説明

エマルション重合により生産される有機ポリシロキサン樹脂エマルション

(i) 水、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、任意にイオン性界面活性剤、および触媒を、反応容器に加え、該容器の内容物を熱して、混合物を形成させ;
(ii) 該混合物に、式RSi(OR’)の少なくとも1種のシランモノマーを加え;
(iii)任意に、該混合物に、式RSi(OR’)もしくはRSiOR’のシランモノマーを加え;
(iv) 該シランモノマーが、触媒される含水混合物中での重合反応により、加水分解縮合するようにし;
(v) 該反応を、該混合物を中和することにより、終結させ;
(vi) 該混合物から、シロキサン樹脂含有シロキサン樹脂エマルションを回収する
ことにより、エマルション含有含水シロキサン樹脂が調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション重合により調製されるエマルション含有有機ポリシロキサン樹脂に関する。特に、本発明は、全てもしくは実質量の3官能基T単位、つまり、RSiO3/2からなるエマルション含有有機ポリシロキサン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において使用される場合、記号M、D、T、およびQは、≡Si−O−Si≡結合により繋がれるシロキサン単位を含有している有機シリコン(硅素)化合物中に存在し得る構造単位の官能基を表す。1官能基(M)単位は(R)SiO1/2を表し;2官能基(D)単位は(R)SiO2/2を表し;3官能基(T)単位はRSiO3/2を表し、結果的に分岐鎖シロキサンを形成させ;4官能基(Q)単位はSiO4/2を表し、結果的に架橋組成物および樹脂組成物を形成させる。これゆえ、Tは、当該シロキサンが全て3官能基T単位を含有する場合使用され;DTは、当該シロキサンが2官能基D単位および3官能基T単位を含有する場合使用される。Rは、同一もしくは異なる、1価の炭化水素基であり得、1〜18炭素原子を持っており、典型的にはメチルのような基である。
【0003】
3官能基シロキサンT単位が互いに組み合わされていくと、一般的に、結果的に、3次元方向にランダムに架橋された分子を与える。2官能基シロキサンD単位および3官能基シロキサンT単位が組み合わさって、一般的に、T単位含量が高い場合、ネットワークの性質を持つ巨大分子を与える。過剰なD単位は結果的に、長い間隔で架橋もしくは分岐している鎖を与える。1官能基M単位はシロキサン分子を末端封鎖し、更なる鎖の成長を終結させ、当該シロキサンポリマーの分子量を限定する。
【0004】
一般的に、直鎖シロキサン、つまり、平均単位式RSiO2/2(式中、Rは典型的に、1価の炭化水素基であり、1〜18炭素原子を持っている)を有するジ有機ポリシロキサンの含水エマルションは、広く種々の適用において有用であると知られている。このようなエマルションをエマルション重合により調製していく方法の幾つかも、当業界において知られており、例えば、米国特許第2,891,920号(1959年6月23日)明細書;米国特許第3,294,725号(1966年12月27日)明細書;および米国特許第6,316,541号(2001年11月13日)明細書において記載された方法のようなものであり、以後、’541号特許と言う。第’541号特許は特に、ジ有機ポリシロキサンの含水エマルションを調製する方法を記載し、粒子サイズの制御に強調を置いている。
【0005】
全てもしくは実質量の3官能基単位T単位RSiO3/2を含有しており、これゆえ当該有機ポリシロキサンを樹脂状にしている有機ポリシロキサンの含水エマルションも、エマルション重合により、調製され得る。このようなモードの調製は、無溶媒合成、ならびに、種々のシロキサン樹脂の水供給を、パーソナルケア、テキスタイル、およびコーティングにおける適用に関し、可能ならしめる。このモードは、固体もしくは半固体および溶媒と通常関連している取り扱い問題を避け、樹脂状材料を乳化させていく困難な問題を排除する。幾つかの方法がシロキサン樹脂エマルションをエマルション重合により調製していくことが可能であるとして同定されているが、安定樹脂エマルションを、ゲル化粒子非存在下に、広範な標的粒子サイズの準備を可能にしながら生産するに満足な方法はまだ、全く見出されていない。
【0006】
このように、米国特許第3,433,780号(1969年3月18日)明細書は、平均粒子サイズ1〜100nm(0.001〜0.1μm)を有するシルセスキオキサン(RSiO3/2)粒子を含有し、アニオン性界面活性剤もしくはカチオン性界面活性剤を含有する懸濁を記載する。非イオン性界面活性剤は、その製品の安定性に全く悪影響を持っていない量で使用され得る。そのプロセスは、反応性シランの、水−界面活性剤混合物への添加を含んでおり、酸性もしくは塩基性条件下での攪拌を伴い、該シルセスキオキサン懸濁を形成させる。
【0007】
米国特許第4,424,297号(1984年1月3日)明細書は、平均粒子サイズ1〜100nm(0.001〜0.1μm)を持っているシルセスキオキサン(RSiO3/2)粒子のコロイド状懸濁を記載し、3官能基シランを、長鎖カルボン酸もしくはこの塩を含有している含水混合物に、塩基性pHにおいて加えていくことにより、調製される。しかしながら、全ての実施例が、その最終製品において、12%未満である固形分含量を示す。
【0008】
米国特許第4,778,624号(1988年10月18日)明細書は、シルセスキオキサン(RSiO3/2)粒子含有エマルションを、まず、トリアルコキシシランを、カチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤の組み合わせを使用して乳化していくことにより調製していく方法を記載する。該非イオン性界面活性剤は、16〜20の範囲中のHLB値を持たなければならない。そのプロセス中の次のステップは、アルカリ触媒を、加水分解および縮合を有効にするのに加えていくことを含んでいる。これゆえ、この方法は、出発原料たるシランを機械的に乳化させる第1ステップを必要とする。更に、該触媒の添加が必ず、該出発原料の乳化に伴う筈であること、ならびに、該出発原料が、これら界面活性剤および該アルカリ触媒を含有している含水溶媒中で乳化される場合、全く満足な結果が得られないことを、特定する。
【0009】
第’624号特許は、乳化されていないシランモノマーを、該アルカリ触媒を含有している含水界面活性剤溶液に供給していくと結果的に、大量のゲル化物質を与えたことを示している比較例を含有する。加えて、この方法は、細かな粒子サイズのエマルションだけの生産に限定されているように見える。引用された平均粒子サイズは、第’624号特許中の全ての実施例において、およそ70nm(0.07μm)であると明かされ、このようなエマルションは、薄青半透明の外観を保有すると言われ、典型的には、70nm(0.07μm)の粒子サイズに関して予期される。全く、白い外観は、その実施例のいずれにおいても記されておらず、100nm(0.1μm)よりも小さな平均粒子サイズを持っている粒子を示唆している。加えて、(i)その実施例の全てが、その製品中の樹脂の12%未満の含量を示し、(ii)その結果得られてくる樹脂が、白色粉末として記載され、これは、如何なる有機溶媒にも溶けず、生成した該樹脂が、その粒子の各々の内で完全にゲル化したネットワークのようであることを指し示している。
【0010】
米国特許第4,857,582号(1989年8月15日)明細書において、1官能基M単位、2官能基D単位、3官能基T単位、および4官能基Q単位の中の少なくとも2種の異なる単位を含有している有機ポリシロキサンのコロイド懸濁を調製していくことに関して、連続プロセスが記載される。該有機ポリシロキサンは、DTおよびMQのタイプの構造により、例示される。該プロセスは、反応溶媒中にアルコキシシランおよびポリシロキサンを非常に遅く供給していくこと、ならびに、該アルコキシシランの加水分解から形成されるアルコールを抽水の該懸濁から連続的に除去していくことを含んでいる。この結果得られてくる懸濁は、平均粒子サイズ10〜150nm(0.01〜0.15μm)を持つ。該プロセスにおいて使用された界面活性剤は、アニオン性界面活性剤もしくはカチオン性界面活性剤である。
【0011】
米国特許第4,935,464号(1990年6月19日)明細書において記載されたプロセスは、まず2官能基D単位および3官能基T単位からなるミクロエマルションの調製に関し、150nm(0.15μm)までの平均粒子サイズを有するDTタイプ有機ポリシロキサンを形成させる。しかしながら、その実施例の全てが、平均粒子サイズ100nm(0.1μm)未満を持っている組成を示し、該ミクロエマルションは、透明な外観を持っているものとして、特徴付けられる。加えて、該プロセスは、結果的に得られてくるクルード(粗)エマルションを触媒含水溶液中に重合のためにドリップ(滴下)させていく前に、シランおよび環状シロキサンモノマーを乳化していく第1ステップを必要とし、高剪断均一化機を使用する。
【0012】
これゆえ、エマルション重合を、シロキサン樹脂エマルションを調製していくプロセスとして使用する、当業界において知られた方法は、この結果得られてくるエマルションが一般的に広範な可能な平均粒子サイズを持たないので、限られる。特に、これらの方法は、その粒子サイズが典型的に150nm(0.15μm)よりも大きなマクロエマルションを生産できない。マクロエマルションは、幾つかの利点を持ち、その中でも、(i)増強された沈着特性を供給できる、(ii)界面活性剤が調製においてより少なくて済み、このようなエマルションは調製するのにより少ないコストで済むという結果を伴い、(iii)該マクロエマルション中のより少ない界面活性剤は、ある種の適用において、より少ない逆効果に至り、例えば、パーソナルケアでの適用における体との接触に関してより少ない皮膚刺激、および、コーティングでの適用におけるより少ない可塑化効果である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、エマルション重合手法を使用して、ある種のポリ有機シロキサン樹脂エマルションを調製していくプロセスを発見した。本プロセスは、広範な平均粒子サイズを持っているポリ有機シロキサン樹脂エマルションを生成させる。本エマルションは、1モードの粒子サイズの分布を持ち、これは、その反応の操作パラメーターの制御により、達成される。本ポリ有機シロキサン樹脂エマルションは、粗いゲル化粒子の非存在により、特徴付けられ得、これは、生成される樹脂が少なくとも1種の有機溶媒に溶けるとの事実により、確かめられている。本プロセスは、本エマルション合計重量に基づき10%より多い樹脂固形分含量を有する安定ポリ有機シロキサン樹脂エマルションをも生成させる。その反応溶媒への添加前に、機械的にその前駆体のモノマーを乳化させていくことは必要ない。本発明のエマルション重合プロセスにより調製されるポリ有機シロキサン樹脂エマルションは、平均粒子サイズ100〜1,000nm(0.1〜1μm)を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、エマルションを含有している含水シロキサン樹脂を調製していくプロセスを提供し:
(i) 水、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、および触媒を、任意にイオン性界面活性剤を加えながら、反応容器に加えていき、該容器内容物を熱していって混合物を形成させ;
(ii) 該混合物に、少なくとも1種のシランモノマー式RSi(OR’)を加えていき;
(iii)任意に、この混合物に、シランモノマー式RSi(OR’)もしくはRSiOR’を加えていき;
(iv) この触媒される含水混合物中での重合反応により、該シランモノマーを加水分解および縮合するようにさせ;
(v) 該反応を、この混合物を中和していくことにより、終結させ;
(vi) この混合物から、シロキサン樹脂を含有しているシロキサン樹脂エマルションを回収していくこと
による。
【0015】
これらおよび他の特徴は、本発明の詳細な説明の考慮から、明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書における本発明は、シロキサン樹脂エマルションを調製するプロセス(方法)に関し、エマルション重合により、ここでは、本エマルション中の樹脂の粒子の平均サイズは、約20〜1,000nm(0.02〜1μm)である。好ましくは、本エマルション中の樹脂の粒子の平均サイズは、100nmより大きく、1,000nmまでである(0.1〜1μm)。最も好ましくは、本エマルション中の樹脂の粒子の平均サイズは、150〜1,000nm(0.15〜1μm)である。本樹脂組成物は、30〜100モル%の3官能基シロキサンT単位RSiO3/2、0〜70モル%の2官能基D単位RSiO2/2、および0〜40モル%の1官能基M単位RSiO1/2からなり、式中、Rが、1価の炭化水素基もしくは有機官能基置換炭化水素基を表す。
【0017】
本明細書における本プロセスは、シランモノマーもしくはこれの加水分解生成物を該前駆体モノマーとして使用することにおいて、’541号特許とは異なり、樹脂状シロキサン含有エマルションを生成する一方、’541号特許における前駆体モノマーは環状シロキサンであり、そのプロセスは、直鎖シロキサン含有エマルションを生成する。好ましいシランモノマーはアルコキシシランであるが、有機シラノールも、シランモノマーとして使用され得る。
【0018】
本プロセスは第1に、水、1種以上の界面活性剤、および触媒を、反応容器中で混合し、この混合物を、反応温度まで熱することを含んでいる。この次に、前記モノマーを、熱せられた該混合物に、ある期間の時間に亘って供給するステップを伴う。このことに関しては、アルコキシシラン前駆体モノマーが、触媒される含水溶媒中で加水分解することが特記され、この結果得られてくるシラノール組成物が縮合し沈澱して、本ポリマーの粒子を形成し、これが今度は、この結果得られてくるエマルション中で、該界面活性剤(1種もしくは複数種)により安定化される。該ポリマーの分子量は、該反応の時間の関数として増大する。一旦、望まれる分子量が得られたら、該反応は、該含水溶媒を中和することにより、終結される。稀釈水が任意に加えられ得、樹脂固形分の望まれる含量を達成する。更なる界面活性剤(1種もしくは複数種)も任意に加えられ得、稀釈および/または凍結解凍に対する安定性を与える。該アルコキシシランの加水分解により形成される如何なるアルコールも、重合の間の同時の蒸留、もしくは、本エマルションができた後での本エマルションからの揮発により、除去され得る。
【0019】
本発明のプロセスにおいて使用される該前駆体モノマーは、(i)本樹脂においてT単位を与える式RSi(OR’)のシランモノマー;(ii)D単位を与える式RSi(OR’)のシランモノマー;および、(iii)形成される本樹脂ポリマーを末端封鎖するためのM単位を与える式RSiOR’のシランモノマーからなる。これらの式中、Rは、同一でも異なってもよい1価の炭化水素基であり得、1〜18炭素原子を持っていて、あるいは、Rは、同一でも異なってもよい有機官能基置換炭化水素基であり得、1〜18炭素原子を持っている。R’は、水素原子、1〜4炭素原子含有アルキル基、または、基CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、もしくはCOCHCH−のうちの1つを表す。
【0020】
適切なR基を代表するある幾つかの例は、メチル、プロピル、イソブチル、オクチル、フェニル、ビニル、3−グリシドキシプロピル、アミノエチルアミノプロピル、3−メタクリルオキシプロピル、3−クロロプロピル、3−メルカプトプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、および過フルオロブチルエチルを包含する。
【0021】
R基中の如何なる置換基も存在して、反応条件下に水と反応する場合、こうして、最終生成物中には存在しなくなることが、理解される筈である。好ましいR’基は、水素、メチル、およびエチルである。もし望まれれば、ヘキサメチルジシロキサンのような短鎖トリメチルシロキシ末端化ポリシロキサン、もしくは、1−オクタノールのような1級アルコールが、シランモノマーRSiOR’単位の代わりに、その末端封鎖成分として使用され得る。加えて、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D)のようなポリシクロシロキサンが使用され得、もし望まれれば、RSi(OR’)単位を置き換え、D単位を与える。
【0022】
樹脂コポリマーが、1種より多いタイプのモノマーを使用して生成され得、適切な量の各モノマーを連続して加えていくことにより、あるいは、異なるモノマー混合物の、触媒される該含水界面活性剤混合物への添加による。シランの部分加水分解縮合生成物も、出発原料として使用され得、但し、これらの、該含水溶媒への溶解性が、不必要に減少されない。本発明のエマルション重合プロセスにおいて有用なモノマーの合計量の水準は、10〜50重量%であり、これは、該水、該界面活性剤、該触媒、および該モノマー(1種もしくは複数種)の組み合わせた重量に基づいている。最も好ましい水準は、該モノマーの性質および目標とされている粒子サイズに依存している。前記範囲の高い末端水準のモノマーは、アルコキシシランの加水分解から形成されるアルコールの同時除去を用いて達成できる。10重量%未満のモノマー水準は可能であるが、結果的に、低固形分含量の最終エマルションを与え、これゆえ、経済的もしくはコスト面で効果的(コストパフォーマンスが良い)でないことがある。最も典型的には、該モノマー(1種もしくは複数種)水準は、20〜40重量%の範囲内であるべきである。
【0023】
該水、該界面活性剤、および触媒を、該モノマー添加前に、充分混合することが必要である。該モノマー(単一種もしくは複数種)の供給の間および以降両方に、安定エマルションが形成されるまで、コンスタントに(一定して)攪拌を維持することも必要である。高速剪断はしかしながら、必要とされない。その供給前のモノマーの乳化も、必要でない。該モノマーの添加速度は、混合物中の水量に基づき、20モル/L水/時間未満、好ましくは10モル/L水/時間未満の速度であるべきである。添加の精確な速度は、使用されているモノマータイプ、存在している触媒レベル(濃度)、および反応温度に依存する。
【0024】
該界面活性剤および該触媒を含有している含水混合物の温度は、安定化されるべきであり、これらモノマーの供給の間および以降に、これらモノマーの全てが消費されるまで、一定なままであるべきである。温度変動は、粒子サイズ分布の拡散を引き起こす傾向にあり、これは、望ましくない。本発明のプロセスによれば有用な重合反応温度は典型的に、通常大気圧である操作圧力下に水の凝固点を上回っているが、水の沸点を下回っている。一般的に、重合プロセスとは、より高温において、より速く進行するものである。好ましい温度範囲は、30〜95℃である。
【0025】
本重合反応は、本界面活性剤を含有している含水溶媒中で実施され、シロキサン縮合触媒により、触媒される。使用され得る縮合重合触媒は、(i)置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族スルホン酸、塩酸、および硫酸のような強酸、ならびに、(ii)水酸化4級アンモニウムおよびアルカリ金属水酸化物のような強塩基を包含する。ドデシルベンゼンスルホン酸のような幾つかのイオン性界面活性剤が更に、触媒として機能し得る。
【0026】
典型的に、酸触媒が、アニオン性安定化エマルション中での重合を触媒するのに使用される一方、塩基性触媒は、カチオン性安定化エマルション中での重合を触媒するのに使用される。非イオン性安定化エマルションに関しては、重合は、酸触媒もしくは塩基性触媒を使用して、触媒され得る。該含水反応溶媒中に存在している触媒量は、1×10−3〜1Mのレベルであるべきである。幾つかの場合、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミン含有シランモノマーが、該モノマーの混合物の1成分として使用され得、そのアミン官能基が、更なる触媒を求める必要性なく、該反応を触媒することになる。
【0027】
反応時間は一般的に、該モノマーの該含水混合物に対する供給の開始から24時間未満であり、最も典型的には、5時間未満である。本樹脂ポリマーが望まれる分子量に到達したら、該反応を、該触媒を中和していくことにより、終結させるのが好ましく、塩基による触媒および酸による触媒のシステム(系)それぞれに関して、当量もしくは化学量論量よりも僅かに多い酸もしくは塩基を使用する。アミン官能基シランモノマーが、もう1種別の触媒の存在なしに使用される場合、酸が使用され得、該反応を中和する。該反応を中和するのに使用され得る幾つかの適切な酸は、塩酸、硫酸、もしくは酢酸のような強もしくは弱酸を包含する。該反応を中和するのに使用され得る幾つかの適切な塩基は、4級アンモニウム水酸化物、アルカリ金属水酸化物、トリエタノールアミン、もしくは炭酸ナトリウムのような強もしくは弱塩基を包含する。該反応溶媒を、充分量の該酸もしくは該塩基を用いて中和するのが好ましく、こうして、結果的に得られてくる樹脂はエマルションを含有し、カチオン性界面活性剤が存在している場合、7に等しいかもしくは僅かに低いpHを、アニオン性界面活性剤が存在している場合、7に等しいかもしくは僅かに高いpHを持つ。
【0028】
1種以上の界面活性剤が、該反応溶媒中で必要であり、該エマルション中で形成される本ポリシロキサン樹脂を安定化させる。アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、もしくは非イオン性界面活性剤が、単独もしくは組み合わせて使用され得、但し、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを組み合わせることを除く。安定ミクロエマルションは、イオン性界面活性剤だけを使用して、調製され得る。重合の間の非イオン性界面活性剤の使用が、(i)粗いゲル化凝集体の形成なく、該エマルション中、100nm(0.1μm)よりも大きな該樹脂の平均粒子サイズを持っている白色樹脂エマルションを調製するのに、(ii)該粒子サイズの制御を提供するのに、望ましい。非イオン性界面活性剤は、単独、もしくは、もう1種別のカチオン性界面活性剤もしくはアニオン性界面活性剤と組み合わせて、使用され得る。加えて、もし望まれれば、2種以上の非イオン性界面活性剤が、該エマルションを調製していく中で使用され得る。
【0029】
幾つかの適切なアニオン性界面活性剤が使用され得、(i)少なくとも6炭素原子をそのアルキル置換基において持っている、ドデシルベンゼンスルホン酸およびこのナトリウム塩もしくはこのアミン塩のような、アルキル、アルキルアリール、アルキルナフタレン、およびアルキルジフェニルエーテルスルホン酸、および、これらの塩を包含して、スルホン酸およびこの塩、(ii)少なくとも6炭素原子をそのアルキル置換基において持っている、ラウリル硫酸ナトリウムのような、硫酸アルキル、(iii)ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの硫酸エステル、(iv)ラウリル酸、ステアリル酸、オレイン酸、およびこれらのアルカリ金属およびアミン塩のような、長鎖カルボン酸界面活性剤およびこれらの塩を包含する。
【0030】
ドデシルベンゼンスルホン酸のようなある種のアニオン性界面活性剤が、界面活性剤および触媒の両方として機能できることが、記されるべきであり、この場合、更なる酸触媒を求める必要性が、必要とされることもあり、必要とされないこともある。アニオン性界面活性剤と硫酸のような強酸触媒との組み合わせの使用も、成立する選択肢である。アニオン性界面活性剤が市販されており、Stepan Company,Northfield,Illinoisにより、Bio−Soft S−100もしくはBio−Soft S−101という名の下に販売されているドデシルベンゼンスルホン酸、および、Bio−Soft S−300という名の下に販売されているそのトリエタノールアミン塩を包含する。
【0031】
幾つかの適切なカチオン性界面活性剤が使用され得、(i)脂肪族脂肪酸アミンおよびこれらの誘導体のような、脂肪酸アミンおよびアミドならびにこれらの塩および誘導体、ならびに、(ii)少なくとも8炭素原子を各アルキル置換基において持っているアルキルトリメチルアンモニウム、および、ハロゲン化、酢酸、もしくは水酸化ジアルキルジメチルアンモニウムのような、4級アンモニウム化合物を包含する。カチオン性界面活性剤が市販されており、Akzo Nobel Chemicals Inc.,Chicago,Illinoisにより、ArquadT27W、Arquad16−29という名の下に販売されている組成物、ならびに、Stepan Company,Northfield,Illinoisにより、Ammonyx Cetac−30という名の下に販売されている組成物を包含する。
【0032】
アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤の量は、形成される筈のポリシロキサン樹脂重量に基づき、0〜50重量%たり得る。その精確な量は必ず、標的とされているエマルション中の樹脂の粒子サイズに依る。典型的に、形成される筈のポリシロキサン樹脂重量に基づき、20重量%未満の該アニオン性界面活性剤もしくは該カチオン性界面活性剤が使用され得、100nm(0.1μm)よりも大きな平均粒子サイズを持っている樹脂粒子を含有しているエマルションを生成する。
【0033】
本発明による使用に好ましい非イオン性界面活性剤は、10〜20の間の親水性−親油性バランス(HLB)を持つ。10未満のHLBを有する非イオン性界面活性剤が使用され得る一方、曇った溶液が結果的に与えられがちであり、これは該非イオン性界面活性剤の水中での限られる溶解度のためであり、有効な界面活性剤の効果が起こらないという結果を伴う。これゆえ、10未満のHLBを有する非イオン性界面活性剤を使用している場合、もう1種別の10よりも大きなHLBを有する非イオン性界面活性剤が加えられ、こうして、これら2種の界面活性剤の組み合わされたHLBが10よりも大きいことが、好ましい。
【0034】
幾つかの適切な非イオン性界面活性剤が使用され得、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを包含する。非イオン性界面活性剤が市販されており、(i)TergitolTMN−6およびTergitolTMN−10という名の下に販売されている2,6,8−トリメチル−4−ノニルポリオキシエチレンエーテル、(ii)Dow Chemical Company,Midland,Michiganにより、Tergitol15−S−7、Tergitol15−S−9、Tergitol15−S−15、Tergitol15−S−30、およびTergitol15−S−40という名の下に販売されているC11−15第2級アルキルポリオキシエチレンエーテル、Dow Chemical Company,Midland,Michiganにより、TritonX405という名の下に販売されているオクチルフェニルポリオキシエチレン(40)エーテル、(iii)Stepan Company,Northfield,Illinoisにより、Makon10という名の下に販売されているノニルフェニルポリオキシエチレン(10)エーテル、(iv)Henkel Corp./Emery Group,Cincinnati,Ohioにより、Trycol5953という名の下に販売されているエトキシル化アルコール、ならびに、(v)Uniqema(ICI Surfactants),Wilmington,Delawareにより、Brij35Liquidという名の下に販売されているエトキシル化アルコールのような組成物を包含する。
【0035】
該非イオン性界面活性剤は、シリコーンポリエーテル(SPE)であってもよい。該シリコーンポリエーテルは、レーキタイプの構造を持ってもよく、ここでは、そのポリオキシエチレンもしくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー単位が、そのシロキサン骨格上にグラフトされ、あるいは、SPEは、ABAブロックコポリマー構造を持ち得、ここでは、AがABA構造のポリエーテル部分を表し、BがABA構造のシロキサン部分を表す。
【0036】
本明細書における使用に適しているシリコーンポリエーテルは、式MD0〜1,000PE1〜100Mを持ち、最も好ましくは式MD0〜500PE1〜50Mであり、式中、Mが1官能基単位RSiO1/2を表し、Dが2官能基単位RSiO2/2を表し、DPEが2官能基単位RREOSiO2/2を表す。これらの式中、Rは同一もしくは異なる1価の炭化水素基たり得、1〜18炭素原子を持っており、RPEはオキシアルキレン(PE−ポリエーテルを指す)含有部分である。RPE基がオキシエチレン(EO)単位のみ;オキシエチレン(EO)単位およびオキシプロピレン(PO)単位の組み合わせ;あるいは、オキシエチレン(EO)単位、オキシプロピレン(PO)単位、およびオキシブチレン(BO)単位の組み合わせを含有してもよい。好ましいRPE基は、およそEO3〜100PO0〜100の比で、最も好ましくはEO3〜30PO1〜30の比で、オキシアルキレン単位を包含する。
【0037】
PE部分は典型的に、−C2m−のような2価のラジカル(基)を包含し、式中、mが、R’のオキシアルキレン部分をシロキサン骨格に接続させるために、2〜8である。このような部分は、水素、ヒドロキシル(水酸基)、または、アルキル、アリール、アルコキシ、もしくはアセトキシ基のような、RPEのオキシアルキレン部分のための、終結基をも含有する。
【0038】
本明細書において有用なシリコーンポリエーテルは、式MPE10〜1,000PE0〜100PEを持っているタイプでもあり得、最も好ましくは式MPE10〜500PE0〜50PEであり、式中、MPEが1官能基単位RPESiO1/2を表し、Dが2官能基単位RSiO2/2を表し、DPEが2官能基単位RRPESiO2/2を表す。これらの式中、RおよびRPEは、上と同じである。
【0039】
加えて、本明細書において有用なシリコーンポリエーテルは、式MD0〜1,000PE0〜100D’’1〜100Mを持っているタイプでもあり得、式中、D’’が2官能基単位RR’’SiO2/2を表し、R’’が1〜40炭素原子を含有しているアルキル基を表す。もし望まれれば、R’’は、フェニルのようなアリール基、ベンジルのようなアリールアルキル基、トリルのようなアルキルアリール(アルカリール)基でもあり得、あるいは、R’’は、アミノアルキル、エポキシアルキル、もしくはカルボキシアルキルのような置換アルキル基を表し得る。M、D、D’、およびRは、上で定義されたと同じである。
【0040】
このような式に従っている代表的なシリコーンポリエーテルが、下にリストアップされる。これらの組成物は、添付の実施例においても言及される。各シリコーンポリエーテルの親水性−親油性バランス(HLB)は、各分子のエチレンオキシド部分の分子量%を5で割ることにより、得られた値である。
【0041】
【表1】

【0042】
本発明に従って使用される非イオン性界面活性剤量は、形成されるポリシロキサン樹脂重量に基づき、1〜50重量%である。非イオン性界面活性剤の精確な量は、標的とされているエマルション中の樹脂の粒子の粒子サイズに依る。100nm(0.1μm)よりも大きな該エマルション中の粒子の平均粒子サイズを持っているエマルションに関し、該非イオン性界面活性剤量は、形成されるポリシロキサン樹脂重量に基づき、3〜25重量%の該界面活性剤であるべきである。
【0043】
広範な標的粒子サイズが、本発明のポリシロキサン樹脂エマルションをエマルション重合により調製していくプロセスに関して、ある種の操作パラメーターを制御もしくは特定していくことにより、達成され得る。該操作パラメーターは、固定されたもしくはある種のモノマーもしくはモノマー混合物に関して、その平均粒子サイズに影響を及ぼしていくかもしくは制御していき、(i)反応温度、(ii)アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤量およびタイプ、(iii)非イオン性界面活性剤量およびタイプ、(iv)水量、(v)触媒量、ならびに(iv)前駆体モノマー供給速度を包含する。
【0044】
これらの操作パラメータの各々の効果は、他のパラメーターの値にも依ることがある。例えば、同時に2種の操作パラメーターを変え、各々の効果をなくすことができ、結果的に、粒子サイズの変化を全く与えない。ある特定の粒子サイズを得ようと1種の特定の操作パラメーターの精確な値もしくは限定を与えることはできない一方、標的粒子サイズ範囲に関してのこのような値もしくは限定は、他の反応条件および組成に基づき、求められ得る。
【0045】
前駆体モノマー、特にその官能基のタイプも、粒子サイズを決定していくことに参画し、反応性、形状の拘束、および触媒の効果を通じて、達成可能である。アルコキシシラン加水分解から形成され、これゆえ重合の間存在しているアルコールの量も、溶解力の変化のために、これゆえ乳化剤の界面活性効率の変化において、エマルション粒子サイズにインパクト(影響)を持つ。
【0046】
重合の間の非イオン性界面活性剤の存在は、本発明によるエマルション中の粒子サイズの制御には望ましい。エマルション重合の間に本非イオン性界面活性剤が存在しないと、一般的に、低固形分含量を有する透明ミクロエマルションのみが、生成され得る。小さな粒子サイズは、その小さな体積対表面積比のために、固形分含量の上限レベルを限ってしまい、約100nm(0.1μm)を超えて該粒子サイズを増大させようとの如何なる試みも、非イオン性界面活性剤の非存在下では、他の操作パラメーターを調整していくだけでは、一般的に、結果として、大量の粗い粒子の塊の形成に至る。
【0047】
稀釈水、更なる量の界面活性剤、および温度の変更は、中和後には、粒子サイズに影響を及ぼさないが、これらの特徴は、本エマルションの全体としての安定性に影響を及ぼすことがある。
【0048】
本発明のプロセスにより調製されるエマルションは、1モードの粒子サイズの分布を持っている粒子を含有する。該粒子サイズ分布は、狭い。光散乱粒子計測機器により測定すると、その粒子サイズの分散(Dv/Dn)は、その数平均粒子直径(Dn)に対する体積平均粒子直径(Dv)の比として定義されるが、典型的には、1.01〜1.3である。
【0049】
本樹脂組成物は好ましくは、30〜100モル%の3官能基Tシロキサン単位RSiO3/2、0〜70モル%の2官能基D単位RSiO2/2、および0〜40モル%の1官能基M単位RSiO1/2を含有しているホモポリマーもしくはコポリマーからなり、式中、Rが、1価の炭化水素基であり、1〜18炭素原子を持っているか、もしくは、1〜18炭素原子を持っている官能基置換炭化水素基である。
【0050】
本発明に従って調製されるエマルションは、数ヶ月間〜数年間さえ、ずっと安定であると見出された。幾つかの場合、沈降が起こった場合、これは、その粒子サイズとその水相との間の有意な密度差のためであったが、本エマルションは、簡単な攪拌により、再分散可能であった。本発明によるプロセスにより調製される本樹脂も、数ヶ月間〜数年間さえ、安定なままであると見出された。
【0051】
本明細書における樹脂エマルションは、このまま使用され得、水で稀釈され得、または、材料表面を処理していく処方中の添加剤として使用され得、撥水性、汚染耐性、金型解離性、滑りにくさ、輝き、および保護のような種々の特性を付与する。これゆえ、本樹脂エマルションは、布、紙、皮革、金属、ガラスを包含してセラミック、プラスチック、および建設材料用処理剤としての有用性を持つ。パーソナルケアでの適用、テキスタイル処理、家庭用ケア、自動車ケアにおいて、および、コーティングとして、使用され得る。加えて、本樹脂エマルションは、バインダー、充填剤、熱可塑性ポリマーを修飾していくかもしくは材料の衝撃耐性を修飾していく添加剤として、使用され得る。
【実施例】
【0052】
以降の実施例が説明され、本発明を、より詳細に例示する。他に特定されなければ、全ての<<部>>は重量による。Pacific Scientific Instruments,Grants Pass,OregonからのNiCompTM370Particle Sizerが使用され、粒子サイズを、実施例1〜4、11〜19、ならびに比較例1および2において測定した。NicompTM370Particle Sizerは、粒子サイズ分散(Dv/Dn)の算出ができない。Microtrac,Inc.,North Largo,FloridaからのMicrotrac Nanotrac 150 Particle Analyzerがその体積モードで使用され、粒子サイズを、実施例5〜10および20〜22において測定した。樹脂分子量が、他に特定されなければ、当該エマルションからの当該樹脂ポリマーを凝集させた後、ゲル濾過クロマトグラフィーを使用して、測定された。
【0053】
実施例1〜10−アニオン性プロピル(Pr)T樹脂エマルション
50〜500nm(0.05〜0.5μm)の範囲中の平均粒子サイズを持っているアニオン性プロピルT樹脂エマルションが、以降の手順を使用して、調製された。その平均粒子サイズ、成分量、およびシランモノマー供給速度が、表1において示される。全てのバッチサイズは、組み合わされていく全成分に関して、350gであった。500mL3頸丸底フラスコに、初期量の水、72重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液としてBrij35L非イオン性界面活性剤、およびドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)が加えられた。該フラスコが、Teflon(登録商標)のパドル形のスターラーを有するガラス桿、還流濃縮器(ジムロート)、アルコール(メタノール)を回収していくためのDean Starkeトラップ、マントルヒーター、および、温度コントローラーに取り付けられた熱電対にフィットされた。該フラスコの中身が、90℃にまで熱しながら、200RPMで攪拌された。該フラスコおよびこのアルコールの経路が、絶縁マットもしくはフォイル(箔)を用いて覆われ、アルコール蒸留を補助した。その温度が90℃において安定したら、プロピルトリメトキシシラン(実施例1〜9)およびプロピルトリエトキシシラン(実施例10)が当該フラスコに、ある期間の時間に亘り、一定速度において供給された。該シランモノマー供給の間に、該アルコールが回収され、該トラップから廃液された。該アルコールが蒸留されている間、その温度が1〜2℃下がった。
【0054】
該シランモノマーを供給した後、この反応は、その温度が90℃にまで上昇したか、もしくは、該アルコールの回収がプロピルトリメトキシシランをスローダウンさせてしまうまで、約もう1時間継続させられた。該シランモノマーの加水分解から生成されたアルコールの一部もしくは全部が、アルコール/水混合物として、除去された。該反応の混合物が、トリエタノールアミン(TEA)水溶液を用いて、中和された。稀釈水を加えながら、該フラスコの中身が、室温にまで冷やされた。この結果得られてくる樹脂エマルションは乳白色であり、1モードの粒子サイズの分布を有していた。仕上がったエマルションは、約20〜23%のPrSiO3/2液体樹脂を含有した。該エマルションは、該フラスコに、全く沈着を残さなかったか、もしくは、痕跡量だけであり、全く沈降もしくはクリーム状化を、3,000RPMでの遠心に30分間付された後に示さなかった。該エマルションは、全く相分離もしくは凝集の徴候を、通常条件下での2年の保管後に示さなかった。
【0055】
該エマルションを1ヶ月間50℃において経過させていっても、その平均粒子サイズは、全くその分布の有意な変化を示さず、その平均粒子サイズは一般的に、その新鮮なエマルションの平均粒子サイズの約10%以内のままであった。該エマルション中の樹脂も一般的に、ずっと安定であった。該樹脂の重量平均分子量は、該エマルションが熱経時された後、その新鮮なエマルションの重量平均分子量に比較して、20%未満、一般的に約10%未満を彷徨った。
【0056】
実施例11〜20−カチオン性プロピルT樹脂エマルション
50〜500nm(0.05〜0.5μm)の範囲中の平均粒子サイズを持っているカチオン性プロピルT樹脂エマルションが、以降の手順に従って、調製された。その平均粒子サイズ、成分量、シランモノマー供給速度、および反応温度が、表2において示される。全てのバッチサイズは、組み合わされる全成分に関して、約350gであった。500mL3頸丸底フラスコに、初期の水、その界面活性剤活性分90重量%の水溶液としてTrycol5953非イオン性界面活性剤、27重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液としてArquad T27W カチオン性界面活性剤、および50重量%の水酸化ナトリウムを含有している水溶液が加えられた。該フラスコが、Teflon(登録商標)のパドル形のスターラーを有するガラス桿、還流濃縮器(ジムロート)、アルコール回収用Dean Starkeトラップ、マントルヒーター、および、温度コントローラーに取り付けられた熱電対にフィットされた。該フラスコの中身が、上昇した温度にまで熱されながら、200RPMで攪拌された。該フラスコおよびこのアルコールの経路が、絶縁マットもしくはフォイル(箔)を用いて覆われ、このアルコール蒸留を補助した。その温度が安定したら、プロピルトリメトキシシランが当該フラスコ中に、ある期間の時間に亘り、供給された。該シランモノマー供給の間に、アルコールが回収され、該トラップから廃液された。該アルコールが蒸留されている間、その温度が1〜2℃下がった。
【0057】
該シランモノマーの供給後、この反応は、その温度が上昇したか、もしくは、アルコール回収速度がスローダウンしてしまうまで、1〜1.5時間継続させられた。該シランモノマーの加水分解から生成されたアルコールの一部もしくは全部が、アルコール/水混合物として、除去された。該反応が、10重量%酢酸を含有している水溶液を用いて、中和された。稀釈水を加えながら、該フラスコの中身が、室温にまで冷やされた。この結果得られてくるエマルションは乳白色であり、1モードの粒子サイズの分布を有していた。仕上がったエマルションは、約20〜23%のPrSiO3/2固体樹脂を含有した。該エマルションは、全く相分離の徴候を、通常条件下での2年の保管後に呈さなかった。
【0058】
実施例21および22−カチオン性フェニル(Ph)T樹脂エマルション
100〜1,000nm(0.1〜1μm)の範囲中の平均粒子サイズを持っているカチオン性フェニルT樹脂エマルションが、実施例11〜20に従って:
(i)フェニルトリメトキシシランが、プロピルトリメトキシシランの代わりに、本モノマーとして使用された
(ii)Tergitol TMN−6が、90重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液として、70重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液としてのTergitol 15−S−40と組み合わせて、Trycol5953の代わりに、本非イオン性界面活性剤として使用された
(iii)29重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液として、Arquad16−29Wが、ArquadT27Wの代わりに、本カチオン性界面活性剤として使用された
ことを除き、調製された。その平均粒子サイズ、本手順において使用された成分量、そのシランモノマー供給速度、およびその反応温度が、表3において示される。両方のバッチサイズは、組み合わされる全成分に関して、約350gであった。該反応は、250RPMで、攪拌された。実施例22においては、その初期の非イオン性界面活性剤は、そのモノマーの供給が完結した後、初期に加えられていくのとは反対に、加えられた。
【0059】
両方の実施例において、更なる非イオン性界面活性剤および水が、中和後、加えられた。両方の実施例21および22は、1モードの粒子サイズの分布を有する乳白色エマルションを生成し、各エマルションは、およそ23%のPhSiO3/2固体樹脂を含有した。実施例21におけるエマルションはずっと、その大きな粒子サイズ、および、そのフェニル樹脂と水との間の比較的大きな密度差のために立ったまま沈降した。しかしながら、該エマルションは、振ると、再度分散可能であった。その粒子サイズおよびその樹脂分子量は、全く有意な変化を、該エマルションが通常条件において2年間保管された後測定した場合、示さなかった。実施例22におけるエマルションは、通常温度での2年の保管後、痕跡量の沈降しか持たなかった。
【0060】
実施例23−カチオン性フェニルプロピルTコポリマー樹脂エマルション
カチオン性TPhPrコポリマー樹脂エマルションが、以降の手順に従って、調製された。500mL3頸丸底フラスコに、137.7g(38.5部)の水、90重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液として4.75g(1.33部)のTergitol TMN−6非イオン性界面活性剤、29重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液として8.62g(2.41部)のArquad16−29Wカチオン性界面活性剤、および、10重量%水溶液としての0.83g(0.23部)の水酸化ナトリウムが、加えられた。該フラスコが、Teflon(登録商標)のパドル形のスターラーを有するガラス桿、還流濃縮器(ジムロート)、マントルヒーター、および、温度コントローラーに取り付けられた熱電対にフィットされた。該フラスコの中身が、50℃にまで熱されながら、250RPMで攪拌された。その温度が50℃において安定したら、77.66g(21.7部)のフェニルトリメトキシシラン、26.0g(7.26部)のプロピルトリメトキシシラン、および4.38g(1.22部)の末端封鎖成分ヘキサメチルジシロキサンからなる混合物が、当該フラスコ中に、150分に亘り、塩基性水溶液を含有している界面活性剤に供給された。
【0061】
該シランモノマーおよびシロキサンの供給が完結された後、この反応混合物が更に10分間継続され、次いで、10重量%の酢酸を含有している1.23g(0.34部)の水溶液を用いて中和された。該フラスコの中身が、更に93.0g(26.0部)の水、および、3.50g(0.98部)のTergitol15−S−40非イオン性界面活性剤を70重量%の界面活性剤を水中に含有している水溶液として加えながら、室温にまで冷やされた。アルコールが生成されたが、蒸留されず、最終生成物中に留まった。この結果得られてくるエマルションは青みを帯びた乳白色であり、Microtrac Nanotrac 150 Particle Analyzerを用いて測定された場合1モードの粒子サイズの分布を持ち、この樹脂粒子の中央値直径は69nm(0.069μm)であった。その粒子サイズの分散(Dv/Dn)は、1.18であった。このエマルションは、およそ20重量%のトリメチルシロキシ末端封鎖フェニルプロピルシルセスキオキサンコポリマー固体樹脂を含有した。該エマルションのサンプルが、50℃において2ヶ月間、閉じられているがエア(空気)に対してタイト(緻密)でないバイアル中で、加熱経時に付された。該サンプルはその本来の外観を、水のエバポレーションの結果としてのある程度の増粘化を除き、維持した。その粒子サイズおよびその樹脂分子量の両方が実質的に、変わらないままであった。
【0062】
実施例24〜26−カチオン性1,2−ジオール官能基を有するメチルDTコポリマー樹脂エマルション
そのモノマーが、メチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランの混合物からなり、その生成物が、エポキシ/ジオール官能基を有するメチルDTコポリマー樹脂エマルションであって、20〜100nm(0.02〜0.1μm)の範囲中の平均粒子サイズを持っている樹脂粒子を含有していたことを除き、実施例23が繰り返された。該エマルションは、青みを帯びた白であり、1モードの粒子サイズの分布を有していた。表4は、使用された成分量、反応条件、および平均粒子サイズを含有する。
【0063】
実施例27−非イオン性メチルT樹脂エマルション
メチルT樹脂エマルションが、非イオン性界面活性剤を使用して、以降の手順に従って、調製された。500mL3頚丸底フラスコに、208g(59.5部)の水、90重量%の界面活性剤を水中に含有している水溶液としての5.61g(1.6部)のTergitolTMN−6非イオン性界面活性剤、70重量%の界面活性剤を水中に含有している溶液としての17.7g(5.0部)のTergitol15−S−40非イオン性界面活性剤、および、10重量%の水酸化ナトリウムを含有している水溶液3.50g(1.0部)が、加えられた。該フラスコが、Teflon(登録商標)のパドル形のスターラーを有するガラス桿、還流濃縮器(ジムロート)、アルコール回収用Dean Starkeトラップ、マントルヒーター、および、温度コントローラーに取り付けられた熱電対にフィットされた。該フラスコの中身が、90℃にまで熱しながら、250RPMで攪拌された。該フラスコおよびこのアルコールの経路が、絶縁マットを用いて覆われ、アルコールを蒸留していくのを補助した。
【0064】
その温度が90℃において安定したら、109.7g(31.4部)のメチルトリメトキシシランが当該フラスコ中に、95分に亘り、供給された。該シランモノマー供給の間に、アルコールが、生成され、回収され、該トラップから廃液された。アルコールが蒸留されている間、その温度が1〜2℃下がった。該シランモノマー供給が完結された後、この反応が、もう85分間継続するようにされ、この時間に、その温度が90℃にまで戻った。合計111gのアルコール/水混合物が、除去された。該反応は、10重量%の酢酸を含有している5.25g(1.5部)の水溶液を用いて、中和された。該反応は次いで、室温にまで冷やされた。この結果得られてきた樹脂エマルションは乳白色であり、1モードの粒子サイズの分布を持った。該エマルション中の樹脂粒子は、平均直径85nm(0.085μm)を持った。該エマルションは、約23重量%のMeSiO3/2固体樹脂を含有した。
【0065】
実施例28−シリコーンポリエーテルをそのプロセスの開始時において取り込んでいるシリコーン樹脂エマルションを調製するエマルション重合
本シリコーンとして液体プロピルシルセスキオキサンを含有している水中シリコーン型エマルションが、エマルション重合により、調製された。その手順に従って、500mL丸底フラスコに、232.61gの脱イオン水、3.81gのドデシルベンゼンスルホン酸、および6.0gのシリコーンポリエーテルCが、加えられた。該フラスコの中身が、90℃において熱せられながら、250RPMで攪拌された。この界面活性剤が分散してしまった後、105gのプロピルトリエトキシシランモノマーが、この混合物に、90分の間隔に亘り一定速度で、供給された。白いエマルションが徐々に、形成した。この反応は、90℃において維持され、250RPMで、該モノマー供給開始から測定して2.5時間の期間、攪拌された。該反応の混合物は、水中85%の活性含量を有する3.13gのトリエタノールアミン溶液を使用して中和された。その中身は、室温にまで冷やされた。仕上がったエマルションは、以後エマルションVIと言うが、当該エマルション全重量に基づきおよそ19%のエタノールを含有したが、これは、プロピルトリエトキシシランの加水分解からの副生成物として生成されたものであった。エマルションVIは乳白色であり、平均粒子サイズ344nm、および、1モードの粒子サイズの分布を持った。該エマルションは、通常条件において1ヶ月よりも長い間、視覚的には同じままであった。該エマルションのサンプルが、2000RPMで30分間遠心され、全く分離の徴候を示さなかった。エマルションVIは、イソプロピルアルコールを用いた稀釈に当たり、素晴らしい安定性を持ち、以降により証明されるとおりであった。1gのエマルションVIに、4gのイソプロピルアルコールが加えられ、混合された。この組成物は、2000RPMで30分間遠心され、全く分離の徴候を示さなかった。透明な外観を持ち、数日間安定なままであった。
【0066】
比較例1−非イオン性界面活性剤なしで調製されたアニオン性プロピルT樹脂エマルション
Brij35L非イオン性界面活性剤が省略されたことを除き、実施例1が繰り返され、その重量の残りが稀釈水の添加により補填され、表1において示されるとおりである。この手順は、粘りけがなく黄色みを帯びた白いエマルションを生成させ、該フラスコ壁に幾らかの形成物があったことが特記された。その粒子サイズは、3モードの分布を持ち、11nm(0.011μm)(98.2体積%)、58nm(0.058μm)(1.6体積%)、および340nm(0.34μm)(0.2体積%)においてピークを有した。
【0067】
比較例2−非イオン性界面活性剤なしで調製されたカチオン性プロピルT樹脂エマルション
表2において示されるように、Trycol5953非イオン性界面活性剤が省かれたことを除き、実施例5が繰り返された。この手順は、2モードの分布を持っているエマルションを生成させ、58.7nm(0.0587μm)(94.2体積%)および180.9nm(0.1809μm)(5.8体積%)においてピークを有した。
【0068】
前記データが以下に、表1〜4において纏められる。表1において、実施例10において、プロピルトリエトキシシランが、プロピルトリメトキシシランの代わりに使用されたことが特記される。やはり表1において、実施例6〜10におけるTEA濃度が、50%ではなく、むしろ85%であった。表2において、実施例20において、その界面活性剤TergitolTMN−6およびAmmonyx Cetac−30がそれぞれ、界面活性剤Trycol5953およびArquadT27Wの代わりに置換されたことが特記される。略号NMが、これらの表において使用され、値が測定されなかったことを示す。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
他のバリエーションが、本発明の本質的な特徴から逸脱していくことなく、本明細書に
おいて記載された、化合物、組成物、および方法においてなされてよい。本明細書におい
て特に例示された本発明の実施形態は例示的なだけであり、添付の請求項において定義さ
れるような範囲を除く範囲に関する限定としては意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション含有含水シロキサン樹脂を調製する方法であって:
(i) 水、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、および触媒を、任意にイオン性界面活性剤を、反応容器に加えていき、該容器内容物を熱していって混合物を形成させ;
(ii) この混合物に、少なくとも1種のシランモノマー式RSi(OR’)を加えていき;
(iii)任意に、この混合物に、シランモノマー式RSi(OR’)もしくはRSiOR’を加えていき;
(iv) この触媒される含水混合物中での重合反応により、該シランモノマーを加水分解および縮合するようにさせ;
(v) 該反応を、この混合物を中和していくことにより、終結させ;
(vi) この混合物から、30〜100モル%のシロキサンT単位RSiO3/2、0〜70モル%のシロキサンD単位RSiO2/2、および0〜40モル%のシロキサンM単位RSiO1/2を含んでいるシロキサン樹脂含有シロキサン樹脂エマルションを回収する
ステップを含み、式中、Rが、1〜18炭素原子を持っている1価の炭化水素基、もしくは、1〜18炭素原子を持っている有機基置換炭化水素基であり、R’が、水素、1〜4炭素原子を含有しているアルキル基、または、基CHC(O)−、CHCHC(O)−、HOCHCH−、CHOCHCH−、もしくはCOCHCH−の内の1種であり、該シロキサン樹脂エマルションが、シロキサン樹脂粒子を含有し、平均粒子サイズ100〜1,000nm(0.1〜1μm)を持ち、該シロキサン樹脂が、少なくとも1種の有機溶媒に溶ける、方法。
【請求項2】
(vi)におけるエマルションが、シロキサン樹脂粒子を含有し、平均粒子サイズ150〜1,000nm(0.15〜1μm)を持っている、請求項1の方法。
【請求項3】
前記シランモノマーが、前記混合物に加えられ、酸性もしくは塩基性条件下に攪拌され、該シランモノマーの添加速度が、該混合物中の水の量に基づき、20モル/L水/時間未満の速度であり、加水分解および重合縮合を効果的にする、請求項1の方法。
【請求項4】
(i)における混合物が、形成されるシロキサン樹脂重量に基づき、1〜50重量%の前記非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤がシリコーンポリエーテルである、請求項1の方法。
【請求項6】
ステップ(iii)において、1級アルコールもしくは短鎖トリメチルシロキシ末端化ポリシロキサンが、式RSiOR’のシランに関して置換され、あるいは、ポリシクロシロキサンが、式RSi(OR’)のシランに関して置換される、請求項1の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の方法により調製されたエマルション。

【公表番号】特表2008−506006(P2008−506006A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520323(P2007−520323)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021392
【国際公開番号】WO2006/016968
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】