説明

エポキシアルコールの製造方法

【課題】 水酸基含有オレフィン化合物を原料としてエポキシアルコールを合成する方法であって、安全かつ安価に、高収率でエポキシアルコールが得られる方法を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)
R−OH (1)
(式中、Rは、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表される水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを、塩基及びニトリル化合物の存在下に反応させることによりエポキシアルコールを生成させるエポキシアルコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基含有オレフィン化合物を原料とするエポキシアルコールの製造方法に関する。本発明により得られるエポキシアルコールは、農薬や医薬の中間体、各種ポリマーの原料などとして有用である。
【背景技術】
【0002】
エポキシアルコール類の製造方法としては、水酸基含有オレフィン化合物と有機過酸とを反応させることにより、オレフィンをエポキシ化する方法がよく知られている。
例えば、非特許文献1は、上記方法において、有機過酸としてメタクロロ過安息香酸を使用する方法を教えており。この方法は、一般性があり広範囲のオレフィンを使用できるが、メタクロロ過安息香酸が高価である。
特許文献1は、上記方法において、有機過酸として過酢酸を使用する方法を教えている。しかし、この方法は、過酢酸の爆発性が高いため、安全性に問題がある。また、エポキシアルコールが反応系内に存在するカルボン酸と反応することにより、エステル化合物が生成してしまい、目的のエポキシアルコールの収率が低下する。
【0003】
また、エポキシアルコール類の製造方法としては、水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを触媒存在下で反応させることにより、オレフィンをエポキシ化する方法も知られている。
例えば、特許文献2は、上記方法において、触媒として、タングステン酸などを使用する方法を教えている。しかし、この方法では、反応液の液性が酸性であるため、生成したエポキシが水により開環してトリオールになってしまう。
また、非特許文献2は、上記方法において、触媒として、メチルレニウムトリオキサイド触媒を使用する方法を教えている。しかし、この方法は、メチルレニウムトリオキサイド触媒が非常に高価である。
【0004】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, p.7777.
【非特許文献2】Chem. Commun. 1997, p.1565.
【特許文献1】特開2006−199650号
【特許文献2】特開昭52−65210号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水酸基含有オレフィン化合物を原料としてエポキシアルコールを合成する方法であって、安全かつ安価に、高収率でエポキシアルコールが得られる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを、塩基及びニトリル化合物の存在下に反応させることにより、高収率でエポキシアルコールが得られることを見出した。この方法で使用する化合物は全て安価で入手し易く、また爆発性もなく安全である。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のエポキシアルコールの製造方法を提供する。
【0007】
項1. 下記一般式(1)
R−OH (1)
(式中、Rは、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表される水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを、塩基及びニトリル化合物の存在下に反応させることによりエポキシアルコールを生成させることを特徴とするエポキシアルコールの製造方法。
項2. 一般式(1)において、Rが、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜8の脂肪族炭化水素基である項1に記載の方法。
項3. 過酸化水素の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、1〜50倍当量である項1又は2に記載の方法。
項4. 塩基が、リン酸アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. 塩基の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、0.001〜1倍当量である項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6. ニトリル化合物が、シアノ基を除く炭素数が1〜6個である脂肪族ニトリル化合物、シアノ基を除く炭素数が1〜6個であるハロゲン置換脂肪族ニトリル化合物、及び置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7. ニトリル化合物の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、1〜50倍当量である項1〜6のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法により、水酸基含有オレフィン化合物から、選択的に、即ち高収率かつ高反応変化率で、エポキシアルコールが得られる。
また、本発明方法は、安価で入手し易く、かつ安全な化合物だけを使用する。従って、本発明方法は、工業的に極めて有利に種々のエポキシアルコールを製造することができる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシアルコールの製造方法は、下記一般式(1)
R−OH (1)
(式中、Rは、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表される水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを、塩基及びニトリル化合物存在下で反応させることによりエポキシアルコールを生成させる方法である。
【0010】
水酸基含有オレフィン化合物
上記一般式(1)において、Rは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の何れの脂肪族炭化水素基であってもよいが、反応性が高い点で、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
また、Rの炭素数は、3〜8が好ましく、3〜6がより好ましい。上記炭素数の範囲であれば、反応性が高く、そのため塩基触媒が少なくて済む。これにより、塩基触媒によるエポキシ化合物や過酸化水素の分解が回避されて、エポキシ化合物の収率が高くなる。
上記一般式(1)で表される水酸基含有オレフィン化合物の具体例としては、アリルアルコール、クロチルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−へキセン−1−オール、3−ヘキセン−1−オール、3−オクテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オールのような直鎖状オレフィン;メタリルアルコール、プレノール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチルー3−ブテン−1−オール、trans−3−ペンテン−2−オール、4−ペンテン−2−オール、β−シトロネロール、ジヒドロミルセノールのような分岐鎖状オレフィン;2−シクロヘキセン−1−オール、5−ノルボネン−2−オール、α−テルピネオール、ベルベノール、ミルテノールのような環状オレフィン等が挙げられる。
中でも、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチルー3−ブテン−1−オール、trans−3−ペンテン−2−オール、4−ペンテン−1−オール、5−へキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、及び2−シクロヘキセン−1−オールが好ましい。
上記一般式(1)で表される水酸基含有オレフィン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】
過酸化水素
反応に使用する過酸化水素の濃度は特に限定されないが、安全性、及び反応時の容積効率などを考慮すれば、約1〜60重量%が好ましい。
過酸化水素は、工業的に使用できるものを容易に入手できる。通常市販されている3〜60重量%の過酸化水素水溶液をそのまま使用してもよく、或いは、このような市販品を水で希釈したものを使用してもよい。
過酸化水素の使用量は、水酸基含有オレフィン化合物に対して、約1〜50倍当量が好ましく、約1〜20倍当量がより好ましく、約1〜3倍当量がさらにより好ましい。上記範囲であれば、十分に反応が進行する。また、上記範囲であれば、反応終了後、エポキシアルコールを単離する際に、過酸化水素の過剰使用分を分解するための亜硫酸ナトリウムなどの還元剤の使用量が抑えられる。
【0012】
ニトリル化合物
ニトリル化合物は、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、又はアラルキルニトリルの何れであってもよい。
脂肪族ニトリル化合物としては、シアノ基の炭素を除く炭素の数が1〜6個(特に1〜4個)であるような、脂肪族ニトリル化合物又はハロゲン置換脂肪族ニトリル化合物が好ましい。このような脂肪族ニトリル化合物として、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロノニトリル、アジポニトリルやモノクロロアセトニトリル、ジクロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル等が挙げられる。脂肪族ニトリル化合物の中では、アセトニトリル、トリクロロアセトニトリルが好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
芳香族ニトリル化合物としては、置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物が挙げられる。このような芳香環又は複素環として、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルのようにベンゼン環だけで環構造を形成している化合物;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンのような複素環だけで環構造を形成している化合物;ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリン、キノオキサリン、クロマン、インドール、アントラキノンのようにベンゼン環と複素環とが縮合している化合物などが挙げられる。
【0013】
特に、単環の芳香族ニトリル化合物が好ましく、中でも環がベンゼン環である芳香族ニトリル化合物がより好ましく、ベンゾニトリルがさらにより好ましい。
置換基は特に限定されず、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜10のフェニルアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、置換アミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、アゾ基、アジド基等が挙げられる。
芳香族ニトリル化合物のうち、芳香環又は複素環にシアノ基が直接結合している化合物の好ましい例として、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロベンゾニトリル、フルオロベンゾニトリルなどが挙げられ、中でも、ベンゾニトリルがより好ましい。
アラルキルニトリル化合物の環の種類、環の数、及び環に結合した置換基については、芳香族ニトリル化合物について説明した通りである。アラルキルニトリルの好ましい例として、ベンジルニトリル、3−フェニルプロピオニトリルなどが挙げられる。
また、シアノ基に隣接する基が電子吸引基である化合物は反応性が高いため好ましい。
ニトリル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ニトリル化合物の使用量は、水酸基含有オレフィン化合物に対して、約1〜50倍当量が好ましく、約1〜10倍当量がより好ましく、約1〜3倍当量がさらにより好ましい。上記範囲であれば、十分に反応が進行し、かつ生成物であるエポキシアルコールを単離精製する際に、過剰のニトリル化合物からなる不純物量が抑えられる。
【0014】
塩基
塩基としては、リン酸アルカリ金属塩、及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれる塩基を使用することができる。リン酸アルカリ金属塩の具体例としては、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム等、及びこれらの水和物などが挙げられる。炭酸アルカリ金属塩の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等、及びこれらの水和物などが挙げられる。中でも、反応が速く、かつ反応の選択性が高くなる点で、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素カリウムが好ましく、リン酸三ナトリウム、及び炭酸ナトリウムがより好ましい。
塩基は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
塩基の使用量は、水酸基含有オレフィン化合物に対して、約0.001〜1当量が好ましく、約0.01〜0.8当量がより好ましく、約0.02〜0.4当量がさらにより好ましい。上記範囲であれば、十分に反応が進行するとともに、生成したエポキシ化合物や過酸化水素が分解し難い。
【0015】
溶媒
本発明方法においては、ニトリル化合物が溶媒を兼ねることができるため、必ずしも、別途溶媒を使用しなくてもよい。しかし、上記一般式(1)で表される水酸基含有オレフィン化合物のRの炭素数が4以上である場合は、溶媒を使用するのが好ましい。炭素数が大きい水酸基含有オレフィン化合物は水と混ざり難いが、水と混和する溶媒を使用することにより1相系で反応を行うことができる。
このような溶媒として、メタノール、エタノール、n―プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールのようなアルコール;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド;1,2−ジメトキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテルなどが挙げられる。中でも、アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。
溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
反応条件
本発明方法は、反応時に水酸基含有オレフィン化合物、ニトリル化合物、過酸化水素、及び塩基が存在していればよく、これらの化合物の添加順序及び添加方法は特に限定されない。安全性の点で、過酸化水素を最後に加えるのが好ましく、例えば、水酸基含有オレフィン化合物とニトリル化合物とを、必要に応じて溶媒とともに混合した後、これに塩基を加え、次いで過酸化水素水溶液を添加する方法が挙げられる。また、水酸基含有オレフィン化合物とニトリル化合物とを、必要に応じて溶媒とともに混合した後、塩基と過酸化水素水溶液との混合物を加えてもよい。
反応温度は特に限定されないが、十分な反応速度が得られ、かつ安全に反応を行える点で、約0〜90℃が好ましく、約20〜60℃がより好ましい。また、常圧下又は加圧下の何れの条件で反応を行ってもよい。
【0017】
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各実施例で行ったガスクロマトグラフィーの条件は以下の通りである。
<ガスクロマトグラフィーの条件>
分析機器 : 島津ガスクロマトグラフGC−14A
検出器 : 水素炎イオン化検出器
カラム : ジーエルサイエンス InertCap1701
(内径×長さ×膜厚=0.25mm×30m×0.25μm)
カラム温度 : 70℃(5分)→10℃/分→270℃(5分)
注入口温度 : 250℃
キャリアガス : 窒素
メイクアップガス: 窒素
注入量 : 1μL
注入方法 : 有機層を採取して分析
【0018】
[実施例1]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例1
3−メチル−3−ブテン−1−オール4.0g(46.4mmol)、アセトニトリル3.8g(92.8mmol)、リン酸三ナトリウム0.38g(2.32mmol)を50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液6.7g(69.6mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。2時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は92%に達し、定量収率81%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
【0019】
[実施例2]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例2
反応液にメタノール8mLを加えた他は、実施例1と同じ条件で反応を行った。2時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は99%以上に達し、定量収率89%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
[実施例3]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例3
反応液にエタノール8mLを加えた他は、実施例1と同じ条件で反応を行った。5時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は99%以上に達し、定量収率84%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
[実施例4]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例4
反応液にイソプロピルアルコール8mLを加えた他は、実施例1と同じ条件で反応を行った。20時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は85%に達し、定量収率75%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
【0020】
[実施例5]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例5
反応液に1,2−ジメトキシエタン8mLを加えた他は、実施例1と同じ条件で反応を行った。5時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は97%に達し、定量収率83%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
[実施例6]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例6
リン酸三ナトリウム0.38g(2.32mmol)に代えて、炭酸ナトリウム0.49g(4.64mmol)を加えた他は、実施例2と同じ条件で反応を行った。5時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は94%に達し、定量収率80%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
[実施例7]
3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールの製造例7
リン酸三ナトリウム0.38g(2.32mmol)に代えて、リン酸三カリウム水和物0.49gを加えた他は、実施例2と同じ条件で反応を行った。2時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は99%以上に達し、定量収率85%で、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブタノールが得られた。
【0021】
[実施例8]
3,4−エポキシ−1−ブタノールの製造例
3−ブテン−1−オール 4.0g(55.5mmol)、アセトニトリル6.8g(166mmol)、リン酸三ナトリウム0.45g(2.77mmol)、メタノール8mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液10.8g(111mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。1時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は99%以上に達し、定量収率91%で、3,4−エポキシ−1−ブタノールが得られた。
[実施例9]
4,5−エポキシ−1−ペンタノールの製造例
4−ペンテン−1−オール 4.0g(46.4mmol)、アセトニトリル5.7g(139mmol)、リン酸三ナトリウム0.38g(2.32mmol)、メタノール8mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液9.0g(92.8mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。20時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は96%に達し、定量収率84%で、4,5−エポキシ−1−ペンタノールが得られた。
【0022】
[実施例10]
5,6−エポキシ−1−ヘキサノールの製造例
4−ペンテン−1−オール4.0g(40mmol)、アセトニトリル4.9g(120mmol)、炭酸ナトリウム0.63g(6.0mmol)、メタノール8mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液7.8g(80mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。8時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は96%に達し、定量収率86%で、4,5−エポキシ−1−ペンタノールが得られた。
[実施例11]
7,8−エポキシ−1−オクタノールの製造例1
7−オクテン−1−オール 4.0g(31.2mmol)、アセトニトリル3.8g(93.6mmol)、炭酸ナトリウム0.5g(4.7mmol)、メタノール12mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を45℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液6.1g(62mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。23時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は89%に達し、定量収率65%で、7,8−エポキシ−1−オクタノールが得られた。
[実施例12]
7,8−エポキシ−1−オクタノールの製造例2
アセトニトリル3.8g(93.6mmol)に代えてベンゾニトリル6.4g(62mmol)を使用した他は、実施例11と同じ条件で反応を行った。7時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は97%に達し、定量収率77%で、7,8−エポキシ−1−オクタノールが得られた。
【0023】
[実施例13]
3,4−エポキシ−2−ペンタノールの製造例
trans−3−ペンテン−2−オール4.0g(46.4mmol)、ベンゾニトリル9.6g(92.8mmol)、炭酸水素カリウム0.93g(9.3mmol)、メタノール12mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液9.0g(92.8mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。5時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は98%に達し、定量収率85%で、3,4−エポキシ−2−ペンタノールが得られた。
[実施例14]
2,3−エポキシ−1−シクロヘキサノールの製造例
2−シクロへキセン−1−オール4.0g(40.8mmol)、ベンゾニトリル8.4g(81.5mmol)、リン酸三ナトリウム0.33g(2.0mmol)、メタノール12mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液7.9g(81.5mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。7時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は97%に達し、定量収率83%で、2,3−エポキシ−1−シクロヘキサノールが得られた。
[実施例15]
グリシドールの製造例
アリルアルコール4.0g(68.9mmol)、アセトニトリル8.5g(207mmol)、炭酸ナトリウム1.1g(10mmol)、メタノール 16mLを50mLのナスフラスコに入れた。この反応液を40℃のバスにつけ、35%過酸化水素水溶液13.4g(138mmol)を加え、40〜50℃に保って攪拌した。3時間後のガスクロマトグラフィーの分析で、反応変化率は98%に達し、定量収率79%で、グリシドールが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
R−OH (1)
(式中、Rは、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表される水酸基含有オレフィン化合物と過酸化水素とを、塩基及びニトリル化合物の存在下に反応させることによりエポキシアルコールを生成させることを特徴とするエポキシアルコールの製造方法。
【請求項2】
一般式(1)において、Rが、炭素−炭素二重結合を1個含む、炭素数3〜8の脂肪族炭化水素基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
過酸化水素の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、1〜50倍当量である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
塩基が、リン酸アルカリ金属塩及び炭酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
塩基の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、0.001〜1倍当量である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ニトリル化合物が、シアノ基を除く炭素数が1〜6個である脂肪族ニトリル化合物、シアノ基を除く炭素数が1〜6個であるハロゲン置換脂肪族ニトリル化合物、及び置換基を有していてよい1個又は2個の芳香環及び/又は複素環を有する芳香族ニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ニトリル化合物の使用量が、水酸基含有オレフィン化合物に対して、1〜50倍当量である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2009−256260(P2009−256260A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108506(P2008−108506)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】