説明

エポキシ化触媒、触媒を調製するための方法および酸化オレフィン、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンを製造する方法。

担体ならびに、担体上に付着させられた、銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒を含み、第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きく、第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され、第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択される、オレフィンのエポキシ化のための触媒、この触媒を調製する方法、オレフィンおよび酸素を含む供給原料を触媒の存在下で反応させることによる酸化オレフィンを調製する方法、ならびに1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化触媒、触媒を調製する方法および酸化オレフィン、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンのエポキシ化においては、オレフィンおよび酸素を含有している供給原料をエポキシ化条件下で触媒と接触させる。オレフィンは酸素と反応させられて酸化オレフィンを形成する。酸化オレフィンと通常は、未反応の供給原料および燃焼生成物を含有する生成混合物が生じる。
【0003】
酸化オレフィンは、水と反応させられて1,2−ジオールを形成し、二酸化炭素と反応させられて1,2−カーボネートを形成し、アルコールと反応させられて1,2−ジオールエーテルを形成しまたはアミンと反応させられてアルカノールアミンを形成することができる。したがって、1,2−ジオール、1,2−カーボネート、1,2−ジオールエーテルおよびアルカノールアミンは、最初にオレフィンのエポキシ化および次いで形成された酸化オレフィンの水、二酸化炭素、アルコールまたはアミンによる転化を含む多段法において生成され得る。
【0004】
オレフィンエポキシ化触媒は通常、銀成分を、普通はこれと一緒に担体上に付着させられた1種または複数のさらなる元素と共に含む。US4766105は、担体上に支持されている銀、アルカリ金属、レニウムならびにイオウ、モリブデン、タングステン、クロムおよびこれらの混合物から選択されるレニウム共助触媒を含む酸化エチレン触媒を開示している。US4766105に記載されている酸化エチレン触媒は、1つまたは複数の触媒特性の向上をもたらす。
【0005】
触媒の性能は選択率、活性および操作の安定性に基づいて評価され得る。選択率とは、所望の酸化オレフィンをもたらす転化されたオレフィンの分率である。触媒が老化すると、転化されるオレフィンの分率は通常、時間と共に低下し、酸化オレフィン製造の一定のレベルを維持するためには、反応の温度を上げることができる。
【0006】
選択率がエポキシ化法の経済的魅力をかなりの程度で決定する。例えば、エポキシ化法の選択率における1パーセントの向上は、大規模な酸化エチレンプラントの年間操業コストを大幅に低減し得る。さらに、活性および選択率が許容され得る値に長く維持されるほど、投入触媒は反応器中により長く保持されることができ、より多くの製品が得られる。選択率、活性ならびに長期にわたる選択率および活性の維持における少しの向上が、プロセス効率に関しては相当な利益をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4766105号明細書
【発明の概要】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、担体ならびに、担体上に付着させられた、銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒を含み、第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きく、第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され、第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択される、オレフィンのエポキシ化のための触媒を提供する。
【0009】
本発明はまた、銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒を担体上に付着させること含み、第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きく、第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され、第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択される、エポキシ化触媒を調製するための方法も提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明により調製されたエポキシ化触媒の存在下でオレフィンを酸素と反応させることを含む、オレフィンのエポキシ化の方法も提供する。
【0011】
さらに本発明は、本発明によるオレフィンのエポキシ化の方法によって酸化オレフィンを得ることおよびこの酸化オレフィンを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンに転化させることを含む、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンを調製する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による銀、レニウム助触媒および第2の共助触媒より多いモル量の第1の共助触媒を含むエポキシ化触媒は、銀、レニウム助触媒および本発明によらない第1の共助触媒および第2の共助触媒のあるモル量を含み、同じ酸化オレフィン製造レベルにおいて運転される類似のエポキシ化触媒と比較して、予想外の触媒性能の向上、特に当初の選択性、当初の活性および/または触媒の寿命の向上を示す。第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択されることができ、第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択されることができる。
【0013】
一般に、エポキシ化触媒は担持触媒である。担体は幅広い範囲の材料から選択され得る。かかる担体材料は、天然または人工の無機材料であってよく、これらはシリコンカーバイド、粘土、軽石、ゼオライト、木炭および炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩を含む。アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカおよびこれらの混合物などの耐火物の担体材料が好ましい。最も好ましい担体材料はα−アルミナである。
【0014】
担体の表面積は、担体の重量に対して、適当には少なくとも0.1m/g、好ましくは少なくとも0.3m/g、より好ましくは少なくとも0.5m/g、特に少なくとも0.6m/gであればよく、表面積は、担体の重量に対して、適当には最大で20m/g、好ましくは最大で10m/g、より好ましくは最大で6m/g、特に最大で4m/gであればよい。本明細書において使用される「表面積」とは、Journal of the American Chemical Society、60巻(1938年)、309−316頁に記載されているB.E.T.(Brunauer、EmmettおよびTeller)法によって決定される表面積に関するものと理解される。表面積の大きい担体は、特にこれらが加えてシリカ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属成分を場合により含むα−アルミナ担体である場合には、向上した性能および運転の安定性を提供する。
【0015】
担体の吸水率は、適当には少なくとも0.2/g、好ましくは少なくとも0.25g/g、より好ましくは少なくとも0.3g/g、最も好ましくは少なくとも0.35g/gであればよく、吸水率は、適当には最大で0.85g/g、好ましくは最大で0.7g/g、より好ましくは最大で0.65g/g、最も好ましくは最大で0.6g/gであればよい。担体の吸水率は、0.2から0.85g/gの範囲内、好ましくは0.25から0.7g/gの範囲内、より好ましくは0.3から0.65g/gの範囲内、最も好ましくは0.3から0.6g/gの範囲内であればよい。より高い吸水率は、含浸による担体上の金属および助触媒のより効率的な付着の観点からは好ましい。しかし、より高い吸水率では、担体またはこれより作製された触媒が、より低い破砕強度を有することがある。本明細書において使用される吸水率は、ASTM C20に従って測定されたものと見なされ、吸水率は担体の重量に対する担体の細孔内に吸収され得る水の重量として表現される。
【0016】
担体は、触媒成分の担体上への付着の前に、可溶性残留物を除去するために洗浄されてもよい。加えて、担体を形成させるために使用される材料も、焼却材料を含めて、可溶性残留物を除去するために洗浄されてもよい。かかる担体は、参照により本明細書に組み込まれるUS−B−6368998およびWO2007/095453に記載されている。一方、未洗浄の担体も首尾よく使用され得る。担体の洗浄は一般に、大部分の可溶性および/またはイオン化可能な材料を担体から除去するために有効な条件下で行われる。
【0017】
洗浄液は、例えば水、1種または複数の塩を含む水溶液または水性の有機希釈剤であり得る。水溶液中に含めるのに適当な塩は、例えばアンモニウム塩を含み得る。適当なアンモニウム塩は、例えば硝酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、例えば酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムなどを含み得る。適当な塩は他の種類の硝酸塩、アルカリ金属硝酸塩、例えば硝酸リチウム、硝酸カリウムおよび硝酸セシウムなども含み得る。水溶液中に存在するすべての塩の適当な量は、少なくとも0.001重量%、特に少なくとも0.005重量%、より特別には少なくとも0.01重量%および最大で10重量%、特に最大で1重量%、例えば0.03重量%であり得る。含まれていても含まれていなくてもよい適当な有機希釈剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、アセトンまたはメチルエチルケトンの1種または複数である。
【0018】
銀触媒の調製は、当技術分野において知られており、それらの知られている方法は本発明の実施において使用され得る触媒の調製に適用できる。銀を担体上に付着させる方法は、担体または担体塊にカチオン銀および/または錯体化された銀を含有している銀化合物を含浸させることおよび還元を行って金属銀粒子を形成させることを含む。かかる方法のさらに詳細な記載については、参照により本明細書に組み込まれるUS−A−5380697、US−A−5739075、US−A−4766105およびUS−B−6368998を参照すればよい。適当な銀分散液、例えば銀ゾルが担体上に銀を付着させるために使用され得る。
【0019】
カチオン銀の金属銀への還元は、触媒が乾燥されるステップの間に遂行され得るので、こうした還元は別個の処理ステップを必要としない。これは、銀を含有している含浸溶液が還元剤、例えばオキサレート、ラクテートまたはホルムアルデヒドを含む場合に当てはまる。
【0020】
触媒の重量に対して少なくとも10g/kgの触媒の銀含有量を使用することによって、かなりの触媒活性が得られる。好ましくは、触媒は10から500g/kg、より好ましくは50から450g/kg、例えば105g/kgまたは120g/kgまたは190g/kgまたは250g/kgまたは350g/kgの量で銀を含む。本明細書において使用される触媒の重量は、別途に指定されない限り、担体および触媒成分、例えば銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒およびもしあればその他の元素の重量を含む触媒の全重量であると見なされる。
【0021】
本発明における使用のための触媒は、加えてレニウム助触媒成分を含む。レニウム助触媒が担体上に付着させられ得る形態は、本発明の題材ではない。例えば、レニウム助触媒は適当には酸化物としてまたはオキシアニオン、例えば塩または酸形態中のレネートまたはペルレネートとして提供され得る。
【0022】
レニウム助触媒は、触媒の重量に対するこの元素の合計量として計算されて、少なくとも0.01ミリモル/kg、好ましくは少なくとも0.1ミリモル/kg、より好ましくは少なくとも0.5ミリモル/kg、最も好ましくは少なくとも1ミリモル/kg、特に少なくとも1.25ミリモル/kg、より特に少なくとも1.5ミリモル/kgの量で存在し得る。レニウム助触媒は、触媒の重量に対するこの元素の合計量として計算されて、最大で500ミリモル/kg、好ましくは最大で50ミリモル/kg、より好ましくは最大で10ミリモル/kgの量で存在し得る。
【0023】
本発明における使用のための触媒は、加えて第1の共助触媒成分を含む。第1の共助触媒は、イオウ、リン、ホウ素、およびこれらの混合物から選択され得る。第1の共助触媒は元素としてイオウを含むことが特に好ましい。
【0024】
本発明における使用のための触媒は、加えて第2の共助触媒成分を含む。第2の共助触媒成分は、タングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択され得る。第2の共助触媒成分は元素としてタングステンおよび/またはモリブデン、特にタングステンを含むことが特に好ましい。第1の共助触媒および第2の共助触媒の両成分が担体上に付着させられ得る形態は本発明の題材ではない。例えば、第1の共助触媒および第2の共助触媒の両成分は、適当には酸化物またはオキシアニオン、例えば塩または酸形態中のタングステート、モリブデートまたはサルフェートとして提供され得る。
【0025】
本発明によれば、第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きい。好ましくは、第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2、特に少なくとも2.5である。第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は最大で20、好ましくは最大で15、より好ましくは最大で10、最も好ましくは最大で7.5であってよい。
【0026】
第1の共助触媒は、触媒の重量に対する元素の合計量(すなわち、イオウ、リンおよび/またはホウ素の合計)として計算されて、少なくとも0.2ミリモル/kg、好ましくは少なくとも0.3ミリモル/kg、より好ましくは少なくとも0.5ミリモル/kg、最も好ましくは少なくとも1ミリモル/kg、特に少なくとも1.5ミリモル/kg、より特に少なくとも2ミリモル/kgの合計量で存在し得る。第1の共助触媒は、触媒の重量に対する元素の合計量として計算されて、最大で50ミリモル/kg、好ましくは最大で40ミリモル/kg、より好ましくは最大で30ミリモル/kg、最も好ましくは最大で20ミリモル/kg、特に最大で10ミリモル/kg、より特に最大で6ミリモル/kgの合計量で存在し得る。
【0027】
第2の共助触媒成分は、触媒の重量に対する元素の合計量(すなわち、タングステン、モリブデンおよび/またはクロムの合計)として計算されて、少なくとも0.1ミリモル/kg、好ましくは少なくとも0.15ミリモル/kg、より好ましくは少なくとも0.2ミリモル/kg、最も好ましくは少なくとも0.25ミリモル/kg、特に少なくとも0.3ミリモル/kg、より特に少なくとも0.4ミリモル/kgの合計量で存在し得る。第2の共助触媒は、触媒の重量に対する元素の合計量として計算されて、最大で40ミリモル/kg、好ましくは最大で20ミリモル/kg、より好ましくは最大で10ミリモル/kg、最も好ましくは最大で5ミリモル/kgの合計量で存在し得る。
【0028】
一実施形態において、レニウム助触媒対第2共助触媒のモル比は、1より大きくてよい。この実施形態において、レニウム助触媒対第2共助触媒のモル比は、好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5であってよい。レニウム助触媒対第2共助触媒のモル比は、最大で20、好ましくは最大で15、より好ましくは最大で10であってよい。
【0029】
一実施形態において、触媒はレニウム助触媒を触媒の重量に対して1ミリモル/kgより多い量で含み、また担体上に付着させられた第1共助触媒と第2共助触媒の合計量は、触媒の重量に対する元素の合計量(すなわちイオウ、リン、ホウ素、タングステン、モリブデンおよび/またはクロムの合計)として計算されて、最大で3.8ミリモル/kgであってよい。この実施形態において、第1共助触媒と第2共助触媒の合計量は触媒の好ましくは最大で3.5ミリモル/kg、より好ましくは最大で3ミリモル/kgであってよい。この実施形態において、第1共助触媒と第2共助触媒の合計量は触媒の好ましくは少なくとも0.1ミリモル/kg、より好ましくは少なくとも0.5ミリモル/kg、最も好ましくは少なくとも1ミリモル/kgであってよい。
【0030】
触媒は、好ましくは担体上に付着させられたさらなる元素をさらに含み得る。好適なさらなる元素は、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウムおよびゲルマニウムおよびこれらの混合物の1種または複数であり得る。好ましくは、アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、ルビジウムおよびセシウムから選択される。最も好ましくは、アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、および/またはセシウムである。好ましくは、アルカリ土類金属はカルシウム、マグネシウムおよびバリウムから選択される。好ましくは、さらなる元素は触媒中に触媒の重量に対する元素の合計量として計算されて、0.01から500ミリモル/kg、より好ましくは0.5から100ミリモル/kgの合計量で存在し得る。さらなる元素はどの形態においても提供され得る。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩または水酸化物が適当である。例えば、リチウム化合物は水酸化リチウムまたは硝酸リチウムであればよい。
【0031】
一実施形態において、触媒は好ましくは、担体に付着させられたカリウム助触媒をさらに含み得る。追加のカリウム助触媒は、触媒の作製において使用される担体が浸出可能なカリウムを低レベル含有している場合に特に好ましい。例えば、追加のカリウム助触媒は、担体が硝酸浸出可能なカリウムを担体の重量に対して最大で85重量ppm未満の量で、同じ基準で適当には最大で80重量ppm、より適当には最大で75重量ppm、最も適当には最大で65重量%の量で含有している場合に特に好ましい。追加のカリウム助触媒は、担体が水浸出可能なカリウムを触媒の重量に対して40重量ppm未満、適当には最大で35重量ppm、より適当には最大で30重量ppmの量で含有している場合に特に好ましい。この実施形態において、カリウム助触媒は、触媒の重量に対する付着させられたカリウムの合計量として計算されて、少なくとも0.5ミリモル/kg、好ましくは少なくとも1ミリモル/kg、より好ましくは少なくとも1.5ミリモル/kg、最も好ましくは少なくとも1.75ミリモル/kgの量で付着させられ得る。カリウム助触媒は、同じ基準において最大で20ミリモル/kg、好ましくは最大で15ミリモル/kg、より好ましくは最大で10ミリモル/kg、最も好ましくは最大で5ミリモル/kgの量で付着させられ得る。カリウム助触媒は、同じ基準で0.5から20ミリモル/kg、好ましくは1から15ミリモル/kg、より好ましくは1.5から7.5ミリモル/kg、最も好ましくは1.75から5ミリモル/kgの範囲内の量で付着させられ得る。この実施形態によって調製された触媒は、触媒の選択率、活性および/または安定性の向上を、特に反応供給原料が本明細書において後記される低レベルの二酸化炭素を含有する条件下で操作される場合に示し得る。
【0032】
一実施形態において、触媒は好ましくは、触媒の水抽出可能なカリウムの量が触媒の重量に対して少なくとも1.25ミリモル/kg、同じ基準で適当には少なくとも1.5ミリモル/kg、より適当には少なくとも1.75ミリモル/kgであり得るような量のカリウムを含有し得る。適当には、触媒は、水抽出可能なカリウムを同じ基準で最大で10ミリモル/kg、より適当には最大で7.5ミリモル/kg、最も適当には最大で5ミリモル/kgの量で含有し得る。適当には、触媒は水抽出可能なカリウムを同じ基準で1.25から10ミリモル/kg、より適当には1.5から7.5ミリモル/kg、最も適当には1.75から5ミリモル/kgの範囲内の量で含有し得る。水抽出可能なカリウムの供給源は、担体および/または触媒成分に由来してよい。触媒中の水抽出可能なカリウムの量は、触媒から抽出され得る範囲の量であると見なされる。抽出は、触媒の2グラムのサンプルを25グラムの部分に分けた脱イオン水の中で100℃において5分間加熱することによって3回抽出し、合わせた抽出液中でカリウムの量を知られている方法、例えば原子吸光分析法を使用することによって判定することを含む。
【0033】
本明細書において使用される触媒中に存在するアルカリ金属の量および担体中に存在する水浸出可能な成分の量は、別途に指定されない限りは、触媒または担体から100℃の脱イオン水によって抽出され得る範囲の量であると見なされる。抽出方法は、触媒または担体の10グラムのサンプルを20mlの部分に分けた脱イオン水の中で100℃において5分間加熱することによって3回抽出することおよび合わせた抽出液中で関連する金属を知られている方法、例えば原子吸光分析法を使用することによって判定することを含む。
【0034】
本明細書において使用される触媒中に存在するアルカリ土類金属の量および担体中に存在する酸に浸出可能な成分の量は、別途に指定されない限りは、触媒または担体から100℃の脱イオン水中の10重量%の硝酸によって抽出され得る範囲の量であると見なされる。抽出方法は、触媒または担体の10グラムのサンプルを100mlの部分に分けた10重量%硝酸と共に30分間(1atm、すなわち101.3kPa)煮沸することによって抽出することおよび合わせた抽出液中で関連する金属を知られている方法、例えば原子吸光分析法を使用することによって判定することを含む。参照により本明細書に組み込まれるUS−A−5801259に言及しておく。
【0035】
本発明のエポキシ化法は多くの方式で行い得るが、これは気相法、すなわち供給原料が気相で通常充填床中の固体材料として存在する触媒と接触させられる方法として行うことが好ましい、一般に、この方法は連続法として行われる。
【0036】
本エポキシ化法における使用のためのオレフィンは、芳香族オレフィン、例えばスチレン、または共役であろうとなかろうとジオレフィン、例えば1,9−デカジエンまたは1,3−ブタジエンなどの任意のオレフィンであり得る。通常、オレフィンはモノオレフィン、例えば2−ブテンまたはイソブテンである。好ましくは、オレフィンはモノ−α−オレフィン、例えば1−ブテンまたはプロピレンである。最も好ましいオレフィンはエチレンである。適当には、オレフィンの混合物が使用され得る。
【0037】
供給原料中に存在するオレフィンの量は幅広い範囲内で選択され得る。通常、供給原料中に存在するオレフィンの量は、全供給原料に対して最大で80モル%である。好ましくは、これは同じ基準で0.5から70モル%、特に1から60モル%の範囲内である。本明細書において使用される供給原料は、触媒と接触させられる組成物であると考えられる。
【0038】
本発明のエポキシ化法は、空気に基づくまたは酸素に基づくことができ、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、3版、9巻、1980年、445−447頁を参照されたい。空気に基づく方法においては、空気または酸素で富化された空気が酸化剤の供給源として使用され、酸素に基づく方法においては高純度(少なくとも95モル%)または非常に高純度(少なくとも99.5モル%)の酸素が酸化剤の供給源として使用される。酸素に基づく方法のより詳細な説明については、参照により組み込まれるUS6040467に言及することができる。現時点ではほとんどのエポキシ化プラントが酸素に基づいており、これが本発明の1つの好ましい実施形態である。
【0039】
供給原料中に存在する酸素の量は、幅広い範囲内で選択され得る。しかし、実際には、酸素は一般に可燃域を避ける量で適用される。通常、適用される酸素の量は、全供給原料の1から15モル%、より通常には2から12モル%の範囲内である。
【0040】
可燃状況の外に留めるために、オレフィンの量が増加されるにつれて供給原料中に存在する酸素の量を低減させ得る。実際の安全な運転範囲は、供給原料の組成と共に、反応温度および圧力などの反応条件にも依存する。
【0041】
反応調整剤は、オレフィンまたは酸化オレフィンの二酸化炭素と水への望ましくない酸化を、所望の酸化オレフィンの形成と相対的に抑制して選択率を高めるために供給原料中に存在し得る。多くの有機化合物、特に有機ハロゲン化物および有機窒素化合物が反応調整剤として使用され得る。窒素酸化物、ニトロメタン、ニトロエタンおよびニトロプロパンなどの有機ニトロ化合物、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはアンモニアも同様に使用され得る。オレフィンのエポキシ化の操作条件下では、窒素を含有している反応調整剤はナイトレートまたはナイトライトの前駆体である、すなわちこれらはいわゆるナイトレートまたはナイトライト形成化合物であると考えられることが多い。窒素含有反応調整剤のより詳細な説明については参照により本明細書に組み込まれる欧州特許公開3642号明細書および米国特許公開4822900号明細書が参照され得る。
【0042】
有機ハロゲン化物、特に有機臭化物、より特に有機塩化物は好ましい反応調整剤である。好ましい有機ハロゲン化物はクロロ炭化水素またはブロモ炭化水素である。より好ましくはこれらは塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニルまたはこれらの混合物から成る群から選択される。最も好ましい反応調整剤は塩化エチル、塩化ビニルおよび二塩化エチレンである。
【0043】
適当な窒素酸化物は、一般式NOのものであり、このxは1から2の範囲内であり、例えばNO、NおよびNを含む。適当な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン、ナイトレートおよびナイトライト、例えばニトロメタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパンである。好ましい実施形態において、ナイトレート形成化合物またはナイトライト形成化合物、例えば窒素酸化物および/または有機窒素化合物が有機ハロゲン化物、特に有機塩化物と共に使用される。
【0044】
反応調整剤は一般に、供給原料中に少量で、例えば全供給原料に対して0.1モル%まで、例えば0.01×10−4から0.01モル%の量で使用される場合に有効である。特にオレフィンがエチレンである場合は、反応調整剤は供給原料中に全供給原料に対して0.1×10−4から500×10−4モル%、特に0.2×10−4から200×10−4モル%の量で存在することが好ましい。
【0045】
オレフィン、酸素および反応調整剤に加えて、供給原料は二酸化炭素、不活性ガスおよび飽和炭化水素などの1種または複数の場合による成分を含み得る。二酸化炭素はエポキシ化法の副生成物である。しかし、二酸化炭素は一般に触媒活性に対する悪影響を有する。通常、全供給原料に対して25モル%を超える、好ましくは10モル%を超える供給原料中の二酸化炭素の量は回避される。全供給原料に対して10モル%未満、好ましくは3モル%未満、より好ましくは2モル%未満、特に0.3から1モル%未満の範囲内の二酸化炭素の量が使用され得る。商業的運転では、全供給原料に対して少なくとも0.1モル%または少なくとも0.2モル%の二酸化炭素の量が供給原料中に存在し得る。不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンは、供給原料中に30から90モル%、通常は40から80モル%の量で存在し得る。適当な飽和炭化水素はメタンおよびエタンである。飽和炭化水素が存在する場合は、これらは全供給原料に対して80モル%まで、特に75モル%までの量で存在し得る。頻繁には、これらは少なくとも30モル%、より頻繁には少なくとも40モル%の量で存在する。飽和炭化水素は、酸素の可燃性限界を高めるために供給原料に加えられる。
【0046】
エポキシ化法は、幅広い範囲から選択される反応温度を使用して行われ得る。好ましくは反応温度は150から325℃の範囲内、より好ましくは180から300℃の範囲内である。
【0047】
エポキシ化法は好ましくは1000から3500kPaの範囲内の反応器入口圧力において行われる。「GHSV」すなわちガス空間速度(Gas Hourly Space Velocity)は、1時間当たりに充填された触媒の1単位体積を通過する標準の温度および圧力(0℃、1atm、すなわち101.3kPa)のガスの単位体積である。好ましくは、エポキシ化法が充填触媒床を含む気相法である場合は、GHSVは1500から10000Nl/(l・h)の範囲内である。好ましくは、この方法は触媒1m当たり1時間当たりに生成される酸化オレフィン0.5から10キロモル、特に触媒1m当たり1時間当たりに生成される酸化オレフィン0.7から8キロモル、例えば触媒1m当たり1時間当たりに生成される酸化オレフィン5キロモルの範囲内の稼働率で行われる。本明細書において使用される稼働率は、単位体積の触媒当たり1時間当たりに生成される酸化オレフィンの量であり、選択率は転化されたオレフィンのモル量に対する形成された酸化オレフィンのモル量である。適当には、この方法は生成混合物中の酸化オレフィンの分圧が5から200kPaの範囲内、例えば11kPa、27kPa、56kPa、77kPa、136kPaおよび160kPaである条件下で行われる。本明細書において使用される「生成混合物」はエポキシ化反応器の出口から取り出される生成物のことを言うものと理解される。
【0048】
生成された酸化オレフィンは、生成混合物から当技術分野において知られている方法、例えば反応器出口流れから酸化オレフィンを水中に吸収することおよび場合によって水溶液から蒸留によって酸化オレフィンを取り出すことを使用することによって取り出され得る。酸化オレフィンを含有している水溶液の少なくとも一部分は、酸化オレフィンを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンに転化させるための引き続く方法において利用され得る。
【0049】
エポキシ化法において生成された酸化オレフィンは、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンに転化され得る。本発明が酸化オレフィンの製造のための魅力的な方法に導くので、これは同時に本発明によって酸化オレフィンを製造することおよび得られた酸化オレフィンの1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートおよび/またはアルカノールアミンの製造における引き続く使用を含むより魅力的な方法に導く。
【0050】
1,2−ジオールまたは1,2−ジオールエーテルへの転化は、例えば酸化オレフィンを水と、適当には酸性または塩基性の触媒を使用して反応させることを含み得る。例えば、主に1,2−ジオールおよびより少ない1,2−ジオールエーテルを作るためには、酸化オレフィンは10倍過剰の水と、酸触媒、例えば全反応混合物に対して0.5−1.0重量%の硫酸の存在下の50−70℃、絶対圧力1barにおける液相反応において、または130−240℃および絶対圧力20−40barにおける好ましくは触媒の不在下の気相反応において反応させられればよい。かかる大量の水の存在は、1,2−ジオールの選択的形成を有利にし得て、また反応の発熱のための受け皿として機能して反応温度の制御をしやすくし得る。水の比率が下げられた場合は、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの比率が増大される。こうして生成された1,2−ジオールエーテルは、ジ−エーテル、トリ−エーテル、テトラ−エーテルまたはこれらに続くエーテルであり得る。別の1,2−ジオールエーテルは、酸化オレフィンをアルコール、特にメタノールまたはエタノールなどの第一級アルコールを用いて少なくとも水の一部分をアルコールで置き換えることによって転化させることにより調製され得る。
【0051】
酸化オレフィンは、酸化オレフィンを二酸化炭素と反応させることによって、対応する1,2−カーボネートに転化され得る。所望であれば、引き続いて1,2−カーボネートを水またはアルコールと反応させて1,2−ジオールを形成させることによって、1,2−ジオールが調製され得る。適用可能な方法については参照により本明細書に組み込まれるUS6080897を参照されたい。
【0052】
アルカノールアミンへの転化は、例えば酸化オレフィンをアンモニアと反応させることを含んでよい。モノアルカノールアミンの生成を有利にするために無水アンモニアが通常使用される。酸化オレフィンのアルカノールアミンへの転化において適用可能な方法については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS−A−4845296を参照することができる。
【0053】
1,2−ジオールおよび1,2−ジオールエーテルは、大いに様々な産業用途、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗剤、伝熱装置などの分野において使用され得る。1,2−カーボネートは希釈剤として、特に溶剤として使用され得る。アルカノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スィートニング」)における溶剤として使用され得る。
【0054】
別途に指定されない限り、本明細書において挙げられる低分子量有機化合物、例えばオレフィン、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、アルカノールアミンおよび反応調整剤は、通常最大で40個の炭素原子、より通常には最大で20個の炭素原子、特に最大で10個の炭素原子、より特に最大で6個の炭素原子を有する。本明細書において定義される炭素原子の数(すなわち炭素数)の範囲は、範囲の限界について指定された数を含む。
【0055】
本発明を大まかに説明したが、以下の実施例を参照することによってさらなる理解が得られ得る。これらの実施例は例示の目的のために提示されており、別途に指示の無い限り限定的であることを意図されてはいない。
【0056】
(実施例)
【実施例1】
【0057】
銀ストック溶液の調製
この実施例は、実施例2の触媒Aの調製において使用される銀含浸ストック溶液の調製を記載している。
【0058】
銀−アミン−シュウ酸塩ストック溶液を次の手順によって調製した:
5リットルのステンレス鋼ビーカー中で、試薬等級の水酸化ナトリウム415gを脱イオン水2340ml中に溶解させ、温度を50℃に調節した。
【0059】
4リットルのステンレス鋼ビーカー中で、高純度の「Spectropure」硝酸銀1699gを脱イオン水2100ml中に溶解させ、温度を50℃に調節した。
【0060】
この水酸化ナトリウム溶液を、攪拌しながら温度を50℃に維持しつつゆっくり硝酸銀溶液に加えた。この混合物を15分間攪拌した。溶液のpHは水酸化ナトリウム溶液を必要に応じて加えることによって10より高く維持した。
【0061】
混合ステップにおいて生成された沈殿から水を除去し、ナトリウムイオンおよび硝酸イオンを含有していた水の電導度を測定した。除去された量に等しい量の新鮮な脱イオン水を銀溶液に加え戻した。溶液を40℃において15分間攪拌した。この方法を除去された水の電導度が90μmho/cm未満になるまで繰返した。次いで新鮮な脱イオン水1500mlを加えた。高純度のシュウ酸二水和物630gを約100gずつ加えた。温度を40℃(±5℃)に保ち、pHが長時間7.8未満に低下しないことを確実にするためにシュウ酸二水和物の最後の130グラムを加える間中溶液のpHをモニターした。混合物から水を除去して高度に濃縮された銀含有スラリーを残した。シュウ酸銀スラリーを30℃まで冷却した。
【0062】
92重量パーセントのエチレンジアミン(8%は脱イオン水)699gを30℃を超えない温度を維持しつつ加えた。最終溶液は銀含浸ストック溶液として触媒Aを調製するために使用した。
【実施例2】
【0063】
触媒の調製
触媒A(本発明による):
触媒Aは次の手順によって調製した:比重1.549g/mlの銀ストック溶液300.4gに1:1エチレンジアミン/水1g中の過レニウム酸アンモニウム0.1361g、1:1アンモニア/水1g中に溶解させたメタタングステン酸アンモニウム0.0759g、水2g中に溶解させた硫酸リチウム水和物0.1298gおよび水に溶解させた水酸化リチウム一水和物0.3193gを加えた。溶液の比重を1.539g/mlに調節するためにさらなる水を加えた。得られた溶液75gを50重量%の水酸化セシウム溶液0.1678gと混合して最終含浸溶液を作製した。担体Aの中空円筒、下記表Iを参照のこと、30グラムを収容している容器を20mmHgまで1分間真空にし、真空下のままで最終含浸溶液を担体Aに加え、次いで真空を開放して担体を液体に3分間接触させた。次いで含浸された担体Aを500rpmにおいて2分間遠心分離して過剰の液体を除去した。含浸された担体Aを振動式振とう機に入れ、16.2Nl/hの流量で流れている250℃の空気中で7分間乾燥して触媒A(本発明による)を作製した。
【0064】
触媒Aの最終の組成は、細孔体積含浸に基づいて計算されて次のものを含んでいた:銀17.5重量%、Re1ミリモル/kg、W0.6ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kgおよびCs4.5ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0065】
【表1】

【0066】
触媒B(比較例):
触媒Bは、触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Bの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.5重量%、Re1ミリモル/kg、W1ミリモル/kg、S1ミリモル/kg、Li17ミリモル/kgおよびCs4.5ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0067】
触媒C(比較例):
触媒Cは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Cの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.5重量%、Re1ミリモル/kg、W2ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs4.1ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0068】
触媒D(本発明による):
触媒Dは、触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Dの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、W0.6ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs5.6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0069】
触媒E(本発明による):
触媒Eは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Eの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、W0.6ミリモル/kg、S3ミリモル/kg、Li21ミリモル/kg、およびCs6.4ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0070】
触媒F(本発明による):
触媒Fは担体A30グラムを使用して触媒Aと類似の仕方で調製した。比重1.551g/mlの銀ストック溶液198.4グラムに、1:1のエチレンジアミン/水2g中の過レニウム酸アンモニウム0.1833g、50:50の水酸化アンモニウム/水2g中に溶解させたモリブデン酸アンモニウム0.0362g、水2g中に溶解させた硫酸リチウム一水和物0.1312gおよび水に溶解させた水酸化リチウム一水和物0.2151gを加えた。追加の水を加えて溶液の比重を1.528g/mlに調節した。得られた溶液50gを50重量%の水酸化セシウム溶液0.1591gと混合して含浸溶液を作製した。この最後の含浸溶液を使用して、触媒F(本発明による)を調製した。
【0071】
触媒Fの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、Mo0.6ミリモル/kg、S3ミリモル/kg、Li21ミリモル/kg、およびCs6.4ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0072】
触媒G(本発明による):
触媒Gは触媒Fと類似の仕方で調製した。触媒Gの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、Mo0.6ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0073】
触媒H(比較例):
触媒Hは触媒Fと類似の仕方で調製した。触媒Hの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、Mo2ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs5.6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0074】
触媒I(比較例):
触媒Iは触媒Fと類似の仕方で調製した。触媒Iの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、Mo0.6ミリモル/kg、Li15ミリモル/kg、およびCs4.5ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0075】
触媒J(比較例):
触媒Jは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Jの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、S3ミリモル/kg、Li21ミリモル/kg、およびCs6.8ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0076】
触媒K(比較例):
触媒Kは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Kの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs5.6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0077】
触媒L(比較例):
触媒Lは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Lの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、W0.6ミリモル/kg、Li15ミリモル/kg、およびCs5.6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0078】
触媒M(比較例):
触媒Mは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Mの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、W2ミリモル/kg、Li15ミリモル/kg、およびCs4.1ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0079】
触媒N(比較例):
触媒Nは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Nの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.5重量%、Re2ミリモル/kg、W1ミリモル/kg、S1ミリモル/kg、Li17ミリモル/kg、およびCs4.9ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0080】
触媒O(比較例):
触媒Oは触媒Aと類似の仕方で調製した。触媒Oの最終組成は細孔体積含浸に基づいて計算された次のものを含んでいた:銀17.2重量%、Re2ミリモル/kg、W2ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、およびCs5.6ミリモル/kg。これらの値は触媒の重量に対するものである。
【0081】
上記触媒のセシウム量は、触媒の当初の選択率性能に関して最適化されたセシウム量である。
【実施例3】
【0082】
触媒の試験
この触媒をエチレンおよび酸素から酸化エチレンを作製するために使用した。これを行うために、破砕した触媒サンプル3から5gを別個のステンレス鋼のU形管中に装填した。それぞれの管を溶融金属浴(熱媒)中に漬け、両端をガス流通装置に接続した。使用した触媒の重量および入口ガス流量は未破砕の触媒に対して計算して3300Nl/(l・h)のガス空間速度を与えるように調節した。入口ガスの圧力は1550kPa(絶対圧)であった。
【0083】
「1回通過」操作で触媒床を通過した混合ガスは、開始を含めた全試験運転の間中、エチレン30.0体積パーセント、酸素8.0体積パーセント、二酸化炭素5.0体積パーセント、窒素57体積パーセントおよび塩化エチル0から4.0体積ppm(ppmv)から成っていた。
【0084】
窒素流中225℃で3時間前処理した触媒D、E、KおよびLを除外して、触媒は、開始の前に、酸素11.4モル%、二酸化炭素7モル%および窒素81.6モル%の混合ガスを用いて280℃で3時間前処理した。次いで反応器を240℃まで冷却してまたは加熱して、試験混合ガスを導入した。次いで温度を、出口ガス流れ中における一定の酸化エチレン含有量3.09体積パーセントを達成するように調節した。塩化エチルの量を最大の選択率を得るように変化させた。触媒E、G、IおよびJは、加えて塩化エチルを0まで下げた状態に4から24時間置き、その間温度は250−260℃に変更した。この転化レベルにおける当初の性能データは1から7日の運転の間に測定した。性能データは下の表IIにまとめてある。触媒の安定性データを得るために、増加していく累積酸化エチレン生成量に対応する選択率および温度の値も測定した。
【0085】
同じ酸化エチレン生成レベルにおいて、本発明によって作製された触媒は、本発明によって作製されていない触媒と比較すると向上した性能、特に向上した当初の選択率および/または当初の活性を示す。活性の向上は、同じ酸化エチレン生成レベルを達成するために必要とされる、より低い温度によって実証されている。本発明は向上した安定性を提供することも期待される。
【0086】
【表2】

【実施例4】
【0087】
触媒Pは、担体Bを使用して調製し、細孔体積含浸に基づいて計算された次の最終組成を有していた:銀17.5重量%、Re2ミリモル/kg、W0.6ミリモル/kg、S2ミリモル/kg、Li19ミリモル/kg、K2ミリモル/kgおよびCs3.8ミリモル/kg。これらの値は触媒重量に対するものである。触媒Pを調製するために、過レニウム酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化リチウム、硝酸カリウムおよび水酸化セシウムを使用した。
【0088】
【表3】

【0089】
管形パイロット反応器に公称外形8mm、公称内径1mmおよび公称長さ8mmを有する中空円筒形態の破砕されていない触媒ペレット12.24kgを投入した。管形反応器を取り囲む冷媒(水)を40℃から220℃まで17時間かけて加熱し、Nガス流を1100Nl/l/hのGHSVで反応管内に導入した。冷媒温度が220℃に達した時点で、エチレンを反応器供給原料ガス中に加えて25体積%にした。所望のエチレン濃度が達成された後、空気を反応器供給原料中に導入してエチレンと酸素との酸化エチレンへの反応を開始させた。空気を反応器に導入したのと本質的に同時に、塩化エチルを導入して2−2.5体積ppmの濃度にした。次の6時間の運転の間に、空気の供給量を、反応器入口で4.0体積%の酸素濃度が達成されるまで増加した。酸素を増加するにつれて、冷媒の温度を235℃まで上げ、二酸化炭素を導入して0.8体積%にし、総流量を3320Nl/l/hのGHSVまで増加した。反応器への入口圧力は実験を通じて241psiに維持した。合計で触媒1キログラム当たりに0.15グラムの塩化エチレンを導入した。次の17時間については、塩化エチレンを1.4体積ppmまで低減し、他のすべての条件は、3320Nl/l/hのGHSV、235℃の冷媒温度、241psigの入口温度および25:4:0.8のエチレン/酸素/二酸化炭素組成において一定に保った。次の7時間の間は、エチレンを25から35体積%まで増加し、酸素を4.0から7.5体積%まで増加し、塩化エチレンを1.4体積ppmから1.91体積ppまで増加した。他のすべてのガスの流れおよび組成は一定に保った。このステップの最後には、冷媒温度を227℃に調節して反応器の出口において2.7体積%の酸化エチレンの濃度を達成した。次の24時間の間は、塩化エチレンの濃度を2.05体積ppmに増して最適の触媒選択率を得た。この運転開始法の最後には(すなわちステップ6の間に)選択率は228℃の温度において90.3%であった。反応器条件変更の詳細は表IVに列記している。
【0090】
【表4】

【0091】
この運転開始工程および当初のエポキシ化製造の間は、エチレンの量は一定レベルに維持されてもよく、異なる量が利用されてもよい、例えばエチレンの量は25モル%、35モル%または40モル%であり得る。酸素の量は可燃性限界内で変化させられ得る。ステップ4の長さは1時間から30時間まで変化させられ得るが、より高い生産レベルのためにはより短い時間が好ましいことがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンのエポキシ化のための触媒であって、担体ならびに、担体上に付着させられた、銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒を含み、
第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きく、
第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され、
第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択される、触媒。
【請求項2】
第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比が、少なくとも1.5、特に少なくとも2.5である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第2の共助触媒が、タングステンを含む、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
第2の共助触媒が、モリブデンを含む、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項5】
第1の共助触媒が、イオウを含む、請求項1または2から4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
触媒が、触媒の重量に対して1.25から10ミリモル/kg、特に触媒の重量に対して1.5から7.5ミリモル/kgの範囲内の水抽出可能なカリウム量を有する、請求項1または2から5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
レニウム助触媒が、触媒の重量に対して0.1から50ミリモル/kgの範囲内の量で存在する、請求項1または2から6のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
第1の共助触媒が、触媒の重量に対して0.2から40ミリモル/kg、特に触媒の重量に対して1から10ミリモル/kgの範囲内の量で存在する、請求項1または2から7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
レニウム助触媒対第2の共助触媒のモル比が、1より大きく、特にレニウム助触媒対第2の共助触媒のモル比が少なくとも2である、請求項1または2から8のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
触媒が、担体上に付着させられたカリウム助触媒を、触媒の重量に対して少なくとも0.5ミリモル/kg、特に触媒の重量に対して少なくとも1.5ミリモル/kgの量でさらに含む、請求項1または2から9のいずれかに記載の触媒。
【請求項11】
触媒が、担体上に付着された、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、ゲルマニウムおよびこれらの混合物から選択された1種以上のさらなる元素をさらに含む、請求項1または2から10のいずれかに記載の触媒。
【請求項12】
オレフィンのエポキシ化のための触媒を調製する方法であって、銀、レニウム助触媒、第1の共助触媒および第2の共助触媒を担体上に付着させることを含み、
第1の共助触媒対第2の共助触媒のモル比は1より大きく、
第1の共助触媒はイオウ、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され、
第2の共助触媒はタングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択される、方法。
【請求項13】
オレフィンおよび酸素を含む供給原料を請求項1または2から11のいずれかに記載の触媒の存在下で反応させることによる酸化オレフィンを調製する方法。
【請求項14】
オレフィンが、エチレンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンを調製する方法であって、酸化オレフィンを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネートまたはアルカノールアミンに転化させることを含み、この酸化オレフィンは請求項13または14に記載の酸化オレフィンを調製する方法によって調製されている、方法。

【公表番号】特表2010−526655(P2010−526655A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507616(P2010−507616)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062876
【国際公開番号】WO2008/141032
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】