説明

エチレン四量体化触媒系及びこれを用いた1−オクテンの製造方法

遷移金属または遷移金属前駆体、共触媒、及び(R)(R)P−(R)CHCH(R)−P(R)(R)で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドを含むクロム触媒系を使用してエチレンを四量体化することにより、反応活性を安定に維持しながら高活性及び高選択性で1−オクテンを製造する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレンを四量体化するための触媒系及び前記触媒系を用いてエチレンを四量体化することにより1−オクテンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1−オクテンは、線形低密度ポリエチレンを製造するためのモノマー又はコモノマーであって、重合工程に広く使用されそして特定の薬品とし使用される商業的に重要な原料である。
【0003】
線形低密度ポリエチレンの製造に必要な高級α−オレフィンは、エチレンオリゴマー化反応を通じて得られる。しかし、エチレンオリゴマー化反応は大量のブテン、オクテン、オクテンの誘導体及び特定の高級オリゴマーがポリエチレンと一緒に生成され、非効率的である。
【0004】
従来のエチレンのオリゴマー化技術において、一般に、種々のα−オレフィンは、シュルツ−フローリー(Schulz−Flory)又はポアソン(Poisson)生成物分布によって生成され、それゆえ所望の生成物の収率は制限される。これに関連し、米国特許第6,184,428号明細書は、キレートリガンドとして2−ジフェニルホスフィノ安息香酸、ニッケル前駆体としてNiCl・6HO、及び触媒活性剤としてテトラフェニル・ホウ酸ナトリウムを含むニッケル系触媒を開示している。また、この特許明細書には、ニッケル系触媒を用いたエチレンのオリゴマー化において、1−オクテンの選択性は19%であることが開示されている。
【0005】
さらに、独国特許第1,443,927号明細書及び米国特許第3,906,053号明細書にはトリアルキルアルミニウム触媒に基づいて製造されたツィーグラー触媒を開示している。また、これらの特許明細書はツィーグラー触媒を用いて、オレフィン混合物総量に基づき13〜15質量%の1−オクテンが製造され得ることが開示されている。
【0006】
最近では、遷移金属触媒によってエチレンを選択的に四量体化させることにより1−オクテンを製造する方法における研究が進んでいる。ここで、もっとも一般的に知られる遷移金属触媒はクロム系触媒である。
【0007】
最近では、国際公開第04/056479号パンフレットにおいて、1−オクテンがヘテロ原子としてのリン及び窒素を有するヘテロ原子リガンドを含むクロム系触媒を用いてエチレンを四量体化させることにより製造されることが開示された。ここで、エチレン四量体化触媒に用いられるヘテロ原子リガンドの例は、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)等を含み得る。
【0008】
前記先行技術において、ヘテロ原子として窒素及びリンを有するヘテロ原子リガンドを含むクロム系触媒が、リン原子に結合されたヒドロカルビル基又はヘテロヒドロカルビル基に対する極性の置換基なしにエチレンを四量体化することにより、70質量%を超える選択性において1−オクテンが製造され得ることが開示されている。
【0009】
しかし、従来技術は、ヘテロ原子を含むリガンドの構造に関して、特に、触媒がどのようなリガンドを含む場合にエチレンを四量体化することによる高い選択性を有する1−オクテンの製造を明らかに示し得ないこと、約70質量%の1−オクテンの選択性を有するリガンドとして、PNP骨格構造のリガンド、例えば(R)(R)P−(R)N−
P(R)(R)、のみしか示し得ないこと、そしてヘテロ原子を含むリガンドの置換基の構造もまた限定的に開示されていることのような問題がある。さらに、従来のヘテロ原子を有するPNP骨格構造リガンドはまた、1−オクテンの製造において反応活性を一定に維持することができず、そして反応速度がまた、反応時間に従い急速に減少する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,184,428号明細書
【特許文献2】独国特許第1,443,927号明細書
【特許文献3】米国特許第3,906,053号明細書
【特許文献4】国際公開第04/056479号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
窒素原子のないP−C−C−P骨格構造リガンドを有するクロム系触媒が、70質量%より大きい選択性においてエチレンを四量体化することにより1−オクテンを形成するために使用され得ること、そしてクロム系触媒系の活性が安定に維持されることを見出すことにより上記問題を解決し、そしてこのようにして反応時間に従い反応速度が減少することを防ぐことが出来ることを見出した。
係る知見に基づき、本発明は完成された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、従来技術において生じる上記問題点に鑑みてなされたものであり、そして本発明の目的は、遷移金属又は遷移金属前駆体、共触媒、及び下記式1
【化1】

で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドを含むクロム系触媒系を用いてエチレンを四量体化することにより安定に触媒活性を維持する一方で、高活性及び高い選択性において1−オクタンを製造する方法を提供することにある。
【0013】
課題の解決
上記目的を達成するために、本発明は、遷移金属又は遷移金属前駆体、共触媒、及び下記式1
【化2】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基を表し、前記R、R、R及びRのそれぞれはP原子と結合した原子に隣接した原子上に如何なる置換基も有さず、ならびにR及びRは、水素原子ではなく、しかしそれぞれ独立してヒドロカルビル基、及び置換ヒドロカルビル基を表す。)で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドを含む、エチレンを四量体化するための触媒系を提供する。
【発明の効果】
【0014】
有利な効果
本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドを含むクロム系触媒系を用いてエチレンを四量体化する場合、クロム系触媒系が高い触媒活性を有しそして高い1−オクテンの選択性を有するため、高純度の1−オクテンが得られ、そしてクロム系触媒系が安定に維持され、したがって反応時間に従って反応速度が減少することが防がれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による触媒系を用いたエチレン四量体化反応における触媒活性の変化を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明による触媒系を用いたエチレン四量体化反応における選択性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、遷移金属又は遷移金属前駆体、共触媒及び下記式1
【化3】

(式中、任意の置換基であるR、R、R及びRは、独立して原子Pに隣接したヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、及び置換ヘテロヒドロカルビル基を表し、非電子供与体を表し、そして非極性基であり得、そして 好ましくは、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、原子Pと結合した原子に隣接した原子上に非電子供与体を含まない置換芳香族基又は置換ヘテロ芳香族基を表す。)
で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドを含む、エチレン四量体化のための触媒系を提供する。
【0017】
上記式1で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドにおいて、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基、メシチル基、キシリル基、メチル基、エチル基、エチレニル基、プロピル基、プロペニル基、プロピニル基、ブチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、トリル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、クミル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ジメチルアミノ基、チオメチル基、トリメチルシリル基、及びジメチルヒドラジル基からなる群より選ばれ得る。好ましくは、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、4−メ
チルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、及び4−イソプロポキシフェニル基からなる群より選ばれ得る。
【0018】
、R、R及びRはそれぞれ独立して芳香族基及び置換芳香族基であり得、R、R、R及びRのそれぞれは、P原子と結合した原子に隣接しない少なくとも一つの原子上に非電子供与基で置換され得、そして、R、R、R及びRのそれぞれは、P原子と結合した原子に隣接しない少なくとも一つの原子上に非極性基で置換され得る。
【0019】
さらに、上記化学式1で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドにおいて、R及びRは、水素原子ではなく、しかしそれぞれ独立してヒドロカルビル基、及び置換ヒドロカルビル基を表す。具体的に、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、アルコキシ基、アミノカルボニル基、カルボニルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、これらの誘導体、及びこれらの任意の置換体で置換されたアリール基からなる群から選ばれ得る。
【0020】
本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドは、2又はそれ以上のP−C−C−P骨格構造リガンドが互いに結合された、多重の(R)(R)P−(R)CHCH(R)−P(R)(R)で表されるP−C−C−P骨格構造リガンドであり得る。この多重P−C−C−P骨格構造リガンドは、1種又はそれ以上のR基を介してそれぞれP−C−C−P骨格構造リガンドで結合されたデンドリマーリガンドであるものも含むがこれらに限定されない。このようなリガンドの代表的な例としては、1,2,4,5−テトラ−(P(4−エチルフェニル))シクロヘキサン、1,2,4,5−テトラ−(P(4−エチルフェニル))ベンゼン、1,2,3,4−テトラ−(P(4−エチルフェニル))シクロペンタン等を含み得る。
【0021】
本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドの例は、(フェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−メチルフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メチルフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(エチル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(エチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(エチル)CH(エチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(エチル)CH(エチル)−P(フェニル)、(フェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(4−エチルフェニル)、1,2−ジ−(P(フェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(4−メトキシフェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(4−エチルフェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(フェニル))シクロペンタン、1,2−ジ−(P(4−メトキシフェニル))シクロペンタン、1,2−ジ−(P(4
−エチルフェニル))シクロペンタン、3,4−ジ−(P(フェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−メトキシフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(フェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−メトキシフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−エチルフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−エチルフェニル))イミダゾール、(4−エチルフェニル)P−CH(ジメチルアミン)CH(ジメチルアミン)−P(4−エチルフェニル)、(3−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(3−メトキシフェニル)、(4−エトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(o−エトキシフェニル)、(4−ジメチルアミンフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)P(4−ジメチルアミンフェニル)及び(4−エチルシクロヘキシル)PCH(メチル)CH(メチル)P(4−エチルシクロヘキシル)を含み得るがこれらに限定されない。本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドは、当業者に一般的に知られた種々の方法で製造され得る。
【0022】
本発明によるP−C−C−P型骨格構造リガンド、は公知の従来のヘテロな(R)PN(R’)P(R)リガンドとは異なる独立した構造を有するリガンドであって、その骨格構造内においてただ1つのヘテロ原子、リン(P)原子を含むものである。すなわち、本発明の触媒系に用いられるリガンドは、二つのリン原子の間に窒素原子なしに二つの炭素−炭素骨格構造を有し、炭素原子に隣接する置換基を変化させることによりリガンドの空間構造を適切に調節することで、優れた触媒活性を示しそして70wt%以上の高い1−オクテン選択性を達成することができる。
【0023】
高選択性で1−オクテンを製造するために、本発明の前記リガンドを含む触媒系は、遷移金属化合物及び共触媒を任意の順で配合する工程によって製造され得る。
【0024】
本発明による触媒系は、遷移金属化合物及び前記P−C−C−P骨格構造リガンドを用いてリガンド配位錯体を生成する工程によって製造され得る。この際、P−C−C−P骨格構造を有するin−situリガンド配位錯体はまた、遷移金属化合物とP−C−C−P骨格構造リガンドを用いて製造された予め形成されたリガンド配位錯体を反応混合物へ添加することにより、又は、さらに遷移金属化合物及びP−C−C−P骨格構造リガンドを反応器へ添加することにより、形成され得る。P−C−C−P骨格構造を有するin−situリガンド配位錯体が形成される事実は、錯体が触媒反応が起こる媒体中で形成されることを意味する。in−situリガンド配位錯体を形成するために、金属対リガンドの配合割合は、約0.01:1乃至100:1、好ましくは約0.1:1乃至10:1、そしてより好ましくは0.5:1乃至2:1になるように遷移金属化合物及びP−C−C−P骨格構造リガンドが配合される。本発明の触媒系に使用される遷移金属は、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、タンタル、バナジウム及びジルコニウムの中から選ばれ得、好ましくはクロムである。本発明によるエチレンの四量体化を触媒する遷移金属化合物は、無機塩又は有機塩、金属配位錯体、又は金属有機錯体であり得、そして好ましくはクロム又はクロム前駆体であり得る。前記クロム又はクロム前駆体は、クロム(III)アセチルアセトネート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン及びクロム(III)2−エチルヘキサノエートからなる群から選ばれ得る。
【0025】
遷移金属化合物とP−C−C−P骨格構造リガンドの配位錯体は、室温又はそれ以上で溶解され得るが、変換されて、不溶性になるようにポリマー鎖に付着され得る。さらに、P−C−C−P骨格構造リガンド、又は遷移金属化合物は、シリカ、シリカゲル、ポリシロキサン又、アルミナ等と結合させることにより固定され得る。
【0026】
本発明に使用される共触媒は、P−C−C−P骨格構造のリガンドと遷移金属化合物と混合される際に触媒を活性化するために使用される化合物であり得る。触媒活性剤は単一の化合物又はその混合物であり得る。触媒活性剤の好ましい例は、有機アルミニウム化合
物、有機ホウ素化合物及び有機塩を含み得る。
【0027】
前記有機アルミニウム化合物は、式AlR(それぞれのRは独立して炭素原子数1乃至12のアルキル基、酸素含有アルキル基又はハロゲン化物である)で表される化合物及びLiAlHで表される化合物を含み得る。有機アルミニウム化合物の例は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、アルミニウムイソプロポキシド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド及びアルミノキサンを含み得る。アルミノキサンは、水とトリメチルアルミニウムのようなアルキルアルミニウム化合物を混合して製造され得る当該技術分野で良く知られたオリゴマー化合物である。アルミノキサンオリゴマー化合物は、線形アルミノキサン、環状アルミノキサン、ケージ状(cage)アルミノキサン、2又はそれ以上の異なるアルミノキサンの混合物であり得る。
【0028】
前記有機ホウ素化合物の例としては、ボロキシン、NaBH、トリエチルボラン、トリフェニルボラン、トリフェニルボランアンモニア錯体、トリブチルボレート、トリイソプロピルボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリチル(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、エチルジフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート等を含み得る。この有機ホウ素化合物は前記有機アルミニウム化合物と混合された形態で使用され得る。
【0029】
さらに、本発明による触媒系の共触媒として用いられるアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)及びエチルアルミノキサン(EAO)のようなアルキルアルミノキサン、及び、変形メチルアルミノキサン(MMAO)のような変形したアルキルアルミノキサンの中から選ばれ得る。アクゾノベル(AkzoNobel)社により製造される変形メチルアルミノキサン(MMAO)は、メチル基と同様にイソブチル又はn−オクチル基のような混成アルキル基を含む。
【0030】
アルミノキサンは、アルミニウム対金属の配合比が約1:1乃至10,000:1、そして、好ましくは約1:1乃至1,000:1となるよう、遷移金属化合物、特にクロム化合物と配合され得る。
【0031】
本発明の触媒系を構成する触媒成分は、溶媒の存在又は不存在下で、同時に又は任意の順に互いに配合され得る。触媒成分の混合は−20乃至250℃、そして好ましくは20乃至100℃の温度で行われ得る。触媒成分が混合される間、オレフィンは保護効果を示し、したがって、触媒性能を改善する。
【0032】
本発明による反応生成物、すなわち1−ヘキサンは、触媒系、一般的な装置及び慣用の接触技術を用いて、活性溶媒の存在下又は不活性溶媒の非存在下で行われる均一な液体反応、触媒系の一部又は全ての触媒系が溶解していない懸濁反応、二相の液体−液体反応、又はオレフィンが主媒体として作用するバルク相又はガス相反応によって製造され得る。
【0033】
本発明による触媒系を用いて不活性溶媒の存在下で1−オクテンが製造される場合、それぞれの触媒成分及び共触媒と反応しない任意の不活性溶媒が、不活性溶媒として使用され得る。そのような不活性溶媒は、任意の飽和脂肪族炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素を含み得、そして好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシク
ロペンタン、n−ヘキサン、1−ヘキセン等を含み得るが、これらに限定されない。
【0034】
本発明による触媒系を用いて1−オクテンを製造する方法は、−20乃至250℃の温度、好ましくは15乃至130℃の温度、そしてより好ましくは30乃至70℃の温度範囲で行われ得、反応圧力は大気圧〜500barの圧力、好ましくは10乃至70barのエチレン圧力、そしてより好ましくは30乃至50barの圧力において行なわれ得る。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、P−C−C−P骨格構造リガンド配位錯体及び反応条件は、エチレンからの1−オクテンの収率が30質量%以上、そして好ましくは50質量%以上となるように決定される。この場合、1−オクテンの収率は、反応生成物の総質量に対する1−オクテンの質量の比を意味する。さらに、本発明の方法において、P−C−C−P骨格構造のリガンド及び反応条件によって、1−オクテンに加えて、多少の1−ブテン、1−ヘキセン、メチルシクロペンタン、メチレンシクロペンタン及びプロピルシクロペンタン、及び大量の高級オリゴマー及びポリエチレンが製造され得る。
【0036】
本方法によるエチレンの四量体化の方法は、種々の型の反応器を備えたプラントを用いて行われ得る。反応器の例としては、バッチ式反応器、セミバッチ式反応器及び連続式反応器を含むが、これらに限定されない。プラントは、反応器、この反応器内に備えられたオレフィン反応器及び触媒系の注入口、この反応器からオリゴマー化生成物を流出させるためのライン、及びオリゴマー化生成物を分離するための少なくとも一つの分離器を含み得る。
【0037】
本発明の触媒系を用いたエチレンの四量体化により、安定的な反応活性を維持しながら、高活性及び高選択性で1−オクテンが製造され得る。
【0038】
発明の様態
以下、本発明を例証される以下の実施例を参照しより詳細に説明するが、本発明を限定するものとして構成されるものではない。
【実施例】
【0039】
触媒製造例1:S,S−(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)リガンドの製造
S,S−(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)リガンドを、B.Bosnich等,J.Am.Chem.Soc.99(19)(1977年)6262頁に開示されたように製造した。
(2R,3R)−ブタンジオールジ−p−トルエンスルホネートを(2R,3R)−ブタンジオールから製造した。(2R,3R)−ブタンジオールジ−p−トルエンスルホネートの製造方法は、R.B.Mitra等,J.Am.Chem.Soc84(1962年)に開示された様に実施した。氷水浴中で冷却した1Lフラスコに乾燥ピリジン100ml(1.24mol)を入れ、そして塩化 p−トルエンスルホニル100g(0.525mol)と混合し、そして次に(2R,3R)−ブタンジオール22ml(0.245mol)を徐々に滴下し混合物を形成させた。この混合物を20分間、室温に達するまで加熱し、そして次に、半固体状で室温において一昼夜放置した。過剰の氷片を混合物に添加し、次に凝集を防ぐために激しく振とうした。粉末結晶が徐々に分離されたことを確認した後、この混合物を氷片とともに2時間撹拌し、そして次にこの混合物に濃塩酸液70mlと氷片をスラリーが生成するように攪拌しながら添加した。このように生成したスラリーを濾過し、水で洗浄し、そして次に乾燥し、62〜64℃の融点を有する(2R,3R)−ブタンジオール ジ−p−トルエンスルホネート85g(86.3%)を得た。
その一方で、250mlの滴下ロート、還流冷却用コンデンサー及び窒素注入器を装着
した1Lの三ツ口丸型フラスコに、再結晶化したトリフェニルリン95gと乾燥テトラヒドロフラン(THF)300mlを加えた。この溶液にリチウム片5.0gを25℃の温度で撹拌しながら窒素雰囲気下で添加した。その後直ちに溶液中にLiPPhが形成され、そして溶液から熱が発生し、そして溶液が暗赤黄色に変化した。この溶液を、攪拌しながら、温度が55℃になるまで徐々に1時間で加熱し、そして次に温度が25℃になるまで2時間冷却した。生成したフェニルリチウムを蒸留精製したt−ブチルクロリド33gを45分間滴下して分解させた。赤黄色溶液を5分間加熱し、そして後次に−4℃の温度まで冷却した。
次に、得られた(2R,3R)−ブタンジオール ジ−p−トルエンスルホネート35gを乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解し、そして次に前記赤黄色溶液へ1時間で滴下し、混合溶液を形成させた。この混合溶液を徐々に室温まで加熱し、そして次に30分間攪拌した。窒素含有水300mlをこの混合溶液に加え、そして次にテトラヒドロフラン(THF)を減圧蒸留により除去した結果、無色オイル状生成物を抽出した。この油状生成物をエーテル150mlで2回抽出し、そして次にNaSOで乾燥しエーテル抽出物を形成した。このエーテル抽出物を窒素雰囲気でエタノール50mlと過塩素酸ニッケル六水和物15gの溶液中で濾過した。ろ過したエーテル抽出物中に残存しているNaSOをエーテル溶液で完全に洗浄した、そして次にそのエーテル溶液をニッケル溶液に加えた。その結果、黄色結晶を有する赤褐色の油状生成物[Ni((S,S)−chiraphos)](ClOを生成した。この油状結晶混合物を、チオシアン酸ナトリウム15gをエタノール(50mL)中に溶解させた溶液中に加え混合溶液を生成させ、そして次にこの混合溶液を数時間激しく攪拌し、黄褐色固体生成物、[Ni((S,S)−chiraphos)NCS]NCSを生成させた。この固体生成物を完全にエタノールで洗浄し、そして次に最後にエーテルで洗浄しニッケル錯体を生成させた。
このニッケル錯体15gをエタノール150mlに窒素雰囲気で浮遊させ、そして次に撹拌しながら加熱した。水20gにシアン化ナトリウム(NaCN)4gをニッケル錯体に添加した。次に、ニッケル錯体を徐々に溶解しそして次に赤色溶液、[Ni((S,S)−chiraphos)CNを生成させ、そして次に赤色溶液が不透明のベージュ色溶液に変化した。この不透明溶液を攪拌し黄色スラリー溶液を生成させた。このスラリー溶液を冷却し固体を形成させ、そして次にこの固体を25mlの水で二回洗浄しそして次に氷で冷却したエタノールで急速に冷却し不純物が含まれたベージュ色固体を形成させた。この不純物を含むベージュ色固体を25℃で乾燥し、無水エタノール125mlに加え、そして次に室温で12時間フリッツフィルターで濾過した。その結果、無色の光沢固体のみが残った。最後に、無色光沢固体を無水エタノール60mlで再結晶化し、無色の純粋なS,S−(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)5.5gを得た。
【0040】
実施例1:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)3.5mg(0.010mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例1で得られた(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)4.3mg(0.010mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析する
ために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次に重量を測定しポリエチレン3.6gを得た。さらに、GC分析により、反応混合物の総質量が101.6gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0041】
実施例2:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び2.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)0.7mg(0.002mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例1で得られた(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)0.86mg(0.002mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が18.0gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0042】
実施例3:CrCl(テトラヒドロフラン)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、CrCl(テトラヒドロフラン)3.75mg(0.01mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例1で得られた(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)4.3mg(0.01mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が36.2gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0043】
実施例4:Cr(2−エチルヘキサノエート)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シ
クロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(2−エチルヘキサノエート)4.0mg(0.01mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例1で得られた(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)4.3mg(0.01mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が76.0gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0044】
実施例5:Cr(2−エチルヘキサノエート)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び2.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(2−エチルヘキサノエート)0.8mg(0.002mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例1で得られた(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)0.86mg(0.002mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が11.2gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0045】
触媒製造例2:R,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)リガンドの製造
R,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)リガンドをB.Bosnich等,J.Am.Chem.Soc.99巻(19)(1977年)6262頁に開示されたように製造した。
(2R,3R)−ブタンジオールからの(2R,3R)−ブタンジオール ジ−p−トルエンスルホネートの製造は触媒製造例1の方法と同様の方法を用いて実施した。
トリ(4−メトキシフェニル)リンの製造は以下のように実施した。マグネシウム片(91.1g、3.75mol)を4−ブロモ−アニソール95ml(0.75mol)の2Lのテトラヒドロフラン(THF)溶液中に滴加した。混合物を激しく反応させ、そして次に2時間還流させ加熱してグリニヤール試薬を得た。このグリニヤール試薬を、−78℃の温度で17.5ml(0.2mol)のPClの2Lのテトラヒドロフラン(THF)溶液に撹拌しながら2時間かけて滴下した。その後、反応生成物からドライアイス
及びアセトンを除去し、そして次に反応生成物を室温に昇温させた。反応生成物を一晩中撹拌し、そして次に溶媒を真空下で除去し、ホスフィンを形成させた。この全ての反応生成物を、そのホスフィン生成物を除去しないで次の段階で使用した。
その一方で、250mlの滴下ロート、還流冷却用コンデンサー及び窒素注入器を装着した1Lの三ツ口丸型フラスコに、再結晶化したトリ(4−メトキシフェニル)リン70gと乾燥テトラヒドロフラン(THF)300mlを加えた。この溶液にリチウム片2.8gを25℃の温度で撹拌しながら窒素雰囲気下で添加した。その後直ちに溶液中にLiP(4−OMe−Ph)が形成され、そして溶液から熱が発生し、そして溶液が暗赤黄色に変化した。この溶液を、攪拌しながら、温度が55℃になるまで徐々に1時間加熱し、そして次に温度が25℃になるまで2時間冷却した。このようにして生成した4−メトキシフェニルリチウムを蒸留精製されたt−ブチルクロリド18.5gを45分間滴下して分解させた。赤黄色溶液を5分間加熱し、そして次に−4℃の温度まで冷却した。
次に、前述のように得られた(2R,3R)−ブタンジオール ジ−p−トルエンスルホネート19.6gを乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解し、そして次に前記赤黄色溶液へ1時間で滴下し、混合溶液を形成させた。この混合溶液を徐々に室温まで加熱し、そして次に30分間攪拌した。窒素含有水300mlを混合溶液に加え、そして次にテトラヒドロフラン(THF)を減圧蒸留により除去した結果、無色オイル状生成物が抽出された。この油状の生成物をエーテル150mlで2回抽出し、そして次にNaSOで乾燥しエーテル抽出物を形成した。このエーテル抽出物を窒素雰囲気でエタノール50mlと過塩素酸ニッケル六水和物8.4gの溶液中で濾過した。ろ過したエーテル抽出物中に残存しているNaSOをエーテル溶液で完全に洗浄し、そして次にそのエーテル溶液をニッケル溶液に加えた。その結果、黄色結晶を有する赤褐色の油状生成物[Ni((2S,3S)−ビス(ジ−p−メトキシフェニル)リン ブタン)](ClOを生成した。この油状結晶混合物を、チオシアン酸ナトリウム8.4gをエタノール(50mL)中に溶解させた溶液中に加え混合溶液を生成させ、そして次にこの混合溶液を数時間激しく攪拌し、黄褐色固体生成物、[Ni((2S,3S)−ビス(ジ−p−メトキシフェニル)リン ブタン)NCS]NCSを生成させた。この固体生成物をエタノールで完全に洗浄し、そして次に最後にエーテルで洗浄しニッケル錯体を生成させた。
このニッケル錯体17gをエタノール150mlに窒素雰囲気で浮遊させ、そして次に撹拌しながら加熱した。水20gにシアン化ナトリウム(NaCN)4gをニッケル錯体に添加した。次に、ニッケル錯体を徐々に溶解しそして次に赤色溶液、[Ni((2S,3S)−ビス(ジ−p−メトキシフェニル)リン ブタン)CNを生成させ、そして次に赤色溶液が不透明のベージュ色溶液に変化した。この不透明の溶液を攪拌し黄色スラリー溶液を生成させた。このスラリー溶液を冷却し固体を形成させ、そして次にこの固体を25mlの水で二回洗浄しそして次に氷で冷却したエタノールで急速に冷却し不純物が含まれたベージュ色固体を形成させた。この不純物を含むベージュ色固体を25℃で乾燥し、沸騰無水エタノール125mlに加え、そして次に室温で12時間フリッツフィルターで濾過した。その結果、無色の光沢固体のみが残った。最後に、無色光沢固体を無水エタノール60mlで再結晶化し、無色の純粋なS,S−(4−メトキシフェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(4−メトキシフェニル)6.2gを得た。
【0046】
実施例6:Cr(III)(アセチルアセトネート)、R,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)3.5mg(0.010mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例2で得られたR,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)C
H(メチル)−P(4−メトキシフェニル)5.5mg(0.010mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次に重量を測定しポリエチレン1.9gを得た。さらに、GC分析により、反応混合物の総質量が45.5gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0047】
実施例7:CrCl(テトラヒドロフラン)、R,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、CrCl(テトラヒドロフラン)3.75mg(0.01mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例2で得られたR,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)5.5mg(0.010mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が25.3gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0048】
実施例8:Cr(2−エチルヘキサノエート)、R,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(2−エチルヘキサノエート)4.0mg(0.01mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に触媒製造例2で得られたR,R−(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)5.5mg(0.010mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合した
エタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が48.2gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0049】
比較触媒製造例1(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)リガンドの製造
(a)Ewart等,J.Chem.Soc.1964年,1543頁;(b)Dossett,S.J.等,Chem.Commun.,2001年,8,699頁;(c)Balakrishna,M.S.等,J.Organomet.Chem.1990年,390,2,203頁の文献に開示されたように、アミンと塩化ホスフィン(RPCl)を反応させることにより混合ヘテロ原子PNPリガンドを製造した。さらに、文献(Casalnuovo,A.L.等,J.Am.Chem.Soc.1994年,116,22,9869頁;Rajanbabu,T.V.等,J.Org.Chem.1997年,62,17,6012頁)に開示されたように、反応性塩化ホスフィン(RPCl)を製造した。
80mlのDMCにトリエチルアミン15ml及びクロロジフェニルホスフィン28mmolを溶解し、そして次にイソプロピルアミン1.11ml(13mmol)をそこへ添加した。反応混合物を30分間撹拌し、そして次に不純物を除去した。その反応混合物をさらに24時間撹拌し、そして次に濾過してトリエチルアンモニウム塩を除去した。その生成物を再結晶化し、そして次に分離し、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)リガンドを85%の収率で収得した。
【0050】
比較実施例1:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び3.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)5.2mg(0.015mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例1で得られた(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)6.4mg(0.015mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が32.2gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0051】
比較実施例2:Cr(III)(2−エチルヘキサノエート)、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱
した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(2−エチルヘキサノエート)5.2mg(0.015mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例1で得られた(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)6.4mg(0.015mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が70.0gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0052】
比較触媒製造例2:(フェニル)PCHP(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)PCHP(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。臭化ジメチル0.09ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で16時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(390mg、収率95%)を得た。
【0053】
比較実施例3:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCHP(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)10.5mg(0.03mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例2で得られた(フェニル)PCHP(フェニル)11.5mg(0.03mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が1.47gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表
1に示す。
【0054】
比較触媒製造例3:(フェニル)PCHCHP(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)PCHP(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモエタン0.11mL(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で36時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(333mg、収率78%)を得た。
【0055】
比較実施例4:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCHCHP(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)5.2mg(0.015mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例3で得られた(フェニル)PCHCHP(フェニル)7.8mg(0.02mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が10.4gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0056】
比較触媒製造例4:(フェニル)P(CHP(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)P(CHP(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモプロパン0.13ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で45時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を
蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(366mg、収率83%)を得た。
【0057】
比較実施例5:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)P(CHP(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)9.6mg(0.028mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例4で得られた(フェニル)P(CHP(フェニル)13.8mg(0.033mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が28.8gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0058】
比較触媒製造例5:(フェニル)P(CHP(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)P(CHP(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモブタン0.16ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で48時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(397mg、収率87%)を得た。
【0059】
比較実施例6:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)P(CHP(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)9.7mg(0.028mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例5で得られた(フェニル)P(CHP(フェニル)15.4mg(0.036mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの
供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が18.5gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0060】
比較触媒製造例6:(フェニル)P(CH=CH)P(フェニル)リガンドの製造R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)P(CH=CH)P(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモエチレン0.11ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で48時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(284mg、収率67%)を得た。
【0061】
比較実施例7:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)P(CH=CH)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び9.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)10.5mg(0.03mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例6で得られた(フェニル)P(CH=CH)P(フェニル)23.8mg(0.06mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が1.3gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0062】
比較触媒製造例7:(フェニル)P(1,2−フェニル)P(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)P(1,2−フェニル)P
(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモベンゼン0.16ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で60時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(358mg、収率75%)を得た。
【0063】
比較実施例8:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)P(1,2−フェニル)P(フェニル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)10.5mg(0.03mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例7で得られた(フェニル)P(1,2−フェニル)P(フェニル)21.8mg(0.049mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が19.6gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0064】
比較触媒製造例8:(シクロヘキシル)PCHP(シクロヘキシル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(シクロヘキシル)PCHP(シクロヘキシル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジシクロヘキシルホスフィン0.43ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。ジブロモメタン0.09ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で38時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(372mg、収率85%)を得た。
【0065】
比較実施例9:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(シクロヘキシル)PCHP(シクロヘキシル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)10.5mg(0.03mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例8で得られた(シクロヘキシル)PCHP(シクロヘキシル)12.2mg(0.03mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が9.4gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0066】
比較触媒製造例9:(シクロヘキシル)PCHCHP(シクロヘキシル)リガンド製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(シクロヘキシル)PCHCHP(シクロヘキシル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジシクロヘキシルホスフィン0.43ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモエタン0.11ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で49時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(366mg、収率81%)を得た。
【0067】
比較実施例10:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(シクロヘキシル)PCHCHP(シクロヘキシル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)10.5mg(0.03mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例9で得られた(シクロヘキシル)PCHCHP(シクロヘキシル)12.7mg(0.03mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析する
ために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が2.2gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0068】
比較触媒製造例10:(エチル)PCHCHP(エチル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(エチル)PCHCHP(エチル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジメチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジエチルホスフィン0.25ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモエタン0.11ml(1.29mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で72時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(126mg、収率57%)を得た。
【0069】
比較実施例11:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(エチル)PCHCHP(エチル)及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)5.4mg(0.016mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例10で得られた(エチル)PCHCHP(エチル)3.3mg(0.016mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が2.7gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0070】
比較触媒製造例11:(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)リガンドの製造
R.N.Salvatore等,TetrahedronLetters44(2003年)8373頁の文献に開示されたように、(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)リガンドをジメチルフルオロメチレン(DMF)及び水酸化セシウム中で2当量のジブロモアルキルとジフェニルホスフィンを反応させることにより製造した。先ず、4Åの粒径を有する活性化モレキュラシーブ粉末1.0gと混合した無水N,N−ジ
メチルホルムアミド16.6ml懸濁液へ水酸化セシウム一水和物360mg(2.14mmol)を加え、そして次に窒素雰囲気で撹拌した。その後に、ジフェニルホスフィン0.38ml(2.14mmol)を加え、そして次に室温で1時間撹拌し暗赤橙色の溶液を形成させた。1,2−ジブロモプロパン0.14ml(1.3mmol)をこの溶液に滴加したところ、白色に変わった。この溶液を室温で72時間反応させ、そして蒸留水60mlを加え、そしてこの溶液をDMC60mlで3回抽出し有機層を形成させた。有機層を蒸留水で3回洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で溶媒を除去し、そして次に溶媒が除去された有機層をベンゼン溶媒中で再結晶化させた結果、空気に反応性のある白色結晶(309mg、収率70%)を得た。
【0071】
比較実施例12:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)リガンド及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び6.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)1.7mg(0.005mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例11で得られた(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)2.1mg(0.005mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が4.8gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0072】
比較実施例13:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)リガンド及びMAOを用いたエチレン四量体化
実施例1の300mlのステンレススチール反応器を窒素又は真空中で洗浄した後、シクロヘキサン100ml及び4.0mmol−AlのMAOを加え、そして45℃に加熱した。グローブボックス内の50mlのシュレンク管に、Cr(III)(アセチルアセトネート)3.4mg(0.010mmol)のトルエン10ml溶液を加え、そして次に比較触媒製造例11で得られた(フェニル)PCH(メチル)CHP(フェニル)4.2mg(0.010mmol)を混合し、混合物を生成し、そして次にその混合物を室温で5分間撹拌し、そして次に反応器に加えた。その後、反応器内にエチレンを30barの圧力で充填し、そして次に600rpmの撹拌速度で撹拌した。30分後、エチレンの供給及びその攪拌を止め、そして反応器を10℃未満の温度に冷却させた。
その後、過量のエチレンを反応器から放出し、そして次に10容量%の塩酸と混合したエタノールを反応器内に存在する液体に添加した。液体をGC−FIDを用いて分析するために、内部標準物質として供されるノナンをそこへ添加した。少量の有機層サンプルを無水硫酸マグネシウムに通し乾燥させ、そして次にGC−FIDを用いて分析した。残りの有機層を濾過し、そして次に固体ワックス/ポリマー生成物を分離した。この固体生成物をオーブン中で100℃で一晩中乾燥し、そして次にGCを用いて分析した。GC分析により、生成物の総質量が6.0gであることを確認した。本実施例の生成物分布を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例9〜12:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)及びMMAO−12を用いたエチレン四量体化における反応時間による反応活性及び選択性の変化
Cr(III)(アセチルアセトネート)1.75mg(0.005mmol)、触媒製造例1で製造した(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)2.2mg(0.005mmol)及びAkzo−Nobel社により製造されたMMAO−12を3mmol用い、反応温度を45℃、そして30barのエチレン圧力において、反応時間を30分(実施例9)、1時間(実施例10)、2時間(実施例11)及び4時間(実施例12)においてエチレンの四量体化を実施した。その他の反応実施工程及び生成物処理工程は実施例1と同様に実施した。
実施例9乃至12におけるエチレンの四量体化の結果を表2に示し、そして反応時間による反応活性及び選択性の変化を図1及び図2に示す。
【0075】
比較実施例14〜17:Cr(III)(アセチルアセトネート)、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)及びMMAO−12を用いたエチレン四量体化反応の反応時間による反応活性及び選択度変化
(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)の代わりに比較触媒製造例1の(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)2.1mg(0.005mmol)を使用することを除き、実施例9乃至12と同様に実施した。
比較実施例14乃至17のエチレンの四量体化の結果を下記表2に示し、そして反応時間による反応活性及び選択性の変化を図1及び図2に示した。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例9乃至12及び比較実施例14乃至17は、本発明のP−C−C−P骨格構造リガンドと従来技術のヘテロ原子構造であるPNPリガンドのものとの、反応時間による1−オクテンの生成物の収率を比較するために実施された。
【0078】
図1は、反応時間によるエチレン四量体化の触媒活性の変化を示す。図1に示されるように、本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンド含む触媒系を使用した場合には、1−オクテンの収率は時間経過により一定に増加するが、しかし、PNPリガンドを含む従来の触媒系を使用した場合は、1−オクテンの収率は初期には増加するが、次に反応経過とともに減少した。すなわち、本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドを含む触媒系は、PNPリガンドを含む従来の触媒系よりも良好な安定な触媒活性を維持し得ることが見られ得る。
【0079】
図2は、反応時間によるエチレン四量体化における選択性を示すグラフである。図1に示されるように、本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドを含む触媒系及びPNPリガンドを含む従来の触媒系の両方とも、60%以上の高い1−オクテン選択性を表すことが見られ得る。
【0080】
したがって、本発明によるP−C−C−P骨格構造リガンドを含む触媒系は、従来の触
媒系のような同様の触媒活性及び選択性を有し、そして、従来の触媒系より良好な触媒活性を安定に維持し得ることが見られ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属又は遷移金属前駆体、
共触媒、及び
下記式1
【化1】

(式中、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基を表し、前記R、R、R及びRのそれぞれはP原子と結合した原子に隣接した原子上に如何なる置換基も有さず、そしてR及びRは、水素ではなく、しかしそれぞれ独立してヒドロカルビル基、及び置換ヒドロカルビル基を表す。)
で表されるP−C−C−P骨格構造リガンド
を含む、エチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項2】
前記触媒系が、2又はそれより多いP−C−C−P骨格構造リガンドが互いに結合している、多重P−C−C−P骨格構造リガンドを含む、請求項1に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項3】
上記式1で表されるP−C−C−P骨格構造リガンド中、R、R、R及びRがそれぞれ独立して、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基、メシチル基、キシリル基、メチル基、エチル基、エチレニル基、プロピル基、プロペニル基、プロピニル基、ブチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、トリル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、クミル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ジメチルアミノ基、チオメチル基、トリメチルシリル基、及びジメチルヒドラジル基からなる群より選ばれる、請求項1に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項4】
上記式1で表されるP−C−C−P骨格構造リガンド中、R、R、R及びRがそれぞれ独立して、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−ジイソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基及び4−イソプロポキシフェニル基からなる群より選ばれる、請求項3に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項5】
上記式1で表されるP−C−C−P骨格構造リガンド中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、アルコキシ基、アミノカルボニル基、カルボニルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、これらの誘導体、及びこれらの任意の置換体で置換されたアリール基からなる群から選ばれる、請求項1に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項6】
前記P−C−C−P骨格構造リガンドが、(フェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−メチルフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(4−メチルフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(エチル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(エチル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(エチル)CH(エチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(エチル)CH(エチル)−P(フェニル)、(フェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(n−プロピル)CH(メチル)−P(4−エチルフェニル)、(フェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(フェニル)、(4−メトキシフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(4−メトキシフェニル)、(4−エチルフェニル)P−CH(イソプロピル)CH(エチル)−P(4−エチルフェニル)、1,2−ジ−(P(フェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(4−メトキシフェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(4−エチルフェニル))シクロヘキサン、1,2−ジ−(P(フェニル))シクロペンタン、1,2−ジ−(P(4−メトキシフェニル))シクロペンタン、1,2−ジ−(P(4−エチルフェニル))シクロペンタン、3,4−ジ−(P(フェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−メトキシフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(フェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−メトキシフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−エチルフェニル))ピロール、3,4−ジ−(P(4−エチルフェニル))イミダゾール、(4−エチルフェニル)P−CH(ジメチルアミン)CH(ジメチルアミン)−P(4−エチルフェニル)、(3−メトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(3−メトキシフェニル)、(4−エトキシフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)−P(o−エトキシフェニル)、(4−ジメチルアミンフェニル)P−CH(メチル)CH(メチル)P(4−ジメチルアミンフェニル)及び(4−エチルシクロヘキシル)PCH(メチル)CH(メチル)P(4−エチルシクロヘキシル)からなる群より選ばれる、請求項1に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項7】
前記遷移金属又は遷移金属前駆体がクロム又はクロム前駆体を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項8】
前記クロム又はクロム前駆体が、クロム(III)アセチルアセトネート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン及びクロム(III)2−エチルヘキサノエートからなる群より選ばれる、請求項7に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項9】
前記共触媒が、メチルアルミノキサン(MAO)又はエチルアルミノキサン(EAO)である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエチレンを四量体化するための触媒系。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の触媒系を用いてエチレンを四量体化することによる1−オクテンを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−526647(P2010−526647A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546324(P2009−546324)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000302
【国際公開番号】WO2008/088178
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(507354242)エスケー エナジー 株式会社 (19)
【Fターム(参考)】