説明

エチレン系樹脂組成物および積層成形体

【課題】軟質性、および、層間接着性に優れるエチレン系樹脂組成物および該エチレン系樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供すること。
【解決手段】エチレン系共重合体(I)を99.9〜50重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を0.1〜50重量%とを含有するエチレン系樹脂組成物であって、(I)が(A)エチレンおよびα−オレフィンに由来するモノマー単位を60〜65重量%と、(B)エポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルに由来するモノマー単位を5〜10重量%と、(C)エポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸 およびα,β−不飽和カルボン酸エステルに由来するモノマー単位を30〜35重量%とを含有する(ただし(A)〜(C)の総量を100重量%とする。)エチレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン系樹脂組成物およびエチレン系樹脂組成物を含有する層を有する積層成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂は、自動車の内外装材、家電製品、OA機器、住宅建材、日用品、文具品、スポーツ用品などに幅広く使用されている。
【0003】
近年、前記の高剛性の熱可塑性樹脂からなる成形品の表面に柔軟性やグリップ性を付与することが要望されている。例えば、グリップ部分にはソフトな感触や外観などが求められ、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が積層されたポリカーボネート樹脂やポリプロピレン樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂が用いられている。
【0004】
例えば、樹脂に対する熱融着性を向上させるために、エチレンと(メタ)アクリレートとの共重合体に、エチレン−α−オレフィン共重合体および/または水添ブロック共重合体(ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加したもの。)が配合されたオレフィン系エラストマーを用いることが記載されている(特許文献1)。
【0005】
また、硬質(極性)支持体に対してより強力に接着させるために、少なくとも2つの重合モノビニル芳香族化合物からなる樹脂末端ブロックと重合共役ジエンからなるエラストマー中央ブロックを有する水素化されたエラストマーブロックコポリマー、可塑剤、オレフィン−アクリレートポリマーおよびポリオレフィンを含む熱可塑性エラストマー組成物を用いることが記載されている(特許文献2)。
【0006】
さらに、極性値の高い熱可塑性樹脂に積層し熱接着させるために、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)およびポリプロピレンを150〜230℃で混練し、次いで、架橋剤(有機化酸化物)および架橋助剤を添加して混練して製造されるJIS−A硬度が50〜95度のオレフィン系熱可塑性エラストマーに、特定のモノマーとしてメチルメタクリレートを含むエチレン系共重合体を添加して混練し製造される熱接着性熱可塑性エラストマーを用いることが記載されている(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特許第2801134号公報
【特許文献2】特開平10−130453号公報
【特許文献3】特開平11−80448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の公報等に記載されている熱接着性熱可塑性エラストマーを含有する層と、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂(以下、「AS系樹脂」とも言う。)、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の高剛性の熱可塑性樹脂を含有する層とからなる積層成形体において、軟質性、および、層間接着性は、必ずしも充分ではない。
【0009】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、軟質性、および、層間接着性に優れるエチレン系樹脂組成物、並びに、該エチレン系樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
<1>エチレン系共重合体(I)を99.9〜50重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を0.1〜50重量%と、を含有するエチレン系樹脂組成物であって(ただし、前記エチレン系共重合体(I)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の総量を100重量%とする。)、前記エチレン系共重合体(I)が、(A)エチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を60〜65重量%と、(B)エポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルに由来するモノマー単位を5〜10重量%と、(C)エポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸およびエポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸エステルよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を30〜35重量%と、を含有する(ただし、モノマー単位(A)、モノマー単位(B)およびモノマー単位(C)の総量を100重量%とする。)ことを特徴とするエチレン系樹脂組成物、
<2><1>に記載のエチレン系樹脂組成物を含有する層と、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂を含有する層とを有することを特徴とする積層成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軟質性、および、層間接着性に優れるエチレン系樹脂組成物、並びに、該エチレン系樹脂組成物を含む層を有する積層成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系共重合体(I)を99.9〜50重量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を0.1〜50重量%とを含有するエチレン系樹脂組成物であって(ただし、前記共重合体(I)および前記共重合体(II)の総量を100重量%とする。)、
前記エチレン系共重合体(I)が、
(A)エチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を60〜65重量%と、
(B)エポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルに由来するモノマー単位を5〜10重量%と、
(C)エポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸およびエポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸エステルよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を30〜35重量%とを含有することを特徴とする。(上記モノマー単位(A)〜(C)の総量を100重量%とする。)なお、エチレン系共重合体(I)を「共重合体(I)」または「成分(I)」とも言い、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を「共重合体(II)」または「成分(II)」とも言う。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
<エチレン系共重合体(I)>
<モノマー単位(A)>
エチレンおよびα−オレフィンは、H2C=CH−R1の構造を有し、前記R1は水素原子または芳香族基を有しない炭化水素基であり、該炭化水素基は炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましい。
具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンおよびビニルシクロヘキサン等が例示でき、中でもエチレン、プロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0014】
モノマー単位(A)の比率は、エチレン系共重合体(I)に含まれるモノマー単位(A)〜(C)の総量に対して60〜65重量%である。2種以上のモノマーを用いる場合にはそれらのモノマーに由来するモノマー単位の合計をモノマー単位(A)の比率とする。
モノマー単位(A)の比率が60重量%未満であると、軟質性および成形性が低下する。モノマー単位(A)の比率が65重量%を超えると、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および、ポリアミド系樹脂等との接着性が低下する。
【0015】
<モノマー単位(B)>
エポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、および、イタコン酸グリシジル等が例示でき、中でも、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが反応性の点で好ましく、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
【0016】
モノマー単位(B)の比率は、エチレン系共重合体(I)に含まれるモノマー単位(A)〜(C)の総量に対して5〜10重量%である。2種以上のモノマーを用いる場合にはそれらのモノマーに由来するモノマー単位の合計をモノマー単位(B)の比率とする。モノマー単位(B)の比率が5重量%未満であるとポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等との接着性が低下する。またモノマー単位(B)の比率が10重量%を超えると軟質性が低下する。
【0017】
<モノマー単位(C)>
エポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸およびα、β−不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸(「アクリル酸」または「メタクリル酸」を「(メタ)アクリル酸」と表記する。以下同じ。)、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が例示でき、中でも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0018】
モノマー単位(C)の比率は、エチレン系共重合体(I)に含まれるモノマー単位(A)〜(C)の総量に対して30〜35重量%である。2種以上のモノマーを用いる場合にはそれらのモノマーに由来するモノマー単位の合計をモノマー単位(C)の比率とする。
【0019】
極性基を有するモノマー単位(B)およびモノマー単位(C)の総量は、エチレン系共重合体(I)に含まれるモノマー単位(A)〜(C)の総量に対して35〜45重量%であり、35〜40重量%であることが好ましい。
モノマー単位(B)および(C)の総量が35重量%未満であると、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリアミド系樹脂等の極性基を有する樹脂に対する熱接着性に劣る。また45重量%を超えると軟質性に劣る。
【0020】
エチレン系共重合体(I)は、モノマー単位(A)〜(C)を有するエチレン系共重合体であればその構造は限定されるものではないが、ランダム共重合体またはブロック共重合であることが好ましく、ランダム共重合体であることがより好ましい。
【0021】
エチレン系共重合体(I)は種々の公知の重合方法で製造することができる。具体的な製造方法を例示すると、モノマー単位(A)〜(C)を構成するモノマーをラジカル重合開始剤の存在下、500〜4,000気圧の圧力下、100〜300℃の温度で、適当な溶媒、連鎖移動剤、界面活性剤の存在下または不存在下に共重合させる方法が挙げられる。
【0022】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤の一分半減期温度が通常80℃以上であるものが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース化合物、アクリル酸系化合物、無機塩およびアルキレンオキサイド等が挙げられる。
【0023】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(II)>
本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分II)を含有する。
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)は、エチレンに由来するモノマー単位および炭素数が3以上のα−オレフィンに由来するモノマー単位よりなる。
α−オレフィンは、H2C=CH−R2の構造を有し、前記R2は芳香族基を有しない炭化水素基であり、該炭化水素基は炭素数1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましい。
α−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび1−オクタデセン等が例示でき、中でも炭素数が3以上12以下のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンのモノマーは単独または2種以上で用いることができる。
【0024】
エチレンに由来するモノマー単位の比率は、エチレン−α−共重合体(II)に含まれる全モノマー単位に対して50〜90重量%が好ましく、60〜85重量%がより好ましく、70〜80重量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であるとエチレン系共重合体(I)との相容性に優れる。
【0025】
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)としては、ランダム共重合体、交互共重合体およびブロック共重合体が例示でき、中でもランダム共重合体であることが好ましい。
具体的にはエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体、エチレン−デセンランダム共重合体、エチレン−4−メチルペンテンランダム共重合体等が例示でき、中でもエチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体が好ましい。
【0026】
上記のエチレン系共重合体(I)は、極性基を有するモノマー単位(B)および(C)を有するため、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)と比較してSP値(溶解度パラメータ)が高い。このエチレン系共重合体(I)とエチレン−α−オレフィン共重合体(II)とを混合することにより、本発明のエチレン系樹脂組成物のSP値が高くなり、ポリカーボネート系樹脂やAS系樹脂等の極性値の高い熱可塑性樹脂に対する接着性が向上し、熱接着が容易となる。
また、エチレン系共重合体(I)のモノマー単位(A)の一成分がエチレンモノマーに由来する場合は、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)との均一分散が可能になるため好ましい。また、モノマー単位(A)の一成分がα−オレフィンに由来する場合は、該α−オレフィンと、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)に含まれるα−オレフィンとが同一である場合にもより効率良く均一分散が可能となるため好ましい。
【0027】
本発明のエチレン系樹脂組成物は、前記エチレン系共重合体(I)を99.9〜50重量%と、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を0.1〜50重量%とを含有し、より好ましくは前記エチレン系共重合体(I)90〜55重量%と、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(II)10〜45重量%とを含有し、更に好ましくは前記エチレン系共重合体(I)80〜60重量%と、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(II)20〜40重量%とを含有する。ただし、前記共重合体(I)および前記共重合体(II)の総量を100重量%とする。
前記エチレン系共重合体(I)の量が50重量%未満であると、エチレン系共重合体に含まれる極性基が少ないため、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリアミド系樹脂等の極性基を有する樹脂に対する接着性が低下する。
【0028】
<無機充填剤>
本発明において、上記成分の他に、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。この無機充填剤は、増量剤としてのコスト低下だけではなく、成形品の外観(艶)の改良にも効果がある。ここで添加される無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、天然ケイ酸、合成ケイ酸、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。本発明においては、これらの無機充填剤の量はとくに規定するものではなく、目的(樹脂に対する熱融着力、機械的強度等)により任意に添加することができるが、通常、エチレン系樹脂組成物に対して0〜50重量%であることが好ましい。
【0029】
<軟化剤>
本発明では、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を必要に応じて添加することができる。ここで非芳香族系ゴム用軟化剤とは、一般にゴムの軟化増量、加工性向上に用いられるプロセスオイル、またはエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素数の50%以上を占めるパラフィン系、ナフテン環炭素数が全炭素数の30〜45%のナフテン系のものが好ましい。軟化剤の配合量は、本発明においてとくに規定するものではなく、目的(樹脂に対する熱融着力、硬さ)に応じて任意に添加することができるが、通常、エチレン系樹脂組成物に対して0〜70重量%である。
【0030】
<その他の添加剤>
本発明のエチレン系樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤、ガラス繊維、カーボン繊維、ナイロン繊維、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、着色剤等を添加することができる。
【0031】
<エチレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のエチレン系樹脂組成物の製造方法は、通常の樹脂組成物の製造あるいはゴム組成物の製造に際して用いられる方法が採用でき、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用いてエチレン系共重合体(I)、エチレン−α−オレフィン共重合体(II)および添加剤等を均一に複合化することにより製造できる。
加工機器の設定温度は120℃〜300℃の中から任意に選ぶことができ、ポリカーボネート系樹脂等に対して熱融着するという本発明のエチレン系樹脂組成物の効果が発現するならば、その製造方法になんら制限はない。
【0032】
<流動性>
本発明のエチレン系樹脂組成物の流動性は目的に応じて定めれば良く、温度190℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、1〜100g/10分であることが好ましく、3〜50g/10分であることがより好ましく、5〜15g/10分であることが更に好ましい。上記の数値の範囲内であると溶融時の流動性、成形性に優れる。
【0033】
<軟質性>
エチレン系樹脂組成物の軟質性は硬度(ショアーAスケール)を測定することにより評価することができる。硬度(ショアーAスケール)は、JIS−K7215に準拠して測定することができる。
ショアーA硬度は値が小さいものほど柔らかく軟質性、柔軟性に富むことを示す。本発明のエチレン系樹脂組成物のショアーA硬度は50〜75であることが好ましく、60〜70であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると成形品表面に適度な軟質性を与えることができる。
【0034】
<積層成形体>
本発明の積層成形体は、本発明のエチレン系樹脂組成物を含有する層(以下、層Iとも言う。)と、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂を含有する層(以下、層IIとも言う。)とを有することを特徴とする。
層Iに含まれるエチレン系樹脂組成物は極性基を有するモノマー単位(B)および(C)を含有する。従って本発明のエチレン系樹脂組成物(I)は、ポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂およびポリアミド系樹脂のように極性基を有する熱可塑性樹脂を含有する層IIに対する熱接着性に優れ、特にポリカーボネート系樹脂、AS系樹脂に対する接着性に優れる。
以下、本発明の積層成形体について詳細に説明する。
【0035】
<ポリカーボネート系樹脂>
本発明において、ポリカーボネート系樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させることによって製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させることによって製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応して製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂、または、芳香族ジヒドロキシ化合物と少量のポリヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルでエステル交換反応して製造される芳香族ポリカーボネート系樹脂が例示できる。
また、ポリカーボネート系樹脂は、分岐している芳香族ポリカーボネート系樹脂であっても良く、分岐していない芳香族ポリカーボネート系樹脂であっても良い。分岐している芳香族ポリカーボネート系樹脂の製造においては、分岐剤としての三官能化合物や分子量調節剤を用いることができる。
【0036】
ポリカーボネート系樹脂に用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−イソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が例示でき、中でもビスフェノールAが好ましい。
【0037】
分岐している芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物に、ポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(慣用名:イサチン(ビスフェノールA))、5−クロロイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロモイサチン等を前記の芳香族ジヒドロキシ化合物の0.1〜2モル%加え、製造される。
【0038】
ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプチン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン、3,2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が例示される。
【0039】
ポリカーボネート系樹脂の分子量を調節するために用いられる分子量調節剤としては、一価芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられ、例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−ブロモフェノール、p−第3級−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0040】
好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物を主原料として製造される芳香族ポリカーボネート樹脂、少なくとも2種の芳香族ジヒドロキシ化合物を併用して製造される芳香族ポリカーボネート樹脂、3価のフェノール系化合物を少量併用して製造される分岐しているポリカーボネート樹脂であり、より好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物を主原料として製造される芳香族ポリカーボネート樹脂であり、更に好ましくはビスフェノールAを主原料として製造される芳香族ポリカーボネート樹脂である。また、芳香族ポリカーボネート樹脂を単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、例えば、特開昭63−30524号公報、特開昭56−55328号公報、特公昭55−414号公報、特公昭60−25049号公報、特公平3−49930号公報等に記載されている芳香族ポリカーボネート樹脂が例示できる。
【0041】
カーボネート系樹脂の流動性は、目的に応じて定めれば良く、一般に温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、通常0.01〜400g/10分であり、好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0042】
<AS系樹脂>
アクリロニトリル−スチレン系樹脂(AS系樹脂)は、アクリロニトリルから誘導されるモノマー単位とスチレンから誘導されるモノマー単位とがランダムに共重合したものである。アクリロニトリルから誘導されるモノマー単位の含有量は、通常2〜50重量%(すなわち、スチレンから誘導されるモノマー単位の含有量は、通常98〜50重量%)であり、好ましくは20〜30重量%(すなわち、スチレンから誘導されるモノマー単位の含有量は、好ましくは80〜70重量%)である。ただし、AS系樹脂に含有されるモノマー単位の合計を100重量%とする。
【0043】
また、AS系樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)やアクリロニトリル−EPゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)等が挙げられる。ABS樹脂としては、例えば、AS系樹脂にオレフィン系ゴム(例えば、ポリブタジエンゴム)を40重量%以下程度にグラフト重合した樹脂が挙げられる。また、AES樹脂としては、例えば、AS系樹脂にエチレン−プロピレン共重合体ゴム(例えば、EPゴム)を40重量%以下程度グラフト重合した樹脂が挙げられる。
【0044】
AS系樹脂の流動性は、目的に応じて定めれば良く、一般に温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、通常0.01〜400g/10分であり、好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0045】
AS系樹脂の製造方法としては、例えば、溶融反応法、溶液法、エマルジョン法およびオートクレーブ法によって製造する方法が挙げられる。
【0046】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンや環状オレフィン等のオレフィン類の単独重合体または共重合体が例示できる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、特開平2−115248号公報に記載の環状オレフィンが挙げられる。
【0047】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、上記のオレフィン類と15重量%未満の他の不飽和単量体とを共重合した共重合体も例示できる。そして、上記のオレフィン類の単独重合体、上記のオレフィン類の共重合体、または、上記のオレフィン類と少量の他の不飽和単量体とを共重合した共重合体を酸化やスルホン化して得られる変性物も例示できる。
【0048】
上記の他の不飽和単量体としては、例えば、不飽和有機酸またはその誘導体、ビニルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン、非共役ジエン等が挙げられる。
不飽和有機酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、不飽和有機酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等が挙げられ、ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン等が挙げられ、ビニルシランとしては、ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0049】
ポリオレフィン樹脂として、好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンよりなる群から選ばれた1種のオレフィンの単独重合体が例示できる。また、好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンおよび4−メチル−1−ペンテンから選ばれた少なくとも一種のオレフィンを、50重量%以上含有する共重合体が例示でき、より好ましくはプロピレン系重合体であり、さらに好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、または、これらの混合物が例示できる。
【0050】
ポリオレフィン樹脂の流動性は、温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表わした場合、0.01〜400g/10分であり、好ましくは0.1〜60g/10分である。
【0051】
ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、公知の重合によって製造する方法や変性によって製造する方法が挙げられる。例えば、米国特許第4900706号公報や米国特許第4820775号公報等に記載の方法が挙げられる。また、市販品を、適宜選んで使用しても良い。
【0052】
<ポリアミド系樹脂>
本発明で用いられるポリアミド系樹脂とは、ラクタムまたはアミノカルボン酸を縮重合して製造されるポリアミド樹脂、ラクタムを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂、炭素数4〜12個を含む飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂から選ばれた少なくとも一種のポリアミド樹脂である。
【0053】
炭素数4〜12個を含む飽和脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等が例示でき、炭素原子数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等が例示できる。
【0054】
炭素原子数4〜12個を含む飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素原子数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の製造において、所望に応じて、脂肪族ジアミンを過剰に用いることによって、ポリアミド樹脂に含有されるカルボキシル末端基よりアミン末端基が過剰になるように調整することができ、また、過剰の二塩基性酸を用いることによって、ポリアミド樹脂に含有されるアミン末端基よりカルボキシル基末端基が過剰になるよう調整することもできる。
【0055】
また、ポリアミド系樹脂としては、飽和脂肪族ジカルボン酸の誘導体(例えば、エステルや酸塩化物等)と、脂肪族ジアミンの誘導体(例えば、アミン塩等)とから製造されるポリアミド樹脂も挙げられる。
【0056】
炭素原子数4〜12個を含む飽和脂肪族ジカルボン酸と、等モル量の炭素原子数2〜12個を含む脂肪族ジアミンとを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバサミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ナイロン612)、ポリ−ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンドデカノアミド、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)等が挙げられる。これらのナイロンを単独で用いても良く、少なくとも2種を、任意の割合で混合して用いても良い。
【0057】
ラクタムを縮重合させることによって製造されるポリアミド樹脂の例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−co−カプロラクタム)(ナイロン6/66)等が挙げられる。これらのナイロンを単独で用いても良く、少なくとも2種を、任意の割合で混合して用いても良い。
【0058】
ポリアミド系樹脂として、好ましくは、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12であり、より好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン6とナイロン66とを任意の比率で混合した混合物である。
また、ポリアミド系樹脂として、好ましくは、末端官能基としてアミン末端を多く含有するポリアミド樹脂、末端官能基としてカルボキシル末端を多く含有するポリアミド樹脂、アミン末端とカルボキシル末端を多く含有するポリアミド樹脂、または、これらのポリアミド樹脂を任意の比率で混合した混合物が挙げられる。
【0059】
また、ポリアミド系樹脂としては、芳香族成分を含有する芳香族ポリアミド樹脂も例示でき、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)等が挙げられる。上記の芳香族成分としては、芳香族アミノ酸や芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、例えば、パラアミノメチル安息香酸、パラアミノエチル安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
また、上記の芳香族ポリアミド樹脂は、上記の芳香族成分を主要な構成成分として、溶融重合によって製造されるポリアミド樹脂である。
【0060】
上記の芳香族ポリアミド樹脂には、必要に応じて、その他の構成成分としてジアミンを含有させても良く、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、ジアミンの代わりにイソシアネート類を用いても良く、例えば、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0061】
また、ポリアミド系樹脂には、必要に応じて、共重合成分を含有させても良く、共重合成分としては、ラクタムから誘導される化合物(例えば、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等)、炭素数4〜12個のω−アミノ酸から誘導される化合物(例えば、11−アミノウンデカン酸や12−アミノドデカン酸等)、炭素数4〜12個の脂肪族ジカルボン酸から誘導される化合物、炭素数2〜12個の脂肪族ジアミンから誘導される化合物(例えば、前記の各種ジアミンと等モルのアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等から得られる塩等)が挙げられる。
【0062】
また、ポリアミド系樹脂は結晶性のポリアミド樹脂であっても良く、非晶性のポリアミド樹脂であっても良く、前記の結晶性のポリアミド樹脂と非晶性のポリアミド樹脂を任意の割合で混合した混合物であっても良い。
【0063】
本発明において、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、上記の樹脂組成物または樹脂を混練する時、または本発明の積層成形体を成形する時に、慣用の添加剤(例えば、顔料、染料や補強剤(炭素繊維等))、充填剤、耐熱剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、帯電防止剤、安定剤(例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤や重合禁止剤)等を添加しても良い。
【0064】
<積層成形体の構成>
本発明において、層(I)の厚みは、0.1〜3.0mmが好ましく、0.1〜2.0mmがより好ましく、0.1〜1.0mmであることが更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、成形品表面に適度な軟質性、柔軟性を付与できるため好ましい。
積層成形体全体(層I+層II)の厚みは、0.2〜5.0mmが好ましく、0.2〜3.0mmがより好ましく、0.3〜1.5mmであることが更に好ましい。
【0065】
本発明の積層成形体(層I+層II)の全体の厚みに対する層Iの厚みの比率(層Iの厚み/積層成形体の厚み)は、0.3〜0.7が好ましく、0.4〜0.6がより好ましい。積層成形体の強度を高めるという観点や、積層成形体の表面の軟質性や柔軟性を高めるという観点から上記の数値の範囲内が好ましい。
【0066】
また、本発明の積層成形体は、使用目的に応じて、その他の層を有する積層成形体であっても良く、積層成形体の表面の軟質性を高めるという観点から、層Iを最外層に有する積層成形体であることが好ましい。
【0067】
本発明の積層成形体の製造方法としては、一般に使用される熱可塑性樹脂成形機を用いて成形する方法が例示できる。具体的には多層押出成形、多層ブロー成形、多層プレス成形、多色射出成形、インサート射出成形等の貼合成形法によって、層Iと層IIとを積層する方法が例示でき、好ましくは多層押出成形やインサート射出成形である。
【0068】
<積層成形体の用途>
本発明の積層成形体の用途としては、例えば、はさみ、ドライバー、歯ブラシ、スキーストック、ボールペン、シャープペンシル等の握り部のグリップ部分や、手すり、パイプ、柱等の建築・土木用途、アニマルガード、ルーフレール、スポイラー等の自動車用途等が挙げられ、グリップ性、軟質性および基材との接着性が求められる用途に用いられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
以下に実施例および比較例で使用した樹脂(略号の意味)を示した。
<層Iに含まれる樹脂>
(1)エチレン系共重合体(I)
EC1 エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸グリシジル共重合体
(A)エチレン 含有量64重量%
(B)メタクリル酸グリシジル 含有量 6重量%
(C)メタクリル酸 含有量30重量%
EC2 エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸グリシジル共重合体
(A)エチレン 含有量67重量%
(B)メタクリル酸グリシジル 含有量 3重量%
(C)メタクリル酸 含有量30重量%
EC3 エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体
(A)エチレン 含有量88重量%
(B)メタクリル酸グリシジル 含有量12重量%
【0070】
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(II)
OE
エチレン 含有量75重量%
α−ヘキセン 含有量25重量%
【0071】
<層IIに含まれる樹脂>
層IIに用いた熱可塑性樹脂を以下に示す。
AS1:AS系樹脂、商標ライタック−A 100PCF 日本エイアンドエル(株)製
【0072】
(実施例1)
表1に示した配合割合(重量部)の各成分を、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数80rpmに設定した連続二軸混練機((株)東洋精機製作所製2D25S)のホッパーから投入した後、これらの成分を溶融混練してペレット状の層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を得た。得られたペレットを40℃のオーブンで2時間乾燥した。得られたペレットを用いて、流動性、硬度、接着性を評価した。結果を表1に示した。
【0073】
<層Iに用いられる熱可塑性樹脂組成物の流動性>
ASTM−D1238に準拠し、190℃、21.2N荷重でのメルトフローレート(MFR)を測定した。MFRの値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0074】
<硬度(ショアーAスケール)>
JIS−K7215に準拠して測定した。すなわち、表1に示した配合で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを熱プレス成形(200℃)し、厚み3mm、縦150mm×横150mmのシートを作製した。得られたプレスシートを縦50mm×横50mmに切削する。切削したシートを2枚重ねて厚みを6mmとし、上島製作所製スプリング式硬度計を用いて測定を行った。値が小さいものほど柔らかく柔軟性に富むことを示す。
【0075】
<接着性>
表1に示した配合で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレット、AS系樹脂を熱プレス成形し、縦150mm×横150mmのシートを作製した。
表1に示した層Iと層IIの組み合わせで、縦150mm×横150mmの金型枠に入れて、200℃に加熱したプレス機で1.5MPaの圧力をかけ、5分間加熱圧着し、積層体を作製し、得られた積層体を、20mm幅に切断し試料とした。
試料の180度剥離試験を引張り速度200mm/minで行い、チャートより応力を求め、試料の幅で割った値を接着強度とした。接着強度の値が大きいほど接着性が良好であることを示す。
【0076】
(実施例2、比較例1〜3)
実施例1と同様にして、表1に示した配合割合(重量部)のペレット状の層Iとして用いられる熱可塑性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様にして流動性、硬度、接着性を評価した。結果を表1に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
本発明のエチレン系樹脂組成物は、軟質性、および、層間接着性に優れる。
【0079】
また、実施例1において、AS系樹脂の代わりにポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリアミド系樹脂を使用して同様に積層成形体を作製すれば、同様に良好な軟質性および層間接着性を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体(I)を99.9〜50重量%と、
エチレン−α−オレフィン共重合体(II)を0.1〜50重量%と、を含有するエチレン系樹脂組成物であって(ただし、前記エチレン系共重合体(I)および前記エチレン−α−オレフィン共重合体(II)の総量を100重量%とする。)、
前記エチレン系共重合体(I)が、
(A)エチレンおよびα−オレフィンよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を60〜65重量%と、
(B)エポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルに由来するモノマー単位を5〜10重量%と、
(C)エポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸およびエポキシ基を有しないα,β−不飽和カルボン酸エステルよりなる群から選ばれたモノマーに由来するモノマー単位を30〜35重量%と、を含有する(ただし、モノマー単位(A)、モノマー単位(B)およびモノマー単位(C)の総量を100重量%とする。)ことを特徴とする
エチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物を含有する層と、
ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂を含有する層とを有することを特徴とする
積層成形体。

【公開番号】特開2008−280394(P2008−280394A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124246(P2007−124246)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】