説明

エッチング溶液の処理方法

【課題】アルカリ過マンガン酸エッチング溶液の管理や処理を複雑な操作を要し、且つ生成する溶性の炭酸塩を濾過するフィルタ−や限外濾過の管理等に多大な労力を要する従来のエッチング溶液の処理方法の課題を解決する。
【解決手段】炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液をバッチ処理して、前記溶液中の炭酸根を難溶性又は不溶性固体物質として除去する際に、前記炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の所定量を第1反応室20に収容した後、前記溶液を攪拌しつつ、前記溶液中の炭酸根と反応して難溶性又は不溶性固体物質を生成するストロンチウム化合物を添加し、次いで、第1反応室20の側部又は上部に形成された第1液体排出部に設けられた第1フィルター28を介して、第1反応室20内の溶液を排出し、且つ第1フィルター28を通過できずに第1反応室20の底部に沈殿した前記難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26を、第1反応室20から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング溶液の処理方法に関し、更に詳細には炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液をバッチ処理して、前記溶液中の炭酸根を難溶性又は不溶性固体物質として除去するエッチング溶液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液(又はデスミア液)は、樹脂製の配線基板のデスミア処理又は粗化処理のような樹脂のエッチング処理に用いられている。かかるデスミア処理とは、例えば樹脂製の配線基板に設けられたスルーホールを形成した際に、形成したスルーホール内に残存する樹脂から成る削りかす等をアルカリ過マンガン酸エッチング溶液(デスミア液)中で樹脂成分を分解する処理である。
また、最近、コア層板の表面に形成した樹脂から成る絶縁層の表面に直接的にめっきを形成し、これをパターンエッチングして配線基板を作製するアディティブ方式が採用されつつある。かかるアディティブ方式では、樹脂製の絶縁層とめっきの密着性を良好にするために、予め絶縁層の表面を粗化するために粗化処理を施した後に、めっきを施すことが行われている。この粗化処理にも、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液が用いられている。
この様な、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液を用いた樹脂のエッチング処理では、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中で、樹脂成分の炭素(C)と水酸基(OH)とが過マンガン酸と下記化1に示すように反応して樹脂成分を分解している。
【0003】
【化1】

【0004】
しかしながら、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液(以下、単にエッチング溶液と称することがある)を継続的に使用すると、樹脂中の炭素(C)から生じる二酸化炭素(CO)と空気中の二酸化炭素が液中に取り込まれ下記化2に示すように反応して液中の炭酸イオン(炭酸根)が増加する。
【0005】
【化2】

この様に、エッチング溶液中に炭酸イオンとして蓄積され、一方では、エッチングに必要な水酸基(OH)濃度が低下することになる。エッチング溶液中に炭酸イオンが蓄積されると、エッチング溶液の液寿命が短くなる。また、エッチング溶液中の水酸基イオンが低下するとエッチング能力が低下する。
更に、エッチング溶液のアルカリ規定度は、中和滴定により管理しているが、中和滴定では、水酸基イオンのみならず炭酸イオン(CO2−)をも中和することになり、正確なアルカリ度を分析することができず、液分析精度が低下する。
この様に、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸イオン濃度が増加することにより、エッチング効率が低下し、正確な水酸基濃度を分析することが困難となる問題が生じていた。
【0006】
この様に炭酸イオン濃度が増加したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液は、従来、使用済みとして廃棄処分されていたが、省資源及び廃棄処分費用等の観点から、近年、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根を可及的に減少することが行われるようになった。
かかるアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根の減少に関連する先行技術として、次のようなものがある。
【特許文献1】特開平6−6033号公報
【特許文献2】特開2000−13000号公報
【特許文献3】特開2001−156428号公報
【0007】
特許文献1では、エッチング浴の安定性が保たれ、エッチング処理不良が防止でき、且つ一定のエッチングスピード処理を維持するための提案がなされている。これによると、エッチング浴より一定時間ごとにエッチング溶液を所定量サンプリングし、自動分析装置により過マンガン酸塩、水酸化ナトリウム、マンガン酸塩濃度を分析し、その分析値をコントローラーにて演算し、水酸化ナトリウム濃度を所定濃度に合わせる為の補充量を水酸化ナトリウム定量ポンプに伝送する。また、エッチングスピード測定セルには、一定時間毎にエッチング溶液を所定量サンプリングし、循環ポンプにて比色計で液色が赤紫色から緑色に変わるまで被処理物と同種系の有機溶剤の滴下を続け、エッチング溶液中の過マンガン酸塩濃度を一定範囲に維持しながらエッチング浴中のエッチングスピードの管理を行う。
特許文献2では、エッチング溶液中の反応生成物として蓄積される炭酸イオンを特定の処理液で沈殿除去し、エッチング溶液の安定化及び長寿命化を図るべく、エッチング槽中のアルカリ性過マンガン酸液をホンプで循環する際、配管の途中に特定の液を注入し、反応生成物の炭酸塩を沈殿させフィルターにより濾過して除去し、自動分析装置によりアルカリ規定度測定し、所定の規定度に調整し、この液により樹脂のエッチングを行う。
特許文献3では、エッチング溶液中の炭酸根を除去すべく、炭酸根が蓄積されたアルカリ過マンガン酸エッチング溶液を収容した反応室に、添加物タンクから塩化バリウムを注入して、炭酸イオンと反応して難溶性塩である炭酸バリウムとした後、炭酸バリウムを限外濾過装置によって除去する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1及び特許文献2では、エッチング溶液の管理や処理に複雑な手段が必要となり、特許文献2及び特許文献3では、反応によって生成した難溶性の炭酸塩をフィルターや限外濾過によって除去しており、その管理等に多大な労力を要する。
そこで、本発明では、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液の管理や処理を複雑な操作を要し、且つ生成する不溶性の炭酸塩を濾過するフィルターや限外濾過の管理等に多大な労力を要する従来のエッチング溶液の処理方法の課題を解決し、簡単且つ効率よくアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根を処理し得るエッチング溶液の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根とストロンチウム化合物とを反応させると、難溶性又は不溶性固体物質を生成し、かかる難溶性又は不溶性固体物質を除去することによってアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根を除去できること、及びかかるアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根の処理をバッチ処理で行うことによって、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中で生成した難溶性又は不溶性固体物質を反応室内で充分に沈殿できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液をバッチ処理して、前記溶液中の炭酸根を難溶性又は不溶性固体物質として除去する際に、前記炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の所定量を第1反応室に収容した後、前記溶液を攪拌しつつ、前記溶液中の炭酸根と反応して難溶性又は不溶性固体物質を生成するストロンチウム化合物を添加し、次いで、前記第1反応室の側部又は上部に形成された第1液体排出部に設けられた第1フィルターを介して、前記第1反応室内の溶液を排出し、且つ前記第1フィルターを通過できずに第1反応室の底部に沈殿した前記難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物を、前記第1反応室から排出することを特徴とするエッチング溶液の処理方法にある。
【0010】
かかる本発明において、ストロンチウム化合物として、塩化ストロンチウムを使用することにより、処理したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液のpH調整を不要にできる。
かかるストロンチウム化合物を、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根に対して0.94モル当量以上添加することによって、処理したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根をゼロにできる。
また、第1フィルターに付着した難溶性又は不溶性固体物質の一部を、第1液体排出部の遮蔽壁を兼ねたスキージ扉により掻き落すことによって、第1フィルターの詰まりを防止できる。
更に、第1反応室の液体排出部から排出されたアルカリ過マンガン酸エッチング溶液を第2反応室に収容し、前記アルカリ過マンガン酸エッチング溶液に含まれる難溶性又は不溶性固体物質を沈殿させつつ、前記第2反応室の側部に形成された第2液体排出部に設けられた第2フィルターを介してアルカリ過マンガン酸エッチング溶液液体を排出し、且つ前記第2フィルターを通過できず第2反応室の底部に沈殿した難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物を第2反応室から排出することによって、第1反応室で生成した難溶性又は不溶性固体物質を可及的に分離できる。
尚、第2フィルターに付着した難溶性又は不溶性固体物質を、第2液体排出部の遮蔽壁を兼ねた第2スキージ扉により掻き落とすことによって、第2フィルターの目詰まりを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根とストロンチウム化合物とを反応させた反応生成物は難溶性又は不溶性固体物質であって、この難溶性又は不溶性固体物質を簡単に且つ容易に除去できれば、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液の再生を容易に行うことができる。
この点、本発明では、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根の処理をバッチ処理で行い、反応室内でアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根とストロンチウム化合物とを反応させて生成した難溶性又は不溶性固体物質を充分に沈殿できる結果、限外濾過等によって難溶性又は不溶性固体物質を分離することを要せず、容易に且つ簡単にアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るエッチング溶液の処理方法を実施できる装置の一例を図1に示す。図1は、エッチング溶液の処理装置を説明するための概略図である。
図1に示すエッチング溶液の処理装置では、エッチング槽10は内部にアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12が収容され、樹脂製の配線基板等の樹脂のデスミヤ処理や粗化処理等のエッチング処理が行われる。
エッチング槽10内のアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12は、自動分析装置13によりマンガン(Mn)と水酸化ナトリウム(NaOH)の濃度の分析と自動調整が行われる。
エッチング槽10内のアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12は、前述のように、樹脂のエッチングを行う過程で炭酸根(炭酸イオン)濃度が増加することにより、エッチング効率が低下するので、所定時間経過後にエッチング溶液中の炭酸根を除去するために、エッチング槽10の下部に連結されたパイプ15を通してバルブV及びポンプPにより第1反応室20に供給される。
【0013】
第1反応室20は、その上部にストロンチウム化合物の粉末又は水溶液を反応室20内へ自動的に添加するための自動添加装置22が設けられている。かかるストロンチウム化合物としては、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根と反応するストロンチウム化合物であって、具体的には塩化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウムを挙げることができる。特に、塩化ストロンチウムは、後述する様に、再生処理を施したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液のpH調整を行うことを要しないため好ましい。
かかるストロンチウム化合物として、塩化ストロンチウムを使用することによって、再生したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液のpH調整を不要にできる。
このストロンチウム化合物を、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根に対して0.94モル当量以上添加することによって、再生したアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根をゼロにでき好ましい。
【0014】
アルカリ過マンガン酸エッチング溶液12に水酸化カルシウム14の粉末又は水溶液が添加した第1反応室20内の溶液24は、第1反応室20の側部に連結されたポンプPによって攪拌される。第1反応室20内の溶液24中には、アルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根とストロンチウム化合物との反応生成物から成る難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26は、第1反応室20内で沈降し底部に溜まる。
【0015】
第1反応室20の排出側の側壁部又は上部には、第1液体排出部として上部排出口30と下部排出口32とが設けられ、かかる上部排出口30と下部排出口32との入口側に設けられた第1フィルター28を介して第1反応室20内の液体を排出する。第1フィルター28には、上部排出口30と下部排出口32との遮蔽壁を兼ねた第1スキージ扉34が設けられている。第1スキージ扉34は矢印Aのように上下移動可能になっており、上部排出口30と下部排出口32との開閉を行うと共に、液体24が第1フィルター28を通過する際に、第1フィルター28に付着した難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26を掻き落とす作用をする。
上部排出口30及び下部排出口32は、それぞれのバルブV、Vを介して第2次反応室40に連結されている。第1反応室20の液体は、ポンプPにより第2次反応室40へ送られる。
【0016】
第2次反応室40の排出側の側壁部又は上部には、第2液体排出部としての排出口44に設けられた第2フィルター42を介して第2次反応室40内の液体24を排出する。第2フィルター42にも、第1フィルター28と同様に、排出口44の遮蔽壁を兼ねた第2スキージ扉46が設けられている。この愛2スキージ扉46も、第1スキージ扉34と同様に、矢印Bのように上下移動可能になっており、排出口44の開閉を行うと共に、液体24が第2フィルター42を通過する際に、第2フィルター42に付着した難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26を掻き落とす作用をする。排出口44にはポンプPが設けられ、このポンプPにより第2次反応室40内の液体24は電解再生槽50に送られる。
【0017】
電解再生槽50には電極52が設けられ6価のマンガンが7価のマンガンに酸化される(電解酸化)。再生された(炭酸塩などの難溶性又は不溶性固体物質が取り除かれ、電解酸化された)エッチング溶液12は再生液供給経路54を経て、ポンプPによりエッチング槽10に戻され、図示しない自動分析装置13により再度マンガン(Mn)と水酸化ナトリウムの濃度の分析と自動調整が行われ、エッチング槽10内で再生されたアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12として、樹脂製の配線基板等の樹脂のデスミヤ処理や粗化処理等のエッチング処理のために使用される。
第1反応室20及び第2次反応室40の底部には、蓄積された難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26を下部へ排出するための開閉扉36、48がそれぞれ設けられている。これらの開閉扉36、48の下部には、沈殿物26の排出槽56があり、この排出槽56の底壁57は傾斜しており、落下した沈殿物26は傾斜底壁57を下降して排出口58から排出される。
【0018】
本発明では、図1に示す装置を用いてバッチ処理によりアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12中の炭酸根の除去が行われる。
つまり、エッチング槽10内のアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12が一定期間使用されると、バルブVが開放されポンプPが作動されることにより、炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12が第1反応室20へ供給される。そして、第1反応室20に供給されたアルカリ過マンガン酸エッチング溶液12に、塩化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム等の炭酸根と反応するストロンチウム化合物の粉末又は水溶液が自動添加装置22により添加され、ポンプPにより攪拌される。
かかる攪拌の過程でアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根とストロンチウム化合物とが反応して、炭酸塩等の難溶性又は不溶性固体物質を生成する。この反応は、液体24の温度を75〜85℃に保持して行うことが好ましい。このため、第1反応室20内には、ヒータ25が設けられている。
生成した難溶性又は不溶性固体物質は、第1反応室20内の底部に沈降して沈殿物26として溜まる。
【0019】
その後、第1スキージ扉34が上部排出口30よりも上部へ移動して、上部排出口30が開放し、上部バルブVが開放され且つポンプPが作動されると、第1反応室20内の上部の液体24は第1フィルター28及び上部排出口30を介して第1反応室20から第2次反応室40へ流入する。第1フィルター28に付着した難溶性又は不溶性固定物質を含む沈殿物26は、第1スキージ扉34を上下移動させることにより掻き落とされる。
第1反応室20内の液体が上部の排出口30の位置まで排出されると、第1スキージ扉34が上部排出口30を塞ぐ位置まで下降し、次いで、第1スキージ扉34が下部排出口32を開放し、上部バルブVが閉じられ下部バルブVが開放される。これにより、反応室20の中間部乃至下部の液体24は第1フィルター28及び排出口32を介して第1反応室20から第2次反応室40へ流入する。同様に、第1フィルター28に付着した難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26は、第1スキージ扉34を上下移動させることにより掻き落とされる。
第1反応室20内の液体が下部の排出口32の位置まで排出されると、第1反応室20の底部付近に残された液体24には多くの難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26となり廃液となる。この廃液は、第1反応室20の底部の開閉扉36を開くことにより、下部の排出槽56に落下して、傾斜壁57から排出口58へ移動し排出される。
【0020】
第2次反応室40に供給された液体24は、第2次反応室40内で残存している難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物26が除去される。
すなわち、第2次反応室40内の液体24は所定時間経過することにより残存している沈殿物26の沈降が行われる。所定時間経過後に、第2スキージ扉42を開き且つポンプPを作動させることにより第2次反応室40内の液体24は電解再生槽50へ供給される。その間に、第2フィルター42に付着された難溶性または不溶性固体物質を含む沈殿物26は第2スキージ扉46を矢印Bのように上下移動させることにより、掻き落とされる。
かかる第2反応室40でも、溶液24中の炭酸根とストロンチウム化合物との反応が進行する可能性がある場合には、図1に示す様に、第2反応室40内にもヒータ25を設け、液体24の温度を75〜85℃に保持することが好ましい。
第2次反応室40内の液体24が排出口44の位置まで排出されると、第2次反応室40の底部付近に残された液体24には沈殿物26を含んでいる廃液となる。この廃液は第2次反応室40の底部の開閉扉48を開くことにより、下部の排出槽56に落下して、傾斜壁57から排出口58から排出される。
尚、この第2次反応室40内の液体24に対しても、再度、ストロンチウム化合物の粉末又は水溶液を添加してもよく、その他の沈殿剤などを再度添加してもよい。
【0021】
この様に、図1に示す装置では、第1フィルター28や第2フィルター42を通過できなかった難溶性炭酸根等を含む廃液は第1反応室20や第2次反応室40の下層部から排出される。第1フィルター28や第2フィルター42に一部付着して堆積した難溶性又は不溶性固体物質は、遮蔽壁を兼ねた第1スキージ扉34と第2スキージ扉46により掻き落とされ下部に落下する。
【0022】
以上説明したように、本発明のアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の再生方法は、連続処理ではなく、一旦使用済みのエッチング溶液を、第1反応室20や第2次反応室40へ移してから炭酸根を含む沈殿物の除去の操作を行い、廃液を再び使用可能な状態へもどし再生するものである。すなわち、廃液を単位ごとにバッチ処理するものである。
【実施例1】
【0023】
炭酸根濃度43.1g/Lのアルカリ過マンガン酸エッチング溶液200mlをビーカーへとり、液温を約80℃に保持して塩化ストロンチウム六水和物[関東化学(株)製 99%]20.485g(0.076モル)を少量づつゆっくり加えた。この際に、特に激しい反応は惹起されなかった。
次いで、ビーカー内の液温を80±5℃に保持しつつスターラーで1時間攪拌した後、室温下で2時間放置した。その後、ビーカーの底面に析出していた沈殿物をガラスフィルター(G4)で吸引ろ過した。
得られた沈殿物の重量は12.795g(炭酸ストロンチウムに換算して0.087モル)であった。炭酸根濃度から計算した炭酸ストロンチウム量と略一致した。一方、濾液として得られた処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液では、炭酸根濃度が0g/Lであり、pHは13.2であった。また、処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の過マンガン酸(7価)は66.2g/Lであり、マンガン酸(6価)は2.1g/Lである。更に、処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の水酸化ナトリム濃度は34.0g/Lである。
この様に、炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液に塩化ストロンチウム六水和物を添加して、炭酸根を難溶性又は不溶性固体物質とすることによって、濾液として得られた処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液には炭酸根をゼロとすることができる。
更に、得られた処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の過マンガン酸濃度を減少させることなくもなく、アルカリ濃度を上昇させることもなかった。
かかる炭酸根と塩化ストロンチウム六水和物との反応は、下記化3に示す反応式で表される。
【0024】
【化3】

【実施例2】
【0025】
実施例1において、炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液及びこの溶液中の炭酸根濃度に対して、塩化ストロンチウム六水和物の添加量を下記表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の処理を行った。処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の過マンガン酸濃度、マンガン酸濃度、水酸化ナトリム濃度及び炭酸根を測定し、その結果を下記表1に併せて示す。
尚、処理前のアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根濃度43g/L、過マンガン酸濃度67.8g/L、マンガン酸濃度3.8g/L、NaOH濃度37.2g/Lであった。
【0026】
【表1】

表1から明らかな様に、塩化ストロンチウム六水和物の添加量が炭酸根に対して0.7モル当量の場合には、処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中に若干の炭酸根が残ったが、炭酸根に対して0.94モル当量以上では、処理済みアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根をゼロとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の処理方法を実施する装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10 エッチング槽
13 自動分析装置
15 パイプ
20 第1反応室
25 ヒータ
26 沈殿物
28 第1フィルター
30 上部排出口
32 下部排出口
34 第1スキージ扉
40 第2反応室
42 第2フィルター
46 第2スキージ扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液をバッチ処理して、前記溶液中の炭酸根を難溶性又は不溶性固体物質として除去する際に、
前記炭酸根を含有するアルカリ過マンガン酸エッチング溶液の所定量を第1反応室に収容した後、前記溶液を攪拌しつつ、前記溶液中の炭酸根と反応して難溶性又は不溶性固体物質を生成するストロンチウム化合物を添加し、
次いで、前記第1反応室の側部又は上部に形成された第1液体排出部に設けられた第1フィルタを介して、前記第1反応室内の溶液を排出し、
且つ前記第1フィルタを通過できずに第1反応室の底部に沈殿した前記難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物を、前記第1反応室から排出することを特徴とするエッチング溶液の処理方法。
【請求項2】
ストロンチウム化合物として、塩化ストロンチウムを使用する請求項1に記載のエッチング溶液の処理方法。
【請求項3】
ストロンチウム化合物を、使用済みのアルカリ過マンガン酸エッチング溶液中の炭酸根に対して0.94モル当量以上添加する請求項1又は請求項3記載のエッチング溶液の処理方法。
【請求項4】
第1フィルタに付着した難溶性又は不溶性固体物質の一部を、第1液体排出部の遮蔽壁を兼ねた第1スキージ扉により掻き落す請求項1〜3のいずれか一項記載のエッチング溶液の処理方法。
【請求項5】
第1反応室の液体排出部から排出された溶液を第2反応室に収容し、前記溶液に含まれる難溶性又は不溶性固体物質を沈殿させつつ、前記第2反応室の側部に形成された第2液体排出部に設けられた第2フィルタを前記溶液を排出し、
且つ前記第2フィルタを通過できず第2反応室の底部に沈殿した難溶性又は不溶性固体物質を含む沈殿物を第2反応室から排出する請求項1〜4のいずれか一項に記載のエッチング溶液の処理方法。
【請求項6】
第2フィルタに付着した難溶性又は不溶性固体物質を、第2液体排出部の遮蔽壁を兼ねた第2スキージ扉により掻き落とす請求項5に記載のエッチング溶液の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−178637(P2009−178637A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18467(P2008−18467)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】