説明

エチレンオキシドの製造のための反応器システムおよびプロセス

反応器システムが、40mmを超えるチューブ内径を有する少なくとも1つの細長チューブを備え、この中に、担体上に堆積された銀およびプロモータ成分を含む触媒粒子の触媒床、が含まれ、前記プロモータ成分が、レニウム、タングステン、モリブデンおよびクロムから選択された元素を含むエチレンのエポキシ化のための反応器システム、反応器システム内に含まれる触媒床の存在下に、エチレンを酸素と反応させることを含むエチレンのエポキシ化のためのプロセス;ならびにエチレンのエポキシ化のためのプロセスによって酸化エチレンを得ること、およびエチレンオキシドを、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、またはエタノールアミンに変換することを含む、エチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはエタノールアミンを調製する方法。好ましくは、チューブ内径が、少なくとも45mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器システムに関する。本発明はまた、エチレンオキシド、およびエチレンオキシド由来の化学物質の製造における反応器システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシドは、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エタノールアミンおよび洗剤などの化学物質を作るための供給原料として使用されている重要な産業用化学物質である。エチレンオキシドを製造するための一方法は、エチレンのエポキシ化によってである、すなわち、酸素によるエチレンの触媒作用による部分的な酸化がエチレンオキシドをもたらす。このようにして製造されたエチレンオキシドは、エチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはエタノールアミンを生成するために、水、アルコールまたはアミンと反応される。
【0003】
エチレンエポキシ化において、エチレンおよび酸素を含む供給流が、ある反応条件に維持されている反応ゾーン内に含まれている触媒の床の上を通される。比較的高い反応熱が、適度な操作速度での断熱操作を不可能にする。発生された熱のいくらかは、顕熱として反応ゾーンを出るが、熱の大部分は、冷媒の使用を通じて除去される必要がある。触媒の温度は、エポキシ化および二酸化炭素と水への燃焼の相対速度が極めて温度依存性であるため、注意深く制御される必要がある。温度依存性は、比較的高い反応の熱とともに、容易に暴走反応に至る可能性がある。
【0004】
市販のエチレンエポキシ化リアクタは一般に、シェル/チューブ熱交換器の形態であり、この中で、複数のほぼ平行であり細長く、比較的に細いチューブに、充填床を形成するように触媒粒子が充填されており、また、シェルは冷媒を含む。使用されているエポキシ化触媒のタイプにかかわらず、商業運転では、チューブ内径はしばしば、20から40mmの範囲にあり、リアクタ当たりのチューブの数は、数千、たとえば12、000までの範囲にある。米国特許第4,921,681号が、参照され、これが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0005】
細いチューブ内に存在している触媒床では、触媒床およびホットスポット上での軸方向温度勾配が実用上除去される。このようにして、触媒の温度の注意深い制御が達成され、暴走反応に至る条件が、実質上回避される。
【0006】
多数のチューブおよびチューブの細さが、いくつかの困難を呈する。市販のリアクタは、これらの製造において費用がかかる。触媒粒子によるチューブの充填は、時間を消費し、および触媒充填は、すべてのチューブが、流れ条件の下で同じ抵抗性を提供するように、多くのチューブ上に分散されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リアクタ内の触媒床の熱および温度制御を妥協することなく、触媒がより少ない数のチューブ上に分散されることができる場合、かなり有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、反応器システムが、40mmを超えるチューブ内径を有する少なくとも1つの細長チューブを備え、この中に、担体上に堆積された銀およびプロモータ成分が含まれ、前記プロモータ成分が、レニウム、タングステン、モリブデンおよびクロムから選択された元素を含む触媒粒子の触媒床が含まれる、エチレンのエポキシ化のための反応器システムを提供する。より好ましくは、チューブ内径は、少なくとも45mmである。
【0009】
本発明はまた、本発明の反応器システム内に含まれる触媒床の存在下に、エチレンを酸素と反応させることを含むエチレンのエポキシ化のためのプロセスを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、本発明によるエチレンのエポキシ化のためのプロセスによってエチレンオキシドを得ること、およびエチレンオキシドを、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、またはエタノールアミンに変換することを含む、エチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはエタノールアミンを調製する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によると、40mm超、好ましくは少なくとも45mm、および通常80mmまでのチューブ内径の細長チューブを備える、反応器システムが、提供される。これは、通常20〜40mmのチューブ内径を有する、従来実施されている細長チューブよりも大きい。たとえば39mmからたとえば55mmへ、チューブ内径を増加させることは、同じ触媒荷重が、同じ床深さを適用しているチューブ上に分配されるとき、チューブの数をおよそ半減させることになる。より大きなチューブ内径を使用することはまた、触媒床上での圧力降下を低下させることができる、触媒床内でのより大きな触媒粒子の使用を可能にする。
【0012】
150g/kg触媒未満の量での銀、およびレニウム、タングステン、モリブデンおよびクロムから選択されたプロモータ成分を追加で含むエポキシ化触媒が、何年もの間商業上使用されている。本発明の重要な態様は、このような触媒が、触媒床の温度および熱制御の妥協なしで、従来使用されているものよりも大きいチューブ内径を有するリアクタチューブで使用され得ることの、このような商業上の使用の、何年も後になってのみの認識である。少なくとも150g/kg触媒の量で銀を有する、このようなエポキシ化触媒の使用が、特に有利である。
【0013】
理論によって制限されることを望まないが、重要な因子は、これらの触媒が、プロモータ成分を含まない触媒よりも、暴走反応を生じさせにくいということである。すなわち、有機ハロゲン化物反応調整剤が存在している実用上のエポキシ化条件の下では、プロモータ成分を含む触媒は、変換されたエチレンのモル当たり、より少ない熱を発生させ、より低い活性化エネルギーが全体の反応速度をより低い温度依存性にする。また、有機ハロゲン化物に対する触媒の応答に、差が存在し得る。プロモータ成分を含む触媒の場合、温度の不慮の増加が、温度増加によって期待されるよりも低い反応速度を生じさせ、プロモータ成分を含まない触媒の場合、温度の不慮の増加が、温度増加によって期待されるよりも大きい反応速度の増加を生じさせる。このようにして、プロモータ成分を有する触媒の場合、有機ハロゲン化物に対する触媒の応答は、触媒がプロモータ成分を有さない場合での増幅効果とは逆に、緩和効果を有する。有機ハロゲン化物反応調整剤に対する触媒の応答は、EP−A−352850から公知であり、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0014】
細長チューブ12、および細長チューブ12内に含まれている、触媒床14、通常パックされた触媒床を備える本発明の反応器システム10を示している、図1を参照する。細長チューブ12は、反応ゾーンを画定している内部チューブ表面18およびチューブ内径20を備えるチューブ壁16を有し、この中に触媒床14、および反応ゾーン直径20が含まれている。細長チューブ12は、チューブ長さ22を有し、反応ゾーン内に含まれている触媒床14は、床深さ24を有する。
【0015】
チューブ内径20は、40mm超、好ましくは45mm以上、および典型的には最大で80mmである。特に、チューブ内径20は、少なくとも48mm、より具体的には少なくとも50mmである。好ましくは、チューブ内径は、70mm未満、より好ましくは60mm未満である。好ましくは、細長チューブの長さ22は、少なくとも3m、より好ましくは少なくとも5mである。好ましくは、チューブ長さ22は、最大で25m、より好ましくは最大で20mである。好ましくは、細長チューブの壁厚は、少なくとも0.5mm、より好ましくは少なくとも0.8mm、および特に少なくとも1mmである。好ましくは、細長チューブの壁厚は、最大で10mm、より好ましくは最大で8mm、および特に最大で5mmである。
【0016】
床深さ24の外側に、細長チューブ12は、たとえば、供給流との熱交換の目的のための、非触媒のもしくは不活性材料の粒子の別個の床、および/またはたとえば、反応生成物との熱交換の目的のためのこのような別個の床を含んでもよい。好ましくは、床深さ24は、少なくとも3m、より好ましくは少なくとも5mである。好ましくは、床深さ24は、最大で25m、より好ましくは最大で20mである。細長チューブ12は、エチレンおよび酸素を含む供給流が中に導入されることができる取入チューブ端部26、ならびにエチレンオキシドおよびエチレンを含む反応生成物が引き出されることができる、排出チューブ端部28をさらに有する。反応生成物内のエチレンは、もし存在するなら、変換されずにリアクタゾーンを通過する供給流のエチレンであることに、注意されたい。エチレンの通常の変換は、10モルパーセントを超えるが、ある例では、変換は、それよりも少ない。
【0017】
反応器システムは、担体上に堆積された銀およびプロモータ成分を含む触媒の粒子の触媒床を備える。本発明の通常の実施では、触媒床の大部分が、触媒粒子を備える。「大部分」によって、触媒床内に含まれるすべての粒子の重さに対する触媒粒子の重さの比率が、少なくとも0.50、特に少なくとも0.8、しかし、好ましくは少なくとも0.85、最も好ましくは少なくとも0.9であることが意味される。触媒粒子以外の、触媒床内に含まれ得る粒子は、たとえば、不活性粒子である。しかし、このような他の粒子が存在しないことが好ましい。
【0018】
本発明においての使用のための担体は、広範囲な材料に基づいてもよい。このような材料は、天然または人工の非有機材料であり、これらは、耐火物材料、炭化ケイ素、粘土、ゼオライト、木炭、およびたとえば炭化カルシウムなどのアルカリ土類金属炭化物を含んでもよい。アルミナ、マグネシア、ジルコニアおよびシリカなどの耐火物材料が、好ましい。最も好ましい材料は、α−アルミナである。通常、担体は、担体の重量に対して、少なくとも85%w、より典型的には少なくとも90%w、特に少なくとも95%wα−アルミナ、しばしば99.9%wまでのα−アルミナを備える。α−アルミナ担体の他の成分は、たとえば、シリカ、アルカリ金属成分、たとえばナトリウムおよび/またはカリウム成分、ならびに/あるいはアルカリ土類金属成分、たとえばカルシウムおよび/またはマグネシウム成分を含んでもよい。
【0019】
担体の表面積は、担体の重量に対して、適切には、少なくとも0.1m/g、好ましくは少なくとも0.3m/g、より好ましくは少なくとも0.5m/g、および特に少なくとも0.6m/gであり、この表面積は、担体の重量に対して、適切には、最大で10m/g、好ましくは最大で5m/g、および特に最大で3m/gである。本明細書で使用される「表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60(1938)pp.309−316に記載されている、B.E.T.(Brunauer、EmmettおよびTeller)法によって決定される、表面積に関するものと見なされる。大きな表面積担体は、特に、これらが、シリカ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の追加成分を場合によって備えるα−アルミナ担体であるとき、動作の改善された性能および安定性を提供する。
【0020】
担体の水吸収は、通常、0.2から0.8g/gの範囲、好ましくは0.3から0.7g/gの範囲にある。より高い水吸収が、ある場合は、含浸による担体上へ銀および他の元素のより効率的な堆積の点で好ましい。しかし、より高い水吸収では、担体、またはこれから作られる触媒が、低い破壊強度を有し得る。本明細書で使用されるとき、水吸収はASTM C20によって測定されることを求められ、水吸収は、担体の重さに対する、担体の孔内に吸収されることができる水の重さとして表現される。
【0021】
担体は、通常、好ましくは成形体の形態で、焼かれた、すなわち焼結された担体であり、このサイズは、この中で触媒粒子が触媒床内に含まれる、細長チューブの内径によって一般に決定される。一般に、当業者は、成形体の適切なサイズを決定することができる。台形、円筒、鞍形、球、ドーナツ形などの形態の成形体を使用することが、極めて便利であることが見出されている。触媒粒子は、ほぼ中空の円筒形の幾何形状を好ましくは有する。図2を参照すると、ほぼ中空の円筒形の幾何形状を有する触媒粒子30は、典型的には4から20mm、より典型的には5から15mmの長さ32、典型的には4から20mm、より典型的には5から15mmの外径34、および、典型的には0.1から6mm、好ましくは0.2から4mmの内径36を有する。適切には、触媒粒子は、前に説明されたような長さおよび内径、ならびに少なくとも7mm、好ましくは少なくとも8mm、より好ましくは少なくとも9mm、および最大で20mm、または最大で15mmの外径を有する。外径34に対する長さ32の比率は、典型的には0.5から2、より典型的には0.8から1.2の範囲にある。いずれかの特定の理論に制限されることを欲していないが、中空の円筒の内径によって提供される隙間が、触媒を調製するとき、たとえば含浸による、担体上への触媒成分の改良された堆積、および、乾燥などの改良されたさらなる操作を可能にすること、ならびに、触媒を調製するとき、触媒床での圧力降下を小さくすることが、考えられる。比較的小さい孔径を適用することの利点はまた、成形された担体材料が、より大きな孔径を有する担体材料と比較してより高い破壊強度を有することである。
【0022】
いくつかの実施形態では、特にα−アルミナベースの担体が、採用されているとき、担体表面をスズまたはスズ化合物で被覆することは、触媒の選択性を改良する目的のために有用であり得る。適切には、スズの量は、担体の重さに対する金属スズとして計算された、0.1から10%w、より適切には0.5から5%w、特に1から3%w、たとえば2%wの範囲であってよい。このような被覆は、担体が、プロモータ化合物を含む触媒を調製するために使用されるかどうかにかかわらず適用される。このような被覆された担体は、US−A−4701347、US−A−4548921およびUS−A−3819537から公知であり、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。被覆された担体は、たとえばトルエンまたはヘキサンなどの有機希釈剤内の有機スズ化合物の溶液に担体を含浸させることによって、適切に調製されてよい。適切な有機スズ化合物は、たとえばスズアルコキシドまたはスズアルカノエートであり得る。好ましいスズアルカノエートは、たとえばスズネオデカノエートまたはスズヘキサデカノエートである。スズを含浸させた担体は、400から1200℃の間、たとえば600℃の温度で空気中において乾燥されてもよい。
【0023】
触媒の調製は当技術分野で公知であり、また公知の方法が、本発明の実施において使用され得る触媒粒子の調製に適用可能である。担体上に銀を堆積させる方法は、担体にカチオン銀を含む銀化合物を含浸させること、および金属銀粒子を形成するために還元を行うことを含む。たとえば、US−A−5380697、US−A−5739075、EP−A−266015、およびUS−B−6368998が参照され、これらの米国特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0024】
カチオン銀の金属銀への還元は、還元それ自体が別個のプロセスステップを必要としないように触媒が乾燥されるステップ中に達成される。銀を含んでいる含浸溶液が、還元剤、たとえば、シュウ酸塩、乳酸塩またはホルムアルデヒドを含む場合、これがあてはまり得る。
【0025】
適用可能な触媒活性が、触媒の重量に対して少なくとも10g/kgの触媒という触媒の銀含有量を採用することによって得られる。好ましくは、触媒は、50から500g/kg、より好ましくは100から400g/kgの量で、銀を含む。
【0026】
ある実施形態では、高い銀含有量を有する触媒を使用することが好ましい。好ましくは、触媒の銀含有量は、触媒の重量に対して、少なくとも150g/kg、より好ましくは少なくとも200g/kg、および最も好ましくは少なくとも250g/kgであり得る。好ましくは、触媒の銀含有量は、触媒の重量に対して、最大で500g/kg、より好ましくは最大で450g/kg、および最も好ましくは最大で400g/kgであり得る。好ましくは、触媒の銀含有量は、触媒の重量に対して、150から500g/kg、より好ましくは200から400g/kgの範囲にある。たとえば、触媒は、触媒の重量に対して、150g/kg、または180g/kg、または190g/kg、または200g/kg、または250g/kg、または350g/kgの量の銀を含んでもよい。たとえば触媒全体に対して、150から500g/kgの範囲で比較的高い銀含有量を有する触媒の調製では、銀の複数の堆積を適用することが有利であり得る。
【0027】
本発明においての使用のための触媒は、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、およびこれらの混合物から選択された元素を含むプロモータ成分を含む。好ましくは、プロモータ成分は、元素として、レニウムを含む。
【0028】
プロモータ成分は通常、触媒の重さに対する元素(すなわち、レニウム、タングステン、モリブデンおよび/またはクロム)の全量として計算された、少なくとも0.01ミリモル/kg、より典型的には少なくとも0.1ミリモル/kg、および好ましくは少なくとも0.5ミリモル/kgの量で存在し得る。プロモータ成分は、触媒の重さに対する元素の全量として計算された、最大で50ミリモル/kg、好ましくは最大で10ミリモル/kg、より好ましくは最大で5ミリモル/kgの量で存在し得る。それにおいてプロモータ成分が担体上に堆積される形態は、本発明に重要ではない。たとえば、プロモータ成分は、酸化物としてまたはオキシアニオンとして、たとえば、塩または酸の形態の、レニウム酸、過レニウム酸、またはタングステン酸として適切に提供される。
【0029】
触媒は、プロモータ成分を含むレニウムを含み、レニウムは、通常、触媒の重さに対する元素の量として計算された、少なくとも0.1ミリモル/kg、より典型的には少なくとも0.5ミリモル/kg、および好ましくは少なくとも1.0ミリモル/kg、特に少なくとも1.5ミリモル/kgの量で存在し得る。レニウムは、通常、最大で5.0ミリモル/kg、好ましくは最大で3.0ミリモル/kg、より好ましくは最大で2.0ミリモル/kg、特に最大で1.5ミリモル/kgの量で存在する。
【0030】
さらに、触媒がプロモータ成分を含むレニウムを含むとき、触媒は、好ましくは担体上に堆積されたさらなる成分として、レニウムコプロモータを含んでよい。適切には、レニウムコプロモータは、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リン、ボロン、およびこれらの混合物から選択された元素を含む成分から選択され得る。好ましくは、レニウムコプロモータは、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄およびこれらの混合物を含む成分から選択される。レニウムコプロモータが、元素として、タングステンを含むことが特に好ましい。
【0031】
レニウムコプロモータは、通常、少なくとも0.01ミリモル/kg、より典型的には少なくとも0.1ミリモル/kg、および好ましくは少なくとも0.5ミリモル/kgの、触媒の重量に対する元素として計算された全量(すなわち、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リンおよび/またはボロンの合計)で存在し得る。レニウムコプロモータは、同じベース上に、最大で40ミリモル/kg、好ましくは最大で10ミリモル/kg、より好ましくは最大で5ミリモル/kgの全量で存在し得る。この中でレニウムコプロモータが担体上に堆積され得る形態は、本発明に重要ではない。たとえば、これは、酸化物としてまたはオキシアニオンとして、たとえば、塩または酸の形態での、硫酸塩、ボロン塩またはモリブデン塩として適切に提供される。
【0032】
触媒は、好ましくは、担体上に堆積された、銀、プロモータ成分、および、さらなる元素を含む成分を備える。望ましいさらなる元素は、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオビウム、ガリウムおよびゲルマニウムならびにこれらの混合物の群から選択されてもよい。好ましくは、アルカリ金属は、リチウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択される。最も好ましくは、アルカリ金属は、リチウム、カリウムおよび/またはセシウムである。好ましくはアルカリ土類金属は、カルシウムおよびバリウムから選択される。通常、さらなる元素は、触媒の重さに対する元素として計算された、0.01から500ミリモル/kg、より典型的には0.05から100ミリモル/kgの全量で触媒内に存在する。さらなる元素は、いかなる形態でも提供される。たとえば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩が適切である。
【0033】
本明細書で使用されるとき、触媒内に存在しているアルカリ金属の量は、100℃の脱イオン化された水によって触媒から抽出されることができる範囲の量であると判断される。抽出方法は、100℃で5分間、脱イオン化された水の20mlポーション内で触媒を加熱することによって、触媒の10グラムサンプルを3回抽出すること、および公知の方法、たとえば原子吸収分光法を使用することによって、関連する金属を組み合わせられた抽出物において決定することを含む。
【0034】
本明細書で使用されるとき、触媒内に存在しているアルカリ土類金属の量は、100℃で脱イオン化された水の中で10%w硝酸によって触媒から抽出されることができる範囲の量であると判断される。抽出方法は、30分間(1気圧、すなわち、101.3kPa)、10%w硝酸の100mlポーションとともに触媒を煮沸することによって触媒の10グラムサンプルを抽出すること、および公知の方法、たとえば原子吸収分光法を使用することによって、関連する金属を組み合わせられた抽出物において決定することを含む。US−A−5801259が参照され、これが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明において使用され得るのに適切な触媒は、CRI International(ヒューストン、合衆国テキサス州)によって販売されているような、S−882によって示されている触媒である。
【0036】
図3は、図1に示されているような1つ以上の反応器システムを備えるシェル/チューブ熱交換器42を備える、典型的なエチレンオキシド製造システム40を示す概略図である。通常、複数の本発明の反応器システムが、シェル/チューブ熱交換器のシェル内への挿入のために、チューブ束に互いに集められる。細長チューブおよびそれらの内容物が、ガス流が細長チューブを通過するとき、同じ抵抗性を提供するように、触媒粒子が、個別の細長チューブ内に包装されてもよいことを、当業者なら理解される。シェル/チューブ熱交換器42内に存在している細長チューブの数は、典型的には1,000から15,000の範囲、より典型的には2,000から10,000の範囲にある。一般に、このような細長チューブは、互いに対して実質上平行な位置にある。エチレンオキシド製造システム40は、1つ以上のたとえば2つ、3つまたは4つのシェル/チューブ熱交換器42を備えてもよい。
【0037】
特に試験の目的のために、シェル/チューブ熱交換器42は、シェル/チューブ熱交換器から個別に取外し可能である、および異なる内径の細長チューブに対して交換可能である、細長チューブを備えてもよい。代替として、細長チューブは1つ以上の束として取外し可能および交換可能であってもよい。望ましい場合、触媒の性能が、異なる内径の細長チューブを有するシェル/チューブ熱交換器において試験されてもよい。
【0038】
エチレンおよび酸素を含む供給流が導管44を介してシェル/チューブ熱交換器42のチューブ側へ充填され、この中で、供給流が、本発明の反応器システムの細長チューブ12内に含まれている触媒床と接触する。シェル/チューブ熱交換器42は、典型的には、触媒床を通る上向きまたは下向きのガスの流れを許すようにして操作される。反応の熱が除去され、および反応温度、すなわち触媒床内の温度の制御が、導管46を用いてシェル/チューブ熱交換器42のシェル側に充填される、熱伝達流体、たとえば油、灯油または水の使用によって達成され、熱伝達流体が、導管48を通ってシェル/チューブ熱交換器42のシェルから取り除かれる。
【0039】
エチレンオキシド、未反応のエチレン、未反応の酸素を含む反応生成物、および場合によって二酸化炭素および水などの他の反応生成物が、導管50を通ってシェル/チューブ熱交換器42の反応器システムチューブから引き出され、分離システム52へ通過する。分離システム52は、エチレン、ならびに、存在する場合、二酸化炭素および水からのエチレンオキシドの分離を可能にする。水などの抽出流体が、これらの成分を分離するために使用されることができ、導管54を用いて分離システム52へ導入される。エチレンオキシドを含んでいる濃縮抽出流体が、分離システム52から導管56を通って通過するが、未反応のエチレンおよび、存在する場合二酸化炭素が、分離システム52から導管58を通って通過する。分離された二酸化炭素が、分離システム52から導管61を通って通過する。導管58を通過するガス流の一部分が、導管60を通ってパージ流として除去されることができる。残りのガス流が、導管62を通って再循環圧縮機64へ通過する。エチレンおよび酸素を含んでいる流れが、導管66を通って通過し、導管62を通過する再循環エチレンと組み合わされ、組み合わされた流れが、再循環圧縮機64へ通過される。再循環圧縮機64が、導管44内へ排出し、それによって、排出流が、シェル/チューブ熱交換器42のチューブ側の取入口へ充填される。作成されたエチレンオキシドはたとえば蒸留または抽出によって、濃縮抽出流体から回収されてもよい。
【0040】
導管44を通過する供給流内のエチレン濃度は、広い範囲で選択され得る。通常、供給流内のエチレン濃度は、全供給と比較して、最大で80モル%である。好ましくは、これは、同じベースで、0.5から70モル%、特に1から60モル%の範囲内である。本明細書で使用されるとき、供給流は、触媒粒子と接触する組成であると見なされる。
【0041】
本エポキシ化プロセスは、空気ベースまたは酸素ベースである。「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、3rdedition、Volume9、1980、pp.445−447を参照されたい。空気ベースのプロセスでは、空気または酸素の豊富な空気が、酸化剤の発生源として採用されているが、酸素ベースのプロセスでは、高純度の(少なくとも95モル%)酸素が、酸化剤の発生源として採用される。現在、大部分のエポキシ化プラントは、酸素ベースであり、これが本発明の好ましい実施形態である。
【0042】
導管44を通過する供給流における酸素濃度は、広い範囲内で選択され得る。しかし、実際は、酸素は、可燃性の状況を回避する濃度で一般に適用される。通常、適用される酸素の濃度は、全供給流に対して、1から15モル%、より典型的には2から12モル%の範囲内である。実際の安全な動作範囲は、供給流組成とともに、反応温度および圧力などの反応条件にも依存する。
【0043】
有機ハロゲン化物が、選択性を増加させる反応調整剤として、導管44を通過する供給流内に存在してもよく、望ましいエチレンオキシドの形成に対して、エチレンまたはエチレンオキシドの二酸化炭素、および水への望ましくない酸化を抑制する。新鮮な有機ハロゲン化物が、導管66を通ってプロセスに適切に供給される。有機ハロゲン化物は、特に有機臭化物、およびより具体的には有機塩化物である。好ましい有機ハロゲン化物は、クロロハイドロカーボンまたはブロモハイドロカーボンである。より好ましくは、これらは、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニルまたはこれらの混合物の群から選択される。塩化エチルおよび二塩化エチレンが、より好ましい。
【0044】
有機ハロゲン化物は、供給において、たとえば、全供給に対して、0.01モル%までの低濃度で使用されるとき、反応調整剤として一般に効果的である。有機ハロゲン化物が、全供給に対して、最大で50×10−4モル%、特に最大で20×10−4モル%、より具体的には最大で15×10−4モル%、および好ましくは全供給に対して、少なくとも0.2×10−4モル%、特に少なくとも0.5×10−4モル%、より具体的には少なくとも1×10−4モル%の濃度で供給流内に存在することが、好ましい。
【0045】
エチレン、酸素および有機ハロゲン化物に加えて、供給流は、たとえば二酸化炭素、不活性ガスおよび飽和炭化水素などの1つ以上の任意選択の成分を含む。二酸化炭素は一般に、触媒活性に対して負の影響を有する。有利には、分離システム52が、導管44を通る供給流内の二酸化炭素の量が少ない、たとえば2モル%下回る、好ましくは1モル%下回る、または0.2から1モル%の範囲内であるようにして動作する。不活性ガス、たとえば窒素またはアルゴンが30から90モル%、典型的には40から80モル%、の濃度で導管44を通過する供給流内に存在してもよい。適切な飽和炭化水素は、メタンおよびエタンである。飽和炭化水素が存在している場合、これらは、全供給に対して80モル%まで、特に75モル%までの量で存在してもよい。これらは、頻繁には、少なくとも30モル%、より頻繁には少なくとも40モル%の量で存在する。飽和炭化水素が、酸素の燃焼限界を増加させるために採用されてもよい。エチレン以外のオレフィンが、エチレンの量に対して、たとえば10モル%未満、特に1モル%未満の量で、供給流内に存在してもよい。しかし、エチレンが、供給流内に存在する単一のオレフィンであることが好ましい。
【0046】
エポキシ化プロセスは、広い範囲から選択された反応温度を使用して実行され得る。好ましくは、反応温度は、150から340℃の範囲、より好ましくは、180から325℃の範囲にある。通常、シェル側の熱伝達液体は、反応温度よりも低い、典型的には1から15℃、より典型的には2から10℃である温度を有する。
【0047】
触媒の非活性化の影響を低減させるために、反応温度が、徐々にまたは、複数のステップで、たとえば0.1から20℃、特に0.2から10℃、より具体的には0.5から5℃などのステップで増加される。反応温度の全体的な増加は、10から140℃、より典型的には20から100℃の範囲にあり得る。反応温度は、新鮮な触媒が使用されるときの、典型的には、150から300℃、より典型的には200から280℃の範囲内のレベルから、触媒が経年変化により活性が低下しているときの、230から340℃、より典型的には240から325℃の範囲内のレベルまで、増加され得る。
【0048】
エポキシ化プロセスは、1000から3500kPaの範囲の取入チューブ端部26内の圧力で、好ましくは実行される。「GHSV」すなわち時間当たり気体空間速度(Gas Hourly Space Velocity)は、1時間当たりに触媒床の全体積の1単位上を通過する、通常の温度および圧力(0℃、1気圧、すなわち101.3kPa)でのガスの単位体積である。好ましくは、GHSVは、1500から10000Nm/(m.h)の範囲にある。好ましくは、プロセスは、1時間当たり全触媒床のm当たりに生成される0.5から10キロモルエチレンオキシド、特に1時間当たり全触媒床のm当たりに生成される0.7から8キロモルエチレンオキシド、たとえば特に1時間当たり全触媒床のm当たりに生成される5キロモルエチレンオキシドの範囲の作業速度で実行される。
【0049】
エポキシ化プロセスにおいて生成されたエチレンオキシドは、たとえば、エチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはエタノールアミンに変換され得る。
【0050】
エチレングリコールまたはエチレングリコールエーテルへの変換は、たとえば、酸性の、または塩基性の触媒を適切に使用してエチレンオキシドを水と反応させることを含んでもよい。たとえば、優勢にエチレングリコールを、およびより少なくエチレングリコールエーテルを作るために、エチレンオキシドが、100kPa絶対気圧で50〜70℃での、全反応混合物を基にして、たとえば0.5〜1.0%w硫酸などの酸性触媒の存在下の液相反応で、または好ましくは触媒なしで、130〜240℃および2000〜4000kPa絶対気圧での気相反応で、水の10倍モル過剰と反応され得る。水の割合が低下した場合、反応混合物内のエチレングリコールエーテルの割合が増加する。このようにして生成されたエチレングリコールエーテルは、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテル、またはそれに続くエーテルであり得る。代替となるエチレングリコールエーテルが、水の少なくとも一部分をアルコールによって置換することによって、アルコール、特にメタノールまたはエタノールなどの第一級アルコールによってエチレンオキシドを変換するによって調製され得る。
【0051】
エチレンオキシドが、エチレンオキシドを、これを二酸化炭素と反応させることによって炭化エチレンに最初に変換し、次にエチレングリコールを形成するために炭化エチレンを加水分解することによって、エチレングリコールに変換され得る。適用可能な方法に対して、US−A−6080897が参照され、これが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0052】
エタノールアミンへの変換は、エチレンオキシドを、アンモニア、アルキルアミンまたはジアルキルアミンなどのアミンと反応させることを含んでもよい。無水アンモニアまたはアンモニア水が使用され得る。無水アンモニアは通常、モノエタノールアミンの生成を有利にするために使用される。エチレンオキシドのエタノールアミンへの変換において適用可能な方法に対して、たとえばUS−A−4845296が参照され、これが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
エチレングリコールおよびエチレングリコールエーテルは、多種多様な産業上の用途で使用され得る。たとえば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化樹脂システム、洗剤、熱伝達システムなどの分野で、たとえば、天然ガスの処理(「スイートニング」)で、エタノールアミンが使用される。
【0054】
別段の記載がない場合特定されないが、本明細書で述べられた有機化合物、たとえばオレフィン、エチレングリコールエーテル、エタノールアミンおよび有機ハロゲン化物は、典型的には最大で40炭素原子、より典型的には最大で20炭素原子、特に最大で10炭素原子、より具体的には最大で6炭素原子を有する。本明細書で定義されるとき、炭素原子の数(すなわち、炭素数)に対する範囲は、範囲の限界に対して特定された数を含む。
【0055】
以下の実施例は、本発明の利点を示すように意図されており、および本発明の範囲を過度に限定するように意図されてはいない。
【実施例】
【0056】
実施例I(比較、本発明によらない)
エチレンおよび酸素からエチレンオキシドを製造するためのプロセスにおける銀を含む触媒の使用のための適切な動的モデルを備える、リアクタモデルが、開発された。適切なリアクタモデルが、レニウムおよびタングステンを含む銀触媒のために開発され、別の適切なリアクタモデルが、レニウムおよびレニウムコプロモータを含まない銀触媒のために開発された。
【0057】
モデルは、マイクロリアクタ活性データ、パイロットプラントデータおよび触媒性能データの他のソースなどの様々なソースから集められた実際の触媒性能データの相関に基づいている。
【0058】
適切なリアクタモデルを使用して、約8mmの外径34、約8mmの長さ32および約3.2mmの内径36を有する、触媒粒子の標準的な円筒形の充填床を含む長さ11.8mおよび38.9mm内径のリアクタチューブ内で行われたときの、プロセスがモデル化された。触媒は、銀、レニウム、およびタングステンを含み、リアクタチューブは、沸騰水反応器内で冷却される。銀の量は、触媒の重量に対して275g/kgであった。モデル化されたプロセスの動作条件は、3327Nl/l.hのGHSV、1.75MPaの取入圧力、1時間当たり、充填床m当たり3.3キロモルエチレンオキシドの作業速度、および、25モル%エチレン、8.5モル%酸素、1モル%二酸化炭素、1モル%窒素、2.7モル%アルゴン、1モル%エタンの供給流の組成であり、残りはメタンであった。触媒の選択性は、89.9モル%であると推定される。
【0059】
シェル側の冷媒温度は、230℃であると計算された。モデルは、この内径(38.9mm)のチューブ内で、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に、247℃まで上昇され得ることを予測した。これは、暴走反応の特徴である。したがって、モデル予測によると、これらの条件下での暴走に対する限界は、17℃である。
【0060】
実施例II
内径が38.9mmの代わりに54.4mmであったということの違いで、実施例Iが、繰り返された。
【0061】
シェル側の冷媒温度は、228℃であると計算された。モデルは、この内径(54.4mm)のチューブでは、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に240℃まで上昇され得ることを予測した。したがって、モデル予測によると、これらの条件下での暴走に対するマージンは12℃である。
【0062】
実施例III(比較、本発明によらない)
触媒が、触媒の重量に対して、132g/kgの量の銀を含んだということの違いで、実施例Iが、繰り返された。触媒の選択性は、89.1モル%であると推定される。
【0063】
シェル側の冷媒温度は、234℃であると計算された。モデルは、この内径(38.9mm)のチューブでは、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に247℃まで上昇され得ることを予測した。したがって、モデル予測によると、これらの条件の下では、暴走に対するマージンは、13℃である。
【0064】
実施例IV
内径が38.9mmの代わりに54.4mmであったということの違いで、実施例IIIが、繰り返された。
【0065】
シェル側の冷媒温度は、232℃であると計算された。モデルは、この内径(54.4mm)のチューブでは、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に240℃まで上昇され得ることを予測した。これらの条件の下では、暴走に対するマージンは、8℃である。
【0066】
実施例V(比較、本発明によらない)
触媒が、触媒の重量に対して、145g/kgの量の銀を含み、レニウムおよびレニウムコプロモータを含まないこと、レニウムおよびレニウムコプロモータを含まない銀触媒のための適切なリアクタモデルが使用されたこと、および内径が、38.9mmの代わりに38.5mmであったことの違いで、実施例Iが、繰り返された。触媒の選択性は、82.7モル%であると推定される。
【0067】
シェル側の冷媒温度は、199℃であると計算された。モデルは、この内径(38.5mm)のチューブでは、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に209℃まで上昇され得ることを予測した。したがって、モデル予測によると、これらの条件の下では、暴走に対するマージンは、10℃である。
【0068】
実施例VI(比較、本発明によらない)
内径が38.5mmの代わりに55mmであったということの違いで、実施例Vが、繰り返された。
【0069】
シェル側の冷媒温度は、194.5℃であると計算された。モデルは、この内径(55mm)のチューブでは、冷媒温度が、反応熱の生成速度がチューブの壁から除去される熱の速度を超える前に197.5℃まで上昇され得ることを予測した。したがって、モデル予測によると、これらの条件下での暴走に対するマージンは低く、3℃である。
【0070】
これらの計算された実施例は、プロモータ成分エポキシ化触媒が、従来適用されているよりも広いリアクタチューブ内に存在しているとき、エポキシ化条件下で、暴走に対するマージンは、従来の直径のリアクタチューブ内に存在するときのプロモータ成分を含まないエポキシ化触媒に対して適用可能である暴走に対するマージンと同じ位大きいことを示している。このことは、プロモータ成分を含んでいるエポキシ化触媒が、触媒床の温度および熱制御を妥協することなく従来通りに適用されるよりも広い、リアクタチューブに適用されることができることを意味している。
【0071】
これらの計算された実施例はまた、プロモータ成分および比較的高い銀含有量を含むエポキシ化触媒が使用されるとき、チューブ内径にかかわらず、プロモータ成分および低い銀含有量を含むエポキシ化触媒に対するよりも、広い暴走に対するマージンが観察されることができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による触媒床を備える細長チューブを示す図である。
【図2】本発明で使用されてもよい、中空の円筒形の幾何形状を有する触媒粒子を示す図である。
【図3】本発明のある新規な態様を備えるエチレンオキシド製造プロセスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40mmを超えるチューブ内径を有し、触媒重量に対し少なくとも150kg/gの量の銀およびプロモータ成分を担体上に堆積した触媒粒子の触媒床を内包する少なくとも1つの細長チューブを有し、前記プロモータ成分が、レニウム、タングステン、モリブデンおよびクロムから選択される元素を有する、エチレンのエポキシ化のための反応器システム。
【請求項2】
チューブ内径が、少なくとも45mmである請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
チューブ内径が、45から80mm、特に48から70mm、より特定的には50から60mmの範囲にある請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
細長チューブの長さが、3から25m、特に5から20mの範囲にあり、前記細長チューブの壁厚が、0.5から10mm、特に1から5mmの範囲にある請求項1から3のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項5】
細長チューブが、シェル/チューブ熱交換器内に含まれ、前記シェル/チューブ熱交換器内に含まれているこのような細長チューブの数が、1,000から15,000の範囲、特に2,000から10,000の範囲にある請求項1から4のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項6】
触媒粒子が、4から20mm、特に5から15mmの範囲の長さ、4から20mm、特に5から15mmの範囲の外径、0.1から6mm、特に0.2から4mmの範囲の内径、および0.5から2、特に0.8から1.2の範囲の外径に対する長さの比を有するほぼ中空の円筒形の幾何形状を有する請求項1から5のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項7】
触媒が、α−アルミナを含む担体上に堆積された銀、レニウム成分を含むプロモータ、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リン、ボロン、およびこれらの混合物から選択された元素を含む成分から選択されたレニウムコプロモータを含む請求項1から6のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項8】
触媒が、触媒の重量に対して、少なくとも200g/kgの量の銀を含む請求項1から7のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項9】
触媒が、触媒の重量に対して、少なくとも200から400g/kgの量の銀を含む請求項1から8のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の反応器システム内に含まれる触媒床の存在下に、エチレンを酸素と反応させることを含むエチレンのエポキシ化のためのプロセス。
【請求項11】
エチレンが、さらに1つ以上の有機ハロゲン化物の存在下に酸素と反応される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
1つ以上の有機ハロゲン化物が、クロロハイドロカーボンおよびブロモハイドロカーボンから選択される請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項10から12のいずれかに記載のエチレンのエポキシ化のためのプロセスによってエチレンオキシドを得ること、およびエチレンオキシドを、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、またはエタノールアミンに変換することを含む、エチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはエタノールアミンを調製する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−534501(P2008−534501A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503060(P2008−503060)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/009929
【国際公開番号】WO2006/102189
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】