説明

エポキシドの硬化触媒

式(I)(式中、R1及びR3が相互に独立して1〜20個のC原子を有する有機基を表し、R2、R4及びR5は相互に独立してH原子又は1〜20個のC原子を有する有機基を表し、その際、R4及びR5は一緒に脂肪族又は芳香族環を形成することもでき、且つXはチオシアナートアニオンを表す)の1,3置換イミダゾリウム塩のエポキシ化合物含有組成物の硬化のための潜在性触媒としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は式I
【化1】

(式中、R1及びR3は相互に独立して1〜20個のC原子を有する有機基を表し、
R2、R4及びR5は相互に独立してH原子を表すか又は1〜20個のC原子を有する有機基を表し、その際、R4及びR5は一緒に脂肪族又は芳香族環を形成することもでき、且つ
Xはチオシアナートアニオンを表す)
の1,3−置換イミダゾリウム塩の、エポキシ化合物含有組成物の硬化のための潜在性触媒としての使用に関する。
【0002】
エポキシ化合物は、コーティングの製造に、接着剤として、成形体の製造に且つ多くの他の目的のために使用される。それらは加工の間に一般に液状の形で(適した溶剤の溶液として又は液状の、溶剤不含の100%の系として)存在する。エポキシ化合物は一般に低分子量である。使用の際にこれらは硬化される。硬化させるための種々の可能性が公知である。少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物から開始して、アミノ化合物又は少なくとも2つのアミノ基又は少なくとも1つの無水物基を有する酸無水物化合物を用いて、重付加反応(鎖長延長)によって硬化を行うことができる。高い反応性を有するアミノ化合物又は酸無水物化合物は、一般に所望の硬化の直前になってはじめて添加される。従って、これはいわゆる二成分(2K)系である。
【0003】
更に、エポキシ化合物のホモ重合又は共重合のための触媒が使用され得る。高温において初めて活性である触媒(潜在性触媒)は公知である。この種の潜在性触媒は、一成分(1K)系が可能であるという利点を有する、即ち、望ましくない早期の硬化が生じることなく、エポキシ化合物は潜在性触媒を含有し得る。
【0004】
市販されている潜在性触媒として特にアミンの三フッ化ホウ素の付加物(BF−モノエチルアミン)、第4級ホスホニウム−化合物及びジシアンジアミド(DICY)が挙げられる。
【0005】
Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition, Vol. 21, 633-638 (1983)では、この目的のために1,3−ジアルキルイミダゾリウム塩の使用が記載される。175℃を上回るそれらの分解では、1−アルキルイミダゾールが遊離され、これは次いで硬化を引き起こす。カチオンの構造が変化され、アニオンとしてハロゲン化物、塩化物及びヨウ化物が使用される。
【0006】
DE−A2416408号から、イミダゾリウム−テトラフェニルボレート又はイミダゾリウム−テトラ−n−ブチルボレートのようなイミダゾリウム−ボレートが公知である。
【0007】
US3635894号は、エポキシ化合物のための潜在性触媒として、塩化物、ホウ化物及びヨウ化物から選択された、アニオンを有する1,3−ジアルキル−イミダゾリウム塩を記載している。
【0008】
Kowalczyk及びSpychaj, Polimery (Warsaw, Poland) (2003), 48(11/12), 833-835は、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムテトラフルオロボレートの、エポキシ化合物のための潜在性触媒としての使用を記載している。この触媒の作用は190℃ではじめて始まる。
【0009】
Sun, Zhang and Wong, Journal of Adhesion Science and Technology (2004), 18(1), 109-121は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムヘキサフルオロ−ホスファートの潜在性触媒としての使用を開示している。この作用は196℃ではじめて始まる。
【0010】
JP2004217859号では、イミダゾリウム−テトラアルキル−ボレート又はイミダゾリウム−ジアルキル−ジチオカルバメートが使用される。活性化は、高エネルギーの光の照射によって行われる。
【0011】
EP0458502号は、エポキシ化合物のための多数の異なる触媒を開示している。列挙されたものの中で1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−アセテート(式1においてR1=エチル、R2=メチル及びR3=メチルである)及び1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム−アセテート−酢酸錯体も見出される。
【0012】
適した潜在性触媒はエポキシ化合物と容易に混合可能であるべきである。混合物は、室温で且つ通常の貯蔵条件で可能な限り長い時間安定しているべきであり、そのため貯蔵可能な1K系として適している。しかしながら、この使用では、硬化に必要とされる温度はあまり高くない方がよく、特に明らかに約200℃より低い方がよい。低い硬化温度によって、エネルギーコストを削減し且つ望ましくない副反応を回避することができる。低い硬化温度ではあっても、硬化した系の機械的特性及び適用技術的特性をできるだけ悪化させるべきではない。これらの特性(例えば、硬度、可撓性、接着力)が少なくともほぼ同じであるか又は更に良好にさえなることが望ましい。
【0013】
従って、本発明の課題は、前記の要求を満たす、潜在性触媒としてのイミダゾリウム塩、及びこれらのイミダゾリウム塩とエポキシ化合物との混合物であった。
【0014】
これに応じて、式Iの潜在性触媒の上で定義された使用、及び潜在性触媒を含む組成物が見出された。
【0015】
イミダゾリウム塩
本発明によれば、式I
【化2】

(式中、
R1及びR3は相互に独立して1〜20個のC原子を有する有機基を表し、
R2、R4及びR5は相互に独立してH原子を表すか又は1〜20個のC原子、特に1〜10個のC原子を有する有機基を表し、その際、R4及びR5は一緒に脂肪族又は芳香族環を形成することもでき、且つ
Xはチオシアナートアニオンを表す)
の1,3置換イミダゾリウム塩が使用される。
【0016】
R1及びR3は相互に独立して有利に1〜10個のC原子を有する有機基を表す。有機基はさらに別のヘテロ原子、特に酸素原子、有利にヒドロキシル基、エーテル基、エステル基又はカルボニル基を含むこともできる。
【0017】
特にR1及びR3は相互に独立して炭化水素基を表し、炭素及び水素の他に、場合により更にヒドロキル基、エーテル基、エステル基又はカルボニル基を含むことができる。
【0018】
R1及びR3は有利に相互に独立して1〜20個のC原子、特に1〜10個のC原子を有する炭化水素基を表し、該基はその他のヘテロ原子、例えば、酸素又は窒素を含まない。炭化水素基は脂肪族(その際、不飽和の脂肪族基も含まれる)又は芳香族であるか又は芳香族基も脂肪族基も含むことができる。
【0019】
炭化水素基として、例えば、フェニル基、ベンジル基、1つ又は複数のC1〜C4アルキル基によって置換されたフェニル基又はベンジル基、アルキル基及びアルケニル基、特にアリル基が挙げられる。
【0020】
特に有利にはR1及びR3が相互に独立してC1〜C10アルキル基、アリル基又はベンジル基を表す。アルキル基として、C1〜C6アルキル基が特に有利であり、特別な実施態様において、アルキル基はC1〜C4アルキル基のことである。
【0021】
殊に有利にはR1及びR3は相互に独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec.ブチル基又はtert.ブチル基、アリル基又はベンジル基を表し、その際、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びn−ブチル基が特に重要である。
【0022】
特別な実施態様において、
R1及びR3はメチル基を表し、
R1及びR3はエチル基を表し、
R1はメチル基を表し且つR3はエチル基を表し、
R1はメチル基を表し且つR3はn−プロピル基を表し、
R1はメチル基を表し且つR3はn−ブチル基を表し、
R1はメチル基を表し且つR3はアリル基を表し、
R1はエチル基を表し且つR3はアリル基を表し、
R1はメチル基を表し且つR3はベンジル基を表し、
R1はエチル基を表し且つR3はベンジル基を表す。
【0023】
R2、R4及びR5は相互に独立してH原子又は1〜20個のC原子を有する有機基を表し、その際、R4及びR5もまた一緒に脂肪族又は芳香族環を形成することができる。有機基は、炭素及び水素の他に窒素又は酸素のようなヘテロ原子も含むことができ;特にヒドロキシル基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基の形で、有利に酸素を含むことができる。
【0024】
特にR2、R4及びR5は相互に独立してH原子又は炭化水素基を表し、炭素及び水素の他に、場合により更にヒドロキシル基、エーテル基、エステル基又はカルボニル基を含むことができる。
【0025】
R2、R4及びR5は有利に相互に独立して水素原子又は1〜20個のC原子、特に1〜10個のC原子を有する炭化水素基を表し、該基はその他のヘテロ原子、例えば、酸素又は窒素を含まない。炭化水素基は脂肪族(その際、不飽和の脂肪族基も含まれる)又は芳香族であるか又は芳香族基も脂肪族基も存在することができ、その際、R4及びR5は芳香族又は脂肪族の炭化水素環を形成することもでき、該環は場合により更なる芳香族又は脂肪族炭化水素基によって置換されていてもよい(場合により置換された炭化水素環のC原子の数は、置換基を含めて、この場合、有利に最大40、特に最大20、特に有利に最大15、又は最大10であってよい)。
【0026】
炭化水素基として、例えば、フェニル基、ベンジル基、1つ又は複数のC1〜C4アルキル基によって置換されたフェニル基又はベンジル基、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、R4及びR5が環を形成する場合には、R4及びR5によって芳香族の5又は6員環、シクロヘキセン又はシクロペンテンが形成され、その際、これらの環系は特に1つ又は複数のC1〜C10、特にC1〜C4アルキル基によって置換されていてよい。
【0027】
特に有利にはR2、R4及びR5が相互に独立してH原子、C1〜C8アルキル基、C1〜C8アルケニル基、例えば、アリル基、フェニル基又はベンジル基を表す。
【0028】
殊に有利にはR2、R4及びR5が相互に独立してH原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、nブチル基、sec.−ブチル基又はtert.−ブチル基を表し、その際、メチル基、エチル基、nプロピル基及びnブチル基が特に重要である。
【0029】
特別な実施態様において、R2は、他の基R4及びR5並びに残りの基R1及びR3から独立してH原子を表す。R2がH原子を表す式Iのイミダゾリウム塩は、本発明の範囲内で特に有利であり、これらはエポキシ化合物中での良好な溶解度及び潜在性触媒としての高度の有効性を有する。
【0030】
特別な実施態様において、R2、R4及びR5はH原子を表し、R2はH原子又はC1〜C4アルキル基を表し且つR4、R5はH原子又はC1〜C4アルキル基を表す。
【0031】
式Iの化合物のカチオンの具体例として、以下のものが挙げられる:
1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム(R1=ブチル、R3=メチル)
1−ブチル−3−エチル−イミダゾリウム(R1=ブチル、R3=エチル)
1,3−ジ−メチル−イミダゾリウム(R1=メチル、R3=メチル)
1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム(R1=エチル、R3=メチル)
1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム(R1=エチル、R2=メチル、R3=メチル)
【0032】
Xはチオシアネート−アニオンを表す。チオシアネート−アニオンはRhodanideという名称でも知られている。それらはメソメリーの形(S−C≡N)又は(S=C=N)で存在してよい。チオシアネートという表記は、全てのメソメリー形及び更にその混合物であると理解される。
【0033】
式Iのイミダゾリウム塩は、例えば、BASF社、Sigma Aldrich社又はMerck社から市販されている。得られた塩のアニオンは、望ましい場合には、容易にイオン交換によって他のアニオンにより置換されてよい。
【0034】
エポキシ化合物
硬化性組成物はエポキシ化合物を含有する。特に1〜10個のエポキシ基を有する、有利に少なくとも2個のエポキシ基を有する、エポキシ化合物が挙げられる。
【0035】
特に有利には硬化性組成物は、2〜6個、殊に有利には2〜4個、そして特別に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む。
【0036】
エポキシ基は、特に、アルコール基とエピクロロヒドリンとの反応の際に生じる、グリシジルエーテル基である。
【0037】
エポキシ化合物は、一般に1000g/モルより小さい平均分子量Mnを有する低分子量の化合物であるか又は高分子化合物(ポリマー)であってよい。それらは脂肪族、更に脂環式化合物又は芳香族基を有する化合物であってよい。
【0038】
特に、エポキシ化合物は、2つの芳香族又は脂肪族の6員環又はそれらのオリゴマーを有する化合物である。
【0039】
技術的に、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つの反応性H原子を有する化合物、特にポリオールとの反応によって得られるエポキシ化合物が重要である。
【0040】
技術的に特に、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つ、有利に2つのヒドロキシル基及び2つの芳香族又は脂肪族の6員環を含有する化合物との反応によって得られるエポキシ化合物が重要である;このような化合物として特にビスフェノールA及びビスフェノールF、並びに水素化ビスフェノールA及びビスフェノールFが挙げられる。
【0041】
また、エピクロロヒドリンと、その他のフェノール、例えば、クレゾール又はフェノール−アルデヒド−付加物、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、特にノボラックとの反応生成物も挙げられる。
【0042】
当然のことながらエピクロロヒドリンから誘導されていないエポキシ化合物も適している。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとのラジカル共重合によってエポキシ基を含有するエポキシ化合物が挙げられる。これに関連して、DowのERL−4221(CAS Nummer 2386−87−0)も挙げられる:
【化3】

【0043】
この組成物の使用にとって適しているのは、特に20〜100℃、特に有利には20〜40℃、殊に有利には20℃の加工温度において液状のエポキシ化合物である。
【0044】
組成物のその他の成分
本発明による組成物は、潜在性触媒及びエポキシ化合物に加えて更なる成分を含有することができる。
【0045】
この組成物は1K系又は更に貯蔵可能な成分として2K系に適している。
【0046】
2K系において使用の直前になってはじめて第2の非常に反応性の高い成分が添加される;第2の成分の添加後に、得られる混合物はもはや貯蔵安定性ではない。なぜなら架橋反応又は硬化が始まり、粘度増大が起こるからである。
【0047】
1K系は既に全ての必要とされる成分を含有し、それは貯蔵安定性である。
【0048】
具体的に特別に記載のない限り、組成物について次の記載は1K系にも2K系にも適用される。
【0049】
組成物は、エポキシ化合物の他に、更なる反応性の成分又は非反応性の成分を含有することができる。
【0050】
例えば、フェノール樹脂が挙げられる;フェノール樹脂という概念は、ここではフェノールの縮合生成物又はフェノールの誘導体、例えば、o−、m−又はp−クレゾール、及びアルデヒド又はケトン、特にホルムアルデヒドと理解される。フェノール樹脂として特にレゾール及び殊にいわゆるノボラックが適しており、この場合それはフェノール又はクレゾールとホルムアルデヒド、殊にモル過剰量のフェノールとの酸縮合によって得られるフェノール樹脂である。ノボラックは有利にアルコール又はアセトンに可溶性である。
【0051】
無水物架橋剤、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−テトラヒドロフタル酸無水物、3−メチル−テトラヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物又は3−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物もまた挙げられる。
【0052】
フェノール樹脂及び無水物硬化剤は重付加の形でエポキシ化合物と架橋する。この重付加反応、殊にエポキシ化合物とフェノール樹脂との重付加反応もまた、式Iのイミダゾリウム塩により促進される。
【0053】
従って、式Iのイミダゾリウム塩、エポキシ化合物の他に、さらに少なくとも1つのフェノール樹脂、有利に1つのノボラックを含有する、本発明による組成物もまた特に適している。
【0054】
非反応性成分として、更なる架橋反応をしない樹脂、並びに無機充填剤又は顔料が挙げられる。
【0055】
組成物は溶剤も含有することができる。場合により所望の粘度に調整するための有機溶剤が挙げられる。
【0056】
有利な一実施態様において、組成物は場合により副次的量(100質量部のエポキシ化合物に対して20質量部より低い、殊に10質量部より低い又は5質量部より低い)で溶剤を含有し、特に有利には溶剤を含有しない(100%の系)。
【0057】
有利な組成物は、少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、特に有利には少なくとも70質量%がエポキシ化合物から構成される(場合により併用される溶剤を除く)。
【0058】
式Iのイミダゾリウム塩の含有量は、100質量部のエポキシ化合物に対して有利には0.01〜10質量部であり、特に有利には100質量部のエポキシ化合物に対して少なくとも0.1質量部、殊に少なくとも0.5質量部、及び殊に有利には少なくとも1質量部であり;該含有量は有利には100質量部のエポキシ化合物に対して8質量部以下、殊に6質量部以下であり、殊に、該含有量は100質量部のエポキシ化合物に対して例えば、1〜6質量部又は3〜5質量部であってもよい。
【0059】
式Iのイミダゾリウム塩の他に、該組成物はまた、もちろん更なる、これまでに既に公知の潜在性触媒、例えば、アミンの三フッ化ホウ素の付加物(BF3−モノエチルアミン)、第4級ホスホニウム−化合物又はジシアンジアミド(DICY)を含有してよい。
【0060】
組成物は有利には、20〜100℃、特に有利には20〜40℃、殊に有利には20℃の加工温度において液状である。
【0061】
50℃までの温度における全組成物の粘度の増大は、(潜在性触媒の添加から)10時間にわたり、特に100時間にわたり、21℃、1バールにおいて潜在性触媒なしの組成物の粘度に対して20%未満、特に有利には10%未満、更に特に有利には5%未満、殊に2%未満である。
【0062】
前記の組成物は1K系として適している。
【0063】
これは2K系の貯蔵可能な成分としても適している。
【0064】
2K系の場合、高い反応性の成分、例えば、通常の、非常に反応性の高いアミン硬化剤又は反応性無水物硬化剤のみが使用前に添加され、次いで粘度増大において認められる硬化が起こる。
【0065】
例えば、通常、2K系のエポキシ化合物のための架橋剤として使用される反応性ポリアミン又はポリ無水物が挙げられる。公知のアミン架橋剤は、特に脂肪族ポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラ−アミン又は酸化プロピレン及びアンモニアをベースとするアミン(ポリエーテルアミン)である。
【0066】
硬化及び使用
式Iのイミダゾリウム塩を含む組成物は貯蔵安定性である。式Iのイミダゾリウム塩は、エポキシ化合物中に且つ本発明による組成物中に十分に可溶性である。式Iのイミダゾリウム塩は、潜在性触媒として組成物中で有効である。その効果はエポキシ化合物の重合又は架橋の際に非常に良好である。
【0067】
40℃未満、特に30℃未満の通常の貯蔵温度において、組成物の粘度の増大は全く又はほとんど観察されない。従って、該組成物は1K系として適している。1K系は使用前に硬化又は架橋を引き起こす第2の成分の添加を必要としない。
【0068】
この組成物もまたもちろん貯蔵可能な成分として2K系に適している(上記参照のこと)。
【0069】
1K系又は更に2K系としての組成物の硬化は、これまでに公知の潜在性イミダゾリウム触媒を用いて可能であったよりも低い温度で行うことができる。硬化は、常圧で且つ250℃より低い温度で、特に200℃より低い温度で、有利には175℃より低い温度で、特に有利には150℃より低い温度で且つ更に特に有利には125℃より低く且つ更に100℃より低い温度で行うことができる。硬化は更に80℃より低い温度でも可能である。硬化は特に、40〜175℃、特に60〜150℃、又は60〜125℃の温度範囲で行うことができる。
【0070】
本発明による組成物は、被覆剤もしくは含浸剤として、接着剤として、複合材料として、成形体の製造のために又は成形体の埋め込み、結合もしくは固定のための注型材料として適している。これと次の記載は1K系にも2K系にも適用され、有利な系は全ての上述の使用において1K系である。
【0071】
被覆剤として、例えば、ラッカーが挙げられる。特に、本発明による組成物(1K又は2K)を用いて、例えば、金属、プラスチック又は木材料製の任意の基体上で、耐引掻性保護ラッカーを得ることができる。この組成物はまた電子用途における絶縁被覆として、例えば、ワイヤ及びケーブルのための絶縁被覆としても適している。フォトレジストの製造のための使用も挙げられる。それらはまた特に、例えば、管の解体がない管の補修(所定の管の(CIPP)更生)での補修ラッカーとしても適している。それらは床の被覆にも適している。
【0072】
接着剤として1K又は2K−構造用接着剤が挙げられる。構造用接着剤は成形部材の相互の持続的な接合のために使用される。該成形部材は任意の材料から構成されており;プラスチック、金属、木、革、陶器等からの材料が挙げられる。この場合、比較的高い温度になって初めて流動性且つ加工可能である溶融接着剤(ホットメルト接着剤)であってもよい。床の接着剤であってもよい。この組成物は、特にSMT法(面実装技術)による、プリント配線板(電子回路)の製造のための接着剤としても適している。
【0073】
複合材料中で種々の材料、例えば、プラスチック及び補強材(繊維、炭素繊維)は互いに結合されている。
【0074】
組成物は、予め含浸加工された繊維、例えば、プリプレグの製造及びその更なる複合材料への加工に適している。
【0075】
複合材料の製造方法として、貯蔵後の予め含浸加工された繊維もしくは繊維織布(例えば、プリプレグ)の硬化又は押出、引き抜き(引抜成形)、巻き付け(巻き取り)及び樹脂トランスファ成形(RTM)、樹脂注入技術(RI)が挙げられる。
【0076】
特に繊維は本発明による組成物で含浸され、その後高温で硬化されることができる。含浸及び場合によりその後の貯蔵の間に、まだ硬化が起こらないか又はほんのわずかな硬化が起こるのみである。
【0077】
成形体の埋め込み、結合もしくは固定のための注型材料として、この組成物は、例えば、電子用途で使用される。これは、フリップチップ余盛不足として又は電気鋳造樹脂として、注型封入、鋳込み成形及び(グロブトップ)封入成形に適している。
【0078】
実施例
使用物質
エポキシ化合物として、NPEL127Hの名称でNan Ya社の市販品として入手可能な、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(略称、DGEBA)を使用した。
【0079】
試験した組成物
それぞれ5質量部のイミダゾリウム塩又はイミダゾリウム塩の混合物と100質量部のエポキシ化合物とを混合した。この組成物及び結果を表1に列記する。1及び1xxの場合には、更なる成分を有する混合物も試験した(表2の脚注を参照)。
【0080】
測定方法
硬化の開始と過程を、示差走査熱量測定(DSC)を用いて試験した。そのために、5〜15ミリグラムの組成物を、DSC熱量計(DSC 822, Mettler Toledo)中で10℃/分の一定速度で加熱した。
【0081】
To(発熱性重合反応の開始、開始温度、Tmax(発熱ピークの最大温度、最大の反応促進に相応する)及びΔH(DSC曲線の積分、重合反応の全ての放出された熱量に相応する)を測定した。
【0082】
更に、硬化して、十分に反応した試料のガラス転移温度(Tg)を、次のようにDSC測定によって測定した:
20gの未硬化の組成物を3〜4mmのフィルム厚でアルミニウム平鍋中に添加し且つ40℃、60℃、80℃、100℃、120℃及び140℃の場合にそれぞれ30分間硬化させた。硬化した試料のTgを、DSC測定によって30℃/分の加熱速度で3つの互いに独立した測定の平均値として測定した。
【0083】
貯蔵安定性(ポットライフ)は、相対粘度(GELNORM(登録商標)−RVN粘度計)の測定によって検査した。種々の温度(25℃、80℃、100℃及び120℃)で、時間を日(d)又は分(min)で測定した。記載されている時間は、その時間の後でも混合物がなお注型可能である時間である。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、R1及びR3が相互に独立して1〜20個のC原子を有する有機基を表し
R2、R4及びR5は相互に独立してH原子又は1〜20個のC原子を有する有機基を表し、その際、R4及びR5は一緒に脂肪族又は芳香族環を形成することもでき、且つ
Xはチオシアナートアニオンを表す)
の1,3置換イミダゾリウム塩のエポキシ化合物含有組成物の硬化のための潜在性触媒としての使用。
【請求項2】
R1及びR3が相互に独立してC1〜C10のアルキル基、アリル基又はベンジル基を表す、請求項1記載の使用。
【請求項3】
R2、R4及びR5が相互に独立してH原子又はC1〜C8アルキル基、C1〜C8アルケニル基、特にアリル基、フェニル基又はベンジル基を表す、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
R2がH原子を表す、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
硬化性組成物が少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
硬化性組成物が平均して2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
組成物がエピクロロヒドリンとアルコールとの反応によって得られたエポキシ化合物を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
組成物は水及び有機溶媒を除いて、少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%のエポキシ化合物から構成される、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
組成物が付加的な成分、例えば、無水物硬化剤又はフェノール樹脂、特にノボラックを更に含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
潜在性触媒の含有量が100質量部のエポキシ化合物に対して0.01〜10質量部である、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
エポキシ化合物及び式Iの潜在性触媒を含有する、硬化性組成物。
【請求項12】
水及び有機溶剤を除いて、少なくとも30質量%がエポキシ化合物から構成される、請求項11記載の硬化性組成物。
【請求項13】
硬化が200℃より低い温度で行われる、請求項11又は12記載の組成物の硬化方法。
【請求項14】
被覆剤もしくは含浸剤として、接着剤として、複合材料中で、成形体の製造のため、又は成形体の埋め込み、結合もしくは固定のための注型材料としての請求項11又は12記載の硬化性組成物の使用。

【公表番号】特表2010−530909(P2010−530909A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511599(P2010−511599)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057120
【国際公開番号】WO2008/152005
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】