説明

エマルション組成物

【課題】貯蔵安定性に優れ、並びに、密着性、柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物に関する。
【解決手段】本発明のエマルション組成物は、重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、重合体粒子は、炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)50〜98質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構成単位(B)0.1〜5質量%、シアノ基を有するビニル単量体に由来する構成単位(C)0〜20質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体に由来する構成単位(D)1〜20質量%、及び上記単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(E)0〜50質量%を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、貯蔵安定性に優れ、並びに、密着性、柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエマルション組成物は溶剤系のものに比べて、安全面及び衛生面に優れており、粘接着剤、水性塗料、建築内外装用塗料、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤等の各分野で幅広く使用されている。
特に、アクリル樹脂エマルションは耐候性が良好なことから、これらの分野で使用されることが多い。しかし粘接着剤、塗料及びインク等は、各種基材への高度な密着性が要求されるが、従来のアクリル樹脂エマルションでは、十分満足するものが得られなかった。また、布地、皮革及びゴム製品等の柔軟な素材に使用される塗料やコーティング剤は、得られる乾燥膜の柔軟性が、用いられる基材の変形に追随できない場合、乾燥膜の割れや剥がれが発生する問題もあった。
これに対して、従来のアクリル樹脂エマルション単独ではなく、エポキシ樹脂エマルションと、ポリオレフィン樹脂エマルション等との組み合わせにより密着性や柔軟性、耐久性を向上させる試みがある。しかしながら、エポキシ樹脂エマルション及びポリオレフィン樹脂エマルションを単純にブレンドしただけでは、貯蔵中に分離が生じる場合があり、エポキシ樹脂エマルション及びポリオレフィン樹脂エマルションを製造する時に使用される多量の乳化剤が耐水性に影響を及ぼす場合もあった。
これらに対し、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂の存在下でアクリル系単量体を乳化重合するエマルション組成物の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、オレフィン系重合体とアクリル系重合体を同一粒子内に含有し、オレフィン系重合体粒子の内部及び/又は表面にアクリル系重合体粒子が2個以上存在する粒子が水に分散していることを特徴とするエマルション組成物が開示されている。
更に、エマルション組成物は溶剤系に比較して、耐水性に劣るのが一般的な傾向である。即ち、エマルション組成物は乳化剤の存在下に重合性微粒子が水性媒体中に分散されているものが最も一般的であるが、それに含まれる乳化剤が親水性であること及び親水性官能基を導入せざるを得ないこと等の理由により高度な耐水性を得ることは困難であった。 これに対し、例えば特許文献3には、コア・シェル構造を有する平均粒径が0.3μm以下の樹脂粒子であって、コアを構成する樹脂のTgが15℃以上であり、シェルを構成する樹脂のTgが−30℃以下である樹脂粒子が、水性媒体中に乳化分散してなる水性エマルション型粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−188605号公報
【特許文献2】特開2005−146202号公報
【特許文献3】特開2003−292922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたエマルション組成物は、エポキシ樹脂存在下でアクリル系単量体を乳化重合する際に、水性媒体のpHを5〜8に調整して、乳化重合する製造方法に特徴がある。このエマルション組成物から得られる水性接着剤は密着性や耐水性の向上が見られるものの、エポキシ樹脂中のエポキシ基とアクリル樹脂中のカルボキシル基とが反応しやすく、エマルション組成物の貯蔵安定性が良くないという問題がある。また、このエマルション組成物から得られる乾燥膜は、柔軟性、粘着性、耐久性等の物性が満足できるものではない。
また、上記特許文献2に開示されたエマルション組成物は、オレフィン系重合体中にアクリル系重合体を分散させることにより、アクリル中の官能基を安定化させることに特徴があるエマルション組成物である。このエマルション組成物から得られる乾燥膜は、密着性、耐久性及び耐水性の点で、いくらか向上が見られるが、未だ十分満足できるものではなく、柔軟性や粘着性等の物性は満足できるものではない。
上記特許文献3に開示された水性エマルション型粘着剤は、コア・シェル構造を有するアクリルエマルションに特徴がある。この水性エマルション型粘着剤から得られる乾燥膜は、耐水性に向上が見られるが、得られる乾燥膜が有する密着性、柔軟性及び耐久性等の物性は、十分満足できるものではない。
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、並びに、密着性、柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される。
1.重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、
上記重合体粒子は、炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)50〜98質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構成単位(B)0.1〜5質量%、シアノ基を有するビニル単量体に由来する構成単位(C)0〜20質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体に由来する構成単位(D)1〜20質量%、及び上記単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(E)0〜50質量%を含有することを特徴とするエマルション組成物。
〔但し、上記構成単位(A)、上記構成単位(B)、上記構成単位(C)、上記構成単位(D)及び上記構成単位(E)の合計を100質量%とする。〕
2.上記重合体粒子のガラス転移温度が、−80℃〜0℃である上記1.に記載のエマルション組成物。
3.エマルション組成物を乾燥させて得られた乾燥膜の酢酸エチルに対する可溶分が、30質量%以下である上記1.又は上記2.に記載のエマルション組成物。
4.上記重合体粒子が、反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られたものである上記1.乃至3.のいずれかに記載のエマルション組成物。
5.上記単官能エポキシ化合物が、フェニル基を有する化合物である上記1.乃至4.のいずれかに記載のエマルション組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエマルション組成物によれば、貯蔵安定性に優れ、並びに、密着性、柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物とすることができる。
また、重合体粒子のガラス転移温度が、−80℃〜0℃である場合には、より柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物とすることができる。
また、エマルション組成物を乾燥させて得られた硬化物の酢酸エチルに対する可溶分が、30質量%以下である場合には、凝集力に優れるエマルション組成物とすることができる。
また、重合体粒子が、反応性乳化剤の存在下に上記単量体を乳化重合して得られたものである場合には、更に耐水性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物とすることができる。
また、単官能エポキシ化合物が、フェニル基を有する化合物である場合には、より凝集力に優れ、並びに、より密着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のエマルション組成物は、重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、上記重合体粒子は、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(以下、単量体(a)ともいう)に由来する構成単位(A)50〜98質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、単量体(b)ともいう)に由来する構成単位(B)0.1〜5質量%、シアノ基を有するビニル単量体(以下、単量体(c)ともいう)に由来する構成単位(C)0〜20質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体(以下、単量体(d)ともいう)に由来する構成単位(D)1〜20質量%、及び上記単量体と共重合可能な他の単量体(以下、単量体(e)ともいう)に由来する構成単位(E)0〜50質量%を含有〔但し、上記構成単位(A)+上記構成単位(B)+上記構成単位(C)+上記構成単位(D)+上記構成単位(E)=100質量%〕することを特徴とする。
尚、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「乾燥膜」とは、エマルション組成物を塗布等により塗膜等の膜を形成させた後、膜の乾燥(硬化)が終了した後の膜を意味する。
【0008】
本発明のエマルション組成物は、上記単量体により形成された構成単位(単量体単位)を含む重合体粒子が、水性媒体に分散してなる分散体(乳濁液)である。この水性媒体としては、水のみを、あるいは、水と、水溶性有機溶媒(アルコール、ケトン、エーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等)とからなる混合物を用いることができる。この水性媒体が混合物である場合、水の含有量は、水性媒体を100質量%としたときに、通常、30質量%以上である(以下、「水性媒体」に関し同様である。)。
【0009】
重合体粒子は、少なくとも炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構成単位(B)、及び(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体に由来する構成単位(D)を含有する重合体粒子である。
更に、重合体粒子は、シアノ基を有するビニル単量体に由来する構成単位(C)、及び
上記単量体[単量体(a)、単量体(b)、又は単量体(d)、〔但し、重合体粒子が構成単位(C)を含む場合、単量体(c)も含まれる〕]と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(E)から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含有することができる。
【0010】
また、上記重合体粒子は、固体、及び半固体(ゲル状)のうちの少なくとも1種の状態で、粒状となった重合体である。
この重合体粒子の平均粒子径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.01〜2μmであり、更に好ましくは0.03〜1μmである。重合体粒子の平均粒子径が、上記範囲内にあると、貯蔵安定性に優れるエマルション組成物とすることができる。
【0011】
上記構成単位(A)を形成する、炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル〕としては、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2−メチルオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリ酸イソボルニル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記構成単位(B)を形成するエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、アクリロキシプロピオン酸等の不飽和一塩基酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の不飽和二塩基酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等の不飽和酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも(メタ)アクリル酸は安価であり、他の各種単量体と共重合反応を起こしやすいので好ましい。
【0013】
上記構成単位(C)を形成するシアノ基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記構成単位(D)を形成する、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体は、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有し、且つヒドロキシ基を有する化合物である。
上記単官能エポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、フェノールポリエチレングリコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−メチルフェニルグリシジルエーテル、p−エチルフェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、これらの単官能エポキシ化合物のうち、フェニル基を含有する単官能エポキシ化合物が好ましい。具体的には、フェノールポリエチレングリコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−メチルフェニルグリシジルエーテル、p−エチルフェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジル等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体としては、具体的には、下記式(1)で示される2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、下記式(2)で示される2−ヒドロキシ−3−p−メチルフェノキシプロピルアクリレート、及び下記式(3)で示される2−ヒドロキシ−3−2−エチルヘキシロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【化1】

【化2】

【化3】

【0017】
上記構成単位(E)を形成する上記単量体と共重合可能な他の単量体(e)は、単量体(a)、単量体(b)、又は単量体(d)と共重合可能な単量体であり、重合体粒子が構成単位(C)を含む場合、単量体(c)と共重合可能な単量体も含まれる。この単量体(e)としては、ラジカル重合性を有する不飽和化合物であれば、特に限定されない。この不飽和化合物としては、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体(但し、構成単位(D)を形成する単量体は除く)、芳香族ビニル単量体、アミノ基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体、アルコキシル基を有するビニル単量体、共役ジエン系単量体、マレイミド系単量体、ビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体、グリシジル基を有するビニル単量体、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、珪素含有基を有する単量体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アミノ基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
アミド基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
アルコキシル基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記マレイミド系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記ビニルエステル単量体としては、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記ビニルエーテル単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
グリシジル基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルテーテル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリルレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリルレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリルレート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等のモノアルキルエステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸等のジアルキルエステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
珪素含有基を有する単量体としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−ヒドロキシメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジエトキシシラノール、ビニルエトキシシラジオール、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチツエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシシラン、2−アクリルアミドエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
これらの他の単量体のうち、好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体、ヒドロキシル基を有する単量体及び芳香族ビニル単量体である。これらの単量体を用いることにより、安価に、密着性、柔軟性、凝集力に優れるエマルション組成物とすることができる。
【0032】
重合体粒子における構成単位(A)の含有量は、構成単位(A)、構成単位(B)、構成単位(C)、構成単位(D)及び構成単位(E)の合計量を100質量%としたときに、50〜98質量%である。好ましくは55〜95質量%であり、より好ましくは60〜93質量%である。構成単位(A)の含有量が、上記範囲にあると、柔軟性、低温性に優れる乾燥膜が得られるエマルション組成物とすることができる。
【0033】
重合体粒子における構成単位(B)の含有量は、構成単位(A)、構成単位(B)、構成単位(C)、構成単位(D)及び構成単位(E)の合計量を100質量%としたときに、0.1〜5質量%である。好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.3〜2.5質量%である。構成単位(B)の含有量が、上記範囲にあると、凝集力に優れる硬化物が得られるエマルション組成物とすることができる。また0.1質量%より少ないと安定に重合できないことがあり、5質量%より多いとエマルションを中和した時に増粘してしまうことがある。
【0034】
重合体粒子における構成単位(C)の含有量は、構成単位(A)、構成単位(B)、構成単位(C)、構成単位(D)及び構成単位(E)の合計量を100質量%としたときに、0〜20質量%である。好ましくは0.1〜18質量%であり、より好ましくは1〜18質量%である。構成単位(C)の含有量が、上記範囲にあると、柔軟性及びゴム弾性に優れる乾燥膜が得られるエマルション組成物とすることができる。一方、構成単位(C)の含有量が、20質量%を超えると耐水性が低下する場合がある。
構成単位(C)の含有量が、0質量%とは、重合体粒子において、構成単位(C)が全く含有されていないという意味である。
即ち、重合体粒子中に構成単位(C)は、含有されていてもよく、含有されていなくてもよい。構成単位(C)が含有されている場合、その含有量は20質量%以下である。好ましくは、重合体粒子中に構成単位(C)が含有されており、その含有量は0.1〜18質量%であり、より好ましくは1〜18質量%である。
【0035】
重合体粒子における構成単位(D)の含有量は、構成単位(A)、構成単位(B)、構成単位(C)、構成単位(D)及び構成単位(E)の合計量を100質量%としたときに、1〜20質量%である。好ましくは3〜18質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。構成単位(D)の含有量が、1質量%未満では密着性が不十分であり、20質量%を超えると柔軟性及び重合安定性が低下する場合がある。
【0036】
重合体粒子における構成単位(E)の含有量は、構成単位(A)、構成単位(B)、構成単位(C)、構成単位(D)及び構成単位(E)の合計量を100質量%としたときに、0〜50質量%である。好ましくは0.3〜45質量%であり、より好ましくは0.4〜40質量%である。
構成単位(E)の含有量が、0質量%とは、重合体粒子において、構成単位(E)が全く含有されていないという意味である。重合体粒子中に構成単位(E)は、含有されていてもよく、含有されていなくてもよい。構成単位(E)が含有されている場合、その含有量は50質量%以下であり、好ましくは0.3〜45質量%であり、より好ましくは0.4〜40質量%である。
【0037】
重合体粒子のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、好ましくは−80℃〜0℃であり、より好ましくは−80℃〜−5℃であり、更に好ましくは−80℃〜−10℃である。重合体粒子のTgが、上記範囲内にあると、粘着性、密着性及び低温性に優れる乾燥膜が得られるエマルション組成物とすることができる。この重合体粒子のガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0038】
エマルション組成物の固形分濃度は、上記重合体粒子を主として含み、エマルション組成物の固形分濃度は、適宜の固形分濃度とすればよい。エマルション組成物の固形分濃度は、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜85質量%であり、より好ましくは30〜80質量%である。
また、エマルション組成物の粘度は、特に限定されず、適宜の粘度とすればよい。温度25℃おけるエマルション組成物の粘度は、通常、1〜5000mPa・sであり、好ましくは5〜4000mPa・sであり、より好ましくは10〜3000mPa・sである。このエマルション組成物の粘度は、BM型粘度計により測定することができる。
エマルション組成物のpHは、特に限定されないが、通常、1〜10の範囲にある。
【0039】
本発明のエマルション組成物から得られる乾燥膜は、酢酸エチルに対する可溶分が、30質量%以下とすることができる。この可溶分としては、通常、0%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。この可溶分が、上記範囲内にあると、耐久性、凝集力、耐水性に優れる乾燥膜が得られるエマルション組成物とすることができる。
酢酸エチルに対する可溶分は、高速溶媒抽出装置を用いて測定することができる。例えば、エマルション組成物から得られる乾燥膜を所定量精秤し試験体を作成し、その乾燥膜からなる試験体にオタワ砂を混ぜた試料を調整する。得られた試料を上記高速溶媒抽出装置にセットし、試料を酢酸エチルによる抽出をする。抽出後、乾燥させて、酢酸エチルを取り除き、酢酸エチル抽出物を得る。
そして、酢酸エチル可溶分は、得られた酢酸エチル抽出物の質量及び試験体の質量から、下記式(1)により算出される。
酢酸エチル可溶分(質量%)=酢酸エチル抽出物の質量(g)/試験体の質量(g)×100 ・・・(1)
【0040】
エマルション組成物は、本発明の目的が達成される限り、更に、他の添加剤を含有することができる。この添加剤としては、増粘剤、消泡剤、顔料、pH調整剤、粘着付与剤、架橋剤、可塑剤、湿潤剤、安定剤、防腐剤、防カビ剤、充填剤、凍結防止剤、溶剤、分散剤、沈降防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、層状粘度鉱物、アルデヒド捕捉剤、酸化防止剤、繊維助剤、洗浄剤、レベリング剤、均染剤、粘接着剤、水性塗料、建築内外装用塗料・塗材・防水材、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤に一般的に添加される添加剤(材)等が挙げられる。
【0041】
上記増粘剤としては、例えば、アクリル系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリエーテル系増粘剤、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体、ベントナイト、ヘクトライト、アパタルジャイト等の無機系増粘剤等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0042】
上記消泡剤成分としては、例えば、シリコーン系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系及びリン酸エステル系等の消泡剤、これらの消泡剤の構造の一部が変性されたもの等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。また、2種以上が含有されている場合、シリコーン系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系及びリン酸エステル系のいずれの消泡剤成分の組み合わせであってもよい。
【0043】
上記顔料としては、有機化合物(有機顔料)及び無機化合物(無機顔料)のいずれでもよい。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料等が挙げられる。これらのうち、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料が好ましい。また、無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ、黄色酸化鉄、黄鉛、チタンイエロー、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトブルー、マンガンバイオレット等が挙げられる。
【0044】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ロジン樹脂、p−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水添炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0045】
上記架橋剤としては、カルボキシル基(主に、(メタ)アクリル酸が有するカルボキシル基)との反応性を有する架橋剤であって、例えば、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。また、架橋剤は、例えば、油溶性または水溶性の架橋剤等が用いられ、あるいは、水分散型(エマルションタイプ)として調製された架橋剤も用いられる。これらは1種のみ含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。
【0046】
本発明のエマルション組成物の製造方法は、上記単量体を重合する重合工程を備える。この重合工程により単量体が重合されて、水性媒体中に分散する重合体粒子が形成される。重合工程における単量体の重合方法は、特に限定されず、公知のビニル系単量体の乳化重合等の重合方法を用いることができる。この重合工程としては、具体的には、撹拌及び還流冷却しながら、水性媒体中、加熱された反応系で行われ、例えば、以下に例示される。
〔1〕水性媒体、並びに、一部又は全ての上記単量体を含む単量体混合物及び/もしくは一部又は全ての乳化剤の混合物に、ラジカル重合開始剤、並びに、残りの単量体混合物及び/又は残りの乳化剤を添加しながら重合する方法。
〔2〕水性媒体に、上記単量体を含む単量体混合物、乳化剤及びラジカル重合開始剤を、個別に添加しながら、もしくは、これらのうちの2種又は3種を組み合わせて添加しながら重合する方法。
上記各態様において、原料成分の添加方法は、一括添加法、連続添加法及び分割添加法のいずれでもよい。連続添加法の場合、供給速度は、一定でも不定でもよい。また、分割添加法の場合、原料成分の添加間隔は、一定でも、不定でもよい。
更に、重合工程において、反応系における単量体混合物及び水性媒体の質量比は、単量体の量を100質量部としたときに、水性媒体の量が5〜200質量部であることが好ましい。
【0047】
エマルション組成物の製造方法に用いる単量体としては、上記エマルション組成物に記載された単量体の記載をそのまま適用できる。また、各々の単量体の配合割合は、単量体が重合してなる各々の構成単位の質量割合をそのまま適用できる。
即ち、エマルション組成物(重合体粒子)は、炭素数4〜14のアルキル基を有する上記アルキル(メタ)アクリレート単量体(a)50〜98質量%(好ましくは55〜95質量%、より好ましくは60〜93質量%)、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)0.1〜5質量%(好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜2.5質量%)、シアノ基を有する上記ビニル単量体(c)0〜20質量%(好ましくは0.1〜18質量%、より好ましくは1〜18質量%)、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる上記単量体(d)1〜20質量%(好ましくは3〜18質量%、より好ましくは5〜15質量%)、及び上記単量体と共重合可能な上記他の単量体(e)0〜50質量%(好ましくは0.3〜45質量%、より好ましくは0.4〜40質量%)を含有する単量体混合物を水性媒体中で乳化重合させて得られたものである。但し、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)及び単量体(e)の合計を100質量%とする。
尚、上記単量体(c)及び上記単量体(d)の配合量が、0質量%とは、上記単量体(c)及び上記単量体(d)が配合されないという意味である。
【0048】
重合工程の乳化重合においては、乳化剤が用いられる。この乳化剤としては、通常の乳化重合の際に用いられる公知の乳化剤を使用することができる。本発明のエマルション組成物の製造方法では、反応性乳化剤を用いることが好ましい。
この反応性乳化剤とは、エチレン性不飽和二重結合等の官能基(反応性基)を有する乳化剤である。反応性乳化剤としては、反応性基を有する乳化剤であれば特に限定されないが、例えば、下記式4〜15に示される乳化剤が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体粒子(エマルション組成物)が反応性乳化剤の存在下で、乳化重合して得られたものである場合、耐水性に優れる乾燥膜が得られるエマルション組成物とすることができる。
【0049】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【0050】
上記一般式(4)〜(15)において、Rはアルキル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R3はアルキレン基を示し、n及びmは1以上の整数であり、l及びkは1以上の整数、且つl+k=3であり、Xは水素原子、−SONH又は−SONaを示し、Yは−SONH又は−SONaを示す。
【0051】
反応性乳化剤以外の乳化剤としては、具体的には、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性イオン性乳化剤等が挙げられる。アニオン性乳化剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高分子乳化剤等が挙げられる。また、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系乳化剤、ソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、グリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリカルボン酸系高分子乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、カチオン性乳化剤としては、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジミチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0052】
上記反応性乳化剤に代えて、又は上記反応性乳化剤と共に上記反応性乳化剤以外の乳化剤を1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記の乳化剤のほかに、特殊乳化剤として、フッ素系乳化剤やシリコーン系乳化剤を使用することもできる。
上記乳化剤の使用量(上記反応性乳化剤及び上記反応性乳化剤以外の乳化剤の総量)は、その種類、重合条件等により選択されるが、上記単量体を100質量部としたときに、通常、0.1〜50質量部である。
【0053】
また、重合工程において、単量体の重合は、過酸化物、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤、アゾ系化合物等のラジカル重合開始剤を用いて行われる。これらのラジカル重合開始剤は、組み合わせて用いることができる。
上記過酸化物としては、過酸化水素;過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等)等の無機過酸化物;ハイドロパーオキサイド(クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル(tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、レドックス系開始剤としては、上記過酸化物と還元剤とが組み合わされたものが用いられる。この還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等の還元剤が挙げられる。
また、上記アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンジアミン〕四水和塩等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、その種類、重合条件等により選択されるが、上記単量体を100質量部としたときに、通常、0.01〜10質量部である。
【0055】
また、上記重合工程においては、得られるエマルション組成物の用途等に応じて、連鎖移動剤(分子量調整剤)等を用いることができる。
この連鎖移動剤としては、メルカプト基含有化合物(エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、α−トルエンチオール、フェネチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトイソ酪酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、チオ酢酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等)、キサントゲンジスルフィド化合物(ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等)、チウラムジスルフィド化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、臭化エチレン等)、芳香族炭化水素(ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記重合工程における重合温度は、単量体の種類、ラジカル重合開始剤の種類等により、適宜、選択されるが、通常、60〜95℃である。
【0057】
上記重合工程によりエマルション組成物が得られる。得られるエマルション組成物のpHは、単量体やラジカル重合開始剤の種類により選択されるが、更に、上記重合工程の終了後、得られるエマルション組成物の用途等に応じて、エマルション組成物のpHを調整するpH調整工程を備えることができる。
pH調整工程において、反応系のpHを調整する際には、通常、塩基性材料が用いられる。この塩基性材料としては、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等)、アンモニア、有機アミン化合物(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらの化合物は、単独で用いてもよいが、水に溶解させてなる水溶液として用いてもよい。また、これらのうち、アンモニアが特に好ましい。
【0058】
上記pH調整工程において、反応系のpHを調整するときの反応系の温度は、特に限定されない。この温度は、通常、上記重合工程終了時の反応系の温度以下とすることができる。
【0059】
本発明のエマルション組成物の用途は、特に限定されない。本発明のエマルション組成物は、貯蔵安定性に優れ、密着性、柔軟性、耐久性及び粘着性に優れる乾燥膜を形成するエマルション組成物であることから、例えば、粘接着剤、水性塗料、建築内外装用塗料・塗材・防水材、インク、繊維・紙等の含浸剤、シーリング剤、コーティング剤等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
また、実施例及び比較例における、エマルション組成物中の重合体粒子のガラス転移温度及び平均粒子径、エマルション組成物の粘度、エマルション組成物から得られる硬化物の酢酸エチル可溶分の測定、並びにエマルション組成物の貯蔵安定性評価は、下記の方法により行なった。
【0061】
1−1.エマルション組成物の物性及び評価方法
(1)ガラス転移温度
示差走査熱量計「DSC5200」(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、窒素雰囲気下で昇温速度が20℃/分の条件により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。尚、測定に用いたサンプル量は5〜10mgとした。
【0062】
(2)平均粒子径
レーザー回折・散乱式の粒度分析計マイクロトラックMT−3000(日機装株式会社製)を用い、平均粒子径で測定した。尚、体積基準によるメジアン径を粒子径とした。
(3)粘度
BM型粘度計を用い、12rpm、25℃の条件で測定した。
【0063】
(4)酢酸エチル可溶分
(i)試料の調製
離型紙で作成した箱(縦15cm×横7.5cm×高さ3cm)の中に、乾燥後に得られる乾燥膜の厚さが1mmとなるように、エマルション組成物を流し込み、エマルション組成物からなる膜を作製し、室温(約18℃)で、1週間乾燥させて乾燥膜を得た。
(ii)酢酸エチルによる抽出
上記により得られた乾燥膜に対する酢酸エチルによる抽出操作は、高速溶媒抽出装置ASE−200(日本ダイオネクス株式会社製)を用いて行なった。
上記により得られた乾燥膜の約0.3gを精秤し、これを試験体とした。試験体をオタワ砂に混ぜた後、11mlの抽出セルに充填した。次いで、試験体とオタワ砂とが充填された抽出セルを、上記高速溶媒抽出装置にセットして、下記条件による抽出を2回繰り返した。その後、100℃にて乾燥させて、酢酸エチルを取り除き、酢酸エチル抽出物を得た。
PREHEAT:0min、HEAT:6min、STATIC:10min、FLUSH%:100vol、PURGE:90sec、CYCLES:3、PRESSURE:1500psi、TEMPERARURE:120℃
酢酸エチル可溶分は、以下の式により算出した。
酢酸エチル可溶分(質量%)=酢酸エチル抽出物の質量(g)/試験体の質量(g)×100
【0064】
(5)貯蔵安定性の評価
110mlのガラス瓶にエマルション組成物を約100ml投入し、次いで、このガラス瓶を密栓し、50℃で1ヶ月間静置した。そして、1ヵ月後、ガラス瓶中のエマルション組成物の状態を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:凝集、増粘、沈殿、及び分離のいずれも見られず良好であった。
△:凝集、増粘、沈殿、及び分離のいずれかが見られた。
×:ゲル化していた。
【0065】
1−2.エマルション組成物の製造に用いた乳化剤及びエポキシ樹脂
(1)乳化剤として下記の乳化剤を使用した。
乳化剤(1):下記式(16)に示される反応性乳化剤、花王株式会社製、商品名「ラテムルPD−104」、有効成分量20質量%
【化16】

〔但し、上記式(16)において、n、mは1以上の整数である。〕
乳化剤(2):下記式(17)に示される反応性乳化剤、株式会社ADEKA製、商品名「アデカリアソープSR−1025」、有効成分量25質量%
【化17】

〔但し、上記式(17)において、Rは、アルキル基を示し、nは1以上の整数である。〕
乳化剤(3):下記式(18)に示される反応性乳化剤、株式会社ADEKA製、商品名「アデカリアソープER−30」、有効成分量100質量%
【化18】

〔但し、上記式(18)において、Rは、アルキル基を示し、nは1以上の整数である。〕
乳化剤(4):下記式(19)に示される反応性乳化剤、第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンKH−1025」、有効成分量25質量%
【化19】

〔但し、上記式(19)において、Rは、アルキル基を示し、nは1以上の整数である。〕
【0066】
乳化剤(5):ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王株式会社製、商品名「ネオペレックスG−15」、有効成分量15質量%
乳化剤(6):アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王株式会社製、商品名「ペレックスSSH」、有効成分量50質量%
乳化剤(7):ラウリル硫酸ナトリウム、花王株式会社製、商品名「エマール2F」、有効成分量30質量%
【0067】
(2)エポキシ樹脂として下記のものを使用した。
下記式(20)に示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「JER828」、エポキシ当量184〜194g/eq、分子量370。
【化20】

【0068】
1−3.エマルション組成物の製造及びその評価
<実施例1−1>
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内にイオン交換水25部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、攪拌下、加熱して80℃とした。一方、別の容器に、単量体として2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5.0部及びメチルメタクリレート9.0部からなる単量体混合物と、乳化剤(1)15.0部及びイオン交換水16.0部からなる乳化液とを仕込み、これらの原料を攪拌し、単量体を含む乳化物を得た。次いで、得られた乳化物のうちの0.3%を反応容器中に添加し、10分経過後、5%過硫酸アンモニウム水溶液4部を反応容器に添加した。更に、10分経過後、残りの乳化物、及び5%過硫酸アンモニウム水溶液6部を、それぞれ別の滴下ロートにより4時間かけて連続的に反応容器内に滴下して乳化重合を行った。滴下終了後、反応容器内を80℃にて1時間保持した後、反応系を冷却して重合を終了し、重合体粒子が分散されたエマルション組成物(1)を得た。得られたエマルション組成物(重合体粒子)について、ガラス転移温度(Tg)、平均粒子径、粘度、酢酸エチル可溶分、pH、及び固形分濃度の物性を測定し、更に、貯蔵安定性を評価した。実施例1−1で使用した原料、並びに、測定した物性及び評価結果を表1に示す。
【0069】
<実施例1−2>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート75.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート15.0部及びメチルメタクリレート4.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(2)を得た。実施例1−2で使用した原料、並びに、エマルション組成物(2)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0070】
<実施例1−3>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート71.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート19.0部及びメチルメタクリレート4.0部とし、乳化剤を、乳化剤(1)10.0部及び乳化剤(5)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を18.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(3)を得た。実施例1−3で使用した原料、並びに、エマルション組成物(3)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0071】
<実施例1−4>
単量体を、n−ブチルアクリレート86.0部、アクリル酸0.5部、アクリロニトリル3.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びヒドキシエチルアクリレート0.5部をし、乳化剤を、乳化剤(1)10.0部及び乳化剤(6)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を21.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(4)を得た。実施例1−4で使用した原料、並びに、エマルション組成物(4)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0072】
<実施例1−5>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート85.0部、メタクリル酸1.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部、及びメチルメタクリレート4.0部とし、乳化剤を、乳化剤(4)12.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(5)を得た。実施例1−5で使用した原料、並びに、エマルション組成物(5)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0073】
<実施例1−6>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート75.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びスチレン4.0部とし、乳化剤を、乳化剤(4)12.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(6)を得た。実施例1−6で使用した原料、並びに、エマルション組成物(6)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0074】
<実施例1−7>
単量体を、イソノニルアクリレート92.0部、アクリル酸1.0部、アクリロニトリル2.0部及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(7)を得た。実施例1−7で使用した原料、並びに、エマルション組成物(7)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0075】
<実施例1−8>
単量体を、n−ブチルアクリレート64.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート15.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(8)を得た。実施例1−8で使用した原料、並びに、エマルション組成物(8)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0076】
<実施例1−9>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート59.0部、n−ブチルアクレレート20.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5.0部及びメチルメタクリレート5.0部とし、乳化剤を、乳化剤(7)10.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を18.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(9)を得た。実施例1−9で使用した原料、並びに、エマルション組成物(9)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0077】
<実施例1−10>
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内にイオン交換水25部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、攪拌下、加熱して80℃とした。一方、別の容器に、単量体として2−エチルヘキシルアクリレート75.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート4.0部からなる単量体混合物と、乳化剤(1)10.0部及び乳化剤(5)2.0部並びにイオン交換水18.0部からなる乳化液と、分子量調整剤としてn−ドデシルメルカプタン0.1部とを仕込み、これらの原料を攪拌し、単量体を含む乳化物を得た。次いで、得られた乳化物のうちの0.3%を反応容器中に添加し、10分経過後、5%過硫酸アンモニウム水溶液4部を反応容器に添加した。更に、10分経過後、残りの乳化物、及び5%過硫酸アンモニウム水溶液6部を、それぞれ別の滴下ロートにより4時間かけて連続的に反応容器内に滴下して乳化重合を行った。滴下終了後、反応容器内を80℃にて1時間保持した後、反応系を冷却して重合を終了し、重合体粒子が分散されたエマルション組成物(10)を得た。実施例1−10で使用した原料、並びに、エマルション組成物(10)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0078】
<実施例1−11>
分子量調整剤n−ドデシルメルカプタンの使用量を、0.3部とし、乳化剤を、乳化剤(4)8.0部及び乳化剤(5)2.0部とした以外は、実施例1−10と同様にして、エマルション組成物(11)を得た。実施例1−11で使用した原料、並びに、エマルション組成物(11)の物性及び評価結果を表1に併記する。
【0079】
<実施例1−12>
使用量を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート3.0部、及びメチルメタクリレート11.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(12)を得た。実施例1−12で使用した原料、並びに、エマルション組成物(12)の物性及び評価結果を表2に示す。
【0080】
<実施例1−13>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート4.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(13)を得た。実施例1−13で使用した原料、並びに、エマルション組成物(13)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0081】
<実施例1−14>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート70.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート20.0部及びメチルメタクリレート4.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(14)を得た。実施例1−14で使用した原料、並びに、エマルション組成物(14)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0082】
<実施例1−15>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−p−メチルフェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート4.0部として用いた以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(15)を得た。実施例1−15で使用した原料、並びに、エマルション組成物(15)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0083】
<実施例1−16>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−2−エチルヘキシロキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート4.0部として用いた以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(16)を得た。実施例1−16で使用した原料、並びに、エマルション組成物(16)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0084】
<実施例1−17>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート4.0部とし、更に、乳化剤を、乳化剤(4)12.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(17)を得た。実施例1−17で使用した原料、並びに、エマルション組成物(17)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0085】
<実施例1−18>
単量体を、イソノニルアクリレート70.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル18.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びスチレン4.0部とし、更に、乳化剤を、乳化剤(4)12.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(18)を得た。実施例1−18で使用した原料、並びに、エマルション組成物(18)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0086】
<実施例1−19>
単量体を、イソノニルアクリレート50.0部、2−エチルヘキシルアクリレート29.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(19)を得た。実施例1−19で使用した原料、並びに、エマルション組成物(19)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0087】
<実施例1−20>
単量体を、n−ブチルアクリレート53.0部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート25.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(20)を得た。実施例1−20で使用した原料、並びに、エマルション組成物(20)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0088】
<実施例1−21>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート59.0部、n−ブチルアクリレート20.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート5.0部及びメチルメタクリレート5.0部とし、乳化剤を、乳化剤(5)4.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を24.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(21)を得た。実施例1−21で使用した原料、並びに、エマルション組成物(21)の物性及び評価結果を表2に併記する。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
<比較例1−1>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部及びメチルメタクリレート14.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(31)を得た。比較例1−1で使用した原料、並びに、エマルション組成物(31)の物性及び評価結果を表3に示す。
【0092】
<比較例1−2>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート65.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート25.0部及びメチルメタクリレート4.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして重合を行った。しかし、重合反応中に凝集が生じ、エマルション組成物(32)は得られなかった。比較例1−2で使用した原料を表3に併記する。
【0093】
<比較例1−3>
単量体を、イソノニルアクリレート64.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル25.0部及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部とし、更に、乳化剤を、乳化剤(4)12.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(33)を得た。比較例1−3で使用した原料、並びに、エマルション組成物(33)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0094】
<比較例1−4>
単量体を、n−ブチルアクリレート43.0部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート35.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にしてエマルション組成物(34)を得た。比較例1−4で使用した原料、並びに、エマルション組成物(34)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0095】
<比較例1−5>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート80.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部及びメチルメタクリレート14.0部とし、乳化剤を、乳化剤(1)10.0部とし、更に乳化液に用いたイオン交換水の使用量を18.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(35)を得た。比較例1−5で使用した原料、並びに、エマルション組成物(35)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0096】
<比較例1−6>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート65.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート25.0部及びメチルメタクリレート4.0部とし、乳化剤を、乳化剤(1)10.0部とし、更に乳化液に用いたイオン交換水の使用量を18.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(36)を得た。比較例1−6で使用した原料、並びに、エマルション組成物(36)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0097】
<比較例1−7>
単量体を、n−ブチルアクリレート44.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル10.0部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート10.0部及びメチルメタクリレート35.0部とし、乳化剤を、乳化剤(2)8.0部及び乳化剤(3)1.0部とし、更に、乳化液に用いたイオン交換水の使用量を22.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(37)を得た。比較例1−7で使用した原料、並びに、エマルション組成物(37)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0098】
<比較例1−8>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート84.0部、メタクリル酸1.0部、アクリロニトリル5.0部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂10.0部とした以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(38)を得た。比較例1−8で使用した原料、並びに、エマルション組成物(38)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0099】
<比較例1−9>
単量体を、2−エチルヘキシルアクリレート81.0部、メタクリル酸6.0部、アクリロニトリル5.0部及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート8.0部として用いた以外は、実施例1−1と同様にして、エマルション組成物(39)を得た。比較例1−9で使用した原料、並びに、エマルション組成物(39)の物性及び評価結果を表3に併記する。
【0100】
【表3】

【0101】
2.粘着剤組成物の製造並びに粘着シートの製造及びその評価
エマルション組成物から得られる乾燥膜の物性等を評価するため、上記実施例1−1〜1−11及び上記比較例1−1〜1−4で得られたエマルション組成物を用いて、粘着剤組成物を製造し、粘着剤組成物より得られた粘着シート(乾燥膜)を評価した。この粘着剤組成物から得られる粘着シートを評価することにより、エマルション組成物から得られる乾燥膜の物性等を評価することができる。
また、実施例及び比較例における、粘着剤組成物を評価するための試験用粘着シートの製造方法、並びに、粘着シートの粘着力、耐水粘着力、保持力、及び定荷重剥離強度の各評価は、下記の方法により行なった。
【0102】
2−1.粘着剤組成物の製造並びに粘着シートの製造
<実施例2−1>
上記実施例1−1により得られたエマルション組成物100部に、中和剤として25%アンモニア水を添加し、pH7.5に調整した。更に、増粘剤としてアクリル系増粘剤〔東亞合成社製、(商品名)「アロンB−500」〕1.8部を添加及び混合して、粘着剤組成物を得た。BM型粘度計を用い、12rpm、25℃の条件で測定した粘着剤組成物の粘度は、10,000mPa・sであった。
次に、上記により得られた粘着剤組成物を下記の評価方法に従って、粘着シートを作製し、粘着シートの粘着力、耐水粘着力、保持力、及び定荷重剥離強度の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0103】
<実施例2−2〜2−11及び比較例2−1〜2−4>
エマルション組成物として(2)〜(11)、及び(31)、(33)並びに(34)を用い、原料の配合量を表4及び表5に示す配合に従った以外は、実施例2−1と同様にして、粘着剤組成物を製造した。そして、下記評価方法に従って粘着シートを作製し、各種評価を行った。その結果を表4及び表5に併記する。
尚、比較例2−2では、比較例1−2において、エマルション組成物(32)が得られなかったため、粘着剤組成物は製造できなかった。
【0104】
2−2粘着剤組成物及び粘着シートの評価方法並びにその評価
(1)試験用粘着シートの製造
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後における粘着剤組成物から形成される層(乾燥膜)の厚さが、50μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、熱風循環式乾燥器にて100℃で3分間乾燥して粘着シート(乾燥膜)を作製した。以下の項目の評価には、上記方法により製造した粘着シートを使用して評価した。
【0105】
(2)粘着力評価
上記粘着シート、並びに被着体としてステンレス板(以下、単に「SUS」ともいう)及びポリプロピレン板(以下、単に「PP」ともいう)を用い、0℃及び23℃の2種類の温度条件、並びに湿度50%RHの条件において、JIS Z−0237に準じて180度剥離強度を測定し、粘着力の評価とした。
【0106】
(3)耐水粘着力評価
上記粘着シート、並びに被着体としてステンレス板を用い、温度23℃、及び湿度50%RHの条件において、JIS Z−0237に準じて貼り付け、貼り付け30分後に、23℃でイオン交換水に24時間浸漬した。24時間経過後、イオン交換水中から浸漬に供した試験片を取り出し、軽く水分を拭き取った後、180度剥離強度を測定し、耐水粘着力の評価とした。
【0107】
(4)保持力評価
上記粘着シートを、ステンレス板に接着面積が25mm×25mmとなるように貼付け、温度80℃にて1kgの荷重をかけて剥がれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力の評価とした。24時間以上保持した場合は1440分とした。保持力の評価が高いほど、凝集力が優れていることを示す。
【0108】
(5)定荷重剥離強度評価
上記粘着シートを用い、23℃、50%RHの条件において、ステンレス板に接着面積が25mm×50mmとなるように貼り付け、2kgローラーで一往復して圧着させ30分放置した。貼り付けた粘着シートの短辺の一方の端部に、粘着シートに対して90度方向に100gの荷重をかけた。このとき、貼り付けた粘着シート及び被着体は重力方向に対して90°の角度(水平)になるように固定した。荷重をかけてから1時間後における、粘着シートがステンレス板から剥離した距離を測定した。1時間以内に剥離する場合は50mmとした。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
3.塗料組成物の製造並びに乾燥膜の製造及びその評価
エマルション組成物から得られる乾燥膜の物性等を評価するため、上記実施例1−12〜1−21及び上記比較例1−5〜1−9で得られたエマルション組成物を用いて、塗料組成物を製造し、塗料組成物より得られた乾燥膜を評価した。また、この塗料組成物から得られる乾燥膜を評価することにより、エマルション組成物から得られる乾燥膜の物性等を評価することができる。
また、実施例及び比較例における、塗料組成物を評価するための乾燥膜の製造方法、並びに、乾燥膜の密着性、屈曲剥離強度、温冷繰り返し試験、及び耐水性の各評価は、下記の方法により行なった。
【0112】
3−1.塗料組成物の製造並びに乾燥膜の製造
<実施例2−12>
上記実施例1−12により得られたエマルション組成物100部に、中和剤として25%アンモニア水を添加し、pH8に調整した。更に、顔料として酸化チタン〔石原産業株式会社製、(商品名)「タイペークR930」)5部、及び消泡剤としてシリコーン系消泡剤〔ビックケミー・ジャパン株式会社製、(商品名)「BYK−1650」〕0.2部を添加及び混合して、塗料剤組成物を得た。
次に、上記により得られた塗料剤組成物を下記の評価方法に従って、乾燥膜を作製し、乾燥膜の密着性、屈曲剥離強度、温冷繰り返し試験、及び耐水性の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0113】
<実施例2−13〜2−21及び比較例2−5〜2−9>
エマルション組成物として(13)〜(21)及び(35)〜(39)を用いた以外は、実施例2−12と同様にして、塗料組成を製造した。そして、下記の評価方法に従って、乾燥膜を作製し、各種評価を行った。その結果を表6及び表7に示す。
尚、比較例2−9では、25%アンモニア水によるpH8へのpH調整(中和時)の際に、エマルション組成物(39)がゲル化したため、塗料組成物は得られなかった。
【0114】
3−2.塗料組成物の評価方法
(1)乾燥膜の製造
天然皮革の表面に、乾燥後における塗料組成物から形成された乾燥膜の厚みが30μmになるように、塗料組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、室温で一昼夜乾燥させて乾燥膜を作製した。以下の項目の評価には、上記方法で製造した乾燥膜を使用した。
【0115】
(2)密着性の評価
JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて測定した。上記により製造した乾燥膜に、カッターガイドを用いてカッターナイフで1mm四方の100個のマス目状に切り込みを入れた。そして、その上からセロハンテープで圧着した後、瞬間的に剥がし、乾燥膜の剥がれた面積を目視により観察し、下記の基準により評価した。
10:乾燥膜の剥がれが認められない。
8:乾燥膜の剥がれた面積が5%以内であった。
6:乾燥膜の剥がれた面積が5〜15%であった。
4:乾燥膜の剥がれた面積が15〜35%であった。
2:乾燥膜の剥がれた面積が35〜65%であった。
0:乾燥膜の剥がれた面積が65%以上であった。
【0116】
(3)屈曲剥離強度の評価
上記により製造した乾燥膜に対して、180度の屈曲を10回繰り返した後、剥がれ具合を目視で観察し、下記の基準により評価した。屈曲剥離強度の評価が高いほど、密着性及び柔軟性に優れていることを示す。
○:乾燥膜に割れ、剥がれ等の異常が認められなかった。
△:乾燥膜に割れ、剥がれ等の異常が一部認められた。
×:異常が認められた。
【0117】
(4)温冷繰り返し試験による耐久性の評価
上記で作成した乾燥膜を−20℃で1時間、50℃で1時間のサイクルで10サイクル後の乾燥膜外観を目視で観察し、下記の基準により評価した。
○:乾燥膜に曇り、白化、割れ、剥がれ等の異常が認められなかった。
△:乾燥膜に曇り、白化、割れ、剥がれ等の異常が一部認められた。
×:異常が認められた。
【0118】
(5)耐水性の評価
上記で作成した乾燥膜上に、0.2mlのイオン交換水を滴下した。水滴を1時間保持した後に拭き取り、30分後の乾燥膜の剥がれ、膨潤、白化の状態を目視で観察し、下記の基準により評価した。
○:乾燥膜に曇り、白化、剥がれ等の異常が認められなかった。
△:乾燥膜に曇り、白化が認められるが、剥がれは認められなかった。
□:乾燥膜に曇り、白化が認められ、剥がれも一部認められた。
×:乾燥膜が完全に剥がれた。
【0119】
【表6】

【0120】
【表7】

【0121】
表1及び表2の結果より、実施例1−1〜1−21の本発明のエマルション組成物は、貯蔵安定性に優れていることが分かる。
また、表4の結果より、実施例2−1〜2−11に示される、本発明のエマルション組成物から得られた乾燥膜は、いずれも粘着性及び凝集力、耐水性に優れていることが分かる。
更に、表6の結果より、実施例2−12〜2−21に示される、本発明のエマルション組成物から得られた乾燥膜は、いずれも密着性、耐久性、柔軟性及び耐水性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物であって、
上記重合体粒子は、炭素数4〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)50〜98質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構成単位(B)0.1〜5質量%、シアノ基を有するビニル単量体に由来する構成単位(C)0〜20質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体に由来する構成単位(D)1〜20質量%、及び上記単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(E)0〜50質量%を含有することを特徴とするエマルション組成物。
〔但し、上記構成単位(A)、上記構成単位(B)、上記構成単位(C)、上記構成単位(D)及び上記構成単位(E)の合計を100質量%とする。〕
【請求項2】
上記重合体粒子のガラス転移温度が、−80℃〜0℃である請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
エマルション組成物を乾燥させて得られた乾燥膜の酢酸エチルに対する可溶分が、30質量%以下である請求項1又は2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
上記重合体粒子が、反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られたものである請求項1乃至3のいずれかに記載のエマルション組成物。
【請求項5】
上記単官能エポキシ化合物が、フェニル基を有する化合物である請求項1乃至4のいずれかに記載のエマルション組成物。

【公開番号】特開2011−12216(P2011−12216A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159252(P2009−159252)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】