説明

エネルギー線硬化型水系樹脂組成物及びそれを用いた塗料

【課題】密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性に優れた水系ウレタン樹脂と(メタ)アクリレート化合物を含有するエネルギー線硬化型水系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】上記の課題を解決するために、水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)とを含有するエネルギー線硬化型水系樹脂組成物であって、前記水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)との配合比率(A/B)が重量固形分比率で100/30〜3/100であるエネルギー線硬化型水系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプラスチック、金属材料、木工用等に対する密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性に優れたコーティング用途に適したエネルギー線硬化型水系樹脂組成物及びこれを用いた塗料に関する。また、無公害で安全性に優れた水系樹脂組成物及びこれを用いた塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床や壁に代表される建材用途や、携帯電話、各種構造物、成型物等は、基材を保護し、美観を保つために、塗料でコーティングするのが一般的である。
【0003】
塗料としては、従来は合成樹脂を有機溶剤で溶解させた溶剤タイプが一般的であったが、作業環境の改善や、火気に対する危険防止等の点から、エネルギー線照射によって硬化可能な樹脂を用いたエネルギー線硬化型の塗料が種々開発され、化粧板やプラスチック用コーティング、木工用塗料、金属用塗料、紙コーティング、レジスト用材料、接着剤、電子機器の部品等の幅広い分野で実用化されている。
【0004】
かかるコーティング用途ではプラスチック、金属材料、木工用等に対する密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性が要求され、塩素化されたポリヒドロキシ化合物とカルボキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する不飽和モノヒドロキシ化合物を塩基性化合物で中和し水に分散させて得られた水性ポリウレタン(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする密着性に優れた光硬化型水性樹脂組成物(特許文献1)や、分子中にメタクリロイル基とアクリロイル基を導入したエネルギー線硬化型水性ポリウレタン組成物(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開平6−184269号公報
【特許文献2】特開平10−251360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の水性ポリウレタン組成物では、上記のように密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性を兼ね備えた性能は得られず、不十分でありより上記性能を向上させることが望まれているのが実状である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性に優れた水系ウレタン樹脂と(メタ)アクリレート化合物を含有するエネルギー線硬化型水系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)とを含有するエネルギー線硬化型水系樹脂組成物であって、前記水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)との配合比率(A/B)が重量固形分比率で100/30〜3/100であることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記(メタ)アクリレート系化合物(B)が分子中に2個以上のエネルギー線硬化性不飽和二重結合を含有していることが好ましい。
【0009】
また、光重合開始剤をさらに含有するものとすることができる。
【0010】
本発明の塗料は、上記いずれかのエネルギー線硬化型水系樹脂組成物を用いてなるものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物によれば、密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性に優れたエネルギー線硬化型水系樹脂組成物が得られる。従って、本発明の樹脂組成物を用いた塗料によれば、これらの性能を具備した塗膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物は、上述の通り水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)とを含有するエネルギー線硬化型樹水系樹脂組成物であって、前記水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)の配合比率(A/B)が重量固形分比率で100/30〜3/100であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の水系ウレタン樹脂の製造方法としては、2個以上の活性水素原子含有化合物と有機ポリイソシアネートとの反応により得られるNCO基含有ウレタンプレポリマーを、水中に乳化後、多価アミン化合物あるいは水との反応により高分子量化して得られる場合、或いは2個以上の活性水素原子含有化合物と有機ポリイソシアネートとの反応により得られるOH基末端ウレタンポリマーを水中に乳化する方法が挙げられる。
【0014】
[NCO基含有ウレタンプレポリマーの乳化方法]
(1)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにNCO基と反応性の活性水素原子及び塩形成基を有する化合物から合成されるNCO基含有ウレタンプレポリマーに塩形成剤を添加し、水中に乳化後、多価アミン化合物や水で鎖伸長して得られるアニオン性、またはカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体。
【0015】
(2)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにモノアルコールまたは多価アルコールのエチレンオキサイド単独もしくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物から合成されるNCO基含有ウレタンプレポリマーに疎水性化合物を添加し、水中に乳化後、多価アミン化合物や水で鎖伸長して得られるノニオン性ポリウレタン樹脂水分散体。
【0016】
(3)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネートから合成されるNCO基含有ウレタンプレポリマーをアニオン、カチオン、ノニオン性等の界面活性剤と疎水性化合物を添加し、水中に乳化後、多価アミン化合物や水で鎖伸長して得られるポリウレタン樹脂水分散体。
【0017】
(4)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにNCO基と反応性の活性水素原子及び塩形成基を有する化合物から合成されるNCO基含有ウレタンプレポリマーに塩形成剤とアニオン、カチオン、ノニオン性等の界面活性剤を添加し、水中に乳化後、多価アミン化合物や水で鎖伸長して得られるアニオン性、またはカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体が挙げられる。
【0018】
[OH基末端ウレタンポリマーの乳化方法]
(1)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにNCO基と反応性の活性水素原子及び塩形成基を有する化合物から合成されるOH基末端ウレタンポリマーに塩形成剤と疎水性化合物を添加し、水中に乳化して得られるアニオン性、またはカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体。
【0019】
(2)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにモノアルコールまたは多価アルコールのエチレンオキサイド単独もしくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物から合成されるOH基末端ウレタンポリマーに疎水性化合物を添加し、水中に乳化して得られるノニオン性ポリウレタン樹脂水分散体。
【0020】
(3)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネートから合成されるOH基末端ウレタンポリマーにアニオン、カチオン、ノニオン性等の界面活性剤と疎水性化合物を添加し、水中に乳化して得られるポリウレタン樹脂水分散体。
【0021】
(4)2個以上の活性水素原子含有化合物、有機ポリイソシアネート、ならびにNCO基と反応性の活性水素原子及び塩形成基を有する化合物から合成されるOH基末端ウレタンポリマーに塩形成剤とアニオン、カチオン、ノニオン性等の界面活性剤と疎水性化合物を添加し、水中に乳化して得られるアニオン性、またはカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体が挙げられる。
【0022】
本発明に於ける上記2個以上の活性水素原子を有する化合物は、ウレタン工業の分野において周知のものを使用することが出来る。
【0023】
この化合物は、分子末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基、アミノ基またはメルカプト基を有するもので、一般に公知のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリシロキサン、フッ素系、植物油系等を例示することが出来、好ましいのは、分子末端に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物である。なお、これら活性水素基を2個以上有する化合物の分子量は、50〜5,000の範囲であることが好ましい。
【0024】
具体的には、2個以上の活性水素原子を有する基を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、それらのオキシアルキレン誘導体又はそれらの多価アルコール及びオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルからのエステル化物、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ヒマシ油ポリオール、大豆油ポリオール、フッ素ポリオール、シリコンポリオール等のポリオール化合物やその変性体が挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。これら2個以上の活性水素原子を有する基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明に於ける有機ポリイソシアネート化合物は、ウレタン工業会の分野において周知であり、任意のものを使用し得る。有機ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)ポリメリックMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加MDI(H12MDI)、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナフタレンジイソシアネート、ビューレット化ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート化ヘキサメチレンジイソシアネート等の各種の芳香族、脂肪族、脂環族等のイソシアネート類を単独又は混合して使用することが出来る。
【0026】
本発明の水系ポリウレタン樹脂でNCO基を有するウレタンプレポリマーを乳化分散する場合は、多価アミン化合物あるいは水との反応により高分子量化するが、多価アミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン化合物、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン化合物、ピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン化合物、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドのようなポリヒドラジド化合物等が挙げられる。これらのポリアミン化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリマー化を大きく阻害しない程度に反応停止剤としてジブチルアミンなどの1価のアミンやメチルエチルケトオキシムのような反応停止剤を使用してもよい。
【0027】
本発明に使用されるNCO基と反応性の活性水素原子及び塩形成基を有する化合物及びそれに対応する塩形成剤としては、1)塩形成性のカルボン酸またはスルホン酸基を有する化合物及び対応する塩形成剤、2)酸で中和可能な第4級または第3級基になり得る基を有する化合物及び対応する塩形成剤が挙げられる。
【0028】
上記1)の場合の塩形成性のカルボン酸またはスルホン酸基を有する化合物としては、例えばグリコール酸、リンゴ酸、グリシン、アミノ安息香酸、アラニン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のヒドロキシ酸、アミノカルボン酸、多価ヒドロキシ酸類やアミノエチルスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸等のアミノスルホン酸、ヒドロキシスルホン酸類等が挙げられる。また、それに対応する塩形成剤としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の1価の金属水酸化物やアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン化合物等が挙げられる。
【0029】
上記2)の酸で中和可能な第4級または第3級基になり得る基を有する化合物としては、例えばN,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、それらに対応する塩形成剤として、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、メチルクロライド、ベンジルクロライド等の有機酸類、ギ酸、塩酸、燐酸、硝酸等の無機酸類、反応性ハロゲン原子を有する化合物が挙げられる。
【0030】
本発明に使用されるモノアルコール又は多価アルコールのエチレンオキサイド単独もしくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物におけるモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ラウリルアルコール等が、多価アルコールとしては前記多価アルコール等がそれぞれ挙げられる。
【0031】
本発明の水系ウレタン樹脂の製造に使用されるアニオン、カチオン、ノニオン、両性等の乳化用界面活性剤として通常、界面活性剤の分野で使用されているもの全てが単独または併用が挙げられる。
【0032】
上記エネルギー線硬化水系樹脂組成物において、水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)との配合比率(A/B)は重量固形分比率で100/30〜3/100の範囲で用いられる。
【0033】
(メタ)アクリレート系化合物(B)の配合比率が水系ウレタン樹脂(A)対して30重量%未満では、架橋性が不十分となり、耐薬品性、耐汚染性が不十分となる。また、水系ウレタン樹脂(A)が水系樹脂組成物の3重量%未満になると密着性、耐屈曲性が不十分となる。
【0034】
(メタ)アクリレート化合物としてモノマー類、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その中でも特にモノマー類が望ましい。更に分子中に2個以上のエネルギー線硬化性の不飽和二重結合を含有するモノマー類が好ましい。モノマー類としては、公知慣用のものが使用可能であるが、中でも代表的なものとして、アクリロイルモルホリン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0035】
この中でも特にペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリレート化合物の添加方法は、水系ウレタン樹脂合成時に前記(メタ)アクリレート化合物を添加した後に、ウレタン樹脂と共に水に乳化分散してもよいし、前記(メタ)アクリレート化合物にアニオン、カチオン、ノニオン、両性等の乳化用界面活性剤を添加して乳化、分散して得られた乳化物を前記ウレタン樹脂に添加してもよい。
【0037】
本発明のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物には、必要に応じて光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の種類は特に限定されず、公知のものが使用可能であるが、代表的な例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0038】
また、光重合開始剤を使用する場合のその添加量は、(メタ)アクリレート化合物に対し、1〜10重量%程度であり、約3〜5重量%が好ましい。
【0039】
光重合開始剤の添加方法は、水溶性タイプはそのまま添加してもよいが、非水溶性タイプは、光重合開始剤にアニオン、カチオン、ノニオン、両性等の乳化用界面活性剤を添加後、水を添加して乳化して得られた乳化物を添加してもよい。また、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩等の保護コロイド剤を併用してもよい。
【0040】
さらに、本発明のエネルギー線硬化水系樹脂組成物には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤等を添加することができる。
【0041】
なお、本発明のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物を硬化させるエネルギー線源は特に限定されないが、例としては、高圧水銀灯、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、配合比率及び「%」は、特に断らないかぎり、全て重量基準であるものとする。
【0043】
[合成例1](A−1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにポリカーボネートポリオール(日本ポリウレタン工業(株)製、ニッポラン981、活性水素原子数2)234重量部、トリメチロールプロパン11.7重量部、ジメチロールプロピオン酸23.4重量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート187重量部、メチルエチルケトン500重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量3.1%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を45℃まで冷却し、トリエチルアミンを14.2重量部加え中和後、水970重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用し乳化分散させた。その後、エチレンジアンミンを8.2重量部添加してアミン伸長した。これを減圧、50℃下、脱溶剤を行い、不揮発分約32%のポリウレタン水分散体を得た。
【0044】
[合成例2](A−2)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにポリエステルポリオール(日立化成ポリマー(株)製、テスラック2508−70、活性水素原子数2)437重量部、トリメチロールプロパン7.6重量部、ジメチロールプロピオン酸55重量部、イソホロンジイソシアネート158重量部、メチルエチルケトン284重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量0.8%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を45℃まで冷却し、トリエチルアミンを24.8重量部加え中和後、水1118重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用し乳化分散させた。これを減圧、50℃下、脱溶剤を行い、不揮発分35%のポリウレタン水分散体を得た。
【0045】
[アクリレート化合物の乳化物](B−1)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA)100gにポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217E)の10%水溶液を111g、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製、ハイテノールNF−13)6gを添加し、水を徐々に添加しながらミキサーで乳化して乳化物を得た。
【0046】
[アクリレート化合物の乳化方法](B−2)
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(第一工業製薬(株)製、ニューフロンティアPET−3)100gにポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA217E)の10%水溶液を111g、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製、ハイテノールNF−13)6gを添加し、水を徐々に添加しながらミキサーで乳化して乳化物を得た。
【0047】
[光重合開始剤の乳化物]
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、イルガキュア500)100gにポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製、ハイテノールNF−13)を20g添加し、水100gを攪拌しながら加え、乳化して乳化物を得た。
【0048】
[実施例1〜8及び比較例1〜3]
上記合成例で得られた水系ウレタン樹脂、アクリレート化合物の乳化物、光重合開始剤の乳化物を配合して表1に記載の実施例、比較例の水系樹脂組成物を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜8は水分散性樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)との配合比率が重量固形分比率で100/30〜3/100の範囲であり、比較例1〜3はそれ以外の範囲である。
【0051】
得られた水系樹脂組成物について、以下の要領で、密着性、耐アルカリ性、耐汚染性、耐屈曲性を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
・硬化条件
各樹脂組成物を各種基板に乾燥膜厚が30μmになるようにスピンコーターで塗布し、100℃のオーブンで10分間乾燥させたものに、80W/cmの高圧水銀灯を用いて積算照度170mJ/cmの紫外線を照射した。
【0053】
・基材の種類
基材の種類としてはコロナ放電処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリカーボネートフィルム(PC)、亜鉛メッキ鋼鈑を使用した。
【0054】
・密着性
上記条件で各種基材上に硬化させた塗膜を碁盤目セロテープ剥離試験で密着性を評価した。(〇;90/100以上 △;50〜90/100、×;50/100未満)
・耐アルカリ性
上記条件で各種基材上に硬化させた塗膜に5%水酸化ナトリウム水溶液を1滴落とし、10分間静置する。ティッシュで拭き取り、フィルムに変化がないか目視にて確認する。(◎;全く変化なし、○;殆ど変化なし、△;多少変化あり)
・耐汚染性
上記条件で各種基材上に硬化させた塗膜を油性の赤、黒、青のマーキングペンで約20mmの線で線を描き、18時間静置する。エタノールで拭き取り、塗膜が汚染されているか目視にて観察する。(◎;全く汚染なし、〇;殆ど汚染なし、△;多少変色あり)
・耐屈曲性
上記条件で各種基材上に硬化させた試験片を180°折り曲げた後の塗膜外観を観察した。(○;変化なし、×;割れ発生)
【0055】
【表2】

【0056】
表2から分かるように、実施例1〜8は、比較例1〜3に比べて密着性、耐薬品性、耐汚染性、耐屈曲性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂組成物は、塗料として各種建材、構造物、成型物等のコーティングに用いられるほか、紙コーティング、レジスト用材料、接着剤、電子機器の部品等にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)とを含有するエネルギー線硬化型水系樹脂組成物であって、前記水系ウレタン樹脂(A)と(メタ)アクリレート系化合物(B)との配合比率(A/B)が重量固形分比率で100/30〜3/100であることを特徴とするエネルギー線硬化型水系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート系化合物(B)が分子中に2個以上のエネルギー線硬化性不飽和二重結合を含有していることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物。
【請求項3】
光重合開始剤をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー線硬化型水系樹脂組成物を用いてなる塗料。

【公開番号】特開2008−248014(P2008−248014A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88976(P2007−88976)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】