説明

エネルギー使用量モニタリングシステム及び計測データ収集装置

【課題】一般の計測装置からのデータ収集を容易に行なえるようにすると共に、システムを安価に構成できるようにする。
【解決手段】1種以上のエネルギー使用量計測器10よりの計測データを収集する計測データ収集装置20と、該計測データ収集装置20と無線LAN48により接続されているパソコン50とで構成されたエネルギー使用量モニタリングシステムであって、前記計測データ収集装置20が、1種以上のエネルギー使用量計測器10よりの計測データを収集するリモート入出力装置22と、該リモート入出力装置22により収集した計測データを所定のフォーマットにて記憶する手段28と、該手段28に記憶した計測データの一部または全部を、前記無線LAN48経由で前記パソコン50に送信する手段30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー使用量モニタリングシステム及び計測データ収集装置に係り、特に、一般の計測装置からのデータ収集が容易で、システムを安価に構成可能なエネルギー使用量モニタリングシステム及び、そのための計測データ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力使用量などのエネルギー消費状況を監視するシステムとして、特許文献1には、電圧・電流の計測により算出される電力使用量を含むエネルギー消費量を演算する演算手段、この手段で演算されたエネルギー消費量データを整理し蓄積するデータベース及びそのデータベースを管理し、且つ、通信処理を行なうWebサーバーを搭載したOSと、イーサネット(登録商標)等のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)を通じてWebサーバーより転送されるエネルギー消費量データを閲覧可能なWebブラウザを搭載したパソコン等のコンピュータとから構成されるエネルギー消費監視用ホームネットワークシステムが記載されている。
【0003】
又、特許文献2には、複数のエネルギーを計測する計測手段の時系列の計測値を収集手段で収集し、各計測値の情報を蓄積し、加工変換した情報コンテンツをデジタル放送波、情報通信回線網のいずれにおいても報知できるようにし、報知手段で報知する画面のサイズを変更するサイズ変更手段を設け、デジタル放送波と情報コンテンツの時系列の情報を同時に表示するようにした情報システムが記載されている。
【0004】
更に、出願人は特許文献3で、入出力専用のメモリ共用化ICと、該ICに電源を供給するための電源コンバータと、通信ケーブルから信号を入出力するための入出力手段と、入力信号を処理して出力信号とするための入出力処理手段とを備えたリモート入出力装置を、中央制御盤及び現場操作盤に接続し、各リモート入出力装置を通信ケーブルで接続するようにした分離独立型リモートシステムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−13194号公報
【特許文献2】特開2006−60360号公報
【特許文献3】特開2006−74724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、計測/収集したデータが、Webサーバーを介し、LANを通して、Webブラウザを搭載したパソコンに伝送されるため、データを監視するためには、(1)LANが接続されていること、(2)Webサーバーで管理すること、(3)Webブラウザで表示することが必要であった。このため、LANケーブルの敷設、Webサーバーの設置など、工事費が発生すると共に、監視するデータはWebブラウザで表示されるため、収集データの解析を行うためには、データ変換ソフトなどで、データをカンマで区切って並べたCSV(Comma Separated Values)形式のファイルや、文字だけのTEXTファイルに変換する必要があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の技術では、計測したデータが、データ毎に無線伝送され、収集装置にて収集され、収集されたデータは、アンテナや情報通信回線により、サービス提供事業体を通して、使用者に配信されるため、(1)無線装置が付属された計測装置、及び、(2)情報通信回線を介して、情報を提供するサービス提供事業体が必要であった。
【0008】
なお、出願人は、特許文献3で、前記のような分散独立型リモートシステムを提案しているが、これをエネルギー使用量モニタリングシステムに結びつけることは考えられていなかった。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、一般の計測装置からもデータを容易に収集でき、システムを安価に構成可能なエネルギー使用量モニタリングシステム、及び、そのための計測データ収集装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集する計測データ収集装置と、該計測データ収集装置と無線LANにより接続されているパソコンとで構成されたエネルギー使用量モニタリングシステムであって、前記計測データ収集装置が、1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集するリモート入出力装置と、該リモート入出力装置により収集した計測データを所定のフォーマットにて記憶する手段と、該手段に記憶した計測データの一部または全部を、前記無線LAN経由で前記パソコンに送信する手段と、を有することにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
ここで、前記リモート入出力装置を、CPUレスリモート入出力装置とすることができる。
【0012】
又、前記計測データ収集装置を、可搬型ケースに収容することができる。
【0013】
又、前記所定のフォーマットは、データをカンマで区切って並べたCSV形式とすることができる。
【0014】
本発明は、又、1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集するリモート入出力装置と、該リモート入出力装置により収集した計測データを所定のフォーマットにて記憶する手段と、該手段に記憶した計測データの一部または全部を、無線LAN経由でパソコンに送信する手段と、を有することを特徴とする計測データ収集装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特許文献1のようなWebサーバーを用いず、無線機能を持った計測データ収集装置にてデータを収集し、無線で汎用のパソコンにデータを伝送するようにしたので、工事費の削減を図ることができる。又、一般の計測装置からも無線で計測データを収集することが可能となる。更に、計測データを無線で汎用のパソコンに伝送するようにしたので、特許文献1のような専用サーバを用いたり、特許文献2のようなサービス提供事業体を介することなく、使用者に情報を配信することが可能となり、システムを安価に構成できる。又、手持ちのパソコンにソフトウェアをインストールするだけでエネルギー帳票が作成可能となる。
【0016】
特に、リモート入出力装置として、出願人が特許文献3で提案したようなCPUレスリモートI/O装置を採用した場合は、装置全体をコンパクトに構成して、可搬ハンディ型を実現できる。
【0017】
又、計測データ収集装置を可搬型ケースに収容した場合には、計測データ収集装置を必要に応じて容易に移動することができ、計測データ収集装置の数を減らして、システムを安価に構成することができる。
【0018】
又、前記所定のフォーマットをCSV形式とした場合には、データ変換ソフトなどでデータをCSV形式のファイルやTEXTファイルに変換することなく、一般の表計算ソフトなどで表示、解析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示すブロック図
【図2】前記実施形態で用いられているリモート入出力装置の構成を示すブロック図
【図3】同じくリモート入出力装置の要部構成を示すブロック図
【図4】同じくリモート入出力装置の出力バッファの部分の構成を示す図
【図5】可搬型の計測データ収集装置の具体例を示す(A)蓋を外した正面図及び(B)側面から見た断面図
【図6】固定設置されるボックス型の計測データ収集装置の具体例を示す(A)正面図(B)側面図及び(C)内部機器の配置図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本実施形態は、図1に示す如く、例えば電力量計10A、電流計10B、温度計10C、流量計10Dなどの1種以上のエネルギー使用量計測器10よりの計測データを収集する計測データ収集装置20と、該計測データ収集装置20と無線LAN48により接続されているパソコン50とで形成されたエネルギー使用量モニタリングシステムであって、前記計測データ収集装置20が、前記エネルギー使用量計測器10よりの計測データを収集するリモート入出力装置(I/O)22と、該リモートI/O22により収集した計測データにリミッタ処理、平滑化処理、条件判断処理などを施すと共に、処理結果を所定のフォーマット、例えばCSV形式に変換する処理手段24と、該処理結果に対して、異常検知などの監視を行なう監視手段26と、前記処理結果を前記所定のフォーマットで記憶する記憶手段28と、該記憶手段28に記憶した計測データの一部又は全部をアンテナ32を介して前記無線LAN48経由でパソコン50に送信する送信手段30と、を備えている。図において、12は、エネルギー使用量計測器10と計測データ収集装置20を接続するケーブル、52は、例えばパソコン50に内蔵されたパソコン側のアンテナである。
【0022】
前記計測データ収集装置20によるデータ収集周期は、例えば処理手段24により、例えば1秒から1時間まで任意に変更することが出来る。
【0023】
前記リモートI/O22は、図2に詳細に示す如く、アドレスの設定のみでシーケンスやプログラムの機能を持たず、入出力のやり取りのみを行う入出力専用のIC22Aと、メモリ22Bと、前記IC22Aに電源を供給するための電源コンバータ22Cと、ケーブル12から信号を入出力するためのコネクタ22Dと、通信処理IC22Eと、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのAD/DAコンバータ22Fと、該AD/DAコンバータ22Fから入力されたデジタル化されたアナログ入力信号AI又は前記コネクタ22Dから直接入力されるデジタル入力信号DIを処理してデジタル出力信号DO又はアナログ出力信号AOとするための入出力(切換)処理装置(PLD)22Gと、アナログとデジタルでアドレスを切換えるためのアドレス設定装置(例えばDIPスイッチ)22Hと、クロック22Iと、例えば信号入力時に発光する動作表示LED22Jとを備えた、CPUを持たないCPUレスリモートI/Oとされている。
【0024】
前記アドレス設定装置22Hは、例えばアナログ出力(AO)1点、デジタル入力(DI)8点、デジタル出力(DO)8点の場合、次のようにアドレスを設定する。
【0025】
IO 0〜 7:DI領域 DIとして利用
IO 8〜15:DO領域 DOとして利用
IO 16〜23:DO領域 未使用
IO 24〜31:DO領域 AOとして使用(分解能約250のD/A 変換器組込み)
【0026】
又、例えばアナログ入力(AI)1点、DO8点、DI8点の場合は、次のようにアドレス設定する。
【0027】
IO 0〜 7:DO領域 DOとして利用
IO 8〜15:DI領域 DIとして利用
IO 16〜23:DI領域 未使用
IO 24〜31:DI領域 AIとして利用(分解能約250のA/D変換器組込み)
【0028】
入出力部のブロックを図3に示す。図に示す如く、IC22Aの32点のIO信号の内、IO0〜IO23は、全て、切替用の入出力処理装置(PLD)22Gと接続され、該PLD22G内のプログラムロジックにより、入力8点/出力8点固定とされている。一方、IO24〜31は、拡張コネクタ22Kと接続され、A/D又はD/A用として使用される。図において、22Lは出力バッファ、22Mは入力バッファである。
【0029】
前記出力バッファ22Lの構成を図4に示す。図において、22L1はMOS−FET、22L2は有電圧/無電圧切換用のジャンパ線であり、AC/DC無電圧出力の時はジャンパ線22L2を切り離し、DC24V有電圧出力の時はジャンパ線22L2を接続する。
【0030】
前記コネクタ22Dから入力された信号のうち、アナログ入力信号AIは、AD/DAコンバータ22Fでデジタル信号に変換され、入出力処理装置22Gで信号処理された後、IC22Aを通してメモリ22Bに書き込まれる。一方、アナログ出力信号AOは、AD/DAコンバータ22Fを通してアナログ化され、コネクタ22Dよりアナログ出力される。
【0031】
このように、I/O専用IC22Aを採用し、入出力処理装置22Gのデジタル入出力点数を例えば1チップの上限である32点以下に抑え、入出力処理、各種設定に専用デバイスチップを用いることで、CPUを用いることなく、一枚のカードでリモートI/O22を実現している。又、アナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理することで、アドレスの切換えにより、アナログ信号とデジタル信号を、IC22Aのデジタル入出力信号で混在処理することが可能となり、アナログ処理用のユニットを追加する必要が無く、1台の装置でデジタル信号とアナログ信号を処理できる。
【0032】
本実施形態においては、コネクタ22Dを用いているので、故障したリモートI/O22の脱着が容易である。なお、コネクタ22Dの代わりに端子台を用いることも可能である。又、LED22Jの代わりにランプを用いることも可能である。
【0033】
前記計測データ収集装置20は、図5に示す具体例の如く、可搬型ケース34に収容して短期的にデータ収集を行う用途に適したハンディ型とすることができる。図において、36は、図1に示したケーブル12が接続される入力端子、CNは、図2に示したコネクタ22D、38は、タッチパネル式ディスプレイを備えた、図1の処理手段24、監視手段26及び記憶手段28の機能を有する情報処理端末である。データ収集周期の変更、収集データに施すリミッタ処理、平滑化処理、条件判断処理、及び、異常検知などの監視は、この情報処理端末38により行う。
【0034】
又、前記計測データ収集装置20は、図6に示す他の具体例の如く、壁掛けボックス40に収納して壁掛け型とすることができる。図において、42は端子台、44は直流(DC)電源、Wはコンセント、CPは電源スイッチの機能を持つサーキットプロテクタ、LFは電源のノイズ除去用ラインフィルタである。
【0035】
ここで、入力カードとして用いるリモートI/O22は、入力の種類(デジタル/アナログ)や点数に合わせて、適宜(図では2枚)設けられている。なお、リモートI/O22が2枚以上になった場合には、ケース34又はボックス40の外形を大きくするか、リモートI/O22のみ別ボックスに収納することができる。
【0036】
前記実施形態においては、リモートI/O22として、出願人が特許文献3で提案したようなCPUレスリモートI/O装置を採用したので、装置全体をコンパクトに構成して、可搬ハンディ型を実現できる。なお、リモートI/O装置の種類はこれに限定されない。
【0037】
又、前記実施形態においては、データ収集周期を、例えば1秒から1時間まで任意に変更可能としたので、現場の状況に合わせた適切なデータ収集周期を設定することができる。
【0038】
又、前記実施形態においては、計測データ収集装置20に処理手段24を設けて、リミッタ処理、平滑化処理、条件判断処理などを施すようにしたので、収集した信号の種類に合わせた適切な処理が可能である。更に、監視手段26を設けたので、異常検知などの監視も可能である。
【0039】
なお、データ収集周期を固定したり、リミッタ処理、平滑化処理、条件判断処理などの処理機能や監視機能を省略することも可能である。
【0040】
又、電力量計などの計測器が無い場合は、クランプメータを電力ケーブルに挟んで電流を監視するようにしても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…エネルギー使用量計測器
20…計測データ収集装置
22…リモート入出力装置(I/O)
24…処理手段
26…監視手段
28…記憶手段
30…送信手段
32、52…アンテナ
38…情報処理端末
48…無線LAN
50…パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集する計測データ収集装置と、該計測データ収集装置と無線LANにより接続されているパソコンとで構成されたエネルギー使用量モニタリングシステムであって、
前記計測データ収集装置が、
1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集するリモート入出力装置と、
該リモート入出力装置により収集した計測データを所定のフォーマットにて記憶する手段と、
該手段に記憶した計測データの一部または全部を、前記無線LAN経由で前記パソコンに送信する手段と、
を有することを特徴とするエネルギー使用量モニタリングシステム。
【請求項2】
前記リモート入出力装置が、CPUレスリモート入出力装置であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー使用量モニタリングシステム。
【請求項3】
前記計測データ収集装置が、可搬型ケースに収容されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー使用量モニタリングシステム。
【請求項4】
前記所定のフォーマットが、データをカンマで区切って並べたCSV形式であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエネルギー使用量モニタリングシステム。
【請求項5】
1種以上のエネルギー使用量計測器よりの計測データを収集するリモート入出力装置と、
該リモート入出力装置により収集した計測データを所定のフォーマットにて記憶する手段と、
該手段に記憶した計測データの一部または全部を、無線LAN経由でパソコンに送信する手段と、
を有することを特徴とする計測データ収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−42270(P2012−42270A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182226(P2010−182226)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】