説明

エチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法

【課題】 種々の分子量、密度、分子量分布、組成分布を有するエチレン/α−オレフィン共重合体を任意に生産性よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(a)
r = Cpoly / Crea ≧ 0.08 (a)を満足するメタロセン触媒(A)と、下記一般式(b) r = Cpoly / Crea < 0.08 (b)を満足するメタロセン触媒(B)とを、少なくとも1種類ずつ以上用い、共重合体の融点以上の温度、圧力40〜400MPaの重合条件下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の高圧条件下、メタロセン触媒を組合せて用いたエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法に関するものであり、分子量・分子量分布・組成分布を制御して幅広い範囲の共重合体を任意に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンの重合によりポリオレフィンを製造する方法として、遷移金属化合物および有機金属化合物の組み合わせからなる触媒系を用いることは、すでに知られている。また、カミンスキーらは、メタロセンとメチルアルミノキサンを用いた触媒が、プロピレンを含むオレフィン重合体を製造する際に、高い活性を示すことを開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ここで開示されている触媒系は重合活性には優れるが、触媒系が反応系に可溶性であるために、溶液重合系を採用することが多く、製造プロセスが限定されるばかりか、工業的に有用な物性を示すポリマーを製造するためには、比較的高価なメチルアルミノキサンを大量に用いる必要がある。このため、これら触媒系を用いた場合、コスト的な問題やポリマー中に大量のアルミニウムが残存する問題等があった。
【0004】
また、例えばジルコノセンのような遷移金属化合物とメチルアルミノキサンからなるメタロセン触媒の存在下にオレフィンを重合させる方法では、オレフィンを高活性で重合させることができるとともに分子量分布、組成分布が狭いオレフィン重合体を得ることができる。しかし、様々な物性を有するオレフィン重合体を製造することが要求される近年、低密度領域のオレフィン重合体を製造するには、上記触媒系では重合活性、共重合性が工業的に十分に満足のいくものではなかった。
【0005】
このような状況のもと、ケイ素架橋された置換インデニル−置換フルオレニル錯体を触媒とする触媒系は、エチレンとα−オレフィンの共重合に対して良好な共重合性を示すことが開示されているが、その重合活性については十分なものではなかった(例えば、特許文献2,3参照)。
【0006】
さらに、置換ジフェニルメチレン架橋された置換インデニル−置換フルオレニル錯体に関して、特定の置換基を導入することにより、優れた重合度、優れた共重合性を示すことを見出した。しかしながら、上記メタロセン化合物を用いた触媒により得られるポリマーは、従来通り狭い分子量分布を有するものであった(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
ここで、高温条件下でポリオレフィンを製造するにあたり、複数のメタロセン触媒を用いることで分子量分布を広げる報告はなされているが、公知の技術では高分子量の重合体を得るためには重合温度を低く設定する必要があった。そのため、生産性(1時間当たりの反応器の生産量)が著しく低いものであった(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
これらの問題を解決する目的で、特定の性能を有するメタロセン触媒を複数用いることで、高温の重合条件ながら高い効率で分子量分布の広いポリマーを単一の重合器で製造することが可能であること、さらに生産性よく製造できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−19309号公報
【特許文献2】特開平9−235313号公報
【特許文献3】特開平10−204113号公報
【特許文献4】特開2004−256627公報
【特許文献5】特開平8−59706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高温高圧重合条件下、多岐にわたるオレフィンの重合技術分野において従来見出されていない新しい組合せのメタロセン触媒群を用い、種々の分子量、密度、分子量分布、組成分布を有するエチレン/α−オレフィン共重合体を任意に生産性よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2種類以上のメタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合反応を行うエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法において、1種類のメタロセン触媒を用いて重合した際に下記一般式(a)
r = Cpoly / Crea ≧ 0.08 (a)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足するメタロセン触媒(A)と、1種類のメタロセン触媒を用いて重合した際に下記一般式(b)
r = Cpoly / Crea < 0.08 (b)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足するメタロセン触媒(B)とを、少なくとも1種類ずつ以上用い、得られる共重合体の融点以上の温度において重合圧力40〜400MPaの重合条件下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合反応を行うことを特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法、さらに、メタロセン触媒(A)および/またはメタロセン触媒(B)が下記一般式(c)
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3) (c)
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン/α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
を満足するメタロセン触媒を用いることを特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法に関する。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いるメタロセン触媒(A)は、単独の触媒として用いて重合した際に下記一般式(a)
r = Cpoly / Crea ≧ 0.08 (a)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足するものである。ここで、Cpolyは既知の方法、例えば、13C−NMR測定により求められ、Creaは共重合反応におけるモノマーの仕込比率であり、rは共重合反応時の温度で測定された Cpoly / Crea の値である。rが0.08以上であることで目的の密度の共重合体を製造する際のα−オレフィンの比率を下げることができ、共重合反応に使用されるα−オレフィンの回収工程への負荷の軽減、さらには共重合体中に残留するα−オレフィンを除去する工程の負荷を軽減することができる。さらに、その効果を期待する場合、好ましくは0.1以上である。
【0014】
メタロセン触媒(A)として用いる遷移金属化合物は、上記式(a)を満足すれば特に限定はないが、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(5−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(6−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(7−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(5−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(6−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(7−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(5−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(6−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(7−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジエチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(5−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(6−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(7−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。また、本発明で用いるメタロセン触媒(B)は、単独の触媒として用いて重合した際に下記一般式(b)
r = Cpoly / Crea < 0.08 (b)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足する遷移金属化合物であれば特に限定はないが、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−メチルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−エチルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3,4−ジエチルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−イソプロピルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3,4−ジイソプロピルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(4−t−ブチル−2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(4−t−ブチル−2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジエチルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(4−t−ブチル−2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等を例示することができる。
【0015】
本発明においては、rの異なる触媒を用いることで、組成分布に広がりを持たせることが可能となり、任意の組成分布を有する共重合体を製造することができる。例えば、クロス分別クロマトグラフまたは昇温分別法で2ピークの微分溶出曲線を示すようなα−オレフィンの組成分布が顕著に異なる共重合体を製造する場合、好ましくはrが0.03以上の差を有する触媒の組み合わせを例示することができる。組成分布を制御することで、共重合体のヒートシール性やベタツキ等の加工性や諸物性あるいは製品特性を好適に改良することができる。
【0016】
本発明で用いられるメタロセン触媒(A)および/または(B)が、下記一般式(c)
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3) (c)
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン/α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
を満足する遷移金属化合物であることが好ましい。特に好ましくは、下記一般式(c’)
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 32.5) (c’)
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン/α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
を満たすものが挙げられる。
【0017】
本発明におけるメタロセン触媒の構成成分の一つである活性化助触媒としては、特に限定はなく、公知のものはすべて使用することができる。具体的には、下記一般式(1)で表されるプロトン酸、一般式(2)で表されるイオン化イオン性化合物、一般式(3)で表されるルイス酸、一般式(4)で表されるルイス酸性化合物、アルミノオキサン、粘土鉱物、塩化マグネシウム化合物、スルホン酸塩、またはカルボン酸誘導体などを挙げることができる。
【0018】
[HR][E(Ar)] (1)
[GR][E(Ar)] (2)
[D][E(Ar)] (3)
E(Ar) (4)
(式中、Hはプロトンであり、Eはホウ素原子またはアルミニウム原子である。Rはエーテル類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、ホスフィン類等のルイス塩基、RはRで例示したルイス塩基または置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基である。Gはリチウム、鉄または銀原子であり、Dはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。Arは互いに同じでも異なっていてもよく、アリール基、アラルキル基、ハロゲン,炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基で置換されたアリール基もしくはアラルキル基、または炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基を有するシリル基で置換されたアリール基もしくはアラルキル基であり、好ましくはアリール基、ハロゲン,炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基で置換されたアリール基、または炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基を有するシリル基で置換されたアリール基である。pは0、1または2である。)
一般式(1)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
一般式(2)で表されるイオン化イオン性化合物として、具体的にはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のリチウム塩、またはそのエーテル錯体、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のフェロセニウム塩、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等の銀塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
一般式(3)で表されるルイス酸として、具体的にはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
一般式(4)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフェニルフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
一方、本発明のメタロセン触媒の構成成分である活性化助触媒がアルミノオキサンの場合、アルミノオキサンは、複数のアルミニウム原子や酸素原子からなるクラスター構造を含む化合物で表される。
【0023】
さらに、上述したアルミノオキサンは、トリアルキルアルミニウム等の単量体、2量体およびオリゴマーを含む場合があるが、問題なく使用することができる。このアルミノオキサンは、一般には有機アルミニウム化合物と水を有機溶媒中、または有機アルミニウム化合物と塩もしくは酸化物の水和物を有機溶媒中で反応させることにより得ることができ、公知の方法によって製造したものを用いることができる。
【0024】
本発明のメタロセン触媒の構成成分である活性化助触媒が塩化マグネシウムの場合、塩化マグネシウムは公知の方法によって調製され、各遷移金属化合物当たりの使用量に特に制限はない。また、ハロゲン化有機アルミニウムおよび有機マグネシウム等を用いて、重合あるいは触媒調製時に、系中で塩化マグネシウムを生成させて重合に用いることもできる。
【0025】
本発明のメタロセン触媒の構成成分である活性化助触媒が粘土鉱物である場合、天然の粘土鉱物および人工合成により得られるカチオン交換能を有する粘土鉱物の全てが使用可能であり、また、その層間にイオン性の物質あるいは化合物を導入することによって化学処理された粘土鉱物も使用可能である。粘土鉱物としては、天然に存在するカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト等のカオリン系鉱物;モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、テニオライト、ソーコナイト等のスメクタイト系鉱物;白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母系鉱物;バーミキュライト族;マーガライト、クリントナイト等の脆雲母系鉱物;ドンバサイト、クッケアイト、クリノクロア等の縁泥石系鉱物;セピオライト・パリゴルスカイトなどや人工合成された粘土鉱物を挙げることができ、好ましくはスメクタイト系鉱物あるいは雲母系鉱物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。化学処理に用いられる酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等のブレンステッド酸が例示され、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく用いられる。塩類処理において用いられる化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化アンモニウム等のイオン性ハロゲン化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩などの無機塩、および酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機酸塩などを挙げることができる。
【0026】
粘土鉱物の有機複合体生成に用いられる有機化合物としては、オニウム塩やトリチルクロリド、トロピリウムブロミド等の炭素カチオンを生成するような化合物、フェロセニウム塩等の金属錯体カチオンを生成する錯体化合物が例示される。無機複合体生成に用いられる無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化クロム等の水酸化物陽イオンを生成する金属水酸化物等を挙げることができる。
【0027】
本発明において用いられる粘土鉱物のうち特に好ましくは、粘土鉱物中に存在する交換性カチオンである金属イオンを特定の有機カチオン成分と交換した粘土鉱物−有機イオン複合体である変性粘土化合物である。この変性粘土化合物に導入される有機カチオンとして、脂肪族アンモニウムカチオン、芳香族アンモニウムカチオン、オキソニウムイオン等が挙げられる。脂肪族アンモニウムカチオンの例として、ブチルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジメチルブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘキシルメチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、ジメチルヘキシルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、オクチルメチルアンモニウム、ジオクチルアンモニウム、ジメチルオクチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オクタデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、オレイルアンモニウム、オレイルメチルアンモニウム、オレイルジメチルアンモニウム、ジオレイルアンモニウム、ジオレイルメチルアンモニウム、オクタデシルジメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族アンモニウムカチオンの例として、アニリニウム、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N−エチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、ベンジルアンモニウム、トルイジニウム、ジベンジルアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキソニウムイオンの例として、ジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明のメタロセン触媒の構成成分である活性化助触媒がスルホン酸塩である場合、例えば、トリフルオロメタンスルホナートリチウム、トリフルオロメタンスルホナートナトリウム、トリフルオロメタンスルホナートカリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホナート)カルシウム、ビス(トリフルオロメタンスルホナート)バリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)チタニウム、テトラキス(トリフルオロメタンスルホナート)チタニウム、テトラキス(トリフルオロメタンスルホナート)ジルコニウム、テトラキス(トリフルオロメタンスルホナート)ハフニウム、ペンタキス(トリフルオロメタンスルホナート)ニオブ、ペンタキス(トリフルオロメタンスルホナート)タンタル、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)鉄、トリフルオロメタンスルホナート銀、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)ホウ素、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)アルミニウム、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)ガリウム、テトラキス(トリフルオロメタンスルホナート)錫、ペンタフルオロベンゼンスルホナートリチウム、ペンタフルオロベンゼンスルホナートナトリウム、ペンタフルオロベンゼンスルホナートカリウム、ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)マグネシウム、ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)カルシウム、ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)バリウム、トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)チタニウム、テトラキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ジルコニウム、テトラキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ハフニウム、ペンタキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ニオブ、ペンタキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)タンタル、トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)鉄、ペンタフルオロベンゼンスルホナート銀、トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ホウ素、トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)アルミニウム、トリス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)錫、ビス(トリフルオロメタンスルホナート)マグネシウム、ペンタキス(トリフルオロメタンスルホナート)ニオブ、ビス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)マグネシウム、テトラキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)チタニウムおよびペンタキス(ペンタフルオロベンゼンスルホナート)ニオブ等を例示することができる。
【0029】
本発明のメタロセン触媒の構成成分である活性化助触媒がカルボン酸誘導体である場合、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ペンタフルオロ安息香酸、テトラフルオロトルイル酸、2,4−(トリフルオロメチル)安息香酸、ペンタフルオロフェニル酢酸などを例示することができる。
【0030】
さらに本発明のメタロセン触媒に用いられる有機金属化合物としては、少なくとも1つの炭化水素基を有する周期表第1、2、13族の金属原子、Sn原子またはZn原子を有するものであり、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(5)、(6)または(7)で表される化合物を挙げることができる。
【0031】
(RAl (5)
(式中、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン、炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、または炭化水素基で置換されたアミノ基もしくはアルコキシ基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)
このような化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド等を挙げることができる。
【0032】
(RMg (6)
(式中、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン、炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、または炭化水素基で置換されたアミノ基もしくはアルコキシ基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)
このような化合物の例として、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド等を挙げることができる。
【0033】
Li (7)
(式中、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭化水素基である。)
このような化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム等を挙げることができる。
【0034】
これらのうち特に好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0035】
メタロセン触媒調製の際の遷移金属化合物および活性化助触媒の量比は、活性化助触媒が一般式(1)、(2)、(3)、(4)で表される化合物、スルホン酸塩またはカルボン酸誘導体である場合、遷移金属化合物:活性化助触媒=10:1〜1:1000のモル比が好ましく用いられ、特に好ましくは3:1〜1:100の範囲が用いられる。また、さらに有機金属化合物を用いる際の遷移金属化合物と有機金属化合物の比は特に制限はないが、遷移金属化合物:有機金属化合物の金属原子当たりのモル比は100:1〜1:100000の範囲が好ましく用いられ、さらに好ましくは1:1〜1:10000の範囲が用いられる。有機金属化合物の使用量が10000倍モルを超えると脱灰の工程を考慮する必要がある。また、触媒安定性および触媒毒の除去の観点を考えあわせると、遷移金属化合物:有機金属化合物を1:1〜1:1000のモル比で使用することが特に好ましい。
【0036】
活性化助触媒がアルミノオキサンである場合、遷移金属化合物と活性化助触媒の金属原子当たりのモル比で100:1〜1:1000000が好ましく用いられ、特に好ましくは1:1〜1:100000の範囲が用いられる。また、遷移金属化合物と有機金属化合物の比は特に制限はないが、遷移金属化合物と有機金属化合物の金属原子当たりのモル比は100:1〜1:100000の範囲が好ましく用いられ、特に好ましくは1:1〜1:10000の範囲が用いられる。
【0037】
さらに、活性化助触媒が粘土鉱物である場合、遷移金属化合物に対する活性化助触媒の粘土鉱物の量は、遷移金属化合物が反応するのに十分な量の粘土鉱物であれば特に制限はないが、遷移金属化合物1モルに対する量比は0.01〜10000kgが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1000kgである。また、さらに有機金属化合物を用いる際の遷移金属化合物と有機金属化合物の比は特に制限はないが、遷移金属化合物と有機金属化合物の金属原子当たりのモル比で100:1〜1:100000の範囲が好ましく用いられ、さらに好ましくは1:1〜1:10000の範囲が用いられる。有機金属化合物の使用量が10000倍モルを超えると脱灰の工程を考慮する必要がある。また、触媒安定性および触媒毒の除去の観点を考えあわせると、有機金属化合物を1:1〜1:1000のモル比で使用することが特に好ましい。
【0038】
活性化助触媒が塩化マグネシウムである場合、遷移金属化合物に対する活性化助触媒の塩化マグネシウムの量は、遷移金属化合物が反応するのに十分な量の塩化マグネシウムであれば特に制限はないが、遷移金属化合物1モルに対する量比は0.01〜10000kgが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1000kgである。また、さらに有機金属化合物を用いる際の遷移金属化合物と有機金属化合物の比は特に制限はないが、金属原子当たりのモル比で100:1〜1:100000の範囲が好ましく用いられ、さらに好ましくは1:1〜1:10000の範囲が用いられる。有機金属化合物の使用量が10000倍モルを超えると脱灰の工程を考慮する必要がある。また、触媒安定性および触媒毒の除去の観点を考えあわせると、有機金属化合物を1:1〜1:1000のモル比で使用することが特に好ましい。
【0039】
なお、上記の各成分の比率において、各メタロセン触媒の使用量の比率は特に制限がなく、任意の量で用いることができる。
【0040】
本発明において、メタロセン触媒を調製する方法について特に制限はなく、各成分に対して不活性な溶媒またはモノマーを溶媒として用いて混合する方法が挙げられる。また、上述した触媒成分を反応させる順番についても特に制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も特に制限はない。
【0041】
また、本発明のメタロセン触媒を用いる際、オレフィン類を通常の方法で予備重合させてなるメタロセン触媒の存在下に、エチレン/α−オレフィン共重合体を製造することもできる。その際、高い触媒活性と粒子の移送を容易とし、安定な製造が実現される。
【0042】
本発明のメタロセン触媒または固体触媒成分を用いて予備重合を行う方法に関しては、メタロセン触媒または固体触媒成分とオレフィン類が重合しうる条件であれば特に限定されない。
【0043】
以下に、本発明において、上記記載の触媒系を用いて実質的にポリマーが溶融あるいは溶解した状態で、エチレン/α−オレフィン共重合体を安定的に生産する方法を示す。
【0044】
本発明に用いるエチレンとα−オレフィンは、共重合体の融点以上の重合温度下、重合圧力40〜400MPaの高圧状態で重合される。
【0045】
反応温度は共重合体の融点〜300℃が好ましく、共重合体の融点より30℃以上高い温度〜300℃が反応器や後処理工程の制約の点から特に好ましい。反応器部位で温度を変更できる場合は、反応器内で温度変化を持たせる方法が分子量分布の広いポリマーを製造する際に好ましく用いられる。温度変化の度合いは特に制限されないが、30℃以上反応器下部(ポリマー排出側)を高く保つことが生産性を向上させ、分子量分布を広げる際に有利である。
【0046】
反応圧力は40〜400MPaの範囲が好ましく、特に好ましくは実用性を考慮すると40〜200MPaの範囲である。
【0047】
本触媒を反応器に供給する方法に特に制限はないが、1ヶ所より供給されても、複数ヶ所から供給されてもかまわない。好ましくは2ヶ所以上の複数ヶ所から供給することにより、分子量分布等をより容易に制御することができる。
【0048】
本発明の重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン等のα−オレフィン類;ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン類;シクロブテン、シクロペンテン等の環状オレフィン類等が挙げられ、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテンのように2種の成分、あるいはエチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0049】
また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により分離回収され、乾燥して得ることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、従来見出されていない新しい組合せのメタロセン触媒群を用い、高温高圧重合条件下、エチレンとα−オレフィンを共重合することにより、種々の分子量、密度、分子量分布、組成分布を有するエチレン/α−オレフィン共重合体を任意に生産性よく製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例で用いた遷移金属化合物、活性化助触媒および触媒の調製等に関しては、公知文献に記載の方法を用いて実施した。
【0053】
反応は、すべて乾燥、精製した窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行い、反応に用いた溶媒は、すべてPergamon社発行の「Purification of Laboratory Chemicals 2nd Edition」等に記載の公知の方法により、精製、乾燥または脱酸素を行った。
【0054】
遷移金属化合物の同定および共重合体中の分岐成分の測定は、13C−NMR(日本電子社製 GPX−400型 NMR測定装置)を用いて行った。
【0055】
MFRは、JIS K6922−1(1998)に従って測定し、2.16kg荷重で行った。
【0056】
融点は、DSC(SEIKO社製 DSC200)を用いて、200℃で5分保持したサンプルを−20℃まで冷却させた後、10℃/分で昇温させた時の結晶融解ピークを測定することにより求めた。
【0057】
密度は、JIS K6922−1(1998)に従って測定を行った。
【0058】
分子量(Mw)ならびに分子量分布(Mw/Mn)は、検出器;HLC−8121GPC/HT、カラム;TSKgel GMHhr−H(20)HTを3本、カラム温度;140℃、溶媒;1,2,4−トリクロロベンゼン、サンプル濃度;1.0mg/1mL、注入量;0.3mLの条件で測定を行い、測定値は直鎖ポリエチレン換算値として求めた。
【0059】
クロス分別クロマトグラフは、装置:CFC T−101(三菱化学社製)、溶離液:オルトジクロロベンゼン、流速:1.0mL/分、試料濃度:1.5−5.0mg/mL、注入量:0.5mL、コーティング温度:140℃(30分ホールド)から0℃、昇温プログラム:0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、120、140℃)、GPCカラム:TSKgel GMHHR−H(20)、TSKgel GMHHR−H(S)2本、測定温度:140℃の条件で測定を行った。
【0060】
参考例1
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、反応器上流部よりメタロセン触媒(A)を連続的に供給し、反応圧力を90MPa、反応器の内温を217℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、本メタロセン触媒(A)は、一般式(a)を満足する触媒系であることが判った。重合結果を表1に示す。
【0061】
なお、塩酸ジメチルアニリニウム69gを300mLの水に加え、これをモンモリロナイト300gが入った水3Lに加え、この上澄み液を除去した後、水、エタノールで洗浄し、その後減圧乾燥し、粉砕することで得られた変性モンモリロナイトを活性化助触媒として用い、遷移金属化合物としてジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用い、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用いて、遷移金属化合物:1μモルZr原子当たり活性化助触媒:450μモルAl原子、有機金属化合物:450μモルAl原子を加え、遷移金属化合物の濃度が250μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものをメタロセン触媒(A)として用いた。
【0062】
参考例2
メタロセン触媒(A)として、遷移金属化合物としてジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−メチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、活性化助触媒として参考例1で得られた変性モンモリロナイト、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用い、遷移金属化合物:1μモルZr原子当たり有機金属化合物:450μモルAl原子を反応させた後に、活性化助触媒:30mgを加え、遷移金属化合物の濃度が250μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものを用いた。
【0063】
参考例3
メタロセン触媒(A)として、遷移金属化合物をジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドとした以外、参考例1と同様の方法で調製したものを用いた。
【0064】
参考例4
メタロセン触媒(B)として、遷移金属化合物をジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドとした以外、参考例1と同様の方法で調製したものを用いた。
【0065】
参考例5
メタロセン触媒(B)として、遷移金属化合物としてジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、活性化助触媒としてN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用い、遷移金属化合物:1μモルZr原子当たり活性化助触媒:1.1μモル、有機金属化合物:240μモルAl原子、遷移金属化合物の濃度が560μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものを用いた。
【0066】
参考例6
メタロセン触媒(B)として、遷移金属化合物としてエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、活性化助触媒としてN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用い、遷移金属化合物:1μモルZr原子当たり活性化助触媒:1.2μモル、有機金属化合物:250μモルAl原子、遷移金属化合物の濃度が650μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものを用いた。
【0067】
実施例1
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/5(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、反応器の内温を170〜250℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ヘキセン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。生産速度22.5kg/時と高い生産効率で分子量分布(Mw/Mn)が3.3の広い分子量分布を有するエチレン/1−ヘキセン共重合体を得た。
【0068】
なお、メタロセン触媒(A)としてME−1、メタロセン触媒(B)としてME−5を用いた。
【0069】
実施例2
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/5(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、反応器の内温を170〜250℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ヘキセン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。生産速度21.2kg/時と高い生産効率で生産でき、クロス分別クロマトグラフで34℃、68℃に溶出ピークが観測され、広い組成分布を有し、GPCにより分子量分布(Mw/Mn)が3.1の広い分子量分布を有するエチレン/1−ヘキセン共重合体を得た。
【0070】
なお、メタロセン触媒(A)としてME−2、メタロセン触媒(B)としてME−5を用いた。
【0071】
実施例3
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、反応器へ予め混合したメタロセン触媒(A)とメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/2(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、反応器の平均内温を235℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ヘキセン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。生産速度26.4kg/時と高い生産効率で生産でき、クロス分別クロマトグラフで74℃、86℃に溶出ピークが観測され、広い組成分布を有し、分子量分布(Mw/Mn)が3.3の広い分子量分布を有するエチレン/1−ヘキセン共重合体を得た。
【0072】
なお、メタロセン触媒(A)としてME−3、メタロセン触媒(B)としてME−4を用いた。
【0073】
実施例4
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、別の容器で予め混合しておいたメタロセン触媒(A)とメタロセン触媒(B)(メタロセン触媒(A)/(B)比=1/2(Zr原子モル比))を連続的に反応器に供給し、反応圧力を90MPa、反応器の平均内温を220℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ブテン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。生産速度19.7kg/時と高い生産効率で生産でき、分子量分布(Mw/Mn)が3.3の広い分子量分布を有するエチレン/1−ブテン共重合体を得た。
【0074】
なお、メタロセン触媒(A)としてME−3、メタロセン触媒(B)としてME−4を用いた。
【0075】
実施例5,6
表1に示すように、重合温度と1−ヘキセンのモル分率と重合条件を変えた以外、実施例3と同様に重合を行った。いずれも高い生産速度でポリマーを得ることができた。また、重合温度を反応器の上流部と下流部で80℃以上変化させることにより、分子量分布(Mw/Mn)が3.8の広い分子量分布を有するポリマーを得た。
【0076】
比較例1
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、反応器上流部よりメタロセン触媒(B−1)を、反応器下流部よりメタロセン触媒(B−2)をメタロセン触媒(B−1)/(B−2)比=1/2(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、反応器上流部の温度を140℃、反応器下流部の温度を160℃とし、平均の反応器内温度を150℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、エチレン/1−ヘキセン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。分子量分布(Mw/Mn)が2.3の狭い分子量分布を有するエチレン/1−ヘキセン共重合体しか得ることができず、実施例3と比較すると生産速度は13kg/時と1/2以下であり、生産効率は低いものであった。また、同様の密度を得るために必要な1−ヘキセンの供給量は、実施例3に対して2倍近くが必要であった。
【0077】
なお、メタロセン触媒(B−1)としてME−5、メタロセン触媒(B−2)としてME−6を用いた。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上のメタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合反応を行うエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法において、1種類のメタロセン触媒を用いて重合した際に下記一般式(a)
r = Cpoly / Crea ≧ 0.08 (a)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足するメタロセン触媒(A)と、1種類のメタロセン触媒を用いて重合した際に下記一般式(b)
r = Cpoly / Crea < 0.08 (b)
[式中、Cpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示し、Creaは反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。rはその商(係数)である。]
を満足するメタロセン触媒(B)とを、少なくとも1種類ずつ以上用い、得られる共重合体の融点以上の温度において重合圧力40〜400MPaの重合条件下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合反応を行うことを特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、メタロセン触媒(A)および/またはメタロセン触媒(B)が下記一般式(c)
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3) (c)
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン/α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
を満足するメタロセン触媒を用いることを特徴とするエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−143900(P2006−143900A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336522(P2004−336522)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】