説明

エポキシ変性シリコーン

【課題】発光素子封止材等、透明性、耐熱性、耐光性、耐熱変色性が求められる用途に用いることが可能なエポキシ変性シリコーン及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して得られるエポキシ変性シリコーンであって、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量がエポキシ変性シリコーンに対し2質量%以下であるエポキシ変性シリコーン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子封止剤として有用なエポキシ変性シリコーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光半導体の高性能化が進み、封止用樹脂にもさらに高い性能が要求されるようになった。シロキサン骨格を繰り返し単位とし、置換基にエポキシ基を有するエポキシ変性シリコーンは、エポキシ樹脂が有する優れた硬化特性と高いTgに基づく耐熱性、シリコーンが有する耐光性、透明性等の優れた特性を併せもつことが期待されることから、高性能封止材として注目を集めている。
エポキシ変性シリコーンの製造方法としては、例えば、オレフィン基含有シロキサンを過酸化物と反応させる方法、クロロシラン又はアセトキシシラン化合物をグリシドールと反応させてグリシジルシリコーンエーテルを生成させる方法等がある。しかしながら、これらの方法はいずれも収率が低く操作が煩雑であることから、実用化はなされていない。
【0003】
これに対し、分子内にSiH単位を有するオルガノハイドロジェンシリコーンに対し、少なくともビニル基及びエポキシ基を有する化合物をヒドロシリル化反応により付加する方法は、エポキシ基あるいは、エポキシ基以外の有機官能基の導入が可能であることから、エポキシ変性シリコーンの製造方法として、広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、Q構造を単位構造として有し、かつ、置換基としてアルコキシシリルアルキル基を有するエポキシ変性シリコーン、並びに、SiH単位を有するオルガノハイドロジェンシリコーンに対して、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して、前記エポキシ変性シリコーンを製造する方法が開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、一分子中にエポキシ基含有有機基と炭素数6以上のアルキル基とを少なくとも1個づつ有する、一官能性シロキサン単位と四官能性シロキサン単位からなるエポキシ変性シリコーン、及びヒドロシリル化反応触媒存在下、オルガノハイドロジェンシリコーンに対して、エポキシ基を有するビニル化合物と炭素数6以上のアルケンとを含む化合物をヒドロシリル化反応により付加して、前記エポキシ変性シリコーンを製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−105758号公報
【特許文献2】特開平7−18078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2に開示されるような、オルガノハイドロジェンシリコーンに対してエポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して製造したエポキシ変性シリコーンは、その硬化物が光や熱により着色・変色し易いという問題点を有しており、発光素子用封止剤のような透明性が求められる用途に用いるために、この点の改良が求められている。
そこで、本発明は、光や熱による着色・変色の少ないエポキシ変性シリコーン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オルガノハイドロジェンシリコーンに対してエポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して製造したエポキシ変性シリコーンの硬化物の光や熱による着色・変色は、炭素−炭素二重結合を有する化合物に起因すること、及び、その残留量を一定の値以下にすることにより着色・変色を防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して得られるエポキシ変性シリコーンであって、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量がエポキシ変性シリコーンに対し2質量%以下であるエポキシ変性シリコーン。
【0008】
従来技術においても、溶媒やビニル化合物の未反応分を加熱減圧条件下で留去することは行われている。
しかし、オルガノハイドロジェンシリコーンに対し、ビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して得られるエポキシ変性シリコーンは粘脹物となる。このような粘脹物から低分子量成分を完全に留去することは困難である。例えば、竪型の撹拌槽を用いた場合、スケールの増加に伴い、通常、液容量に対する蒸発面積の比率が小さくなるとともに液深が大きくなる。このため、真空度を高めても、撹拌槽の下部は液深があるために実質的に高い圧力となって低分子量成分を効率的に留去しにくい。
そのため、従来技術において行われているような単純な留去では、実際には、ビニル化合物の未反応分等は十分に除去されてはいない。
【0009】
さらに、本発明者らがオルガノハイドロジェンシリコーンとビニル化合物のヒドロシリル化反応ついて詳しく調べたところ、副反応として、ビニル化合物のビニル基が内部転移を生じ、ビニル化合物よりも沸点が高く、ヒドロシリル化反応に対する反応性が極めて低い副生成物を生じることが分かった。このような副生成物は、炭素−炭素二重結合を有するが、沸点が高いことなどから留去が難しい。
そのため、従来行われているような、溶媒やビニル化合物の未反応分を対象とした留去を行っただけでは、前述の副生成物は留去されず、その結果、エポキシ変性シリコーン中には多くの炭素−炭素二重結合を有する化合物が残留する。
【0010】
このように、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量について特別着目されていない従来技術においては、エポキシ変性シリコーン中に多くの炭素−炭素二重結合を有する化合物が残留している。
これに対し、本発明においては、エポキシ変性シリコーン中の炭素−炭素二重結合を有する化合物に着目し、その残留量が特定の値以下となるように、使用する原料や、留去する際の温度、圧力、時間等の操作条件を選択することで、エポキシ変性シリコーンビニル化合物中の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量を減らし、これによりその硬化物の耐光性、耐熱変色性の向上を実現した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性、耐熱性を有し、光や熱による着色・変色の少ない発光素子封止材用途に好適なエポキシ変性シリコーン及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ変性シリコーンは、エポキシ価が0.15以上0.5以下の範囲であることが好ましい。
ここで、本発明におけるエポキシ価とは、エポキシ変性シリコーン100g中に存在するエポキシ単位の数のことをいい、具体的には、以下の方法によって測定される。
<エポキシ価の測定方法>
樹脂試料をベンジルアルコールと1−プロパノールで溶解する。この溶液にヨウ化カリウム水溶液、ブロモフェノールブルー指示薬を添加した後、1規定塩酸にて滴定し、反応系内が青色から黄色になった点を当量点とする。当量点より、エポキシ変性シリコーンのエポキシ価を以下の式に従って算出する。
エポキシ価(当量/100g)=(V×N×F)/(10×W)
[ただし、W、V、N、Fは各々以下の値を表す。
W:試料の質量(g)、
V:滴定量(ml)、
N:滴定に使用した塩酸の規定度(N)、
F:滴定に使用した塩酸のファクター ]
【0013】
本発明のエポキシ変性シリコーンを硬化物とした際に、該硬化物の耐熱性が高まることから、エポキシ変性シリコーンのエポキシ価は0.15以上であることが好ましい。さらに、硬化物とした際の強度を高め、実装時、あるいは、使用時における表面の損傷を回避するためには、エポキシ価は0.17以上がより好ましく、0.19以上がさらに好ましく、0.21以上が特に好ましい。
一方、本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる硬化物の耐光性が高まることから、エポキシ変性シリコーンのエポキシ価は0.5以下であることが好ましく、0.48以下がより好ましく、0.46以下がさらに好ましく、0.44以下が特に好ましい。
【0014】
本発明におけるエポキシ変性シリコーンは、平均組成式(1)によって表されるオルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物を付加して得られるものであることが好ましい。
【化2】

[ただし、R1は各々独立に、A)ヒドロキシル基、B)ハロゲン原子、C)無置換又は置換された鎖状、分岐状及び環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価又は2価の脂肪族有機基、D)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状及び環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を表す。
上記の有機基は、前記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、有機基としてヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合を含んでいてもよい。また、窒素、リン、硫黄等の酸素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい。]
【0015】
なお、平均組成式(1)におけるa、b、c、d、e、f、gは、オルガノハイドロジェンシリコーン1モル中に存在する各繰り返し単位のモル数を表し、a、b、c、d、e、f、gは各々0以上の数値であって、かつ、b、d、fは下記数式(1)を満足する数値である。
b+d+f>0・・・数式(1)
【0016】
また、上記のc、d、e、f、gが各々下記数式(2)、数式(3)、数式(4)を同時に満足する場合には、上記のa、b、e、f、gは、数式(5)を満足する範囲から選択される数値である。
c+d≠0・・・数式(2)
e+f≠0・・・数式(3)
g≠0・・・数式(4)
0≦a+b≦e+f+2g+2・・・数式(5)
【0017】
さらに、上記のe、f、gが各々下記数式(6)、数式(7)を同時に満足する場合には、上記のa、bは下記数式(8)を満足する範囲から選択される数値である。
e+f=0・・・数式(6)
g=0・・・数式(7)
0≦a+b≦2・・・数式(8)
【0018】
また、上記のe、f、gが各々下記数式(3)、数式(7)を同時に満足する場合には、上記のa、bは下記数式(9)を満足する範囲から選択される数値である。
e+f≠0・・・数式(3)
g=0・・・数式(7)
0≦a+b≦e+f+2・・・数式(9)
【0019】
さらに、e、f、gが各々下記数式(6)、数式(4)を同時に満足する場合には、前記のa、bは下記数式(10)を満足する範囲から選択される数値である。
e+f=0・・・数式(6)
g≠0・・・数式(4)
0≦a+b≦2g+2・・・数式(10)
【0020】
平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンシリコーンの構造は、ヒドロシリル化反応によりエポキシ基を有するビニル化合物を付加した後に、エポキシ変性シリコーンが製造できるものであれば特に限定はなく、直鎖状、環状、分岐状、ラダー状、籠状等いずれの構造でもよく、これらの2種以上の混合物であってもよい。また、各々の構造単位が、ブロック的な連鎖構造を有していてもよいし、ランダムに分散していてもよく、これらの混合物であってもよい。
【0021】
有機基R1としては、本発明によって得られるエポキシ変性シリコーンの耐光性、あるいは、安定性の向上の観点から、全Si単位の合計モル数に対する鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる炭素−炭素二重結合炭化水素単位、ヒドロキシル単位、アルコキシ単位、アシル単位、カルボキシル単位、アルケニルオキシ単位、アシルオキシ単位、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合、さらには、酸素及び珪素を除くヘテロ原子を含有する有機基が結合した珪素原子の合計モル数が、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは全く含まないように選択される。
【0022】
さらに、有機基R1は、鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる炭化水素単位を有する炭素数が1以上20以下及び酸素数が1以下の飽和の1価の脂肪族有機基であることが望ましい。このような有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等の炭化水素から成る鎖状の有機基;シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチニルシクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状単位を含む炭化水素から成る有機基;メトキシエチル、エトキシエチル基等のエーテル結合を含む有機基等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の有機基の混合であってよい。
これらのうち、炭化水素からなる鎖状の有機基、環状単位を含む炭化水素からなる有機基が特に望ましい。
【0023】
平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンシリコーン1モルを構成する各繰り返し単位のモル数は、溶媒への溶解性を向上させるためには、c、dの値が各々5,000以下の範囲、かつ、e、fが各々100以下の範囲、かつ、gが100以下の範囲を同時に満足することが好ましく、立体障害を緩和してヒドロシリル化反応を安定的に、かつ、再現性よく進行させる上で、gが0であるものが好ましく、gが0、かつ、(e+f)/(a+b+c+d+e+f)が0.02以下であることがより好ましく、gが0、かつ、(e+f)/(a+b+c+d+e+f)が0.01以下であることがさらに好ましく、g及び(e+f)/(a+b+c+d+e+f)の値がゼロであることが特に好ましい。
【0024】
本発明のエポキシ変性シリコーンは、オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物を付加して製造されるものである。
【0025】
本発明において用いることができるエポキシ基を有するビニル化合物としては特に限定はなく、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−4−ペンテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−6−ヘプテン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−8−ノネン、1,2−エポキシ−9−デセン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4−ビニルシクロへキセンオキサイド、1−メチルー4−イソプロペニルシクロヘキセンオキサイド、1,4−ジメチルー4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、ビニルノルボルネンオキサイド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることも可能である。
【0026】
これらのうち、エポキシ変性シリコーンの硬化速度や、硬化物の耐光性が高まることから、下記化学式(2)で表されるビニル基を有するエポキシシクロアルカンを用いることが好ましい。
【化3】

[ただし、R2は水素又は炭素数1以上4以下の鎖状又は分岐状の1価の炭化水素基を表す。また、EPOは炭素数10以下のエポキシシクロアルキル基を表し、炭素数が前記範囲内であれば、鎖状、分岐状の炭化水素基を置換基として有していてもよい。]
化学式(2)で表される化合物としては、例えば、4−ビニルシクロへキセンオキサイド、1−メチルー4−イソプロペニルシクロヘキセンオキサイド、1,4−ジメチルー4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、ビニルノルボルネンオキサイド等が用いられ、好ましくは、4−ビニルシクロへキセンオキサイドが用いられる。
【0027】
本発明においては、エポキシ変性シリコーンが製造できれば、オルガノハイドロジェンシリコーンに対して、エポキシ基を有するビニル化合物以外のビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加してもよい。
【0028】
このような、エポキシ基を有するビニル化合物以外のビニル化合物としては、例えば、
(ア)エポキシ基を含有せず、ビニル基を必須構成単位として有し、無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が3以上24以下及び酸素数が0以上5以下の化合物、
(イ)エポキシ基を含有せず、ビニル基を必須構成単位として有し、無置換又は置換された芳香族炭化水素単位と、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が8以上24以下及び酸素数が0以上5以下の化合物、
(ウ)下記化学式(3)で表される分子内にエポキシ基を含有せず、1個以上のビニル基を含有するシラン、
【化4】

[ただし、R3は各々独立に、a)ハロゲン原子、b)無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が1以上10以下及び酸素数が0以上5以下の1価及び/又は2価の脂肪族有機基、あるいは、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位と、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が6以上10以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を表す。
上記の有機基は、前記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、有機基としてヒドロキシル基、アシル基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい。]
(エ)下記平均組成式(4)で表される分子内にエポキシ基を含有せず、1個以上のビニル基を含有するシロキサン、
【化5】

[ただし、R4は各々独立に、a)ビニル基、b)炭素数1以上10以下の鎖状、分岐状、環状からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の構造からなる1価の脂肪族有機基、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位と、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数6以上10以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基である。ここで、少なくともR4の1個以上はビニル基を有する有機基である。
上記の有機基は、前記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合を含んでいてもよい。また、窒素、リン、硫黄等の酸素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい。]
等を用いることができる。
【0029】
なお、平均組成式(4)中のp、q、r、sは、分子内に1個以上のビニル基を含有するシロキサン1モル中に存在する各繰り返し単位のモル数を表し、qは各々0以上の数値、rは各々0以上の数値、sは0以上の数値であり、かつ、p、q、rは同時にゼロとなることはない。
【0030】
また、上記のq、r、sが各々下記数式(11)、数式(12)、数式(13)を同時に満足する場合には、上記のp、r、sは、数式(14)を満足する範囲から選択される数値である。
q≠0 ・・・数式(11)
r≠0 ・・・数式(12)
s≠0 ・・・数式(13)
0≦p≦r+2s+2 ・・・数式(14)
【0031】
さらに、上記のr、sが下記数式(15)、数式(16)を同時に満足する場合には、上記のpは下記数式(17)を満足する範囲から選択される数値である。
r=0 ・・・数式(15)
s=0 ・・・数式(16)
0≦p≦2 ・・・数式(17)
【0032】
また、上記のr、sが各々下記数式(12)、数式(16)を同時に満足する場合には、上記のp、rは、数式(18)を満足する範囲から選択される数値である。
r≠0 ・・・数式(12)
s=0 ・・・数式(16)
0≦p≦r+2 ・・・数式(18)
【0033】
さらに、上記のr、sが各々下記数式(15)、数式(13)を同時に満足する場合には、上記のp、rは、数式(19)を満足する範囲から選択される数値である。
r=0 ・・・数式(13)
s≠0 ・・・数式(15)
0≦p≦2s+2 ・・・数式(19)
【0034】
また、分子内に1個以上のビニル基を含有するシロキサンは、前記平均組成式(4)で表される構造であれば特に限定はなく、直鎖状、環状、分岐状、ラダー状、籠状等いずれの構造でもよく、これらの2種以上の混合物であってもよい。また、各々の構造単位が、ブロック的な連鎖構造を有していてもよいし、ランダムに分散していてもよく、これらの混合物であってもよい。
【0035】
上記の(ア)〜(エ)の化合物は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。また、これらの化合物には、前記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、ヒドロキシル基、アシル基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合、さらには、酸素原子を除く窒素、リン、硫黄等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0036】
上記の(ア)の具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ノルボルネン、ビニルシクロヘキサン、ビニルデカヒドロナフタレン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、アクリル酸、メタアクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタアクリレート、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(エチレングリコール単位の重合度1〜4)等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0037】
一方、(イ)の具体例としては、例えば、スチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α―メチルスチレン、桂皮酸、等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0038】
また、(ウ)の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン等のビニル基を1個有する脂肪族ビニルアルコキシシラン;ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン等のビニル基を1個有する芳香族ビニルアルコキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等のビニル基を2個以上有する脂肪族ビニルアルコキシシラン;ジビニルジフェノキシシラン、トリビニルフェノキシシラン等のビニル基を2個以上有する芳香族ビニルアルコキシシラン;ビニルトリメチルシラン、ビニルエチルジメチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルトリプロピルシラン、ビニルトリイソプロピルシラン、ビニルトリブチルシラン、ビニルトリ−t−ブチルシラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニルトリペンチルシラン、ビニルトリヘキシルシラン、ビニルトリシクロヘキシルシラン、ビニルトリヘプチルシラン、ビニルトリオクチルシラン、ビニルトリノニルシラン、ビニルトリデシルシラン、ビニルメチルシラシクロペンタン等のビニル基を1個有するビニルアルキルシラン;ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルジエチルシラン、ビニルジフェニルメチルシラン、ビニルトリフェニルシラン、ビニルトリトリルシラン等のビニル基を1個有するビニルアリールシラン;ビニルベンジルジメチルシラン、ビニルベンジルジエチルシラン、ビニルジベンジルメチルシラン、ビニルトリベンジルシラン、ビニルトリフェネチルシラン等のビニル基を1個有するビニルアラルキルシラン;ジビニルジメチルシラン、ジビニルジエチルシラン、ジビニルエチルメチルシラン、トリビニルメチルシラン、トリビニルエチルシラン等のビニル基を2個以上有するビニルアルキルシラン;ジビニルジフェニルシラン、ジビニルジトリルシラン、トリビニルフェニルシラン、トリビニルトリルシラン等のビニル基を2個以上有するビニルアリールシラン;ビニル(クロロメチル)ジメチルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、ビニル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチルシラン等のビニル基を1個有するハロゲン置換された炭化水素基を有するビニルハロ置換アルキルシラン;ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルオクチルジクロロシラン、ビニル(ブロモメチル)ジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン等のビニル基を1有し、少なくとも1個以上のハロゲン原子がケイ素原子に結合したビニルハロシラン;ジビニルジクロロシラン、トリビニルクロロシラン等のビニル基を2個以上有し、ハロゲン原子がケイ素原子に結合したビニルハロシラン等が挙げられる。これらの分子内に1個以上のビニル基を含有するシランは1種又は2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0039】
さらに、(エ)の有機基R4のb)炭素数1以上10以下の鎖状、分岐状、環状からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の構造からなる1価の脂肪族有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボニル基等の飽和炭化水素基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン原子で置換された飽和炭化水素基等が、c)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位と、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する炭素数6以上10以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基;4−クロロベンジル基等のハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0040】
これらのうち、耐光性の向上の観点から、ヒドロキシル単位、アルコキシ単位、アシル単位、カルボキシル単位、アルケニルオキシ単位、アシルオキシ単位、芳香族炭化水素単位、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合、さらには、酸素原子を除くヘテロ原子を含有しない(ア)、(ウ)、(エ)が好ましく用いられる。
【0041】
(ア)としては、ビニル化合物の取り扱い性の向上の観点、あるいは、余剰の化合物の留去を容易にする観点から、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ノルボルネン、ビニルシクロヘキサンがより好ましく用いられる。
一方、(ウ)としては、余剰の化合物の留去を容易にする観点からとなることから、ビニルトリメチルシラン、ビニルエチルジメチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、ビニルトリエチルシランがより好ましく用いられる。
【0042】
また、(エ)としては、立体障害を緩和してヒドロシリル化反応を安定的に、かつ、再現性よく進行させることが容易となることから、qは50以下の範囲、かつ、rは10以下の範囲、sは10以下の範囲を同時に満足することが好ましく、sがゼロであるものがより好ましく、qは20以下の範囲、かつ、rは5以下の範囲、sがゼロ、かつ、r/(p+q+r)が0.02以下であるものがさらに好ましく、qは15以下の範囲、かつ、rは3以下の範囲、sがゼロ、かつ、r/(p+q+r)が0.01以下であるものが特に好ましく、qは10以下の範囲、かつ、s及びr/(p+q+r)の値がゼロであるものが望ましい。
例えば、ビニルペンタメチルジシロキサン、ビニルヘプタメチルトリシロキサン等の分子鎖の片末端にジメチルビニルシロキシ基を有し、かつ、他の置換基がアルキル基であるシロキサン;ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン等の分子鎖中にジメチルビニルシロキシ基を有する、分子内に1個のビニル基を含有し、他の置換基が飽和炭化水素基であるシロキサン;1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン等の両末端がジメチルビニルシロキシ基であり、他の置換基が飽和炭化水素基である分子内に2個のビニル基を有するシロキサン;1,3,5−トリビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサントリス(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、1.3.5.7−テトラビニルー1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1.3.5.7−テトラビニルー1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、等の分子内に3個以上のビニル基を含有し、他の有機基が飽和炭化水素基であるシロキサン等が挙げられる。
【0043】
本発明における「炭素−炭素二重結合を有する化合物」とは、シリコーン以外の化合物であって、分子内に1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物ものをいう。したがって、オルガノハイドロジェンシリコーンやエポキシ変性シリコーンについては分子内に炭素−炭素二重結合を有していてもこれには含まない。
【0044】
このような炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、
(i)ヒドロシリル化反応に供するために添加したビニル化合物の余剰あるいは未反応物、
(ii)ヒドロシリル化反応に供するために添加したビニル化合物中に含有されていた炭素−炭素二重結合を有する不純物、
(iii)ヒドロシリル化反応に供するために添加したビニル化合物中の炭素−炭素二重結合が、ヒドロシリル化反応中に内部転移を起こして生成した副生成物、
等が挙げられる。
【0045】
前記(ii)ヒドロシリル化反応に供するために添加したビニル化合物中に含有されていた炭素−炭素二重結合を有する不純物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド中に含まれる4−エポキシエチル−シクロへキセン等が挙げられる。
【0046】
前記(iii)ヒドロシリル化反応に供するために添加したビニル化合物中の炭素−炭素二重結合が、ヒドロシリル化反応中に内部転移を起こして生成した副生成物としては、使用するビニル化合物の種類やヒドロシリル化反応条件によっても異なるが、例えば、ビニル化合物として1−ヘキセンを用いた場合の副生成物としては、2−ヘキセン、3−ヘキセン等が、また、例えば、ビニル化合物としてビニルシクロヘキサンを用いた場合の副生成物としては、エチリデニルシクロヘキサン等が挙げられる。
さらに、ビニル化合物として、例えば、(a−1)4−ビニルシクロへキセンオキサイド、(a−2)1−メチルー4−イソプロペニルシクロヘキセンオキサイド、(a−3)1,4−ジメチルー4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、(a−4)ビニルノルボルネンオキサイド等のビニル基を有するエポキシシクロアルカンを用いた場合、(a−1)〜(a−4)に対応する副生成物としては、各々、(b−1)4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、(b−2)1−メチル−4−イソプロペリデニルシクロヘキセンオキサイド、(b−3)1,4−ジメチルー4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、(b−4)エチリデニルノルボルネンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
本発明において、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、エポキシ変性シリコーンに対し2質量%以下であることが必要である。
ここで、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物が2種以上の成分からなる場合には、本発明における、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、残留する各成分の合計値を意味する。
エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量が、エポキシ変性シリコーンに対し2質量%を超えると、エポキシ変性シリコーンを硬化物とした際、該硬化物が光や熱により着色・変色する。
【0048】
さらに、エポキシ変性シリコーンの耐光性・耐熱変色性を一層向上させる上でために、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.75質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましく、0.3質量%以下であることが望ましい。
【0049】
エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は少ない方がよいが、残留量を0とするのは時間・労力がかかるのに比して、着色・変色低減効果が小さい。そのため、費用対効果という観点からは、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.003質量%程度まで低減することが現実的である。
【0050】
また、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物のうち、エポキシ基を有する化合物の残留量は、硬化物の光・熱による着色・変色低減のために、エポキシ変性シリコーンに対して1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。
ここで、エポキシ変性シリコーン中に残留する、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物が2種以上ある場合には、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量とは、残留する各成分の合計量を意味する。
【0051】
さらに、エポキシ変性シリコーン中に残留する炭素−炭素二重結合を有する化合物のうち、ヒドロシリル化反応に供するために添加したエポキシ基を有するビニル化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、硬化物の光・熱による着色・変色低減のために、エポキシ変性シリコーンに対し0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。
ここで、エポキシ変性シリコーン中に残留する、ヒドロシリル化反応に供するために添加したエポキシ基を有するビニル化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物が2種以上ある場合には、ヒドロシリル化反応に供するために添加したエポキシ基を有するビニル化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量とは、残留する各成分の合計量を意味する。
【0052】
本発明のエポキシ変性シリコーンには、製造時に用いたヒドロシリル化触媒、あるいは、反応装置から溶出する金属成分等が残留している場合がある。例えば、SUS316合金を用いると、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属元素が溶出する場合がある。エポキシ変性シリコーンの硬化物の耐光性を高いレベルで維持するためには、エポキシ変性シリコーンに対する周期律表3族〜11族に該当する遷移金属成分の残留量が、元素換算で、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
なお、残留する遷移金属成分が2種以上ある場合には、遷移金属成分の残留量とは、各成分の残留量の合計値を意味する。
【0053】
本発明のエポキシ変性シリコーンには、製造時に用いた溶媒が残留している場合がある。エポキシ変性シリコーンの硬化物中の気泡の発生を抑制するためには、残留する溶媒の量は、エポキシ変性シリコーンに対し0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.06質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンシリコーンの製造方法には特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、
(c−1)少なくともSiH単位を含み、必要に応じて他の有機基を有するアルコキシシラン類及び/又はクロロシラン類を触媒存在下、あるいは非存在下で加水分解後、必要に応じて、重縮合及び/又は末端をヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−ヘキサメチルジシロキサン等に代表される末端封止剤存在下で末端を封止する方法、
(c−2)少なくともSiH単位を含み、必要に応じて他の有機基を有するアルコキシシラン類及び/又はクロロシラン類を触媒存在下、あるいは非存在下で加水分解して得たSiH単位を有するシリコーンAと、必要に応じてSiH単位を有する、アルキルアルコキシシラン類及び/又はクロロシラン類を触媒存在下、あるいは非存在下で加水分解して得たSiH単位を有するシリコーンBとを重縮合及び/又はシロキサン交換反応により再平衡化後、必要に応じて末端をヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−ヘキサメチルジシロキサン等に代表される末端封止剤存在下で末端を封止する方法、
(c−3)少なくともSiH単位を含み、必要に応じて他の有機基を有する環状、鎖状、分岐状からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の構造からなるシリコーン存在下、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等に代表される末端封止剤存在下、あるいは非存在下、触媒存在下で開環重合及び/又はシロキサン交換反応により再平衡化する方法、
(c−4)前記の(c−1)〜(c−3)記載の方法に引き続き、低分子量成分を留去する方法、あるいは(c−5)前記の(c−4)記載の方法により留去されて回収された成分を、さらに分離精製する方法、
等により製造することができる。
【0055】
本発明において、オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加する際には、ヒドロシリル化触媒を添加することが好ましい。ヒドロシリル化触媒が存在しない場合には、通常、オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位とビニル化合物とのヒドロシリル化反応の進行が遅い。
【0056】
本発明において用いることができるヒドロシリル化触媒としては、例えば、周期表第8
属の金属の単体、それら金属固体をアルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に担持させたもの、それら金属の塩、錯体等が挙げられる。周期表第8族の金属としては、白金、ロジウム、ルテニウムが好ましく、特に白金が好ましい。白金を用いたヒドロシリル化化反応触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンとの錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金、ジシクロペンタジエニルジクロロ白金等が挙げられる。
触媒量は、平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンシリコーン、ビニル化合物、溶媒の種類により大きく異なるため、特に限定はないが、通常、該オルガノハイドロジェンシリコーンの質量に対し、周期表第8属の金属原子として1ppm以上1,000ppm以下の範囲で用いられる。触媒量が1ppm未満の場合にはヒドロシリル化反応が進行しない場合があり、一方、1,000ppmを超える場合には、ヒドロシリル化反応に供するビニル基及びエポキシ基を有するビニル化合物の変性が著しく生じる場合がある。ヒドロシリル化反応を再現性ある速度で行う、及び/又は、有機官能基を含有するポリオルガノシロキサンを再現性よく製造する上で、好ましくは2ppm以上500ppmの範囲、より好ましくは、3ppm以上100ppm以下の範囲、さらに好ましくは5ppm以上50ppm以下の範囲である。
【0057】
本発明において、ヒドロシリル化反応を行う際の反応温度は、オルガノハイドロジェンシリコーンの種類や分子量、あるいは、エポキシ基を有するビニル化合物の種類、さらには、回分式、半回分式、あるいは連続式等の反応様式によっても異なるため特に限定はないが、反応速度を高め、効率的に反応を完結させるためには、0℃以上150℃以下の範囲が好ましく、10℃以上140℃以下の範囲がより好ましく、20℃以上130℃以下の範囲がさらに好ましく、30℃以上120℃以下の範囲が特に好ましい。反応温度は、上記の範囲内であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0058】
本発明において、ヒドロシリル化反応を行う際には、ヒドロシリル化反応による反応熱を除去し、得られるエポキシ変性シリコーンの過度な変性を抑制したり、付加反応による反応系の粘度上昇を抑制するため、溶媒を用いることが好ましい。
【0059】
用いられる溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
これらのうち、ヒドロシリル化反応速度の向上、原料の溶解性及び/又は溶媒回収性の観点から、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒を50質量%以上含む溶媒がより好ましく、大気圧における沸点が110℃以下である1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合溶媒がさらに好ましい。
【0060】
溶媒量は、オルガノハイドロジェンシリコーンの種類や、ビニル化合物の種類等によって異なるため、特に限定はないが、通常、反応系の全質量に対するオルガノハイドロジェンシリコーンとビニル化合物の合計質量が、0.01質量%以上99質量%以下の範囲、好ましくは5質量%以上80質量%以下の範囲、より好ましくは10質量%以上70質量%以下の範囲となるような量である。全質量に対するオルガノハイドロジェンシリコーンとビニル化合物の合計質量が、0.01質量%未満の場合には、ヒドロシリル化反応速度が小さくなる傾向にあり、一方、99質量%を超える場合には、反応熱の除熱が困難で、局部加熱のため得られるエポキシ変性シリコーンの変性が生じる場合がある。
【0061】
本発明において、ヒドロシリル化反応を行う際の雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス等の不活性ガス、あるいは、炭素数1以上4以下の低級飽和炭化水素系ガスや空気等の雰囲気下、流通下、減圧下又は加圧下で行うことができる。これらのガスは、一種又は二種以上の混合ガスとして用いることができる。
これらのうち、好ましいガスは、不活性ガス、炭素数1以上4以下の低級飽和炭化水素系ガスであり、より好ましくは、不活性ガスであり、さらに好ましくは窒素である。
【0062】
本発明において、ヒドロシリル化反応を行う際の反応方法は、特に限定されず、例えば、平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンシリコーンとエポキシ基を有するビニル化合物とを回分式、半回分式、連続式なる群から選ばれる1種又は2種以上の組合せの方法により、逐次的、連続的、あるいは、一度に反応させる方法が挙げられる。また、エポキシ基を有するビニル化合物が複数の種類の化合物からなる場合には、すべてのエポキシ基を有するビニル化合物を一括混合した組成物を反応に供する、あるいは、一部又は全部のビニル化合物を逐次に反応させることも可能である。
【0063】
その際、ヒドロシリル化反応触媒の添加方法には特に限定はなく、必要に応じて溶媒を含有するオルガノハイドロジェンシリコーンに対し触媒を予め添加する方法、必要に応じて溶媒を含有する一部又は全部のビニル化合物に添加する方法、必要に応じて溶媒を含有するオルガノハイドロジェンシリコーンと、必要に応じて溶媒を含有するビニル化合物の双方に添加する方法、溶媒を含有する該オルガノハイドロジェンシリコーンと一部又は全部のビニル化合物との混合物に添加する方法等が用いられる。
【0064】
平均組成式(1)によって表されるオルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加させる反応が終了した後に、必要に応じて、炭素数1以上20以下の鎖状、分岐状、環状なる群から選ばれるアルコールにより、未反応SiH単位を減少あるいは消失させる処理を行うことも可能である。
【0065】
ヒドロシリル化反応、あるいは、アルコールによる未反応SiHの処理終了した後のエポキシ変性シリコーンを含む反応混合物は、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する工程に供され、エポキシ変性シリコーンが回収される。
反応混合物から溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する際のエポキシ変性シリコーンの変性を抑制するためには、エポキシ変性シリコーン中に含有される全Si数に対する未反応SiH単位数は、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
また、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する工程に先立ち、ヒドロシリル化反応に用いられた触媒等の金属成分を低減、あるいは、除去しておくことも好ましい。
ヒドロシリル化反応に用いられた触媒等の金属成分を低減、あるいは、除去する方法としては、例えば、活性炭、セライト、シリカゲル、アルミナ粉、イオン交換樹脂等の吸着剤に通してヒドロシリル化触媒等の金属成分を吸着除去する方法;ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール等の従来公知のヒドロシリル化触媒の失活剤を添加して該触媒を失活させる方法、等が挙げられる。
これらの方法のうち、活性炭及び/又はセライトを用いて触媒等の金属成分を低減、あるいは、除去する方法は、同時に着色成分等の除去も可能であるため、特に好ましい。
【0067】
エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する方法について説明する。
エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する方法に、特に限定はなく、例えば、エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去してエポキシ変性シリコーンを回収する方法が挙げられる。また、エポキシ変性シリコーンが高い揮発性を有する場合には、蒸留によりエポキシ変性シリコーンを分離回収してもよい。
この際、エポキシ変性シリコーンと溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物との分離は、同時に行ってもよいし、各々個別に行ってもよい。さらに、分離操作は、一度に実施することも、あるいは、同一又は異なる条件にて繰り返し実施することも可能である。
【0068】
炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量をエポキシ変性シリコーンに対し2質量%以下とすることは、留去/蒸留する際の温度、圧力、時間等の操作条件を、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量を確認しながら技術常識に基づき決定することで実施できる。
【0069】
エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する際の雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス等の不活性ガス、炭素数1以上4以下の低級飽和炭化水素系ガス、空気なる群から選ばれる少なくとも1種のガスの雰囲気下、流通下、減圧下又は加圧下、バブリング下、あるいは、これらを組み合わせた条件下で行うことができる。これらのガスは、一種又は二種以上の混合ガスとして用いることができる。これらのうち、好ましいガスは、不活性ガス、炭素数1以上4以下の低級飽和炭化水素系ガスであり、より好ましくは、不活性ガスであり、さらに好ましくは窒素である。
【0070】
エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する際の温度は、エポキシ変性シリコーン、溶媒、ヒドロシリル化反応に供したビニル基及びエポキシ基を有する化合物を含むビニル化合物の種類によっても異なるが、効率的に溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離し、かつ、エポキシ変性シリコーンの変性を抑制するためには、好ましくは0℃以上150℃以下の範囲、好ましくは5℃以上100℃以下の範囲、より好ましくは10℃以上70℃以下の範囲、さらに好ましくは15℃以上50℃以下の範囲である。このような範囲内であれは、エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する際の温度は、一定の温度である必要はなく、途中で温度を変化させることも可能である。
【0071】
エポキシ変性シリコーンを含む反応混合物から、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離する際に用いられる装置は、溶媒の含有量が低減してエポキシ変性シリコーンを含む混合物の粘度が上昇した場合においても、効率的に溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を分離し得る装置、例えば、竪型撹拌槽、表面更新型撹拌槽反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下型の多孔板型反応器、支持体に沿わせて化合物を落下させながら揮発成分を留去させる反応器等の装置が好ましい。
【0072】
本発明のエポキシ変性シリコーンは、透明性が求められる用途にに適した優れた色調を有すると共に、優れた耐光性、耐熱変色性、さらには耐熱性を有することから、必要に応じてエポキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂用硬化剤を配合し、発光素子用封止剤として用いることができる。さらに、必要に応じて、硬化促進剤、変性剤、無機フィラー、シランカップリング剤、消泡剤、着色剤、蛍光体、変色防止剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー等、従来公知の添加剤を適宜配合することもできる。
【0073】
用いられるエポキシ樹脂としては、従来公知の芳香族グリシジルエーテルに代表される芳香族系エポキシ樹脂の芳香環を水素化して得られるグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ樹脂類、その他のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0074】
芳香族グリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0075】
芳香族グリシジルエーテルの芳香環の水素化反応は、例えば、ルテニウム系触媒、ロジウム系触媒等を用いる従来公知の方法により実施することが可能である。
脂環式エポキシ樹脂類としては、従来公知の化合物、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。
【0076】
その他のエポキシ樹脂類としては、ダイマー酸グリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルアミン類;エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等の線状脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0077】
エポキシ樹脂として芳香族系エポキシ樹脂を用いる場合、耐光性の向上の観点から、用いられるエポキシ樹脂の総質量に対する該芳香族系エポキシ樹脂の比率は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、芳香族系エポキシ樹脂を全く含まないエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂の使用量は、エポキシ変性シリコーン100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは1〜80質量部である。
【0079】
エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類;メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類;メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類;前記フェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類;ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/又はイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類;ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0080】
これらのうち、硬化速度が高まることから、脂環式酸無水物類、芳香族酸無水物類が好ましく、さらに硬化物の耐光性が高まることから、脂環式酸無水物類がより好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましく用いられる。これらの硬化剤は1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0081】
エポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、得られるエポキシ変性シリコーン100質量部に対して1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、2質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0082】
発光素子封止剤には、必要に応じて、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等の第3級アミン類及びその塩類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類;アミノトリアゾ−ル類;オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系;オクチル酸亜鉛等の亜鉛系;アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が用いられる。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0083】
発光素子封止剤には、必要に応じて変性剤を含有してもよい。変性剤としては、1分子中に2個以上の水酸基を含有するポリオール類が挙げられ、脂肪族系ポリオール類、例えば、エチレングリコールやグリセリン等が好ましく用いられる。これらの変性剤は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。変性剤は、硬化物に可とう性を付与し剥離接着力を向上させる場合がある。
【0084】
発光素子封止剤には、必要に応じて無機フィラーを含有してもよい。好ましく用いられる無機フィラーは、透過性への悪影響を避けるため、使用するLEDの波長以下の平均粒子径を有するものであり、より好ましくは、前記平均粒子径が100nm以下のものである。無機フィラーは、例えば機械的物性を改善するためや熱伝導性を向上させる場合がある。
【0085】
発光素子封止剤には、必要に応じてシランカップリング剤を含有してもよい。好ましく用いられるシランカップリング剤は、芳香族基やハロゲン原子を有さない化合物である。
【0086】
発光素子封止剤の硬化方法は公知の方法を用いることができる。公知技術のうち、加熱によって硬化させる方法、あるいは、紫外線(UV)を照射することによって硬化させる方法は、エポキシ樹脂の硬化方法として一般的に用いられる方法であり、好ましい方法として挙げられる。加熱により硬化させる際の温度は、用いられるエポキシ樹脂や硬化剤等によるため特に限定はないが、通常、80〜200℃の範囲である。
硬化反応は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス等の不活性ガス、あるいは、低級飽和炭化水素系ガスや空気等の雰囲気下、減圧下又は加圧下で硬化させることができる。これらのガスは、一種又は二種以上の混合ガスとして用いることができる。これらのうち、好ましいガスは窒素である。
【0087】
本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤を用いて発光素子を封止することにより、発光ダイオードが形成できる。
本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤を用いて封止して得られた発光素子の発光波長は、赤外から赤色、緑色、青色、紫色、紫外まで幅広く用いることができ、従来の封止剤では耐光性が不足して劣化してしまう250nm〜550nmの波長の光まで実用的に用いることができる。これにより、長寿命で、エネルギー効率が高く、色再現性の高い白色発光ダイオードを得ることができる。ここで、発光波長とは、主発光ピーク波長のことをいう。
【0088】
使用できる発光素子の具体例としては、例えば、基板上に半導体材料を積層して形成した発光素子が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。必要に応じ、基板と半導体材料の間にバッファー層を形成しても良い。これらバッファー層としては、GaN、AlN等が挙げられる。基板上へ半導体材料を積層する方法としては、特に制限はないが、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法等が用いられる。
発光素子の構造は、例えば、MIS接合、PN接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合、ダブルヘテロ構造等が挙げられる。また、単一あるいは多重量子井戸構造とすることも可能である。
【0089】
発光素子の封止は、本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤のみで行うこともできるが、他の封止剤を併用して封止することもできる。
他の封止剤を併用する場合、本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤で封止した後、その周囲を他の封止剤で封止する、あるいは、他の封止剤で封止した後、その周囲を本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤で封止することができる。他の封止剤としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0090】
発光素子封止剤で発光素子を封止する方法としては、例えば、モールド型枠中に硬化性組成物を予め注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後に硬化させる方法、発光素子を挿入した型枠中に発光素子封止剤を注入し、硬化する方法等が挙げられる。この際、発光素子封止剤を注入する方法としては、ディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。さらにその他の封止方法としては、発光素子封止剤を発光素子上へ滴下、孔版印刷、スクリーン印刷、あるいは、マスクを介して塗布し硬化させる方法、低部に発光素子を配置したカップ等に発光素子封止剤をディスペンサー等により注入し、硬化させる方法等が挙げられる。
【0091】
本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られる発光素子封止剤は、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド材、発光素子上のパッシベーション膜、パッケージ基板として用いることもできる。
封止部分の形状は、例えば、砲弾型のレンズ形状、板状、薄膜状等が挙げられる。
【0092】
本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られた発光ダイオードは、従来公知の方法で性能の向上を図ることができる。性能の向上方法としては、例えば、発光素子背面に光の反射層あるいは集光層を設ける方法、補色着色部を底部に形成する方法、主発光ピークより短波長の光を吸収する層を発光素子上に設ける方法、発光素子を封止した後さらに硬質材料でモールディングする方法、発光ダイオードを貫通孔に挿入して固定する方法、発光素子をフリップチップ接続等によってリード部材等と接続して基板方向から光を取り出す方法等が挙げられる。
【0093】
本発明のエポキシ変性シリコーンを用いて得られた発光ダイオードは、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等として有用である。
【実施例】
【0094】
以下に本発明の具体的な実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されない。
実施例、比較例においては以下の方法により測定・評価を行った。
(1)シリコーンの平均組成と含有有機基の比率の算出
シリコーン30mgに対して、1mlの割合で重水素化クロロホルム溶媒に溶解した溶液を測定試料とした。この測定試料を用いて、400MHz(日本分光社製α−400)の1H−NMRの測定を積算回数200回にて行い、得られた結果を解析して変性ポリシロキサン1分子中の平均組成を求めた。
シリコーン0.15gに対して、1gの割合で重水素化クロロホルム溶媒に溶解し、Cr(acac)3をシリコーンに対して8wt%添加した溶液を測定試料とした。この測定試料を用いて、400MHz(日本分光社製α−400)の29Si−NMRの測定を積算回数4,000回にて行い、得られた結果を解析して変性ポリシロキサン1分子中の平均組成を求めた。
上記2法にて得られた結果を解析して、含有有機基の比率を算出した。
【0095】
(2)エポキシ変性シリコーン中の炭素−炭素二重結合を有した化合物の残留量及び残留溶媒量の測定
島津社製ガスクロマトグラフィー分析装置GC−14Bを用い、以下の条件により求めた。
5mlのメスフラスコに、エポキシ変性シリコーン約0.5g及び内部標準としてn−オクタン0.015gを秤量した後、脱水THF又は脱水1,4−ジオキサンで5mlに希釈した溶液を、測定サンプルとした。
カラム:J&W Scientific社製DB−1(登録商標)、
長さ30m、内径0.25mm、液膜1μm
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:FID
インジェクション温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温条件:50℃にて5min保持した後、50℃から300℃まで10℃/minで昇温した。
得られた結果から、別途作成した内部標準法による検量線を用いて、エポキシ変性シリコーン中に含有される各成分の含有量を定量し合計した。なお、数値は、エポキシ変性シリコーンに対する質量比で表したものである。
【0096】
(3)エポキシ価
以下の操作と算出法により求めた。
樹脂試料をベンジルアルコールと1−プロパノールで溶解した。この溶液にヨウ化カリウム水溶液、ブロモフェノールブルー指示薬を添加した後、1規定塩酸にて滴定し、反応系内が青色から黄色になった点を当量点とした。当量点より、エポキシ変性シリコーンのエポキシ価を以下の式に従って算出した。
エポキシ価(当量/100g)=(V×N×F)/(10×W)
[ただし、W、V、N、Fは各々以下の値を表す。
W;試料の質量(g)
V;滴定量(ml)
N;滴定に使用した塩酸の規定度(N)
F;滴定に使用した塩酸のファクター
【0097】
(4)元素含有量
含有白金量の分析は四重極ICP質量分析装置(Thermo Elemental製:X7−ICP−MS)を用いて測定した。
(5)透明性
厚さ2mmの硬化物を用い、厚さ方向の350nm、400nm、450nmの光線透過率を日本分光(株)社製JASCO V−550により測定した。初期における光線透過率が80%以上を◎、70%以上80%未満を○、50%以上70%未満を△、50%未満を×とした。
(6)耐光性
光ファイバーを経由してUV照射装置(ウシオ電機製:SP−7)から100℃一定にした恒温乾燥機中の厚さ2mmの硬化物にUV光を照射できるようにセットした。
365nmバンドパスフィルターを用いて、330〜410nmの光を、2W/cm2になるように照射した。
照射開始後、250時間以上硬化物が着色しないものを◎、200時間以上250時間未満で硬化物が着色するものを○、200時間未満で着色するものを×とした。
【0098】
(7)耐熱性
粉砕した硬化物のTgをセイコーインスツールメント社製DSC220Cにより昇温速度10℃/分の条件で測定し、耐熱性の指標とした。硬化物のTgが120℃以上を◎、100℃以上120℃未満を○、50℃以上100℃未満を△とした。
(8)耐熱変色性
厚さ2mmの硬化物を用い、厚さ方向の400nmの光線透過率を日本分光(株)社製JASCO V−550により測定した。次に該硬化物をSUS316製の型枠に入れ、空気下で250℃、20分間加熱処理を行った後、氷冷水で急冷した後、試料の厚さ方向における400nmの光線透過率を再度測定し、加熱処理前の試料における400nmの光線透過率に対する加熱処理後の試料における400nmの光線透過率の値を算出し、加熱処理前の試料の光線透過率に対する加熱処理後の試料の光線透過率の比率を、光線透過保持率として算出した。光線透過保持率が92%以上を◎、90%以上92%未満を○、88%以上90%未満を△、88%未満を×とした。
【0099】
(実施例1)
<エポキシ変性シリコーン(1a)の製造>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する1.5リットルの反応器を窒素置換した。前記装置に、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学社製試薬)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た純1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン70g、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(信越化学社製試薬)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た純1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン32.55g、窒素下にて4−エポキシエチル−シクロへキセン(ダイセル化学工業株式会社製:セロキサイド2000)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイド107.0g、窒素下にて脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)820gを窒素下にて仕込んだ後、大気圧乾燥窒素雰囲気下で攪拌しながら60℃に昇温した。これに、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液1.6gを窒素下にて添加し、引き続き4時間反応した。この際、反応熱により、反応温度は60℃〜100℃であった。
反応終了後、反応液温度を30℃に下げ、該反応液に、乾燥窒素気流下にて120℃で3時間加熱乾燥した300gの活性炭(和光純薬製:顆粒状特級)を添加して、30℃から40℃の温度で、24時間攪拌処理を継続した後、活性炭をろ過した。
得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて3時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーンを得た。得られたエポキシ変性シリコーン約140gを内径65mmφ、長さ250mmのガラスチューブに入れ、ガラスチューブの長軸が水平になるようにガラスチューブオーブン(柴田科学製GTO−350)にセットした。回転数約15回/分にてガラスチューブを長軸方向を中心に回転させながら、内部に大気圧条件下にて3ml/分の流量で乾燥窒素を導入すると共に、系内を40Paに減圧した。外部の面ヒーターでガラスチューブを45℃に加熱して、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を1時間かけて留去し、エポキシ変性シリコーン(1a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(1a)中に残留する1,4−ジオキサンは300ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.45質量%、0.68質量%、0.3質量%残留しており、その合計量は1.43質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(1a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は1.43質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は1.43質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.68質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(1a)のエポキシ価は0.40、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0100】
<硬化物の製造と特性評価>
得られたエポキシ変性シリコーン(1a)100質量部にメチルヘキサヒドロ無水フタル酸60.5質量部、ジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩1質量部を窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物を得た。硬化性組成物を窒素下にて深さ2mmの型に流し込み、120℃で1時間、さらに150℃で2時間硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0101】
(実施例2)
<エポキシ変性シリコーン(2a)の製造>
ガラスチューブオーブンによるエポキシ変性シリコーン中の溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作時間を2時間としたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性シリコーン(2a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(2a)中に残留する1,4−ジオキサンは200ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.21質量%、0.42質量%、0.17質量%残留しており、その合計量は0.8質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(2a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.8質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.8質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.42質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(2a)のエポキシ価は0.39、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0102】
<硬化物の製造と特性評価>
得られたエポキシ変性シリコーン(2a)90質量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3’,4’−エポキシシクロヘキサンジカルボキシレート10質量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸53.1質量部、ジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩1質量部を窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物を得た。硬化性組成物を窒素下にて深さ2mmの型に流し込み、120℃で1時間、さらに150℃で2時間硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0103】
(実施例3)
<エポキシ変性シリコーン(3a)の製造>
ガラスチューブオーブンによるエポキシ変性シリコーン中の、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作時間を3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性シリコーン(3a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(3a)中に残留する1,4−ジオキサンは100ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.03質量%、0.08質量%、0.04質量%残留しており、その合計量は0.15質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(3a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.15質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.15質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.08質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(3a)のエポキシ価は0.39、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0104】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(3a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を59質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0105】
(実施例4)
<エポキシ変性シリコーンの製造(4a)>
ガラスチューブオーブンによるエポキシ変性シリコーン中の、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作時間を4時間としたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性シリコーン(4a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(4a)中に残留する1,4−ジオキサンは20ppm以下、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.003質量%、0.004質量%、0.004質量%残留しており、その合計量は0.011質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(4a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.011質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.011質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.004質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(4a)のエポキシ価は0.39、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0106】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(3a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(4a)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0107】
(比較例1)
<エポキシ変性シリコーンの製造(1b)>
実施例1と同様にして、ヒドロシリル化反応を行った後、活性炭を添加して攪拌処理を行い、次いで活性炭をろ過して処理液を得た。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて1時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーン(1b)を得た。
エポキシ変性シリコーン(1b)中に残留する1,4−ジオキサンは1,000ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.91質量%、1.45質量%、0.64質量%残留しており、その合計量は3質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(1b)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、3質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、3質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、1.45質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(1b)のエポキシ価は0.40、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0108】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(1b)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0109】
(比較例2)
<エポキシ変性シリコーンの製造(2b)>
実施例1と同様にして、ヒドロシリル化反応を行った後、活性炭を添加して攪拌処理を行い、次いで活性炭をろ過して処理液を得た。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて4時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーン(2b)を得た。
エポキシ変性シリコーン(2b)中に残留する1,4−ジオキサンは700ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.76質量%、1.21質量%、0.53質量%残留しており、その合計量は2.5質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(2b)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、2.5質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、2.5質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、1.21質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(2b)のエポキシ価は0.40、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0110】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(2b)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0111】
(比較例3)
<エポキシ変性シリコーンの製造(3b)>
実施例1と同様にして、ヒドロシリル化反応を行った後、活性炭を添加して攪拌処理を行い、次いで活性炭をろ過して処理液を得た。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて7時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーン(3b)を得た。
エポキシ変性シリコーン(3b)中に残留する1,4−ジオキサンは100ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.72質量%、1.19質量%、0.49質量%残留しており、その合計量は2.4質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(3b)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、2.4質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、2.4質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、1.19質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(3b)のエポキシ価は0.40、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0112】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(3b)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0113】
(比較例4)
<エポキシ変性シリコーンの製造(4b)>
実施例1と同様にして、ヒドロシリル化反応を行った後、活性炭を添加して攪拌処理を行い、次いで活性炭をろ過して処理液を得た。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて3時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーンを得た。
得られたエポキシ変性シリコーンを柴田化学(株)製の薄膜蒸発装置(型式:MS−300型)を用いて、以下の条件にて残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去してエポキシ変性シリコーン(4b)を得た。
エポキシ変性シリコーンの加熱温度:70℃
圧力:30Pa
内部コンデンサー温度:0℃
エポキシ変性シリコーンのフィード速度:3g/分
エポキシ変性シリコーン(4b)中に残留する1,4−ジオキサンは600ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.77質量%、1.28質量%、0.59質量%残留しており、その合計量は2.64質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(4b)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、2.64質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、2.64質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、1.28質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(4b)のエポキシ価は0.40、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0114】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(4b)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0115】
(実施例5)
<エポキシ変性シリコーンの製造(5a)>
純1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを30g用いたこと、純1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの代わりに、ビニル基を1g中に1.64mmol含有するα−ビニルジメチルシリルオキシ−ω−ビニルジメチルシリルーポリジメチルシロキサン[ジメチルシロキサン単位の平均重合度が14である。]152.4g用いたこと、4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイドを35.65g用いたこと、脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)を855g用いたこと、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.7g用いたこと以外は、実施例4と同様にして、エポキシ変性シリコーン(5a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(5a)中に残留する1,4−ジオキサンは500ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.64質量%、0.18質量%、0.08質量%残留しており、その合計量は0.9質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(5a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.9質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.9質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.18質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(5a)のエポキシ価は0.1、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.7%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0116】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(5a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸15.1質量部用いたこと、硬化反応を60℃で4時間、さらに70℃で4時間行ったこと以外は、実施例と同様にして、硬化性組成物−及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0117】
(実施例6)
<エポキシ変性シリコーン(6a)の製造>
純1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンを用いなかったこと、4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイドを151.23g用いたこと、脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)を870g用いたこと、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.7g用いたこと以外は、実施例3と同様にして、エポキシ変性シリコーン(6a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(6a)中に残留する1,4−ジオキサンは200ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.02質量%、0.09質量%、0.04質量%残留しており、その合計量は0.15質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(6a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.15質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.15質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.09質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(6a)のエポキシ価は0.54、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.7%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0118】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(6a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を81.7質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0119】
(実施例7)
<エポキシ変性シリコーン(7a)の製造>
ガラスチューブオーブンによるエポキシ変性シリコーン中の、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作時間を5時間としたこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ変性シリコーン(7a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(7a)中に残留する1,4−ジオキサンは20ppm以下、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイドのみが検出され、0.002質量%残留していた。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(7a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.002質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.002質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.002質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(7a)のエポキシ価は0.39、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0120】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(3a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(7a)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0121】
(実施例8)
<エポキシ変性シリコーン(8a)の製造>
純1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンを15.16g用いたこと、4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイドを130.7g用いたこと、脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)を845g用いたこと、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.66g用いたこと以外は、実施例4と同様にして、エポキシ変性シリコーン(8a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(8a)中に残留する1,4−ジオキサンは100ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.03質量%、0.08質量%、0.04質量%残留しており、その合計量は0.15質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(8a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.15質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.15質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.08質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(8a)のエポキシ価は0.48、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.5%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で1ppmであった。
【0122】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(8a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を72.6質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0123】
(実施例9)
<エポキシ変性シリコーン(9a)の製造>
純1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを45g用いたこと、純1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの代わりに、ビニル基を1g中に3.17mmol含有するα−ビニルジメチルシリルオキシ−ω−ビニルジメチルシリルーポリジメチルシロキサン[ジメチルシロキサン単位の平均重合度が6である。]117.88g用いたこと、4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイドを51.74g用いたこと、脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)を840g用いたこと、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.66g用いたこと以外は、実施例4と同様にして、エポキシ変性シリコーン(9a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(9a)中に残留する1,4−ジオキサンは100ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.12質量%、0.02質量%、0.05質量%残留しており、その合計量は0.19質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(9a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.19質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.19質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.02質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(9a)のエポキシ価は0.17、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.4%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で1ppmであった。
【0124】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(9a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を25.7質量部用いたこと、硬化反応を80℃で2時間、さらに100℃で4時間行ったこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0125】
(実施例10)
<エポキシ変性シリコーン(10a)の製造>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する1.5リットルの反応器に、ノルボルネン(東京化成製試薬特級)17.56gを仕込み、窒素置換する。引き続き、4−エポキシエチル−シクロへキセン(ダイセル化学工業株式会社製:セロキサイド2000)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイド77.66g、窒素下にて脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)305gを窒素下にて仕込んだ後、大気圧乾燥窒素雰囲気下で攪拌しながら80℃に昇温した。これに、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.95g添加した後、α−トリメチルシリルオキシ−ω−トリメチルシリルーポリ(ジメチルシロキサン−co−水素メチルシロキサン)[ジメチルシロキサン単位と水素メチルシロキサン単位を合計した重合度が38であり、1分子中にSiH単位を平均19個有する。]110gと前記の1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)280gに窒素下にて溶解した溶液を、1.5リットルの反応容器内の液温度が80℃〜83℃の範囲となる速度で滴下した。滴下終了後、80℃にて4時間反応を行った。
反応終了後、反応液温度を30℃に下げ、該反応液に、乾燥窒素気流下にて120℃で3時間加熱乾燥した240gの活性炭(和光純薬製:顆粒状特級)を添加して、30℃から40℃の温度で、30時間攪拌処理を継続した後、活性炭をろ過した。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力10kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて3時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーンを得た。
得られたエポキシ変性シリコーン約140gを内径65mmφ、長さ250mmのガラスチューブに入れ、ガラスチューブの長軸が水平なるようにガラスチューブオーブン(柴田科学製GTO−350)にセットした。回転数約15回/分にてガラスチューブを長軸方向を中心に回転させながら、内部に大気圧条件下にて3ml/分の流量で乾燥窒素を導入すると共に、系内を40Paに減圧する。外部の面ヒーターでガラスチューブを45℃に加熱して、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を6時間かけて留去し、エポキシ変性シリコーン(10a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(10a)中に残留する1,4−ジオキサンは150ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.13質量%、0.05質量%、0.02質量%残留しており、その合計量は0.2質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(10a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.2質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.2質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.05質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(10a)のエポキシ価は0.27、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.6%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0126】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(10a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を40.9質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0127】
(実施例11)
<エポキシ変性シリコーン(11a)の製造>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する1.5リットルの反応器に、α−トリメチルシリルオキシ−ω−トリメチルシリルーポリ(ジメチルシロキサン−co−水素メチルシロキサン)[ジメチルシロキサン単位と水素メチルシロキサン単位を合計した重合度が38であり、1分子中にSiH単位を平均19個有する。]110gを仕込み、窒素置換する。引き続き、窒素下にて脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)305gを窒素下にて仕込んだ後、大気圧乾燥窒素雰囲気下で攪拌しながら60℃に昇温した。これに、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,4−ジオキサン溶液を1.97g添加した後、第1ステップとして、4−エポキシエチル−シクロへキセン(ダイセル化学工業株式会社製:セロキサイド2000)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイド77.66gを脱水蒸留精製した1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)240gに窒素下にて溶解した溶液を一度に添加し、2時間反応を継続した。引き続き、第2ステップとして、ノルボルネン(東京化成製試薬特級)17.56gを窒素下にて、前記の1,4−ジオキサン(和光純薬社製試薬)50gに溶解した溶液を一度に添加し、3時間反応を継続する。さらに引き続き、第3ステップとして、4−ビニルシクロヘサセン(Aldrich社製試薬)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た純4−ビニルシクロへキサン12.18gを一度に添加し、4時間反応を行った。
反応終了後、ガラスチューブオーブンで、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作時間を7時間かけたこと以外は、実施例8と同様の操作を実施して、エポキシ変性シリコーン(11a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(11a)中に残留する1,4−ジオキサンは100ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.02質量%、0.01質量%残留しており、その合計量は0.03質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物として、ビニルシクロヘキサン、エチリデニルシクロヘキサンが、各々0.06質量%、0.02質量%残留しており、その合計量は0.08質量%であった。
これより、エポキシ変性シリコーン(11a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.11質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.03質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.02質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(11a)のエポキシ価は0.29、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.7%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で3ppmであった。
【0128】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(11a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を43.9質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0129】
(実施例12)
<エポキシ変性シリコーン(12a)の製造>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する1.5リットルの反応器に、α−トリメチルシリルオキシ−ω−トリメチルシリルーポリ(ジメチルシロキサン−co−水素メチルシロキサン)[ジメチルシロキサン単位と水素メチルシロキサン単位を合計した重合度が38であり、1分子中にSiH単位を平均19個有する。]110gを仕込み、窒素置換した。引き続き、窒素下にて脱水蒸留精製したテトラヒドロフラン(安定剤不含品:和光純薬社製試薬)220gを窒素下にて仕込んだ後、大気圧乾燥窒素雰囲気下で攪拌しながら66℃に昇温した。これに、白金元素換算で1,000ppmの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のテトラヒドロフラン溶液を1.96g添加した後、第1ステップとして、4−エポキシエチル−シクロへキセン(ダイセル化学工業株式会社製:セロキサイド2000)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た4−エポキシエチル−シクロへキセンを1.3質量%含有する4−ビニルシクロへキセンオキサイド72.44gを脱水蒸留精製した前記のテトラヒドロフラン220gに窒素下にて溶解した溶液を一度に添加し、2時間反応を継続した。引き続き、第2ステップとして、ノルボルネン(東京化成製試薬特級)6.94gを窒素下にて、前記のテトラヒドロフラン62gに溶解した溶液を一度に添加し、3時間反応を継続した。
さらに引き続き、第3ステップとして、反応温度を50℃に低減し、引き続き第3ステップとして、ビニルトリメチルシラン(東京化成製試薬特級)を窒素下にて脱水蒸留精製して得た純ビニルトリメチルシラン22.15gを一度に添加し、24時間反応を行った。
反応終了後、反応液温度を30℃に下げ、該反応液に、乾燥窒素気流下にて120℃で3時間加熱乾燥した240gの活性炭(和光純薬製:顆粒状特級)を添加して、30℃から40℃の温度で、35時間攪拌処理を継続した後、活性炭をろ過した。得られた処理液をエバポレーターを用いて加熱温度45℃、圧力22kPaの条件で1.5時間、順次圧力を低減して、最終30Paに圧力を下げて3時間かけて溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去し、エポキシ変性シリコーンを得た。
引き続き、ガラスチューブオーブンで、残留溶媒及びエポキシ変性シリコーン中に含有される炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する操作を実施例9と同様の操作を実施して、エポキシ変性シリコーン(12a)を得た。
エポキシ変性シリコーン(12a)中に残留するテトラヒドロフランは50ppm、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物として、4−エチリデニルシクロヘキセンオキサイド、4−エポキシエチル−シクロへキセンが、各々0.07質量%、0.03質量%残留しており、その合計量は0.1質量%であった。なお、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物は含有されていなかった。
これより、エポキシ変性シリコーン(12a)の炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量は、0.1質量%、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を有する化合物の残留量は、0.1質量%、ビニル基及びエポキシ基を有する化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量は、0.07質量%であった。
また、エポキシ変性シリコーン(12a)のエポキシ価は0.28、全Si原子に対する残留SiH単位を構成するSi原子の量は、0.8%、含有される遷移金属成分は白金のみであり、該成分の含有量は白金元素換算で2ppmであった。
【0130】
<硬化物の製造と特性評価>
エポキシ変性シリコーン(1a)の代わりにエポキシ変性シリコーン(12a)を用いたこと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を42.4質量部用いたこと以外は、実施例1記載の<硬化物の製造と特性評価>と同様にして、硬化性組成物及び硬化物を得た。得られた硬化物の性能を表1に示す。
【0131】
(参考例1)
実施例3で得た硬化性組成物を径が4mmの砲弾型のモールド型枠に注入し、そこに、発光波長400nmの発光素子が固定されたリードフレームを浸漬し、真空中で脱泡後、120℃で1時間、さらに150℃で2時間硬化反応を行い、発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオードに対し、室温にて50mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
(参考例2)
実施例9で得た硬化性組成物を用いたこと、硬化反応を80℃で2時間、さらに100℃で4時間としたこと以外は、参考例1と同様の方法で発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオードに対し、室温にて50mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
(参考例3)
実施例12で得た硬化性組成物を用いて、参考例1と同様の方法で発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオードに対し、室温にて50mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
(参考例4)
実施例3、実施例4、実施例7にて製造したエポキシ変性シリコーン(3a)、(4a)、(7a)について、保存安定性の加速試験を実施した。結果を合わせて表1に示す。
【0132】
表1より、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量を2質量%以下とすることにより、エポキシ変性シリコーンの耐熱変色性、耐光性が改良されることが分かる。
【0133】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、透明性、耐熱性、耐光性、耐熱変色性、保存安定性を有し、発光素子封止材用途に好適に用いられるエポキシ変性シリコーンを提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有するビニル化合物をヒドロシリル化反応により付加して得られるエポキシ変性シリコーンであって、炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量がエポキシ変性シリコーンに対し2質量%以下であるエポキシ変性シリコーン。
【請求項2】
エポキシ基を有するビニル化合物の残留量が、エポキシ変性シリコーンに対し1.5質量%以下である請求項1に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項3】
前記エポキシ基を有するビニル化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移を起こして生成した副生成物の残留量が、エポキシ変性シリコーンに対し0.5質量%以下である請求項1又は2に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項4】
前記エポキシ基を有するビニル化合物が、ビニル基を有するエポキシシクロアルカンであり、前記エポキシ基を有するビニル化合物の炭素−炭素二重結合が内部転移した生成物が、エチリデニル基を有するエポキシシクロアルカンである請求項3に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項5】
前記炭素−炭素二重結合を有する化合物の残留量がエポキシ変性シリコーンに対し0.3質量%以下である請求項1に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項6】
前記オルガノハイドロジェンシリコーンが下記記平均組成式(1)で表されるものである請求項1から5のいずれか1項に記載のエポキシ変性シリコーン。
【化1】

[ただし、R1は各々独立に、A)ヒドロキシル基、B)ハロゲン原子、C)無置換又は置換された鎖状、分岐状及び環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が1以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価又は2価の脂肪族有機基、D)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された鎖状、分岐状及び環状なる群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有する、炭素数が6以上24以下及び酸素数が0以上5以下の1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を表す。
上記の有機基は、前記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、有機基としてヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、あるいは、エステル結合を含んでいてもよい。また、窒素、リン、硫黄等の酸素を除くヘテロ原子を含んでいてもよい。]
【請求項7】
エポキシ価が0.15以上0.5以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化反応がヒドロシリル化触媒及び溶媒の存在下で行われる請求項1から7のいずれか1項に記載のエポキシ変性シリコーン。
【請求項9】
前記平均組成式(1)によって表されるオルガノハイドロジェンシリコーンのSiH単位に対し、エポキシ基を有する化合物を含むビニル化合物を付加した後に、反応混合物を0℃以上100℃以下の温度に供して、溶媒及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を留去する工程を含む請求項1から8のいずれか1項に記載のエポキシ変性シリコーンの製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のエポキシ変性シリコーンを含む発光素子封止剤。

【公開番号】特開2007−302825(P2007−302825A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134221(P2006−134221)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】