説明

エピナスチンを含む眼科用経皮吸収型製剤

本発明はアレルギー性眼疾患を予防又は治療するための、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含む経皮吸収型製剤を提供する。加えて、本発明はエピナスチン又はその塩を含む経皮吸収型製剤を眼瞼の皮膚表面を含む皮膚表面に適用することを含む、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための方法であって、それによって治療有効量のエピナスチン又はその塩を全身血流ではなく眼瞼の皮膚を通して製剤から前眼部へと移行させる、方法を提供する。本製剤は点眼剤等の従来の製剤に比して、1回の適用によって長時間にわたる薬理効果を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための経皮吸収型製剤であって、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含む製剤に関する。加えて、本発明は治療有効量のエピナスチン又はその塩を前眼部へ経皮的に送達するための方法とともにアレルギー性眼疾患を予防又は治療するための方法に関する。特に、これらの方法はエピナスチン又はその塩を含む経皮吸収型製剤を眼瞼の皮膚表面を含む皮膚表面に適用することを含み、それによって治療有効量のエピナスチン又はその塩を製剤から前眼部へと移行させる。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,313,931号は、エピナスチン(3−アミノ−9,11b−ジヒドロ−1H−ジベンズ[c,f]イミダゾ[1,5−a]アゼピン)をアレルギー性眼疾患を治療するための治療薬として開示している。
従来、眼科用局所製剤処方の最も一般的な剤型は、点眼剤である。実際、塩酸エピナスチンはアレルギー性結膜炎を治療するために点眼剤の形で使用される。しかしながら点眼剤は眼表面の涙液のターンオーバーのために、低い局所バイオアベイラビリティを示し、従って点眼剤は眼への薬理効果を持続するためには頻繁に投与しなければならない。例えば、上市されている塩酸エピナスチンを含む点眼剤は、6から8時間毎に(すなわち1日2回またはそれ以上)投与しなければならない。加えて、多くの点眼剤は、保存剤を含んでいる。そのような点眼剤を長期間にわたって使用した結果、その保存剤は刺激等の有害な副作用を引き起こしうる。
上記を考慮し、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性眼疾患の治療のための眼科用製剤であって、点眼剤等の従来の製剤に比して、治療有効量の薬物を持続的に結膜等の前眼部に送達でき、長時間にわたって前眼部に薬理効果を発揮でき、かつ有害な副作用の危険性を減らすことができる製剤の開発が望まれてきた。
そのような眼科用製剤の1つがWO2004/064817で報告された。WO2004/064817では、支持体及びその支持体上に形成された眼疾患治療薬を含む膏体層より成り、その膏体層に含まれる治療薬を全身血流ではなく皮膚を通して眼の局所組織へと移行するために、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に適用される、経皮吸収型製剤が開示されている。この製剤は、治療薬を結膜、涙液組織及び角膜等の眼の外部組織に皮膚を通して比較的短時間で移行でき、かつそれらの組織へ持続的に薬理効果を発揮できる。眼疾患治療薬としてWO2004/064817でフマル酸ケトチフェンが開示されている。
しかしながら、WO2004/064817には、エピナスチンの経皮吸収型製剤としての使用は開示されていない。加えて、米国特許第4,313,931号には経皮吸収型製剤はエピナスチンの剤型としては開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゆえに、本発明の目的はアレルギー性眼疾患を予防又は治療するための製剤を提供することであり、この製剤は、点眼剤等の従来の製剤に比して、治療有効量のエピナスチン又はその塩を全身血流ではなく眼瞼の皮膚を通して結膜等の前眼部へ持続的に送達でき、長期間にわたって前眼部に薬理効果を発揮でき、かつ有害な副作用の危険性を減らすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者達は鋭意研究を行った結果、治療有効量のエピナスチン又はその塩が、エピナスチン又はその塩の含量及び/又は皮膚透過性、並びに/或いは眼瞼の表面を含む皮膚表面への適用の期間を制御することにより、持続的に前眼部中に維持できることを見出した。本発明者達はこれらの知見に基づいて本発明を完成した。従って、本発明は以下を提供する。
[1]エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を哺乳動物被験体の前眼部へ送達する方法であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、方法。
[2]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも8時間被験体の前眼部中に維持される、[1]に記載の方法。
[3]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、[1]に記載の方法。
[4]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、[1]に記載の方法。
[5]エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する方法であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、方法。
[6]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも8時間被験体の前眼部中に維持される、[5]に記載の方法。
[7]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、[5]に記載の方法。
[8]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、[5]に記載の方法。
[9]経皮吸収型製剤が貼付剤である、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]貼付剤が0.5〜24時間皮膚表面に適用される、[9]に記載の方法。
[11]エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する際に使用するためのエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、製剤。
[12]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、[11]に記載の製剤。
[13]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、[11]に記載の製剤。
[14]経皮吸収型製剤が貼付剤である、[11]〜[13]のいずれかに記載の製剤。
[15]0.5〜24時間皮膚表面に適用される、[14]に記載の製剤。
[16]哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する際に使用するためのエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型貼付剤であって、皮膚表面に1日あたり4〜8時間適用される貼付剤。
[17]エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患の予防又は治療用経皮吸収型製剤の製造のためのエピナスチン又は医薬上許容可能なその塩の用途であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、使用。
[18]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、[17]に記載の使用。
[19]治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、[17]に記載の使用。
[20]経皮吸収型製剤が貼付剤である、[17]〜[19]のいずれかに記載の使用。
[21]貼付剤が0.5〜24時間皮膚表面に適用される、[20]に記載の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本明細書で使用する場合、用語「眼瞼の表面を含む皮膚表面」とは、上眼瞼及び下眼瞼の前皮膚表面並びにその近傍の皮膚表面のことをいう。
【0006】
本明細書で使用する場合、用語「前眼部」とは、眼瞼、結膜、角膜、虹彩、毛様体及び涙液組織等のことをいう。
【0007】
アレルギー性疾患の例には、アレルギー性結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎、アトピー性皮膚炎に合併するアトピー性角結膜炎及びアトピー性眼瞼炎が含まれる。
【0008】
エピナスチン及びその塩は常法(例えば、米国特許第4,313,931号で開示される方法であり、この文献は、参照により本明細書中に組み込まれる)で調製できる。
【0009】
エピナスチンの塩は、医薬上許容される塩であり得、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の酸付加塩が含まれる。本発明においては塩酸エピナスチンの使用が好ましい。
【0010】
本経皮吸収製剤は、治療有効量のエピナスチン又はその塩を眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することでその送達を可能にする剤型である。そのような剤型の例には貼付剤、軟膏剤、ゲル剤及びクリーム剤等の皮膚外用剤が含まれ、本発明の用途には貼付剤、軟膏剤及びゲル剤が好ましい剤型である。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「貼付剤」とは、パップ剤、パッチ剤、テープ剤、プラスター剤等の皮膚表面に直接適用される製剤をいう。
【0012】
本経皮吸収型製剤には、所望により、医薬品の製造に一般的に用いられる任意の成分を添加できる。そのような成分の例には、貼付剤の基剤マトリックス、軟膏基剤、ゲル基剤、溶媒、油剤、架橋剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、pH調整剤、安定化剤、抗酸化剤、保存剤、紫外線吸収剤及び湿潤剤が含まれる。加えて、皮膚を通して前眼部に送達されるエピナスチン又はその塩の皮膚透過性を調整するために、所望により、経皮吸収促進剤を添加できる。
【0013】
貼付剤の基剤マトリックスの例には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びゴム系粘着剤が含まれ、これらのうちの任意の1つが使用に適する。マトリックスは、テープ剤、パッチ剤、パップ剤及びプラスター剤等の皮膚表面に適用される製剤に一般的に用いられている支持体の片面か、又は本発明に有害な影響を有しない任意の材料より成る支持体の片面に保持できる。
【0014】
アクリル系粘着剤の例には、アクリル酸−アクリル酸オクチルエステルコポリマー、アクリル酸−酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル−ビニルピロリドンコポリマー及びメタクリル酸−アクリル酸ブチルコポリマーが含まれる。
【0015】
シリコーン系粘着剤の例には、ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー及びアクリル酸−ジメチルシロキサンコポリマーが含まれる。
【0016】
ゴム系粘着剤の例には、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン及びエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)に、所望により粘着付与樹脂、軟化剤等を添加したものが含まれる。
【0017】
軟膏基剤の例には、ワセリン(登録商標)、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、植物油、豚油、ろう類及び単軟膏等の油脂性基剤;並びに親水軟膏(バニシングクリーム)、親水ワセリン(登録商標)、吸水軟膏、加水ラノリン、精製ラノリン及び親水プラスチベース(コールドクリーム)等の乳剤性基剤が含まれる。
【0018】
ゲル基剤の例には、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ゼラチン、アラビアガム、トラガント、グァーガム、キサンタンガム、寒天、キトサン及びカラギーナン等の増粘ポリマー;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及びオレイン酸プロピレングリコール等の脂肪酸エステル類;乳酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール及びオレイルアルコール等の脂肪族アルコール類;並びにスクワレン及びスクワラン等の炭化水素類等が含まれる。
【0019】
溶媒の例には、精製水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、低級アルコール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ピロリドン、酢酸、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン及びキシレンが含まれる。
【0020】
油剤の例には、揮発性又は不揮発性の油剤、溶剤及び樹脂が含まれる。油剤は一般的に皮膚外用剤に用いられ、常温で液体、ペースト又は固体状であり得る。特に、例えばセチルアルコール及びイソステアリルアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸及びオレイン酸等の脂肪酸;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール等の多価アルコール;並びにミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル及びモノステアリン酸グリセリル等のエステル類が挙げられ得る。
【0021】
架橋剤の例には、ポリイソシアネート化合物、有機過酸化物、有機金属塩、アルコキシド及び金属キレート化合物が含まれる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物の例には、m−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソフォロンジイソシアネートが含まれる。
【0023】
有機過酸化物の例には、過酸化ベンゾイル、過酸化スクシニル、過炭酸、過酸化水素、過酸化ジアルキル(例えば、過酸化ジ(tert−ブチル))及び過酸化ジアシルが含まれる。
【0024】
有機金属塩の例には、サリチル酸鉛、サリチル酸銅、サリチル酸ニッケル、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、安息香酸マンガン、クエン酸マンガン、酢酸鉄、ステアリン酸亜鉛、乳酸第一鉄、サリチル酸アンモニウム鉛、炭酸アンモニウム亜鉛及び安息香酸アンモニウム亜鉛が含まれる。
【0025】
アルコキシドの例には、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド及びカリウムtert−ブトキシドが含まれる。
【0026】
金属キレート化合物の例には、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム無水物並びにクエン酸、ポリリン酸、メタリン酸、グルコン酸、リン酸、アスコルビン酸及びコハク酸のナトリウム塩又はカリウム塩が含まれる。
【0027】
界面活性剤の例には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が含まれる。
【0028】
アニオン性界面活性剤の例には、脂肪酸塩、硫酸アルキル、硫酸ポリオキシエチレンアルキル、アルキルスルホカルボン酸塩及びアルキルエーテルカルボン酸塩が含まれる。
【0029】
カチオン性界面活性剤の例には、アミン塩及び第4級アンモニウム塩が含まれる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤の例には、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。
【0031】
両性界面活性剤の例には、アルキルベタイン、ジメチルアルキルグリシン及びレシチンが含まれる。
【0032】
粘剤及び樹脂の例には、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール−ビニルピロリドンコポリマー、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化グァーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、キトサン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グァーガム、アラビアガム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸塩、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーンポリマー、合成ラテックス、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸及びフッ素化シリコーン樹脂が含まれる。
【0033】
pH調整剤の例には、アンモニア水、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、コハク酸、酒石酸、L−酒石酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、マレイン酸、リン酸、リン酸水素ナトリウム、dl−リンゴ酸、アジピン酸、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メグルミン、モノエタノールアミン、硫酸及び硫酸アルミニウムカリウムが含まれる。
【0034】
安定化剤の例には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、エリトルビン酸、L−システイン、チオグリセリン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアイアレチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム無水物、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸及びコハク酸が含まれる。
【0035】
湿潤剤の例には、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール及び還元麦芽糖水飴が含まれる。
【0036】
抗酸化剤の例には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、エリトルビン酸、L−システイン、チオグリセリン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、dl−α−トコフェロール及びノルジヒドログアイアレチン酸が含まれる。
【0037】
保存剤の例には、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、チメロサル、デヒドロ酢酸及びソルビン酸が含まれる。
【0038】
紫外線吸収剤の例には、メトキシケイヒ酸オクチル、ジ−パラ−メトキシケイヒ酸グリセリルモノオクタノエート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、パラ−アミノ安息香酸、パラ−アミノ安息香酸グリセロールエステル、N,N−ジプロポキシ−パラ−アミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジエトキシ−パラ−アミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチル−パラ−アミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチル−パラ−アミノ安息香酸ブチルエステル、N−アセチルアントラニル酸ホモメンチル、サリチル酸アミル、サリチル酸メンチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ベンジル及びサリチル酸p−イソプロピルフェニルが含まれる。
【0039】
経皮吸収促進剤の例には、脂肪族アルコール、脂肪酸及びその塩、脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリド、多価アルコール中鎖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、乳酸アルキルエステル、テルペン類及び有機アミンが含まれる。これらの経皮吸収促進剤は、エピナスチン又はその塩の皮膚透過性を調整するために、単独で、又はそのうちの2種類又はそれ以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
脂肪族アルコールの例には、エタノール、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び高級脂肪族アルコール類(オレイルアルコール、ラウリルアルコール及びステアリルアルコール等の炭素数12〜22の飽和又は不飽和の高級脂肪族アルコール)が含まれる。
【0041】
脂肪酸及びその塩の例には、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸と、それらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩)とが含まれる。
【0042】
脂肪酸エステルの例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ヘプタン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、クロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸及びセバシン酸等の脂肪酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノール等の低級脂肪族アルコールとのエステルが含まれる。脂肪酸エステルの具体的な例には、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル及びセバシン酸ジエチル等が含まれる。
【0043】
多価アルコールアルキルエーテルの例には、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビタン、ソルビトール、メチルグルコシド、オリゴ糖及び還元オリゴ糖等の多価アルコールと、アルキルアルコールとのエーテルが含まれる。多価アルコールアルキルエーテルのアルキル部分の炭素数は、6〜20個が好ましい。
【0044】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルはアルキル部分の炭素数が6〜20個で、かつポリオキシエチレン鎖が、1から9個の繰り返し単位(−O−CHCH−)を有するものが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルが含まれる。
【0045】
グリセリドは炭素数が6〜18個の脂肪酸のグリセリンエステル(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びそれらの混合物)が好ましい。グリセリドの例には、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、グリセリルジラウレート、グリセリルジミリステート、グリセリルジステアレート、グリセリルトリラウレート、グリセリルトリミリステート及びグリセリルトリステアレートが含まれる。
【0046】
多価アルコール中鎖脂肪酸エステルの例には、モノカプリル酸エチレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリル酸グリセリン、エチルヘキサン酸モノ2−エチレングリコール、エチルヘキサン酸モノ2−プロピレングリコール、エチルヘキサン酸ジ(2−プロピレン)グリコール及びジカプリル酸プロピレングリコールが含まれる。
【0047】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの例には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレートが含まれる。
【0048】
乳酸アルキルエステルの例には、乳酸メチル、乳酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル及び2−メトキシプロピオン酸エチルが含まれる。
【0049】
テルペン類の例には、l−メントール及びd−リモネンが含まれる。
【0050】
有機アミンの例には、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、クレアチニン及びメグルミンが含まれる。
【0051】
前記経皮吸収促進剤のうち、脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル及びポリオキシエチレンオレイルエーテルが特に好ましい。
【0052】
本発明のエピナスチン又はその塩を含む経皮吸収型製剤は、常法により製造できる。
【0053】
貼付剤(例えばパップ剤、パッチ剤、テープ剤及びプラスター剤)は、エピナスチン又はその塩と基剤マトリックス及び/又は粘剤、並びに任意で前記溶媒、油剤、界面活性剤、樹脂、経皮吸収促進剤及び/又は湿潤剤とを完全に混合し、得られた膏体を不織布、織布、プラスチックフィルム(シートを含む)又はそれらを複合したフィルムから成る支持体上に展延し、その支持体に剥離ライナーを被せるか、或いは得られた膏体を剥離ライナー上に展延してその剥離ライナーに支持体を被せ、その剥離ライナーをその支持体へと圧着転写することにより調製できる。支持体は、眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用できるほどの柔軟性を有することが好ましい。支持体の厚さは、剤型により適切に設定できる。支持体は、約10μm〜6000μmの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0054】
軟膏剤は、エピナスチン又はその塩と軟膏基剤及び任意で前記溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、経皮吸収促進剤及び/又は湿潤剤とを、完全に混合することにより調製できる。
【0055】
ゲル剤は、ゲル基剤に溶媒を加えてpH調整剤でその混合物を中和し、任意で前記溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、経皮吸収促進剤、及び/又は湿潤剤をゲル基剤に混合し、そのゲル基剤にエピナスチン又はその塩を完全に混合することにより調製できる。
【0056】
クリーム剤は、油相をエピナスチン又はその塩を含む水相と混合して予備乳化した混合物を得、ホモミキサーを用いてその混合物を乳化し、そして得られた乳剤を脱気、濾過、及び冷却することにより調製できる。水相はエピナスチン又はその塩と保湿剤とを精製水に約70℃で混合することにより調製できる。保湿剤の例には、プロピレングリコール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、尿素、乳酸、グリコール酸、グリセリン、ピロリドンカルボン酸が含まれる。油相は前記界面活性剤、保存剤及び抗酸化剤を油性内容物に約70℃で混合することにより調製できる。油性内容物の例には、白色ワセリン、ステアリン酸、ステアリルアルコール及びセチルアルコールが含まれる。
【0057】
本経皮吸収型製剤は、本発明に有害な影響を及ぼさない限り、前記pH調整剤、安定化剤、抗酸化剤、保存剤、架橋剤、及び紫外線吸収剤等の1つ又はそれ以上の他成分を含んでもよい。
【0058】
加えて、本経皮吸収型製剤は、本発明に有害な影響を及ぼさない限り、エピナスチン又はその塩以外の、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗生物質、サルファ剤、緑内障治療剤、血管収縮剤、白内障治療剤、縮瞳剤、散瞳剤、及びビタミン類等の1つ又はそれ以上の治療薬を含んでもよい。
【0059】
本製剤におけるエピナスチン又はその塩の含有量は、前眼部中のアレルギー性眼疾患を予防又は治療するために治療有効量のエピナスチン又はその塩を維持し、それによってエピナスチン又はその塩を皮膚を通して前眼部へと移行させるよう適切に設定されているが、一般的には0.1〜40重量%であり、1〜30重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0060】
本製剤における経皮吸収促進剤の含有量は、薬剤の種類によって異なり、エピナスチン又はその塩の皮膚透過性を制御することにより前眼部中のアレルギー性眼疾患を予防又は治療するために治療有効量のエピナスチン又はその塩を維持するよう適切に設定されているが、一般的には1〜60重量%であり、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
【0061】
エピナスチン又はその塩に対する経皮吸収促進剤の割合は一般的にはエピナスチン又はその塩1重量部に対して、経皮吸収促進剤が1〜20重量部であるが、エピナスチン又はその塩1重量部に対して、経皮吸収促進剤が1〜10重量部が好ましく、エピナスチン又はその塩1重量部に対して、経皮吸収促進剤が1〜5重量部がより好ましい。
【0062】
本製剤は哺乳動物被験体(例えばヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル等)の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用できる。
【0063】
被験体の前眼部におけるエピナスチン又はその塩の量は適用するべき被験体によって異なり、成人の場合、一般的に組織重量1gあたり約0.005ng〜約100μgであるが、組織重量1gあたり約0.05ng〜約20μgが好ましい。
【0064】
さらに、皮膚表面への適用時間は一般的には約0.5〜約24時間であるが、約2〜約12時間が好ましく、約4〜約8時間がより好ましい。貼付剤の場合は、皮膚表面への適用時間は一般的には約0.5〜約24時間であるが、約2〜約12時間が好ましく、約4〜約8時間がより好ましい。
【0065】
本経皮吸収型製剤は眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することにより、治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を全身血流ではなく眼瞼の皮膚を通して製剤から前眼部へと移行させて、アレルギー性眼疾患を持続的に予防又は治療できる。加えて、本経皮吸収型製剤は、エピナスチン又はその塩の含有量及び/又は皮膚透過性、並びに/或いは眼瞼の表面を含む皮膚表面への適用時間を調整することで、前眼部中のエピナスチン又はその塩の量を維持及び/又は制御できる。
【0066】
ゆえに、本製剤は点眼剤等の従来の製剤に比して1回の適用によって長時間にわたる薬理効果を発揮できる。例えば、貼付剤、軟膏剤、ゲル剤及びクリーム剤等の本経皮吸収型製剤に関しては、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための治療有効量のエピナスチン又はその塩を、眼瞼の表面を含む皮膚表面に製剤適用後少なくとも8時間、好ましくは少なくとも24時間、前眼部中に維持できる。特に、本経皮吸収型製剤を眼瞼の表面を含む皮膚表面に約8時間適用すると、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための治療有効量のエピナスチン又はその塩を、製剤を皮膚から除去した後長時間(例えば8時間又はそれ以上、好ましくは16時間又はそれ以上)、前眼部中に維持できる。さらに、本経皮吸収型製剤を眼瞼の表面を含む皮膚表面に短時間(例えば4〜8時間)適用する場合でさえ、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための治療有効量のエピナスチン又はその塩を、皮膚から製剤を除去した後長時間(例えば8〜12時間又はそれ以上)、前眼部中に維持できる。
【0067】
本発明の貼付剤を眼瞼の表面を含む皮膚表面に約8時間適用すると、アレルギー性眼疾患を予防又は治療するための治療有効量のエピナスチン又はその塩を、皮膚から製剤を除去した後長時間(例えば16時間又はそれ以上)、前眼部中に維持できる。
【0068】
本経皮吸収型製剤の投与量及び投与時間は標的疾患、症状、投与被験体、投与経路等によって異なる。例えば、エピナスチン又はその塩を約0.1〜40重量%の割合で含む貼付剤を1日につき1〜5回、0.5〜24時間適用するが、1日につき1〜3回、2〜12時間が好ましく、1日につき1回、4〜8時間がより好ましい。貼付剤は除去した後も抗アレルギー効果を与えられるので、貼付剤を夜間約8時間だけ眼瞼の表面に適用すると、日中の貼付剤適用によってQOLを低下させることなくアレルギー性眼疾患を治療又は予防できる。
【0069】
本経皮吸収型製剤におけるエピナスチン又はその塩の投与量は、一般的には成人1日あたり0.05mg〜5gであるが、1日あたり0.1mg〜1gが好ましく、1日あたり1mg〜0.2gがより好ましい。
【0070】
本経皮吸収型製剤の投与期間は、1日〜約3ヶ月が望ましく、そのような期間の間繰り返し投与するのが望ましい。
【0071】
本発明を以下の実施例を参照してより詳しく記載するが、これらは本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0072】
(試験例1:モルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルを用いた薬理試験)
1.試験製剤の調製
(実施例1:エピナスチンを含む貼付剤)

塩酸エピナスチン 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系粘着剤(PE−300) 1.485g(固形分含量として)
ポリイソシアネート化合物(CK101) 0.00675g(固形分含量として)
酢酸エチル 適量

全量 3g

【0073】
塩酸エピナスチン(株式会社三洋化学研究所)と酢酸エチル約2mLとを混合した。塩酸エピナスチンを溶解又は分散させるために、ディスポーザブルカップ中でその混合物を約30秒間超音波破砕し、ミリスチン酸イソプロピルと十分に混合した。アクリル系粘着剤3.7125g(PE−300;アクリル酸コポリマー;固形分含量40重量%(酢酸エチル/トルエン混合溶媒):1.485g;日本カーバイド工業株式会社)とポリイソシアネート化合物(架橋剤)0.015g(CK101;金属キレート化合物;固形分含量約45重量%(酢酸エチル溶媒):0.00675g;日本カーバイド工業株式会社)を順次その混合物に加えた。その混合物を十分に混合して脱気した。ドクターナイフ又はベーカーアプリケーターを用い、その混合物を剥離ライナー上に展延し、有機溶媒が完全に揮発するまで静置した。次いで支持体を剥離ライナー上に被せてローラーを用いて圧着し、約40℃の恒温槽中で8〜12時間架橋させ、塩酸エピナスチンを含む貼付剤を得た。
【0074】
(実施例2:軟膏剤)

塩酸エピナスチン 0.3 g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2 g
白色ワセリン 1.5 g

全量 3 g

【0075】
(実施例3:ゲル剤)

塩酸エピナスチン 0.3 g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2 g
2% カルボキシビニルポリマーゲル 1.5 g

全量 3 g

【0076】
(実施例4:クリーム剤)

塩酸エピナスチン 1.0 g
ステアリン酸 0.2 g
セチルアルコール 0.3 g
白色ワセリン 1.0 g
ミリスチン酸イソプロピル 4.0 g
プロピレングリコール 0.5 g
ポリソルベート 80 0.5 g
メチルパラベン 0.02 g
プロピルパラベン 0.002g
アスコルビン酸 0.1g
水酸化カリウム 適量
精製水 適量

全量 10 g

【0077】
(比較例1:エピナスチンを含む点眼剤)

塩酸エピナスチン 0.05 g
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.1 g
塩化ナトリウム 0.9 g
エデト酸二ナトリウム 0.01 g
1% 塩化ベンザルコニウム溶液 1 mL
(精製水で10倍希釈)
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量

全量 100 mL (pH 7)

【0078】
精製水にリン酸二水素ナトリウム・2水和物、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及び1%塩化ベンザルコニウム溶液を溶解した。次いでこの混合物に塩酸エピナスチン(株式会社三洋化学研究所)を溶解し、精製水で溶液の体積を100mLに調整し、エピナスチンを含む点眼剤を得た。
【0079】
2.試験方法
2−1.動物
4週齢の雄性Slc:Hartleyモルモットを日本SLCから購入した。それぞれのモルモットをコンベンショナル区域内の飼育室にて温度23±2℃及び湿度55±10%の条件下で飼育した。
【0080】
2−2.試験群
表1に試験群の構成を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
2−3.ヒスタミン溶液の調製
2%ヒスタミン溶液を調製するため、ヒスタミン二塩酸塩(和光純薬工業株式会社)を生理食塩液中に溶解し、そして0.22μm孔径のフィルター(MILLEX(登録商標)−GV)を通してすべての不純物を除去した。
【0083】
2−4.色素(エバンスブルー)溶液の調製
2%色素溶液を調製するため、エバンスブルー(Merck)を生理食塩液中に溶解し、そして0.22μm孔径のフィルター(MILLEX(登録商標)−GV)を通してすべての不純物を除去した。
【0084】
2−5.ヒスタミンによる結膜浮腫の誘発
試験用モルモットを麻酔するために、50mg/mLケタミンを含む注射液(動物用ケタラール(登録商標)50;三共)と20mg/mLキシラジン注射液(セラクタール(登録商標)2%注射液;バイエル)の等量混合物を、モルモット後肢大腿筋肉内に、1mL注射筒、25G注射針を用いて0.5mL/kg筋肉内投与した。筋肉内投与の3〜4分後、麻酔したモルモットの耳に、1mL注射筒、30G注射針を用いて2%エバンスブルー溶液を1.0mL/kg(20mg/kg)静脈内注射した。筋肉内投与の5分後、試験モルモットにおいて結膜炎を誘発するために、ヒスタミン水溶液(0.2%)を結膜を覆う左眼下眼瞼、次いで右眼下眼瞼に100μL注射筒、30G注射針を用いて50μL注射した。結膜炎誘発の30分後にモルモットを屠殺した。そのモルモットの頭部を電気バリカンで刈毛し、眼瞼中の結膜に関する血管透過性の亢進により青染していた眼瞼及び結膜部位を摘出した。
【0085】
2−6.試験製剤の投与
試験製剤の投与については以下に記載する。
生理食塩液:
結膜炎誘発の0.5時間前にマイクロピペットを用いて10μLの生理食塩液含有点眼剤をモルモットの片眼に投与した。
【0086】
比較例1の点眼剤:
結膜炎誘発の8時間前にマイクロピペットを用いて10μLの比較例1の点眼剤をモルモットの片眼に投与した。
【0087】
実施例1の貼付剤:
(処置A)結膜炎誘発の8時間前にモルモット左眼下眼瞼皮膚(除毛済み)へ0.5cm(0.5cm×1cm)の実施例1の貼付剤を適用した。
(処置B)結膜炎誘発の16時間前にモルモット左眼下眼瞼皮膚(除毛済み)へ0.5cm(0.5cm×1cm)の実施例1の貼付剤を適用し、結膜炎誘発の8時間前に適用した実施例1の貼付剤を除去した。
【0088】
2−7.結膜浮腫罹患組織の摘出及び摘出組織からの抽出色素の定量
結膜浮腫罹患組織を摘出後、その組織を溶解するために0.8mLの1N水酸化カリウム溶液に組織を浸漬し、37℃で一晩保温(CO incubator MCO−345、SANYO)した。得られた溶解物に0.6Nリン酸とアセトンの5:13(V:V)混合物を7.2mL混合することにより溶解物の中和と色素抽出を行った。得られた混合物を遠心分離(3,000rpm、15min)した。上清の620nmの吸光度を分光光度計(U−3010、日立製作所)を用いて測定した。他方、標準エバンスブルー溶液の吸光度を測定し、これらの吸光度から各組織サンプルからの抽出色素量を決定した。
【0089】
2−8.評価方法
結膜浮腫抑制効果は、各群における抽出色素量及び下式より算出する抑制率により評価した。
抑制率(%)={1−(X/N)}×100
X:試験群の抽出色素量平均値
N:生理食塩液(control)投与群の抽出色素量平均値
【0090】
3.結果
表2にモルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルへの薬理効果の評価結果を示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2に示すとおり、実施例1の貼付剤適用群(処置A及びB)ともに、比較例1の点眼剤投与群より高いヒスタミン誘発結膜浮腫抑制効果を示した。特に、実施例1の貼付剤適用群(処置B)は、皮膚から製剤を除去して8時間後においても薬理効果を示した。
加えて、実施例1の貼付剤適用眼は、製剤の適用がなかった反対眼よりも高いヒスタミン誘発結膜浮腫抑制効果を示した。
この結果は、塩酸エピナスチンが全身血流ではなく眼瞼の皮膚を通して前眼部へ送達されたことを示す。
ゆえに、本経皮吸収型製剤は持続的な薬理効果(抗アレルギー効果)を長時間発揮できる。加えて、本製剤は、治療すべき眼の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することで、局所的に薬理効果を発揮できる。
【0093】
(試験例2:眼組織への薬剤送達の評価)
本経皮吸収型製剤を眼の上眼瞼及び/又は下眼瞼の皮膚に適用する。
眼組織(涙液及び結膜)内の塩酸エピナスチン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定する。
【0094】
(試験例3:モルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルを用いた薬理試験)
1.試験製剤の調製
実施例1:試験例1におけるエピナスチンを含む貼付剤を試験製剤として使用した。
【0095】
2.試験方法
2−1.動物
4週齢の雄性Slc:Hartleyモルモットを日本SLCから購入した。それぞれのモルモットをコンベンショナル区域内の飼育室にて温度23±2℃及び湿度55±10%の条件下で飼育した。
【0096】
2−2.試験群
表3に試験群の構成を示す。
【0097】
【表3】

【0098】
2−3.ヒスタミン溶液の調製
2%ヒスタミン溶液を調製するため、ヒスタミン二塩酸塩(和光純薬工業株式会社)を生理食塩液中に溶解し、そして0.45μm孔径のフィルター(GL クロマトディスク 25A)を通してすべての不純物を除去した。
【0099】
2−4.色素(エバンスブルー)溶液の調製
2%色素溶液を調製するため、エバンスブルー(SIGMA)を生理食塩液中に溶解し、そして0.45μm孔径のフィルター(GL クロマトディスク 25A)を通してすべての不純物を除去した。
【0100】
2−5.ヒスタミンによる結膜浮腫の誘発
試験用モルモットを麻酔するために、50mg/mLケタミンを含む注射液(動物用ケタラール(登録商標)50;三共)と20mg/mLキシラジン注射液(セラクタール(登録商標)2%注射液;バイエル)との等量混合物を、モルモット後肢大腿筋肉内に、1mL注射筒、25G注射針を用いて0.5mL/kg筋肉内投与した。筋肉内投与の3〜4分後、麻酔したモルモットの耳に、1mL注射筒、30G注射針を用いて2%エバンスブルー溶液を1.0mL/kg(20mg/kg)静脈内注射した。筋肉内投与の5分後、試験モルモットにおいて結膜炎を誘発するために、ヒスタミン水溶液(0.2%)を結膜を覆う左眼下眼瞼、次いで右眼下眼瞼に100μL注射筒、30G注射針を用いて50μL注射した。結膜炎誘発の30分後にモルモットを屠殺した。そのモルモットの頭部を電気バリカンで刈毛し、眼瞼中の結膜に関する血管透過性の亢進により青染していた眼瞼及び結膜部位を摘出した。
【0101】
2−6.試験製剤の投与
試験製剤の投与については以下に記載する。
生理食塩液:
結膜炎誘発の0.5時間前にマイクロピペットを用いて10μLの生理食塩液含有点眼剤をモルモットの片眼に投与した。
【0102】
実施例1の貼付剤:
(処置C)結膜炎誘発の8時間前にモルモット左眼下眼瞼皮膚(除毛済み)へ0.5cm(0.5cm×1cm)の実施例1の貼付剤を適用した。
(処置D)結膜炎誘発の24時間前にモルモット左眼下眼瞼皮膚(除毛済み)へ0.5cm(0.5cm×1cm)の実施例1の貼付剤を適用し、結膜炎誘発の16時間前に適用した実施例1の貼付剤を除去した。
【0103】
2−7.結膜浮腫罹患組織の摘出及び摘出組織からの抽出色素の定量
結膜浮腫罹患組織を摘出後、その組織を溶解するために0.8mLの1N水酸化カリウム溶液に組織を浸漬し、37℃で一晩保温(CO incubator MCO−345、SANYO)した。得られた溶解物に0.6Nリン酸とアセトンの5:13(V:V)混合物を7.2mL混合することにより溶解物の中和と色素抽出を行った。得られた混合物を遠心分離(3,000rpm、15min)した。上清の620nmの吸光度を分光光度計(U−3010、日立製作所)を用いて測定した。他方、標準エバンスブルー溶液の吸光度を測定し、これらの吸光度から各組織サンプルからの抽出色素量を決定した。
【0104】
2−8.評価方法
結膜浮腫抑制効果は、各群における抽出色素量及び下式より算出する抑制率により評価した。
抑制率(%)={1−(X/N)}×100
X:試験群の抽出色素量平均値
N:生理食塩液(control)投与群の抽出色素量平均値
【0105】
3.結果
表4にモルモットヒスタミン誘発結膜浮腫モデルへの薬理効果の評価結果を示す。
【0106】
【表4】

【0107】
表4に示すように、実施例1の貼付剤適用群(処理D)では皮膚から製剤を除去した後16時間後でも薬理効果(抗アレルギー効果)を示した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の製剤は治療有効量のエピナスチン又はその塩を全身血流ではなく眼瞼の皮膚を通して前眼部へ持続的に送達でき、長期間にわたって前眼部に薬理効果を発揮でき、かつ有害な副作用の危険性を減らすことができ、ゆえにアレルギー性眼疾患を予防又は治療するための薬剤として使用できる。
【0109】
この出願は米国におい出願された特許出願第60/697,369号に基づいており、その内容は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれている。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を哺乳動物被験体の前眼部へ送達する方法であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、方法。
【請求項2】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも8時間被験体の前眼部中に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する方法であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、方法。
【請求項6】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも8時間被験体の前眼部中に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
経皮吸収型製剤が貼付剤である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
貼付剤が0.5〜24時間皮膚表面に適用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する際に使用するためのエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型製剤であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、製剤。
【請求項12】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、請求項11に記載の製剤。
【請求項14】
経皮吸収型製剤が貼付剤である、請求項11〜13のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
0.5〜24時間皮膚表面に適用される、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患を予防又は治療する際に使用するためのエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を含む経皮吸収型貼付剤であって、皮膚表面に1日あたり4〜8時間適用される貼付剤。
【請求項17】
エピナスチン又は医薬上許容されるその塩を被験体の眼瞼の表面を含む皮膚表面に適用することを含む、哺乳動物被験体におけるアレルギー性眼疾患の予防又は治療用経皮吸収型製剤の製造のためのエピナスチン又は医薬上許容可能なその塩の使用であって、それによって治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩を、製剤から被験体の前眼部へと移行させる、使用。
【請求項18】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、少なくとも24時間被験体の前眼部中に維持される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
治療有効量のエピナスチン又は医薬上許容されるその塩が、皮膚から製剤を除去した後少なくとも16時間被験体の前眼部中に維持される、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
経皮吸収型製剤が貼付剤である、請求項17〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
貼付剤が0.5〜24時間皮膚表面に適用される、請求項20に記載の使用。

【公表番号】特表2009−500397(P2009−500397A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520118(P2008−520118)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/JP2006/314005
【国際公開番号】WO2007/007851
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】