説明

エポキシアルコール化合物の取得方法、並びにエポキシアルコール化合物及びトリアゾール化合物の製造方法

【課題】構造異性体を容易に除去できるエポキシアルコール化合物の新たな取得方法を開発することが望ましい。
【解決手段】式(3)
【化1】


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)で示されるエポキアルコール化合物及びその構造異性体を含む混合物を、30〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程と、前記工程で得られる混合物から前記式(3)で示されるエポキシ化合物を回収する工程とを備える式(3)で示されるエポキシ化合物の取得方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシアルコール化合物の取得方法、並びにエポキシアルコール化合物及びトリアゾール化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール等のエポキシアルコール化合物及び(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン等のトリアゾール化合物は、例えば抗真菌剤等の製造中間体として有用であることが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
エポキシアルコール化合物の取得方法として、例えば特許文献4(段落〔0065〕〜〔0067〕)には、エポキシアルコール化合物である3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを含む反応混合物と塩酸とを25℃以下で混合し、3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5807854号明細書
【特許文献2】国際公開第1994/026734号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/062542号パンフレット
【特許文献4】特開2008−44899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法では、エポキシアルコール化合物は、その構造異性体との異性体混合物として得られる場合がある。より一層高純度のトリアゾール化合物を製造するためには、該構造異性体を容易に除去できるエポキシアルコール化合物の新たな取得方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明に至った。即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 式(3)
【0007】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物(以下、「化合物(3)」ということがある。)及びその構造異性体を含む異性体混合物を、30℃〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程(1)と、
工程(1)で得られた混合物から前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を回収する工程(2)と
を備えることを特徴とする式(3)で示されるエポキアルコール化合物の取得方法。
〔2〕 前記構造異性体が、式(3’)
【0008】
【化2】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示される化合物(以下、「異性体(3’)」ということがある。)である前記〔1〕記載の取得方法。
〔3〕 工程(1)おいて、前記式(3’)で示される化合物を式(4)
【0009】
【化3】

(式中、R及びArは前記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)に変換する前記〔2〕記載の取得方法。
〔4〕 工程(2)が、前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を蒸留により回収する工程である前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の取得方法。
〔5〕 前記異性体混合物が、ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリド及び式(1)
【0010】
【化4】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるケトアルコール化合物(以下、「化合物(1)」ということがある。)を反応させて得られるものである前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の取得方法。
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の取得方法により取得した式(3)
【0011】
【化5】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物を式(6)
【0012】
【化6】

(式中、R及びArは前記と同義であり、Yは脱離基を示す。)
で示される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)に変換する工程と、
前記式(6)で示される化合物と1,2,4−トリアゾールとを反応させる工程と
を備えることを特徴とする式(5)
【0013】
【化7】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるトリアゾール化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)の製造方法。
〔7〕 ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリド及び式(1)
【0014】
【化8】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるケトアルコール化合物を反応させる工程と、
前記工程で得られた式(3)
【0015】
【化9】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物及びその構造異性体を含む異性体混合物を、30℃〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程(1)と、
工程(1)で得られた混合物から前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を回収する工程(2)と
を備えることを特徴とする式(3)で示されるエポキアルコール化合物の製造方法。
〔8〕 前記構造異性体が、式(3’)
【0016】
【化10】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示される化合物である前記〔7〕記載の製造方法。
〔9〕 工程(1)おいて、前記式(3’)で示される化合物を式(4)
【0017】
【化11】

(式中、R及びArは前記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物に変換する前記〔8〕記載の製造方法。
〔10〕 工程(2)が、前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を蒸留により回収する工程である前記〔7〕〜〔9〕のいずれか記載の製造方法。
〔11〕 前記〔7〕〜〔10〕のいずれか記載の製造方法により製造した式(3)
【0018】
【化12】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物を式(6)
【0019】
【化13】

(式中、R及びArは前記と同義であり、Yは脱離基を示す。)
で示される化合物に変換する工程と、
前記式(6)で示される化合物と1,2,4−トリアゾールとを反応させる工程と
を備えることを特徴とする式(5)
【0020】
【化14】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるトリアゾール化合物の製造方法。
〔12〕 式(4)
【0021】
【化15】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エポキシアルコール化合物の構造異性体を容易に除去できるエポキシアルコール化合物の新たな取得方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明において、Rで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基及びシクロヘキシル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基が挙げられる。
【0025】
本発明において、Arで表される芳香族基としては、例えば、
フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,4−キシリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ベンジル基等の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基;
2−フリル基、3−フリル基、フルフリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピリジル基、2−キノリル基等の炭素数3〜12の芳香族複素環基;
が挙げられる。
芳香族基は、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられ、より好ましくはフェニル基が挙げられる。かかる芳香族基は、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい。芳香族基が有していてもよいハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
【0026】
ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基の具体例としては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,3−ジブロモフェニル基、
【0027】
2,4−ジブロモフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、3,4−ジブロモフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、1−クロロナフチル基(1−クロロ−2−ナフチル基、1−クロロ−3−ナフチル基、1−クロロ−4−ナフチル基、1−クロロ−5−ナフチル基、1−クロロ−6−ナフチル基、1−クロロ−7−ナフチル基、1−クロロ−8−ナフチル基)、2−クロロナフチル基(2−クロロ−1−ナフチル基、2−クロロ−3−ナフチル基、2−クロロ−4−ナフチル基、2−クロロ−5−ナフチル基、2−クロロ−6−ナフチル基、2−クロロ−7−ナフチル基、2−クロロ−8−ナフチル基)、1−ブロモナフチル基(1−ブロモ−2−ナフチル基、
【0028】
1−ブロモ−3−ナフチル基、1−ブロモ−4−ナフチル基、1−ブロモ−5−ナフチル基、1−ブロモ−6−ナフチル基、1−ブロモ−7−ナフチル基、1−ブロモ−8−ナフチル基)、2−ブロモナフチル基(2−ブロモ−1−ナフチル基、2−ブロモ−3−ナフチル基、2−ブロモ−4−ナフチル基、2−ブロモ−5−ナフチル基、2−ブロモ−6−ナフチル基、2−ブロモ−7−ナフチル基、2−ブロモ−8−ナフチル基)、1−フルオロナフチル基(1−フルオロ−2−ナフチル基、1−フルオロ−3−ナフチル基、1−フルオロ−4−ナフチル基、1−フルオロ−5−ナフチル基、1−フルオロ−6−ナフチル基、1−フルオロ−7−ナフチル基、1−フルオロ−8−ナフチル基)、2−フルオロナフチル基(2−フルオロ−1−ナフチル基、2−フルオロ−3−ナフチル基、2−フルオロ−4−ナフチル基、2−フルオロ−5−ナフチル基、2−フルオロ−6−ナフチル基、
【0029】
2−フルオロ−7−ナフチル基、2−フルオロ−8−ナフチル基)、1−トリフルオロメチルナフチル基(1−トリフルオロメチル−2−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−3−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−4−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−5−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−6−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−7−ナフチル基、1−トリフルオロメチル−8−ナフチル基)、2−トリフルオロメチルナフチル基(2−トリフルオロメチル−1−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−3−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−4−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−5−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−6−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−7−ナフチル基、2−トリフルオロメチル−8−ナフチル基)、4−フルオロピリジル基(4−フルオロ−2−ピリジル基、4−フルオロ−3−ピリジル基)、
【0030】
3−トリフルオロメチルピリジル基(3−トリフルオロメチル−2−ピリジル基、3−トリフルオロメチル−4−ピリジル基、3−トリフルオロメチル−5−ピリジル基、3−トリフルオロメチル−6−ピリジル基)等が挙げられ、中でも、ジフルオロフェニル基(好ましくは、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基)、トリフルオロフェニル基(好ましくは、2,4,6−トリフルオロフェニル基)、トリフルオロメチルフェニル基(好ましくは、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基)が好ましく、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0031】
本発明において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、中でもヨウ素原子が好ましい。
【0032】
本発明において、Yで表される脱離基としては、例えば、
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、p−トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;
が挙げられる。
脱離基は、好ましくはスルホニルオキシ基が挙げられ、より好ましくはメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基及びp−トルエンスルホニルオキシ基が挙げられ、さらに好ましくはメタンスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0033】
本発明において、化合物(3)およびその構造異性体を含む異性体混合物は、好ましくは、ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリド及び化合物(1)を反応させて得られるものである。
【0034】
化合物(1)は、例えば国際公開第04/000826号パンフレット(第26〜35頁)に記載される方法等の公知の方法により得ることができる。具体的には例えば、乳酸アルキルをジアルキルアミンと反応させることにより、乳酸ジアルきるアミドを得、これをエチルビニルエーテルと反応させることにより、ヒドロキシル基を1−エトキシエチル基で保護し、次いで2,4−ジフルオロフェニルマグネシウムハライド等の芳香族グリニア試薬を反応させることにより、得ることができる。
【0035】
化合物(1)は、光学活性体であってもよいし、ラセミ体であってもよい。なお、ここでいう光学活性体とは、いずれか一方の光学異性体が過剰に存在しているものであればよい。
【0036】
化合物(1)の具体例としては、2’,4’−ジフルオロ−2−ヒドロキシプロピオフェノン、2’,5’−ジフルオロ−2−ヒドロキシプロピオフェノン、2’,4’,6’−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロピオフェノン、2’−(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシプロピオフェノン、3’−(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシプロピオフェノン及び4’−(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシプロピオフェノンが挙げられる。
【0037】
ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウムとしては、例えば、塩化トリメチルオキソスルホニウム、臭化トリメチルオキソスルホニウム及びヨウ化トリメチルオキソスルホニウムが挙げられ、中でもヨウ化トリメチルオキソスルホニウムが好ましい。ハロゲン化トリメチルスルホニウムとしては、塩化トリメチルスルホニウム、臭化トリメチルスルホニウム及びヨウ化トリメチルスルホニウムが挙げられ、中でもヨウ化トリメチルスルホニウムが好ましい。
【0038】
イリドの調製に用いる塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウム等の金属水素化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシドが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム及び水素化リチウムが挙げられ、より好ましくは水素化ナトリウムが挙げられる。
【0039】
ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリドと、化合物(1)との反応は、好ましくは溶媒存在下で行われる。かかる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等のアミド溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドお及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくは、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0040】
イリドの調製は、例えば、ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと溶媒とを混合した後、得られる混合物に塩基を滴下又は分割添加する方法によって行われる。イリドの調製温度は、使用する溶媒、塩基等により異なるが、好ましくは0℃〜30℃の範囲、より好ましくは8℃〜15℃の範囲から選択される。イリドの調製時間は、使用する溶媒、塩基等により異なるが、好ましくは1〜24時間である。
【0041】
イリドと化合物(1)との反応は、例えば、上述の方法により調製したイリドに、化合物(1)を添加する方法、化合物(1)又は化合物(1)と溶媒との混合物にイリドを添加する方法により行うことができる。化合物(1)又はイリドを添加する温度は、化合物(1)及び該反応で得られる化合物(3)の安定性の点で、好ましくは−10℃〜10℃の範囲、より好ましくは0℃〜5℃の範囲から選択され、添加に要する時間は、好ましくは3〜15時間、より好ましくは4〜10時間である。イリドと化合物(1)との反応温度は、化合物(1)及び該反応で得られる化合物(3)の安定性の点で、好ましくは−10℃〜10℃の範囲、より好ましくは0℃〜5℃の範囲から選択され、反応時間は、好ましくは1〜8時間、より好ましくは1〜5時間である。
【0042】
化合物(3)の具体例としては、3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール、3−(2’,5’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール、3−(2’,4’,6’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール、3−(2’−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール、3−(3’−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール及び3−(4’−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールが挙げられる。
【0043】
化合物(3)の構造異性体としては、例えば異性体(3’)が挙げられる。
【0044】
本発明は、化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物を、30℃〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程(1)を備える。工程(1)により、異性体混合物に含まれる構造異性体を、選択的に分解することができる。
【0045】
工程(1)に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸等の鉱酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、フタル酸等のカルボン酸が挙げられ、好ましくは、塩酸、コハク酸、クエン酸及びフタル酸が挙げられ、より好ましくは、クエン酸及びフタル酸が挙げられる。酸は単独であってもよいし、二種以上の酸の混合物であってもよい。酸の使用量は、異性体混合物に含まれる化合物(3)とその構造異性体との比率により異なるが、化合物(3)1モルに対して、例えば0.1〜2モル、好ましくは0.2〜0.7モル、より好ましくは0.3〜0.5モルである。酸は、好ましくは水溶液として用いられる。酸を水溶液として用いる場合、水の使用量は、異性体混合物に含まれる化合物(3)1gに対して、例えば0.5〜15mL、好ましくは1〜10mL、より好ましくは1〜8mLである。
【0046】
工程(1)は、例えば、
(A)化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物を30℃〜70℃の範囲から選択される温度に調整し、そこへ酸またはその水溶液を添加する方法、
(B)酸またはその水溶液を30℃〜70℃の範囲から選択される温度に調整し、そこへ化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物を添加する方法、
(C)化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物に、酸またはその水溶液を添加し、得られる混合物を30℃〜70℃の範囲から選択される温度に調整する方法、並びに
(D)酸またはその水溶液に、化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物を添加し、得られる混合物を30℃〜70℃の範囲から選択される温度に調整する方法
のいずれかの方法により行なわれる。好ましくは、(B)及び(D)記載の方法が挙げられる。これら方法は、好ましくは、さらに有機溶媒の存在下に行なわれる。
【0047】
工程(1)で用いる有機溶媒は、化合物(3)に対して反応性を有しないものであればよく、好ましくは、水に非混和性の有機溶媒が挙げられる。かかる有機溶媒の具体例としては、
塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2−クロロ−m−キシレン、2−クロロ−p−キシレン、4−クロロ−o−キシレン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、モノフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;
ニトロベンゼン;
【0048】
二硫化炭素;
トルエン等の芳香族または脂肪族の炭化水素溶媒;
アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;
メチルtert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;
が挙げられる。
有機溶媒は、好ましくは炭化水素溶媒が挙げられ、より好ましくは芳香族炭化水素溶媒が挙げられ、さらに好ましくはトルエンが挙げられる。また、有機溶媒は、二種以上の有機溶媒が任意の割合で混合されたものでもよい。有機溶媒の使用量は、異性体混合物に含まれる化合物(3)1gに対して、例えば0.5〜10mL、好ましくは1〜8mL、より好ましくは1〜5mLである。
【0049】
工程(1)における温度は、30℃〜70℃の範囲から選択される温度であり、好ましくは40℃〜50℃の範囲から選択される温度である。30℃〜70℃から選択される温度とすることにより、化合物(3)の分解を抑制し、化合物(3)の構造異性体を選択的に分解することができる。反応時間は、用いる酸の種類や量、反応温度等により異なるが、例えば0.5〜24時間であり、好ましくは1〜15時間であり、より好ましくは3〜10時間である。
【0050】
化合物(3)の構造異性体が異性体(3’)である場合、異性体(3’)は、選択的に分解されることにより、化合物(4)に変換される。化合物(4)は、新規化合物である。
【0051】
本発明は、工程(1)で得られた混合物から化合物(3)を回収する工程(2)を備える。工程(1)で得られた混合物には、化合物(3)と、化合物(3)の構造異性体が分解されてなる化合物とが含まれている。工程(2)により、化合物(3)の構造異性体が分解されてなる化合物から、化合物(3)を分離することができる。化合物(3)の構造異性体が異性体(3’)である場合、工程(1)で得られた混合物には、化合物(3)と化合物(4)とが含まれている。工程(2)により、化合物(4)から化合物(3)を容易に分離することができる。
【0052】
工程(2)は、好ましくは、化合物(3)を蒸留により回収する工程である。蒸留は、常圧条件下又は減圧条件下で行うことができ、化合物(3)の安定性の点で、減圧条件下で行うことが好ましい。蒸留における温度は、化合物(3)等により異なるが、高純度の化合物(3)を回収する点と化合物(3)の安定性の点とから、例えば20〜200℃の範囲、好ましくは60〜160℃の範囲、より好ましくは80〜140℃の範囲から選択される。蒸留に要する時間は、化合物(3)の種類や量、温度により異なるが、例えば0.5〜24時間であり、好ましくは1〜15時間であり、より好ましくは3〜10時間である。
【0053】
かくして取得された化合物(3)は、例えば、以下に示す方法により、化合物(5)に変換することができる。
(a)化合物(3)を化合物(6)に変換する工程と、化合物(6)と1,2,4−トリアゾールと反応させる工程とを備える方法
(b)化合物(3)を1,2,4−トリアゾールと反応させることにより、式(8)
【0054】
【化16】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示される化合物(以下、「化合物(8)」と言うことがある。)に変換する工程と、化合物(8)を式(9)
【0055】
【化17】

(式中、R、Ar及びYは前記と同義である。)
で示される化合物(以下、「化合物(9)」と言うことがある。)に変換する工程と、化合物(9)と塩基とを反応させる工程とを備える方法
が挙げられる。
【0056】
以下、(a)記載の方法をより詳細に説明する。
【0057】
(a)記載の方法において、Yで表される脱離基がスルホニルオキシ基である場合、例えば、トリエチルアミン等のアミンの存在下、化合物(3)をスルホニル化剤と反応させることにより、化合物(3)を化合物(6)に変換することができる。
スルホニル化剤としては、例えば、塩化メタンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、好ましくは塩化メタンスルホニル及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられる。スルホニル化剤の使用量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは0.8〜1.8モルであり、より好ましくは0.9〜1.2モルである。かかる反応は、好ましくは、トルエン等の炭化水素溶媒の存在下で行われる。
化合物(3)の化合物(6)への変換は、例えば、炭化水素溶媒中、化合物(3)とアミンとを混合し、得られる混合物にスルホニル化剤を添加する方法により行うことができる。スルホニル化剤の添加温度及び反応温度は、好ましくは−20℃〜40℃の範囲、より好ましくは0℃〜20℃の範囲から選択される。スルホニル化剤の添加及び反応に要する時間は、添加温度や反応温度により異なるが、好ましくは0.5〜5時間であり、より好ましくは1〜3時間である。
【0058】
化合物(6)と1,2,4−トリアゾールとの反応は、好ましくは、塩基の存在下で行われる。塩基としては、例えば、
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;
水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物;
炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸化物;
水素化ナトリウム、水素化リチウム等の金属水酸化物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシドが挙げられる。
塩基としては、好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水素化ナトリウム及び水素化リチウムが挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド及び水素化ナトリウムである。
【0059】
化合物(6)と1,2,4−トリアゾールとの反応は、好ましくは、さらに溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、
テトラヒドロフラン(THF)、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;
トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒;
アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;
メタノール等のアルコール溶媒;
が挙げられる。中でも好ましくは、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びメタノールが挙げられ、より好ましくは、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0060】
化合物(6)と1,2,4−トリアゾールとを反応させる温度は、反応に用いる溶媒の種類や沸点、及び塩基の種類や使用量等により異なるが、例えば20℃〜100℃の範囲、好ましくは30℃〜70℃の範囲、より好ましくは40℃〜50℃の範囲から選択される。反応時間は、反応温度等により異なるが、例えば0.5〜24時間、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。反応温度、反応時間を上述の範囲とすることにより、優れた選択性及び収率で化合物(5)を得ることができる。
【0061】
かくして得られる化合物(5)は、任意の公知の方法により単離することができる。例えば、上述の(a)記載の方法により得られる反応混合物と水及び/又は塩酸とを混合し、抽出処理、洗浄処理、乾燥処理、濃縮処理、結晶化処理、固液分離処理等を行なうことにより化合物(5)を単離することができる。結晶化処理及び固液分離処理を採用することにより、優れた品質の化合物(5)を得ることができる。また、結晶化処理及び固液分離処理を採用することは、工業的な観点からも好ましい。結晶化処理は、例えば、濃縮処理により得られる濃縮混合物の温度を所定温度に調整し、該濃縮混合物に種結晶を添加し、得られる混合物を攪拌する方法により行なわれる。種結晶の添加前及び/又は添加後に、n−ヘプタン等の炭化水素溶媒を添加してもよい。固液分離処理は、例えば、結晶化処理により得られる固液混合物をろ過する方法により行なわれる。ろ過により得られた固体を洗浄処理、乾燥処理に付してもよい。
【0062】
化合物(5)は、考えられる全ての光学活性体のいずれかであってもよいし、それらの二種以上の混合物(例えば、ラセミ体、鏡像異性体混合物又はジアステレオマー混合物)であってもよい。化合物(5)の具体例としては、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、(2S,3R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、(2S,3R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、(2S,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、
【0063】
(2S,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン、(2R,3R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン及び(2R,3R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランなどが挙げられ、好ましくは(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン及び(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランが挙げられる。
【0064】
この化合物(5)は、例えば、米国特許第5807854号明細書、国際公開第1994/026734号パンフレット、国際公開第2007/062542号パンフレット等記載の方法に従って、抗真菌剤として有用な化合物に誘導することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0066】
以下の実施例において得られた化合物は、下記の条件に従って分析を行い、その純度を求めた。
【0067】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件>
カラム:YMC PACK ODS-A, 4.6mmφ×100mm, S-3μm, 12nm
移動層:A液 蒸留水またはイオン交換水
B液 アセトニトリル/2−プロパノール=95/5 (v/v)
グラジエント条件:
時間(分) 0 15 50 50.01
移動層中のB 液濃度 18% 18% 70% 18%
流速:1.5mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
試料希釈液:アセトニトリル/イオン交換水(または蒸留水)=9/1(v/v)
注入量:15μL
保持時間:
(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノン
約9分
(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−
ブタノール
約12分
(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1
H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン
約15分
【0068】
<製造例1>
国際公開第04/000826号パンフレット記載の方法に準じて、(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを製造した。
【0069】
<実施例1>
化合物(3)及びその構造異性体を含む異性体混合物の調製
ジメチルスルホキシド(DMSO)615mL、テトラヒドロフラン(THF)259mL、ヨウ化トリメチルオキソスルホニウム158.4gを混合し、得られた混合物を11℃付近まで冷却・温調した。そこへ、水素化ナトリウム22.9g(約60%ミネラルオイルディスパージョン)と流動パラフィン46.0gとの混合物を滴下し、水素の発泡が収まるまで保温・撹拌してイリドを調製した。続いて、製造例1で得た(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノン100.0g(0.54mol)およびDMSO259mLの混合溶液を、約10℃付近に冷却した前記イリドに対して滴下し、そのまま10℃付近で保温し、反応させることにより、化合物(3)である(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール及び化合物(3’)である1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(2−メチル−2−オキシラニル)メタノールを含む反応混合物を調製した。
工程(1)
クエン酸・1水和物47.4g、水875mL及びトルエン410mLを混合して調製した溶液に対し、前記反応混合物を滴下した後、40〜45℃にて約8時間撹拌し、化合物(3’)である1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(2−メチル−2−オキシラニル)メタノールを分解し、1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(2−メチル−2−オキシラニル)メタノールを化合物(4)である3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチル−2−ヨードメチルオキシランに変換した。
工程(2)
工程(1)で得られた混合物を室温付近まで冷却し、トルエン410mL、205mLをそれぞれ用いて抽出を行った。抽出により得られたトルエン層を合一し、合一したトルエン層を、炭酸水素ナトリウム2.3gを水410mLに溶解させて調製した弱アルカリ水で洗浄し、次いで、イオン交換水410mLで2回洗浄した。洗浄したトルエン層を減圧濃縮し、得られた残渣を減圧蒸留することにより、化合物(3)である(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール62.3g得た(収率:57.9%)。その純度(HPLC面積百分率)は73.8%であった。
【0070】
<実施例2>
化合物(6)の製造
実施例1により得られた(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール60.1g(0.30mol)、トルエン300mL及びトリエチルアミン33.4gを混合し、得られた溶液を3℃付近に冷却した。その溶液を3〜8℃に保持しながら、メタンスルホニルクロリド4.4gをその溶液に対して滴下し、反応させた。反応終了後、水168mLを反応混合物に滴下し、撹拌した後、分液した。得られた有機層を、水151mL、次いで、10%食塩水16.8gで洗浄した後、減圧濃縮した。得られた濃縮残渣とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)とを混合し、化合物(6)である(R)−1−[(R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−オキシラニル]エチル メタンスルホン酸エステルの溶液を得た。
化合物(5)の製造
1,2,4−トリアゾール27.4gとDMF83mLとを混合し、得られた溶液を3〜5℃へ冷却した後、そこへ水素化ナトリウム14.3g(約60%ミネラルオイルディスパージョン)と流動パラフィン26.7gとの混合物を、3〜5℃に保持しながら滴下し、水素の発泡が収まるまで保温・撹拌した。得られた混合物を40℃付近へ昇温し、その後、室温付近へ冷却することにより、1,2,4−トリアゾールナトリウム塩スラリーを調製した。次に、調製した1,2,4−トリアゾールナトリウム塩スラリーを、45〜50℃に保温した(R)−1−[(R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−オキシラニル]エチル メタンスルホン酸エステルの前記溶液に対して滴下し、50〜55℃で保温することにより、反応させた。
反応終了後、得られた反応混合物を室温付近まで冷却し、その反応混合物を、食塩5.8gと水117mLとトルエン183mLとの混合溶液に対して滴下した後、トルエン117mL、58mLをそれぞれ用いて抽出した。得られたトルエン層を合一し、水酸化ナトリウム0.5gを水58mLに溶解して調製したアルカリ水で洗浄し、次いで、2.1%塩酸水31gで2回洗浄した。さらに、炭酸水素ナトリウム1.8gを水58mLに溶解して調製した弱アルカリ水による有機層の洗浄を行い、減圧濃縮後、化合物(5)である(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの溶液を得た。
得られた(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの溶液に、n−ヘプタン43.9gを添加し、50℃付近まで昇温した後、約40℃で(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの種結晶を接種した。同温度付近にて結晶を析出させた後、得られた混合物に、さらにn−ヘプタン14.4gを滴下した。得られた混合物を5℃付近まで冷却し、保温した後、結晶を濾過し、取得した結晶をトルエン17mLとn−ヘプタン67mLとの混合溶媒、およびn−ヘプタン83mLにて洗浄し、乾燥することにより、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン34.5gを得た(収率:45.8%)。その純度(HPLC面積百分率)は99.87%であり、1−{[3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0071】
<実施例3>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物をフタル酸に替え、(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例1と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール19.0gを得た(収率:58.8%)。その純度(HPLC面積百分率)は73.5%であった。
【0072】
<実施例4>
化合物(5)の製造
実施例3により得られた(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを用い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを17gスケールに変更した以外は、実施例2と同様に行い、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン8.4gを得た(収率:39.4%)。その純度(HPLC面積百分率)は99.92%であり、1−{[3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0073】
<実施例5>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物をDL−リンゴ酸に替え、(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例1と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール20.7gを得た(収率:64.3%)。その純度(HPLC面積百分率)は68.7%であった。
【0074】
<実施例6>
化合物(5)の製造
実施例5により得られた(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを用い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを17gスケールに変更した以外は、実施例2と同様に行い、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン8.8gを得た(収率:41.4%)。その純度(HPLC面積百分率)は100.00%であり、1−{[3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0075】
<実施例7>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物をシュウ酸に替え、(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例1と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール17.9gを得た(収率:55.5%)。その純度(HPL面積百分率)は73.7%であった。
【0076】
<実施例8>
化合物(5)の製造
実施例7により得られた(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを用い、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを17gスケールに変更した以外は、実施例2と同様に行い、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン9.5gを得た(収率:44.3%)。その純度(HPLC面百値)は99.93%であり、1−{[3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0077】
<実施例9>
化合物(3)の製造
(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを(R)−1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンに替え、(R)−1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例1と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール20.7gを得た(収率:64.3%)。その純度(HPLC面積百分率)は76.8%であった。
【0078】
<実施例10>
化合物(6)の製造
実施例9により得られた(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール20.0g(0.1mol)、トルエン100mL及びトリエチルアミン11.1gを混合し、得られた溶液を0℃付近に冷却した。その溶液を0〜10℃に保持しながら、メタンスルホニルクロリド11.4gをその溶液に対して滴下し、反応させた。反応終了後、水56mLを反応混合物に添加し、攪拌した後、分液した。得られた有機層を、水56mL、次いで、10%食塩水56gで洗浄した後、無水硫酸マグネシウム1.0gにより脱水処理した。脱処理水後、濾過により硫酸マグネシウムを除去し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)28mLを添加した。得られた混合物を減圧濃縮することによりトルエンを留去し、(R)−1−[(R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−オキシラニル]エチル メタンスルホン酸エステルの溶液を得た。
化合物(5)の製造
1,2,4−トリアゾール9.1gをDMF28mLに溶解し、得られた溶液を0〜5℃へ冷却した。そこへ水素化ナトリウム4.8g(約60%ミネラルオイルディスパージョン)と流動パラフィン8.9gとの混合物を、0〜5℃に保持しながら滴下し、水素の発泡が収まるまで保温・撹拌した。得られた混合物を40℃付近へ昇温し、その後、室温付近へ冷却することにより、1,2,4−トリアゾールナトリウム塩スラリーを調製した。次に、調製した1,2,4−トリアゾールナトリウム塩スラリーを、45〜50℃に保温した(R)−1−[(R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−オキシラニル]エチル メタンスルホン酸エステルの溶液に対して滴下し、40〜45℃で保温することにより、反応させた。
反応終了後、得られた反応混合物を室温付近まで冷却し、その反応混合物を、食塩2.0gと水39mLとトルエン61mLとの混合溶液に対して滴下した後、35%塩酸により中和し、続いてトルエン39mL、20mLをそれぞれ用いて抽出した。得られたトルエン層を合一し、2.2%塩酸水11gで2回洗浄し、次いで、水20mLで洗浄した。さらに、炭酸水素ナトリウム0.6gを水20mLに溶解して調製した弱アルカリ水による有機層の洗浄を行い、減圧濃縮後、(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの溶液を得た。
得られた(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの溶液に、n−ヘプタン19.8gを添加し、50℃付近まで昇温した後、約27℃で(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシランの種結晶を接種した。同温度付近にて結晶を析出させた後、得られた混合物に、さらにn−ヘプタン56mLを滴下した。得られた混合物を10℃付近まで冷却し、保温した後、結晶を濾過し、取得した結晶をトルエン20mLとn−ヘプタン36mLとの混合溶媒、およびn−ヘプタン56mLで洗浄し、乾燥することにより、(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン9.7gを得た(収率:38.6%)。その純度(HPLC面積百分率)は99.68%であり、1−{[3−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0079】
<実施例11>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物を塩酸に替え、(R)−1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノン46.6gスケールに変更した以外は、実施例9と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール31.1gを得た(収率:62.1%)。その純度(HPLC面積百分率)は79.5%であった。
【0080】
<実施例12>
化合物(5)の製造
実施例11により得られた(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを用い、(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを20gスケールに変更した以外は、実施例10と同様に行い、(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−メチル−2−[(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]オキシラン10.9gを得た(収率:43.4%)。その純度(HPLC面積百分率)は99.37%であり、1−{[3−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−メチルオキシラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール、即ち化合物(3’)から誘導されたトリアゾール化合物は検出されなかった。
【0081】
<実施例13>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物をフタル酸に替え、(R)−1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例9と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール19.7gを得た(収率:63.2%)。その純度(HPLC面積百分率)は76.5%であった。
【0082】
<実施例14>
化合物(3)の製造
クエン酸・1水和物をDL−リンゴ酸に替え、(R)−1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノンを30gスケールに変更した以外は、実施例9と同様に行い、(2R,3R)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール20.4gを得た(収率:64.0%)。その純度(HPLC面積百分率)は74.2%であった。
【0083】
<参考例1>
ジメチルスルホキシド(DMSO)531mL、テトラヒドロフラン(THF)186mL及びヨウ化トリメチルオキソスルホニウム115.5gを混合し、得られた混合物を8℃付近まで冷却した。そこへ、水素化ナトリウム20.0g(約60%ミネラルオイルディスパージョン)と流動パラフィン40.0gとの混合物を滴下し、水素の発泡が収まるまで保温・撹拌してイリドを調製した。続いて、(R)−1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−プロパノン93.1g(0.50mol)およびDMSO223mLの混合物を、約3℃付近に冷却したイリドに対して滴下し、そのまま約3℃にて保温し、反応させた。反応終了後、クエン酸・1水和物41.0g、水754mL及びトルエン354mLを混合して、0℃付近に温調した溶液に対し、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール及び1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(2−メチル−2−オキシラニル)メタノールを含む反応混合物を滴下した後、1〜9℃で保温し、撹拌した。続いて、トルエン354mL、177mLをそれぞれ用いて抽出を行った後、得られた有機層を合一し、炭酸水素ナトリウム2.1gを水354mLに溶解して調製した弱アルカリ水で洗浄した。有機層をさらに、イオン交換水354mLで3回洗浄した後、減圧濃縮し、得られた濃縮残渣を減圧蒸留することにより、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール70.6gを得た(収率:70.6%)。その純度(HPLC面積百分率)は66.7%であり、(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールの構造異性体(化合物(3’))が17.9%(HPLC面積百分率)含まれていた。
【0084】
<実施例15>
化合物(4)の単離
実施例1と同様の操作により、化合物(3)である(2R,3R)−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノールを蒸留により取得した後、その蒸留残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、次いで結晶化させることにより、化合物(4)である3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチル−2−ヨードメチルオキシランを単離した。単離した3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチル−2−ヨードメチルオキシランは、上述の実施例1等において、分析用標準物質として用いた。
化合物(4)の構造決定
得られた3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチル−2−ヨードメチルオキシランは、下記分析結果からその構造を決定した。

元素分析:
計算値)C:38.7%,H:2.9%,F:12.3%,I:40.9%
実測値)C:36.8%,H:3.4%,F:12.2%,I:38.3%

H−NMR:(CDCl3,δppm)1.15(3H,s),3.44(2H,dd,J=56.2,10.3Hz),5.14(1H,d,J=4.15),6.76−6.82(1H,m),6.88−6.93(1H,m),7.49−7.55(1H,m)

13C−NMR:(CDCl3,δppm)17.79,17.80,22.79,68.95,73.80,103.14,103.39,103.66,111.35,111.37,111.40,111.58,111.62,122.85,122.96,123.00,129.81,129.85,129.90,129.93,129.96,158.69,161.14,163.72
【産業上の利用可能性】
【0085】
3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−3,4−エポキシ−2−ブタノール等のエポキシアルコール化合物は、例えば抗真菌剤等の製造中間体として有用であることが知られている。本発明は、エポキシアルコール化合物の取得方法等として産業上利用可能である。3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−メチル−2−ヨードメチルオキシラン等の化合物(4)は、例えば、より一層高純度のトリアゾール化合物を製造するために産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物及びその構造異性体を含む異性体混合物を、30℃〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程(1)と、
工程(1)で得られた混合物から前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を回収する工程(2)と
を備えることを特徴とする式(3)で示されるエポキアルコール化合物の取得方法。
【請求項2】
前記構造異性体が、式(3’)
【化2】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示される化合物である請求項1記載の取得方法。
【請求項3】
工程(1)おいて、前記式(3’)で示される化合物を式(4)
【化3】

(式中、R及びArは前記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物に変換する請求項2記載の取得方法。
【請求項4】
工程(2)が、前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を蒸留により回収する工程である請求項1〜3のいずれか記載の取得方法。
【請求項5】
前記異性体混合物が、ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリド及び式(1)
【化4】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるケトアルコール化合物を反応させて得られるものである請求項1〜4のいずれか記載の取得方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の取得方法により取得した式(3)
【化5】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物を式(6)
【化6】

(式中、R及びArは前記と同義であり、Yは脱離基を示す。)
で示される化合物に変換する工程と、
前記式(6)で示される化合物と1,2,4−トリアゾールとを反応させる工程と
を備えることを特徴とする式(5)
【化7】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるトリアゾール化合物の製造方法。
【請求項7】
ハロゲン化トリメチルオキソスルホニウム又はハロゲン化トリメチルスルホニウムと塩基とから調製されるイリド及び式(1)
【化8】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるケトアルコール化合物を反応させる工程と、
前記工程で得られた式(3)
【化9】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物及びその構造異性体を含む異性体混合物を、30℃〜70℃の範囲から選択される温度で酸と混合する工程(1)と、
工程(1)で得られた混合物から前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を回収する工程(2)と
を備えることを特徴とする式(3)で示されるエポキアルコール化合物の製造方法。
【請求項8】
前記構造異性体が、式(3’)
【化10】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示される化合物である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
工程(1)おいて、前記式(3’)で示される化合物を式(4)
【化11】

(式中、R及びArは前記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物に変換する請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
工程(2)が、前記式(3)で示されるエポキアルコール化合物を蒸留により回収する工程である請求項7〜9のいずれか記載の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか記載の製造方法により製造した式(3)
【化12】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表す。)
で示されるエポキアルコール化合物を式(6)
【化13】

(式中、R及びArは前記と同義であり、Yは脱離基を示す。)
で示される化合物に変換する工程と、
前記式(6)で示される化合物と1,2,4−トリアゾールとを反応させる工程と
を備えることを特徴とする式(5)
【化14】

(式中、R及びArは前記と同義である。)
で示されるトリアゾール化合物の製造方法。
【請求項12】
式(4)
【化15】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Arはハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物。

【公開番号】特開2012−87105(P2012−87105A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237119(P2010−237119)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】