説明

エネルギーおよび情報を誘導的に伝達する方法およびシステム

【課題】1次インダクタを有するエネルギー送信器と、2次インダクタを有するエネルギー受信器との間でエネルギーと情報を誘電的に伝送する方法を提供する。
【解決手段】交流電圧を前記1次インダクタへ印加して1次交流電流を生じさせることで、2次インダクタに2次交流電流を誘起させることにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へエネルギーを送信する方法である。前記交流電圧の周期内の第1の区間において当該交流電圧の振幅を異ならせることにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ情報を伝達し、前記交流電圧の周期内で前記第1の区間と重複しない第2の区間において2次インダクタの電力吸収を異ならせることにより、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ情報を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次インダクタを備えたエネルギー送信器と2次インダクタを備えたエネルギー受信器との間で、エネルギーおよび情報を誘導的に伝達する方法に関する。また、本発明は、前記エネルギー送信器、前記エネルギー受信器、およびこれらのエネルギー送信器とエネルギー受信器とを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,701,121号明細書に、質問器(interrogator)と変換器(transducer)を備え、これらの間で連成振動回路を用いて情報とエネルギーを伝送できるシステムが開示されている。質問器の磁界が変換器で検出され、変換器に接続された電気機器にエネルギーが供給される。さらに、誘導磁界を変調することにより、質問器と変換器との間でデータやコマンドが送信される。質問器から変換器への送信、すなわち、エネルギー伝送の方向においては、振幅変調、位相変調、周波数変調、あるいは、パルス変調が用いられる。反対方向の送信においては、「電力吸収」の信号伝達が用いられる。この場合、変換器の受信コイルが一時的に非接続とされ、エネルギー送信コイルの電力吸収をモニタリングすることにより、この非接続状態が質問器で検出される。
【0003】
国際公開第1994/001846号に、電力と情報とを誘導的に伝送するための変成器(transformer)を備えた電気コネクタが開示されている。このコネクタは、車のドアのヒンジ継手に組み込まれることが好ましい。このコネクタを介して、ドア内の負荷へ電気エネルギーを供給するために車からドアへ電力が伝送され、データが双方向で送信される。変成器の1次側に、矩形波電圧を用いるHブリッジ回路が設けられる。ラウドスピーカやドアを駆動するための動力伝達(power transmission)の方向への低周波信号の送信については、前記矩形波電圧のパルスはHF変調される。また、矩形波信号をHF変調することにより、立ち上がりエッジを開始点として、情報が送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,701,121号明細書
【特許文献2】国際公開第1994/001846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エネルギー送信器とエネルギー受信器との間で、エネルギーと情報とを誘導的に伝送するための、より優れた方法を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、より優れたエネルギー送信器とエネルギー受信器と、エネルギー送信器とエネルギー受信器との間で情報をやりとりするためのより優れたシステムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明は、1次インダクタを備えたエネルギー送信器と2次インダクタを備えたエネルギー受信器との間で、エネルギーおよび情報を誘導的に伝達する方法に関する。この方法において、エネルギーは、交流電圧を1次インダクタに印加して1次インダクタにプライマリ交流電流を発生させ、2次インダクタに2次交流電流を誘導することによって、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ伝送される。
【0007】
本発明は、また、1次インダクタを有するエネルギー送信器に関する。前記1次インダクタは、エネルギー受信器の2次インダクタに誘導的に結合され、前記エネルギー受信器へエネルギーを誘導的に伝達し、エネルギー受信器から情報を受信する。前記エネルギー送信器は、1次インダクタで1次交流電流を発生させるために、1次インダクタへ交流電圧を印加する手段を備えている。前記1次交流電流は、前記2次インダクタにおいて2次交流電流を発生させる。前記1次インダクタへ交流電圧を印加する前記の手段は、前記1次インダクタへ正電圧を印加する手段と、前記2次インダクタへ負電圧を印加する手段とを備えている。
【0008】
本発明は、さらに、2次インダクタを備えたエネルギー受信器に関する。前記2次インダクタは、エネルギー送信器の1次インダクタに誘導的に結合され得る。前記1次インダクタは、前記エネルギー受信器からエネルギーと情報とを誘導的に受信する。前記エネルギー受信器は、1次インダクタによって前記2次インダクタに誘導される2次交流電流を整流するための整流器を備えている。
【0009】
さらに、本発明は、前記のエネルギー送信器とエネルギー受信器とを備えたシステムに関する。
【0010】
本発明の方法は、1次インダクタを備えたエネルギー送信器と2次インダクタを備えたエネルギー受信器との間で、エネルギーおよび情報を誘導的に伝達する方法に関する。この方法において、エネルギーは、交流電圧を1次インダクタに印加して1次インダクタに1次交流電流を発生させ、これにより2次インダクタに2次交流電流を誘導することによって、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ伝送される。また、この方法において、交流電圧の周期内の特定の第1の区間においてのみ(実質的にこの第1の区間においてのみ)、前記交流電圧の振幅を変化させることにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ情報が伝達される。また、上記の方法において、前記交流電圧の周期における特定の第2の区間においてのみ(実質的にこの第2の区間においてのみ)、2次インダクタの電力吸収(power absorption)を変化させることにより、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ情報が伝達される。なお、前記第2の区間は、前記第1の区間とオーバーラップしない。
【0011】
ここで、「交替区間(alternation)」という用語は、交流電圧または交流電流において同一の極性(同一の符号)を有する部分を意味する。「交替区間」は、電圧または電流のゼロポイントで区切られる。したがって、電圧と電流は、二種類の「交替区間」を有する。この二種類の「交替区間」の任意の一方を「正」と呼び、他方を「負」と呼ぶことができる。本明細書および特許請求の範囲においては、「正」および「負」という用語は、電圧および電流において対応する交替区間を示すために用いられる。すなわち、2次電流の「正」の交替区間は、交流電圧の「正」の交替区間によって生じた1次電流の「正」の交替区間によって誘起された交替区間であるものとする。
【0012】
本発明においては、ある一方向へ情報を伝送するために1周期内に専用の区間を割り当てることにより、一方向への情報の伝送が、逆方向への情報の伝送と決して重複しない、という利点がある。これにより、ある方向への情報の伝送が、逆方向への情報の伝送によって干渉を受けることがない。さらに、装置の構造を簡略化することができる。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明にかかるエネルギー送信器は、エネルギー受信器へ誘導的にエネルギーを送信し、前記エネルギー受信器から情報を受信するために、エネルギー受信器の2次インダクタに誘導的に結合される1次インダクタを備える。このエネルギー送信器は、前記1次インダクタに1次交流電流を生じさせて当該1次交流電流により前記2次インダクタに2次交流電流を誘起するために、前記1次インダクタへ交流電圧を印加する手段を備えている。前記1次インダクタへ交流電圧を印加する手段は、前記1次インダクタへ正電圧を印加する手段と、前記1次インダクタへ負電圧を印加する手段とを備えている。前記1次インダクタへ負電圧を印加する手段は、前記エネルギー受信器からエネルギー送信器へ伝送される情報を検出するために、前記2次インダクタの電力吸収の変化を検出する手段を備えている。
【0014】
本発明にかかるエネルギー送信器は、エネルギー受信器からエネルギー送信器への情報の伝送のための専用の第2の区間が交流周期における負の交替区間に設けられていれば、1次インダクタへ負の電圧を供給する手段に、2次インダクタの電力吸収の変化を検出する手段を設ければ十分である、という事実を利用している。これにより、エネルギー送信器とエネルギー受信器の構成を簡略化することができる。
【0015】
さらに、上記の目的を達成するために、本発明にかかるエネルギー受信器は、エネルギー送信器からエネルギーと情報とを誘導的に受信するために、エネルギー送信器の1次インダクタに誘導的に結合される2次インダクタを備えたエネルギー受信器であって、前記1次インダクタによって前記2次インダクタに誘起される2次交流電流を整流する整流器を備え、前記2次交流電流の正の交替区間を通す前記整流器が、前記2次交流電流の変化を検出する手段を備えている。
【0016】
本発明にかかるエネルギー受信器は、1次インダクタに印加される交流電圧の振幅の変化が、1次交流電流における変化を伴い、この1次交流電流における変化がさらに、2次交流電流の変化を引き起こすという事実を利用したものである。これにより、2次交流電流における変化を検出することにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ伝送される情報を検出することができる。さらに、本発明にかかるエネルギー受信器は、エネルギー受信器からエネルギー送信器への情報の送信のための専用の第1の区間が、交流周期における正の交替区間に割り当てられていたら、2次交流電流の正の交替区間を通す整流器に、2次交流電流の変化を検出する手段を設ければ十分である、という事実を利用している。これにより、エネルギー送信器とエネルギー受信器の構成を簡略化することができる。
【0017】
さらに、上記の目的は、本発明にかかるエネルギー送信器とエネルギー受信器とを備えたシステムによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかるエネルギー送信器の簡略化された回路図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるエネルギー受信器の簡略化された回路図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるエネルギー送信器のHブリッジ回路のトランジスタに印加される信号と、エネルギー受信器の2次インダクタに流れる2次電流とを簡略化して示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
以下の実施形態において、インダクタは、導電性材料で形成されるコイルであることが好ましい。特に、インダクタは、銀や銅等の金属であることが好ましい。1次インダクタおよび2次インダクタは、共通のメタルコアを介して結合されていることが好ましい。本発明の好適な実施形態において、前記のコアは、組み合わせることによって閉じた磁気ループを形成できる2つのパーツを有する。前記2つのパーツの一方は1次インダクタに設けられ、他方は2次インダクタに設けられることが好ましい。前記コアは、鉄(より好ましくはフェライト鉄)、または、他の強磁性体材料(好ましくは高い透磁率を持つ材料)を含んでいることが好ましい。
【0021】
前記交流電圧は、段状の波形を有し、この波形が、矩形状の正の交替区間と、矩形上の負電の交替区間とを有することが好ましい。
【0022】
隣接する交替区間は、ゼロ電圧の区間で区切られていることが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、1次インダクタへ交流電流を印加する手段が、前記1次インダクタへ正電圧を供給する2つのスイッチと、前記1次インダクタへ負電圧を供給する2つのスイッチとを有するHブリッジ回路を備えている。Hブリッジ回路の好適な例としては、国際公開第1994/001846号に開示されているように、2対の電気スイッチを交互に切り替えることによって交流の矩形波電圧をインダクタに印加する回路が挙げられる。
【0023】
前記第1の区間(すなわちエネルギー送信器からエネルギー受信器へ情報を伝送する区間)が、前記交流電圧の正の交替区間に設けられていることが好ましい。また、前記第2の区間が、前記交流電圧の負の交替区間に設けられていることが好ましい。これらの構成によれば、エネルギー送信器とエネルギー受信器との両方を簡単に構成できるという利点がある。
【0024】
エネルギー送信器の好ましい実施形態において、交流電圧の負の交替区間において1次インダクタを流れる電流を決定する手段が、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ伝送される情報を検出するために設けられる。この構成は、2次インダクタの電力吸収の変化が、1次インダクタを流れる電流の変化を引き起こすという事実を利用している。第1の抵抗は、1次インダクタへ負の電圧を供給するスイッチの1つに直列に接続されていることが好ましい。第1の抵抗における電圧降下を検出することにより、交流電圧の負の交替区間における1次電流の変化を検出することができる。さらに、前記電圧降下が、多数の交流周期における電圧降下の平均値と比較されることが好ましい。これは、1次インダクタに接続されている負荷における「遅い変化」を補償するためである。ここで、「遅い」とは、交流電圧の周期に比較して遅いという意味である。前記の「遅い変化」は、第1の抵抗の電圧降下に影響する可能性があるが、情報の伝送には関係がない。
【0025】
エネルギー受信器の好ましい実施形態において、第2の抵抗は、2次交流電流の正の交替区間を通す整流器に直列に接続されていることが好ましい。第2の抵抗における電圧降下を検出することにより、2次交流電流の正の交替区間に2次インダクタを流れる電流の変化を検出することができる。特に、前記においてエネルギー送信器について説明したように、エネルギー受信器において、電圧降下が、多数の交流周期における電圧降下の平均値と比較されることが好ましい。これは、1次インダクタに接続されている負荷における「遅い変化」を補償するためである。ここで、「遅い」とは、交流電圧の周期に比較して遅いという意味である。前記の「遅い変化」は、第2の抵抗の電圧降下に影響する可能性があるが、情報の伝送とは関係がない。
【0026】
エネルギー受信器の好ましい実施形態において、整流器が少なくとも一つの整流ダイオードを備えていることが好ましい。整流器としては、ブリッジ整流器を好適に用いることができる。第2の抵抗は、整流器のダイオードの1つに直列接続されていることが好ましい。本発明の好適な実施形態において、負荷は、整流器を介して2次インダクタに接続されていることが好ましい。第2の抵抗は、前記の負荷に直列接続されていることが好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態において、エネルギー受信器からエネルギー送信器への情報の転送のために、2次インダクタから負荷を一時的に切り離すことによって、2次インダクタの電力吸収が変化する。あるいは、電力吸収の変化は、負荷を減少または増加させたり、あるいは、2次インダクタを短くすることによっても、電力吸収の変化を実現することができる。
【0028】
エネルギー受信器の好適な実施形態において、2次交流電流の負の交替区間を通す整流器に、2次インダクタの電力吸収を変化させる手段が設けられていることが好ましい。この手段としては、特に、2次インダクタから負荷を切り離す手段が好ましい。また、2次交流電流の負の交替区間を通す整流器の回路に、スイッチが直列接続されていることが好ましい。このスイッチは、整流器のダイオードの一つに直列接続されていることが好ましい。
【0029】
本発明にかかるエネルギー送信器とエネルギー受信器とを含むシステムの好適な実施形態は、エネルギー受信器の2次電流の負の交替区間が、エネルギー送信器の交流電圧の負の交替区間に原則的に一致するという事実を利用している。このため、エネルギー送信器の1次インダクタへ負の電圧を印加する手段に設けられた抵抗にかかる電圧を観察することにより、エネルギー受信器における2次交流電流の負の交替区間へのスイッチングを検出することができる。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、第1の区間が、前記交流電圧の正の交替区間の実質的に全体であることが好ましい。言い換えると、正の交替区間の振幅電圧は、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ送信されるべき情報の符号化のサイクルの繰り返し中に変化し得る。この構成において、振幅電圧の変化が1次電流の振幅の変化を表す。なお、1次電流の振幅の変化は、2次電流の振幅の変化を表す。
【0031】
本発明の好適な実施形態において、第2の区間が、前記2次交流電流の負の交替区間の全体であることが好ましい。言い換えると、交流電圧の負の交替区間のほぼ全体における2次インダクタの電力吸収が、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ送信されるべき情報の符号化のサイクルの繰り返し中に変化する。
【0032】
交替区間全体において変化させる代わりに、その一部のみにおいて変化させても良い。これは、エネルギー伝送が、情報の伝送に影響を受けにくいという利点がある。本発明の好適な実施形態においては、エネルギー送信器からエネルギー受信器への情報の送信の第1の区間が、交流電圧の交替区間(より好ましくは正の交替区間)の最後に設けられる。つまり、交替区間の最後における交流電圧の振幅は、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ送信されるべき情報の符号化のサイクルの繰り返し中に変化し得る。発明者らは、2次インダクタにおいて、特に、交流電圧が段状波形である場合に、交替区間の最後における変化は、一般的に容易に検出可能であることを見いだした。なぜならば、1次および2次交流電流は、一般的に、交替区間の最後に近づくにつれて比較的高い値を示すからである。なお、他の実施形態において、第1の区間は、交替区間の他の箇所(例えば交替区間の最初)に配置することができる。
【0033】
変化させるべき第1の区間の長さは、好ましくは交替区間の半分以下であり、より好ましくは交替区間の4分の1以下であり、さらに好ましくは8分の1以下、よりさらに好ましくは16分の1以下である。2以上のベース(base)を持つコード値を表す情報を符号化するために、区間の長さを変化させることが可能である。このようにして、所定数の交替区間でより多くの情報を送信することにより、送信速度を向上させることができる。区間の相対的長さが1,1/2,0である場合、これらは、3ベースコードにおいて、「0」、「1」、「2」を表す。
【0034】
本発明の好適な実施形態において、第1の区間において1次インダクタに印加される交流電圧の振幅は小さく、好ましくはゼロである。この結果、1次インダクタの電流の絶対値は降下し、降下する2次電流を誘起する。このような電流降下を2次インダクタ側で比較的容易に検出できることが、本発明の実施形態の利点である。さらに、スイッチを用いれば、容易に、印加電圧をゼロまで低下させることができる。このようにして、ゼロ電圧が1つの値(例えば「1」)を表し、最大電圧が他の値(例えば「0」)を表すバイナリコードとして、情報を送信することができる。ゼロ電圧の代わりに、電圧の絶対値を1つの値(例えば「1」)を表すために所定のレベルとし、最大電圧が他の値を表すようにしても良い。
【0035】
本発明の他の実施形態において、第1の区間の電圧の絶対値を、2より大きいベースを持つコードで値を表すために、多段階に減少させることもできる。このようにして、所定数の交替区間でより多くの情報を送信することにより、送信速度を向上させることができる。例えば、相対的電圧値が1,1/2,0である場合、これらは、3ベースコードにおいて、「0」、「1」、「2」を表す。好ましくは、区間の長さの変化を振幅の変化と組み合わせても良い。これにより、1交替区間で伝送できる情報の量をさらに増やすことができる。例えば、互いに異なる3つの長さ(L)と、互いに異なる3つの振幅(A)とを用いれば、これらの組み合わせ(L;A)は、1交替区間で5つの異なる値をコード化できる。すなわち、「0」=(0;0)、「1」=(1;0)、「2」=(1;1)、「3」=(2;0)、「4」=(2;1)である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、エネルギー受信器からエネルギー送信器への情報の送信のための第2の区間は、2次交流電流の交替区間(好ましくは負の交替区間)の最初に配置されている。すなわち、交替区間の最初における2次インダクタの電力吸収は、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ送信されるべき情報の符号化のサイクルの繰り返し中に変化し得る。特に、交流電圧が段状の矩形波である場合に、交流周期の最初における電力吸収の変化を容易に検出できることが、本実施形態の利点である。なぜならば、一般的に、交替区間の最初における電力吸収の変化は、1次および2次電流に大きな影響を持ち、したがって、容易に検出できるからである。ただし、他の実施形態において、第2の区間は、交替区間の他の箇所(例えば交替区間の最後)に設けられても良い。
【0037】
変化させるべき第2の区間の長さは、好ましくは交替区間の半分以下であり、より好ましくは交替区間の4分の1以下であり、さらに好ましくは8分の1以下、よりさらに好ましくは16分の1以下である。2より大きいベース(base)を持つコード値を表す情報を符号化するために、区間の長さを変化させることが可能である。このようにして、所定数の交替区間でより多くの情報を送信することにより、送信速度を向上させることができる。区間の相対的長さが1,1/2,0である場合、これらは、3ベースコードにおいて、「0」、「1」、「2」を表す。
【0038】
本発明の好適な実施形態において、2次インダクタの電力吸収を変化させることは、2次インダクタを第2の区間において負荷から切り離すことを含む。これにより、負荷が切り離された状態が1つの値(例えば「1」)を表し、負荷が接続された状態がもう一方の値(例えば「0」)を表すバイナリコードとして、情報を送信することができる。負荷を完全に切り離す代わりに、負荷をあるレベルまで低くすることで1つの値(例えば「1」)を表し、最大負荷がもう一方の値(例えば「0」)を表すようにしても良い。
【0039】
本発明の他の実施形態において、2より大きいベースを持つコードで値を表すために、電力吸収を多段階に減少させることもできる。このようにして、所定数の交替区間でより多くの情報を送信することにより、送信速度を向上させることができる。例えば、相対的な電力吸収値が1,1/2,0である場合、これらは、3ベースコードにおいて、「0」、「1」、「2」を表す。好ましくは、電力吸収の変化を長さの変化と組み合わせても良い。これにより、1交替区間で伝送できる情報の量をさらに増やすことができる。例えば、互いに異なる3つの長さ(L)と、互いに異なる3つの電力吸収(A)とを用いれば、これらの組み合わせ(L;A)は、1交替区間で5つの異なる値をコード化できる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、エネルギー送信器からエネルギー受信器への情報伝送のための第1の区間が交流電圧の正の交替区間の最後に配置され、エネルギー受信器からエネルギー送信器への伝送のための第2の区間が交流電圧の負の交替区間の最初に配置されていることが好ましい。この構成は、後続する正の交替区間の立ち上がりエッジが、第2の区間の変化による電流の変化に影響されないという利点がある。これにより、このエッジを、1次側と2次側の符号化の同期のために用いることができる。
【0041】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0042】
図1に、本発明の一実施形態にかかるエネルギー送信器1の概略回路図を示す。エネルギー送信器1が備える1次インダクタ2は、フェライトコア(図示省略)の周りに巻き付けられた銅線コイルである。1次インダクタ2は、4つのトランジスタ3,4,5,6を含むHブリッジによって駆動される。トランジスタ3,4は、図3の最上段に示す矩形波信号Aを供給され、1次インダクタ2に供給される交流電圧の正の交替区間(positive alternation)を生成する。交流電圧の負の交替区間(negative alternation)は、図3の二段目に示される矩形波信号Bが供給されるトランジスタ5,6によって生成される。トランジスタは、それぞれ供給される信号電圧が正のときに導通状態となり、供給される信号電圧がゼロのときに非導通状態となる。これにより、生成される交流電圧は、ゼロ電位の短い区間をはさんで正の交替区間(正電圧)と負の交替区間(負電圧)との間で交替する矩形波信号となる。
【0043】
さらに、第1の抵抗7は、交流電圧の負の交替区間を生成するトランジスタの1つであるトランジスタ5に接続されている。第1の検出回路が、第1の抵抗7にかかる電圧を監視する。第1の抵抗7の電圧から、交流電圧が負の交替区間である間に1次インダクタ2を流れる電流の大きさが分かる。この第1の検出回路において、第1の比較器8は、第1の抵抗7における電圧降下から分圧器9を介して得られる電圧と、第1の抵抗7にかかる電圧の平均電圧とを比較する。前記平均電圧は、第1の積分回路によって、第1の抵抗7にかかる電圧を多数の周期にわたってその平均をとることによって得られる。第1の積分回路は、並行に接続された抵抗11およびコンデンサ12と、これらに直列に接続されたダイオード10を含む。
【0044】
図2に、本発明の一実施形態にかかるエネルギー受信器13の概略回路図を示す。エネルギー受信器13が備える2次インダクタ14は、フェライトコア(図示省略)の周りに巻き付けられた銅線コイルである。エネルギー送信器1からエネルギー受信器13へエネルギーを送信し、エネルギー送信器1とエネルギー受信器13との間で情報を双方向にやりとりするために、1次インダクタ2と2次インダクタ14は、コアを結合することにより、誘導的に結合され得る。負荷15が、ブリッジ整流器を介して2次インダクタ14に接続されている。このブリッジ整流器は、4つのダイオード16,17,18,19を備えている。1次インダクタ2によって2次インダクタ14に誘起される交流電流の正の交替区間(positive alternation)はダイオード16,17を通過し、前記交流電流の負の交替区間(negative alternation)はダイオード18,19を通過する。トランジスタ20は、前記交流電流の正の交替区間が流れるダイオードのうちダイオード18に接続されている。トランジスタ20は、交流電流が正の交替区間である間、エネルギー受信器13からエネルギー送信器1へ情報を送信するために、負荷15を2次インダクタ14から一時的に切り離すことができる。この情報は、エネルギー送信器1において、前記した第1の検出回路によって検出される。
【0045】
さらに、交流電流の正の交替区間が流れるダイオードのうちダイオード16は、第2の抵抗21に直列に接続されている。エネルギー受信器13には、第2の抵抗21にかかる電圧を監視するための第2の検出回路が設けられている。第2の抵抗21にかかる電圧から、2次インダクタ14に誘起される交流電流が正の交替区間の間に、2次インダクタ14に流れる電流の大きさが分かる。第2の検出回路において、第2の比較器22が、第2の抵抗21における電圧降下から分圧器23を介して得られる電圧と、第2の抵抗21にかかる電圧の平均電圧とを比較する。前記平均電圧は、第2の積分回路によって、第2の抵抗21にかかる電圧を多数の周期にわたってその平均をとることによって得られる。第2の積分回路は、並行に接続された抵抗25およびコンデンサ26と、これらに直列に接続されたダイオード24を含む。
【0046】
ここで、エネルギー送信器1とエネルギー受信器13との間での情報の送信について、図3を参照しながら説明する。図3において、最上段は、トランジスタ3,4を制御するための矩形波信号Aの波形を示し、第二段は、トランジスタ5,6を制御する矩形波信号Bの波形を示し、最下段は、1次電流によって2次インダクタ14に誘起される2次交流電流の波形を示す。前記1次電流は、矩形波信号A,BにしたがってHブリッジ3,4,5,6で生成される交流電圧によって、1次インダクタ2において交代的に生成される。前記矩形波信号は、例えば、マイクロプロセッサ(図示せず)によって生成することができる。
【0047】
エネルギー送信器1からエネルギー受信器13への情報を送信するために、交流電圧の正の交替区間の期間の最後にある第1の区間(図3において破線27と破線28との間の区間)が変化する。このために、交流電圧の正の交替区間を生成するための矩形波信号Aの電圧は、前記第1の区間の間、正またはゼロのいずれかとなる。これに対応して、交流電流の正の交替区間は、前記第1の区間の間、正またはゼロのいずれかとなる。後者は、正の交替区間の「短縮」をもたらす。1次電圧の第1の区間の電圧がゼロである場合、この第1の区間の間、対応する1次電流(図示せず)およびこれによる2次電流は、共に、急峻にゼロに降下する(図3の最下段において第1の区間内に点線29で示すとおり)。一方、1次電圧が正に保たれているときは、2次電流は第1の区間において上昇し続ける(図3の最下段において第1の区間内に実線で示すとおり)。第1の区間において、1次電圧が正であるか負であるかに応じて2次電流に生じるこのような相違は、エネルギー受信器13の第2の検出回路における第2の比較器22で検出することができる。また、このような相違を、例えばマイクロプロセッサにより、2値情報として表すことができる。エネルギー送信器1の1次インダクタ2にゼロ電圧が印加されることに対応して生じる、第1の区間における2次電流の電圧降下は、例えば、2進コードの「1」で表すことができる。一方、1次インダクタ2への正の電圧の印加に対応して上昇し続ける2次電流は、例えば「0」で表すことができる。
【0048】
エネルギー受信器13からエネルギー送信器1へ情報を送信するために、スイッチ20は、負の交替区間の最初における第2の区間(図3において破線30,31で示す)の間、オープンとされる。この結果、2次インダクタ14を流れる電流は、当該NAの残りの期間において減少し続ける(図3の最下段に実線32で示すとおり)。これにより、エネルギー送信器1の1次インダクタ2を流れる電流も同様に減少する。1次インダクタ2の電流におけるこのような相違は、エネルギー送信器1における第1の検出回路の第1の比較器8によって検出される。また、1次インダクタ2の電流の相違は、2値情報として表すことができる。例えば、電流の減少は2進コードの「1」で表すことができ、電流が減少しないことは「0」で表すことができる。
【0049】
前記第1の区間および第2の区間は、エネルギーの伝送にごくわずかな影響しか与えない程度に、十分に短く設定すればよい。このために、第1の区間および第2の区間の長さは、例えば、対応する交替区間の長さの10分の1に設定することができる。しかし、例えばシステムの耐干渉性を向上させるために第1の区間または第2の区間をより長く設定した場合は、平均して、直流電流を生じさせないようにするため、インダクタを流れる正の電流がインダクタを流れる負の電流におおむね等しくなるように、適切なコードを選択することが好ましい。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次インダクタを有するエネルギー送信器と、2次インダクタを有するエネルギー受信器との間でエネルギーと情報を誘電的に伝送する方法であって、
前記エネルギーは、交流電圧を前記1次インダクタへ印加して前記1次インダクタにおいて1次交流電流を生じさせ、これにより前記2次インダクタに2次交流電流を誘起させることにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ送信され、
交流電圧の周期内の第1の区間において当該交流電圧の振幅を異ならせることにより、エネルギー送信器からエネルギー受信器へ情報を伝達し、前記交流電圧の周期内で前記第1の区間と重複しない第2の区間において2次インダクタの電力吸収を異ならせることにより、エネルギー受信器からエネルギー送信器へ情報を伝達することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記交流電圧が段状の波形を有し、当該波形は、矩形状の正の交替区間と、矩形上の負電の交替区間とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の区間が前記2次交流電流の正の交替区間に設けられ、前記第2の区間が前記交流電圧の負の交替区間に設けられた、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の区間が、前記交流電圧の正の交替区間の全体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の区間が、前記2次交流電流の負の交替区間の全体である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の区間が、前記1次インダクタから前記2次インダクタへ情報を伝送するために、前記1次インダクタに印加される交流電圧の交替区間の最後に設けられている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の区間が、前記第1の区間の間、前記1次インダクタへゼロ電圧を印加することにより可変とされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の区間が、前記2次インダクタから前記1次インダクタへ情報を伝送するために、前記2次交流電流の交替区間の最初に設けられている、請求項2,3,6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の区間が、前記第2の区間の間、前記2次インダクタを負荷から切り離すことにより可変とされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の区間が、前記1次インダクタから前記2次インダクタへの伝送のために、前記交流電圧の正の交替区間の最後に設けられ、
前記第2の区間が、前記2次インダクタから前記1次インダクタへの伝送のために、前記2次交流電流の負の交替区間の最初に設けられている、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
エネルギー受信器へ誘導的にエネルギーを送信し、前記エネルギー受信器から情報を受信するために、エネルギー受信器の2次インダクタに誘導的に結合される1次インダクタを備えたエネルギー送信器であって、
前記1次インダクタに1次交流電流を生じさせて当該1次交流電流により前記2次インダクタに2次交流電流を誘起するために、前記1次インダクタへ交流電圧を印加する手段を備え、
前記1次インダクタへ交流電圧を印加する手段は、前記1次インダクタへ正電圧を印加する手段と、前記1次インダクタへ負電圧を印加する手段とを備え、
前記1次インダクタへ負電圧を印加する手段が、前記2次インダクタの電力吸収の変化を検出する手段を備えたことを特徴とするエネルギー送信器。
【請求項12】
前記1次インダクタへ交流電圧を印加する手段が、
前記1次インダクタへ正電圧を供給する2つのスイッチと、前記1次インダクタへ負電圧を供給する2つのスイッチとを有するHブリッジ回路を備えた、請求項11に記載のエネルギー送信器。
【請求項13】
エネルギー送信器からエネルギーと情報とを誘導的に受信するために、エネルギー送信器の1次インダクタに誘導的に結合される2次インダクタを備えたエネルギー受信器であって、
前記1次インダクタによって前記2次インダクタに誘起される2次交流電流を整流する整流器を備え、
前記2次交流電流の正の交替区間を通す前記整流器が、前記2次交流電流の変化を検出する手段を備えたことを特徴とするエネルギー受信器。
【請求項14】
前記2次交流電流の負の交替区間を通す前記整流器が、前記2次交流電流の負の交替区間の間、前記2次インダクタを通る電流を変化させる手段を備えた、請求項13に記載のエネルギー受信器。
【請求項15】
請求項11または12に記載のエネルギー送信器を少なくとも一つと、請求項13または14に記載のエネルギー受信器を少なくとも一つ備えたシステム。
【請求項16】
前記1次インダクタと前記2次インダクタとが、閉じた磁気ループを形成し得る金属コアで結合された、請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−35174(P2010−35174A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176977(P2009−176977)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(508212864)オーデーウー ステクフェアヴィントゥンクシステム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイト ゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】