性剤にも高い費用が予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4668838号明細書
【特許文献2】欧州特許第668105号明細書
【特許文献3】米国特許第5750817号明細書
【特許文献4】米国特許第6031145号明細書
【特許文献5】米国特許第5811681号明細書
【特許文献6】欧州特許第537609号明細書
【特許文献7】欧州特許第1574492号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/783429号明細書
【特許文献9】国際公開第2005/039758号パンフレット
【特許文献10】仏国特許発明第2833191号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2002/035029号明細書
【特許文献12】国際公開第2002/004119号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2001/083447号パンフレット
【特許文献14】欧州特許第1110930号明細書
【特許文献15】国際公開第2003/004158号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2003/053891号パンフレット
【特許文献17】米国特許第6184428号明細書
【特許文献18】米国特許第3676523号明細書
【特許文献19】独国特許発明第1443927号明細書
【特許文献20】米国特許第3906053号明細書
【特許文献21】国際公開第2005/086251号パンフレット
【特許文献22】国際公開第2006/108803号パンフレット
【特許文献23】国際公開第2006/099053号パンフレット
【特許文献24】国際公開第2007/057455号パンフレット
【特許文献25】国際公開第2007/057458号パンフレット
【特許文献26】国際公開第2007/088329号パンフレット
【特許文献27】国際公開第2004/056478号パンフレット
【特許文献28】国際公開第2004/056479号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.H. Morgan et al. J. Organomet. Chem. 2004, 689, 3641;およびその中の引例
【非特許文献2】D. Wass, Dalton Trans. 2007, 816
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の難点を克服ことにあり、ワックスや高分子を形成せずにエチレンのオリゴマー化において改善された選択率と純度を示す触媒組成物であって、触媒とリガンドを調製するための費用が妥当であり、回転率がかなり改善された触媒組成物を提供することにある。
【0010】
さらに、エチレンのオリゴマー化プロセスを提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の課題は、(a)二核クロム(II)錯体;(b)R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリル、C1−C10アルキル、アリールおよび置換アリールから独立して選択され、PNPN−単位またはPNPNP−単位が必要に応じて環系の一部である、一般構造(A)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−Hまたは(B)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−PR67のリガンド;および(c)活性剤または助触媒;を有してなる触媒組成物により達成される。
【0012】
(A)および(B)の任意の環状誘導体をリガンドとして利用して差し支えなく、ここで、PNPN−単位(構造(A))またはPNPNP−単位(構造(B))のPまたはN原子の内の少なくとも一方は環の一員であり、この環は、置換によって構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から形成される、すなわち、構成化合物当たり2つの基R1−R7(定義のとおり)の全体またはHいずれか、2つの基R1−R7(定義のとおり)の各々から1つの原子または1つの基R1−R7(定義のとおり)の全体またはHおよび別の基R1−R7(定義のとおり)から1つの原子を形式的に除去し、形式的にこのように形成された原子価不飽和部位を構成化合物当たり1つの共有結合により結合させて、所定の部位に最初に存在したのと同じ原子価を提供することによって、形成されることが理解されよう。
【0013】
クロム錯体がCr−Cr結合を有する、または2つのクロムの中心が架橋リガンドにより結合されていることが好ましい。
【0014】
二核クロム錯体が:
【化1】

【化2】

【0015】
から選択されることが最も好ましい。
【0016】
ある実施の形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、クロロ、アミノ、トリメチルシリル、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、トリルおよびキシリルから選択される。
【0017】
別の実施の形態において、活性剤または助触媒が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミノキサン(MAO)またはこれらの混合物から選択される。
【0018】
リガンドは、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(CH3)−N(i−Pr)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Ph)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(tert−ブチル)−H、および(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(CH(CH3)(Ph))−Hから選択してよい。
【0019】
触媒組成物は溶媒を含み、この溶媒は、芳香族炭化水素、直鎖および環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィンおよびエーテル、またはそれらの混合物から選択されることが好ましく、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランが好ましく、トルエンが最も好ましい。
【0020】
本発明の第2の課題は、本発明による触媒組成物を、反応装置内のエチレンの気相に曝し、オリゴマー化を行う各工程を有してなる、エチレンのオリゴマー化プロセスにより達成される。
【0021】
オリゴマー化が1から200バールの圧力で行われることが好ましく、10から50バールがより好ましい。
【0022】
また、オリゴマー化が10から200℃の温度で行われることが好ましく、20から100℃がより好ましい。
【0023】
ある実施の形態において、このプロセスは、連続的、半連続的または不連続的に行われる。
【0024】
平均の滞留時間は10分間から20時間であってよく、1から4時間が好ましい。
【0025】
プロセスが三量体化または四量体化であることが最も好ましい。
【0026】
意外なことに、本発明の触媒組成物を利用したオリゴマー化プロセスにより、広範囲のLAO生成物が避けられ、経済的に最も好ましい生成物、すなわち、1−ヘキセンおよび1−オクテンの選択的な生成が可能になることが分かった。前例のない高い選択率、純度および十分に高い活性/回転頻度が達成される。
【0027】
本発明は、エチレンの1−オクテンへの選択的四量体化およびエチレンの1−ヘキセンへの三量体化が、その機構が、それぞれ、一核性メタロシクロノナンおよびメタロシクロヘプタンを含む一核性遷移金属錯体よりもむしろ、二核性遷移金属錯体を使用することによって、より効率的に進行できるという事実に基づくものである。
【0028】
どのような理論にも拘束することを意図するものではなく、四量体化反応に利用される二核性クロム錯体について、反応が、C4−鎖が以下の式:
【化3】

【0029】
に示されるように金属中心間で飽和C8−鎖に二量体化するメタロシクロペンタンを介して進行する機構が示唆されると推測される。この機構は、1−オクテンを生成する、クロム(II)からクロム(I)を介してクロム(0)へと二核性還元的脱離の新規の原理により特徴付けられる。
【0030】
本発明による触媒組成物は、選択的に1−ヘキセンを生成する、クロム(0)からクロム(I)を介してクロム(0)への(中性リガンドの場合)、またはクロム(I)/(II)からクロム(II)/(I)を介してクロム(I)/(0)への(陰イオン性リガンドの場合)の二核性還元的脱離の新規の原理にしたがって、適切なリガンドにより調整できる。
【化4】

【0031】
その上、意外なことに、(フェニル)2P−N(イソプロピル)−P(フェニル)2などの三座のリガンドの追加のNH(イソプロピル)単位による修飾によって、四座のリガンド((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))が得られることが分かった。触媒組成物において前者のリガンドを利用すると、エチレンの四量体化に対して選択率が高くなる一方で、後者のリガンドでは、以下の実施例の項目に示されるように、置換基に依存して、エチレンの三量体化または四量体化の選択率が高くなった。
【0032】
言い換えれば、本発明のプロセスにより、高い回転率と選択率で1−オクテンおよび1−ヘキセンが生成される。特別なリガンドを使用することによって、1−オクテンから1−ヘキセンへの切替えが容易にできる。さらに、高い再現性が得られる。例えば、この触媒系は、不純物からの干渉およびプロセス条件の変動に対して安定である。ワックスと高分子の形成もうまく抑制される。その上、本発明のプロセスにおいて、厳しくない反応条件を用いてもよく、その結果、技術規模のプラントに関する投資費およびエネルギー費と操業費が低く抑えられる。
【0033】
本発明の追加の利点および特徴は、実施例に基づく以下の詳細な説明から明白になるであろう。
【実施例】
【0034】
本発明の触媒組成物に使用すべきリガンドは、以下のように調製できる:
Ph2PN(i−Pr)PMeNH(i−Pr)の調製:2.21gのPh2PCl(10ミリモル)を、0℃で15mlのトルエン中の1.62gのMeP(NH(i−Pr))2(10ミリモル)(Eur. J. Inorg. Chem. 1999, 12, 2355-68)と5mlのトリエチルアミンの混合物にゆっくりと加えた。この溶液を室温でさらに2時間に亘り撹拌し、次いで、濾過して、アミン−塩酸塩を除去した。真空中での揮発性化合物の蒸発後、粘性油が残った。収率:80%。
【0035】
31P-NMR (C6D6); 33.7, 57.6 (broad)
二核錯体による三量体化
具体例1:
{[(i−Pr)2N]Cr[μ−(i−Pr)2N]}2、((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))およびトリエチルアルミニウムを使用したエチレンの三量体化
ディップチューブ、サーモウェル、ガス閉じ込め撹拌機、冷却コイル、温度、圧力および撹拌機の速度のための制御ユニットを備えた300mlの圧力反応装置を乾燥アルゴンで不活性化し、これに100mlの無水トルエンを入れた。次いで、10mlのトルエン中の81.7mg(0.2ミリモル)の((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))を、65.6mgの{[(i−Pr)2N]Cr[μ−(i−Pr)2N]}2(0.13ミリモル)とアルゴンブランケット下で組み合わせた。この触媒溶液を、トルエン中のトリエチルアルミニウムの1.9モル/リットル溶液3.6mlと共に、一定のアルゴンガス流量で反応装置に移した。
【0036】
この反応装置を密閉し、30バールの乾燥エチレンで加圧し、50℃に加熱した。1200rpmで撹拌しながら、エチレン圧力シリンダを絶えず秤量することによって、エチレンの消費量をデータ収集システムおよび電子天秤によってモニタした。120分間の滞留時間後、エチレンの圧力によって液体を、約100mlの水が満たされたガラス容器に移すことによって、液相中の反応を停止させた。この反応装置のヘッドスペースからの全気相を、校正したガス計量器によって定量し、次いで、パージされ真空にされたガス袋内に適量収集した。
【0037】
液体の有機相の分離後、秤量によって総質量を決定した。その後、この有機相の組成をGC/FIDによって別々に分析した。測定データに基づいて、物質収支を完結し、全体の収率および選択率を決定した。この具体例の生成物分布が表1に要約されている。
【0038】
比較具体例2:
CrCl3(テトラヒドロフラン)3、((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))およびトリエチルアルミニウムを使用したエチレンの三量体化
具体例1と同様に、300mlの圧力反応装置に100mlの無水トルエンを入れた。10mlのトルエン中の81.7mg(0.2ミリモル)の((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))を、50.0mg(0.13ミリモル)のCrCl3(テトラヒドロフラン)3とアルゴンブランケット下で組み合わせた。この触媒溶液を、トルエン中のトリエチルアルミニウムの1.9モル/リットル溶液3.6mlと共に、反応装置に移した。この反応装置を密閉し、30バールの乾燥エチレンで加圧し、50℃に加熱した。1200rpmで撹拌しながらの120分間の滞留時間後、反応混合物を徐々に仕上げ、上述したように分析した。この具体例の生成物分布が表1に要約されている。
【0039】
その比較は、二核錯体の活性が高いことを示している。
【表1】

【0040】
二核化合物による四量体化
具体例3:
{[(i−Pr)2N]Cr[μ−(i−Pr)2N]}2、((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))およびトリエチルアルミニウムを使用したエチレンの四量体化
具体例1と同様に、300mlの圧力反応装置に100mlの無水トルエンおよび10mlのトルエン中の69.3mgの((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))(0.2ミリモル)を、65.6mgの{[(i−Pr)2N]Cr[μ−(i−Pr)2N]}2(0.13ミリモル)と共に入れた。トルエン中のトリエチルアルミニウムの1.9M溶液3.6mlを加えた後、反応装置を密閉し、30バールの乾燥エチレンで加圧し、50℃に加熱した。1200rpmで撹拌しながらの120分間の滞留時間後、反応混合物を徐々に仕上げ、上述したように分析した。この具体例の生成物分布が表2に要約されている。
【0041】
比較具体例4:
CrCl3(テトラヒドロフラン)3、((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))およびトリエチルアルミニウムを使用したエチレンのオリゴマー化
具体例1と同様に、300mlの圧力反応装置に100mlの無水トルエンおよび10mlのトルエン中の69.3mgの((フェニル)2PN(イソプロピル)P(フェニル)NH(イソプロピル))(0.2ミリモル)を、50.0mgのCrCl3(テトラヒドロフラン)3(0.13ミリモル)と共に入れた。トルエン中のトリエチルアルミニウムの1.9M溶液3.6mlを加えた後、反応装置を密閉し、30バールの乾燥エチレンで加圧し、50℃に加熱した。1200rpmで撹拌しながらの120分間の滞留時間後、反応混合物を徐々に仕上げ、上述したように分析した。この具体例の生成物分布が表2に要約されている。
【表2】

【0042】
これらの具体例から分かるように、触媒組成物に利用されるリガンドを変えることによって、三量体化(具体例1および2)から四量体化(具体例3)への切替えが容易にできる。さらに、二核クロム(II)錯体を使用することによって、非選択的オリゴマー化(具体例4)から四量体化(具体例3)への切替えが容易にできる。
【0043】
先の説明および特許請求の範囲に開示された特徴は、別々と、その任意の組合せの両方で、本発明を様々な形態で実現するための素材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒組成物であって、
(a)二核クロム(II)錯体、
(b)R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリル、C1−C10アルキル、アリールおよび置換アリールから独立して選択され、PNPN−単位またはPNPNP−単位が必要に応じて環系の一部である、一般構造
(A)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−Hまたは
(B)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−PR67のリガンド、および
(c)活性剤または助触媒、
を有してなる触媒組成物
【請求項2】
前記クロム錯体がCr−Cr結合を有しているか、または2つのクロム中心が架橋リガンドにより結合されていることを特徴とする請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記二核クロム錯体が:
【化1】

【化2】

から選択されることを特徴とする請求項1または2記載の触媒組成物。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、クロロ、アミノ、トリメチルシリル、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、トリルおよびキシリルから選択されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記活性剤または助触媒が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミノキサン(MAO)またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記リガンドが、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(CH3)−N(i−Pr)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Ph)−H、(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(tert−ブチル)−H、および(Ph)2P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(CH(CH3)(Ph))−Hから選択されることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項7】
さらに溶媒を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、芳香族炭化水素、直鎖および環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィンおよびエーテル、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項7記載の触媒組成物。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載の触媒組成物を、反応装置内のエチレンの気相に曝し、20から100℃の温度でオリゴマー化を行う各工程を有してなる、エチレンのオリゴマー化プロセス。
【請求項10】
前記オリゴマー化が、1から200バールの圧力で行われることを特徴とする請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
連続的に行われることを特徴とする請求項9または10記載のプロセス。
【請求項12】
平均の滞留時間が10分間から20時間であることを特徴とする請求項9から11いずれか1項記載のプロセス。
【請求項13】
少なくとも:
(a)二核クロム(II)錯体、
(b)R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7が、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリル、C1−C10アルキル、アリールおよび置換アリールから独立して選択され、PNPN−単位またはPNPNP−単位が必要に応じて環系の一部である、一般構造
(A)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−Hまたは
(B)R12P−N(R3)−P(R4)−N(R5)−PR67のリガンド、および
(c)活性剤または助触媒、
を組み合わせることによって得られる触媒組成物。

【公表番号】特表2011−504799(P2011−504799A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535257(P2010−535257)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009305
【国際公開番号】WO2009/068157
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(507055615)リンデ アーゲー (29)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AG
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】