説明

エラスチン様ペプチドを含む治療剤

本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)および治療用タンパク質を含む治療剤および組成物を提供する。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、機能的アナログを含む、GLP−1受容体作動薬、インスリン、または第VII/VIIa因子である。本発明は、さらに、コードするポリヌクレオチド、ならびに治療剤を製造および使用する方法を提供する。当該治療剤は、治療剤としてのその利用に関連する改善点を有し、これには、特に半減期、体内からの排除および/または体内持続性、溶解性、および生物学的利用能のうちの1つまたは複数が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、2008年6月27日に申請された米国特許仮出願第61/076,221号の優先権を主張し、その全体を、本明細書において参考として援用する。
【0002】
[0002] 本出願は、エラスチン様ペプチドを含む治療剤を開示し、2007年9月6日付けの国際申請日を有する国際出願PCT/US第2007/077767号(2008年3月13日に国際公開第2008/030968号として公表)に関連する。また本出願は、2006年12月20日付けの国際申請日を有する国際出願PCT/US第2006/048572号(2007年6月28日に国際公開第2007/073486号として公表)にも関連する。国際公開第2008/030968号および同第2007/073486号のそれぞれを、本明細書においてそのまま参考として援用する。
【0003】
電子申請されたテキストファイルに関する説明
[0003] 本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容を、本明細書においてそのまま参考として援用する。配列表のコンピューターで読取り可能なフォーマットのコピー(ファイルネーム:PHAS_010_01US_SeqList_ST25.txt、記録日:2009年6月26日、ファイルサイズ50kb)。
【背景技術】
【0004】
[0004] 治療用タンパク質またはペプチドは、その自然の状態では、または組換え技術によって産生された場合には、とりわけ、血清中で安定な期間、血清半減期(すなわち循環半減期)が短い、または体内持続性が限定的である不安定な分子であり得る。またかかる分子は、処方化する際には、例えば水溶液中で処方化した場合、極めて不安定でもあり得る。
【0005】
[0005] いくつかの例では、ポリエチレングリコール(PEG)をタンパク質分子と結合させると、長期作用性で、活性持続性の分子となる。しかし、PEGを結合させると、多くの場合、タンパク質の治療活性を顕著に低下させ、または消失させてしまうことさえあり得る。また、治療用タンパク質および/またはペプチドは、血清半減期の延長能力を有するある種のタンパク質と融合させることによっても、安定化が行われてきた。例えば、いくつかの例では、融合状態にない治療用タンパク質に比べて、アルブミン、トランスフェリン、および抗体断片と融合した治療用タンパク質では、血清半減期が延長している。米国特許第7,238,667号(特にアルブミンコンジュゲートに関して)、同第7,176,278号(特にトランスフェリンコンジュゲートに関して)、および同第5,766,883号をそのまま、本明細書において参考として援用するが、これらを参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 当技術分野では、より安定で、長期作用性の、および/または効果的なタンパク質分子について、なおもニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)成分および治療用タンパク質成分を含む治療剤を提供する。ELP成分は、エラスチンタンパク質の配列に構造的に関連する、またはこれに由来する構造的ペプチドユニットを含み、これは繰り返しユニットであり得る。かかるELP成分は、治療剤に、ある種の治療上の長所、例えば、治療用タンパク質成分の比較的良好な安定性、溶解性、生物学的利用能、半減期、持続性、および/または生物学的作用等をもたらす。かかる特性は、例えば、治療成分の融合していない、または結合していない対照物と対比させて判定可能である。いくつかの実施形態では、ELP成分は、可逆的逆相転移を引き起こす場合があり、これは、さらなる実用的および/または治療的長所をもたらし得る。本発明は、さらに、本発明の治療剤をコードするポリヌクレオチド、ならびに特定の生物学的状態を治療または予防する方法を提供する。
【0008】
[0008] 第1の態様では、本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)成分および治療用タンパク質成分を含む治療剤、ならびに必要とする対象または患者に送達するための、同治療剤を含む医薬組成物を提供する。治療成分は、表1に掲載する治療用タンパク質、またはその機能的アナログの活性部分から選択され得る。特定の実施形態では、治療成分はGLP−1受容体作動薬、例えばGLP−1、エキセンジン(exendin)−4、またはこれらの機能的アナログである。かかる治療成分は、一般的に、グルコースに依存した様式で膵臓からのインスリン分泌を増加させる上でとりわけ効果的である。そのほかの実施形態では、治療成分は、インスリンまたはその機能的アナログであり、これは、一般的に血液からのグルコースの取込み、および細胞内貯蔵を促進する上で効果的である。なおも別の実施形態では、治療成分は第VII/VIIa因子、またはこれらの機能的アナログであり、これらは、一般的に第X因子または第IX因子の活性化による凝固を促進する上で効果的である。
【0009】
[0009] ELP成分および治療成分は様々な手段により共有結合可能であり、そのような手段として、化学結合(例えば、コンジュゲーション)、および遺伝子組換え融合技術が挙げられる。さらに、1分子当たりのELP成分数または治療成分の数、および分子中のそれぞれの位置は、必要に応じて変化し得る。治療剤は、1つまたは複数のスペーサーまたはリンカー部分をさらに含むことができ、かかる部分は、ELP成分および治療成分の所望の機能的独立性を付与することに加えて、任意選択により治療成分のタンパク質加水分解による放出、または活性化を可能にするプロテアーゼ感受性特性等の、さらなる機能性を付与し得る。治療剤は、1つまたは複数のターゲティング成分、例えば治療剤が特定の細胞タイプ、例えば癌細胞、または特定の器官を標的と定めるようにするためのペプチド、またはタンパク質をさらに含み得る。
【0010】
[0010] 第2の態様では、本発明は、本発明の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド等のポリヌクレオチドを提供する。例えば、ヌクレオチド配列は、表1に掲載する少なくとも1つの治療用タンパク質(またはその機能的アナログ)の機能部分を有するELP融合体をコードする。特定の実施形態では、治療成分は、GLP−1受容体作動薬(GLP-1およびエキセジン-4を含む)、インスリン、第VII/VIIa因子、またはこれらの機能的アナログである。かかるポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列、例えばプロモーター要素および/またはそのほかの転写もしくは発現関連シグナル等に作動可能に結合した追加の制御要素(複数可)をさらに含み得る。ポリヌクレオチドは、様々なベクターに挿入可能で、かかるベクターは、例えばバクテリアおよび真核宿主細胞等を含む宿主細胞内で治療剤を産生するのに有用であり得る。
【0011】
[0011] 第3の態様では、本発明は、対象における、例えばヒト患者を含む哺乳動物患者における疾患、障害、または状態を治療または予防するための方法を提供する。当該方法は、本発明の治療剤(または同治療剤を含む医薬組成物)を、これを必要とする対象または患者に有効量投与する工程を含む。例えば、患者は、表1に掲載する生物学的活性または好ましい効能を有する薬物を必要とし得る。特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬/ELP化合物を用いて、またはインスリン/ELP化合物を用いて、本発明は、1型または2型糖尿病、高血糖症、および耐糖能障害を含む1つまたは複数の障害を治療するための方法を提供する。そのほかの特定の実施形態では、第VII/VIIa因子/ELP化合物を用いて、本発明は、血友病、術後出血、抗凝固剤誘発性出血、血小板減少症、第VII因子欠乏症、第XI因子欠乏症、および頭蓋内出血を含む1つまたは複数の障害を治療するための方法を提供する。
【0012】
[0012] 本発明の様々なそのほかの態様、特徴、および実施形態は、下記の開示および添付の特許請求の範囲からより徹底して明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[0013]10ユニットからなるVPGXG(配列番号3)繰返しモチーフを含むELP成分をコードする、プラスミドpET24d−ELP1−90を表す図であり、ゲスト位置(guest position)Xには、5:3:2の比でV、GおよびAが配置される。このモチーフは8回繰り返され、最後にC末端で10回のユニット繰返しがあり、このときXには、4:3:2:1の比でV、G、AおよびWが配置される。このELP成分は、一般的に[(VPGXG)10として表される。
【図2A】[0014]N末端エキセンジン−4成分を有するフレームにクローン化された、VPGXG(配列番号3)繰返しモチーフ(図1の通り)を備えるELP成分をコードする、プラスミドpET24d−Ex−4 ELP1−90を表す図である。
【図2B】エキセンジン−4/ELP融合体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号23および24)を表す図である。プライマー配列を示す(配列番号35〜40)。
【図3A】[0015]N末端Tev(タバコエッチウィルス(Tobacco Etch virus)システインプロテアーゼ)切断部位を有するエキセンジン−4構築物のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号25および26)を表す図である。プライマー配列を示す(配列番号38、41、42)。
【図3B】やはり、N末端Tev切断部位を有するが、さらに優れたプロテアーゼの標的とするために、Tev切断部位のN末端側に追加の配列を有するエキセンジン−4構築物のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号27および28)を表す図である。プライマー配列を示す(配列番号38、43、44)。
【図4A】[0016]図1〜3に示す通りであるが、細胞内周辺腔内への分泌を指令するようにDsbAリーダー配列を有するエキセンジン−4/ELP融合体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号29および30)を表す図である。プライマー配列を示す(配列番号38、45、46)。
【図4B】図4Aの融合体をコードするプラスミドpET24d−DsbA−Ex−4 ELP1−90を表す図である。
【図5A】[0017]GLP−1(A8G、7〜37)ELP1−90をコードするpPB0868を表す図である。
【図5B】コードされた融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号53および54)を表す図である。
【図6A】[0018]GLP−1(A8G、7〜37)ELP1−120をコードするpPB1022を表す図である。
【図6B】コードされた融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号55および56)を表す図である。
【図7A】[0019]第VII因子−ELP1−90をコードするpPB0788を表す図である。
【図7B】コードされた融合タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号57および58)を表す図である。
【図8A】[0020]フレーム内にクローン化されたELP成分を有するインスリン(B、C、およびA鎖)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号31および32)を表す図である。プライマー配列を示す(配列番号47および48)。
【図8B】図8Aのインスリン/ELP融合体を発現するプラスミドpET24d インスリン−ELP1−90を表す図である。
【図9】[0021]一時的に形質移入されたFreestyle HEK293から得られたFVII−ELP1−90について、マウス抗ヒトFVIIモノクロナール抗体を用いて検出したウェスタンブロットの図である。各レーンは、(1)培地、(2)相転移により精製された後のFVII ELP1−90、およびFVIIコントロール、である。
【図10】[0022]エキセンジン−4/ELP4−60融合体の遺伝子組換え生成物を示すSDS−PAGEの図である。各レーンは、(M)タンパク質マーカー、(1)全溶解物に由来するエキセンジン−4 ELP4−60、(2)不溶性溶解物に由来するエキセンジン−4 ELP4−60、(3)可溶性溶解物に由来するエキセンジン−4 ELP4−60、(4)第1回転移に由来するエキセンジン−4 ELP4−60(容積不変)、(5)第2回転移に由来するエキセンジン−4 ELP4−60(濃縮済み)、(6)第3回転移に由来するエキセンジン−4 ELP4−60(濃縮済み)。
【図11】[0023]第VIIa因子−ELP1−90による、および比較として第VIIa因子による、第X因子の活性化を示す図である。図示の通り、第VIIa因子−ELPは全活性を保持している。
【図12】[0024]第VIIa因子−ELP1−90は、ラットにi.v.経由で投与したときに、長いPKを有することを示す図である。第VIIa因子の約45〜60分に比較して、第VIIa因子(-ELP)は、約690分のT1/2を有する。
【図13】[0025]エキセンジンペプチドの活性と比較して、GLP1−ELPおよびエキセンジン−4−ELPでは、in vitroで高活性を有することを示す図である。
【図14】[0026]GLP1−ELPは、ラットにi.v.経由で投与したときに、約12.9時間のT1/2を、また皮下(SQ)に投与したときには約8.6時間のT1/2を有することを示す図である。
【図15】[0027]GLP−1 ELPは、ウサギにi.v.経由で投与したときに、約20時間の、また皮下に投与したときには約24時間の長い半減期を有することを示す図である。
【図16】[0028]GLP−1−ELPを用いることにより、糖尿病マウスで血糖管理が持続することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0029] 本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)(「ELP成分」)および治療成分を含む治療剤を提供する。治療成分は、表1から選択され得る(例えば、表1に掲載されている治療用タンパク質、またはその機能的部分またはその機能的アナログから選択される)。特定の実施形態では、治療成分は、GLP−1もしくはエキセンジン−4などのGLP−1受容体作動薬であり、またはインスリン、第VII/VIIa因子、もしくはこれらの機能的アナログであり得る。ELP成分は、エラスチンタンパク質の配列に関連する、または由来する構造的ユニットを含み、かかるELP成分は、ある種の治療上の長所、例えば治療成分の比較的良好な持続性、安定性、溶解性、生物学的利用能、半減期、および/または生物学的作用等をもたらす。かかる特性は、例えば、治療成分の融合していない、または結合していない対照物と対比させて判定可能である。本発明は、さらに、本発明の治療剤をコードするポリヌクレオチドのほか、表1に掲載されている好ましい効能を含む、とりわけ糖尿病(例えば1型および2型)、高血糖、出血、血友病、および大規模な出血(hemorrhage)を含む、特定の生物学的状態を治療または予防する方法を提供する。
【0015】
[0030] 考察を確実に行う上で、参照し易くするように、本考察に現れるいくつかの用語の定義を下記に記載する。
【0016】
[0031] 本明細書で用いる場合、用語「治療剤」または「治療成分」とは、in vivoおよび/またはin vitroで生物学的効果を誘発する能力を有する薬剤または成分を指す。生物学的効果は、対象または患者の状態、障害、または疾患を治療および/または予防するのに有用であり得る。
【0017】
[0032] 本明細書で用いる場合、用語「結合した」とは、特定成分が、もう一つのものと直接共有結合で結合した状態(例えば、化学的結合、または遺伝子組換え融合技術により)、あるいはもう一方のものと、中間部分、またはブリッジ、スペーサー、もしくはリンカー等の部分を介して間接的に共有結合で結合した状態(例えば、化学的結合、または遺伝子組換え融合技術により)のいずれかを意味する。
【0018】
[0033] 本明細書で用いる場合、「半減期」(これは一般的に、in vivoでの半減期、または循環半減期を意味する)とは、活性薬剤の生物活性が50%消失するのに要する時間を指す。かかる用語は、活性薬剤が体内に留まる全体的な時間である「持続性」、および半減期および持続性を表す数値と相関性を有しても、有さなくてもよい、動的に変化する変数である「排除速度」と対比される。
【0019】
[0034] 用語「機能的アナログ」とは、天然型タンパク質の活性アナログ(例えば、化学的アナログまたはタンパク質アナログのいずれか)、誘導体、断片、切断型異性体等であるタンパク質を指す。例えば、機能的アナログは、表1に掲載する治療用タンパク質の機能的アナログであり得、またはGLP−1受容体作動薬(例えば、GLP-1、エキセンジン)、インスリン、もしくは第VII/VIIa因子の機能的アナログであり得る。ポリペプチドは、in vivo分析法で、または1つもしくは複数の指標となるin vitro分析法で決定される、対応する天然型ポリペプチドの生物学的活性の一部または全部を保持するとき、活性である。活性を決定する、特定の治療用タンパク質に関する典型的な活性測定法を表1に掲載する。さらに、かかる生物学的活性、およびある分子が「機能的アナログ」であるかどうかを決定する、GLP−1受容体作動薬、インスリン、および第VII/VIIa因子の分析法は、本明細書の別の箇所に詳記されている。
【0020】
[0035] 本明細書で用いる場合、用語「天然の」とは、アミノ酸配列を引用する場合には、当該アミノ酸配列は天然型タンパク質に見出されることを指す。
【0021】
[0036] 本明細書で用いる場合、用語「スペーサー」とは、ELP成分と治療成分との間に挿入され得る任意の部分、ペプチド、またはそのほかの化学的な部分を指す。例えば、スペーサーは、1つの末端でELP成分と共有結合し、またもう一方の末端で治療成分と共有結合する2価の基であり得る。したがって、治療剤は、その意図する目的において、薬剤の有効性を阻害しない追加の化学構造を取り込むのに利用可能である。スペーサーは、例えば、薬剤の薬物動態を制御するために設けられるプロテアーゼ感受性スペーサー部分であり得、またはスペーサーはプロテアーゼ抵抗性部分であり得る。
【0022】
[0037] 治療成分およびELP成分は、治療剤がその意図する目的において有効であるように、またELP成分が存在することにより、治療成分が何らかの機能的、治療的、または病理学的側面について増強されるように、化学カップリングおよび遺伝子組換え技術を含む、任意の適する共有結合様式で互いに結合可能である。例えば、ELPが結合した治療成分は、例として、その生物学的利用能、生物学的非利用能、治療有効量、生物学的作用、処方適合性、タンパク質分解またはそのほかの分解様式に対する抵抗性、溶解性、投与後の体内における半減期またはそのほかの持続性に関する指標、投与後に体内から排除される速度等について増強され得る。かかる増強は、例えば、結合していない、または融合していない対照治療剤と比較することにより決定可能である(例えば、表1に掲載する天然型GLP-1、エキセンジン、インスリン、または第VII/VIIa因子、または治療用タンパク質と比較して決定される)。
【0023】
[0038] いくつかの実施形態では、本発明の治療剤は、可溶形態で体内を循環し、または体内中に存在し、腎臓によるろ過を免れ、これにより活性な形態で体内に持続的に留まる。いくつかの実施形態では、本発明の治療剤は、腎臓からろ過されるカットオフ値と一般的に認められている分子量よりも小さい分子量、例えば約60kD未満を有し、またはいくつかの実施形態では、約55、50、45、40、30、または20kDa未満であり、また結合していない(例えば、融合していない、または結合していない)治療剤対照物よりも体内に少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、または100倍長く滞留する。
【0024】
[0039] 1分子当たりのELP成分および/または治療成分の数、および分子中のそれらの各位置は、本発明の実施形態において変化し得る。例えば、薬剤が遺伝子組換え融合体である実施形態では、少なくとも1つのELP成分は、N末端およびC末端のうちの一方、または両方に配置され得る。ELP成分が、融合体のN末端およびC末端の両方にある場合には、ELP成分は治療成分の両脇を固める。あるいは、治療成分が、N末端およびC末端のいずれか一方または両方に配置され得る。治療成分が、N末端およびC末端の両方にある場合には、治療成分はELP成分の両脇を固める。さらなる実施形態では、異なる治療成分が、分子のN末端およびC末端に位置する。本明細書で詳細に考察するように、特定の実施形態では、かかる治療成分(複数可)は、スペーサー部分でタンパク質分解が生じてELP成分と治療成分とが切り離されることにより放出され得る。特定の実施形態では、治療成分は、融合状態では不活性であるが、タンパク質分解によりELP成分(複数可)から遊離すると活性となり得る。あるいは、治療成分は、融合状態にあっても活性のままであり、治療剤を生物学的に活性にするタンパク質分解プロセスを不要にしている。
【0025】
[0040] 遺伝子組換え融合体として作製される場合には、治療剤は公知の遺伝子組換え発現技術により作製可能である。例えば、遺伝子組換え技術を用いて治療剤を作製するためには、かかる融合タンパク質をコードする核酸配列が、宿主細胞内で転写され、および/または翻訳されて所望の融合タンパク質となるように、キメラ遺伝子をコードする核酸配列を適するプロモーター配列に作動的に連結させる。好ましいプロモーターとして、T7 プロモーター等の大腸菌(E. coli)中での発現に有用なものが挙げられる。真核生物系または原核生物系を含む、一般的に用いられている任意の発現系を用いることができる。具体例として、酵母菌(例えば、サッカロミセス属の種(Saccharomyces spp.)、ピキア属の種(Pichia spp.))、バキュロウィルス、哺乳動物系、および大腸菌やカウロバクター等の細菌系が挙げられる。
【0026】
[0041] 本発明の様々な態様および実施形態を、下記のセクションでさらに詳細に記載する。
【0027】
エラスチン様ペプチド(ELP)成分
[0042] 本発明の治療剤は、1つまたは複数のELP成分を含み得る。ELP成分は、エラスチンタンパク質に関連する、または由来する構造的なペプチドユニットもしくは配列を含み、またはそれらから構成される。かかる配列は、表1に掲載されているもののほか、GLP−1受容体作動薬(例えば、GLP-1またはエキセンジン-4)、インスリン、および第VII/VIIa因子等の、治療用タンパク質の特性を、生物学的利用能、治療有効量、生物学的作用、処方適合性、タンパク質分解に対する抵抗性、溶解性、投与後の体内における半減期またはそのほかの持続性に関する指標、および/または体内から排除される速度のうちの1つまたは複数において改善するのに有用である。
【0028】
[0043] ELP成分は、3〜約20個のアミノ酸、またはいくつかの実施形態では4〜10個、例えば5個または6個のアミノ酸からなる構造的ユニットから構成される。特定のELP成分では、個々の構造的ユニットの長さは変化してもよく、また一定であってもよい。特定の実施形態では、ELP成分は、ポリテトラ−、ポリペンタ−、ポリヘキサ−、ポリヘプタ−、ポリオクタ−、およびポリノナペプチドモチーフを繰り返す構造的ユニットから構成される。典型的な構造的ユニットとして、配列番号1〜12(下記)で定義されるユニットが挙げられ、これらは、治療成分の特性を改善するのに有効なELPを作り出すために、タンデム式の繰返しユニットを含む繰返しの構造的ユニットとして利用してもよく、またいくつかを組み合わせたものを利用してもよい。したがって、ELP成分は、下記に定義するような配列番号1〜12から選択される構造的ユニット(複数可)を含み、またはかかるユニットから実質的に構成され得る。
【0029】
[0044] かかる構造的ユニットを含むELP成分は、サイズが異なってもよい。例えば、ELP成分は、配列番号1〜12で定義されるユニットの1つ、または組合せを含む、約10〜約500個の構造的ユニット、または特定の実施形態では約15〜約150個の構造的ユニット、または特定の実施形態では約20〜約100個の構造的ユニット、または約50〜約90個の構造的ユニットを含み得、またはかかるユニットから実質的に構成され得る。したがって、ELP成分は、約50〜約2000個のアミノ酸残基、または約100〜約600個のアミノ酸残基、または約200〜約500個のアミノ酸残基、または約200〜約400個のアミノ酸残基からなる長さを有し得る。
【0030】
[0045] いくつかの実施形態では、ELP成分、または場合によっては、治療剤は、約65kDa未満、または約60kDa未満、または約55kDa未満、または約50kDa未満、または約40kDa未満、または約30kDaもしくは25kDa未満のサイズを有する。3つの主要な血液タンパク質である、ヒト血清アルブミン(HSA)、トランスフェリン(Tf)、およびIgG、またはグリコシル化された形態のIgGのFc部分は、治療用途の改善を狙いとして、タンパク質およびペプチドの半減期を延ばすために活用されてきた。かかる分子は、585、679、および480アミノ酸長であり、それぞれ、約66、77、および〜75kDa(グリコシル化部分を含む)の分子量を与える。これらは、それぞれ球形で、比較的コンパクトである。これら分子の半減期は、荷電分布、新生児型Fc受容体(FcRn)(HSAおよびFc)による、またはTf受容体(TfR)を介したTfの循環による分子の修復、および腎臓糸球体からのろ過を阻止する分子サイズを含め、いくつかの因子で決定される。HSAは、腎臓からろ過されると一般的にみなされているカットオフ値(約70kDa)よりも若干小さいが、その荷電分布がろ過を阻止するのに役立っている。HSA、Tf、およびFcで達成されているのと同程度に半減期を伸ばすためには、タンパク質として少なくともこのような分子量範囲、すなわち550個を超えるアミノ酸を有し、つまり65kDaを超えることが必要または望ましいと予想される。しかし、HSA、Tf、およびFcに比較してアミノ酸の数が少なく(例えば、約300〜400個の範囲)、約30〜40kDaのELPでも、HSA、Tf、およびFcに匹敵する、および/または凌駕する半減期を有し得る。
【0031】
[0046] いくつかの実施形態では、非転移状態にあるELP成分は、拡張した、比較的非構造的で、非球形の形態を有することができ、したがって、かかる分子は、HSA、Tf、およびFcと比較して大きく広がった、腎臓でのろ過を免れるような構造を有することができる。かかる実施形態では、本発明の治療剤は、腎臓からろ過されると一般的にみなされているカットオフ値よりも小さい分子量、例えば約60kD未満、またはいくつかの実施形態では約55、50、45、40、30、または25kDa未満の分子量を有し、また結合していない(例えば、融合していない、または結合していない)治療剤対照物よりも体内に少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、または100倍長く滞留する。
【0032】
[0047] 特定の実施形態では、ELP成分は可逆的逆相転移を引き起こす。すなわち、ELP成分は、転移温度(Tt)以下では構造的に不規則で、極めて水に溶け易いが、温度がTtよりも上昇すると、不規則状態から規則状態へと鋭敏な(2〜3℃の範囲)相転移を示し、ELP成分の脱溶媒和および凝集を引き起こす。例えば、ELPは十分な大きさに達すると不溶性ポリマーを形成し、これは遠心分離により溶液から容易に除去および分離され得る。かかる相転移は可逆的で、分離された不溶性のELPは、温度がELPのTtよりも低い状態に戻ると、バッファー溶液中に完全に再溶解可能となる。したがって、いくつかの実施形態では、逆転移サイクリング手順を用いて、例えば、温度依存性の治療剤溶解度を利用して、または媒体に塩を添加して、本発明の治療剤を、別の汚染タンパク質から高純度で分離することができる。高純度を実現するために、逆相転移サイクルを連続して利用することも可能である。温度やイオン強度に加えて、治療剤の逆転移を調節するのに有用なそのほかの環境変数として、pH、無機性および有機性の溶質および溶媒の添加、側鎖のイオン化または化学修飾、および圧力が挙げられる。
【0033】
[0048] 特定の実施形態では、ELP成分は可逆的逆相転移を引き起こさない、または生物学的に関連するTtでかかる転移を引き起こさず、したがって分子の生物学的および/または生理学的特性の改善は(本明細書の別の箇所に記載するように)、あらゆる相転移特性とは完全にまたは実質的に独立であり得る。しかし、かかる相転移特性により、さらなる実用的長所が、例えばかかる分子の回収および精製に関連してもたらされ得る。
【0034】
[0049] 特定の実施形態では、ELP成分(複数可)は構造的ユニットから形成可能で、かかるユニットとして下記のものが、非限定的に挙げられる:
(a)テトラペプチドVal−Pro−Gly−Gly、またはVPGG(配列番号1);
(b)テトラペプチドIle−Pro−Gly−Gly、またはIPGG(配列番号2);
(c)ペンタペプチドVal−Pro−Gly−X−Gly(配列番号3)またはVPGXG、ここでXは、天然または非天然の任意のアミノ酸残基であり、またXは任意選択により、ポリマーの繰返しまたはオリゴマーの繰返しの中で変化する;
(d)ペンタペプチドAla−Val−Gly−Val−Pro、またはAVGVP(配列番号4);
(e)ペンタペプチドIle−Pro−Gly−X−Gly、またはIPGXG(配列番号5)、ここでXは、天然または非天然の任意のアミノ酸残基であり、またXは任意選択により、ポリマーの繰返しまたはオリゴマーの繰返しの中で変化する;
(e)ペンタペプチドIle−Pro−Gly−Val−Gly、またはIPGVG(配列番号6);
(f)ペンタペプチドLeu−Pro−Gly−X−Gly、またはLPGXG(配列番号7)、ここでXは、天然または非天然の任意のアミノ酸残基であり、またXは任意選択により、ポリマーの繰返しまたはオリゴマーの繰返しの中で変化する;
(g)ペンタペプチドLeu−Pro−Gly−Val−Gly、またはLPGVG(配列番号8);
(h)ヘキサペプチドVal−Ala−Pro−Gly−Val−Gly、またはVAPGVG(配列番号9);
(I)オクタペプチドGly−Val−Gly−Val−Pro−Gly−Val−Gly、またはGVGVPGVG(配列番号10);
(J)ノナペプチドVal−Pro−Gly−Phe−Gly−Val−Gly−Ala−Gly、またはVPGFGVGAG(配列番号11);および
(K)ノナペプチドVal−Pro−Gly−Val−Gly−Val−Pro−Gly−Gly、またはVPGVGVPGG(配列番号12)。
配列番号1〜12で定義されるかかる構造的ユニットは、構造的繰返しユニットを形成することができ、または本発明に基づきELP成分を形成するために組み合わせて用いることができる。いくつかの実施形態では、ELP成分は、配列番号1〜12から選択される構造的ユニットのうちの1つまたは組み合わせたもの(例えば、2、3、または4個を)から、全体的に(またはほぼ全体的に)形成される。別の実施形態では、ELP成分の少なくとも75%、または少なくも80%、または少なくとも90%は、配列番号1〜12から選択される構造的ユニットのうちの1つまたは組み合わせたものから形成され、これらは繰返しユニットとして存在し得る。
【0035】
[0050] 特定の実施形態では、ELP成分(複数可)は繰返しユニットを含むが、これには、Xが上記で定義された通りであり、またELP成分全体(VPGXG(配列番号3)以外の構造的ユニットを含み得る)に占めるVal−Pro−Gly−X−Gly(配列番号3)ペンタペプチドユニットの割合(%)が、ELP成分の約75%を超える、または約85%を超える、または約95%を超えるような、ペンタペプチドVal−Pro−Gly−X−Gly(配列番号3)のタンデム式繰返しユニットが含まれる。ELP成分は、配列番号3のペンタペプチドからなる5〜15回のユニット繰返し(例えば、約10回のユニット繰返し)を有するモチーフを含むことができ、ゲスト残基Xは、複数あるユニットのうち少なくとも2つ、または少なくとも3つのユニット中で変化する。ゲスト残基は、アミノ酸V、I、L、A、G、およびW等から独立に選択され得る(および、所望の逆相転移特性を保持するように選択され得る)。繰返しモチーフそのものは、典型的なELP成分を作り出すために、約8〜10回等、例えば約5〜約12回繰り返され得る。本パラグラフで記載するように、ELP成分は、当然ながら配列番号1〜12で定義される構造的ユニットの任意の1つ、またはこれらを組み合わせたものから構成され得る。
【0036】
[0051] いくつかの実施形態では、ELP成分はβ−ターン構造を含み得る。β−ターン構造を生み出すのに適する典型的なペプチド配列は、国際特許出願第PCT/US第96/05186号に記載されており、その全体を本明細書において、参考として援用する。例えば、β−ターン形成を阻害しないで、エラスチンペンタペプチド配列、VPGXG(配列番号3)の4番目の残基(X)を変更することができる。あるいは、ELP成分は、β−ターンを欠いてもよく、またさもなければ異なる立体構造および/または折りたたみの特徴を有してもよい。
【0037】
[0052] 特定の実施形態では、ELP成分は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなるポリマーの繰返しまたはオリゴマーの繰返しを含み、その場合、ゲスト残基Xは任意のアミノ酸である。Xは、天然のアミノ酸であっても、また非天然のアミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態では、Xは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから選択される。いくつかの実施形態では、Xは、プロリンまたはシステイン以外の天然のアミノ酸である。
【0038】
[0053] ゲスト残基Xは(例えば、配列番号3、またはそのほかのELPの構造的ユニットについて)、非古典的(非遺伝的にコードされた)アミノ酸であり得る。非古典的アミノ酸の例として、一般的なアミノ酸のD型異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、A−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、ザルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロアミノ酸、β−メチルアミノ酸等のデザイナーアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸、および一般的なアミノ酸アナログが挙げられる。
【0039】
[0054] Xの選択は、ELPの各構造的ユニット間で独立である(例えば、本明細書で定義する各構造的ユニットについてゲスト残基Xを有する)。例えば、Xは、各構造的ユニットについて、正に荷電した側鎖を有するアミノ酸、負に荷電した側鎖を有するアミノ酸、またはいくつかの実施形態における疎水性側鎖を含む中性の側鎖を有するアミノ酸として、独立に選択され得る。
【0040】
[0055] なおも別の実施形態では、ELP成分(複数可)は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)、IPGXG(配列番号5)、またはLPGXG(配列番号7)、またはこれらを組み合わせたものからなるポリマーまたはオリゴマーの繰返しを含むことができ、Xは上記定義の通りである。
【0041】
[0056] 各実施形態では、ELP配列の構造的ユニット、または場合によってはポリマーもしくはオリゴマーの繰返しは、分子の全体的な効果を阻害しない、すなわち上記のような治療成分に特定の改善を付与する際に阻害しない、1つまたは複数のアミノ酸残基によって分離され得る。特定の実施形態では、かかる1つまたは複数のアミノ酸は、ELP成分の相転移特性も阻害しない、またはこれに実質的に影響を及ぼさない(かかる1つまたは複数のアミノ酸を欠くものと比較して)。
【0042】
[0057] 各繰返しにおいて、Xは独立に選択される。得られたELP成分の構造は、表記法ELPk[X−n]を用いて記載可能であり、ここでkは特定のELP繰返しユニットを表し、カッコ内の大文字は一文字表記法によるアミノ酸コードであり、対応する下付き文字は、構造的ユニット内の各ゲスト残基Xの相対的な比を表し(該当する場合)、およびnはELPの全長を構造的な繰返しの数で記載する。例えば、ELP1[V−10]は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる10回繰返しユニットを含むELP成分を表し、Xは5:2:3の相対比でバリン、アラニン、およびグリシンである;ELP1[K−4]は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる4回繰返しユニットを含むELP成分を表し、Xは1:2:1の相対比でリジン、バリン、およびフェニルアラニンである;ELP1[K−9]は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる9回繰返しユニットを含むポリペプチドを表し、Xは1:7:1の相対比でリジン、バリン、およびフェニルアラニンである;ELP1[V−5]は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる5回繰返しユニットを含むポリペプチドを表し、Xはもっぱらバリンである;ELP1[V−20]は、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる20回繰返しユニットを含むポリペプチドを表し、Xはもっぱらバリンである;ELP2[5]は、ペンタペプチドAVGVP(配列番号4)からなる5回繰返しユニットを含むポリペプチドを表す;ELP3[V−5]は、ペンタペプチドIPGXG(配列番号5)からなる5回繰返しユニットを含むポリペプチドを表し、Xはもっぱらバリンである;ELP4[V−5]は、ペンタペプチドLPGXG(配列番号7)からなる5回繰返しユニットを含むポリペプチドを表し、Xはもっぱらバリンである。本パラグラフに記載するような、かかるELP成分は、治療成分の治療特性を増大させるために、本発明に関連して利用可能である。
【0043】
[0058] さらに、Ttは、ゲスト残基の疎水性の関数である。したがって、ゲスト残基(複数可)のアイデンティティー、およびそのモル分率(複数可)を変えることにより、0〜100℃の範囲で逆転移を示すELPを合成することができる。したがって、あるELP長におけるTtは、ELP配列中の疎水性ゲスト残基をより大きな割合で組み込むことにより低下させることができる。適する疎水性ゲスト残基の例として、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。中程度に疎水性のチロシンも利用可能である。反対に、Ttは、グルタミン酸、システイン、リジン、アスパラギン酸、アラニン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グリシン、アルギニン、およびグルタミンからなる群より選択される、好ましくは、アラニン、セリン、トレオニン、およびグルタミン酸から選択される残基等を組み込むことにより上昇し得る。
【0044】
[0059] いくつかの実施形態のELP成分は、約10〜約80℃、例えば、約35〜約60℃、または約38〜約45℃の範囲にあるTtをもたらすように選択、または設計される。いくつかの実施形態では、Ttは約40℃より高く、または約42℃より高く、または約45℃より高く、または約50℃より高い。いくつかの実施形態では、転移温度は、対象または患者の体温よりも高く(例えば>37℃)、これによりin vivoで可溶性が維持されるが、または別の実施形態では、Ttは体温よりも低く(例えば、<37℃)、別の長所がもたらされ、例えば治療剤が持続的に放出されるように、in vivoで薬物デポーを形成する。
【0045】
[0060] Ttは一般的にMWの減少と共に上昇するので、ELP成分のTtは、ELPの鎖長を変化させることにより調整可能である。分子量が100,000を超えるポリペプチドの場合、Urryらが開発した疎水性の尺度(国際出願第PCT/US96/05186号、その全体を、本明細書において参考として援用する)が、特定のELP配列に関するおよそのTtを予測するのに好ましい。しかし、いくつかの実施形態では、ELP配列中に疎水性のゲスト残基(例えば、疎水性の側鎖を有するアミノ酸残基)をより大きな割合で組み込むことにより、目標とするTtを維持しながらELP成分の長さを比較的短く保つことが可能である。分子量が100,000未満のポリペプチドの場合、Ttは、下記の二次方程式により予測または決定可能である:Tt=M+MX+M、式中Xは融合タンパク質のMWであり、M0=116.21、M=−1.7499、M=0.010349である。
【0046】
[0061] ELP成分の、したがって治療成分と結合したELP成分のTtは、ゲスト残基Xのアイデンティティーと疎水性により影響されるが、分子のさらなる特性も影響を受け得る。かかる特性として、分子の溶解度、生物学的利用能、持続性、および半減期が挙げられ、ただし、これらに限定されない。
【0047】
[0062] 国際出願PCT/US第2007/077767号(国際公開第2008/030968号として公表済み)をそのまま、本明細書において参考として援用するが、これに記載されているように、ELPが結合した治療成分は、当該治療成分の生物学的活性を保持し得る。さらに、ELPそれ自身は、長期半減期を示し得る。したがって、本発明に基づくELP成分は治療成分と結合すると、当該治療成分の半減期を実質的に(例えば、特定の実施形態では、10%、20%、30%、50%、100%、200%、500%以上長く)増加させる。かかる半減期(または、いくつかの実施形態では、持続性もしくは排除速度)は、治療成分のフリーの(結合していない、または融合していない)形態の半減期と比較して決定される。さらに、ELPは、in vivoでこれを投与したときに、血液を多く含む器官を標的とすることができ、したがって、身体の様々な器官または部位において事前に決定された所望の物質的な分布を実現し、または治療剤の所望の選択性もしくはターゲティングを実現するように、体内で分配可能である。要するに、本発明で検討される治療剤は、本明細書に記載するそのほかの潜在的有益性の中でも、とりわけ半減期(例えば、循環半減期)が延長した活性組成物として投与され、またはin vivoで生み出される。
【0048】
[0063] したがって、本発明は、治療成分が生物学的に活性であるような治療(in vivoで)用途のための様々な薬剤を提供する。かかる治療成分として、表1に掲載されているもの(例えば、全長または機能的部分またはその機能的アナログ)のほか、GLP−1もしくはエキセンジン−4等のGLP−1受容体作動薬、インスリン、または第VII/VIIa因子、およびこれらの機能的アナログが挙げられる。かかる治療成分の構造および活性を、以下に詳記する。治療剤のいくつかの形態において、治療成分をELP成分に結合させる場合、それは、直接的な共有結合、または間接的な(適当なスペーサー基を介した)結合により達成される(本明細書の別の箇所で記載するように)。さらに、治療成分(複数可)およびELP成分(複数可)は、かかる直接的または間接的な共有結合を含む任意の適する方法で、互いに隣接して構造的に配置され得る。
【0049】
グルカゴン様ペプチド(GLP)−1受容体作動薬
[0064] 本発明の特定の実施形態では、治療剤はGLP−1、エキセンジン−4、またはこれらの機能的アナログ等のGLP−1受容体作動薬と融合した、または結合したELP成分を含む。
【0050】
[0065] ヒトGLP−1は、遠位回腸、膵臓、および脳内に存在するL−細胞中で合成されるプレプログルカゴンに由来する37アミノ酸残基ペプチドである。GLP−1(7〜36)アミド、GLP−1(7〜37)、およびGLP−2を与えるプレプログルカゴンのプロセッシングは、主にL−細胞内で生じる。簡便なシステムが、このペプチドの断片およびアナログを記載するために用いられる。例えば、Gly−GLP−1(7〜37)は、アミノ酸残基第1番目〜第6番目を取り除き、天然のアミノ酸残基である第8番目(Ala)をGlyに置換することにより、GLP−1から形式的に誘導されたGLP−1の断片を表す。同様に、Lys34(Nε−テトラデカノイル)−GLP−1(7〜37)は、34位のLys残基のε−アミノ基がテトラデカノイル化されているGLP−1(7〜37)を表している。本明細書においてC末端が伸長されたGLP−1アナログと言えば、38位のアミノ酸残基は、別途指示がない限りArgであり、39位の任意選択的なアミノ酸残基も、別途指示がない限りArgであり、そして40位の任意選択的なアミノ酸残基は、別途指示がない限りAspである。また、C末端が伸長されたアナログが、41、42、43、44または45位にまで伸長する場合には、この伸長部のアミノ酸配列は、別途指示がない限りヒトプレプログルカゴンにおける対応する配列の通りである。
【0051】
[0066] GLP−1の親ペプチドであるプログルカゴン(PG)は、由来とする組織に依存して様々なペプチド生成物を生み出すいくつかの切断部位を有し、これには、膵臓でのグルカゴン(PG[32〜62])およびGLP−1[7〜36]NH(PG[72〜107])、ならびにGLP−1[7〜36]NH(78〜107PG)が主要生成物である、腸のL細胞でのGLP−1[7〜37](PG[78〜108])およびGLP−1[7〜36]NH(PG[78〜107])が含まれる。本発明に基づくGLP−1成分は、プログルカゴンの任意の生物学的に活性な生成物もしくは誘導体、またはこれらの機能的アナログであり得、これには、GLP−1(1〜35)、GLP−1(1〜36)、GLP−1(1〜36)アミド、GLP−1(1〜37)、GLP−1(1〜38)、GLP−1(1〜39)、GLP−1(1〜40)、GLP−1(1〜41)、GLP−1(7〜35)、GLP−1(7〜36)、GLP−1(7〜36)アミド、GLP−1(7〜37)、GLP−1(7〜38)、GLP−1(7〜39)、GLP−1(7〜40)、およびGLP−1(7〜41)、または上記のアナログが含まれる。一般的に、いくつかの実施形態のGLP−1成分はGLP−1(A-B)として表される場合があり、その場合Aは1〜7の整数、Bは38〜45の整数であり、任意選択により、下記に定義する1つまたは複数のアミノ酸置換を有する。
【0052】
[0067] 全体として、腸内L細胞中で処理されたのち、GLP−1は、特に食事に応答して循環系に放出される。GLP−1の血漿濃度は、空腹時レベルの約15pmol/Lから食後ピークレベルの40pmol/Lまで上昇する。血漿グルコース濃度の所与の上昇につき、グルコースを経口投与した場合には、静脈内投与した場合と比較して血漿インスリンは約3倍増加する(Kreymannら、1987年、Lancet、第2(8571)巻:1300〜4頁)。インスリン放出のかかる消化増強効果は、インクレチン効果として公知で、主に体液性であり、またGLP−1は、今日、ヒトでの最も強力な生理的インクレチンと考えられている。GLP−1は膵臓β細胞中で発現していることが公知のGLP−1受容体に結合することにより、インスリンの産生を調節している。インスリン分泌促進作用のほか、GLP−1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃内容物排出を遅延させ(Wettergrenら、1993年、Dig Dis Sci、第38巻;665〜73頁)、また末梢グルコース処理を増大させ得る(D'Alessioら、1994年、J. Clin Invest、第93巻:2293〜6頁)。
【0053】
[0068] 作用が組み合わさることにより、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)を治療するために現在用いられているそのほかの薬剤に対して、GLP−1特有の治療上の長所がもたらされる。第1に、GLP−1を単回皮下投与すると、NIDDM患者の食後グルコースレベルを、完全に正常化することができる(Gutniakら、1994年、Diabetes Care、第17巻:1039〜44頁)。この効果は、インスリン放出量の増加、およびグルカゴン分泌量の低下の両方によって調節され得る。第2に、GLP−1を静脈内に輸液すると、NIDDM患者の食後胃内容物排出を遅延させることができる(Williamsら、1996年、J. Clin Endo Metab、第81巻:327〜32頁)。第3に、スルホニル尿素とは異なり、GLP−1のインスリン分泌促進作用は、血漿グルコース濃度に依存する(Holz etら、1993年、Nature、第361巻:362〜5頁)。したがって、血漿グルコース濃度が低下するとGLP−1媒介インスリン放出量が減少するので、重度の低血糖に陥るのを防ぐ。
【0054】
[0069] 健常者に投与すると、GLP−1は、血糖レベルのほか、インスリン濃度およびグルカゴン濃度(Orskov、1992年、Diabetologia、第35巻:701〜11頁)、グルコース依存性の効果(Weirら、1989年、Diabetes、第38巻:338〜342頁)に強く影響を及ぼす。さらに、GLP−1は糖尿病患者に有効であり(Gutniak, M.、1992年、N. Engl J Med、第226巻:1316〜22頁)、2型糖尿病患者の血糖レベルを正常化し、1型糖尿病患者の血糖管理を改善する(Nauckら、1993年、Diabetologia、第36巻:741〜4頁、Creutzfeldtら、1996年、Diabetes Care、第19巻:580〜6頁)。
【0055】
[0070] しかし、GLP−1は、代謝的に不安定で、血漿半減期(t1/2)は、in vivoでわずか1〜2分にすぎない。さらに、体外から投与されたGLP−1は、急速に分解もする(Deaconら、1995年、Diabetes、第44巻:1126〜31頁)。この代謝的不安定性は、天然型GLP−1の治療潜在能力を限定的なものにしている。
【0056】
[0071] GLP−1[7〜36]NHは、アミノ酸配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR(配列番号13)を有し、これは、本発明に基づくGLP−1成分として利用可能である。あるいは、GLP−1成分は、第2位にグリシン(G)を含み得、例えば、配列HGEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR(配列番号17)を与える。GLP−1成分は、例えば、米国特許第2007/0041951号に開示するようなGLP−1の生物学的に活性な断片であり得、同特許をそのまま本明細書において参考として援用する。GLP−1のそのほかの断片、および改変された配列が、当技術分野において公知である(米国特許第5,614,492号;同第5,545,618号;欧州特許出願公開第0658568 A1号;国際公開第93/25579号、これらをそのまま、本明細書において参考として援用する)。かかる断片、および改変された配列は、本発明のほか下記に記載されているものに関連して利用可能である。
【0057】
[0072] GLP−1の特定の構造的および機能的アナログが、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectumおよびHeloderma horridum)の毒液から単離され、臨床的有用性が示された。かかる分子は、本発明に基づき利用できることが分かる。特に、エキセンジン−4は、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の毒液から単離されたアミノ酸39残基からなるペプチドで、ヒトGLP−1と約52%の相同性を共有する。エキセンジン−4は、インスリンの放出を刺激し、これにより血糖レベルを低下させる、強力なGLP−1受容体作動薬である。エキセンジン−4は、アミノ酸配列:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号14)を有する。エキセナチド(exenatide)(Byetta(登録商標)として市販されている)として公知のエキセンジン−4の合成バージョンは、2型糖尿病を治療するために承認されている。エキセナチドは、天然型GLP−1の構造的アナログであるが、注入後の半減期は長い。
【0058】
[0073] エキセナチドは、それ自身血糖レベルを下げる能力を有するが、またそのほかの医薬品、例えば血糖管理を改善するメトホルミン、チオゾリジンジオン(thiozolidinedione)、スルホニル尿素、および/またはインスリンとの併用も可能である。エキセナチドは、事前充填済みのペン型デバイスを用いて、皮下注射により1日2回投与される。エキセナチドに対するヒトの典型的な反応として、内因性インスリンの初期迅速放出の改善、β−細胞の増殖および複製の増加、膵臓によるグルカゴン放出の抑制、胃内容物排出の遅延、および食欲の低下が挙げられ、これらはすべて血糖を下げるように働く。スルホニル尿素やメグリチニドとは異なり、エキセナチドは、グルコースが存在するときにのみ、インスリンの合成および分泌を増加させ、したがって低血糖のリスクを低下させる。エキセナチドは治療上有効であるものの、1日2回の注射を必要とすること、消化器系の副作用があること、および天然型GLP−1と同様に半減期が比較的短いこと(すなわち、約2時間)を含むある種の難点を有する。
【0059】
[0074] GLP−1およびエキセンジン−4の様々な機能的アナログが公知で、本発明に基づき利用できることが分かる。これらには、リラグルチド(Novo Nordisk、国際公開第98/008871号)、R1583/タスポグルチド(taspoglutide)(Roche、国際公開第00/034331号)、CJC−1131(ConjuChem、国際公開第00/069911号)、ZP−10/AVE0010(Zealand Pharma、Sanofi-Aventis、国際公開第01/004156号)、およびLY548806(Eli Lilly、国際公開第03/018516号)が含まれる。
【0060】
[0075] NN2211としても公知のリラグルチドは、1日1回注射用として設計されているGLP−1受容体作動薬アナログである(Harderら、2004年、Diabetes Care、第27巻:1915〜21頁)。リラグルチドは、2型糖尿病の患者を対象に、いくつかの試験でテストされ、様々な期間にわたり有効であることが示された。1つの試験では、リラグルチドを用いた治療は、1週間の治療後、2型糖尿病の患者において、血糖管理を改善し、β−細胞の働きを改善し、および内因性のグルコース放出を低下させた(Degnら、2004年、Diabetes、第53巻:1187〜94頁)。同様の試験では、0.6−mgリラグルチド治療を8週間行うと、プラセボの被験者と比較して、2型糖尿病の被験者では、体重増加を伴わないで血糖管理が顕著に改善した(Harderら、2004年、Diabetes Care、第27巻:1915〜21頁)。
【0061】
[0076] したがって、特定の実施形態では、本発明に基づくGLP−1受容体作動薬は、国際公開第98/008871号に記載の通りであり、その全体を本明細書において参考として援用する。GLP−1受容体作動薬は、天然型GLP−1に対する1つ、2つ、またはこれ以上のアミノ酸置換基に加えて、少なくとも1つの親油性置換基を有することができる。例えば、親油性置換基は、CH(CHCO−から選択されるアシル基であり得、nは4〜38、例えば4〜24の整数である。親油性置換基は、直鎖または分岐したアルキルまたは脂肪酸からなるアシル基であり得る(例えば、国際公開第98/008871号に記載されている通りであり、これを本明細書において参考として援用する)。
【0062】
[0077] 特定の実施形態では、GLP−1成分は、Arg26−GLP−1(7〜37)、Arg34−GLP−1(7〜37)、Lys36−GLP−1(7〜37)、Arg26,34Lys36−GLP−1(7〜37)、Arg26,34Lys38−GLP−1(7〜38)、Arg28,34Lys39−GLP−1(7〜39)、Arg26,34Lys40−GLP−1(7〜40)、Arg26Lys36−GLP−1(7〜37)、Arg34Lys36−GLP−1(7〜37)、Arg26Lys39−GLP−1(7〜39)、Arg34Lys40−GLP−1(7〜40)、Arg26,34Lys36,39−GLP−1(7〜39)、Arg26,34Lys36,40−GLP−1(7〜40)、GlyArg26−GLP−1(7〜37);GlyArg34−GLP−1(7〜37);GlyLys38−GLP−1(7〜37);GlyArg26,34Lys36−GLP−1(7〜37)、GlyArg26,34Lys39−GLP−1(7〜39)、GlyArg26,34Lys40−GLP−1(7〜40)、GlyArg26Lys36−GLP−1(7〜37)、GlyArg34Lys36−GLP−1(7〜37)、GlyArg26Lys39−GLP−1(7〜39);GlyArg34Lys40−GLP−1(7〜40)、GlyArg28,34Lys36,39−GLP−1(7〜39)、およびGlyArg26,34Lys35,40−GLP−1(7〜40)であり、それぞれ任意選択により親油性置換基を有する。例えば、GLP−1受容体作動薬は、配列/構造Arg34Lys26−(N−ε−(γ−Glu(N−α−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7〜37)を有し得る。
【0063】
[0078] R1583またはBIM51077としても公知のタスポグルチドは、メトホルミンで治療された2型糖尿病の被験者の血糖管理を改善し、体重を下げることが示されたGLP−1受容体作動薬である(Abstract No. A-1604、2008年6月7日、68th American Diabetes Association Meeting、San Francisco、CA)。
【0064】
[0079] したがって、特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、国際公開第00/034331号に記載されている通りであり、その全体を、本明細書において参考として援用する。ある典型的な実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、配列[Aib8,35]hGLP−1(7〜36)NH(例えば、タスポグルチド)を有し、Aibはα−アミノイソブチル酸である。
【0065】
[0080] CJC−1131は、GLP−1アナログであり、GLP−1が、皮下注射後に血清アルブミンと共有結合による不可逆的な結合を形成するのを可能にする反応性化学リンカー基と結合した、GLP−1のDPP−IV−抵抗形態からなる(Kimら、2003年、Diabetes、第52巻:751〜9頁)。12週間の、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照多施設試験で、CJC−1131およびメトホルミン治療は、2型糖尿病患者の空腹時血糖レベルの低下に有効であった(Ratnerら、Abstract No. 10-OR、2005年6月10〜14日、65th American Diabetes Association Meeting、San Francisco、CA)。
【0066】
[0081] したがって、特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、国際公開第00/069911号に記載の通りであり、その全体を本明細書において参考として援用する。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、血液成分のアミノ基、ヒドロキシル基、またはチオール基と反応して、安定な共有結合を形成する反応性基で改変される。特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、スクシンイミジル基およびマレイミド基からなる群から選択される反応性の基で改変される。ある典型的な実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、配列/構造:D−AlaLys37−(2−(2−(2−マレイミドプロピオンアミド(エトキシ)エトキシ)アセタミド))−GLP−1(7〜37)(例えば、CJC-1131)を有する。
【0067】
[0082] ZP−10としても公知のAVE0010は、本発明と関連して利用され得るGLP−1受容体作動薬である。最近行われた二重盲検試験では、AVE0010の1日1回の投与で治療された患者は顕著なHbA1cレベルの低下を示した(Ratnerら、Abstract No. 433-P、68th American Diabetes Association Meeting、San Francisco、CA.)。この試験の結論では、1日1回投与した場合のHbA1c<7%の患者の割合(%)は、プラセボの32%に比較して47〜69%の範囲であった。さらに、AVE0010で治療を受けた患者では、用量依存の体重減少および食後血漿グルコースの低下が認められた。
【0068】
[0083] したがって、特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、国際公開第01/004156号に記載の通りであり、その全体を本明細書において参考として援用する。例えば、GLP−1受容体作動薬は、配列:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPSKKKKKK−NH2(配列番号18)(例えば、AVE0010)を有し得る。
【0069】
[0084] LY548806は、ジペプチダーゼ−ペプチジルIV(DPP-IV)によるタンパク質分解に抵抗性であるように設計されたGLP−1誘導体である(Jacksonら、Abstract No. 562、2005年6月10〜14日、65th American Diabetes Association Meeting、San Francisco、CA)。高血糖の動物モデルでは、LY548806は、高血糖の段階において血糖値を顕著に低下させることが示された(Sahaら、2006年、J. Pharm. Exp. Ther.、第316巻:1159〜64頁)。さらに、LY548806は、公知の作用機序、すなわち高血糖の状況下で生ずるインスリン放出刺激に整合して、インスリンレベルを顕著に増加させることが示された。
【0070】
[0085] したがって、特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は国際公開第03/018516号に記載の通りであり、その全体を本明細書において参考として援用する。いくつかの実施形態では、本発明の治療剤はGLP−1アナログを含み、かかるアナログの骨格または断片は、第8位にアラニン以外のアミノ酸を含む(第8位アナログ)。当該骨格は、第7位にL−ヒスチジン、D−ヒスチジン、またはヒスチジンの修飾形態、例えばデサミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、β−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、α−フルオロメチル−ヒスチジン、またはα−メチル−ヒスチジンも含み得る。いくつかの実施形態では、かかる第8位アナログは、天然型GLP−1の対応するアミノ酸と比較して、第12、16、18、19、20、22、25、27、30、33、および37位に、1つまたは複数の追加の変更を含み得る。別の実施形態では、かかる第8位アナログは、天然型GLP−1の対応するアミノ酸と比較して、第16、18、22、25、および33位に、1つまたは複数の追加の変更を含み得る。ある典型的な実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、配列:HVEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLIKGRG−OH(配列番号19)(例えば、LY548806)を有する。
【0071】
[0086] したがって、本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)およびGLP−1受容体作動薬を含む治療剤を提供する。例えば、特定の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、GLP−1(配列番号13、17、または59)またはその機能的アナログである。別の実施形態では、GLP−1受容体作動薬は、エキセンジン−4(配列番号14)またはその機能的アナログである。GLP−1のかかる機能的アナログまたはエキセンジン−4は、1、2、3または最大約5個分のアミノ酸を含む1〜10個分のアミノ酸がC末端で短縮された機能的断片を含む(配列番号13、14、17、または59に関して)。かかる機能的アナログでは、天然型の配列(例えば、配列番号13、14、および59)を基に、1〜10個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)含むことができ、またそれぞれの場合、ペプチドの活性を維持している。例えば、GLP−1またはエキセンジン−4の機能的アナログでは、配列番号13、59、および14を基に1〜約3、4、または5個の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)有することができ、またそれぞれの場合、ペプチドの活性を維持している。かかる活性は、本明細書に記載するものを含め、任意の利用可能な分析法を用いて確認または分析することができる。かかる実施形態またはそのほかの実施形態では、GLP−1受容体作動薬成分は、天然型配列(配列番号13、59、および14)と、少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。2つの配列間(例えば、天然型配列と機能的アナログとの間)の配列同一性は、Tatusovaら、「Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」、FEMS Microbiol Lett、第174巻:247〜250頁(1999年)を含む、任意の位置合わせツールを用いて決定することができる。かかる機能的アナログは、追加の化学修飾物、例えば本セクションに記載するものおよび/または当技術分野で公知のそのほかものを、さらに含み得る。
【0072】
[0087] 特定の実施形態では、GLP1−ELP融合体は、本明細書で配列番号54および56として例示されている配列を有する。処理されると、かかる融合タンパク質の成熟形態は、GLPのHisから始まる。
【0073】
[0088] 別の態様では、本発明は、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、高血糖、肥満、過食症、多食症、高血圧、シンドロームX、脂質異常症、認知障害、アテローム性動脈硬化症、非脂肪性肝疾患、心筋梗塞、冠動脈性心疾患、およびそのほかの心血管系障害を治療または予防するための方法を提供する。当該方法は、エラスチン様ペプチド(ELP)およびGLP−1受容体作動薬(上記のような)を含む治療剤を、かかる治療を必要とする患者に投与する工程を含む。かかる実施形態またはそのほかの実施形態では、本発明は、食物摂取量を低減し、β−細胞アポトーシスを抑制し、β−細胞機能およびβ−細胞重量を増加させる、および/またはβ−細胞にグルコース感受性を復活させるための方法を提供する。一般的に、患者はヒトであってもよく、またヒト以外の動物患者(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、またはウマ)であってもよい。好ましくは、当該患者はヒトである。
【0074】
[0089] 本発明に基づくELP/GLP−1受容体作動薬化合物による治療は、1つまたは複数の薬理学的に活性な物質、例えば抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲調節薬、抗高血圧薬、糖尿病に関連して引き起こされた合併症を治療および/または予防するための薬剤、および肥満に関連して引き起こされた合併症および障害を治療および/または予防するための薬剤と併用することもできる。本明細書の文脈において、「抗糖尿病薬」の表現には、インスリン抵抗性、およびインスリン抵抗性が病態生理学的機序である疾患を治療および/または予防するための化合物が含まれる。
【0075】
[0090] GLP−1もしくはエキセンジン−4アナログ、またはGLP−1受容体作動薬/ELP化合物が、GLP−1受容体に結合する能力は、標準的な方法により決定可能で、例えば、細胞表面上にGLP−1受容体を発現する適当な細胞、例えばRINmSF細胞またはINS−1細胞等のインスリノーマ細胞株を提供する工程を含む、受容体結合活性スクリーニング法により決定することができる。ラジオイムノアッセイ法を用いて、トレーサーの膜への特異的な結合を測定することができるが、これに加えてcAMP活性またはグルコース依存性インスリン生成も測定することができる。1つの方法では、細胞に核酸導入してこれによりGLP−1受容体タンパク質を発現させるために、GLP−1受容体をコードするポリヌクレオチドを利用する。したがって、かかる方法は、GLP受容体作動薬候補が活性かどうかを試験し、または確認するために利用可能である。典型的な分析法を本明細書においてさらに詳細に記載する。
【0076】
[0091] さらに、公知の方法が、GLP−1受容体作動薬またはGLP−1受容体作動薬/ELPの生物学的活性レベルを、in vivoで測定または予測するために利用可能である(例えば、Siegelら、1999年、Regul Pept、第79巻(2〜3):93〜102頁を参照されたい)。特に、GLP−1受容体作動薬またはGLP−1受容体作動薬/ELP化合物について、GLP−1活性を測定するための様々な公知の分析法を用いて、in vivoでインスリン生成を誘発するかかる作動薬または化合物の能力を評価することができる。例えば、ELP/GLP−1受容体作動薬化合物は、不死化β−細胞等の細胞に導入可能であり、得られた細胞はグルコースと接触することができる。かかる細胞が、グルコースに応答してインスリンを生成すると、次いでin vivoで生物学的に活性と考えられる、改変されたGLP−1が生み出される(Fehmannら、1992年、Endocrinology、第130巻:159〜166頁)。典型的な分析法を、本明細書でさらに詳細に記載する。
【0077】
[0092] GLP−1受容体作動薬/ELP化合物が、β−細胞の増殖を増強し、β−細胞のアポトーシスを阻害し、および膵島成長を調節する能力も、公知の分析法を用いて測定することができる。膵臓β−細胞の増殖は、H−チミジン、またはBrdUの取込み分析法により評価可能であり(例えば、Buteauら、2003年、Diabetes、第52巻:124〜32頁を参照されたい)、この分析法では、INS(832/13)細胞等の膵臓β−細胞は、ELP/GLP−1受容体作動薬化合物と接触し、H−チミジン、またはBrdUの取込み量の増加について分析される。ELP/GLP−1受容体作動薬化合物の抗アポトーシス活性は、培養インスリン分泌細胞中で、および/またはβ−細胞のアポトーシス発生率が過剰となった結果、糖尿病を発症している動物モデル内で測定可能である(例えば、Bulottaら、2004年、C Biochem Biophys、第40巻(3 suppl):65〜78号を参照)。
【0078】
[0093] GLP−1のほか、当該ファミリーのそのほかのペプチド、例えばプロ−グルカゴン遺伝子のプロセシングから誘導されたもの等、例えばGLP−2、GIP、およびオキシントモジュリン等も、治療潜在能力を増強するためにELP成分(本明細書に記載のような)に結合または融合可能と考えられる。
【0079】
インスリン
[0094] 別の実施形態では、本発明は、インスリンと結合した(例えば、融合または結合による)ELP成分を含む治療剤を提供する。糖尿病を治療するために、インスリン注射、例えばヒトインスリン注射が利用可能である。体内のインスリン産生細胞はβ−細胞と呼ばれ、同細胞は膵臓分泌腺中に見出される。これらの細胞は、共に凝集して「ランゲルハンス島」を形成するが、「ランゲルハンス」は、これを説明したドイツ人医学生の名に由来する。
【0080】
[0095] インスリン合成は、第11番染色体上に存在するインスリン遺伝子の翻訳に始まる。翻訳の際には、110アミノ酸長のタンパク質をコードする2つのイントロンがmRNA産物から切り出される。かかる一次翻訳産物は、プレプロインスリンと呼ばれ、活性を有さない。これは、細胞膜を通過するために当該タンパク質に必要とされる、24アミノ酸長からなるシグナルペプチドを含む。
【0081】
[0096] プレプロインスリンが小胞体に到達すると、プロテアーゼはシグナルペプチドを切断してプロインスリンを生み出す。プロインスリンは3つのドメインからなる:アミノ末端B鎖、カルボキシル末端A鎖、およびC−ペプチドとして公知の中央に位置する結合ペプチドである。インスリンは、2個のジスルフィド架橋により互いに結び付けられたA鎖(21個のアミノ酸−GIVEQCCASVCSLYQLENYCN)(配列番号15)、およびB鎖(30個のアミノ酸−FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKA)(配列番号16)と命名されたアミノ酸からなる2本の鎖から構成される。A鎖中には、A鎖の第6残基と第11残基を結び付けるA鎖内の第3のジスルフィド架橋がある。ほとんどの種では、A鎖およびB鎖の長さおよびアミノ酸組成は類似しており、3つのジスルフィド結合の位置は、極めて保存的である。このような理由から、ブタインスリンは、糖尿病患者の不足したヒトインスリンレベルに置き換わることができる。今日、ブタインスリンは、その多くが、細菌によるヒトプロインスリン(遺伝子組換え型インスリン)の大量生産に取って代わられている。
【0082】
[0097] インスリンは、溶液中で二量体を形成する傾向を有し、亜鉛イオンの存在下では、インスリン二量体は六量体に会合する。インスリンの単量体は血液に容易に拡散し、即効性を有するが、六量体は徐々に拡散し、作用の発現は遅延的である。遺伝子組換え型インスリンの設計において、インスリンの構造は、インスリン分子が二量体や六量体を形成する傾向が低減するような、ただし、インスリン受容体への結合を阻害しないようなやり方で改変され得る。このように、短期的作用から長期的作用まで変化した様々な製剤が作製される。
【0083】
[0098] 小胞体中では、プロインスリンは、C−ペプチドを除去するいくつかの特異的なペプチダーゼに暴露され、成熟した活性型のインスリンを生み出す。ゴルジ装置中では、インスリンとフリーのC−ペプチドは分泌顆粒中に詰め込まれ、同顆粒はβ−細胞の細胞質内に蓄積する。顆粒の開口分泌は、β−細胞内へのグルコースの進入が契機となって引き起こされる。インスリン分泌は、代謝に対して多大な影響力を有する。
【0084】
[0099] グルコースの上昇に応答した、2段階のインスリン放出が存在する。第1は、インスリンの速やかな放出である。これは、分泌顆粒に貯蔵されている、処理済みのインスリンの放出に起因する。少し遅れて、第2の、より持続性のある新規合成インスリンの放出がある。
【0085】
[0100] 一旦放出されると、酵素により分解される前の、ほんの短い時間だけ活性となる。肝臓および腎臓中に見出されるインスリナーゼは、血漿中を循環するインスリンを分解し、その結果インスリンは、わずか約6分の半減期しか有さない。この短期間の作用は、インスリンの循環レベルに急速な変化をもたらす。
【0086】
[0101] 改善した治療特性を有するインスリンアナログが開発されており(Owensら、2001年、Lancet、第358巻:739〜46頁;Vajoら、2001年、Endocr Rev、第22巻:706〜17頁)、かかるアナログを、本発明に関連して利用することができる。インスリンB鎖のCOOH末端延長、およびアルブミンに対して極めて高い親和性を有する脂肪酸−アシル化インスリンの遺伝子工学的な設計を含む、様々な戦略が、長期作用性インスリンアナログを生み出すために用いられる。しかし、利用可能な長期作用性インスリン化合物を用いてin vivoで治療した場合、低血糖および高血糖となる過剰反応が、なおも高頻度で引き起こされ、またHbA1cの低下も中程度である。したがって、真に長期作用性で、安定なヒトインスリンアナログを開発することは、依然重要な課題として残る。
【0087】
[0102] 本発明に基づき利用可能なインスリンの機能的アナログとして、リスプロ(lispro)、アスパート(aspart)、およびグルリシン(glulisine)等の即効性アナログが挙げられ、これらは、皮下注射後迅速に吸収され(<30分)、1時間でピークに達し、また比較的短い作用時間(3〜4時間)を有する。さらに、2種類の長期作用性インスリンアナログ、グラルギン(glargine)およびデテミル(detemir)が開発されたが、これらは本発明に関連して利用可能である。長期作用性のインスリンアナログは、作用が発現するまで約2時間かかり、4〜6時間で生物学的作用が頭打ちとなり、最長24時間持続し得る。
【0088】
[0103] したがって、1つの実施形態では、インスリン成分は、リスプロ(Eli Lillyのフマログ(Humalog)としても公知)のA鎖および/またはB鎖を含み得る。インスリンリスプロは、ヒトインスリンと異なり、インスリンB鎖の第28位のプロリンがリジンで置換され、第29位のリジンがプロリンで置換されている。かかる改変は、受容体結合に変化をもたらさないが、インスリン二量体および六量体の形成を阻止するのに役立っており、食後注射でより多量の活性インスリン単量体の利用を可能にしている。
【0089】
[0104] 別の実施形態では、インスリンはアスパート(Novo Nordiskのノボログ(Novolog)としても公知)のA鎖および/またはB鎖を含み得る。インスリンアスパートは、ヒトインスリンB鎖の第28位で、プロリンがアスパラギン酸にアミノ酸が単一置換するように設計されている。かかる改変はインスリンの六量体形成を阻止するのに役立ち、迅速作用性のインスリンを生み出している。
【0090】
[0105] なおも別の実施形態では、インスリンは、グルリシン(Sanofi-Aventisのアピドラ(Apidra)としても公知)のA鎖および/またはB鎖を含み得る。インスリングルリシンは、ヒトインスリンB鎖の第3位のアスパラギンをリジンに、第29位のリジンをグルタミンに置換することにより生み出された、短期作用性アナログである。インスリングルリシンは、通常のヒトインスリンよりも作用発現が迅速で、また作用期間は短い。
【0091】
[0106] 別の実施形態では、インスリンは、グラルギン(Sanofi-Aventisのランタス(Lantus)としても公知)のA鎖および/またはB鎖を含み得る。インスリングラルギンは、A鎖の第21位のアミノ酸アスパラギンがグリシンに置換されており、B鎖のC末端に2個のアルギニンが付加されている点で、ヒトインスリンと異なる。就寝時に用いるプロタミン含有中間型(NPH)インスリン(中程度に作用するインスリン)と比較して、インスリングラルギンは、2型糖尿病の患者に生ずる夜間低血糖との関連性は低い。
【0092】
[0107] なおも別の実施形態では、インスリンは、デテミル(Novo Nordiskのレベミル(Levemir)としても公知)に由来するA鎖および/またはB鎖を含み得る。インスリンデテミルは、可溶性(中性pHで)の長期作用性インスリンアナログであり、同アナログでは、B30のアミノ酸であるトレオニンが除去され、LysB29のε−アミノ基に、炭素14個からなるミリストイル脂肪酸がアセチル化されている。皮下注射後、デテミルは解離し、これによりアルブミン分子との可逆的結合を可能にするフリーの脂肪酸が露出される。したがって、定常状態では、フリーの非結合インスリン濃度は大幅に低減して、安定な血漿グルコースレベルを実現する。
【0093】
[0108] いくつかの実施形態では、インスリンは1本鎖インスリンアナログ(SIA)であり得る(例えば、第6,630,438号、および国際公開第08/019368号に記載の通りで、これらをそのまま、本明細書において参考として援用する)。1本鎖インスリンアナログには、A鎖およびB鎖がポリペプチドリンカーによって共有結合している構造的に関連したタンパク質の一群が含まれる。当該ポリペプチドリンカーは、B鎖のC末端をA鎖のN末端に連結する。SIAが、グルコースの取込み作用、およびインスリン受容体結合作用を有するのに必要な構造的配置を、当該リンカーが提供する限り、当該リンカーは任意の長さであってよい。いくつかの実施形態では、リンカーは約5〜18アミノ酸長である。別の実施形態では、リンカーは、9〜15アミノ酸長である。特定の実施形態では、リンカーは約12アミノ酸長である。ある典型的な実施形態では、リンカーは、配列KDDNPNLPRLVR(配列番号20)、またはGAGSSSRRAPQT(配列番号21)を有する。ただし、本配列の多くの変形形態が、例えば長さ(追加または除去の両方で)、および生み出されたSIAが、グルコースの取込みおよびインスリン受容体結合活性について有する有効性を実質的に損なわないアミノ酸の置換等において可能であると理解すべきである。例えば、生み出されたSIAの活性を実質的に低下させずに、数個の異なるアミノ酸残基をいずれかの端部において追加、除去することができる。
【0094】
[0109] 現在臨床開発段階にある典型的な1本鎖インスリンアナログとして、アルブリン(albulin)が挙げられる(Duttaroyら、2005年、Diabetes、第54巻:251〜8頁)。アルブリンは、酵母菌中または哺乳動物細胞中で産生可能である。これは、ドデカペプチドリンカーにより互いに連結され、天然型ヒト血清アルブミンのNH末端に融合した、ヒトインスリンのB鎖およびA鎖からなる(天然型ヒトインスリンと100%の同一性を有する)。アルブリンを発現および精製する場合、Duttaroyらは、4つのオーバーラッピングプライマーとPCR増幅法を用いて、ドデカペプチドリンカーにより互いに連結したヒト成熟インスリンB鎖およびA鎖を含む、1本鎖インスリンをコードする合成遺伝子構築物を構築した。得られたPCR産物は、ヒト血清アルブミン(HSA)のシグナルペプチドと、成熟HSAのNH末端との間にインフレームでライゲートされ、酵母菌中で発現させるためにpSAC35ベクター中に組み込まれた。本発明に基づけば、アルブリンのHSA成分は、本明細書に記載のELP成分と置き換え可能である。
【0095】
[0110] したがって、1つの態様では、本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)およびインスリンまたはその機能的アナログを含む治療剤を提供する。例えば、特定の実施形態では、インスリンは、ヒトインスリンまたはブタインスリン等の哺乳動物インスリンである。本発明に基づけば、ELP成分はインスリンA鎖もしくはB鎖、または両方に結合され得る(例えば、遺伝子組換え融合、または化学結合による)。インスリンはA、B、およびC鎖(配列番号51および52)のそれぞれを含むことができ、またA鎖およびB鎖のみを含む、処理済みの形態を含むこともできる。いくつかの実施形態では、A鎖およびB鎖は短いリンキングペプチドで連結され、1本鎖インスリンを形成する。インスリンは、ヒトインスリンの機能的アナログであり得、これには、1、2、3、または約5個のアミノ酸を含む1〜10個のアミノ酸がN末端および/またはC末端(A鎖およびB鎖のいずれか一方、または両方の)で切り離された機能的断片が含まれる。機能的アナログは、天然型配列(例えば、配列番号15および16)を基に1〜10個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)、それぞれの場合において、ペプチドの活性を維持しながら含み得る。例えば、機能的アナログは、天然型配列(これは、A鎖およびB鎖、またはA鎖、B鎖およびC鎖を含み得る)を基に、1、2、3、4、または5個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)有し得る。かかる活性は、本明細書に記載する方法を含む任意の利用可能な分析法を用いて確認または分析可能である。かかる実施形態またはそのほかの実施形態では、インスリン成分は、A鎖およびB鎖について各天然型配列(配列番号15および16)と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、または98%の同一性を有する。2種類の配列間(例えば、天然型配列と機能的アナログとの間)の配列同一性は、Tatusovaら、Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences、FEMS Microbiol Lett、第174巻:247〜250頁(1999年)を含む、任意の位置合わせツールを用いて決定可能である。インスリン成分は、当技術分野で公知のさらなる化学修飾を含み得る。
【0096】
[0111] 別の態様では、本発明は1型および2型糖尿病を含む、糖尿病を治療または予防するための方法を提供する。当該方法は、エラスチン様ペプチド(ELP)成分、およびインスリン(またはその機能的アナログ)成分を含む治療剤の有効量を、これを必要とする患者に投与する工程を含む。一般的には、患者はヒトであっても、またヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、またはウマ)の患者であってもよい。好ましくは、患者はヒトである。
【0097】
[0112] インスリンアナログまたはELP含有インスリンアナログのin vitro結合特性を特徴づけるために、インスリン受容体を発現する様々な細胞株内で、競合結合分析法を実施することができる(Jehleら、1996年、Diabetologia、第39巻:421〜432頁)。例えば、ヒトインスリン受容体を過剰発現するCHO細胞を用いた競合結合分析法を採用することができる。インスリンは、インスリン受容体よりも弱い親和性を有するIGF−1受容体にも結合可能である。ELP含有インスリンアナログの結合親和性を決定するために、125I標識IGF−1を用いて、L6細胞中で競合結合分析法を実施することができる。
【0098】
[0113] インスリン活性には、末梢グルコース処理、および肝臓グルコース産生阻害が含まれる。上記生物学的活性を調節するELP含有インスリンアナログの能力は、公知の方法を用いてin vitroで分析可能である。例えば、ELP含有アナログが3T3−L1含脂肪細胞中でのグルコースの取込みに与える効果について測定することが可能で、またインスリンの同効果と比較可能である。生物学的に活性なアナログで細胞を前処理すると、一般的に、2−デオキシグルコースの取込み増加が用量に依存して引き起こされる。ELP含有インスリンアナログがグルコース産生を調節する能力は、任意の数の細胞型、例えばH4IIeヘパトーマ細胞内で測定可能である。かかる分析では、生物学的に活性なアナログで前処理すると、一般的に、グルコース放出量阻害が用量に依存して引き起こされる。
【0099】
第VII(VIIa)因子
[0114] 特定の実施形態では、本発明は、第VII/VIIa因子と結合(例えば、融合または結合による)したELP成分を含む治療剤を提供する。凝固は、多くの異なるセリンプロテアーゼのほか、その必須補助因子および阻害剤が関与する、血液凝固物形成の生物学的プロセスである。凝固は、第VII因子(FVII)および第VIIa因子(FVIIa)が、膜結合補助因子である組織因子(TF)に暴露されることにより開始し、第Xa因子(FXa)、およびさらなるVIIaの産生を引き起こす。当該プロセスは、第IXa因子(FIXa)およびさらなるFXaの産生に乗じて伝播し、これらの因子は、その補助因子であるFVIIIaおよびFVaと結合すると、血小板結合複合体を形成し、最終的にトロンビンおよびフィブリン塊の形成を引き起こす。トロンビンは、FVおよびFVII等の補助因子、ならびに第XI因子等のチモーゲンの活性化による凝固をさらに増幅する機能も果たす。さらにトロンビンは、血小板を活性化して止血血栓形成に必要な血小板凝集を引き起こす。
【0100】
[0115] 第VII因子はチモーゲン形態で血液中を循環し、第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、またはトロンビンのいずれかにより、軽微なタンパク質分解を受けてその活性形態である第VIIa因子に変換される。第VIIa因子は、2本鎖、50キロダルトン(kDa)の血漿セリンプロテアーゼである。この酵素の活性形態は、触媒ドメインを含む重鎖(254個のアミノ酸残基)、および2つの上皮細胞増殖因子(EGF)−様ドメインを含む軽鎖(152個の残基)を含む。血漿中を循環する成熟した第VII/VIIa因子は、406個のアミノ酸残基(配列番号33)から構成される。軽鎖および重鎖はジスルフィド結合により共に保持されている。
【0101】
[0116] 上記の通り、第VIIa因子は、1つのペプチド結合がタンパク質分解を受けることにより、その1本鎖チモーゲンである第VII因子から生み出され、これは血漿中に約0.5μg/mlで存在する。チモーゲンの第VII因子から活性型の2本鎖分子への変換は、分子内ペプチド結合の切断によって生ずる。ヒト第VII因子では、切断部位は、Arg152−Ile153である(Hagenら、1986年、PNAS USA 、第83巻:2412〜6頁)。
【0102】
[0117] 本出願で用いる場合、「第VII/VIIa因子」とは、非活性型(第VII因子)または活性型(第VIIa因子)のいずれか、またはこれらの混合物からなる生成物を意味する。上記定義範囲内の「第VII/VIIa因子」には、ヒト天然型第VII/VIIa因子のアミノ酸配列を有するタンパク質も含まれる。かかるタンパク質が実質的に第VIIa因子の活性を保持する限り、第VII/VIIa因子には、若干改変されたアミノ酸配列、例えばN末端アミノ酸の削除または追加を含む、改変されたN末端も含まれる。上記定義範囲内の「第VII因子」には、個体に存在し、また個体から個体に生じ得る天然の対立遺伝子変異も含まれる。また、グリコシル化またはそのほかの翻訳後修飾の程度と場所は、選択された宿主細胞、および宿主細胞環境の性質に依存して変化し得る。
【0103】
[0118] カルシウムイオンの存在下で、第VIIa因子は高い親和性を伴いTFに結合する。TFは263個のアミノ酸残基からなる糖タンパク質で、219残基の細胞外ドメイン、1本鎖膜貫通ドメイン、および短い細胞質ドメインから構成される(Morrisseyら、1987年、Cell、第50巻:129〜35頁)。TFの細胞外ドメインは、それぞれ約105個のアミノ酸からなる2つのフィブロネクチンタイプIIIドメインから構成される。FVIIaの結合は、TFの細胞外ドメインによって完全に制御されている(Mullerら、1994年、Biochem.、第33巻:10864〜70頁)。アミノ酸16〜26、およびアミノ酸129〜147の領域内の残基が、FVIIaの結合ならびに分子の凝固機能に寄与している。残基Lys20、Trp45、Asp58、Tyr94、およびPhe140は、FVIIa結合自由エネルギー(△G)に大いに寄与(1kcal/mol)している。
【0104】
[0119] TFは、血管内皮によって血漿から分離された細胞上で、構成的に発現されている。内皮細胞および単球上でのTFの発現は、炎症性サイトカインまたは細菌性リポ多糖への暴露によって誘発される(Drake ら、1989年、J. Cell Biol.、第109巻:389頁)。組織が損傷して、TFの細胞外ドメインが露出すると、高親和性でカルシウム依存性のFVIIとの複合体を形成する。FVIIは、TFと一旦結合するとペプチド結合の切断によって活性化可能となり、セリンプロテアーゼFVIIaを生成する。in vivoでかかる工程を触媒する酵素は、まだ明らかになっていないが、in vitroでは、FXa、トロンビン、TF:FVIIa、およびFIXaがこの切断を触媒することができる。FVIIaは、その生理的な基質であるFXおよびFIXに対して弱い活性しか有さないが、TF:FVIIa複合体はFXおよびFIXを迅速に活性化する。
【0105】
[0120] TF:FVIIa複合体は、血液凝固の外因経路において主たる開始剤の役目を果たす。当該複合体は、FXから第Xa因子(FXa)、FIXから第IXa因子(FIXa)、およびさらにFVIIからFVIIaに活性化することにより、外因経路を開始する。TF:FVIIaの作用は、最終的にプロトロンビンから多くの生物学的機能を担うトロンビンへの変換を引き起こす。トロンビンの最も重要な活性の中でも、特に重要なのは、フィブリノゲンからフィブリンへの変換であり、フィブリンは重合して凝血塊を形成する。TF:FVIIa複合体は、接触活性化系の生理作用の伝播において、二次因子としても関与する。
【0106】
[0121] 止血の維持は生存上重要なので、凝固の開始とその後の調節は複雑である。止血(正常な血栓形成および溶解)と血栓形成(病原性血栓形成)との間には絶妙なバランスが存在する。凝固異常が関与する重篤な臨床症状として、深部静脈血栓症、心筋梗塞、肺塞栓症、脳卒中、および播種性血管内凝固症候群(敗血症における)が挙げられる。血栓形成が不十分な、多くの出血性血液凝固障害も存在する。かかる障害として、凝固促進療法を必要とする血友病A(FVIIIの欠損)、または血友病B(FIXの欠損)が挙げられる。かかる治療分野の課題は、過剰凝固と過少凝固との間のウィンドウが狭く、この狭いウィンドウ内で治療を管理することにある。
【0107】
[0122] 治療剤として外因性FVIIaを使用すると、血友病AおよびBの患者で止血が誘発されることが明らかにされた(Hedner、2001年、Seminars Hematol.、第38巻(suppl. 12):43〜7頁;Hedner、2004年、Seminars Hematol.、第41巻(suppl. 1):35〜9頁)。これも、肝臓疾患、抗凝固剤誘発性出血、手術、血小板減少症、血小板無力症、ベルナール・スーリエ症候群、フォン・ヴィレブランド病、およびそのほかの出血異常を有する患者の出血を治療するために利用されてきた(例えば、Robertsら、2004年、Blood、第104巻:3858〜64頁を参照)。
【0108】
[0123] 遺伝子組換え型ヒトFVIIaの市販製剤が、NovoSeven(商標)として販売されている。NovoSeven(商標)は、血友病AまたはB患者の出血エピソードを治療するために適応され、現在入手可能であって、出血エピソードに有効である唯一の遺伝子組換え型FVIIaである。遺伝子組換え型FVIIaの循環半減期は2.3時間であることが、「Summary Basis for Approval for NovoSeven(商標)」、FDA参照番号96−0597で報告された。さらに、遺伝子組換え型FVIIaの半減期は、小児患者においてより短く(約1.3時間)、かかる母集団では、より高い用量の遺伝子組換え型FVIIaが必要となり得ることを示唆している(Robertsら、2004年、Blood、第104巻:3858〜64頁)。したがって、所望の治療効果または予防効果を実現し、維持するためには、比較的高用量、および頻繁投与を必要とする。その結果、適切に用量調節するのは困難であり、また静脈内投与を頻繁に行う必要があるので、患者の生活パターンは制約を受ける。
【0109】
[0124] 分子の循環半減期がより長ければ、必要投与回数は低減すると考えられる。現在利用可能なFVIIa療法では高頻度の投与が関連していること、および強化された治療効果と併用すれば、さらに最適なFVIIa治療レベルが得られる可能性があることを考慮すれば、in vivoで半減期が延長された、改善型のFVIIまたはFVIIa様分子に対するニーズが明らかに存在する。
【0110】
[0125] 遺伝子組換え型ヒト凝固因子VIIa(rFVIIa、NovoSeven;Novo Nordisk A/S、コペンハーゲン、デンマーク)は、阻害剤と併用して、血友病患者の出血エピソードを治療するのに有効であることが立証されている。ごく一部の患者は、rFVIIa治療から効果を得られない場合もあるが、効能が強化された遺伝子的に改変されたFVIIa分子からは、おそらくベネフィットが得られると考えられる。そのために、in vitroで優れた止血プロフィールを示す、固有活性が増大したFVIIaアナログについて調査されてきた(例えば、国際公開第02/077218号または同第05/074975号が参照されるが、これらをそのまま本明細書において参考として援用する。およびTranholmら、2003年、Blood、第102巻(10):3615〜20頁。これも参考として援用する)。かかるアナログは、血小板減少症および外傷を含むrFVIIaの効果が認められたそのほかの適応においても、より効果的な止血剤として利用可能である。
【0111】
[0126] したがって、いくつかの実施形態では、本発明に基づき利用可能な第VIIa因子アナログは、国際公開第02/077218号、または同第05/074975号に記載の通りである。例えば、FVIIaアナログは、第298位のメチオニンと置換したグルタミンを有する(すなわち、M298Q-FVlla)。ある典型的な実施形態では、FVIIaアナログは、第158位のバリンがアスパラギン酸に置換し、第296位のグルタミン酸がバリンに置換した、2個の追加の変異を含む(すなわち、V158D/E296V/M298Q-FVlla)。追加的に、または二者択一的に、第VIIa因子アナログは、第337位でリジンと置換したアラニン残基を有し得る(すなわち、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVIIa)。なおも別の実施形態では、第VIIa因子アナログは、Q250C;P406C;および407Cから選択される置換または挿入を有し、この場合にはシステインがC末端配列にも導入された(例えば、米国特許第7,235,638号が参照されるが、その全体を本明細書において参考として援用する)。第VIIa因子アナログは、第247位、260位、393位、396位、および/または405位の1つまたは複数の位置で、置換または挿入をさらに含み得る。
【0112】
[0127] かかる実施形態またはそのほかの実施形態において、第VIIa因子アナログは、天然型第VIIa因子の配列との比較において下記より選択される置換を含む:(a)Lys157が、Gly、Val、Ser、Thr、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸に代わる置換、(b)Lys337がAla、Gly、Val、Ser、Thr、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸に代わる置換、(c)Asp334が、AlaまたはAsn以外の任意のアミノ酸に代わる置換、および(d)Ser336が、AlaまたはCys以外の任意のアミノ酸に代わる置換(例えば、米国特許第7,176,288号が参照されるが、その全体を本明細書において参考として援用する)。追加的に、または二者択一的に、第VIIa因子アナログは、第VII因子の第305位のLeuが、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、およびGlnからなる群より選択されるアミノ酸残基に代わる置換を含む(例えば、米国特許第6,905,683号が参照されるが、その全体を本明細書において参考として援用する)。
【0113】
[0128] したがって、1つの態様では、本発明は、エラスチン様ペプチド(ELP)、および第VII/VIIa因子またはその機能的アナログを含む治療剤を提供する。例えば、特定の実施形態では、第VII/VIIa因子は、ヒト第VII/VIIa因子である(例えば、配列番号33)。第VII/VIIa因子は、ヒト第VII/VIIa因子の機能的アナログであり得、これには、1、2、3、または約5個のアミノ酸を含む1〜10個のアミノ酸がN末端および/またはC末端で切り離された機能的断片が含まれる。機能的アナログは、天然型配列(例えば、配列番号33)を基に1〜10個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)、それぞれの場合において、ペプチドの活性を維持しながら含み得る。例えば、かかるアナログは、天然型の全長配列または重鎖もしくは軽鎖の一方またはその両方を基に、1〜約5個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)有し得る。かかる活性は、本明細書に記載する方法を含む任意の利用可能な分析法を用いて確認または分析可能である。かかる実施形態またはそのほかの実施形態では、第VII/VIIa因子成分は、天然型配列(配列番号33)と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、または98%の同一性を有する。2種類の配列間(例えば、天然型配列と機能的アナログとの間)の配列同一性は、Tatusovaら、Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences、FEMS Microbiol Lett、第174巻:247〜250頁(1999年)を含む、任意の位置合わせツールを用いて決定可能である。
【0114】
[0129] 典型的な実施形態では、第VII因子−ELP融合体は、配列番号58のアミノ酸配列を有する。配列番号58は、望む場合には、第VII因子配列とELP配列との間に、TEVプロテアーゼ切断部位をさらに含み、これは発現後にELP配列を除去するのに有用であり得る。しかし、本発明に基づき、当該tev配列はすべて除去可能であり、または本明細書に開示される別の連結配列と置換可能である。
【0115】
[0130] 別の態様では、本発明は出血関連障害を治療または予防するための方法を提供する。当該方法は、エラスチン様ペプチド(ELP)および第VII/VIIa因子またはその機能的アナログを含む治療剤の有効量を、これを必要とする患者に投与する工程を含む。特定の実施形態では、出血関連障害として、血友病(AまたはB)、術後出血、抗凝固剤誘発性出血、血小板減少症、第VII因子欠乏症、第XI因子欠乏症、肝臓疾患、血小板無力症、ベルナール・スーリエ症候群、フォン・ヴィレブランド病の患者の出血、および頭蓋内出血のうちの1つまたは複数が挙げられる。一般的に、患者はヒト、またはヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、またはウマ)の患者である。好ましくは、当該患者はヒトである。
【0116】
[0131] 第VII/VIIa因子アナログ候補、またはELP含有第VIIa因子アナログのin vitroでの結合特性を特徴づけるために、TF結合分析をこれまでに記載したように実施することができる(例えば、Chaingら、1994年、Blood、第83巻(12):3524〜35頁を参照)。端的に述べれば、遺伝子組換え型ヒトTFは、4℃、一晩、カーボネート抗原バッファー中で、Immulon IIプレート上にコーティング可能である。BSAも、コントロール用として同プレート上にコーティング可能である。ELP含有第VIIa因子アナログは、様々な濃度でTBS−Tバッファー中に添加可能である。数回洗浄後、単一特異的ポリクロナールのウサギ抗ヒトFVIIa血清を添加し、約1時間、室温でインキュベーションする。次に、アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗ウサギIgGを添加し、次に検出用に用いられるアルカリホスファターゼ基質PNPPを添加する。バックグラウンドを差し引いたのち、第VIIa因子が固定化されたTFと結合する程度に関して直接的に比例関係にある約405nmにおける吸収を求める。次に、かかる数値は、第VIIa因子を含有するコントロール血漿と比較可能である。
【0117】
[0132] 第VII/VIIa因子アナログまたはELP含有第VIIa因子アナログの凝固能力は、ヒトFVII欠損血漿内で測定可能である。かかる分析法では、ELP含有第VIIa因子アナログは、FVII欠損血漿中で、様々な濃度に直接希釈される。凝固測定装置では、血漿±FVIIaアナログ1容が、Innovin(商標)(Dade、Miami、Fla)トロンビン時間試薬(遺伝子組換え型ヒト組織因子とリン脂質およびCaCl)2容で混合され得る。血栓形成は任意選択により検出され、凝固までの時間が測定される。凝固時間(秒)を、FVII−欠損血漿のみの平均凝固時間と比較し、FVIIaアナログ濃度に対して、部分凝固時間(fractional clotting time)としてプロットする。
【0118】
治療用タンパク質
[0133] 本発明は、ELP成分、および表1から選択される少なくとも1つの治療用タンパク質を含む治療剤をさらに提供する。ELP成分および治療用タンパク質は、本明細書に記載する遺伝子組換え融合または化学結合により結合可能である。かかる治療用タンパク質は、タンパク質名およびGeneSeqアクセッション番号別に表1に掲載されている。各治療用タンパク質のアミノ酸配列は、当技術分野で公知であるが、表1に掲載する各治療用タンパク質について、本明細書において参考として援用する。かかる治療用タンパク質は、やはり表1に掲載されている米国特許または国際公表にさらに記載されているが、かかる米国特許および国際公表を本明細書において、特にかかる治療用タンパク質の構造および記載された機能的アナログに関して、参考として援用する。
【0119】
[0134] 表1は、掲載された各治療用タンパク質の生物学的活性、ならびに機能的アナログまたは本発明の薬剤の(例えば、ELP成分との融合体)活性を決定するための典型的な分析方法について、さらに記載する。一般的に、表1に掲載する治療用タンパク質の機能的アナログには、1、2、3、4、または約5個のアミノ酸を含む、1〜10個のアミノ酸がN末端および/またはC末端で切り離された機能的断片が含まれ得る。機能的アナログは、ベース配列(例えば、表1に掲載するような)を基に1〜10個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)、それぞれの場合において、治療用タンパク質の全部または一部の生物学的活性(表1に掲載するような)を維持しながら含み得る。例えば、機能的アナログは、ベース配列を基に、1、2、3、4、または5個のアミノ酸の挿入、削除、および/または置換を(まとめて)有し得る。かかる活性は、当該表に記載する方法を含む任意の利用可能な分析法を用いて確認または分析可能である。かかる実施形態またはそのほかの実施形態では、治療用タンパク質は、対応するベース配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、または98%の同一性を有する。当該分子は、当技術分野でそれぞれについて公知の追加的な化学修飾をさらに含み得る。
【0120】
[0135] いくつかの実施形態では、治療用タンパク質(例えば、表1から選択されるような)は、約25kDa未満、または約10kDa未満、または約5kDa未満のサイズを有し、また対応する本発明の治療剤(例えば、ELP成分を含む)は、約60kDa、55kDa、50kDa、または40kDa未満の分子量を有する。
【0121】
[0136] 表1は、各治療用タンパク質について、好ましい適応をさらに掲載するが、対応する治療剤は、かかる適応に関連する治療方法または予防方法等において有用であることが分かる。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
【表10】

【0132】
【表11】

【0133】
【表12】

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【表13】

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【表14】

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【表15】

【0137】
【表16】

【0138】
【表17】

【0139】
【表18】

【0140】
【表19】

【0141】
【表20】

【0142】
【表21】

【0143】
【表22】

【0144】
【表23】

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【表24】

【0146】
【表25】

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【表26】

【0148】
【表27】

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【0200】
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【表80】

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【表83】

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【表86】

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【表89】

【0211】
【表90】

【0212】
【表91】

【0213】
【表92】

【0214】
【表93】

【0215】
【表94】

【0216】
【表95】

【0217】
【表96】

【0218】
【表97】

【0219】
【表98】

【0220】
【表99】

【0221】
【表100】

【0222】
【表101】

【0223】
【表102】

【0224】
【表103】

【0225】
【表104】

【0226】
【表105】

【0227】
【表106】

【0228】
【表107】

【0229】
【表108】

【0230】
【表109】

【0231】
【表110】

【0232】
【表111】

【0233】
【表112】

【0234】
【表113】

【0235】
【表114】

【0236】
【表115】

コンジュゲーションおよび結合
【0237】
[0132] 本発明は、ELP成分と、表1に記載する治療用タンパク質のほか、GLP−1受容体作動薬、インスリン、第VII/VIIa因子、および上記のような機能的アナログ等の、治療成分とを含む治療剤を提供する。かかる薬剤は、遺伝子組換え技術および/または化学結合(例えばコンジュゲーション)により調製可能である。
【0238】
[0133] 本発明の特定の実施形態に基づき、遺伝子組換え技術により作製されたELP融合タンパク質には、遺伝子融合により相互に結び付いたELP成分および治療成分が含まれる。例えば、融合タンパク質は、ELP成分と共にインフレームでクローン化された治療成分(またはその逆)をコードするポリヌクレオチドを翻訳することにより生成可能である。かかるELP融合タンパク質は、ELP成分のN末端および/またはC末端に結合した治療成分の1つまたは複数のコピーを含み得る。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質成分は、ELP成分のNおよびC末端の両方に結合し、当該融合タンパク質は1つまたは複数の等しい治療成分を、ELP成分のいずれか一方の端または両端に含み得る。
【0239】
[0134] 特定の実施形態では、ELP成分および治療成分は、様々な長さのリンカーペプチドを用いて融合可能であり、これにより、物理的により隔たって分離され、また融合タンパク質間でより大きな空間的動きが可能となり、したがって、例えば治療成分がそれを認識する受容体と結合する際に、当該治療成分の近付き易さは最大となる。リンカーペプチドは、柔軟性の、またはより剛性の高いアミノ酸から構成され得る。例えば、柔軟性のリンカーは、比較的短い側鎖を有するアミノ酸を含むことができ、かかるアミノ酸は疎水性であり得る。非限定的に、柔軟性のリンカーは、グリシン残基および/またはセリン残基からなるストレッチ部を含み得る。さらに剛性の高いリンカーは、例えばより立体的に込み合ったアミノ酸側鎖を、例えば(非限定的に)チロシンまたはヒスチジンを含み得る。リンカーは、約50、40、30、20、10、または5アミノ酸残基未満であり得る。リンカーは、ELP成分および治療成分と、これらの中間で、例えば、遺伝子組換え融合により共有結合可能である。
【0240】
[0135] リンカーまたはペプチドスペーサーは、プロテアーゼで切断可能であってもよく、また非切断可能であってもよい。例として、切断可能なペプチドスペーサーには、様々な種類のプロテアーゼ、例えばTev、トロンビン、第Xa因子、プラスミン(血液プロテアーゼ)、メタロプロテアーゼ、カテプシン(例えば、GFLG等)、およびそのほかの体内区画に見出されるプロテアーゼによって(in vitroまたはin vivoで)認識されるペプチド配列が非限定的に含まれる。切断可能なリンカーを用いるいくつかの実施形態では、融合タンパク質(「治療剤」)は、融合体としては不活性、低活性、または低能力であり得、in vivoでスペーサーが切断されると活性化される。あるいは、治療剤が、融合体として十分に活性な場合には、非切断可能スペーサーを用いてもよい。非切断可能スペーサーは、任意の適する種類であり得、これには、例えば式[(Gly)n-Ser]m(配列番号22)を有する非切断可能スペーサー部分が含まれるが、式中、nは1〜4であり、mは1〜4である。あるいは、骨格ELPとは異なる短いELP配列が、必要な効果を実現しつつ、リンカーまたはスペーサーの代わりに利用可能であろう。
【0241】
[0136] なおも別の実施形態では、治療剤は、各末端でELP成分に挟まれた治療成分を有する遺伝子組換え融合体である。治療成分は不活性であるが、1つのELP成分がタンパク質分解を受けて取り除かれるとin vivoで活性となるように、上記ELP成分の少なくとも1つは、切断可能なスペーサーを介して結合可能である。得られた、1つのELPが融合した融合体は活性となり、in vivoで延長された半減期(または本明細書に記載するそのほかの特性)を有する。
【0242】
[0137] 別の実施形態では、本発明はELP成分および治療成分からなる化学的コンジュゲート(chemical conjugate)を提供する。当該コンジュゲートは、当技術分野で周知の任意のいくつかの方法を用いて、ELP成分を治療成分に化学的に結合させることにより、作製可能である(例えば、Nilssonら、2005年、Ann Rev Biophys Bio Structure、第34巻:91〜118頁を参照)。いくつかの実施形態では、化学的コンジュゲートは、治療成分を直接的に、または短いまたは長いリンカー部分を介して、共有結合を形成するための治療タンパク質成分上の1つまたは複数の官能基、例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオール、またはヒドロキシル基を介してELP成分に共有結合させることにより形成可能である。様々な従来型のリンカー、例えばジイソシアナート、ジイソチオシアナート、カルボジイミド、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒド等が利用可能である。
【0243】
[0138] 非ペプチド系の化学スペーサーも、適する種類であればいずれもさらに該当し得るが、これには、例えばAcademic Press,Inc.が出版する、「Bioconjugate Techniques」、Greg T. Hermanson著、1995年に記載されている機能性のリンカー、およびPierce Biotechnology、Inc.(Rockford, Illinois)から入手可能な「Cross−Linking Reagents Technical Handbook」に記載されているものが含まれ、これらの開示は、それぞれの全体を本明細書において参考として援用される。概略的な化学スペーサーとして、Lysのアミン基に結合可能な同種二官能性リンカー、ならびに一方の端でCysと結合し、他方の端でLysと結合可能な異種二官能性リンカーが挙げられる。
【0244】
[0139] 特定の実施形態では、室温(またはヒト体温、例えばTt>37℃)で転移しない、比較的小型のELP成分(例えば、約30kDa、25kDa、20kDa、15kDa、または10kDa未満のELP成分)が、化学的に結合し、または架橋する。例えば、同一または異なる特性を有する2つの比較的小型のELP成分が、化学的に結合し得る。いくつかの実施形態では、かかるカップリングは、ELPのC末端またはその周辺に1個のシステイン残基を付加することにより、in vivoで生じ得る。かかるELP成分は、標的における活性または親和力を増大させるように、1つまたは複数の治療成分とそれぞれ融合可能である。
【0245】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
[0140] 別の態様では、本発明は、本発明の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。かかるポリヌクレオチドは、ELP成分および治療成分をコードする配列に加えて、1つまたは複数の発現制御要素をさらに含む。例えば、ポリヌクレオチドは、発現制御要素として、1つまたは複数のプロモーター、または転写エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナル、およびポリアデニレーションシグナルを含み得る。当該ポリヌクレオチドは、任意の適するベクター内に挿入可能で、同ベクターは、発現用の任意の適する宿主細胞内に含まれ得る。
【0246】
[0141] ポリヌクレオチドを含むベクターを、治療剤を発現させるために細胞に導入することができる。ベクターは、治療剤をコードする挿入物が転写可能である限り、エピソーム性のままであってもよく、また染色体に組み込まれた状態となってもよい。ベクターは、標準的な遺伝子組換えDNA技術により構築可能である。ベクターは、プラスミド、ファージ、コスミド、ファージミド、ウィルス、または当技術分野で公知の任意のそのほかの種類であり得、これらは、原核細胞または真核細胞での複製および発現に用いられる。当業者であれば、プロモーター等の多種多様な転写シグナル、およびRNAポリメラーゼがプロモーターに結合するのを制御するそのほかの配列を含む、当技術分野で公知の多種多様な成分(発現制御要素等)が、かかるベクターに含まれ得ると理解されよう。ベクターが発現する細胞内で有効であることが公知の任意のプロモーターを、治療剤の発現を開始するのに利用可能である。適するプロモーターは、誘発可能、または構築可能であり得る。適するプロモーターの例として、SV40初期プロモーター領域、ラウス肉腫ウィルスの3’長末端繰返し配列に含まれるプロモーター、HSV−1(単純ヘルペスウィルス-1)チミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の制御配列等、ならびに組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されてきた下記の動物転写制御領域、すなわち膵臓線房細胞内で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域、膵臓β−細胞内で活性なインスリン遺伝子制御領域、リンパ系細胞内で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域、精巣細胞、乳腺細胞、リンパ系細胞、およびマスト細胞内で活性なマウス乳癌ウィルス制御領域、肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域、肝臓で活性なα−フェトタンパク質遺伝子制御領域、肝臓で活性なα1−抗トリプシン遺伝子制御領域、赤血球系細胞内で活性なβ−グロブリン遺伝子制御領域、脳内のオリゴデンドロサイト細胞内で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域、骨格筋内で活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域、および視床下部で活性なゴナンドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域が挙げられる。
【0247】
医薬組成物
[0142] 本発明は、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、本発明の治療剤(上記のような)を含む医薬組成物をさらに提供する。かかる医薬組成物は、それぞれの治療用タンパク質、例えば表1に掲載する治療用タンパク質、GLP−1受容体作動薬、インスリン、および第VII/VIIa因子の実施形態に関して上記治療方法で利用可能である。
【0248】
[0143] 本発明の治療剤は、ペプチド薬を投与(例えば、非経口的に)したときに、これが有するある種の欠点を克服することができ、かかる欠点として、いくつかの実施形態では、かかるペプチドは、血漿プロテアーゼによって容易に代謝され、または腎臓でのろ過により循環から排除され得るという限界が挙げられる。従来、ペプチド薬を経口で投与すると、胃でのタンパク質分解作用に加えて、胃の強い酸性が、かかるペプチド薬を、これがその意図した標的組織に到達する前に分解するので、やはり問題となり得る。胃の酵素作用や膵臓の酵素作用により生成したペプチドおよびペプチド断片は、消化管刷子縁膜内でエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼによって切断されてジペプチドおよびトリペプチドとなるが、たとえ膵臓酵素によるタンパク質分解を免れたとしても、ポリペプチドは刷子縁ペプチダーゼにより分解を受ける。生き延びて胃を通過したペプチド薬は、いずれも腸粘膜内でさらに代謝作用を受け、そこでは浸透障壁が細胞内への進入を妨げる。特定の実施形態では、本発明の治療剤は、かかる欠点を克服することができ、また増強された有効性、生物学的利用能、治療半減期、持続性、分解支援性等を有する組成形態を提供することができる。したがって、本発明の治療剤には、経口および非経口投与形態のほか、様々な他の投与形態が含まれ、これによりペプチド薬が極めて効果的な方法で利用可能となる。例えば、いくつかの実施形態では、かかる薬剤は、高い粘膜吸収性を実現し、同時に低用量で使用する能力を実現することができ、最適な治療効果をもたらす。
【0249】
[0144] 本発明の治療剤は、融合していないまたは結合していない対照物よりも低用量および/または低頻度で投与可能である。当業者は、それぞれの場合において、望ましい用量を決定し得るが、治療ベネフィットを得るための治療剤の適する用量は、例えば、1日に、被投与者の体重1キログラム当たり、約1マイクログラム(μg)〜約100ミリグラム(mg)の範囲、好ましくは1日に、体重1キログラム当たり、約10μg〜約50mgの範囲、および最も好ましくは1日に、体重1キログラム当たり、約10μg〜約50mgの範囲であり得る。望ましい用量は1回の用量として、または1日を通じて適当な間隔で投与される2回以上の小分け用量として提供され得る。かかる小分け用量は、例えば、単位投与剤形1個当たり約10μg〜約1000mg、好ましくは約50μg〜約500mg、および最も好ましくは約50μg〜約250mgの活性成分を含む単位投与剤形で投与可能である。あるいは、連続的な輸液として、被投与者の病状がそのように求めるならば、当該用量は投与され得る。
【0250】
[0145] 投与様式および剤形は、当然ながら、所定の治療用途にとって望ましく、効果的である、ペプチド活性型治療剤の治療量に影響を及ぼす。例えば、経口投与による用量の場合、非経口投与法で用いられる用量レベルの少なくとも2倍、例えば2〜10倍であり得る。
【0251】
[0146] 本発明の治療剤は、そのままで、ならびに薬学的に許容されるエステル、塩、およびこれらのそのほか生理的に機能する誘導体を含む様々な形態で投与可能である。本発明は、獣医用途およびヒトの医療用途の両方のための医薬処方も検討対象であり、これには本発明の治療剤が含まれる。かかる医薬処方および薬剤処方では、治療剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される、かかる治療剤のための担体(複数可)、および任意選択により、そのほかの任意の治療成分と共に用いることができる。担体(複数可)は、処方のそのほかの成分に適合性を有し、その被投与者にとって過度に有害とならないという観点から、薬学的に許容されなければならない。治療剤は、上記のように所望の薬学的効果を実現するのに有効な量で、および所望の日用量を実現するのにふさわしい量で提供される。
【0252】
[0147] 治療剤の処方には、非経口投与ならびに非経口ではない投与に適するものが含まれ、また具体的な投与方式として、経口、直腸、口腔、局所、鼻腔、眼、皮下、筋肉中、静脈内、経皮、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ管、膣、および子宮内投与が挙げられる。経口および非経口投与に適する処方が好ましい。
【0253】
[0148] 治療剤が、液体溶液を含む処方で用いられる場合には、当該処方は、経口および非経口により、有利に投与可能である。治療剤が液体懸濁物処方中で、または生体適合性のある担体処方中の粉末として用いられる場合には、当該処方は、経口、直腸、または気管支経由で有利に投与され得る。
【0254】
[0149] 治療剤が、粉末化された固体状態で直接用いられる場合には、当該活性薬剤は、経口により有利に投与可能である。あるいは、かかる薬剤は、粉末のガス状懸濁物が形成されるようにキャリアガス中の粉末を噴霧することにより、気管支経由で投与可能であり、かかる粉末は、適当な噴霧装置を備える呼吸回路から患者によって吸入される。
【0255】
[0150] 本発明の治療剤を含む処方は、単位投与剤形の状態で便利に提供され、また薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。かかる方法は、一般的に、治療剤を1つまたは複数の副成分を構成する担体と関連付ける工程を含む。一般的に、処方は、治療剤を液体担体、微粉化された固体担体、または両方と均一かつ緊密に関連付け、次いで、必要ならば、生成したものを所望の処方に基づく剤形に成形することにより調製される。
【0256】
[0151] 経口投与に適する処方は、分離したユニットとして、例えばカプセル、カシェ、錠剤、またはトローチ剤として提供可能で、それぞれは、予め決定された量の活性成分を、粉末または顆粒として、または水溶液もしくは非水溶液中の懸濁物、例えばシロップ、エリキシル剤、エマルジョン、または吸入剤として含む。
【0257】
[0152] 錠剤は、任意選択により1つまたは複数の副成分と共に、圧縮または成形により作製可能である。圧縮錠剤は、粉末または顆粒等の自由流動形態にある治療剤を適当な機械で圧縮することにより調製可能であり、かかる治療剤は、任意選択によりバインダー、錠剤分解物質、潤滑剤、不活性賦形剤、界面活性剤、または抜染剤と共に混合される。粉末化されたペプチド活性型治療剤−ELP構築物(複数可)と適する担体との混合物からなる成形錠剤は、適当な機械で成形することにより作製可能である。
【0258】
[0153] シロップは、ペプチド活性型治療剤−ELP構築物(複数可)を、砂糖、例えばショ糖の濃縮水溶液に添加することにより作製可能であり、このシロップにも任意の副成分(複数可)を添加することができる。かかる副成分(複数可)は、香味料、適する防腐剤、砂糖の結晶化を阻止する薬剤、およびポリヒドロキシアルコール、例えばグリセリンまたはソルビトール等の、任意のそのほかの成分の溶解度を増加させる薬剤を含み得る。
【0259】
[0154] 非経口投与に適する処方は、治療剤からなる滅菌された水性製剤を好都合に含み、かかる製剤は好ましくは被投与者の血液と等張である(例えば、生理的食塩水)。かかる処方は、懸濁化剤および増粘剤、またはペプチド活性型治療剤が、血液成分または1つもしくは複数の器官を標的と定めるように設計されるそのほかの微粒子系を含み得る。処方は単位投与剤形または複数投与剤形で提供され得る。
【0260】
[0155] 鼻腔スプレー処方は、防腐剤および等張化剤を含む、治療剤からなる精製された水溶液を含む。かかる処方は、好ましくは鼻腔粘膜に適合性を有するpHおよび等張状態に調整される。
【0261】
[0156] 直腸投与のための処方は、ココアバター、硬化油脂、または硬化脂肪カルボン酸(hydrogenated fatty carboxylic acid)等の適切な担体と共に座剤として提供され得る。
【0262】
[0157] 局所処方は、1つまたは複数の媒体、例えば鉱物油、石油、ポリヒドロキシアルコール、または局所医薬品処方に用いられるそのほかの基剤等に溶解または懸濁された治療剤を含む。
【0263】
[0158] 上記成分に加えて、本発明の処方は、賦形剤、バッファー、香味料、錠剤分解物質、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(酸化防止剤を含む)等から選択される1つまたは複数の副成分をさらに含み得る。
【0264】
[0159] 本発明の特徴および利点は、下記の非限定的な実施例において、より完全に示される。
【実施例1】
【0265】
様々なELP成分構築物の構築
[0160] クローニング工程は、大腸菌株XL1−Blue(rec A1、endA1、gyrA96、thi-1、hsdR17(rk, mk+)、supE44、relA1、lac[F'、proAB、/αclqZΔM15、Tn10(Tetr)])(Stratagene La Jolla、CA)内で実施した。pUC19(NEB、Beverly、MA)を、ELP構築物のクローニングベクターとして用いた(MeyerおよびChilkoti、Nat. Biotechnol.、第17巻(11):1112〜5頁、1999年)。pET15bベクターおよびpET24dベクター(Novagen)の改変形態を、BL21 Star(DE3)株(F-、ompT、hsdSB(r-m-)、gal、dcm、rne131、(DE3))(Invitrogen Carlsbed、CA)、またはBLR(DE3)(F-、ompT、hsdSB(r-m-)、gal、dcm、Δ(srl-recA)306::Tn10(TcR)(DE3))(Novagen Madison、WI)内でELPおよびELP融合タンパク質を発現させるために用いた。合成DNAオリゴは、Integrated DNA Technologies、Coralville、IAより購入した。すべてのベクター構築物を、標準的な分子生物学プロトコール(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、1995年)を用いて作製した。
【0266】
ELP1[V]遺伝子シリーズの構築物
[0161] ELP1[V]シリーズは、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xは、相対比が5:2:3のバリン、アラニン、およびグリシンである。
【0267】
[0162] ELP1[V]シリーズモノマーのELP1[V−10]は、5’リン酸化、PAGE精製された4種類の合成オリゴをアニーリングして、EcoRIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された(MeyerおよびChilkoti、Nat. Biotechnol.、第17巻(11):1112〜5頁、1999年)。当該オリゴは、IXリガーゼバッファー(Invitrogen)、50μl中の4種類のオリゴからなる1μMの混合物の中で、ヒーティングブロックを用いて95℃でアニーリングされ、次いで、当該ブロックは室温まで徐々に冷却された。ELP1[V−10]/EcoRI−HindIII DNAセグメントは、EcoRIおよびHindIIIで消化され、CIAPで脱リン酸化されたpUC19ベクター(Invitrogen)にライゲートされて、pUC19−ELP1[V−10]が形成された。ELP1[V]シリーズライブラリーの構築は、pUC19−ELP1[V−10]に由来するELP1[V−10]PflMI/BgII断片を、PflMIで線形化され、CIAPで脱リン酸化されたpUC19−ELP1[V−10]に挿入して、pUC19−ELP1[V−20]を形成することから開始した。次に、pUC19−ELP1[V−20]は、ELP1[V−10]PflMI/BgII断片またはELP1[V−20]PflMI/BgII断片のそれぞれを、PflMIで消化されたpUC19−ELP1[V−20]にライゲートすることにより、pUC19−ELP1[V−30]、およびpUC19−ELP1[V−40]へとさらに構築された。この手順は、ELP1[V]シリーズを伸長させて、pUC19−ELP1[V−60]、pUC19−ELP1[V−90]、およびpUC19−ELP1[V−180]遺伝子を作製するために用いられた。
【0268】
ELP1[K]遺伝子シリーズの構築
[0163] ELP1[K]シリーズは、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xは、相対比が1:2:1のリジン、バリン、およびフェニルアラニンである。
【0269】
[0164] ELP1[K]シリーズモノマーのELP1[K−4]は、5’リン酸化、PAGE精製された2種類の合成オリゴをアニーリングして、EcoRIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された(MeyerおよびChilkoti、1999年)。当該オリゴは、1Xリガーゼバッファー(Invitrogen)、50μl中の4種類のオリゴからなる1μMの混合物の中で、ヒーティングブロックを用いて95℃でアニーリングされ、次いで、当該ブロックは室温まで徐々に冷却された。ELP1[K−4]/EcoRI−HindIII DNAセグメントは、EcoRIおよびHindIIIで消化され、CIAPで脱リン酸化されたpUC19ベクター(Invitrogen)にライゲートされて、pUC19−ELP1[K−4]が形成された。ELP1[K]シリーズライブラリーの構築は、pUC19−ELP1[K−4]に由来するELP1[K−4]PflM1/BglI断片を、PflM1で線形化され、CIAPで脱リン酸化されたpUC19−ELP1[K−4]に挿入して、pUC19−ELP1[K−8]を形成することから開始した。同様の手順を用いて、各ライゲーションにおいてELP1[K]シリーズを2倍化して、pUC19−ELP1[K−16]、pUC19−ELP1[K−32]、pUC19−ELP1[K−64]、およびpUC19−ELP1[K−128]を形成した。
【0270】
ELP1[K]遺伝子シリーズの構築
[0165] ELP1[K]シリーズは、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xは、相対比が1:7:1のリジン、バリン、およびフェニルアラニンである。
【0271】
[0166] ELP1[K]シリーズモノマーのELP1[K−9]は、5’リン酸化、PAGE精製された4種類の合成オリゴをアニーリングして、PflMIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された。次に、ELP1[K−9] DNAセグメントは、PflM1/HindIII脱リン酸化PUC19−ELP1[V−180]ベクターにライゲートされ、これにより、ELP1[V−180]がELP1[K−9]に置き換わって、pUC19−ELP1[K−9]モノマーができた。ELP1[K]シリーズは、ELP1[K]シリーズと同様の方法で伸長されて、pUC19−ELP1[K−18]、PUC19−ELP1[K−36]、pUC19−ELP1[K−72]、およびpUC19−ELP1[K−144]が作製された。
【0272】
ELP1[V]遺伝子シリーズの構築
[0167] ELP1[V]シリーズは、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xはもっぱらバリンである。
【0273】
[0168] ELP1[V]シリーズモノマーのELP1[V−5]は、5’リン酸化、PAGE精製された2種類の合成オリゴをアニーリングして、EcoRIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された。次に、ELP1[V−5] DNAセグメントは、EcoRI/HindIII脱リン酸化pUC19ベクターにライゲートされて、pUC19−ELP1[V−5]モノマーができた。ELP1[V]シリーズは、ELP1[V]シリーズと同様の方法で作製されて、最終的にpUC19−ELP1[V−5]から、pUC19−ELP1[V−60]、およびpUC19−ELP1[V−120]まで伸長した。
【0274】
ELP2遺伝子シリーズの構築
[0169] ELP2シリーズは、ペンタペプチドAVGVPからなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指す。
【0275】
[0170] ELP2シリーズモノマーのELP2[5]は、5’リン酸化、PAGE精製された2種類の合成オリゴをアニーリングして、EcoRIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された。次に、ELP2[5]DNAセグメントは、EcoRI/HindIII脱リン酸化pUC19ベクターにライゲートされて、pUC19−ELP2[5]モノマーができた。ELP2シリーズは、ELP1[K]シリーズと同様の方法で伸長されて、pUC19−ELP2[10]、pUC19−ELP2[30]、pUC19−ELP2[60]、およびpUC19−ELP2[120]が作製された。
【0276】
ELP3[V]遺伝子シリーズの構築
[0171] ELP3[V]シリーズは、ペンタペプチドIPGXG(配列番号5)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xはもっぱらバリンである。
【0277】
[0172] ELP3[V]シリーズモノマーのELP3[V−5]は、5’リン酸化、PAGE精製された2種類の合成オリゴをアニーリングして、PfLM1アミノ末端、および好都合なカルボキシル末端制限部位を欠くことに起因してGGCカルボキシル適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製されたが、モノマーのシームレス付加はなおも可能である。次に、ELP3[V−5] DNAセグメントは、PflM1/BgII脱リン酸化pUC19−ELP4[V−5]にライゲートされ、これにより、ELP4[V−5]がELP3[V−5]に置き換わってpUC19−ELP3[V−5]モノマーができた。ELP3[V]シリーズは、アニーリングされたELP3オリゴを、PflMIで消化されたpUC19−ELP3[V−5]にライゲートすることにより伸長された。各ライゲーションにより、ELP3[V]シリーズは5個ずつ伸長して、ELP3[V−10]、ELP3[V−15]等ができた。
【0278】
ELP4[V]遺伝子シリーズの構築
[0173] ELP4[V]シリーズは、ペンタペプチドLPGXG(配列番号7)からなる複数の繰返しユニットを含むポリペプチドを指し、Xはもっぱらバリンである。
【0279】
[0174] ELP4[V]シリーズモノマーのELP4[V−5]は、5’リン酸化、PAGE精製された2種類の合成オリゴをアニーリングして、EcoRIおよびHindIII適合末端を有する二重らせんDNAを形成することにより作製された。次に、ELP4[V−5]DNAセグメントは、EcoRI/HindIII脱リン酸化pUC19ベクターにライゲートされて、pUC19−ELP4[V−5]モノマーができた。ELP4[V]シリーズは、ELP1[K]シリーズと同様の方法で伸長されて、pUC19−ELP4[V−10]、pUC19−ELP4[V−30]、pUC19−ELP4[V−60]、およびpUC19−ELP4[V−120]が作製された。
【0280】
[0175] ELP遺伝子は、pET15b−SD0、pET15b−SD3、pET15b−SD5、pET15b−SD6、およびpET24d−SD21等のそのほかのベクターにも挿入された。pETベクターシリーズは、Novagen、San Diego、CAより入手可能である。
【0281】
[0176] pET15b−SD0ベクターは、マルチクローニング制限部位(SacI-NdeI-NcoI-XhoI-SnaBI-BamHI)を含むSD0二重らせんDNAセグメントを用いて、pET15bベクターを改変することにより形成された。SD0二重らせんDNAセグメントは、XbaIおよびBamHI適合末端を有し、そしてこれがXbaI/BamHIで線形化され、5’脱リン酸化されたpET15bにライゲートされて、pet15b−SD0ベクターが形成された。
【0282】
[0177] pET15b−SD3ベクターは、ヒンジ領域〜トロンビン切断部位の上流にあるSfiI制限部位と、これに続くマルチクローニング部位(NdeI-NcoI-XhoI-SnaBI-BamHI)を含むSD3二重らせんDNAセグメントを用いて、pET15b−SD0ベクターを改変することにより形成された。SD3二重らせんDNAセグメントは、SacIおよびNdeI適合末端を有し、そしてこれがSacI/NdeIで線形化され、5’脱リン酸化されたpET15b−SD0にライゲートされて、pET15b−SD3ベクターが形成された。
【0283】
[0178] pET15b−SD5ベクターは、トロンビン切断部位の上流にあるSfiI制限部位と、これに続くヒンジおよびマルチクローニング部位(NdeI-NcoI-XhoI-SnaBI-BamHI)を含むSD5二重らせんDNAセグメントを用いて、pET15b−SD3ベクターを改変することにより形成された。SD5二重らせんDNAセグメントは、SfiIおよびNdeI適合末端を有し、そしてこれが、SfiI/NdeIで線形化され、5’脱リン酸化されたpET15b−SD3にライゲートされて、pET15b−SD5ベクターが形成された。
【0284】
[0179] pET15b−SD6ベクターは、リンカー領域〜TEV切断部位の上流にあるSfiI制限部位と、これに続くマルチクローニング部位(NdeI-NcoI-XhoI-SnaBI-BamHI)を含むSD6二重らせんDNAセグメントを用いて、pET15b−SD3ベクターを改変することにより形成された。SD6二重らせんDNAセグメントは、SfiIおよびNheI適合末端を有し、そしてこれが、SfiI/NdeIで線形化され、5’脱リン酸化されたpET15b−SD3にライゲートされて、pET15b−SD6ベクターが形成された。
【0285】
[0180] pET24d−SD21ベクターは、NcoIおよびNheI適合末端を有するSD21二重らせんDNAセグメントを用いて、pET24dベクターを改変することにより形成された。SD21二重らせんDNAセグメントは、NcoI/NheIで線形化され、5’脱リン酸化されたpET24dにライゲートされて、pET24d−SD21ベクターが形成されたが、これには、最小数の余分のアミノ酸を含むELPを挿入および発現させるための2つの停止コドンをSfiI部位の直後に備えた、新規のマルチクローニング部位NcoI−SfiI−NheI−BamHI−EcoRI−SacI−SalI−HindIII−NofI−XhoIが含まれた。
【0286】
[0181] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP1[V−60]、pUC19−ELP1[V−90]、およびpUC19−ELP1[V−180]プラスミドは、PflMIおよびBglIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET15b−SD3発現ベクターのSfiI部位にライゲートされて、それぞれ、pET15b−SD3−ELP1[V−60]、pET15b−SD5−ELP1[V−90]およびpET15b−SD5−ELP1[V−180]が形成された。
【0287】
[0182] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP1[V−90]、pUC19−ELP1[V−180]、pUC19−ELP1[V−60]、およびpUC19−ELP1[V−120]プラスミドは、PflMIおよびBglIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET15b−SD5発現ベクターのSfiI部位にライゲートされて、それぞれ、pET15b−SD5−ELP1[V−90]、pET15b−SD5−ELP1[V−180]、pET15b−SD5−ELP1[V−60]、およびpET15b−SD5−ELP1[V−120]が形成された。
【0288】
[0183] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP1[V−90]プラスミドは、PflMIおよびBglIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET15b−SD6発現ベクターのSfiI部位にライゲートされて、pET15b−SD6−ELP1[V−90]が形成された。
【0289】
[0184] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP1[K−64]およびpUC19−ELP1[K−128]プラスミドは、PflMIおよびBglIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET24d−SD21発現ベクターのSfiI部位にライゲートされて、それぞれpET24d−SD21−ELP1[K−64]、およびpET24d−SD21−ELP1[K−128]が形成された。
【0290】
[0185] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP1[K−72]およびpUC19−ELP1[K−144]プラスミドは、PflMIおよびBglIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET24d−SD21発現ベクターのSfiI部位にライゲートされて、それぞれpET24d−SD21−ELP1[K−72]、pET24d−SD21−ELP1[K−144]が形成された。
【0291】
[0186] XL1−Blue内で産生されたpUC19−ELP2[60]およびpUC19−ELP2[120]プラスミドは、NcoIおよびHindIIIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET24d−SD21発現ベクターのNcoIおよびHindIII部位にライゲートされて、それぞれpET24d−SD21−ELP2[60]、pET24d−SD21−ELP2[120]が形成された。
【0292】
[0187] XL1―Blue内で産生されたpUC19−ELP4[V−60]およびpUC19−ELP4[V−120]プラスミドは、NcoIおよびHindIIIで消化され、ELP含有フラグメントは、本明細書ですでに記載したように、pET24d−SD21発現ベクターのNcoIおよびHindIII部位にライゲートされて、それぞれpET24d−SD21−ELP4[V−60]、pET24d−SD21−ELP4[V−120]が形成された。
【実施例2】
【0293】
インスリンAペプチド(InsA)を含む融合タンパク質の単離および精製
[0188] ELP−InsA融合タンパク質には、下記事項が含まれた:
【0294】
[0189] インスリンAペプチド、およびELP1[V−60]ポリペプチドを含み、両者の間にエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有する。
【0295】
[0190] インスリンAペプチド、およびELP1[V−90]ポリペプチドを含み、両者の間にエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有する。
【0296】
[0191] インスリンAペプチド、およびELP1[V−120]ポリペプチドを含み、両者の間にエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有する。
【0297】
[0192] インスリンAペプチド、およびELP1[V−180]ポリペプチドを含み、両者の間にエンテロキナーゼプロテアーゼ切断部位を有する。
【0298】
[0193] 各ELP−InsA融合タンパク質を含む大腸菌株BLR(DE3)(Novagen)の単一コロニーを、100μg/mlのアンピシリン(Sigma)が補充されたCircleGrow(Q-BlOgene、San Diego、CA)、5mlに植菌し、250rpmで振とうしながら、37℃で5時間増殖させた。次に、培養物5mlを培溶液500mlに植菌し、25℃で4時間、1mMのIPTGで誘発する前に、25℃で16時間増殖させた。培養物を収集し、20mMトリス−塩酸(pH7.4)、50mM NaCl、1mM DTT、および完全EDTAフリー・プロテアーゼインヒビター(Complete EDTA free Protease inhibitor)、1錠(Roche、Indianapolis、IN)からなる溶液40mlに懸濁した。氷上で3分間、超音波破砕を行うことにより、細胞を溶解したが、これは、35%の破砕力で10秒間破砕し、30秒間のクーリングダウン時間を置くように構成された。4℃、30分間、20,000gで遠心分離して細胞残屑を除去した。
【0299】
[0194] 逆相転移は、終濃度が1.0MとなるようにNaClを細胞溶解物に室温で添加することにより誘発し、これに続き、室温、15分間、20,000gで遠心分離した。得られたペレットには、各ELP−InsA融合タンパク質、およびNaClにより非特異的に沈殿したタンパク質が含まれた。
【0300】
[0195] 当該ペレットを、氷冷した20mMトリス−塩酸(pH7.4)、50mM NaCl、1mM DTTの溶液40mlに再懸濁し、4℃、15分間、20,000gで再度遠心分離して、NaClにより非特異的に沈殿したタンパク質を除去した。逆相転移サイクルをさらに2回繰り返して、各ELP−InsA融合タンパク質の純度を上げ、最終容積を0.5mlまで小さくした。
【実施例3】
【0301】
ELP1の半減期
[0196] ELP1の薬物動態は、leg/flank FaDu異種移植片を有するヌードマウス(Balb/c nu/nu)に[14C]ELP1を静脈内注射し、投与後の様々な時間において血液サンプルを収集することにより決定された。血液薬物動態は特徴的な分布、および大型の巨大分子に対して排除反応を示したが、これは、二相性の指数プロセスにより良く説明された。
【0302】
[0197] 排除反応および分布反応の両方に近似させるために、血漿濃度のタイムコース曲線を、2コンパートメントモデルの解析解に当てはめた。具体的な薬物動態パラメーターを下記表1に示す。ELPの分布容積(1.338μl)は、仮説に基づく血漿容積の1.363μlにほぼ等しかったが(Barbee, R.W.ら、Am. J. Physio.、第263巻(3)(1992年)R728〜R733頁)、これは、投与直後にELPは、特定の器官や組織に速やかに分布または結合しなかったことを示唆している。AUCは、中央コンパートメントまたは血漿におけるELPへの累積的な暴露の指標である。体クリアランスは、ELPの血漿濃度に関連した、体内におけるELP排除速度として定義され、腎臓、肝臓、およびそのほか器官を含むすべての器官を経由するクリアランスの合計である。
【0303】
【表116】

【0304】
[0198] 物質輸送速度定数は、標準2コンパートメントモデル(k;中央コンパートメントから末梢コンパートメント;k;末梢コンパートメントから中央コンパートメント;およびk;中央コンパートメントからの排除)から求められる。分布容積(V)、中央コンパートメント濃度タイムコース曲線下面積(AUC)、および体クリアランス(Cl)を示す。データは、平均値として表されている(n=5、ただし、類似のコホートからn=3で算出されたVおよび初期血漿濃度(C)を除く)。
【実施例4】
【0305】
ヌードマウスにおける、ELPの生体分布
14C標識ELP1−150および/または14C標識ELP2−160
[0199] 14C標識ELP1−150および/または14C標識ELP2−160を、FaDu腫瘍を有するヌードマウスに投与した(平均+/-SD、n=6)。腫瘍を、ELPの投与後に41.5℃のウォーターバス中で加温した。分布は、血液含量が最も高い器官:肝臓、腎臓、脾臓、および肺で最大であった。
【0306】
14C標識ELP2−[V−160]
[0200] 14C標識ELP2−[V−160](T>60℃)を、血漿濃度が15μMとなるようにヌードマウスに投与した。ヌードマウスの右後肢に位置する移植したFaDu腫瘍を1時間加温(41℃)した後、ELP濃度を求めた。データを平均値と95%信頼区間として示す。N=6。
【0307】
[0201] 14C標識ELP2−[V−160]を全身投与して1.5時間後に、ELP濃度を測定した。血液含量が最も高い器官:肝臓、腎臓、脾臓、および肺で、最大の分布が認められた。
【実施例5】
【0308】
エキセンジン−4 ELP融合体
[0202] エキセンジン−4(Ex-4)のDNA配列(配列番号14)は、大腸菌の発現に最適化されたコドンを用いて、アミノ酸配列から逆翻訳された。エキセンジン−4をコードするDNA配列は、プラスミドpET24d−ELP1−90(図1)内の制限部位NdeIおよびXhoIに適合性を有するオーバーハンギング5’および3’末端を備えた合成オリゴヌクレオチドを共にアニーリングすることにより構築された。このプラスミドは、制限酵素NdeIおよびXhoIで消化され、アニーリングされたDNA配列はカットベクターにライゲートされた。挿入は、制限消化およびDNA配列決定により確認された。得られたプラスミドは、pET24d−Ex−4 ELP1−90として定義され(図2A)、得られたエキセンジン−4−ELP融合体の配列を、図2Bに示す。融合体構築物のプライマーも示す。
【0309】
[0203] pET24d−Ex−4 ELP1−90は、大腸菌株BRL(Invitrogen)を形質転換するために用いられ、選択された形質転換物を、振盪フラスコ中の培溶液3(1.2%トリプトンペプトン、2.4%酵母エキス、5g/Lカザミノ酸、2%グリセリン、リン酸二カリウム2.313g/L、リン酸一カリウム12.541g/L)内で増殖させた。1Lの培養液3に1OD細胞を植菌することによる自己誘導方式を用いて産生を進行させ、誘導物質を添加せずに37℃で17時間増殖を進行させた。生成物は、細胞ペレットを収集することにより回収され、細胞を破壊するように超音波処理を受け、そしてELP部分によって調節された熱および/または塩誘発転移を行って回収された(Improved Non-chromatographic Purification of a Recombinant Protein by Cationic Elastin-like Polvpeptides、Dong Woo Lim、Kimberly Trabbic-Carlson、J. Andrew MacKay、およびAshutosh Chilkoti. Biomacromolecules、2007年、第8巻、1417〜1424頁)。
【0310】
[0204] この実施例は、1−90と規定されたELPに関する。これはVPGXG(配列番号3)のモチーフに基づき、Xは、10回のユニット繰返しの中で相対比が5:3:2となるV、G、またはAであり、これが8回繰り返されて、最後に(C末端に)10回のユニット繰返しを備え、このときXは比が4:3:2:1となるV、G、AおよびWである。
【0311】
[0205] [(VPGXG)10]において、X残基が、繰返しユニットに基づき10回連続した繰返しの中(下付きの数字)にある場合には、[(V1,4,5,6,102,7,93,88(V1,4,5,62,7,93,810)]として記載され得る。
【0312】
[0206] ELPは、任意の長さの繰返しユニットを任意に組み合わせた中の、VPGXG(配列番号3)ユニットの任意の組合せであり得、Xは、20個の天然アミノ酸のうちのプロリンを除くいずれかである。さらに、アミノ酸は非天然のアミノ酸であり得るが、かかるアミノ酸を特定のコドンで取り込むように遺伝子工学的に作製されたtRNAを許容する宿主株が、遺伝子工学的に作り出されている(Wang L、Brock A、Herberich B、Schultz PG.、Expanding the genetic code of Escherichia coli.[2001年]、Science、第292巻、498〜500頁)。
【0313】
[0207] この構築物は細胞質ゾル内で産生され、通常、メチオニンアミノペプチダーゼで除去されるN末端メチオニンを有した。しかし、メチオニンの完全かつ正確なプロセッシングを保証することができない。すなわち、この酵素は、エキセンジン−4部分のN末端ヒスチジンを除去し得る。これは、未処理の、処理済みの、および不正確に処理された生成物の混合物をもたらすおそれがある。したがって、正しく処理されたN末端を有する生成物を産生するために、さらなる構築物が開発された。
【0314】
[0208] N―末端メチオニンとエキセンジン−4のN末端のヒスチジンとの間にTevプロテアーゼ(タバコモザイクウィルス・システインプロテアーゼ)切断部位を付加するように、プライマーを設計した。こうすれば、メチオニンの除去が可能となり、Tev認識配列は、エキセンジン−4の成熟したN末端(ヒスチジン)を与える。これは産生後に行ってもよく、また産生の際に認識配列を切断するように、Tevプロテアーゼを、例えばインテインとして同時発現させてもよい(Ge, X.、Yang, D.S.C.、Trabbic-Carlson, K.、Kim, B.、Chilkoti, A.およびFilipe C.D.M.、Self-Cleavable Stimulus Responsive Tags for Protein Purification without Chromatoqraphy、J. Am. Chem. Soc.、第127巻、11228〜11229頁、2005年)。Tevエキセンジン−4配列を図3Aに示す。図3Bは、Tevプロテアーゼのより優れた標的となるように付加され、「リンカーTev」と名付けられた、追加の配列を示している。
【0315】
[0209] 正しく処理されたEx−4のN末端を得るための別の経路は、ペリプラズムに産生を指令するリーダー配列またはシグナル配列を利用することであり、同配列は、プロセスにおいてシグナルペプチダーゼにより切断される。この場合、シグナル配列、DsbAがもたらされ、これはペリプラズム内にポリペプチドを直接分泌するようにシグナル認識粒子に対して転写を指令する(図4を参照)。プラスミドpET24d−DsbA−Ex−4 ELP1−90を図4Bに示す。
【0316】
[0210] この実施例では、エキセンジン−4の配列を有する治療剤の調製について説明しているが、かかる配列は、GLP−1、インスリン、第VII/VIIa因子、または表1に掲載するそのほかの治療用タンパク質と置き換えることができ、エキセンジン−4について詳記した方法とまったく同じ、または類似した方法で産生可能である。
【実施例6】
【0317】
GLP1−ELP融合タンパク質
[0211] ELPプラスミド構築物が、2種類のGLP1−ELP融合タンパク質、GLP1(A8G, 7〜37)ELP1−90およびGLP1(A8G, 7〜37)ELP1−120を調製するために用いられた。このプラスミド構築物、融合体をコードするヌクレオチド配列、ならびに得られた融合タンパク質のアミノ酸配列を図5および6に示す。
【0318】
[0212] 両構築物は、N末端Tevプロテアーゼ部位を含み、GLP1のHisがN末端にある成熟型へのプロセッシングを可能にしている。処理された融合タンパク質は、それぞれ約39,536および約50,828の計算分子量を有する。
【実施例7】
【0319】
FVII ELP融合タンパク質
[0213] 凝固第VII因子(FVII)遺伝子は、cDNAクローン(Oragene)に基づきPCR法を用いて改変して、5’末端および3’末端に、ELP含有ベクターにクローニングするための制限部位を付け加えた。5’末端にNheI部位を付加し、3’末端にはNotI部位を付加した。第VII因子遺伝子のDNA配列およびアミノ酸配列を、添付の配列リストにそれぞれ配列番号34および33として示す。第VII因子(FVII)遺伝子をPCR増幅するために用いた5’および3’プライマーのDNA配列は以下の通りであった:
P13:CTAGCTAGCATGGTCTCCCAGGCCCTC(配列番号49)
P14:TATTCTTGCGGCCGCGGGAAATGGGGCTCGCAG(配列番号50)
【0320】
[0214] 得られたPCR断片は、制限酵素NheIおよびNotIで消化され、そして制限酵素NheIおよびNotIですでに消化済みのプラスミドpcDNA3.1+ELP1−90にライゲートされた(図7A)。
【0321】
[0215] 得られたプラスミドpcDNA3.1+FVII−ELP1−90を、HEK293細胞に一時的に形質導入し、培地を収集した。ELP融合体を相転移により精製した(図9および10)。
【0322】
[0216] 第VII因子−ELP融合体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図7Bに示す。示す通り、第VII因子−ELP融合タンパク質は、第VII因子成分とELP成分の間にTevプロテアーゼリンカーを含む。このリンカーは、任意選択的である。
【実施例8】
【0323】
インスリン融合タンパク質
[0217] ヒトインスリン遺伝子のcDNAは、pET24d−ELP1−90に挿入するために、5’末端および3’末端で改変を受ける。5’プライマーには、細菌発現させるためのN末端メチオニン、およびNdeI制限酵素部位が付加される。3’プライマーには、XhoI制限酵素部位が付加される。PCR産物およびプラスミドは、共に制限酵素NdeIおよびXhoIで消化され、共にライゲートされる。ELP1に融合したインスリン(B、C、およびA鎖)の配列を図8Aに示す。
【0324】
[0218] 正しく挿入されたことを、制限消化およびDNA配列決定により確認する。得られるプラスミドはpET24dインスリン−ELP1−90と規定され、これを図8Bに示す。
【0325】
[0219] 天然型インスリン形態は、大腸菌から回収した後に、C−ペプチド鎖を除去するためのトリプシン処理およびカルボキシペプチダーゼB処理することにより生成される。
【0326】
[0220] B鎖のN末端が正しく処理されるように、エキセンジン−4融合体について行われた改変と同様の改変(プロテアーゼ切断部位、シグナル配列)を実施することができる(実施例4を参照)。あるいは、最初の2つの残基はMet−Argであり得、これらも、最終物質の生成において、トリプシン消化によって除去可能である(R. M. Belagaje、S. G. Reams、S. C. LyおよびW. F. Prouty、Increased production of low molecular weight recombinant proteins in Escherichia coli.、Protein Sci.、第6巻、1953〜1962頁、1997年)。
【0327】
[0221] 追加の構築物では、C末端融合のためのインスリンcDNAがELPの3’末端に配置され、インスリン配列とELP配列との間にリンカーが付加され、および/または余計なプロセシングを不要とするように、C−ペプチドを有さないインスリンの改変形態(すでに記載した1本鎖インスリン)が用いられる。
【実施例9】
【0328】
コンジュゲーション用のELP遺伝子の合成
[0222] 50個のアミノ酸をコードする遺伝子が、標準的な分子生物学プロトコールを用いて化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから構築された。50個のアミノ酸配列には、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)の10回の繰返しが含まれ、ゲスト残基(5:3:2のモル比のV、G、およびA)は、Ttが40℃となるように選択された。この遺伝子は、標準的な分子生物学の技術により、端と端が結合するようにオリゴマー化されて、オリゴマー化したELP遺伝子が生み出された。さらに、ペンタペプチドVPGXG(配列番号3)を10回繰り返したポリペプチドを含む、単一の50個のアミノ酸配列が構築されたが、ゲスト残基は、4:3:2:1のモル比のV、G、A、およびCである。この配列は、構築物の長さ方向の選択されたポイントで、1つのシステイン残基を最終構築物に導入するように、オリゴマー化プロセスの任意のサイクルで付加され得る。
【0329】
[0223] ここで説明する実施例は、1−90と規定されたELPに関する。これは、VPGXG(配列番号3)モチーフに基づき、8回繰り返される10回のユニット繰返しにおいて、Xは5:3:2の比のV、G、またはAであり、これに付加された最終(C末端)の10回のユニット繰返しにおいては、Xは4:3:2:1の比のV、G、A、およびCである。すなわち、[(VPGXG)10]9(配列番号3)。
【0330】
[0224] あるいは、当該残基は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸のうちの1つであり得る。かかるアミノ酸の狙いは、例えばインスリンを化学的に結合させるための反応性側鎖を提供することにある。このような具体的なケースでは、ELPを使用すれば、治療用タンパク質(例えば、インスリン)の循環半減期が延長されて、持続性の基本的血糖管理が実現するであろう。体温で転移するELPに結合させれば、インスリンは、Lantus(登録商標)(Sanofi Aventis)と同様の様式で、注射部位で析出型のデポーを形成するが、注射をより寛容性にする、m−クレゾールを用いた酸性(pH4.0)条件で処方する必要はない。
【実施例10】
【0331】
第VII因子−ELPの効力および半減期
[039] 図11は、第VIIa因子−ELP1−90、および比較として第VIIa因子による第X因子の活性化を示す図である。第VII因子−ELPは、HEK細胞中で産生された。第VIIa因子はヒト血漿から得られた。示す通り、第VIIa因子−ELPは、全活性を維持している。
【0332】
[040] 図12は、i.v.でラットに投与した場合、第VIIa因子−ELPは、約690分の半減期を示した。対照的に、第VII因子は45〜60分の半減期を示した。本実施例の半減期は、第VII因子についてはサンドイッチELISA法により測定された。
【0333】
[041] やはり、対照的に、NovoSeven(商標)について報告された半減期は45分であり、第VIIa因子−アルブミン融合体について報告された半減期は263分であり、また第VIIa因子−PEGについて報告された半減期は、マウスで300分、イヌで600分である。
【実施例11】
【0334】
GLP−1(またはエキセンジン−4)のin vitroバイオアッセイ
[0132] GLP−1受容体(GLP1R)が活性化されると、cAMPの二次メッセンジャーが細胞中に産生される。したがって、GLP−1またはエキセンジン−4アナログ、および関連する治療剤は、細胞表面上のGLP1Rを活性化させ、またcAMPを産生させるこれらの能力に基づき試験することができる。
【0335】
[0133] 本バイオアッセイでは、GLP1RをコードするcDNAで核酸導入されたCHO細胞を用いる。これらの細胞は、GLP−1による刺激に反応し、高レベルのcAMPを産生する。対数増殖期の細胞を蒔き、濃度が高められた試験化合物(例えば、本発明の治療剤、またはGLP−1、またはエキセンジン−4の機能的アナログ)を細胞に添加する。37℃において生理的バッファー内で適当な時間(通常15〜60分)インキュベーションした後、Molecular Devices(Sunnyvale、CA)より入手可能なCatchPoint cAMPアッセイキットを用いて生成したcAMPを測定する。GLP−1ペプチドまたはエキセンジン−4ペプチドと比較したときに(または本発明の治療剤の融合していない、もしくは結合していない対照物と比較したときに)、各試験化合物のEC50は、ペプチドに導入された特定の改変に起因する、またはELP成分に付加された特別な化学的または遺伝子組換えによるカップリングに起因する活性の変化を表す。
【0336】
[0134] 図13に示す通り、GLP1−ELP(PB0868)およびエキセンジン−4−ELP(PB0859)は、いずれも、エキセンジン単独との比較で明らかなようにin vitroで高活性を維持している。アルブゴン(Albugon)(登録商標)およびリラグルチド(Liraglutide)(登録商標)の比活性は、エキセンジンペプチドの1/50〜1/100であることに留意されたい。
【実施例12】
【0337】
GLP−1(またはエキセンジン−4)のin vivoバイオアッセイ
[0135] GLP−1、またはエキセンジンアナログ、または関連する治療剤の活性は、動物中で試験可能である。本アッセイでは、健常動物または糖尿病動物を用いることができる。血糖濃度が300〜500mg/dlの糖尿病動物に、異なる用量のGLP−1、またはエキセンジンアナログ、または関連する治療剤を注射し、血糖の変化をグルコメーターでモニターする。投与後の異なる時点におけるグルコースの低下を、標準量のGLP−1またはエキセンジン−4ペプチドから得られた結果と比較するか、本発明の治療剤の融合していない、または結合していない対照物の結果と比較する。あるいは、体外からグルコースを投与した後の所定の時間における健常動物または糖尿病動物の血糖上昇を、GLP−1またはエキセンジン−4(または、治療剤の融合していない、または結合していない対照物)と比較する。このようにして、アナログおよび融合タンパク質の活性を、天然型のペプチドと比較することができる。
【0338】
[0136] 図14は、i.v.および皮下の両方で、投与されたラットにおける、GLP1−ELP1−120の薬物動態を示す図である。各時点で3匹のラットが用いられた。用量は約10mg/kgであった。i.v.投与したときのT1/2は約12.9時間であった。皮下投与したときのT1/2は約8.6時間であった。
【0339】
[0137] 図15は、i.v.および皮下の両方で、投与されたウサギにおける、GLP1−ELP1−120の薬物動態を示す図である。各時点で3匹のウサギが用いられた。用量は約1mg/kgであった。i.v.投与したときのT1/2は約20時間であった。皮下投与したときのT1/2は約24時間であった。
【0340】
[0138] 図16が、糖尿病マウスにおいて、GLP1−ELP1−90がもたらす持続性の血糖管理を示す図である。
【0341】
[0139] 本明細書で引用するすべての参考資料は、その全体を本明細書において参考として援用する。本発明は、本発明の具体的な態様、特徴、および概略的な実施形態を参照しながら本明細書において説明されてきたが、本発明の利用はそのように制限されるものではなく、むしろ数多くのそのほかの変形形態、修正形態、および別の実施形態まで拡張され、またこれらを含むものと、本明細書の開示に基づき、かかる形態それ自体が、本発明の分野における当業者に対して示唆するように、理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラスチン様ペプチド(ELP)成分、および治療成分を含む治療剤であって、前記治療成分単独と比較したときに、前記治療成分の循環半減期が延長され、および/または治療有効量が低減されている治療剤。
【請求項2】
前記治療成分が、表1に掲載されている治療用タンパク質、またはその機能的部分、もしくは機能的アナログである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
ELP成分が前記治療用タンパク質と、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
治療成分が前記ELP成分と、前記ELP成分のN末端で共有結合し、第2の治療成分が前記ELP成分と、前記ELP成分のC末端で共有結合している、請求項1から3のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項5】
治療成分が前記ELP成分と、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項6】
第1のELP成分が前記治療成分と、前記治療成分のN末端で共有結合し、および第2のELP成分が前記治療成分と、前記治療成分のC末端で共有結合している、請求項1から5のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項7】
前記ELP成分と前記治療成分との間に、スペーサー部分をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項8】
前記スペーサー部分が、1つまたは複数のプロテアーゼ抵抗性部分、非ペプチド性化学的部分、およびプロテアーゼ切断部位を含む、請求項7に記載の治療剤。
【請求項9】
前記プロテアーゼ切断部位が、トロンビン切断部位、第Xa因子切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、Tev切断部位、およびカテプシン切断部位である、請求項8に記載の治療剤。
【請求項10】
前記スペーサー部分が、式[(Gly)−Ser](配列番号22)を有する非切断可能部分を含み、式中、nは1〜4であり、mは1〜4である、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
前記ELPが、配列番号1〜12より選択される少なくとも1つの繰返しユニットを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項12】
前記繰返しユニットが、VPGXG(配列番号3)である、請求項11に記載の治療剤。
【請求項13】
Xが任意の天然または非天然のアミノ酸残基であり、Xは少なくとも2つのユニット間で変化する、請求項12に記載の治療剤。
【請求項14】
各Xが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン残基から独立に選択される、請求項13に記載の治療剤。
【請求項15】
約50kDa未満の分子量を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項16】
前記ELP成分が、37℃より高いTtを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項17】
遺伝的にコードされた融合タンパク質である、請求項1から16のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項18】
請求項17に記載の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御要素をさらに含む、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記発現制御要素がプロモーターを含む、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクター、または請求項18から20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の治療剤、および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から17のいずれか一項に記載の治療剤、または請求項23に記載の医薬組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、対象の疾患、障害、または状態を治療または予防するための方法。
【請求項25】
前記対象が、表1に掲載する効能を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
エラスチン様ペプチド(ELP)成分、およびグルカゴン様ペプチド(GLP)−1受容体作動薬を含む治療剤。
【請求項27】
前記GLP−1受容体作動薬が、GLP−1またはその機能的アナログである、請求項26に記載の治療剤。
【請求項28】
前記GLP−1受容体作動薬が、エキセンジン−4またはその機能的アナログである、請求項26に記載の治療剤。
【請求項29】
前記ELP成分が前記GLP−1受容体作動薬と、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項26から28のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項30】
第1のGLP−1受容体作動薬が前記ELP成分と、前記ELP成分のN末端で共有結合し、および第2のGLP−1受容体作動薬が前記ELP成分と、前記ELP成分のC末端で共有結合している、請求項26から29のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項31】
前記GLP−1受容体作動薬が前記ELP成分と、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項26から30のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項32】
第1のELP成分が前記GLP−1受容体作動薬と、前記GLP−1受容体作動薬のN末端で共有結合し、および第2のELP成分が前記GLP−1受容体作動薬と、前記GLP−1受容体作動薬のC末端で共有結合している、請求項26から31のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項33】
前記ELP成分と前記GLP−1受容体作動薬との間に、スペーサー部分をさらに含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項34】
前記スペーサー部分が、1つまたは複数のプロテアーゼ抵抗性部分、非ペプチド性化学的部分、およびプロテアーゼ切断部位を含む、請求項33に記載の治療剤。
【請求項35】
前記プロテアーゼ切断部位が、トロンビン切断部位、第Xa因子切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、Tev切断部位、およびカテプシン切断部位である、請求項34に記載の治療剤。
【請求項36】
前記スペーサー部分が、式[(Gly)−Ser](配列番号22)を有する非切断可能部分を含み、式中、nは1〜4であり、mは1〜4である、請求項34に記載の治療剤。
【請求項37】
前記ELPが、配列番号1〜12より選択される少なくとも1つの繰返しユニットを含む、請求項26から36のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項38】
前記繰返しユニットが、VPGXG(配列番号3)である、請求項37に記載の治療剤。
【請求項39】
Xが任意の天然または非天然のアミノ酸残基であり、Xは少なくとも2つのユニット間で変化する、請求項38に記載する治療剤。
【請求項40】
各Xが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン残基から独立に選択される、請求項38に記載の治療剤。
【請求項41】
約50kDa未満の分子量を有する、請求項26から40のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項42】
前記ELP成分が、37℃より高いTtを有する、請求項26から40のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項43】
遺伝的にコードされた融合タンパク質である、請求項26から42のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項44】
請求項43に記載の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御要素をさらに含む、請求項44に記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
前記発現制御要素が、プロモーターを含む、請求項45に記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
請求項44から46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項48】
請求項47に記載のベクター、または請求項44から46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞。
【請求項49】
請求項26から43のいずれか一項に記載の治療剤、および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項50】
請求項26から43のいずれか一項に記載の治療剤、または請求項49に記載の医薬組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、対象の生物学的状態、障害、または疾患を治療または予防するための方法。
【請求項51】
前記対象が糖尿病を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
エラスチン様ペプチド(ELP)成分、およびインスリンまたはその機能的アナログを含む治療剤。
【請求項53】
前記ELP成分が前記インスリンまたは機能的アナログと、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項52に記載の治療剤。
【請求項54】
第1のインスリンまたは機能的アナログが前記ELP成分と、前記ELP成分のN末端で共有結合し、および第2のインスリンまたは機能的アナログが前記ELP成分と、前記ELP成分のC末端で共有結合している、請求項52または53に記載の治療剤。
【請求項55】
前記インスリンまたは機能的アナログが前記ELP成分と、そのNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項52に記載の治療剤。
【請求項56】
第1のELP成分が前記インスリンまたは機能的アナログと、そのN末端で共有結合し、および第2のELP成分が前記インスリンまたは機能的アナログと、そのC末端で共有結合している、請求項52または53に記載の治療剤。
【請求項57】
前記ELP成分と前記インスリンまたは機能的アナログとの間に、スペーサー部分をさらに含む、請求項52から56のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項58】
前記スペーサー部分が、1つまたは複数のプロテアーゼ抵抗性部分、非ペプチド性化学的部分、およびプロテアーゼ切断部位を含む、請求項57に記載の治療剤。
【請求項59】
前記プロテアーゼ切断部位が、トロンビン切断部位、第Xa因子切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、Tev切断部位、またはカテプシン切断部位である、請求項58に記載の治療剤。
【請求項60】
前記スペーサー部分が、式[(Gly)−Ser](配列番号22)を有する非切断可能部分を含み、式中、nは1〜4であり、mは1〜4である、請求項58に記載の治療剤。
【請求項61】
前記ELP成分が、配列番号1〜12より選択される少なくとも1つの繰返しユニットを含む、請求項52から60のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項62】
前記繰返しユニットが、VGPXG(配列番号3)である、請求項61に記載の治療剤。
【請求項63】
前記繰返しユニットが、Ile−Pro−Gly−X−Gly(配列番号5)、またはLeu−Pro−Gly−X−Gly(配列番号7)であり、Xは任意の天然または非天然のアミノ酸残基であり、Xは少なくとも2つのユニット間で変化する、請求項61に記載の治療剤。
【請求項64】
各Xが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン残基から独立に選択される、請求項62または63に記載の治療剤。
【請求項65】
約50kDa未満の分子量を有する、請求項52から64のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項66】
前記ELP成分が、37℃より高いTtを有する、請求項52から65のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項67】
遺伝的にコードされた融合タンパク質である、請求項52から66のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項68】
請求項67に記載の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項69】
前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御要素をさらに含む、請求項68に記載のポリヌクレオチド。
【請求項70】
前記発現制御要素がプロモーターを含む、請求項69に記載のポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項68から70のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項72】
請求項71に記載のベクター、または請求項68から70のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞。
【請求項73】
請求項52から67のいずれか一項に記載の治療剤、および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項74】
請求項52から67のいずれか一項に記載の治療剤、または請求項73に記載の医薬組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、対象の生物学的状態、障害、または疾患を治療または予防するための方法。
【請求項75】
前記対象が糖尿病を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
エラスチン様ペプチド(ELP)成分、および第VII/VIIa因子またはその機能的アナログを含む治療剤。
【請求項77】
前記ELP成分が、前記第VII/VIIa因子または機能的アナログと、前記第VII/VIIa因子のNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項76に記載の治療剤。
【請求項78】
第1の第VII/VIIa因子または機能的アナログが前記ELPと、前記ELP成分のN末端で共有結合し、および第2の第VII/VIIa因子または機能的アナログが前記ELP成分と、前記ELP成分のC末端で共有結合している、請求項76または77に記載の治療剤。
【請求項79】
前記第VII/VIIa因子または機能的アナログが前記ELP成分と、前記ELP成分のNおよび/またはC末端で共有結合している、請求項76に記載の治療剤。
【請求項80】
第1のELP成分が前記第VII/VIIa因子または機能的アナログと、そのN末端で共有結合し、および第2のELP成分が前記第VII/VIIa因子または機能的アナログと、そのC末端で共有結合している、請求項76または77に記載の治療剤。
【請求項81】
前記ELP成分と第VII/VIIa因子または機能的アナログとの間に、スペーサー部分をさらに含む、請求項76から80のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項82】
前記スペーサー部分が、1つまたは複数のプロテアーゼ抵抗性部分、非ペプチド性化学的部分、およびプロテアーゼ切断部位を含む、請求項81に記載の治療剤。
【請求項83】
前記プロテアーゼ切断部位が、トロンビン切断部位、第Xa因子切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、Tev切断部位、およびカテプシン切断部位である、請求項82に記載の治療剤。
【請求項84】
前記スペーサー部分が、式[(Gly)−Ser](配列番号22)を有する非切断可能部分を含み、式中、nは1〜4であり、mは1〜4である、請求項82に記載の治療剤。
【請求項85】
前記ELP成分が、配列番号1〜12より選択される少なくとも1つの繰返しユニットを含む、請求項76から84のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項86】
前記繰返しユニットが、VPGXG(配列番号3)である、請求項85に記載の治療剤。
【請求項87】
Xが任意の天然または非天然のアミノ酸残基であり、Xは少なくとも2つのユニット間で変化する、請求項86に記載する治療剤。
【請求項88】
各Xが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン残基から独立に選択される、請求項86に記載の治療剤。
【請求項89】
約70kDa未満の分子量を有する、請求項76から88のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項90】
前記ELP成分が37℃より高いTtを有する、請求項76から89のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項91】
遺伝的にコードされた融合タンパク質である、請求項76から90のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項92】
請求項91に記載の治療剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項93】
前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御要素をさらに含む、請求項92に記載のポリヌクレオチド。
【請求項94】
前記発現制御要素がプロモーターを含む、請求項93に記載のポリヌクレオチド。
【請求項95】
請求項92から94のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項96】
請求項95に記載のベクター、または請求項92から95のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む単離された宿主細胞。
【請求項97】
請求項76から91のいずれか一項に記載の治療剤、および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項98】
請求項76から91までのいずれか一項に記載の治療剤、または請求項97に記載の医薬組成物の有効量を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、生物学的状態、障害、または疾患について対象を予防または治療するための方法。
【請求項99】
前記対象が出血を有する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記対象が血友病を有する、請求項98または99に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図9】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図5B−1】
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【図5B−2】
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【図5B−3】
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【図6A】
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【図6B−1】
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【図6B−2】
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【図6B−3】
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【図7A】
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【図7B−1】
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【図7B−2】
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【図7B−3】
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【図7B−4】
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【図7B−5】
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【図7B−6】
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【図8A】
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【図8B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−526303(P2011−526303A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516765(P2011−516765)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/049059
【国際公開番号】WO2009/158704
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(591101777)デューク ユニバーシティ (10)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】