説明

エチレングリコール製造用固体触媒

【課題】本発明の目的は、糖アルコールからエチレングリコールを収率良く製造できる安価な触媒を提供することにある。
【解決手段】本発明は、糖アルコールからエチレングリコールを生成する反応に用いる触媒であって、ニッケルおよび白金族元素を含む触媒成分が無機物に担持されている触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレングリコール製造用触媒、特に、糖アルコールからエチレングリコールを生成する反応に用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上の入手可能な化学資源は限界があることが知られており、近年、化石資源の枯渇懸念といった資源問題、さらには、二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化への懸念から、化学原料をバイオマス資源から変換する方法に対して注目が集まっている。
糖アルコールはバイオマス資源中に存在し、例えば、キシリトールはキノコなどに、ソルビトールはリンゴなどに、マンニトールは昆布などに含まれている。また、グリセリンは植物油からエステル交換によりBDF(バイオディーゼルフューエル)を製造する際に副生する。糖アルコールは工業的には、トウモロコシやイモの澱粉などを原料として得られる種々の糖などに水素を添加して製造される。
【0003】
ところで、エチレングリコールは、溶媒、不凍液、ポリエステル原料として極めて重要な物質であり、そのため、糖アルコールからエチレングリコールを収率良く製造できる触媒を開発することは、その産業的な意義が大きいと考えられる。
糖アルコール、特にグリセリンからエチレングリコールを製造する触媒の例としては、ルテニウムを活性炭に担持した触媒(例えば、特許文献1参照、非特許文献1参照。)、ルテニウムをチタニアに担持した触媒(例えば、非特許文献2参照。)、ルテニウムをアルミナやジルコニアに担持した触媒(例えば、非特許文献1参照。)などが知られている。これら文献に示されている触媒は、主たる触媒活性成分として高価なルテニウムを用いており、糖アルコールからエチレングリコールを収率良く製造できる安価な触媒の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−266234号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Catalysis Communications, 9(2008),p.2489−2495
【非特許文献2】Chemistry Letters, 36(2007),p.1274−1275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、糖アルコールからエチレングリコールを収率良く製造できる安価な触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記従来技術に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、糖アルコールからエチレングリコールを生成する反応に用いる触媒であって、ニッケルおよび白金族元素を含む触媒成分が無機物に担持されている触媒である。また本発明は、該触媒の存在下で、糖アルコールを水素化分解することからなるエチレングリコールの製造方法を包含する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の触媒は、触媒成分としてニッケルに微量の白金族元素を加えているので、糖アルコールからエチレングリコールを効率的、収率良く製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施形態に基づき以下に説明する。本発明の触媒は、触媒成分にニッケルと白金族元素を含むことを特徴とする。本発明の触媒は、触媒活性、再現性、ハンドリング性、保存安定性、易リサイクル性等の観点から、ニッケルと白金族元素が担体に担持された形態であることが好ましい。
【0010】
(ニッケル)
ニッケルの前駆体としては、金属単体や金属化合物等が挙げられる。金属化合物としては、金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、硫化物、硼化物、水酸化物、シアン化物、アセチルアセトネート、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
ニッケル金属化合物として、ラネーニッケル、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、蟻酸ニッケル、水酸化ニッケル、蓚酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等が挙げられる。
効率的にエチレングリコールを製造する観点から、触媒成分中のニッケルの含有量は、ニッケル金属として触媒成分の全体重量に対して1〜10重量%であることが好ましく、4〜6重量%であることがより好ましい。
【0011】
(白金族元素)
白金族元素としては、プラチナ、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれ少なくとも一種の元素が挙げられる。なかでもプラチナ、ロジウム、イリジウムが好ましい。
白金族元素の前駆体としては、金属単体や金属化合物等が挙げられる。金属化合物としては、金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、硫化物、硼化物、水酸化物、シアン化物、アセチルアセトネート、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
白金金属化合物として、白金ブラック、白金アセチルアセトネート、白金ビス(ベンゾニトリル)ジクロリド、臭化白金、塩化白金、ヨウ化白金、硫化白金、白金シアニド、ヘキサクロロ白金酸、酸化白金、酸化白金水和物、白金ロジウム合金、白金パラジウム合金、白金イリジウム合金等が挙げられる。
【0012】
パラジウム金属化合物として、パラジウムブラック、パラジウム酢酸塩、パラジウムアセチルアセトネート、パラジウムビス(ベンゾニトリル)ジクロリド、臭化パラジウム、塩化パラジウム、パラジウムシアニド、水酸化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硝酸パラジウム水和物、酸化パラジウム、酸化パラジウム水和物、パラジウムプロピオン酸塩、硫酸パラジウム、硫化パラジウム、パラジウムトリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
ロジウム金属化合物として、ロジウムブラック、ロジウム酢酸塩、ロジウムアセチルアセトネート、臭化ロジウム水和物、塩化ロジウム、塩化ロジウム水和物、ロジウムヘキサフルオロブタン酸塩、ロジウムヘキサン酸塩、ヨウ化ロジウム水和物、硝酸ロジウム、酸化ロジウム、酸化ロジウム水和物、リン酸ロジウム、硫酸ロジウム、ロジウムトリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
オスミウム金属化合物として、ビス(シクロペンタジエニル)オスミウム、ヘキサブロモオスミウム酸アンモニウム、塩化オスミウム、塩化オスミウム水和物、臭化オスミウム、臭化オスミウム水和物、ヨウ化オスミウム、ヘキサクロロオスミウム酸、酸化オスミウム等が挙げられる。
【0013】
イリジウム金属化合物として、イリジウムアセチルアセトネート、臭化イリジウム、臭化イリジウム水和物、塩化イリジウム、塩化イリジウム酸、塩化イリジウムド水和物、ヨウ化イリジウム、酸化イリジウム、酸化イリジウム水和物等が挙げられる。
ルテニウム金属化合物として、ルテニウムブラック、ルテニウムアセチルアセトネート、臭化ルテニウム、臭化ルテニウム水和物、塩化ルテニウム、塩化ルテニウム水和物、ヨウ化ルテニウム、塩化ルテニウムニトロシル水和物、硝酸ルテニウムニトロシル、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム水和物等が挙げられる。
なかでも硝酸ニッケル、ヘキサクロロ白金酸、硝酸パラジウム、塩化ロジウム、塩化イリジウム酸、硝酸ルテニウムニトロシルが好ましい。
【0014】
経済性、効率的にエチレングリコールを製造する観点から、触媒成分中の白金族元素の含有量は、金属として触媒成分に対して0.1〜5重量%であることが好ましく、0.2〜0.5重量%であることがより好ましい。
また、触媒成分中の白金族元素の含有量は金属として、ニッケル金属1モルに対し、好ましくは0.01〜0.1モル、より好ましくは0.01〜0.06モル、さらに好ましくは0.02〜0.04モルである。
【0015】
(担体)
ニッケルと白金族元素を担持する担体としては、無機物であれば特に限定されない。その無機物担体としては、例えば、無機酸化物、無機水酸化物、活性炭などが挙げられる。より具体的には、無機酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、酸化スズなどから選択される一種または二種以上の無機酸化物またはその複合物が挙げられる。無機酸化物の複合物としては、マグネシウムアルミネートなどの複合酸化物やβ−ゼオライト(Na)などのゼオライトが挙げられる。無機水酸化物としては、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化アルミナ、水酸化マグネシア、水酸化亜鉛、水酸化スズなどが挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナ)、アルミの水酸化物(ギブサイト、バイヤーライト、ベーマイト、ダイアスポア)などが挙げられる。
無機物が、アルミナおよびシリカよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
(触媒の製造)
ニッケルと白金族元素を担持した触媒を製造する方法は特に限定されないが、ニッケル前駆体溶液と白金族元素前駆体溶液を混合した溶液を担体に含浸させた後、乾燥し、次に焼成する方法がある。またニッケル前駆体溶液を担体に含浸させた後、乾燥し、その後さらに白金族元素前駆体溶液を担体に含浸後、乾燥し、次に焼成する方法などが挙げられる。なお、触媒製造における金属含有液の量が多量である場合には、前記含浸および乾燥を繰り返し行うIncipient wetness法や、蒸発乾固法により触媒を製造しても良い。
また、触媒の製造過程における担体を含浸するときの温度および乾燥するときの温度は、特に限定されるものではない。上記焼成の温度は、特に限定されないが、300〜700℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。また、焼成時の雰囲気も、大気雰囲気、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガス雰囲気等、特に限定されないが、当該焼成時の雰囲気として好ましいのは、大気雰囲気である。
【0017】
本発明の触媒を糖アルコールからエチレングリコールを生成する反応に用いる際、焼成後の触媒をそのまま用いても良いが、前処理を行っても良い。前処理の方法としては、特に限定されないが、水素や一酸化炭素などの還元性ガスを触媒に接触させ触媒を還元する方法などが挙げられる。還元処理の方法として好ましいのは、還元性ガスとして水素を触媒に流通させる方法である。還元処理の温度は特に限定されないが、400〜850℃が好ましく、450〜550℃がより好ましい。還元処理の処理時間は特に限定されないが、30分間〜2時間が好ましく、40〜90分間がより好ましい。
還元処理後、さらに表面酸化処理を行っても良い。表面酸化処理の方法としては、窒素やヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性ガスで希釈した酸素を触媒に接触させる方法などが挙げられる。表面酸化処理の方法として好ましいのは、ヘリウムで希釈した酸素を触媒に流通させる方法である。また、酸素の濃度としては特に限定されないが、0.1〜2.0%が好ましく、1.8〜2.0%がより好ましい。表面酸化処理の温度は特に限定されないが、0〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。表面酸化処理の処理時間は特に限定されないが、5分間〜3時間が好ましく、1時間〜2時間がより好ましい。上記還元処理後に表面酸化処理を行った触媒を用いると、より収率良くエチレングリコールが得られる。
【0018】
(糖アルコール)
糖アルコールは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成した化合物であれば特に制限はない。なかでもグリセリン、エリスリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、イジトール、ガラクチトールおよびマンニトールからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであればよい。これらは化石資源から合成されたものであっても良いし、バイオマス資源から合成されたものであっても良い。好ましくは、グリセリン、ソルビトールである。より好ましくは、グリセリンである。グリセリンは精製グリセリン、および粗製グリセリンのいずれであっても良い。また、このグリセリンは、エチレン、プロピレンなどから化学合成されたグリセリンであっても良いし、バイオディーゼルの製造における植物油等のエステル交換反応で生じるような天然資源由来のグリセリンであっても良い。
【0019】
(エチレングリコールの製造方法)
本発明の触媒の存在下で、糖アルコールを水素化分解してエチレングリコールを製造することができる。
水素化分解は、液状糖アルコールと水素ガスと触媒からなる三相系反応、糖アルコールガスと水素ガスと触媒からなる二相系反応のいずれであっても良いが、メタンやメタノールなどの過剰分解生成物の生成量が少ない三相系反応が好ましい。
反応形式としては、回分形式、半回分形式、連続流通形式等を任意に選択した形式により実施することができる。また、所定量の糖アルコールから得られるエチレングリコールの量を増加させたい場合には、エチレングリコール製造反応実行後の未反応糖アルコールを分離回収して、さらに糖アルコールを反応させるリサイクルプロセスを採用しても良い。このリサイクルプロセスは、例えば、生成物中のエチレングリコールの選択率が高いエチレングリコールの製造方法で、所定量の使用糖アルコールに対するエチレングリコール生成量を高めたい場合に好適である。
【0020】
水素化分解反応の温度は、160〜200℃が好ましく、180〜190℃がより好ましい。反応温度が低すぎると触媒自体の活性が低くなり、一方、反応温度が高すぎると触媒自体の活性が高まるが、生成物中のエチレングリコールの選択率が低くなる傾向があるためである。また、本発明の触媒を用いたエチレングリコールの製造方法において、水素圧は、好ましくは4〜10MPa、より好ましくは5〜9MPaである。また、糖アルコール溶液の糖アルコール濃度は20重量%以下であると良く、2〜10重量%が好ましい。なお、エチレングリコールの製造方法において、水素圧が高いほどエチレングリコールの選択率および収率が高くなり、糖アルコール濃度が低いほどエチレングリコールの選択率および収率が高まる一般的な傾向がある。
【0021】
本発明の触媒を用いて製造されたエチレングリコールは、蒸留等の適宜な分離手段により分離することができる。製造されたエチレングリコールは既に公知となっている通り、そのまま溶媒や不凍液として、もしくはエチレングリコール化合物誘導体の製造原料やポリエステル原料として使用することができる。従って、本発明の触媒を用いたエチレングリコールの製造方法は、エチレングリコール誘導体の製造工程やポリエステル製造工程中に取り入れることが当然可能である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【0023】
生成物の分析は、水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフ(GC)で行った。GCには島津製作所社製「GC−2014」を使用し、溶液分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製キャピラリーカラム「TC−WAX」(カラム内径0.25mm、長さ60m)、気体分析用GCカラムにはジーエルサイエンス社製パックドカラム「Porapak−N」(長さ2m)を使用した。
以下の実施例、比較例で示す「収率」とは、エチレングリコールの収率を意味し、下記式(1)に基づいて算出した値である。「転化率」とは、糖アルコールの転化率を意味し、下記式(2)に基づいて算出した値である。「選択率」は、糖アルコールが転化することによって生じた各化合物の生成率を意味し、下記式(3)に基づいて算出した値である。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

【0026】
【数3】

【0027】
[触媒調製例1]
(前駆体溶液調製工程)
PtCl・6HO(添川理化学社製)1.0000gを50mLのメスフラスコに溶解し、Pt前駆体溶液を調製した(Pt濃度:7.53×10−3g/mL)。Ni(NO・6HO(和光純薬工業社製)1.2386gを蒸留水10mLに溶解し、調製したPt前駆体溶液3.32mLを加え、軽く撹拌して溶液を均一にし、前駆体溶液を調製した。
【0028】
(担持工程)
調製した前駆体溶液を、担体となるγ−Al(住友化学社製KHO−24)4.7250gに、スポイトを用いて担体が万遍なく濡れる程度まで滴下し、ガラス棒を用いて撹拌した後、80℃程度の熱をかけて水分を飛ばし、乾燥させた。前駆体溶液がなくなるまで同様の操作を行った。その後、前駆体溶液を含浸した固体を110℃の恒温乾燥機で一晩乾燥させた。
【0029】
(焼成工程)
乾燥後の固体を、マッフル炉で空気中500℃、3時間焼成し、Pt(0.50)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を得た(金属元素記号の直後の括弧内の数字は、触媒全体重量中に占める各担持金属の重量%を示した。触媒中Pt/Niモル比=0.03)。
【0030】
[実施例1]
触媒調製例1の通りに調製したPt(0.50)−Ni(5.0)/γ−Al触媒0.2g、および5重量%グリセリン水溶液20mL(グリセリン量1g:和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で24時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析した。結果を表1、2に示した。
【0031】
[実施例2]
前駆体溶液調製工程、担持工程、焼成工程までは触媒調製例1と同様にし、次いで下記前処理工程を行った。
【0032】
(前処理工程)
石英ガラス製の反応管に、焼成した触媒を2g程度詰め、水素を30cc/minの流速で流しながら、500℃で1時間水素還元処理を行った。還元処理終了後、室温まで冷却し、30cc/minの流速で窒素を10分間流して反応管内をパージした。その後、ヘリウムで希釈した2.0%酸素を30cc/minの流速で1時間流し、表面酸化処理を行った。
そして、実施例1の触媒に代えて上記前処理後のPt(0.50)−Ni(5.0)/γ−Al触媒0.2g、および5重量%グリセリン水溶液20mL(グリセリン量1g:和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で24時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析した。結果を表1、2に示した。
【0033】
[実施例3]
白金族元素としてプラチナに代えてイリジウム(前駆体:HIrCl溶液、フルヤ金属社製)を用いて、触媒調製例1と同様にして、Ir(0.49)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した(触媒中Ir/Niモル比=0.03)。そして、実施例2の触媒をIr(0.49)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例2と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0034】
[実施例4]
白金族元素としてプラチナに代えてロジウム(前駆体:RhCl・HO、添川理化学社製)を用いて、触媒調製例1と同様にして、Rh(0.26)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した(触媒中Rh/Niモル比=0.03)。そして、実施例2の触媒をRh(0.26)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例2と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0035】
[実施例5]
白金族元素としてプラチナに代えてパラジウム(前駆体:Pd(NO溶液、エヌ・イー ケムキャット社製)を用いて、触媒調製例1と同様にして、Pd(0.27)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した(触媒中Pd/Niモル比=0.03)。そして、実施例2の触媒をPd(0.27)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例2と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0036】
[実施例6]
白金族元素としてプラチナに代えてルテニウム(前駆体:Ru(NO)(NO溶液、エヌ・イー ケムキャット社製)を用いて、触媒調製例1と同様にして、Ru(0.26)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した(触媒中Ru/Niモル比=0.03)。そして、実施例2の触媒をRu(0.26)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例2と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0037】
[実施例7]
実施例2において、オートクレーブに仕込む触媒の使用量を0.2gから1.0gに代えたこと以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0038】
[実施例8]
触媒調製例1において、触媒全体重量中に占めるプラチナ担持量が0.1重量%になるようにプラチナ担持量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして、Pt(0.10)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した。そして、実施例7の触媒をPt(0.10)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例7と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0039】
[実施例9]
触媒調製例1において、触媒全体重量中に占めるプラチナ担持量が1.0重量%になるようにプラチナ担持量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして、Pt(1.0)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した。そして、実施例7の触媒をPt(1.0)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例7と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0040】
[実施例10]
触媒調製例1において、触媒全体重量中に占めるプラチナ担持量が5.0重量%になるようにプラチナ担持量を代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして、Pt(5.0)−Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した。そして、実施例7の触媒をPt(5.0)−Ni(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は実施例7と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0041】
[実施例11]
実施例2において、オートクレーブに仕込む触媒の使用量を0.2gから1.0gに代え、反応時間を24時間から48時間に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0042】
[実施例12]
実施例11において、反応時間を72時間に代えた以外は実施11と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0043】
[実施例13]
実施例2において、反応させるグリセリン水溶液の濃度を5重量%から2重量%に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0044】
[実施例14]
実施例2において、反応させるグリセリン水溶液の濃度を10重量%に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0045】
[実施例15]
実施例2において、反応温度を180℃から160℃に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0046】
[実施例16]
実施例2において、反応温度を170℃に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0047】
[実施例17]
実施例2において、反応温度を190℃に代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0048】
[実施例18]
実施例2において、水素ガスの圧力を8.0MPaから4.0MPaに代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0049】
[実施例19]
実施例2において、水素ガスの圧力を6.0MPaに代えた以外は実施例2と同様にして触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0050】
[触媒調製例2]
触媒調製例1において、担体をγ−AlからSiO(富士シリシア社製G−6)に代えたこと以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製を行い、Pt(0.50)−Ni(5.0)/SiO触媒を得た。
【0051】
[実施例20]
実施例2において、触媒を触媒調製例2で調製したPt(0.5)−Ni(5)/SiO触媒に代えたこと以外は実施例2と同様にして、触媒の前処理、グリセリンの反応、分析を行った。結果を表1、2に示した。
【0052】
[実施例21]
実施例2と同様に前処理を行ったPt(0.50)−Ni(5.0)/γ−Al触媒1.0g、および2重量%ソルビトール水溶液20mL(ソルビトール量0.4g:和光純薬工業社製、一級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で48時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析した結果、エチレングリコールが収率2.5%で得られた。なお、GCでソルビトールやC5以上の生成物(炭素数5個以上の生成物)の定量ができず、反応における全生成物の種類・量を特定できなかったためソルビトール転化率および各生成物の選択率を算出することができなかった。
【0053】
[比較例1]
触媒調製例1で担体として用いたγ−Al触媒1.0g、および5重量%グリセリン水溶液20mL(グリセリン量1g:和光純薬工業社製、特級)をオートクレーブに仕込み、水素ガス加圧下(反応温度で8.0MPa)、180℃で48時間反応させた。反応終了後、気体生成物をガスバッグ内に収集し、一方、溶液生成物はろ過により触媒とろ別した。これら生成物をGCで分析したところ、グリセリンは反応していなかった。結果を表1、2に示した。
【0054】
[比較例2]
触媒調製例1において、Pt前駆体溶液を加えない以外は触媒調製例1と同様にして触媒の調製を行い、Ni(5.0)/γ−Al触媒を調製した。そして、比較例1の触媒をNi(5.0)/γ−Al触媒に代えたこと以外は比較例1と同様にしてグリセリンの反応、分析を行ったが、グリセリンは反応していなかった。結果を表1、2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1、2および実施例21に示すとおり、触媒成分にニッケルと白金族元素を含む固体触媒を用いることで、糖アルコールからエチレングリコールを製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の触媒によれば、糖アルコールからエチレングリコールを効率的に製造することができ、その工業的な意義は大きい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖アルコールからエチレングリコールを生成する反応に用いる触媒であって、ニッケルおよび白金族元素を含む触媒成分が無機物に担持されている触媒。
【請求項2】
白金族元素が、プラチナ、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
触媒成分中の白金族元素の含有量が、金属として触媒成分に対して0.1〜5重量%である請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒成分中のニッケルの含有量が、ニッケル金属として触媒成分の全体重量に対して1〜10重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
無機物が、アルミナおよびシリカよりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
糖アルコールが、グリセリン、エリスリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、イジトール、ガラクチトールおよびマンニトールからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか一項記載の触媒。
【請求項7】
請求項1〜6記載の触媒の存在下で、糖アルコールを水素化分解することからなるエチレングリコールの製造方法。


【公開番号】特開2011−156444(P2011−156444A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17574(P2010−17574)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BDF
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】