説明

エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂およびその製造方法、ならびにエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂を含む光硬化性組成物および光・熱硬化性組成物

【課題】フォトリソグラフィー法によりパターン形成可能で、耐熱性に優れる新規なマレイミド系樹脂を提供すること。
【解決手段】式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物を反応させて得られるエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂およびその製造方法、ならびにエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂を含む光硬化性組成物および光・熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マレイミド系樹脂は、分子中にイミド基を有することにより、優れた耐熱性、機械的性質、絶縁性や耐薬品性を有し、各種接着剤、コーティング材としての用途が期待され開発が進められている(例えば、特許文献1〜3を参照)。しかし、これらのマレイミド樹脂は耐熱性には優れるものの、アルカリ現像性の官能基や、ラジカル重合性基をもたないため、フォトリソグラフィー法によるパターン形成をすることができず、優れた耐熱性があるにもかかわらずレジスト分野への適用は困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−306359号公報
【特許文献2】特開平5−311028号公報
【特許文献3】特開平8−134328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、アルカリ現像性とラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を付与することでフォトリソグラフィー法によるパターン形成を可能とし、ソルダーレジスト、ビルドアップ基板の層間絶縁材料等の耐熱性が必要とされるレジストに利用できる新規なマレイミド系樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記のような従来の課題を解決すべく鋭意研究、開発を遂行した結果、特定の構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基とを反応させて得られるマレイミド系樹脂が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基とを反応させて得られるエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂である。
【0006】
【化1】

【0007】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示し、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示し、l、mはいずれも1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
上記式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物を0.1〜0.7当量反応させることが好ましい。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は、下記式(2)、式(3)および式(4)から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0008】
【化2】

【0009】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0010】
【化3】

【0011】
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を示す。)
【0012】
【化4】

【0013】
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
イソシアネート含有不飽和化合物は、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
また、本発明は、式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体に式(6)で示されるアミノ基含有化合物および/または式(7)で示されるアミノ基含有化合物を反応させた後、さらにエポキシ基含有不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物を反応させることを特徴とする上記エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の製造方法である。
【0014】
【化5】

【0015】
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示し、n、mはいずれも1以上の整数を示し、lは0以上の整数を示す。)
【0016】
【化6】

【0017】
(式(6)中、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示す。)
【0018】
【化7】

【0019】
また、本発明は、(A)上記エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂、(B)エチレン性不飽和基含有化合物および(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性組成物である。ここで、成分(A)、(B)および(C)はそれぞれ、固形分基準で、40〜90質量%、5〜50質量%および0.5〜10質量%含まれることが好ましい。
また、本発明は、上記光硬化性組成物に、(D)エポキシ樹脂および/または(E)ビスオキサゾリン化合物を配合することを特徴とする光・熱硬化性組成物である。ここで、光硬化性組成物中の有機溶剤を除いた有機成分100質量部に対して、成分(D)および(E)を合計して5〜100質量部配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フォトリソグラフィー法によりパターン形成可能で、耐熱性に優れる新規なマレイミド系樹脂およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
1.エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂
本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂は、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物のイソシアネート基とを反応させることにより得られる。
【0022】
【化8】

【0023】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示し、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示し、l、mはいずれも1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
【0024】
本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂は、マレイミド系樹脂特有の高い耐熱性を有するとともに、エチレン性不飽和基を有することから光硬化させることができる。さらに、フェノール性水酸基をその構造中に有することから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液等の強アルカリ性の現像液で、アルカリ現像が可能である。これよりフォトリソグラフィー法によりパターン形成が可能となり、耐熱性が要求されるソルダーレジスト、ビルドアップ基板等の層間絶縁膜等に好適に使用することができる。
【0025】
ここで、本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂について詳細に説明する。
1−1.式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂
ここで、式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を示す。また、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示すが、耐熱性の観点より水素原子、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基が好ましい。
【0026】
1〜6個の炭素原子を有するアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基等を挙げることができる。1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモプロピル基等を挙げることができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を挙げることができる。
【0027】
〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示すが、耐熱性の観点より水素原子、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基が好ましい。1〜6個の炭素原子を有するアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0028】
l、mはいずれも1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示すが、耐熱性、耐薬品性およびアルカリ現像性を向上させる観点から、(l+n)/m=0.2〜1.0が本発明にとって好ましい範囲であり、より好ましくは0.3〜1.0である。また、アルカリ現像性、感光性および耐熱性を向上させる観点から、l/n=100/0〜30/70であることが好ましく、100/0〜50/50の範囲であることがより好ましい。
【0029】
さらに、本発明のエチレン性不飽和基を有するマレイミド系樹脂の耐熱性に影響する因子として、該樹脂中における式(1)に示す構造の占める割合が挙げられ、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂において、式(1)で示される構造が50〜100質量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは70〜100質量%である。
【0030】
1−2.エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物およびイソシアネート基含有不飽和化合物
本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の合成に用いられる好ましいエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては式(2)〜式(4)が挙げられる。
【0031】
【化9】

【0032】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0033】
【化10】

【0034】
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示す。)
【0035】
【化11】

【0036】
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【0037】
式(2)で示される化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。式(3)で示される化合物の具体例としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。式(4)で示される化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
また、本発明のエチレン性不飽和基含有スチレンマレイミド系樹脂の合成に用いられる好ましいイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、6−イソシアネートヘキシル(メタ)アクリレート、10−イソシアネートデシル(メタ)アクリレート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタ(アクリル)イソシアネート等が挙げられ、これらの中でも入手の容易性、取扱いの容易性の観点から2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0039】
また、本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂において、式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対するエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物の付加量は、アルカリ現像性および感光性をより向上させる観点から、0.1〜0.7当量であることが好ましく、0.2〜0.6当量であることがより好ましい。
【0040】
本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、耐熱性およびアルカリ現像性をより向上させる観点から、2000〜500000であることが好ましく、3000〜200000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)装置名GPCシステムズ21H(カラム:KF802、KF803、KF805、検出器:RI検出器 昭和電工株式会社製)を用いて、標準物質:ポリスチレン、試料:1%テトラヒドロフラン溶液、測定時の流量:1mL/分、温度:40℃で測定することができる。
【0041】
2.エチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の製造方法
本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂は、式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に、式(6)で示されるアミノ基含有化合物および/または式(7)で示されるアミノ基含有化合物を付加・脱水縮合して式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂を得(製造工程1)、これにエポキシ基含有不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物を反応させることにより得ることができる(製造工程2)。
【0042】
【化12】

【0043】
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基、またはハロゲン原子を示し、n、mはいずれも1以上の整数を示し、lは0以上の整数を示す。)
【0044】
【化13】

【0045】
(式(6)中、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。)
【0046】
【化14】

【0047】
2−1.式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体
式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体は、式(8)で示されるスチレン化合物と無水マレイン酸とを一般的な有機溶剤中でラジカル重合を行うことによって得ることができる。また、硬化物物性をコントロールするために他のエチレン性不飽和基を有する化合物を共重合モノマーとして使用してもよい。
【0048】
【化15】

【0049】
(式(8)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基、またはハロゲン原子を示す。)
【0050】
ここで、式(5)および式(8)のRおよびX〜Xは、式(1)のRおよびX〜Xと同一である。また、式(5)のl、mおよびnは、式(1)のl、mおよびnと同一である。
式(8)で示されるスチレン化合物の具体例としては、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、p−メトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−クロロ−α−メチルスチレン、p−フルオロ−α−メチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等を挙げることができる。
【0051】
無水マレイン酸およびスチレン化合物以外に式(5)の構造を含む無水マレイン酸共重合体の合成に使用できる他のエチレン性不飽和化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、メチル無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の化合物を挙げることができる。
【0052】
式(5)の構造を含む無水マレイン酸共重合体の合成に使用される有機溶剤は、無水マレイン酸の酸無水物基に対して不活性なものであれば任意に使用することができる。そのような有機溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート等のエステルエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0053】
本発明に使用する式(5)の構造を含む無水マレイン酸共重合体は市販されているものを使用しても問題なく、そのようなものとして、サートマー社のSMAレジン 1000、2000、3000、EF30、EF40を挙げることができる。
【0054】
2−2.式(6)で示される化合物
本発明に使用される式(6)の化合物は、架橋点として利用されるフェノール性水酸基を有しないので架橋に関与しない。よって、使用する式(6)の化合物の当量によって架橋点の数を変え、硬化物物性をコントロールすることができる。
【0055】
式(6)のY〜Yは、式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂のY〜Yと同一である。式(6)の化合物の具体例としては、アニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、p−エチルアニリン、2,4−ジメチルアニリン、3,4−ジメチルアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、m−イソプロポキシアニリン、o−フルオロアニリン、m−フルオロアニリン、p−フルオロメチルアニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン等を挙げることができる。
【0056】
2−3.式(7)で示される化合物
本発明に使用される式(7)の化合物は、本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂において、架橋点形成のために利用される。好ましい式(7)の化合物の具体例としては、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、o−アミノフェノールを挙げることができるが、式(7)化合物のフェノール性水酸基に対する、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基の付加、あるいはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物のイソシアネート基の付加を阻害しない範囲で、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が式(7)の化合物の芳香環に直接結合していても構わない。
【0057】
式(5)の構造を含む無水マレイン酸共重合体に付加する式(6)の化合物と式(7)の化合物の質量比は、アルカリ現像性および感光性を向上させる観点から、式(6)の化合物/式(7)の化合物=0/100〜70/30であることが好ましく、0/100〜50/50の範囲であることがより好ましい。
【0058】
2−4.製造工程1:式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂の調製
この製造工程1において、式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に対して、式(6)の化合物および/または式(7)の化合物のアミノ基を付加させ、さらに脱水縮合することにより、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂を得ることができる。反応は上記原料を共存下加熱し、生成する水を反応溶剤とともに還流時に除去することで、完結させればよい。このとき反応触媒として、3級アミン化合物等を添加しても構わない。
【0059】
式(5)の構造を含む無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に対する、式(6)および式(7)の化合物を合わせた付加量は、粘度を安定化しかつアルカリ現像性および硬化物物性を向上させる観点から、0.70〜1.10当量であることが好ましく、0.80〜1.05当量の範囲であることがより好ましい。
【0060】
反応溶剤は、原料に対する安定性、生成物となる式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂に対する溶解性、脱水効率より選択される。好ましい反応溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等を挙げることができる。反応温度は選択する反応溶剤の沸点、脱水効率に依存するが、好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜150℃である。
【0061】
2−5.製造工程2:式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対するエポキシ基含有エチレン性不飽和基含有化合物および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物の付加
この製造工程2において、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して、エポキシ基含有エチレン性不飽和基含有化合物および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物を付加することにより、本発明のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂を得ることができる。エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物の付加量は、アルカリ現像性および感光性をより向上させる観点から、0.1〜0.7当量であることが好ましく、0.2〜0.6当量であることがより好ましい。
【0062】
フェノール性水酸基に対するエポキシ基の付加反応触媒としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、オニウム塩、イミダゾール系化合物等を使用することができ、より具体的には、3級アミン系化合物として、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられ、ホスフィン系化合物として、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。またオニウム塩として、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩として、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、デシルテトラメチルアンモニウムクロライド等、4級ホスホニウム塩として、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等を挙げることができ、イミダゾール系化合物の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができる。反応触媒の添加量は特に限定されるものでないが、反応に掛かる時間と硬化物強度とのバランスを考慮すると、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂とエポキシ基含有エチレン性不飽和基化合物との合計に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
ここでの反応温度は、フェノール性水酸基とエポキシ基の反応が経済的な時間で進行し、なおかつエチレン性不飽和基の熱によるラジカル重合反応が抑制される温度範囲であれば任意に選択できるが、好ましくは70〜140℃、より好ましくは80〜130℃の範囲である。
【0063】
また、フェノール性水酸基に対するイソシアネート基の付加反応触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等のスズ化合物が好適に用いることができる。反応触媒の添加量は特に限定されるものでないが、反応に掛かる時間と反応温度制御の容易さとのバランスを考慮すると、式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂とイソシアネート基含有エチレン性不飽和基化合物との合計に対して0.01〜1質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。
ここでの反応温度は、フェノール性水酸基とイソシアネート基の反応が経済的な時間で進行し、なおかつエチレン性不飽和基の熱によるラジカル重合反応が抑制される温度範囲であれば任意に選択できるが、好ましくは20〜120℃、より好ましくは40〜100℃の範囲である。
【0064】
上記付加反応において、熱安定剤として、ハイドロキノン、メトキノン、p−tert−ブチルフェノール、フェノチアジン等を加えてもよい。
【0065】
3.光硬化性組成物
本発明の(A)エチレン性不飽和基含有マレイミド樹脂に、(B)(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物および(C)光重合開始剤を配合することで光硬化性組成物とすることができる。
【0066】
3−1.エチレン性不飽和基含有化合物
本発明に用いられる成分(B)としてのエチレン性不飽和基含有化合物は、(1)樹脂および(2)モノマーに分類される。このような樹脂としては、具体的には側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合体、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、アルカリ現像性を損ねないために特にカルボキシル基、またはフェノール性水酸基を有するものが好ましい。
【0067】
モノマーとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルが使用される。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、
【0068】
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、
【0069】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはグリセロールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート、メタクリロキシエチルフォスフェート、ビス・メタクリロキシエチルフォスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシッドホスフェート(フェニールP)等のリン原子を有するメタクリレート、
【0070】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス・グリシジル(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、
【0071】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリアクリレート、ビスフェノールSのエチレンオキシド4モル付加ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加ジアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド3モル付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド6モル付加トリアクリレート等の変性ポリオールポリアクリレート、
【0072】
ビス(アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン付加トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸骨格を有するポリアクリレート、α,ω−ジアクリロイル−(ビスエチレングリコール)−フタレート、α,ω−テトラアクリロイル−(ビストリメチロールプロパン)−テトラヒドロフタレート等のポリエステルアクリレート、
【0073】
アリル(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルミアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物等もモノマーとして好適に用いることができる。
【0074】
3−2.光重合開始剤
本発明に用いられる成分(C)としての光重合開始剤としては、公知のものを使用できる。そのような光重合開始剤の具体例としては、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン系化合物、メチルフェニルグリオキシレート等のグリオキシエステル系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0075】
一般にベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、グリオキシエステル系化合物や、アシルホスフィンオキサイド系化合物のようにP1型光重合開始剤と呼ばれる化合物はそれ単独でも使用可能であるが、P2型光重合開始剤であるベンゾフェノン系等の光重合開始剤は水素供与性化合物と併用して用いられる。
【0076】
水素供与性化合物とは、光によって励起された開始剤に水素を供与できる化合物をいい、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の脂肪族アミン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソブチル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン等の芳香族アミン類が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独または2種類以上を混合して用いることもできる。
【0077】
本発明の光硬化性組成物における各成分の好ましい配合割合は、固形分基準で、(A):40〜90質量%、(B):5〜50質量%、(C):0.5〜10質量%であり、より好ましい配合割合は、(A):50〜85質量%、(B):10〜40質量%、(C):1〜8質量%である。(A)〜(C)の配合割合が上記範囲内であれば、光感度および硬化物物性をより向上させることができる。
【0078】
本発明の光硬化性組成物は、基板に塗布、フォトマスク越しに露光、アルカリ現像するによりパターンを形成することができるが、さらに120〜250℃の温度で5〜120分加熱することで残存するエチレン性不飽和基を重合させてもよい。
【0079】
4.光・熱硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物により高い耐熱性を付与するために、(D)エポキシ樹脂および/または(E)ビスオキサゾリン系化合物等の熱硬化性成分をさらに配合することができる。
【0080】
4−1.エポキシ樹脂
本発明に用いられる成分(D)としてのエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のオキシラン基を含む化合物であり、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。本発明において、これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
上記エポキシ樹脂とエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂のフェノール性水酸基の反応は、硬化触媒の存在下で促進される。そのような硬化触媒としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、オニウム塩、イミダゾール系化合物等が挙げられる。3級アミン系化合物の具体例としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられ、ホスフィン系化合物としてはトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。またオニウム塩としては4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、デシルテトラメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、4級ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等を挙げることができ、イミダゾール系化合物の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物等を挙げることができる。
【0082】
4−2.ビスオキソザリン系化合物
本発明に用いられる成分(E)としてのビスオキソザリン系化合物は、1分子中にオキソザリル基を2個有する化合物で、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス(2−オキソザリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(2−オキソザリン)オキソザリン等を挙げることができる。
【0083】
本発明の光・熱硬化性組成物における(D)エポキシ樹脂および(E)ビスオキソザリン系化合物の配合割合は、本発明の光硬化性組成物の有機溶剤を除いた有機成分100質量部に対して、(D)および(E)の合計で好ましくは5〜100質量部であり、より好ましくは10〜80質量部である。(D)エポキシ樹脂および(E)ビスオキソザリン系化合物の配合割合が上記範囲内であれば、耐熱性およびアルカリ現像性をより向上させることができる。
【0084】
エポキシ樹脂の硬化触媒の添加量は特に限定されるものではないが、耐熱性とエポキシ樹脂の硬化速度とのバランスを考慮すると、本発明の光硬化性組成物の有機溶剤を除いた有機成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜4質量部の範囲であることがより好ましい。
【0085】
5.その他成分
本発明の光硬化性組成物および光・熱硬化性組成物には目的に応じて、着色顔料、着色染料等の着色剤、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、水酸化アルミニウム、石英等の各種体質顔料、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン等のポリマー成分、かぶり防止剤、退色防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、磁性体等の各種添加剤配合することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、それらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【0087】
[樹脂合成]
(合成例1)式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂の合成−1
2L容セパラブルフラスコに、スチレン−無水マレイン酸共重合体(商品名:SMA1000P、酸価470、スチレンと無水マレイン酸とのモル比1:1、重量平均分子量5970、サートマー社製)303gおよびメチルイソブチルケトン(東京化成工業株式会社製)458.5gを仕込んだ後、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流脱水装置を4つ口フラスコに取り付け、70℃に加熱し、スチレン−無水マレイン酸共重合体を溶解した。さらにm−アミノフェノール(東京化成工業株式会社製)155.5g(スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に対して0.95当量)を滴下した。イミド化反応は、80℃、3時間行った後、さらに115℃、20時間行い、理論脱水量が留出したことを確認した。その後、メチルイソブチルケトン200gを加えることにより不揮発分(固形分)49.7質量%、GPCによる重量平均分子量が7700のマレイミド系樹脂を得た。
【0088】
(合成例2)式(1)の構造を含むマレイミド系樹脂の合成−2
2L容セパラブルフラスコに、スチレン−無水マレイン酸共重合体(商品名:SMA1000P、酸価470、スチレンと無水マレイン酸とのモル比1:1、重量平均分子量5970、サートマー社製)303gおよびメチルイソブチルケトン(東京化成工業株式会社製)458.5gを仕込んだ後、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流脱水装置を4つ口フラスコに取り付け、70℃に加熱し、スチレン−無水マレイン酸共重合体を溶解した。さらにm−アミノフェノール(東京化成工業株式会社製)140.0g(スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に対して0.86当量)、アニリン(純正化学株式会社製)13.2g(スチレン−無水マレイン酸共重合体の酸無水物基に対して0.09当量)を滴下した。イミド化反応は、80℃、3時間行った後、さらに115℃、20時間行い、理論脱水量が留出したことを確認した。その後、メチルイソブチルケトン200gを加えることにより不揮発分(固形分)49.5質量%、GPCによる重量平均分子量が7500のマレイミド系樹脂を得た。
【0089】
(比較合成例1)クレゾールノボラック型エポキシアクリレートの合成
1L容セパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EOCN−1020、エポキシ当量200、日本化薬株式会社)200g、アクリル酸(東京化成工業株式会社)72g、トリフェニルホスフィン2.7g、ハイドロキノン0.27gおよびメチルイソブチルケトン183gを仕込んだ後、温度計、コンデンサー、空気導入管および攪拌機を取り付け、反応液に空気を吹き込みながら100℃で反応を行った。反応開始10時間後、放冷した後テトラヒドロ無水フタル酸76gを仕込み、100℃で5時間反応を行い、不揮発分66質量%のクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂を得た。
【0090】
〔実施例1〕不飽和基含有マレイミド系樹脂−1の合成
500mL容セパラブルフラスコに、合成例1で得られたマレイミド系樹脂244.5g、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製)24.0g(合成例1のマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して0.3当量)、ハイドロキノン(東京化成工業株式会社製)0.06g、トリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)1.2gを仕込んだ後、温度計、コンデンサー、空気導入管および攪拌機を取り付け、反応液に空気を吹き込みながら100℃で反応を行った。反応開始15時間後放冷し、不揮発分(固形分)54.4質量%、GPCによる重量平均分子量が9800の不飽和基含有マレイミド系樹脂−1を得た。
【0091】
〔実施例2〕不飽和基含有マレイミド系樹脂−2の合成
500mL容セパラブルフラスコに、合成例1で得られたマレイミド系樹脂244.5g、2−イソシアネートエチルメタクリレート(商品名:カレンズMOI、昭和電工株式会社製)12.4g(合成例1のマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して0.2当量)およびジブチルスズジラウレート(東京化成工業株式会社製)0.13gを仕込んだ後、温度計、コンデンサー、空気導入管および攪拌機を取り付け、反応液に空気を吹き込みながら80℃で反応を行った。4時間後FT−IRによりイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、放冷することにより、不揮発分(固形分)52.1質量%、GPCによる重量平均分子量が8200の不飽和基含有マレイミド系樹脂−2を得た。
【0092】
〔実施例3〕不飽和基含有マレイミド系樹脂−3の合成
500mL容セパラブルフラスコに、合成例2で得られたマレイミド系樹脂244.5g、2−イソシアネートエチルメタクリレート(商品名:カレンズMOI、昭和電工株式会社製)11.1g(合成例2のマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して0.2当量)およびジブチルスズジラウレート(東京化成工業株式会社製)0.13gを仕込んだ後、温度計、コンデンサー、空気導入管および攪拌機を取り付け、反応液に空気を吹き込みながら80℃で反応を行った。4時間後FT−IRによりイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、放冷することにより、不揮発分(固形分)51.7質量%、GPCによる重量平均分子量が8000の不飽和基含有マレイミド系樹脂−3を得た。
【0093】
[光硬化性組成物または光・熱硬化性組成物の調製]
表1および2に示されるような配合割合で、実施例4〜10および比較例1〜3の光硬化性組成物または光・熱硬化性組成物を調製した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
[評価]
(解像度)
実施例4〜10の組成物を、乾燥膜厚が約20μmとなるようにバーコーターで厚さ1mmの銅張積層板に塗布した。塗布した銅張積層板は熱風乾燥機で80℃、20分間乾燥した後、30〜300μmのラインのネガパターン(商品名:テストパターンNo.2、日立化成工業(株)製)を密着させ、超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名:マルチライト ML−251A/B、ウシオ電機株式会社製)を用い300mj/cm露光し光硬化した。露光量は紫外線積算光量計(ウシオ電機(株)製、商品名「UIT−150」、受光部「UVD−S365」)を用いて測定した。露光後、25℃の2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に浸漬することで、現像処理を行った。現像時間は、各組成物の塗布膜が完全に溶解する時間×2とした。現像後各基板は流水にて水洗し、エアーガンにて乾燥した。その後ラインが形成されている最小幅のラインを読み取り、解像度を評価した。この「ラインを読み取り」は、光学顕微鏡によってライン形成の有無を判定することにより行った。結果は表1に示した。
【0097】
比較例1〜3の組成物を、乾燥膜厚が約20μmとなるようにバーコーターで厚さ1mmの銅張積層板に塗布した。塗布した銅張積層板は熱風乾燥機で80℃、20分間乾燥した後、30〜300μmのラインのネガパターン(商品名:テストパターンNo.2、日立化成工業(株)製)を密着させ、超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名:マルチライト ML−251A/B、ウシオ電機株式会社製)を用い300mj/cm露光し光硬化した。露光後、1%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬することで、現像処理を行った。現像時間は、各組成物の塗布膜が完全に溶解する時間×2とした。現像後各基板は流水にて水洗し、エアーガンにて乾燥した。その後ラインが形成されている最小幅のラインを読み取り、解像度を評価した。この「ラインを読み取り」は、光学顕微鏡によってライン形成の有無を判定することにより行った。結果は表1に示した。
【0098】
(ガラス転移温度)
実施例4〜10、比較例1〜3の組成物を、乾燥膜厚が約20μmとなるようにバーコーターで大きさ100×100mm、厚さ1mmの銅張積層板に塗布した。塗布した銅張積層板は熱風乾燥機で80℃、20分間乾燥した後、に超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名:マルチライト ML−251A/B、ウシオ電機株式会社製)を用い300mj/cm露光し光硬化した。露光後、180℃のオーブンで2時間加熱することで、熱硬化膜を得た。各熱硬化膜はDSC(機種名:DSC6200、セイコーインスツルメンツ(株)製)にてガラス転移温度を測定した。そのときの昇温速度は10℃/分、測定温度範囲は20〜350℃である。結果は表1に示した。
【0099】
表1および2の結果から分かるように、エチレン性不飽和基とアルカリ現像性の官能基とを導入したマレイミド系樹脂を含有する実施例4〜10の組成物は、フォトリソグラフィー法によるパターン形成が可能なり、同時に265〜285℃という高いガラス転移温度を有することから耐熱性に優れる。このような光硬化性組成物および光・熱硬化性組成物は、ソルダーレジスト、ビルドアップ基板の層間絶縁材料等の耐熱性が必要な用途において好適に使用できる材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物のエポキシ基および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基とを反応させて得られることを特徴とするエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示し、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示し、l、mはいずれも1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
【請求項2】
式(1)で示される構造を含むマレイミド系樹脂のフェノール性水酸基に対して、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物を0.1〜0.7当量反応させて得られることを特徴とする請求項1に記載のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂。
【請求項3】
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物が、式(2)、式(3)および式(4)から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂。
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を示す。)
【化4】

(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項4】
イソシアネート含有不飽和化合物が2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂。
【請求項5】
請求項1に記載のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の製造方法であって、
式(5)で示される構造を含む無水マレイン酸共重合体に式(6)で示されるアミノ基含有化合物および/または式(7)で示されるアミノ基含有化合物を反応させた後、さらにエポキシ基含有不飽和化合物および/またはイソシアネート基含有不飽和化合物を反応させることを特徴とするエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂の製造方法。
【化5】

(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基またはハロゲン原子を示し、n、mはいずれも1以上の整数を示し、lは0以上の整数を示す。)
【化6】

(式(6)中、Y〜Yはそれぞれ独立に水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基またはハロゲン原子を示す。)
【化7】

【請求項6】
(A)請求項1〜4のいずれか一項に記載のエチレン性不飽和基含有マレイミド系樹脂、(B)エチレン性不飽和基含有化合物および(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項7】
固形分基準で、(A)40〜90質量%、(B)5〜50質量%および(C)0.5〜10質量%を含有することを特徴とする請求項6に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光硬化性組成物に、(D)エポキシ樹脂および/または(E)ビスオキサゾリン化合物を配合することを特徴とする光・熱硬化性組成物。
【請求項9】
光硬化性組成物中の有機溶剤を除いた有機成分100質量部に対して、(D)および(E)を合計して5〜100質量部配合することを特徴とする請求項8に記載の光・熱硬化性組成物。

【公開番号】特開2007−56151(P2007−56151A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244042(P2005−244042)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】