エリスロポエチンの精製
本発明において、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を使用する少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含むエリスロポエチンの精製する方法を報告する。この方法は、以下の工程:i)カルシウムイオンを含有する溶液中のエリスロポエチンを、カルシウムイオンを含有する溶液で平衡化させた、即ち、エリスロポエチンがヒドロキシアパタイトを含有する固定相と結合する条件下で、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相と接触させ、ii)前溶液より少ないカルシウムイオンを含有する溶液を、i)由来のヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させ、その際はエリスロポエチンがヒドロキシアパタイト含有固定相から分離されず、そして、iii)0.5mMを下回るカルシウムイオンを含有するさらなる溶液を、ii)由来のヒドロキシアパタイト含有固定相を通過させ、それにより、エリスロポエチンをヒドロキシアパタイト含有固定相から分離する、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを使用するエリスロポエチン(EPO)の精製方法を報告するものである。さらに、宿主細胞のタンパク質を涸渇させる方法およびEPO組成物のイソ型分布を改変する方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
エリスロポエチン(EPO)は、赤血球の産生を刺激するヒトの糖タンパク質である。その作用および治療適用は、例えばEP0148605、EP0205564、EP0209539およびEP0411678、ならびにHuang, S.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 2708-2712、Lai, P.H., et al., J. Biol. Chem. 261 (1986) 3116-3121、およびSasaki, H., et al., J. Biol. Chem. 262 (1987) 12059-12076に詳細に記載されている。
【0003】
EPOは、健康な人間の血漿中にはごく低濃度でしか存在しない。再生不良性貧血患者の尿からのヒトEPOの単離が知られている(Miyake, T., et al., J. Biol. Chem. 252 (1977) 5558-5564)。イオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈殿、ゲル濾過および吸着クロマトグラフィーを含む7段階法が記載されている。EP0148605およびEP0205564は、CHO細胞における組換えヒトEPOの生産を報告している。組換え産生されたEPOの精製方法は、Nobuo, I., et al., J. Biochem. 107 (1990) 352-359に記載された。
【0004】
エリスロポエチンを生産および精製するさらなる方法が知られており、特にEP0148605、EP0205564、EP0255231、EP0830376、EP0267678、EP0228452、EP1127063、EP0209539、EP0358463、EP1010758、EP0820468、EP0984062、EP0640619、EP0428267、EP1037921ならびにLai, P.H., et al., J. Biol. Chem. 261 (1986) 3116-3121、Broudy, V.C., et al., Arch. Biochem. Biophys. 265 (1988) 329-336、Zou, Z., et al., Journal of Chrom. 16 (1998) 263-264、Inoue, N., et al., Biol Pharm. Bull. 17 (1994) 180-184、Qian, R.L., et al., Blood 68(1) (1986) 258-262、Krystal, G., et al., Blood 67(1) (1986) 71-79、Lange, R.D., et al., Blood Cells 10(2-3) (1984) 305-314、Sasaki, R., et al., Methods Enzymol. 147 (1987) 328-340、Ben Ghanem, A., et al., Prep. Biochem, 24 (1994) 127-142、Cifuentes, A., et al., J. Chrom. A 830 (1999) 453-463;およびGokana, A., et al., J. Chromat. A 791 (1997) 109-118に記載されている。
【0005】
EP1394179は、動物タンパク質を含まないエリスロポエチンを生産する方法を報告している。EP0986644の主題はウイルスプロモーターを用いた内因性遺伝子活性化によるエリスロポエチンの生産である。EP1428878には、組換え糖タンパク質、特にエリスロポエチンの生産方法が報告されている。EP1492878には、所望プロファイルのエリスロポエチン糖イソ型を生産する方法が報告されている。
【発明の概要】
【0006】
組換えエリスロポエチンの生産および精製には、幾つかの工程、特にクロマトグラフィー工程が必要である。
【0007】
本発明の第一の局面は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を有する少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含むエリスロポエチンの生産方法であって、
i)0.5mM〜20mM濃度でカルシウムイオンを含有するエリスロポエチン含有溶液を、同濃度0.5mM〜20mMでカルシウムイオンを含有する溶液で平衡化したヒドロキシアパタイトを含有する固定相と接触すること、
ii)0.5mMを下回る濃度のカルシウムイオンを含有する溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過すること、
iii)0.5mMを下回る濃度のカルシウムイオンを含有する溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させ、それによりエリスロポエチンを生産すること、
を含む、エリスロポエチンの生産方法である。
【0008】
或る態様では、生産されたエリスロポエチンは、i)のエリスロポエチン含有溶液と比較して、de−O−EPO種およびde−N−EPO種が涸渇している。さらなる態様では、本発明は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を伴うクロマトグラフィー工程に加えて、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー工程を含む。さらなる態様では、全てのクロマトグラフィー工程が各々異なるクロマトグラフィー原理に基づいており、それにより、各クロマトグラフィー原理がその方法において1回だけ利用される。さらなる態様では、そのクロマトグラフィー原理は、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および/または陰イオン交換クロマトグラフィーから選ばれる。さらなる態様では、クロマトグラフィー工程の順序は、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー、場合により逆相クロマトグラフィー、および陰イオン交換クロマトグラフィーである。或る態様では、本発明方法は、該クロマトグラフィー工程に加えて、場合により中間工程、例えば塩析、濃縮、透析濾過、限外濾過、透析、および/またはエタノール沈殿を含む。
【0009】
本発明の1つの局面は、本発明方法を用いて取得したエリスロポエチン組成物である。
【0010】
本発明のさらなる局面は、本発明に係るヒドロキシアパタイト含有固定相を伴うクロマトグラフィー工程を含む、エリスロポエチン調製物からチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞タンパク質を涸渇させる方法であって、この場合、エリスロポエチン含有画分の収集が、280nmでの光吸収により調節され、15mAU〜75mAUの吸収で始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する。
【0011】
或る態様では、ヒドロキシアパタイト含有固定相は純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトである。別の態様では、工程ii)および/またはiii)のクロマトグラフィーで使用される溶液は、およそ5mM濃度のリン酸イオンを含有し、別の態様では、5mMのリン酸ナトリウムまたは同カリウムを含有する。
【0012】
本発明の別の局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比率が83:14:2〜74:21:6の範囲であるエリスロポエチンイソ型の混合物であるエリスロポエチン組成物を調製する方法である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0013】
したがって、本発明のさらなる局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比率が83:14:2〜74:21:6の範囲であるエリスロポエチンイソ型の混合物であるエリスロポエチン組成物である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0014】
或る態様では、エリスロポエチン組成物は、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0015】
したがって、本発明のさらなる局面は、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲であるエリスロポエチン組成物である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0016】
本発明のさらなる局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有するエリスロポエチンイソ型の混合物であり且つ本発明方法により得られたエリスロポエチン組成物である。
【0017】
さらに別の本発明の局面は、エリスロポエチンをコードしている核酸を含む宿主細胞を、適当な培地中でエリスロポエチンの産生に好適な条件下で培養し、そのエリスロポエチンを培地または該細胞から単離することを含む、組換えエリスロポエチンの生産方法である。或る態様では、該細胞を浮遊培養する。さらなる態様では、該細胞を発酵槽、特に10l〜50000l容量の発酵槽で培養する。
【0018】
培地からのエリスロポエチンの単離は以下の工程を含む:
(a)細胞培養上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(b)場合により、(a)の画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(c)(a)または(b)の画分を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、および本発明方法を利用してエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(d)(c)の画分を濃縮しまたは/そして逆相HPLC材料を通過させること
【0019】
精製方法の工程(a)は、場合により前処理されていてもよい細胞上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に通すことを含む。或る態様では、そのアフィニティークロマトグラフィー材料は、青色染料をカップリングさせてあるアフィニティークロマトグラフィー材料である。一例はブルーセファロースである。或る態様では、発酵/その産生に血清含有量が≧2%(v/v)の培地が使用された場合には、エリスロポエチンを含有する溶出液をアフィニティークロマトグラフィー材料から溶出させた後、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料を通過させる。或る態様では、その疎水性相互作用クロマトグラフィー材料はブチルセファロースである。工程(a)、または採用された場合には工程(b)由来の溶出液を、工程(c)においてヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させ、エリスロポエチンを含有する溶出液を単離する。或る態様では、濃縮は排除クロマトグラフィー、例えば膜濾過による。この場合、例えば排除サイズ10kDaの膜の使用が有利であることが判明している。本発明方法によって得られるエリスロポエチンは、α−2,3−結合した、または/およびα−2,6−結合したシアル酸残基を含み得る。
【0020】
本発明の別の局面は、以下の工程:
a)活性化ポリ(エチレングリコール)試薬を用いてエリスロポエチンを共有結合させ、即ちPEG化すること、
b)このポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを、2つの連続する陽イオン交換クロマトグラフィー工程によって精製すること、およびそれによりポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産すること、
を含む、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産する方法であって、
工程a)で使用されるエリスロポエチンは、本発明方法により取得する、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産する方法である。
【0021】
本発明の別の局面は、本発明方法により得られたエリスロポエチンを含む、医薬組成物である。本発明に係る組成物は、場合により従来の薬学的希釈剤、賦形剤、助剤および担剤と共に、薬学的調製物として調合できる。薬学的調製物の生産に使用できる本発明に係る組成物は、逆相HPLC(例えばヴィダックC4カラムによる)または/およびサイズ排除クロマトグラフィー(例えばTSK 2000SW ウルトラパックカラムによる)で測定した場合、少なくとも99%、または別の態様では少なくとも99.9%の純度を有する。本発明のさらなる局面は、本発明方法を用いて得られたエリスロポエチンを含む、貧血を処置するための医薬組成物である。
【0022】
発明の詳細な説明
異なった物質がクロマトグラフィーによって相互に分離できるかどうかは、特に、そのクロマトグラフィーが実施される条件、加えて良好なカラム充填およびクロマトグラフィー材料(固定相)の選択に依存する。これには、緩衝系の選択に加えて、不純物および生成物が溶離される様式が包含される。
【0023】
本発明は、以下の工程:
i)第一濃度のカルシウムイオンを含有する、精製すべきエリスロポエチン溶液を、第二濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を通過させた、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相と接触させること、
ii)i)由来の溶液より低い濃度、即ち第三濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に通すこと(それにより、この通過の間、エリスロポエチンは、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に結合したままであり/ヒドロキシアパタイトを含有する固定相から分離されない)、および、
iii)0.5mMを下回る、即ち第四濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を、ii)由来のヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させること(それにより、エリスロポエチンが、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相から分離され溶出する)、
を含む、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含む、エリスロポエチンの精製方法を報告するものである。
【0024】
或る態様では、第一および第二ならびに/または第三および第四濃度は異なっている。別の態様では、第三および第四のカルシウムイオン濃度は、第一および第二カルシウムイオン濃度の10%またはそれ以下である。
【0025】
以下、EPOとも称するエリスロポエチンは、赤血球前駆細胞の分化および分裂プロセスを刺激し赤血球を与える生物学的能力を有するタンパク質として理解される。このタンパク質は好ましくはヒトエリスロポエチンであり、165または166アミノ酸で構成され(配列番号1および2)、分子量は約34〜38kDaである。グリコシル残基が分子量の約40%を占める。類似の生物学的性質を有しEPO産生宿主細胞の培養により得られるエリスロポエチンを含む、PEG化EPO、即ちポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンのようなEPOの誘導体およびフラグメントもまた本発明方法により製造できる。ヒトEPOのDNA配列およびタンパク質配列が、特にEP0205564およびEP0209539に記載されている。
【0026】
EPOの構造は2個のジスルフィド橋および幾つかの糖鎖を含む。以下、グリコシル残基とも称するこの糖鎖は、タンパク質骨格に結合している。幾つかの鎖はアスパラギン残基を介してN−グリコシド結合でこのタンパク質に結合し、1個の鎖はセリン残基を介してO−グリコシド結合でこのタンパク質に結合している。
【0027】
シアル酸(N−アセチルノイラミン酸)は通常、(分岐または非分岐)グリコシル残基の末端に組み込まれている。このグリコシル残基はその後もはや延長できない。シアル酸はGal(β1−4)GlcNAcのα2−3結合にのみ結合できる(Nimtz, M., et al., Eur. J. Biochem. 213 (1993) 39-56)。
【0028】
「アンテナリティ」または「グリコシル残基のアンテナリティ」という語は、グリコシル残基の分岐の程度を指す。或るグリコシル残基が例えば2本の腕を有する場合、そのグリコシル残基はバイアンテナリーであり、即ちそれはバイアンテナリーグリコシル残基である。グリコシル残基は、反復部分、いわゆるリピートを有することがある。これらは、配列GlcNAcおよびガラクトース(N−アセチルラクトサミン)が反復している領域である。グリコシル残基の鎖長、したがってそのタンパク質の分子量は、リピートの数が相違しているために異なっている(Nimtz, M., et al., Eur. J. Biochem. 213 (1993) 39-56)。EPOの場合、トリアンテナリーグリコシル残基は最大1リピートしか含むことができず、一方テトラアンテナリーグリコシル残基は2リピートより多くを含むことができない。バイアンテナリーグリコシル残基はリピートを持たない。
【0029】
エリスロポエチンは多重グリコシル化タンパク質である。グリコシル残基の変異および様々な程度のシアリデーション(sialidation)の故に、自然界でもバイオテクノロジー的生産においても、異なったグリコシル化型およびイソ型が出現する。高率のリピートはさらに、in vivo活性に好ましい影響を及ぼす(例えばEP0409113を参照されたい)。
【0030】
エリスロポエチンは10の主要なイソ型で構成される。「イソ型」という語は、同一のアミノ酸配列および同数の結合シアル酸残基を有するEPO分子の一群を指す。このイソ型群は、同じ等電点を持ち、アミノ酸配列に結合したグリコシル残基の広がり、複雑性およびアンテナリティに関して相違する。例えば、「EPOのイソ型2」という語は、14個のシアル酸残基を有するEPO分子の一群を包含する。イソ型3は13個のシアル酸を有する、等々である。さらに、末端に存在しないさらなるシアル酸を有する稀な型のEPOがある。即ち、イソ型1は15個、そしてイソ型1’は16個の、グリコシル残基に結合したシアル酸を有する。
【0031】
本発明の或る局面は、高純度且つ或るエリスロポエチンイソ型分布を有するエリスロポエチンを製造する方法であり、その方法は、最初のエリスロポエチンイソ型分布が変化するような、異なるクロマトグラフィー工程の組み合わせを含む。該方法の、異なるクロマトグラフィー工程は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を有するクロマトグラフィー工程、ならびに、i)色素アフィニティークロマトグラフィー、ii)疎水性相互作用クロマトグラフィー、iii)陰イオン交換クロマトグラフィー、iv)逆相クロマトグラフィー、および/またはv)ゲル浸透クロマトグラフィー、から選ばれるクロマトグラフィーのうち少なくとも1つを含む。この局面の1つの態様では、減少した数のシアル酸残基を有するエリスロポエチンイソ型が涸渇しまたは完全に分離される。本出願の中では、「完全に」という語は、濃度/量がその方法の検出限界を下回るため、対応化合物が所定の分析方法によってもはや検出できないことを意味する。或る態様では、エリスロポエチン1分子あたり最大3、または最大4、または最大5(5を含む)個のシアル酸残基を有するエリスロポエチンイソ型が涸渇し、または完全に分離される。或る態様では、イソ型混合物が6〜15のシアル酸基、または7〜15のシアル酸基を有するイソ型を含むエリスロポエチンが得られる。
【0032】
様々なグリコシル残基およびイソ型に加えて、さらなるEPO型が存在する。de−N−EPOおよびde−O−EPO型の場合、これらは、完全には翻訳後グリコシル化されておらず、セリン残基126(de−O−EPO)またはアスパラギン残基24(de−N−EPO)においてグリコシル化されていない種である。
【0033】
ヒドロキシアパタイトは、実験式Ca5(PO4)3OHを有するリン酸カルシウムに基づく無機化合物である。クロマトグラフィー固定相として、それはタンパク質、酵素、免疫グロブリンおよび核酸の分離に好適である。それは自然界では主に骨および歯牙エナメル質に存在している。ヒドロキシアパタイトの形成は高いpH値が有利である。ヒドロキシアパタイトは酸性pH値で溶解する。ヒドロキシアパタイトの様々な結合メカニズムがクロマトグラフィー分離に利用されており、クロマトグラフィー分離においてそれは主として吸着剤として働くが、イオン交換材料の性質も持っている。タンパク質の正に荷電したアミノ基(例えばリジン)および固定相の負に荷電したリン酸基の間にはイオン結合の形成が可能である。さらに、タンパク質のカルボキシ基(例えばアスパラギン酸)はヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンと結合できる。この材料の特徴は、固定相のリン酸基および溶液中のカルシウムまたはマグネシウムイオンおよびタンパク質のカルボキシ基の間に複雑な結合が生じ得ることである(M. Kratzel, “Pharmazeutische Bioanalytik” Part 5, University of Vienna)。
【0034】
種々のヒドロキシアパタイト材料が知られている。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、或る態様では低いリン酸塩濃度において溶出する。
【0035】
本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相はアガロース骨格中に組み込まれたヒドロキシアパタイトで構成される。好適なカラム材料は例えばヒドロキシアパタイトウルトロゲル(BioSepra, Germany)またはHAバイオゲルHT(Biorad, Germany)である。クロマトグラフィーはほぼ中性pHで実施するのが有利である。アガロースマトリックスに埋め込まれたヒドロキシアパタイトは、純粋なヒドロキシアパタイトと比較して、より高い耐圧性を有する(例えばHA ウルトロゲルとして入手可能)。この材料は50μm〜160μmという不均一な粒子サイズ分布を持ち、主要な画分は70μm〜90μmである。表面は非常に粗く、粒子は限られた範囲内でのみ球状である。
【0036】
別の態様では、本発明方法で使用されるヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、高温高圧で焼結させた純粋なヒドロキシアパタイトで構成される(例えばCHT(Biorad由来のセラミックヒドロキシアパタイト)として入手可能)。これは耐圧性材料であり、比較的対称性且つ一様に球状であり、比較的滑らかな表面を有する粒子で構成される。この粒子はCHT−1型では約40μmのサイズおよび約40m2/gの比表面積を有する。平均粒子サイズは20μm〜30μmである。CHT材料2型は、特に免疫グロブリンのようなより大きな分子のために開発された。CHT−2型の比表面積は19m2/gであり、よってCHT−1型の比表面積のほぼ半分である。その粒子はCHT−1型と類似の形態である。この粒子もまた約40μmのサイズを有する。したがって本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、高温高圧で焼結させた、比表面積約40m2/gのヒドロキシアパタイトである。
【0037】
さらなる態様では、本発明方法で使用するためのヒドロキシアパタイト含有固定相は、純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトで構成される(例えば、Calbiochem由来のヒドロキシアパタイトファストフローとして入手可能)。その粒子は菱形であり、50μm〜100μmのサイズである。
【0038】
図1は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相(HA−ウルトロゲル)によるエリスロポエチンのクロマトグラフィーのクロマトグラム例を示す。枠で囲んだ領域は、分画された生成物のピークであり、これを画分1〜16に細分した。画分17はピークショルダーであり、別個の画分として集めた。個々の画分の純度はピークを超えるとほぼ直線的に減少している(図2を参照されたい)。
【0039】
ヒドロキシアパタイトを含有する前記の様々な固定相を、エリスロポエチンを精製するための同じクロマトグラフィー法を用いて比較し、それを実施例4に記載する。
【0040】
【表1】
【0041】
或る態様では、CHOタンパク質の濃度が15ng/mlを下回るならばその試料はCHOタンパク質を含まないとみなした。セラミックおよび結晶性ヒドロキシアパタイト材料は、異なる量のエリスロポエチンをロードした場合同等であるが、一方アガロースを基礎とする材料では、収量および生成物の品質は、5mgEPO/mlカラム材料のロードにおいてかなり低下することが見出された。即ち、HAウルトロゲルヒドロキシアパタイト材料による分離では、分離中に10%近いエリスロポエチンが失われる。
【0042】
分析用逆相HPLC(RP−HPLC)によるエリスロポエチン含有画分の分析は、エリスロポエチンピークの減少側にあるほぼ全ての画分において生成物ピークが肩部を有することを示し(図3)、それがde−O−EPOであると同定された。このde−O−EPOの割合を、RP−HPLCクロマトグラムに垂線を引くことにより半定量的に決定し、EPOの量と共に図4に示す。この肩部が形成される理由は、バイアンテナリーおよびトリアンテナリーグリコシル残基含有EPO型がヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいて特に涸渇するためである。これらの型は一方で、分析用RP−HPLCではde−O−EPOの直前に溶出する。この選択的涸渇の結果、de−O−EPO肩部が際立つのである。
【0043】
タンパク質様不純物は溶出ピーク全体にわたって分布するが、前方の画分は、後方の画分より低い割合のCHO宿主細胞タンパク質を含有する(図5を参照されたい)。
【0044】
疎水性EPOグリコシル型がより多いため、エリスロポエチンの疎水性は後方のEPO含有画分で増大する。ヒドロキシアパタイトを含有する固定相でのクロマトグラフィーは、特に塩基性イソ型、即ちより少ないシアル酸を含有するイソ型を涸渇させる。図6に示すように、シアル酸残基の数はエリスロポエチン含有画分全体で一様に低下する。塩基性は、イソ型1からイソ型9までは増大する。一方酸性イソ型は最初のエリスロポエチン含有画分(画分1〜画分5)に多く、最後の方のエリスロポエチン含有画分(画分12〜画分16)では塩基性イソ型へのかなりのシフトが見られる(図7)。グリコシル型の分析は、親水性EPO型が最初の画分に溶出し、それが高い含有量のテトラアンテナリー構造およびより多くのリピートを有することを示している。より少ないリピートまたは高い比率のトリアンテナリー構造を有するより疎水性のEPO型は後で溶出し、その過程はテトラアンテナリーグリコシル型とは逆である(図8)。バイアンテナリーグリコシル型の比率は徐々に増大する(図9)が、一方その増加は一様ではなく段階的である。
【0045】
図10もまた生成物ピーク全体におけるグリコシル型の分布を示している。高いリピート含量を有するテトラアンテナリーグリコシル型が最初のEPO含有画分(例えばF1、画分1)に存在するのに対し、最後のEPO含有画分(例えばF16、画分16)には高い比率のトリアンテナリーおよびバイアンテナリーグリコシル型が存在する。したがって、本発明方法によるヒドロキシアパタイト含有固定相のクロマトグラフィーでは、よりグリコシル化の少ないEPO型は涸渇し、後で溶出することが見出された。
【0046】
CHO宿主細胞タンパク質の含有量もまた末期のEPO含有画分において増大する。その結果、より良好なEPOおよびCHO宿主細胞タンパク質の分離ができる、即ちCHO宿主細胞タンパク質を含有するより著明な肩部を伴うクロマトグラフィー法を利用して、良好な分離、およびCHO宿主細胞タンパク質の涸渇が達成できる(図11を参照されたい)。故に、本発明の或る局面は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィーにおいてエリスロポエチン含有画分中のCHO宿主細胞タンパク質を除去する方法であって、本発明の或る態様において、エリスロポエチン含有画分の収集が、15mAU〜75mAUで始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する波長280nmでの光吸収によって調節されることを特徴とする、方法である。
【0047】
或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は結晶性ヒドロキシアパタイトである。この固定相は、生成物ピークが一般に極めて平坦であり、際立った肩部を有するが故に好適である。さらなる態様では、クロマトグラフィーに使用される洗浄および溶離工程の溶液は、5mM濃度のリン酸イオンを含有する。このリン酸濃度を採用することにより、EPO含有画分中のCHO宿主細胞タンパク質の量を、対応する分析法の定量または検出限界未満の値まで低下/涸渇させることができるため、このリン酸イオン濃度が、セラミックヒドロキシアパタイト含有固定相によるエリスロポエチンの精製にとって有利であることが見出されている。
【0048】
ヒドロキシアパタイトを含有する種々の固定相を用いて得られたエリスロポエチンのイソ型分布を図12に示す。ヒドロキシアパタイト含有固定相の種類およびロードのいずれもイソ型分布に大きな影響を及ぼさないことが見出された。セラミックおよび結晶性ヒドロキシアパタイト相の特徴は、これらはアガロース型ヒドロキシアパタイト相よりも塩基性イソ型を幾分多く涸渇させるということである。或る態様では、本発明により得られたエリスロポエチンの純度は、RP−HPLCで測定したところ99.3%を上回る。或る態様では、場合により5mg/mlのロードにおいて、得られるEPOの純度はRP−HPLCで測定したところ99.3%〜99.9%である(%=RP−HPLCクロマトグラムに基づく面積パーセント)。固定相間の相違はCHO宿主細胞タンパク質の涸渇/分離においても観察される。アガロース型ヒドロキシアパタイト相および結晶性ヒドロキシアパタイト相は、セラミックヒドロキシアパタイト相より有効性が低い。よって本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相はセラミックヒドロキシアパタイト相である。
【0049】
ヒドロキシアパタイト含有固定相によるクロマトグラフィーに使用される溶液中に含まれるカルシウムイオン濃度は精製に明らかな影響力を持ち、故に、それにより得られるエリスロポエチンの純度にも影響力を持つことが見出された。溶液中のカルシウムイオン濃度が低下すると、殆どのエリスロポエチンが、段階的溶離によって(即ち、溶液3〜溶液4の工程によって)ヒドロキシアパタイト含有固定相から取得できる(実施例4および8、ならびに図13を参照されたい)。エリスロポエチンの溶出後に(溶液5への変更に伴う)カルシウムイオン濃度が増大すると、CHO宿主細胞タンパク質およびDNAがヒドロキシアパタイト含有固定相から溶出する。低下したカルシウムイオン濃度の溶液により得られたエリスロポエチン画分は、その後溶出するエリスロポエチン画分より遙かに酸性である(図14を参照されたい)。増大したカルシウムイオン濃度で得られたピークの減少側は極めて平坦であり、即ち、それは多くのCHO宿主細胞タンパク質を含有する。これに対して、低下したカルシウムイオン濃度で得られたピークは極めて対称性である。
【0050】
本発明は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を使用する少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含むエリスロポエチンの精製法を含み、その方法は、
i)a)エリスロポエチンおよび第一濃度でカルシウムイオンを含有する第一溶液を提供すること、
b)第二濃度でカルシウムイオンを含有する、或る容量の第二溶液を通過させた、ヒドロキシアパタイト含有固定相を提供すること(平衡化工程)、
c)a)の溶液をb)で得られた固定相に適用すること、
ii)第一および第二溶液よりも低い第三濃度のカルシウムイオンを含有する第三溶液を、工程i)で得られたヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させること(洗浄工程)、および、
iii)0.5mMまたはそれ以下のカルシウムイオンを含有する第四溶液の或る容量を、ii)由来のヒドロキシアパタイト含有固定相を通過させること、それにより、ヒドロキシアパタイト含有固定相からエリスロポエチンを分離回収すること、およびこのことによって精製エリスロポエチンを得ること(溶出工程)、
を含む。
【0051】
第一の態様では、カルシウムイオンの第一濃度はカルシウムイオンの第二濃度と同じである。さらなる態様では、第二溶液および第三溶液は2−プロパノールを含有する。さらなる態様では、カルシウムイオンの第一および/または第二濃度は4mM〜20mMである。さらなる態様では、カルシウムイオンの第一および/または第二濃度は5mMである。さらなる態様では、この溶液のpH値はpH6.9±0.2である。さらなる態様では、2−プロパノール含有量は7〜12%(v/v)であり、或る態様では9%(v/v)である。さらなる態様では、カルシウムイオンの第三濃度は0.5mMに等しいかそれ以下であり、或る態様では0.000001mM〜0.5mMである。さらなる態様では、カルシウムイオンの第三濃度は0.1mMに等しいかそれ以下であり、或る態様では0.000001mM〜0.1mMである。別の態様では、第四溶液は0.1mMまたはそれ以下のカルシウムイオンを含有し、或る態様では0.000001mM〜0.1mMである。さらなる態様では、4〜7カラム容量の第二溶液をカラムに適用する。さらなる態様では、カラムに適用する第三溶液の容量は0.5〜2.5カラム容量である。さらなる態様では、工程ii)において固定相から少量のエリスロポエチンしか溶出/分離されない。さらなる態様では、この量は固定相に結合しているエリスロポエチンの10%未満であり、別の態様では5%未満であり、最後の態様では1%未満である。さらなる態様では、カルシウムイオンはCaCl2としてこの溶液に導入される。本発明方法の或る態様では、第二溶液は、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノールを含有しpH6.9±0.2である。さらなる態様では、第三溶液は、20mM TRIS−HCl、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノールを含有しpH6.9±0.2である。さらなる態様では、第四溶液は、10mM TRIS−HClを含有しpH6.9±0.2である。例えば9%(v/v)という値は、9%の2−プロパノールを提供し、調製された溶液を、最終容量が得られるまで添加することによってその溶液が作製されることを意味する。
【0052】
テトラアンテナリーグリコシル型の量は、第五溶液で得られた画分に比較して第四溶液で得られた画分において増加する。しかしながら、第五溶液で得られた画分は、バイアンテナリーおよびトリアンテナリーグリコシル型の比率がより高い。さらに、第五溶液を使用すると、修飾無しのCaCl2によるCHT2型のランに比較して、より高率のde−O−EPOおよびde−N−EPO種が画分中に見出されることが判明した。
【0053】
本発明のさらなる局面は、EPOをコードしている核酸を含む細胞を適当な培地で適当な条件下に培養し、培地または細胞からエリスロポエチンを単離することを含む、エリスロポエチンの生産方法である。或る態様では、この細胞を浮遊培養する。さらなる態様では、この培養を発酵槽、特に10l〜50000l容量の発酵槽で実施する。この細胞の培地からのエリスロポエチンの単離は、以下の工程:
a)細胞培養上清または破砕した細胞懸濁液の上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
b)場合により、工程a)で得られたエリスロポエチン含有画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびEPOを含有する画分を回収/収集すること、
c)a)またはb)のEPOを含有する画分をヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、本発明方法を使用してエリスロポエチン含有画分を回収/収集すること、および、
d)c)のEPOを含有する画分を、濃縮しまたは/そして逆相HPLC材料に適用すること、
を含む。
【0054】
精製方法の工程a)は、場合により前処理されていてもよい細胞培養上清を、アフィニティークロマトグラフィー材料に適用することを含む。或る態様では、このアフィニティークロマトグラフィー材料は、青色色素を共有結合させた材料である。その一例はブルーセファロースである。或る態様では、2%に等しいまたはそれ以上(≧2%)(v/v)の血清含有量の培地を使用した場合に、アフィニティークロマトグラフィー材料から溶出させた後、このエリスロポエチン含有溶出液を、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用する。或る態様では、この相互作用クロマトグラフィー材料はブチルセファロースである。工程a)、または採用した場合には工程b)から得た溶出液を、本方法の工程c)においてヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用し、エリスロポエチンを含有する溶出液を本発明方法に従って回収する。或る態様では、この溶出液を排除クロマトグラフィーによって、例えば膜濾過によって濃縮するが、その場合、排除サイズ10kDaの媒体、例えば膜の使用が好都合であると判明している。本発明方法により得られるエリスロポエチンは、α−2,3−結合または/およびα−2,6−結合したシアル酸残基を含み得る。
【0055】
組換えエリスロポエチンを生産するため、無細胞培養上清を単離し本発明方法に付す。必要ならば濁りを分離するための濾過および/または濃縮を精製工程の前に追加で実施することができる。
【0056】
第一の工程では、色素クロマトグラフィーがプロテアーゼによる夾雑物を除去する。或る態様では、Cibachron(登録商標)ブルーのような青色トリアジン色素を色素として使用する。他のトリアジン色素もまた好適である。色素クロマトグラフィーの支持材料は重要でないが、好ましくは多糖類型支持材料、例えばセファロース、好ましくはセファロース6ファストフローが用いられる。カラムは、4.5〜5.5のpH値、或る態様ではpH4.8〜5.2の緩衝液で平衡化し、さらなる態様では酢酸緩衝液または酢酸で平衡化する。或る態様では、このクロマトグラフィーを1℃〜10℃の温度で、別の態様では約5℃の温度で操作する。或る態様では、溶出/回収は、酸性または中性pH(或る態様ではpH5〜7)で塩濃度を増大させることによる。塩基性pH、或る態様ではpH8.5〜9.5、別の態様ではpH8.8〜9.2において、塩濃度を大きく変化させずにエリスロポエチンを溶出させることも可能である。
【0057】
第二の工程では、疎水化支持体によるクロマトグラフィーを実施する。疎水性クロマトグラフィーのための好適な吸着剤は、例えばProtein Purification Methods, A practical Approach, Ed. Harris, E.L.V. and Angal, S., IRL Press, Oxford, England(1989), p.224;およびProtein Purification, Janson, J.C., Ryden, L., (ed.), VCH Publisher, Weinheim, Germany (1989), p.207-226に記載されている。支持材料自体は重要でなく、例えばアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーであるセファロース、またはシリカゲルとすることができる。疎水性基、或る態様ではブチル基が支持体に共有結合していることが重要である。好適な支持体が市販されている(例えば、Tosoh Haas, Germany由来のブチルトヨパール、またはPharmacia, Germany由来のブチルセファロース)。或る態様ではブチル化支持体が使用される。その他のアルキル化またはアリール化支持体は、エリスロポエチンと不可逆的に結合したり、より良好でない分離となることがある。疎水性クロマトグラフィーにおける溶出は、ヨウ化物、過塩素酸塩またはチオシアン酸塩のようなカオトロピック剤の添加により、またはグリセロール、エチレングリコールまたは2−プロパノールのようなアルコールの添加により、塩濃度を下げる(例えば、4mol/l〜0mol/lの勾配で)ことによって起こる。或る態様では、この疎水性クロマトグラフィーを中性pHで塩の存在下に、或る態様では約0.75mol/lNaClの存在下に実施する。低分子量アルコール、或る態様ではイソプロパノール(=2−プロパノール)の存在下に疎水性クロマトグラフィーを実施することも可能である。溶離緩衝液中の低分子量アルコールの濃度は平衡化緩衝液中の約2〜3倍である。洗浄緩衝液においては、低分子量アルコールの濃度は平衡化緩衝液中の約2倍である。平衡化のためには約10〜15%、或る態様では約10%の2−プロパノールを加え(クロマトグラフィー材料のロード);溶離のためには約25〜35%、或る態様では約27%の2−プロパノールを加え、そして洗浄緩衝液には19%の2−プロパノールを加える(指定した濃度は他のアルコールに対しても好適である。容量%、v/vで表記)。疎水性クロマトグラフィーは10℃〜40℃という広い温度範囲で実施できる。しかしながら、27±2℃の制御温度で操作するのが好都合である。
【0058】
次に、本発明方法に従い、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相での分離を実施できる。
【0059】
精製のための任意の工程として、ヒドロキシアパタイト工程に引き続き疎水化支持体による逆相クロマトグラフィーを行ってもよい。しかしながら通常これは、本発明に係るヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを利用する場合もはや必要ではなく、そのため省略できる。時間の節約に加えて、このことは費用をも削減し、後で分離せねばならない有機溶媒の使用を回避させる。以下のものが例えば逆相クロマトグラフィーのクロマトグラフィー材料として好適である:フェニルセファロースおよびオクチルセファロース(Pharmacia, Sweden)、ブチルトヨパール(Tosoh Haas, Germany)またはプロピル−TSK(Merck, Germany)。但しこの工程では、より長いアルキル基(例えばC8またはC18)を含む支持体の使用もまた有利である。或る態様では、カラムを2〜7の範囲のpHで、別の態様ではpH2.5で平衡化し、別の態様では水性トリフルオロ酢酸を使用する。溶離には、平衡化緩衝液から極性有機溶媒、例えばアセトニトリルの水溶液に至る勾配を使用する。クロマトグラフィー後、溶出液を中和するのが好都合である。
【0060】
本発明に係る精製法の次の工程として、陰イオン交換クロマトグラフィーが続く。この工程では、或る態様においてDEAEセファロースファストフロークロマトグラフィー材料をカラム材料として使用する。これを用いて平衡化をpH6〜pH9のpH値で、別の態様ではpH7.5で実施する。或る態様では場合により、酸性溶液(およそ4.5のpH値)で洗浄した後、溶離を中性または弱塩基性範囲(pH6〜9、或る態様ではイオン強度を高めつつ(或る態様ではNaClで)pH7.5)で実施する。或る態様では緩衝液としてリン酸緩衝液を使用する。
【0061】
或る態様では、このタンパク質調製物を0.1g〜10gのバッチで生産する。色素によるアフィニティークロマトグラフィー後の第二工程として疎水性クロマトグラフィーを実施すると、EPOが、或る態様では天然の哺乳動物タンパク質を含まない培地での培養後に、治療的用途に充分となる程精製され得ることが判明した(EP1394179)。Nobuo, I., et al., J. Biochem. 107 (1990) 352-359またはWO86/07494に記載のように、クロマトグラフィー精製前にプロテアーゼインヒビター(例えばCuSO4)を加える必要はない。疎水性クロマトグラフィーは、或る態様ではアルキル化(C4−C18)またはアリール化(或る態様ではフェニル化またはベンジル化)支持体で実施する。別の態様では特にブチル化支持体を使用する。
【0062】
本明細書において「天然の哺乳動物タンパク質を全く含まない」とは、その調製物が検出可能な量のそのようなタンパク質を含有しないことを意味する。その調製物は、宿主細胞由来でなく、そして細胞増殖を維持改善し収量を最適化するために培地に通常添加される、意図的に加えられる哺乳動物タンパク質を全く含まない。天然の哺乳動物タンパク質とは、ヒトまたは動物といった天然供給源に由来する哺乳動物タンパク質であり、例えば大腸菌(E. coli)のような原核生物中で産生された組換え哺乳動物タンパク質ではないと理解する。
【0063】
本発明のさらなる局面は、以下の工程:
a)20kDa〜40kDaの分子量を有する活性化PEG試薬を使用することによりエリスロポエチンをポリ(エチレングリコール)にコンジュゲートさせ(エリスロポエチンのPEG化)、
b)工程a)で得られたPEG化エリスロポエチンを、各々同じ固定相で異なる溶離法を用いる2種類の連続的陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製し、
c)第二固定相からPEG(ポリ(エチレングリコール))にコンジュゲートしたエリスロポエチンを単離する、
を含む、1個のポリ(エチレングリコール)ポリマーに共有結合したエリスロポエチン(モノ−PEG化エリスロポエチン)を生産する方法である。
【0064】
この方法は、組換え生産されその後化学的にPEG化されたPEG化EPOの精製に特に好適である。この方法の第一工程は、エリスロポエチンのPEG化である。この反応に使用するポリ(エチレングリコール)ポリマー(PEG)は、およそ20kDa〜40kDaの分子量を有する(PEGは確定した分子量を伴って得られる訳ではなく、分子量分布を有するポリマー化合物であるため、この文脈における「分子量」という語は、ポリ(エチレングリコール)の平均分子量を指す)。「およそ」という語は、幾らかのPEG分子はより高い分子量を、そして幾らかはより低い分子量を有することを意味する。即ち「およそ」という語は、それが分子量分布であってPEG分子の95%が記載の分子量の+/−10%の分子量を有するということを意味する。
【0065】
「PEG化」という語は、ポリ(エチレングリコール)分子および或るポリペプチドのN末端またはリジン側鎖の間の共有結合を指す。タンパク質のPEG化は特にVeronese, F.M., Biomaterials 22 (2001) 405-417に記載されている。ポリ(エチレングリコール)は種々の官能基によってタンパク質に結合でき、そして様々な分子量を有する(Francis, G.E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18;Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304)。ポリ(エチレングリコール)およびエリスロポエチンの共有結合は、例えばWO00/44785に報告されたように水溶液中で実施でき、或る態様では、5kDa〜40kDaの分子量を持つNHS活性化直鎖状または分岐ポリ(エチレングリコール)(PEG)分子を使用して実施できる。PEG化反応は、固相反応として実施することもできる(Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229)。選択的N末端PEG化タンパク質が、WO94/01451またはFelix, A.M., et al., ACS Symp. Ser. 680 (poly(ethyleneglycol))(1997) 218-238に従って取得できる。
【0066】
以下の実施例、配列表および図面を本発明の理解を助けるために提供するが、本発明の真の範囲は付記する請求項に開示する。本発明の精神を逸脱することなく、開示された方法に改変を施すことができるということを理解されたい。
【0067】
配列表の説明
配列番号1 165残基のアミノ酸配列を有するヒトエリスロポエチン。
配列番号2 166残基のアミノ酸配列を有するヒトエリスロポエチン。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ヒドロキシアパタイトを含有する固定相(HA−ウルトロゲル)を用いるエリスロポエチンのクロマトグラフィーの例示的クロマトグラム。
【図2】個々のエリスロポエチン含有画分の純度のプロット。
【図3】分析用逆相HPLCによるエリスロポエチン含有画分の分析的クロマトグラフィー。
【図4】エリスロポエチン含有画分中のde−O−EPOおよびEPOのパーセンテージの略図。
【図5】エリスロポエチン含有画分中のタンパク質様不純物の分布。
【図6】エリスロポエチン含有画分のシアル酸数のプロット。
【図7】エリスロポエチン含有画分中の酸性および塩基性イソ型の分布。
【図8】エリスロポエチン含有画分中のトリアンテナリーグリコシル型の分布。
【図9】エリスロポエチン含有画分中のバイアンテナリーグリコシル型の分布。
【図10】エリスロポエチン含有画分中のグリコシル型の分布の概略。
【図11】エリスロポエチン含有ピークにおける肩部の比較例。
【図12】ヒドロキシアパタイトを含有する種々の固定相を用いて得られたエリスロポエチンのイソ型分布。
【図13】本発明方法を用いて得られたクロマトグラム。
【図14】種々のクロマトグラフィー法におけるイソ型分布の比較。
【0069】
材料および方法
クロマトグラフィーのための緩衝液
溶液は全て保存溶液から調製した。別途記載の無い限り、全ての緩衝液のpHを1M NaOHまたは1M HClで調節した。II型超純水(ミリQ水)を常に使用した。
【0070】
保存溶液(水中)
1mol/lリン酸カリウム緩衝液、pH6.9±0.2、
1mol/lトリス(ヒドロキシアミノメタン)緩衝液(TRIS−HCl)、pH6.9±0.2、
5mol/l塩化ナトリウム、
1mol/l塩化カルシウム、
10mol/l水酸化ナトリウム。
【0071】
標準クロマトグラフィー緩衝液:
標準洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液HAウルトロゲル/ファストフロー:
20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液CHT: 200mMリン酸カリウム、
pH9〜10
再生緩衝液1 HAウルトロゲル:
200mMリン酸カリウム、0.1mMCaCl2、
pH6.9±0.2
再生緩衝液1 CHT、ファストフロー:
200mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
アルカリ性再生: 0.5M NaOH
平衡緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール、
pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 10mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 10mMTRIS−HCl、0.5mMCaCl2、
10mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
【0072】
分析的決定のための緩衝液
分析用RP−HPLC:
溶離液A:0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)、水
溶離液B:0.1%TFA、70%アセトニトリル、水
タンパク質決定A280:
10mMリン酸Na/K、0.1mol/lNaCl、pH7.5±0.2
【0073】
タンパク質決定
光路長1cmの水晶キュベットを使用した。試料を、測定される吸光度が0.2〜1.0AUとなるよう希釈した。希釈が必要な場合、試料を相互に独立して希釈し、トリプリケートで測定した。希釈しなかった試料は1回の測定で決定した。エリスロポエチン最終生成物緩衝液を試料の希釈およびブランク測定に使用した。
【0074】
測定は280nmで実施した。エリスロポエチンリファレンス標準試料を系の対照として最初に測定した。実際の試料は、分析に先立ち平均タンパク質濃度1.86mg/ml〜2.05mg/mlに調節した。タンパク質濃度は以下の式に基づいて算出した:
【0075】
【数1】
1)0.1%溶液の吸光係数:ε=1.25ml・(mg・cm)−1
2)試料の希釈係数
【0076】
タンパク質の量は以下の式で与えられる:
m[g]=c[mg/ml]・V[L]
【0077】
分析用RP−HPLC
RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)において、全ての試料は溶離液Aで最大濃度0.12mg/mlに希釈した。タンパク質濃度は280nmの光度測定により決定した。試料の分析に先立ち100%溶離液Aの試料4個を注入した。このことによりカラムが完全に平衡化されていることを確実とした。エリスロポエチンリファレンス標準を、試料の連続分析の開始時および終了時に分析した。偏位を回避するため、クロマトグラムを標準化積分法で解析した。基線に垂直な線を引くことにより各ピークを相互に分離した。
【0078】
CHOタンパク質含有量/宿主細胞タンパク質含有量の決定
ELISA試験(酵素結合免疫吸着アッセイ)によってCHO細胞タンパク質を測定した。ここではストレプトアビジン/ビオチン技術に基づくサンドイッチ法を利用した。このアッセイにはストレプトアビジン被覆したマイクロタイタープレートを使用した。CHO細胞タンパク質に対する抗体を、ビオチンによってこのプレートに結合させた。分析しようとする試料溶液を、15〜150ng/mlのCHOタンパク質濃度でピペットにより添加した。濃度が15ng/mlを下回った場合、その試料をCHOタンパク質を含まないとみなした。濃度が150ng/mlを超えた場合には、より高希釈で試験を反復した。
【0079】
結果をCHOタンパク質[ppm]として記載した。
【0080】
【数2】
【0081】
イソ型分布の決定
キャピラリー電気泳動によってイソ型分布を決定した。この分析のため、試料を水中で透析濾過した。続いてそのキャピラリーを電解質溶液ですすぎ、その後、希釈試料をキャピラリー内に適用した。25000Vの高電圧をかけることにより分離した。移動相緩衝液は過剰の陽イオンを有し、それが電気浸透流をもたらした。水晶のキャピラリーの使用が、キャピラリー中のタンパク質の光度検出およびピーク面積による定量を可能にした。
【0082】
糖の分析
糖の分析には酵素試験法を利用した。この方法では、エリスロポエチンのN−グリコシド結合したオリゴ糖を酵素N−グリコシダーゼで開裂させた。さらに、酵素ノイラミニダーゼの助けを借りてこのオリゴ糖からシアル酸を除去した。得られたN−オリゴ糖を陰イオン交換体を用いて分離および分析した。試料と全く同じ方法で処理したエリスロポエチンリファレンス標準を、一連の試験の最中に測定した。以下の糖構造が検出された:バイアンテナリー、トリアンテナリー、トリアンテナリー1リピート、テトラアンテナリー、テトラアンテナリー1リピート、テトラアンテナリー2リピート。
【0083】
排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)
SE−HPLCのため、分離を開始する前に、クロマトグラフィーカラムを3〜5カラム容量(CV)の緩衝液で平衡化し、余分なピークの無い均一な基線を得た。試料を0.2mg/ml濃度に希釈し、SE−HPLCに注入した。標準法に従いピークを積分した。垂線を降ろすことによりピークを相互に分離した。
【0084】
DNA測定
ビオチンをマイクロタイタープレートに結合させた。ストレプトアビジン、一本鎖DNAおよびビオチン化一本鎖DNA結合タンパク質の反応混合物を添加した。この結合タンパク質はDNAに結合でき、ビオチン化された。このようにして試料混合物からDNAを特異的に除去することが可能となった。ストレプトアビジンは、マイクロタイタープレート上のビオチンおよび一本鎖DNA結合タンパク質にカップリングしたビオチンに結合した。この全複合体に、ウレアーゼにカップリングさせたDNA特異抗体を加えた。尿素を添加すると尿素の加水分解が導かれ、それがpHの局所的変化を惹起した。この変化は表面電位の変化として検出され得る。表面電位の変化は結合しているDNAの量に比例した。一本鎖DNAは、プロテイナーゼK消化およびSDSによる変性により得られた。
【0085】
ペプチドマップ
de−O−EPOおよびde−N−EPOのような不完全にグリコシル化されたエリスロポエチン種はペプチドマッピングによって定量できる。この目的のため、エリスロポエチン分子をエンドプロテイナーゼLys−Cによりペプチドへと開裂し、これらのペプチドをHPLCで分離した。得られたペプチドパターンをリファレンス標準と比較した。得られた結果を、ピークサイズ、ピークの外観および保持時間について標準と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0086】
実施例1
CHO細胞におけるエリスロポエチンの組換え生産
EPOをバッチ法によってCHO細胞において生産した。発酵槽に前培養を接種し、約5日後、この発酵槽の内容物を収穫する。無傷のCHO細胞および細胞フラグメントを遠心分離により発酵上清から除去した。この無細胞培養上清のpHを酢酸(1mol/l)でpH5.0〜5.2に調節し、その後このpH調節した溶液を1〜9℃で濾過した。基本培地DME(HG)HAMのF−12改変(R5)(GRH Biosciences/Hazleton Biologics, Denver, USA, Order No. 57-736)、炭酸水素ナトリウム、L−(+)グルタミン、D−(+)グルコース、組換えインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ジアミノブタン、ヒドロコルチゾン、硫酸鉄(II)、アスパラギン、アスパラギン酸、セリンおよびポリビニルアルコールで構成される無血清培地を培養として使用した。
【0087】
実施例2
ブルーセファロースクロマトグラフィー
ブルーセファロース(Pharmacia)は、色素Cibachron(登録商標)ブルーを共有結合させたセファロースビーズで構成される。エリスロポエチンは、低イオン強度および中性ないし酸性pH値でこの支持体に結合する。エリスロポエチンはイオン強度およびpH値を上げることにより溶出する。
【0088】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP440 x 500、Amicon, GB)に60〜80lのブルーセファロースを満たし、0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを約3カラム容量(CV)の酢酸緩衝液で平衡化する。pH5に調節した無細胞培養上清を、温度10+/−5℃および流速800〜1400ml/分でカラムに導入する。このカラムを、同じ流速および5+/−4℃で、約1CVの洗浄緩衝液1、次いで約2CVの洗浄緩衝液2で再洗浄する。その後カラムを約3CVの溶離緩衝液で溶離する。タンパク質ピーク全体を集め(約30〜60l)、HClでpH6.9に調節し、さらなる加工まで5+/−4℃で保存する。生成物溶液はこのクロマトグラフィー工程で濃縮され、約40〜50%の純度が達成される。
【0089】
平衡化緩衝液: 20mM 酢酸Na、5mM CaCl2、0.1M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液1: 20mM 酢酸Na、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液2: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.5±0.3
溶離緩衝液: 100mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、1M NaCl、
pH9.0±0.2
【0090】
実施例3
ブチルトヨパールクロマトグラフィー(疎水性クロマトグラフィー)
ブチルトヨパール(Tosoh Haas)は、表面にブチル残基が共有結合している支持体である。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、2−プロパノールを含有する緩衝液で溶出される。
【0091】
10% 2−プロパノールを含有する平衡化緩衝液中でタンパク質がブチルマトリックスに結合した後、エリスロポエチンを、水性緩衝液および50% 2−プロパノールより成る勾配によって溶出させた。この溶出は約20% 2−プロパノールで開始する。
【0092】
クロマトグラフィーカラム(Pharmacia BPG 300/500)に30〜40lのブチルトヨパールを満たし、4Mグアニジン−HClおよび0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを少なくとも3CVの平衡化緩衝液で平衡化する。ブルーセファロースカラムの溶出液を10% 2−プロパノールに調節し、温度27±2℃および流速800〜1200ml/分でカラムに導入する。このカラムを、同じ温度および流速で、約1CVの平衡化緩衝液で、そして次に約2CVの洗浄緩衝液で再洗浄する。その後エリスロポエチンを約3CVの溶離緩衝液で溶離する。タンパク質ピーク全体を集め(約10〜18l)、直ちに希釈緩衝液で3倍に希釈し、15℃で保存する。このクロマトグラフィーにおいて約90%の純度が達成される。
【0093】
平衡化緩衝液:20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
10% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
19% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
27% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
希釈緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
第一溶液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
【0094】
実施例4
ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー
現行の工程条件に対する適切な比較を可能とするため、ヒドロキシアパタイトを含有する各固定相による分離において、同じ基本法の工程を利用した。その順序は、
再生 − 平衡化 − 分離 − 再生、
であった。
【0095】
緩衝液は、再生のための製造者の指示に適合させた。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
分離のためのクロマトグラフィーパラメータを以下の表4に示す。同パラメータを全ての材料に使用した。
【0099】
【表4】
【0100】
UV吸収シグナルに基づきピークを集めた。収集は15mAUで開始し、各々のピーク最大値が過ぎた後に40mAUで停止した。分離後に再生を行った。溶離および再生工程のピークを集め、−20℃で保存した。再生のカットリミットは立上がり15mAU〜立下がり15mAUであった。溶離流速は個々の工程において0.35cm/分から1.7cm/分の間で変化させた。
【0101】
標準溶液:
標準洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液HAウルトロゲル/ファストフロー:
20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液CHT: 200mMリン酸カリウム、
pH9−10
再生緩衝液1 HAウルトロゲル:
200mMリン酸カリウム、0.1mM CaCl2、
pH6.9±0.2
再生緩衝液1 CHT、ファストフロー:
200mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
アルカリ性再生: 0.5M NaOH
平衡化緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、
pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 10mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 10mMTRIS−HCl、0.5mM CaCl2、
10mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
【0102】
実施例5
ヒドロキシアパタイトウルトロゲルクロマトグラフィー
ヒドロキシアパタイトウルトロゲル(BioSepra)は、その機械的および流体力学的性質を改善するためにアガロース骨格に組み込まれたヒドロキシアパタイトで構成される。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、殆どのタンパク質性不純物よりも低いリン酸濃度で溶出する。
【0103】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP440x500または同等品)に30〜40lのヒドロキシアパタイトウルトロゲルを充填し、0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを少なくとも4CVの平衡化緩衝液で平衡化する。精製しようとするエリスロポエチン溶液を、温度約15℃および流速500〜1200ml/分でカラムに吸着させる。カラムを、約1CVの平衡化緩衝液、次いで約2CVの洗浄緩衝液により、同じ温度および流速で再洗浄する。次いで約3CVの溶離緩衝液で溶出する。タンパク質ピーク全体を集め(約10〜18l)、さらなる加工を行うまで15℃で保存する。このクロマトグラフィーにおいて95%を超える純度が達成される。
【0104】
平衡化緩衝液: 20mM酢酸Na、5mM CaCl2、0.1M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液1: 20mM酢酸Na、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液2: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.5±0.3
溶離緩衝液: 100mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、1M NaCl、
pH9.0±0.2
【0105】
実施例6
ヒドロキシアパタイトファストフロークロマトグラフィー
この材料は製造者から固体で供給された。適当量の材料を秤量し、標準洗浄緩衝液に懸濁した。粒子の表面全体を濡らすため、粉末を緩衝液中で数時間インキュベートした。希薄なゲルスラリー(約20%(v/v))を充填に使用した。このゲル材料を2日間沈殿させることにより、圧力をかけずにカラムに充填した。ゲルが完全に沈殿した後、カラムを流速0.5ml/分(0.64cm/分)で5CVによりすすいだ。その後カラムを再生した。
【0106】
クロマトグラフィーを実施例4に記載のように実施した。
【0107】
実施例7
ヒドロキシアパタイトCHTクロマトグラフィー
このセラミック材料(CHT1型および2型)は製造者から固体で供給された。満たすべき量を秤量し、充填緩衝液CHT1、2型に懸濁した。この材料の全面を濡らすため、CHTを充填緩衝液中で数時間インキュベートした。希薄なゲルスラリー(約20%(v/v))を充填に使用し、スラリー全体をカラムに満たし、流速1ml/分(1.3cm/時)で充填した。ゲルが完全に沈殿した後、カラムを再生した。
【0108】
クロマトグラフィーを実施例4に記載のように実施した。
【0109】
実施例8
CaCl2を使用しない、本発明に係るヒドロキシアパタイトCHTクロマトグラフィー
実施例7に記載のようにカラムを充填し、実施例4に記載のようにクロマトグラフィーを実施した。
【0110】
実施例4とは対照的に、以下の溶液を使用した:
第二溶液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
第三溶液: 20mMTRIS−HCl、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
第四溶液: 10mM TRIS−HCl、pH6.9±0.2
第五溶液: 10mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、
10mMリン酸カリウム、pH6.9±0.2
【0111】
実施例9
逆相HPLC(RP−HPLC)
RP−HPLC材料、例えばヴィダックC4(Vydac, USA)は、その表面にC4アルキル鎖を担持するシリカゲル粒子で構成されている。エリスロポエチンは疎水性相互作用の結果このマトリックスに結合し、希トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配で選択的に溶出される。
【0112】
22±4℃の温度でMerck Prepbar 100分離系(または同等品)を用いて分取HPLCを実施した。分離カラム(100mm x 400mm、3.2l)にヴィダックC4材料を充填した。使用前に緩衝液Aから100%溶媒に至る勾配を数回適用することにより、カラムを再生し、その後緩衝液Aで平衡化した。このヒドロキシアパタイトカラムの溶出液をトリフルオロ酢酸で約pH2.5に酸性化し、濾過滅菌した。その後、温度22±4℃および流速250〜310ml/分でエリスロポエチンをカラムに吸収させる。このカラムを同じ温度および流速で、緩衝液Aから緩衝液Bに至る直線勾配で溶出した。溶出ピークを画分として集める。HPLC希釈緩衝液4容量を添加することにより、溶出液を直ちに中和する。
【0113】
分析用HPLCで少なくとも99%純度を有する画分をプールする(プール容量約4〜6l)。このクロマトグラフィーにおいて微量の不純物が分離され、99%を上回る純度が達成される。
【0114】
緩衝液A: 水中0.1%トリフルオロ酢酸
緩衝液B: 80%アセトニトリル、水中0.1%トリフルオロ酢酸
HPLC希釈緩衝液: 10mM リン酸Na/K、pH7.5±0.2
【0115】
実施例10
DEAEセファロースFFクロマトグラフィー
DEAEセファロースファストフロー(Pharmacia)は、セファロースビーズ表面に共有結合させたDEAE基で構成されている。エリスロポエチンはイオン相互作用の結果このマトリックスに結合し、イオン強度を上げることにより溶離する。
【0116】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP90 x 250または同等品)に、適用された試料中のエリスロポエチン1gあたり100〜200mlのゲルを満たし、0.5M NaOHで再生した。続いてこのカラムを、100mMNa/K緩衝液(pH7.5)、その後少なくとも12CVの平衡化緩衝液で平衡化する。HPLCカラムの溶出液を、温度5±4℃および流速約150ml/分でカラムに吸収させる。カラムを同じ温度および流速で、少なくとも5CVの平衡化緩衝液、次いで約10CVの洗浄緩衝液で洗浄した。続いて、カラムを約10CVの平衡化緩衝液で再洗浄し、約7CVの溶離緩衝液でエリスロポエチンを溶離した。全タンパク質ピークを集め(約2〜5l)、濾過滅菌し分注する。
【0117】
このクロマトグラフィーにおいてHPLC工程由来の溶媒が分離され、微量の不純物が除去される。純度は99%を上回る。
【0118】
平衡化緩衝液: 10mMリン酸Na/K、pH7.5±0.2
洗浄緩衝液: 30mM酢酸Na、pH4.5±0.1
溶離緩衝液: 10mMリン酸Na/K、80mMNaCl、pH7.5±0.2
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを使用するエリスロポエチン(EPO)の精製方法を報告するものである。さらに、宿主細胞のタンパク質を涸渇させる方法およびEPO組成物のイソ型分布を改変する方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
エリスロポエチン(EPO)は、赤血球の産生を刺激するヒトの糖タンパク質である。その作用および治療適用は、例えばEP0148605、EP0205564、EP0209539およびEP0411678、ならびにHuang, S.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 2708-2712、Lai, P.H., et al., J. Biol. Chem. 261 (1986) 3116-3121、およびSasaki, H., et al., J. Biol. Chem. 262 (1987) 12059-12076に詳細に記載されている。
【0003】
EPOは、健康な人間の血漿中にはごく低濃度でしか存在しない。再生不良性貧血患者の尿からのヒトEPOの単離が知られている(Miyake, T., et al., J. Biol. Chem. 252 (1977) 5558-5564)。イオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈殿、ゲル濾過および吸着クロマトグラフィーを含む7段階法が記載されている。EP0148605およびEP0205564は、CHO細胞における組換えヒトEPOの生産を報告している。組換え産生されたEPOの精製方法は、Nobuo, I., et al., J. Biochem. 107 (1990) 352-359に記載された。
【0004】
エリスロポエチンを生産および精製するさらなる方法が知られており、特にEP0148605、EP0205564、EP0255231、EP0830376、EP0267678、EP0228452、EP1127063、EP0209539、EP0358463、EP1010758、EP0820468、EP0984062、EP0640619、EP0428267、EP1037921ならびにLai, P.H., et al., J. Biol. Chem. 261 (1986) 3116-3121、Broudy, V.C., et al., Arch. Biochem. Biophys. 265 (1988) 329-336、Zou, Z., et al., Journal of Chrom. 16 (1998) 263-264、Inoue, N., et al., Biol Pharm. Bull. 17 (1994) 180-184、Qian, R.L., et al., Blood 68(1) (1986) 258-262、Krystal, G., et al., Blood 67(1) (1986) 71-79、Lange, R.D., et al., Blood Cells 10(2-3) (1984) 305-314、Sasaki, R., et al., Methods Enzymol. 147 (1987) 328-340、Ben Ghanem, A., et al., Prep. Biochem, 24 (1994) 127-142、Cifuentes, A., et al., J. Chrom. A 830 (1999) 453-463;およびGokana, A., et al., J. Chromat. A 791 (1997) 109-118に記載されている。
【0005】
EP1394179は、動物タンパク質を含まないエリスロポエチンを生産する方法を報告している。EP0986644の主題はウイルスプロモーターを用いた内因性遺伝子活性化によるエリスロポエチンの生産である。EP1428878には、組換え糖タンパク質、特にエリスロポエチンの生産方法が報告されている。EP1492878には、所望プロファイルのエリスロポエチン糖イソ型を生産する方法が報告されている。
【発明の概要】
【0006】
組換えエリスロポエチンの生産および精製には、幾つかの工程、特にクロマトグラフィー工程が必要である。
【0007】
本発明の第一の局面は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を有する少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含むエリスロポエチンの生産方法であって、
i)0.5mM〜20mM濃度でカルシウムイオンを含有するエリスロポエチン含有溶液を、同濃度0.5mM〜20mMでカルシウムイオンを含有する溶液で平衡化したヒドロキシアパタイトを含有する固定相と接触すること、
ii)0.5mMを下回る濃度のカルシウムイオンを含有する溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過すること、
iii)0.5mMを下回る濃度のカルシウムイオンを含有する溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させ、それによりエリスロポエチンを生産すること、
を含む、エリスロポエチンの生産方法である。
【0008】
或る態様では、生産されたエリスロポエチンは、i)のエリスロポエチン含有溶液と比較して、de−O−EPO種およびde−N−EPO種が涸渇している。さらなる態様では、本発明は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を伴うクロマトグラフィー工程に加えて、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー工程を含む。さらなる態様では、全てのクロマトグラフィー工程が各々異なるクロマトグラフィー原理に基づいており、それにより、各クロマトグラフィー原理がその方法において1回だけ利用される。さらなる態様では、そのクロマトグラフィー原理は、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および/または陰イオン交換クロマトグラフィーから選ばれる。さらなる態様では、クロマトグラフィー工程の順序は、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー、場合により逆相クロマトグラフィー、および陰イオン交換クロマトグラフィーである。或る態様では、本発明方法は、該クロマトグラフィー工程に加えて、場合により中間工程、例えば塩析、濃縮、透析濾過、限外濾過、透析、および/またはエタノール沈殿を含む。
【0009】
本発明の1つの局面は、本発明方法を用いて取得したエリスロポエチン組成物である。
【0010】
本発明のさらなる局面は、本発明に係るヒドロキシアパタイト含有固定相を伴うクロマトグラフィー工程を含む、エリスロポエチン調製物からチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞タンパク質を涸渇させる方法であって、この場合、エリスロポエチン含有画分の収集が、280nmでの光吸収により調節され、15mAU〜75mAUの吸収で始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する。
【0011】
或る態様では、ヒドロキシアパタイト含有固定相は純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトである。別の態様では、工程ii)および/またはiii)のクロマトグラフィーで使用される溶液は、およそ5mM濃度のリン酸イオンを含有し、別の態様では、5mMのリン酸ナトリウムまたは同カリウムを含有する。
【0012】
本発明の別の局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比率が83:14:2〜74:21:6の範囲であるエリスロポエチンイソ型の混合物であるエリスロポエチン組成物を調製する方法である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0013】
したがって、本発明のさらなる局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比率が83:14:2〜74:21:6の範囲であるエリスロポエチンイソ型の混合物であるエリスロポエチン組成物である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0014】
或る態様では、エリスロポエチン組成物は、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0015】
したがって、本発明のさらなる局面は、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲であるエリスロポエチン組成物である。或る態様では、この比率はこの範囲において線形である。
【0016】
本発明のさらなる局面は、エリスロポエチン1分子あたり6より多く17より少ないシアル酸残基数を有するエリスロポエチンイソ型の混合物であり且つ本発明方法により得られたエリスロポエチン組成物である。
【0017】
さらに別の本発明の局面は、エリスロポエチンをコードしている核酸を含む宿主細胞を、適当な培地中でエリスロポエチンの産生に好適な条件下で培養し、そのエリスロポエチンを培地または該細胞から単離することを含む、組換えエリスロポエチンの生産方法である。或る態様では、該細胞を浮遊培養する。さらなる態様では、該細胞を発酵槽、特に10l〜50000l容量の発酵槽で培養する。
【0018】
培地からのエリスロポエチンの単離は以下の工程を含む:
(a)細胞培養上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(b)場合により、(a)の画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(c)(a)または(b)の画分を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、および本発明方法を利用してエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
(d)(c)の画分を濃縮しまたは/そして逆相HPLC材料を通過させること
【0019】
精製方法の工程(a)は、場合により前処理されていてもよい細胞上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に通すことを含む。或る態様では、そのアフィニティークロマトグラフィー材料は、青色染料をカップリングさせてあるアフィニティークロマトグラフィー材料である。一例はブルーセファロースである。或る態様では、発酵/その産生に血清含有量が≧2%(v/v)の培地が使用された場合には、エリスロポエチンを含有する溶出液をアフィニティークロマトグラフィー材料から溶出させた後、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料を通過させる。或る態様では、その疎水性相互作用クロマトグラフィー材料はブチルセファロースである。工程(a)、または採用された場合には工程(b)由来の溶出液を、工程(c)においてヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させ、エリスロポエチンを含有する溶出液を単離する。或る態様では、濃縮は排除クロマトグラフィー、例えば膜濾過による。この場合、例えば排除サイズ10kDaの膜の使用が有利であることが判明している。本発明方法によって得られるエリスロポエチンは、α−2,3−結合した、または/およびα−2,6−結合したシアル酸残基を含み得る。
【0020】
本発明の別の局面は、以下の工程:
a)活性化ポリ(エチレングリコール)試薬を用いてエリスロポエチンを共有結合させ、即ちPEG化すること、
b)このポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを、2つの連続する陽イオン交換クロマトグラフィー工程によって精製すること、およびそれによりポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産すること、
を含む、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産する方法であって、
工程a)で使用されるエリスロポエチンは、本発明方法により取得する、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンを生産する方法である。
【0021】
本発明の別の局面は、本発明方法により得られたエリスロポエチンを含む、医薬組成物である。本発明に係る組成物は、場合により従来の薬学的希釈剤、賦形剤、助剤および担剤と共に、薬学的調製物として調合できる。薬学的調製物の生産に使用できる本発明に係る組成物は、逆相HPLC(例えばヴィダックC4カラムによる)または/およびサイズ排除クロマトグラフィー(例えばTSK 2000SW ウルトラパックカラムによる)で測定した場合、少なくとも99%、または別の態様では少なくとも99.9%の純度を有する。本発明のさらなる局面は、本発明方法を用いて得られたエリスロポエチンを含む、貧血を処置するための医薬組成物である。
【0022】
発明の詳細な説明
異なった物質がクロマトグラフィーによって相互に分離できるかどうかは、特に、そのクロマトグラフィーが実施される条件、加えて良好なカラム充填およびクロマトグラフィー材料(固定相)の選択に依存する。これには、緩衝系の選択に加えて、不純物および生成物が溶離される様式が包含される。
【0023】
本発明は、以下の工程:
i)第一濃度のカルシウムイオンを含有する、精製すべきエリスロポエチン溶液を、第二濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を通過させた、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相と接触させること、
ii)i)由来の溶液より低い濃度、即ち第三濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に通すこと(それにより、この通過の間、エリスロポエチンは、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に結合したままであり/ヒドロキシアパタイトを含有する固定相から分離されない)、および、
iii)0.5mMを下回る、即ち第四濃度のカルシウムイオンを含有する或る容量の溶液を、ii)由来のヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させること(それにより、エリスロポエチンが、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相から分離され溶出する)、
を含む、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含む、エリスロポエチンの精製方法を報告するものである。
【0024】
或る態様では、第一および第二ならびに/または第三および第四濃度は異なっている。別の態様では、第三および第四のカルシウムイオン濃度は、第一および第二カルシウムイオン濃度の10%またはそれ以下である。
【0025】
以下、EPOとも称するエリスロポエチンは、赤血球前駆細胞の分化および分裂プロセスを刺激し赤血球を与える生物学的能力を有するタンパク質として理解される。このタンパク質は好ましくはヒトエリスロポエチンであり、165または166アミノ酸で構成され(配列番号1および2)、分子量は約34〜38kDaである。グリコシル残基が分子量の約40%を占める。類似の生物学的性質を有しEPO産生宿主細胞の培養により得られるエリスロポエチンを含む、PEG化EPO、即ちポリ(エチレングリコール)コンジュゲート化エリスロポエチンのようなEPOの誘導体およびフラグメントもまた本発明方法により製造できる。ヒトEPOのDNA配列およびタンパク質配列が、特にEP0205564およびEP0209539に記載されている。
【0026】
EPOの構造は2個のジスルフィド橋および幾つかの糖鎖を含む。以下、グリコシル残基とも称するこの糖鎖は、タンパク質骨格に結合している。幾つかの鎖はアスパラギン残基を介してN−グリコシド結合でこのタンパク質に結合し、1個の鎖はセリン残基を介してO−グリコシド結合でこのタンパク質に結合している。
【0027】
シアル酸(N−アセチルノイラミン酸)は通常、(分岐または非分岐)グリコシル残基の末端に組み込まれている。このグリコシル残基はその後もはや延長できない。シアル酸はGal(β1−4)GlcNAcのα2−3結合にのみ結合できる(Nimtz, M., et al., Eur. J. Biochem. 213 (1993) 39-56)。
【0028】
「アンテナリティ」または「グリコシル残基のアンテナリティ」という語は、グリコシル残基の分岐の程度を指す。或るグリコシル残基が例えば2本の腕を有する場合、そのグリコシル残基はバイアンテナリーであり、即ちそれはバイアンテナリーグリコシル残基である。グリコシル残基は、反復部分、いわゆるリピートを有することがある。これらは、配列GlcNAcおよびガラクトース(N−アセチルラクトサミン)が反復している領域である。グリコシル残基の鎖長、したがってそのタンパク質の分子量は、リピートの数が相違しているために異なっている(Nimtz, M., et al., Eur. J. Biochem. 213 (1993) 39-56)。EPOの場合、トリアンテナリーグリコシル残基は最大1リピートしか含むことができず、一方テトラアンテナリーグリコシル残基は2リピートより多くを含むことができない。バイアンテナリーグリコシル残基はリピートを持たない。
【0029】
エリスロポエチンは多重グリコシル化タンパク質である。グリコシル残基の変異および様々な程度のシアリデーション(sialidation)の故に、自然界でもバイオテクノロジー的生産においても、異なったグリコシル化型およびイソ型が出現する。高率のリピートはさらに、in vivo活性に好ましい影響を及ぼす(例えばEP0409113を参照されたい)。
【0030】
エリスロポエチンは10の主要なイソ型で構成される。「イソ型」という語は、同一のアミノ酸配列および同数の結合シアル酸残基を有するEPO分子の一群を指す。このイソ型群は、同じ等電点を持ち、アミノ酸配列に結合したグリコシル残基の広がり、複雑性およびアンテナリティに関して相違する。例えば、「EPOのイソ型2」という語は、14個のシアル酸残基を有するEPO分子の一群を包含する。イソ型3は13個のシアル酸を有する、等々である。さらに、末端に存在しないさらなるシアル酸を有する稀な型のEPOがある。即ち、イソ型1は15個、そしてイソ型1’は16個の、グリコシル残基に結合したシアル酸を有する。
【0031】
本発明の或る局面は、高純度且つ或るエリスロポエチンイソ型分布を有するエリスロポエチンを製造する方法であり、その方法は、最初のエリスロポエチンイソ型分布が変化するような、異なるクロマトグラフィー工程の組み合わせを含む。該方法の、異なるクロマトグラフィー工程は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を有するクロマトグラフィー工程、ならびに、i)色素アフィニティークロマトグラフィー、ii)疎水性相互作用クロマトグラフィー、iii)陰イオン交換クロマトグラフィー、iv)逆相クロマトグラフィー、および/またはv)ゲル浸透クロマトグラフィー、から選ばれるクロマトグラフィーのうち少なくとも1つを含む。この局面の1つの態様では、減少した数のシアル酸残基を有するエリスロポエチンイソ型が涸渇しまたは完全に分離される。本出願の中では、「完全に」という語は、濃度/量がその方法の検出限界を下回るため、対応化合物が所定の分析方法によってもはや検出できないことを意味する。或る態様では、エリスロポエチン1分子あたり最大3、または最大4、または最大5(5を含む)個のシアル酸残基を有するエリスロポエチンイソ型が涸渇し、または完全に分離される。或る態様では、イソ型混合物が6〜15のシアル酸基、または7〜15のシアル酸基を有するイソ型を含むエリスロポエチンが得られる。
【0032】
様々なグリコシル残基およびイソ型に加えて、さらなるEPO型が存在する。de−N−EPOおよびde−O−EPO型の場合、これらは、完全には翻訳後グリコシル化されておらず、セリン残基126(de−O−EPO)またはアスパラギン残基24(de−N−EPO)においてグリコシル化されていない種である。
【0033】
ヒドロキシアパタイトは、実験式Ca5(PO4)3OHを有するリン酸カルシウムに基づく無機化合物である。クロマトグラフィー固定相として、それはタンパク質、酵素、免疫グロブリンおよび核酸の分離に好適である。それは自然界では主に骨および歯牙エナメル質に存在している。ヒドロキシアパタイトの形成は高いpH値が有利である。ヒドロキシアパタイトは酸性pH値で溶解する。ヒドロキシアパタイトの様々な結合メカニズムがクロマトグラフィー分離に利用されており、クロマトグラフィー分離においてそれは主として吸着剤として働くが、イオン交換材料の性質も持っている。タンパク質の正に荷電したアミノ基(例えばリジン)および固定相の負に荷電したリン酸基の間にはイオン結合の形成が可能である。さらに、タンパク質のカルボキシ基(例えばアスパラギン酸)はヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンと結合できる。この材料の特徴は、固定相のリン酸基および溶液中のカルシウムまたはマグネシウムイオンおよびタンパク質のカルボキシ基の間に複雑な結合が生じ得ることである(M. Kratzel, “Pharmazeutische Bioanalytik” Part 5, University of Vienna)。
【0034】
種々のヒドロキシアパタイト材料が知られている。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、或る態様では低いリン酸塩濃度において溶出する。
【0035】
本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相はアガロース骨格中に組み込まれたヒドロキシアパタイトで構成される。好適なカラム材料は例えばヒドロキシアパタイトウルトロゲル(BioSepra, Germany)またはHAバイオゲルHT(Biorad, Germany)である。クロマトグラフィーはほぼ中性pHで実施するのが有利である。アガロースマトリックスに埋め込まれたヒドロキシアパタイトは、純粋なヒドロキシアパタイトと比較して、より高い耐圧性を有する(例えばHA ウルトロゲルとして入手可能)。この材料は50μm〜160μmという不均一な粒子サイズ分布を持ち、主要な画分は70μm〜90μmである。表面は非常に粗く、粒子は限られた範囲内でのみ球状である。
【0036】
別の態様では、本発明方法で使用されるヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、高温高圧で焼結させた純粋なヒドロキシアパタイトで構成される(例えばCHT(Biorad由来のセラミックヒドロキシアパタイト)として入手可能)。これは耐圧性材料であり、比較的対称性且つ一様に球状であり、比較的滑らかな表面を有する粒子で構成される。この粒子はCHT−1型では約40μmのサイズおよび約40m2/gの比表面積を有する。平均粒子サイズは20μm〜30μmである。CHT材料2型は、特に免疫グロブリンのようなより大きな分子のために開発された。CHT−2型の比表面積は19m2/gであり、よってCHT−1型の比表面積のほぼ半分である。その粒子はCHT−1型と類似の形態である。この粒子もまた約40μmのサイズを有する。したがって本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、高温高圧で焼結させた、比表面積約40m2/gのヒドロキシアパタイトである。
【0037】
さらなる態様では、本発明方法で使用するためのヒドロキシアパタイト含有固定相は、純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトで構成される(例えば、Calbiochem由来のヒドロキシアパタイトファストフローとして入手可能)。その粒子は菱形であり、50μm〜100μmのサイズである。
【0038】
図1は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相(HA−ウルトロゲル)によるエリスロポエチンのクロマトグラフィーのクロマトグラム例を示す。枠で囲んだ領域は、分画された生成物のピークであり、これを画分1〜16に細分した。画分17はピークショルダーであり、別個の画分として集めた。個々の画分の純度はピークを超えるとほぼ直線的に減少している(図2を参照されたい)。
【0039】
ヒドロキシアパタイトを含有する前記の様々な固定相を、エリスロポエチンを精製するための同じクロマトグラフィー法を用いて比較し、それを実施例4に記載する。
【0040】
【表1】
【0041】
或る態様では、CHOタンパク質の濃度が15ng/mlを下回るならばその試料はCHOタンパク質を含まないとみなした。セラミックおよび結晶性ヒドロキシアパタイト材料は、異なる量のエリスロポエチンをロードした場合同等であるが、一方アガロースを基礎とする材料では、収量および生成物の品質は、5mgEPO/mlカラム材料のロードにおいてかなり低下することが見出された。即ち、HAウルトロゲルヒドロキシアパタイト材料による分離では、分離中に10%近いエリスロポエチンが失われる。
【0042】
分析用逆相HPLC(RP−HPLC)によるエリスロポエチン含有画分の分析は、エリスロポエチンピークの減少側にあるほぼ全ての画分において生成物ピークが肩部を有することを示し(図3)、それがde−O−EPOであると同定された。このde−O−EPOの割合を、RP−HPLCクロマトグラムに垂線を引くことにより半定量的に決定し、EPOの量と共に図4に示す。この肩部が形成される理由は、バイアンテナリーおよびトリアンテナリーグリコシル残基含有EPO型がヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにおいて特に涸渇するためである。これらの型は一方で、分析用RP−HPLCではde−O−EPOの直前に溶出する。この選択的涸渇の結果、de−O−EPO肩部が際立つのである。
【0043】
タンパク質様不純物は溶出ピーク全体にわたって分布するが、前方の画分は、後方の画分より低い割合のCHO宿主細胞タンパク質を含有する(図5を参照されたい)。
【0044】
疎水性EPOグリコシル型がより多いため、エリスロポエチンの疎水性は後方のEPO含有画分で増大する。ヒドロキシアパタイトを含有する固定相でのクロマトグラフィーは、特に塩基性イソ型、即ちより少ないシアル酸を含有するイソ型を涸渇させる。図6に示すように、シアル酸残基の数はエリスロポエチン含有画分全体で一様に低下する。塩基性は、イソ型1からイソ型9までは増大する。一方酸性イソ型は最初のエリスロポエチン含有画分(画分1〜画分5)に多く、最後の方のエリスロポエチン含有画分(画分12〜画分16)では塩基性イソ型へのかなりのシフトが見られる(図7)。グリコシル型の分析は、親水性EPO型が最初の画分に溶出し、それが高い含有量のテトラアンテナリー構造およびより多くのリピートを有することを示している。より少ないリピートまたは高い比率のトリアンテナリー構造を有するより疎水性のEPO型は後で溶出し、その過程はテトラアンテナリーグリコシル型とは逆である(図8)。バイアンテナリーグリコシル型の比率は徐々に増大する(図9)が、一方その増加は一様ではなく段階的である。
【0045】
図10もまた生成物ピーク全体におけるグリコシル型の分布を示している。高いリピート含量を有するテトラアンテナリーグリコシル型が最初のEPO含有画分(例えばF1、画分1)に存在するのに対し、最後のEPO含有画分(例えばF16、画分16)には高い比率のトリアンテナリーおよびバイアンテナリーグリコシル型が存在する。したがって、本発明方法によるヒドロキシアパタイト含有固定相のクロマトグラフィーでは、よりグリコシル化の少ないEPO型は涸渇し、後で溶出することが見出された。
【0046】
CHO宿主細胞タンパク質の含有量もまた末期のEPO含有画分において増大する。その結果、より良好なEPOおよびCHO宿主細胞タンパク質の分離ができる、即ちCHO宿主細胞タンパク質を含有するより著明な肩部を伴うクロマトグラフィー法を利用して、良好な分離、およびCHO宿主細胞タンパク質の涸渇が達成できる(図11を参照されたい)。故に、本発明の或る局面は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィーにおいてエリスロポエチン含有画分中のCHO宿主細胞タンパク質を除去する方法であって、本発明の或る態様において、エリスロポエチン含有画分の収集が、15mAU〜75mAUで始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する波長280nmでの光吸収によって調節されることを特徴とする、方法である。
【0047】
或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は結晶性ヒドロキシアパタイトである。この固定相は、生成物ピークが一般に極めて平坦であり、際立った肩部を有するが故に好適である。さらなる態様では、クロマトグラフィーに使用される洗浄および溶離工程の溶液は、5mM濃度のリン酸イオンを含有する。このリン酸濃度を採用することにより、EPO含有画分中のCHO宿主細胞タンパク質の量を、対応する分析法の定量または検出限界未満の値まで低下/涸渇させることができるため、このリン酸イオン濃度が、セラミックヒドロキシアパタイト含有固定相によるエリスロポエチンの精製にとって有利であることが見出されている。
【0048】
ヒドロキシアパタイトを含有する種々の固定相を用いて得られたエリスロポエチンのイソ型分布を図12に示す。ヒドロキシアパタイト含有固定相の種類およびロードのいずれもイソ型分布に大きな影響を及ぼさないことが見出された。セラミックおよび結晶性ヒドロキシアパタイト相の特徴は、これらはアガロース型ヒドロキシアパタイト相よりも塩基性イソ型を幾分多く涸渇させるということである。或る態様では、本発明により得られたエリスロポエチンの純度は、RP−HPLCで測定したところ99.3%を上回る。或る態様では、場合により5mg/mlのロードにおいて、得られるEPOの純度はRP−HPLCで測定したところ99.3%〜99.9%である(%=RP−HPLCクロマトグラムに基づく面積パーセント)。固定相間の相違はCHO宿主細胞タンパク質の涸渇/分離においても観察される。アガロース型ヒドロキシアパタイト相および結晶性ヒドロキシアパタイト相は、セラミックヒドロキシアパタイト相より有効性が低い。よって本発明方法の或る態様では、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相はセラミックヒドロキシアパタイト相である。
【0049】
ヒドロキシアパタイト含有固定相によるクロマトグラフィーに使用される溶液中に含まれるカルシウムイオン濃度は精製に明らかな影響力を持ち、故に、それにより得られるエリスロポエチンの純度にも影響力を持つことが見出された。溶液中のカルシウムイオン濃度が低下すると、殆どのエリスロポエチンが、段階的溶離によって(即ち、溶液3〜溶液4の工程によって)ヒドロキシアパタイト含有固定相から取得できる(実施例4および8、ならびに図13を参照されたい)。エリスロポエチンの溶出後に(溶液5への変更に伴う)カルシウムイオン濃度が増大すると、CHO宿主細胞タンパク質およびDNAがヒドロキシアパタイト含有固定相から溶出する。低下したカルシウムイオン濃度の溶液により得られたエリスロポエチン画分は、その後溶出するエリスロポエチン画分より遙かに酸性である(図14を参照されたい)。増大したカルシウムイオン濃度で得られたピークの減少側は極めて平坦であり、即ち、それは多くのCHO宿主細胞タンパク質を含有する。これに対して、低下したカルシウムイオン濃度で得られたピークは極めて対称性である。
【0050】
本発明は、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相を使用する少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を含むエリスロポエチンの精製法を含み、その方法は、
i)a)エリスロポエチンおよび第一濃度でカルシウムイオンを含有する第一溶液を提供すること、
b)第二濃度でカルシウムイオンを含有する、或る容量の第二溶液を通過させた、ヒドロキシアパタイト含有固定相を提供すること(平衡化工程)、
c)a)の溶液をb)で得られた固定相に適用すること、
ii)第一および第二溶液よりも低い第三濃度のカルシウムイオンを含有する第三溶液を、工程i)で得られたヒドロキシアパタイトを含有する固定相を通過させること(洗浄工程)、および、
iii)0.5mMまたはそれ以下のカルシウムイオンを含有する第四溶液の或る容量を、ii)由来のヒドロキシアパタイト含有固定相を通過させること、それにより、ヒドロキシアパタイト含有固定相からエリスロポエチンを分離回収すること、およびこのことによって精製エリスロポエチンを得ること(溶出工程)、
を含む。
【0051】
第一の態様では、カルシウムイオンの第一濃度はカルシウムイオンの第二濃度と同じである。さらなる態様では、第二溶液および第三溶液は2−プロパノールを含有する。さらなる態様では、カルシウムイオンの第一および/または第二濃度は4mM〜20mMである。さらなる態様では、カルシウムイオンの第一および/または第二濃度は5mMである。さらなる態様では、この溶液のpH値はpH6.9±0.2である。さらなる態様では、2−プロパノール含有量は7〜12%(v/v)であり、或る態様では9%(v/v)である。さらなる態様では、カルシウムイオンの第三濃度は0.5mMに等しいかそれ以下であり、或る態様では0.000001mM〜0.5mMである。さらなる態様では、カルシウムイオンの第三濃度は0.1mMに等しいかそれ以下であり、或る態様では0.000001mM〜0.1mMである。別の態様では、第四溶液は0.1mMまたはそれ以下のカルシウムイオンを含有し、或る態様では0.000001mM〜0.1mMである。さらなる態様では、4〜7カラム容量の第二溶液をカラムに適用する。さらなる態様では、カラムに適用する第三溶液の容量は0.5〜2.5カラム容量である。さらなる態様では、工程ii)において固定相から少量のエリスロポエチンしか溶出/分離されない。さらなる態様では、この量は固定相に結合しているエリスロポエチンの10%未満であり、別の態様では5%未満であり、最後の態様では1%未満である。さらなる態様では、カルシウムイオンはCaCl2としてこの溶液に導入される。本発明方法の或る態様では、第二溶液は、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノールを含有しpH6.9±0.2である。さらなる態様では、第三溶液は、20mM TRIS−HCl、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノールを含有しpH6.9±0.2である。さらなる態様では、第四溶液は、10mM TRIS−HClを含有しpH6.9±0.2である。例えば9%(v/v)という値は、9%の2−プロパノールを提供し、調製された溶液を、最終容量が得られるまで添加することによってその溶液が作製されることを意味する。
【0052】
テトラアンテナリーグリコシル型の量は、第五溶液で得られた画分に比較して第四溶液で得られた画分において増加する。しかしながら、第五溶液で得られた画分は、バイアンテナリーおよびトリアンテナリーグリコシル型の比率がより高い。さらに、第五溶液を使用すると、修飾無しのCaCl2によるCHT2型のランに比較して、より高率のde−O−EPOおよびde−N−EPO種が画分中に見出されることが判明した。
【0053】
本発明のさらなる局面は、EPOをコードしている核酸を含む細胞を適当な培地で適当な条件下に培養し、培地または細胞からエリスロポエチンを単離することを含む、エリスロポエチンの生産方法である。或る態様では、この細胞を浮遊培養する。さらなる態様では、この培養を発酵槽、特に10l〜50000l容量の発酵槽で実施する。この細胞の培地からのエリスロポエチンの単離は、以下の工程:
a)細胞培養上清または破砕した細胞懸濁液の上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
b)場合により、工程a)で得られたエリスロポエチン含有画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびEPOを含有する画分を回収/収集すること、
c)a)またはb)のEPOを含有する画分をヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、本発明方法を使用してエリスロポエチン含有画分を回収/収集すること、および、
d)c)のEPOを含有する画分を、濃縮しまたは/そして逆相HPLC材料に適用すること、
を含む。
【0054】
精製方法の工程a)は、場合により前処理されていてもよい細胞培養上清を、アフィニティークロマトグラフィー材料に適用することを含む。或る態様では、このアフィニティークロマトグラフィー材料は、青色色素を共有結合させた材料である。その一例はブルーセファロースである。或る態様では、2%に等しいまたはそれ以上(≧2%)(v/v)の血清含有量の培地を使用した場合に、アフィニティークロマトグラフィー材料から溶出させた後、このエリスロポエチン含有溶出液を、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用する。或る態様では、この相互作用クロマトグラフィー材料はブチルセファロースである。工程a)、または採用した場合には工程b)から得た溶出液を、本方法の工程c)においてヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用し、エリスロポエチンを含有する溶出液を本発明方法に従って回収する。或る態様では、この溶出液を排除クロマトグラフィーによって、例えば膜濾過によって濃縮するが、その場合、排除サイズ10kDaの媒体、例えば膜の使用が好都合であると判明している。本発明方法により得られるエリスロポエチンは、α−2,3−結合または/およびα−2,6−結合したシアル酸残基を含み得る。
【0055】
組換えエリスロポエチンを生産するため、無細胞培養上清を単離し本発明方法に付す。必要ならば濁りを分離するための濾過および/または濃縮を精製工程の前に追加で実施することができる。
【0056】
第一の工程では、色素クロマトグラフィーがプロテアーゼによる夾雑物を除去する。或る態様では、Cibachron(登録商標)ブルーのような青色トリアジン色素を色素として使用する。他のトリアジン色素もまた好適である。色素クロマトグラフィーの支持材料は重要でないが、好ましくは多糖類型支持材料、例えばセファロース、好ましくはセファロース6ファストフローが用いられる。カラムは、4.5〜5.5のpH値、或る態様ではpH4.8〜5.2の緩衝液で平衡化し、さらなる態様では酢酸緩衝液または酢酸で平衡化する。或る態様では、このクロマトグラフィーを1℃〜10℃の温度で、別の態様では約5℃の温度で操作する。或る態様では、溶出/回収は、酸性または中性pH(或る態様ではpH5〜7)で塩濃度を増大させることによる。塩基性pH、或る態様ではpH8.5〜9.5、別の態様ではpH8.8〜9.2において、塩濃度を大きく変化させずにエリスロポエチンを溶出させることも可能である。
【0057】
第二の工程では、疎水化支持体によるクロマトグラフィーを実施する。疎水性クロマトグラフィーのための好適な吸着剤は、例えばProtein Purification Methods, A practical Approach, Ed. Harris, E.L.V. and Angal, S., IRL Press, Oxford, England(1989), p.224;およびProtein Purification, Janson, J.C., Ryden, L., (ed.), VCH Publisher, Weinheim, Germany (1989), p.207-226に記載されている。支持材料自体は重要でなく、例えばアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーであるセファロース、またはシリカゲルとすることができる。疎水性基、或る態様ではブチル基が支持体に共有結合していることが重要である。好適な支持体が市販されている(例えば、Tosoh Haas, Germany由来のブチルトヨパール、またはPharmacia, Germany由来のブチルセファロース)。或る態様ではブチル化支持体が使用される。その他のアルキル化またはアリール化支持体は、エリスロポエチンと不可逆的に結合したり、より良好でない分離となることがある。疎水性クロマトグラフィーにおける溶出は、ヨウ化物、過塩素酸塩またはチオシアン酸塩のようなカオトロピック剤の添加により、またはグリセロール、エチレングリコールまたは2−プロパノールのようなアルコールの添加により、塩濃度を下げる(例えば、4mol/l〜0mol/lの勾配で)ことによって起こる。或る態様では、この疎水性クロマトグラフィーを中性pHで塩の存在下に、或る態様では約0.75mol/lNaClの存在下に実施する。低分子量アルコール、或る態様ではイソプロパノール(=2−プロパノール)の存在下に疎水性クロマトグラフィーを実施することも可能である。溶離緩衝液中の低分子量アルコールの濃度は平衡化緩衝液中の約2〜3倍である。洗浄緩衝液においては、低分子量アルコールの濃度は平衡化緩衝液中の約2倍である。平衡化のためには約10〜15%、或る態様では約10%の2−プロパノールを加え(クロマトグラフィー材料のロード);溶離のためには約25〜35%、或る態様では約27%の2−プロパノールを加え、そして洗浄緩衝液には19%の2−プロパノールを加える(指定した濃度は他のアルコールに対しても好適である。容量%、v/vで表記)。疎水性クロマトグラフィーは10℃〜40℃という広い温度範囲で実施できる。しかしながら、27±2℃の制御温度で操作するのが好都合である。
【0058】
次に、本発明方法に従い、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相での分離を実施できる。
【0059】
精製のための任意の工程として、ヒドロキシアパタイト工程に引き続き疎水化支持体による逆相クロマトグラフィーを行ってもよい。しかしながら通常これは、本発明に係るヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを利用する場合もはや必要ではなく、そのため省略できる。時間の節約に加えて、このことは費用をも削減し、後で分離せねばならない有機溶媒の使用を回避させる。以下のものが例えば逆相クロマトグラフィーのクロマトグラフィー材料として好適である:フェニルセファロースおよびオクチルセファロース(Pharmacia, Sweden)、ブチルトヨパール(Tosoh Haas, Germany)またはプロピル−TSK(Merck, Germany)。但しこの工程では、より長いアルキル基(例えばC8またはC18)を含む支持体の使用もまた有利である。或る態様では、カラムを2〜7の範囲のpHで、別の態様ではpH2.5で平衡化し、別の態様では水性トリフルオロ酢酸を使用する。溶離には、平衡化緩衝液から極性有機溶媒、例えばアセトニトリルの水溶液に至る勾配を使用する。クロマトグラフィー後、溶出液を中和するのが好都合である。
【0060】
本発明に係る精製法の次の工程として、陰イオン交換クロマトグラフィーが続く。この工程では、或る態様においてDEAEセファロースファストフロークロマトグラフィー材料をカラム材料として使用する。これを用いて平衡化をpH6〜pH9のpH値で、別の態様ではpH7.5で実施する。或る態様では場合により、酸性溶液(およそ4.5のpH値)で洗浄した後、溶離を中性または弱塩基性範囲(pH6〜9、或る態様ではイオン強度を高めつつ(或る態様ではNaClで)pH7.5)で実施する。或る態様では緩衝液としてリン酸緩衝液を使用する。
【0061】
或る態様では、このタンパク質調製物を0.1g〜10gのバッチで生産する。色素によるアフィニティークロマトグラフィー後の第二工程として疎水性クロマトグラフィーを実施すると、EPOが、或る態様では天然の哺乳動物タンパク質を含まない培地での培養後に、治療的用途に充分となる程精製され得ることが判明した(EP1394179)。Nobuo, I., et al., J. Biochem. 107 (1990) 352-359またはWO86/07494に記載のように、クロマトグラフィー精製前にプロテアーゼインヒビター(例えばCuSO4)を加える必要はない。疎水性クロマトグラフィーは、或る態様ではアルキル化(C4−C18)またはアリール化(或る態様ではフェニル化またはベンジル化)支持体で実施する。別の態様では特にブチル化支持体を使用する。
【0062】
本明細書において「天然の哺乳動物タンパク質を全く含まない」とは、その調製物が検出可能な量のそのようなタンパク質を含有しないことを意味する。その調製物は、宿主細胞由来でなく、そして細胞増殖を維持改善し収量を最適化するために培地に通常添加される、意図的に加えられる哺乳動物タンパク質を全く含まない。天然の哺乳動物タンパク質とは、ヒトまたは動物といった天然供給源に由来する哺乳動物タンパク質であり、例えば大腸菌(E. coli)のような原核生物中で産生された組換え哺乳動物タンパク質ではないと理解する。
【0063】
本発明のさらなる局面は、以下の工程:
a)20kDa〜40kDaの分子量を有する活性化PEG試薬を使用することによりエリスロポエチンをポリ(エチレングリコール)にコンジュゲートさせ(エリスロポエチンのPEG化)、
b)工程a)で得られたPEG化エリスロポエチンを、各々同じ固定相で異なる溶離法を用いる2種類の連続的陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製し、
c)第二固定相からPEG(ポリ(エチレングリコール))にコンジュゲートしたエリスロポエチンを単離する、
を含む、1個のポリ(エチレングリコール)ポリマーに共有結合したエリスロポエチン(モノ−PEG化エリスロポエチン)を生産する方法である。
【0064】
この方法は、組換え生産されその後化学的にPEG化されたPEG化EPOの精製に特に好適である。この方法の第一工程は、エリスロポエチンのPEG化である。この反応に使用するポリ(エチレングリコール)ポリマー(PEG)は、およそ20kDa〜40kDaの分子量を有する(PEGは確定した分子量を伴って得られる訳ではなく、分子量分布を有するポリマー化合物であるため、この文脈における「分子量」という語は、ポリ(エチレングリコール)の平均分子量を指す)。「およそ」という語は、幾らかのPEG分子はより高い分子量を、そして幾らかはより低い分子量を有することを意味する。即ち「およそ」という語は、それが分子量分布であってPEG分子の95%が記載の分子量の+/−10%の分子量を有するということを意味する。
【0065】
「PEG化」という語は、ポリ(エチレングリコール)分子および或るポリペプチドのN末端またはリジン側鎖の間の共有結合を指す。タンパク質のPEG化は特にVeronese, F.M., Biomaterials 22 (2001) 405-417に記載されている。ポリ(エチレングリコール)は種々の官能基によってタンパク質に結合でき、そして様々な分子量を有する(Francis, G.E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18;Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304)。ポリ(エチレングリコール)およびエリスロポエチンの共有結合は、例えばWO00/44785に報告されたように水溶液中で実施でき、或る態様では、5kDa〜40kDaの分子量を持つNHS活性化直鎖状または分岐ポリ(エチレングリコール)(PEG)分子を使用して実施できる。PEG化反応は、固相反応として実施することもできる(Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229)。選択的N末端PEG化タンパク質が、WO94/01451またはFelix, A.M., et al., ACS Symp. Ser. 680 (poly(ethyleneglycol))(1997) 218-238に従って取得できる。
【0066】
以下の実施例、配列表および図面を本発明の理解を助けるために提供するが、本発明の真の範囲は付記する請求項に開示する。本発明の精神を逸脱することなく、開示された方法に改変を施すことができるということを理解されたい。
【0067】
配列表の説明
配列番号1 165残基のアミノ酸配列を有するヒトエリスロポエチン。
配列番号2 166残基のアミノ酸配列を有するヒトエリスロポエチン。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ヒドロキシアパタイトを含有する固定相(HA−ウルトロゲル)を用いるエリスロポエチンのクロマトグラフィーの例示的クロマトグラム。
【図2】個々のエリスロポエチン含有画分の純度のプロット。
【図3】分析用逆相HPLCによるエリスロポエチン含有画分の分析的クロマトグラフィー。
【図4】エリスロポエチン含有画分中のde−O−EPOおよびEPOのパーセンテージの略図。
【図5】エリスロポエチン含有画分中のタンパク質様不純物の分布。
【図6】エリスロポエチン含有画分のシアル酸数のプロット。
【図7】エリスロポエチン含有画分中の酸性および塩基性イソ型の分布。
【図8】エリスロポエチン含有画分中のトリアンテナリーグリコシル型の分布。
【図9】エリスロポエチン含有画分中のバイアンテナリーグリコシル型の分布。
【図10】エリスロポエチン含有画分中のグリコシル型の分布の概略。
【図11】エリスロポエチン含有ピークにおける肩部の比較例。
【図12】ヒドロキシアパタイトを含有する種々の固定相を用いて得られたエリスロポエチンのイソ型分布。
【図13】本発明方法を用いて得られたクロマトグラム。
【図14】種々のクロマトグラフィー法におけるイソ型分布の比較。
【0069】
材料および方法
クロマトグラフィーのための緩衝液
溶液は全て保存溶液から調製した。別途記載の無い限り、全ての緩衝液のpHを1M NaOHまたは1M HClで調節した。II型超純水(ミリQ水)を常に使用した。
【0070】
保存溶液(水中)
1mol/lリン酸カリウム緩衝液、pH6.9±0.2、
1mol/lトリス(ヒドロキシアミノメタン)緩衝液(TRIS−HCl)、pH6.9±0.2、
5mol/l塩化ナトリウム、
1mol/l塩化カルシウム、
10mol/l水酸化ナトリウム。
【0071】
標準クロマトグラフィー緩衝液:
標準洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液HAウルトロゲル/ファストフロー:
20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液CHT: 200mMリン酸カリウム、
pH9〜10
再生緩衝液1 HAウルトロゲル:
200mMリン酸カリウム、0.1mMCaCl2、
pH6.9±0.2
再生緩衝液1 CHT、ファストフロー:
200mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
アルカリ性再生: 0.5M NaOH
平衡緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール、
pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 10mMTRIS−HCl、5mMCaCl2、
pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 10mMTRIS−HCl、0.5mMCaCl2、
10mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
【0072】
分析的決定のための緩衝液
分析用RP−HPLC:
溶離液A:0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)、水
溶離液B:0.1%TFA、70%アセトニトリル、水
タンパク質決定A280:
10mMリン酸Na/K、0.1mol/lNaCl、pH7.5±0.2
【0073】
タンパク質決定
光路長1cmの水晶キュベットを使用した。試料を、測定される吸光度が0.2〜1.0AUとなるよう希釈した。希釈が必要な場合、試料を相互に独立して希釈し、トリプリケートで測定した。希釈しなかった試料は1回の測定で決定した。エリスロポエチン最終生成物緩衝液を試料の希釈およびブランク測定に使用した。
【0074】
測定は280nmで実施した。エリスロポエチンリファレンス標準試料を系の対照として最初に測定した。実際の試料は、分析に先立ち平均タンパク質濃度1.86mg/ml〜2.05mg/mlに調節した。タンパク質濃度は以下の式に基づいて算出した:
【0075】
【数1】
1)0.1%溶液の吸光係数:ε=1.25ml・(mg・cm)−1
2)試料の希釈係数
【0076】
タンパク質の量は以下の式で与えられる:
m[g]=c[mg/ml]・V[L]
【0077】
分析用RP−HPLC
RP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)において、全ての試料は溶離液Aで最大濃度0.12mg/mlに希釈した。タンパク質濃度は280nmの光度測定により決定した。試料の分析に先立ち100%溶離液Aの試料4個を注入した。このことによりカラムが完全に平衡化されていることを確実とした。エリスロポエチンリファレンス標準を、試料の連続分析の開始時および終了時に分析した。偏位を回避するため、クロマトグラムを標準化積分法で解析した。基線に垂直な線を引くことにより各ピークを相互に分離した。
【0078】
CHOタンパク質含有量/宿主細胞タンパク質含有量の決定
ELISA試験(酵素結合免疫吸着アッセイ)によってCHO細胞タンパク質を測定した。ここではストレプトアビジン/ビオチン技術に基づくサンドイッチ法を利用した。このアッセイにはストレプトアビジン被覆したマイクロタイタープレートを使用した。CHO細胞タンパク質に対する抗体を、ビオチンによってこのプレートに結合させた。分析しようとする試料溶液を、15〜150ng/mlのCHOタンパク質濃度でピペットにより添加した。濃度が15ng/mlを下回った場合、その試料をCHOタンパク質を含まないとみなした。濃度が150ng/mlを超えた場合には、より高希釈で試験を反復した。
【0079】
結果をCHOタンパク質[ppm]として記載した。
【0080】
【数2】
【0081】
イソ型分布の決定
キャピラリー電気泳動によってイソ型分布を決定した。この分析のため、試料を水中で透析濾過した。続いてそのキャピラリーを電解質溶液ですすぎ、その後、希釈試料をキャピラリー内に適用した。25000Vの高電圧をかけることにより分離した。移動相緩衝液は過剰の陽イオンを有し、それが電気浸透流をもたらした。水晶のキャピラリーの使用が、キャピラリー中のタンパク質の光度検出およびピーク面積による定量を可能にした。
【0082】
糖の分析
糖の分析には酵素試験法を利用した。この方法では、エリスロポエチンのN−グリコシド結合したオリゴ糖を酵素N−グリコシダーゼで開裂させた。さらに、酵素ノイラミニダーゼの助けを借りてこのオリゴ糖からシアル酸を除去した。得られたN−オリゴ糖を陰イオン交換体を用いて分離および分析した。試料と全く同じ方法で処理したエリスロポエチンリファレンス標準を、一連の試験の最中に測定した。以下の糖構造が検出された:バイアンテナリー、トリアンテナリー、トリアンテナリー1リピート、テトラアンテナリー、テトラアンテナリー1リピート、テトラアンテナリー2リピート。
【0083】
排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)
SE−HPLCのため、分離を開始する前に、クロマトグラフィーカラムを3〜5カラム容量(CV)の緩衝液で平衡化し、余分なピークの無い均一な基線を得た。試料を0.2mg/ml濃度に希釈し、SE−HPLCに注入した。標準法に従いピークを積分した。垂線を降ろすことによりピークを相互に分離した。
【0084】
DNA測定
ビオチンをマイクロタイタープレートに結合させた。ストレプトアビジン、一本鎖DNAおよびビオチン化一本鎖DNA結合タンパク質の反応混合物を添加した。この結合タンパク質はDNAに結合でき、ビオチン化された。このようにして試料混合物からDNAを特異的に除去することが可能となった。ストレプトアビジンは、マイクロタイタープレート上のビオチンおよび一本鎖DNA結合タンパク質にカップリングしたビオチンに結合した。この全複合体に、ウレアーゼにカップリングさせたDNA特異抗体を加えた。尿素を添加すると尿素の加水分解が導かれ、それがpHの局所的変化を惹起した。この変化は表面電位の変化として検出され得る。表面電位の変化は結合しているDNAの量に比例した。一本鎖DNAは、プロテイナーゼK消化およびSDSによる変性により得られた。
【0085】
ペプチドマップ
de−O−EPOおよびde−N−EPOのような不完全にグリコシル化されたエリスロポエチン種はペプチドマッピングによって定量できる。この目的のため、エリスロポエチン分子をエンドプロテイナーゼLys−Cによりペプチドへと開裂し、これらのペプチドをHPLCで分離した。得られたペプチドパターンをリファレンス標準と比較した。得られた結果を、ピークサイズ、ピークの外観および保持時間について標準と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0086】
実施例1
CHO細胞におけるエリスロポエチンの組換え生産
EPOをバッチ法によってCHO細胞において生産した。発酵槽に前培養を接種し、約5日後、この発酵槽の内容物を収穫する。無傷のCHO細胞および細胞フラグメントを遠心分離により発酵上清から除去した。この無細胞培養上清のpHを酢酸(1mol/l)でpH5.0〜5.2に調節し、その後このpH調節した溶液を1〜9℃で濾過した。基本培地DME(HG)HAMのF−12改変(R5)(GRH Biosciences/Hazleton Biologics, Denver, USA, Order No. 57-736)、炭酸水素ナトリウム、L−(+)グルタミン、D−(+)グルコース、組換えインスリン、亜セレン酸ナトリウム、ジアミノブタン、ヒドロコルチゾン、硫酸鉄(II)、アスパラギン、アスパラギン酸、セリンおよびポリビニルアルコールで構成される無血清培地を培養として使用した。
【0087】
実施例2
ブルーセファロースクロマトグラフィー
ブルーセファロース(Pharmacia)は、色素Cibachron(登録商標)ブルーを共有結合させたセファロースビーズで構成される。エリスロポエチンは、低イオン強度および中性ないし酸性pH値でこの支持体に結合する。エリスロポエチンはイオン強度およびpH値を上げることにより溶出する。
【0088】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP440 x 500、Amicon, GB)に60〜80lのブルーセファロースを満たし、0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを約3カラム容量(CV)の酢酸緩衝液で平衡化する。pH5に調節した無細胞培養上清を、温度10+/−5℃および流速800〜1400ml/分でカラムに導入する。このカラムを、同じ流速および5+/−4℃で、約1CVの洗浄緩衝液1、次いで約2CVの洗浄緩衝液2で再洗浄する。その後カラムを約3CVの溶離緩衝液で溶離する。タンパク質ピーク全体を集め(約30〜60l)、HClでpH6.9に調節し、さらなる加工まで5+/−4℃で保存する。生成物溶液はこのクロマトグラフィー工程で濃縮され、約40〜50%の純度が達成される。
【0089】
平衡化緩衝液: 20mM 酢酸Na、5mM CaCl2、0.1M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液1: 20mM 酢酸Na、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液2: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.5±0.3
溶離緩衝液: 100mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、1M NaCl、
pH9.0±0.2
【0090】
実施例3
ブチルトヨパールクロマトグラフィー(疎水性クロマトグラフィー)
ブチルトヨパール(Tosoh Haas)は、表面にブチル残基が共有結合している支持体である。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、2−プロパノールを含有する緩衝液で溶出される。
【0091】
10% 2−プロパノールを含有する平衡化緩衝液中でタンパク質がブチルマトリックスに結合した後、エリスロポエチンを、水性緩衝液および50% 2−プロパノールより成る勾配によって溶出させた。この溶出は約20% 2−プロパノールで開始する。
【0092】
クロマトグラフィーカラム(Pharmacia BPG 300/500)に30〜40lのブチルトヨパールを満たし、4Mグアニジン−HClおよび0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを少なくとも3CVの平衡化緩衝液で平衡化する。ブルーセファロースカラムの溶出液を10% 2−プロパノールに調節し、温度27±2℃および流速800〜1200ml/分でカラムに導入する。このカラムを、同じ温度および流速で、約1CVの平衡化緩衝液で、そして次に約2CVの洗浄緩衝液で再洗浄する。その後エリスロポエチンを約3CVの溶離緩衝液で溶離する。タンパク質ピーク全体を集め(約10〜18l)、直ちに希釈緩衝液で3倍に希釈し、15℃で保存する。このクロマトグラフィーにおいて約90%の純度が達成される。
【0093】
平衡化緩衝液:20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
10% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
19% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.75M NaCl、
27% 2−プロパノール、pH6.9±0.2
希釈緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
第一溶液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
【0094】
実施例4
ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー
現行の工程条件に対する適切な比較を可能とするため、ヒドロキシアパタイトを含有する各固定相による分離において、同じ基本法の工程を利用した。その順序は、
再生 − 平衡化 − 分離 − 再生、
であった。
【0095】
緩衝液は、再生のための製造者の指示に適合させた。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
分離のためのクロマトグラフィーパラメータを以下の表4に示す。同パラメータを全ての材料に使用した。
【0099】
【表4】
【0100】
UV吸収シグナルに基づきピークを集めた。収集は15mAUで開始し、各々のピーク最大値が過ぎた後に40mAUで停止した。分離後に再生を行った。溶離および再生工程のピークを集め、−20℃で保存した。再生のカットリミットは立上がり15mAU〜立下がり15mAUであった。溶離流速は個々の工程において0.35cm/分から1.7cm/分の間で変化させた。
【0101】
標準溶液:
標準洗浄緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液HAウルトロゲル/ファストフロー:
20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
充填緩衝液CHT: 200mMリン酸カリウム、
pH9−10
再生緩衝液1 HAウルトロゲル:
200mMリン酸カリウム、0.1mM CaCl2、
pH6.9±0.2
再生緩衝液1 CHT、ファストフロー:
200mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
アルカリ性再生: 0.5M NaOH
平衡化緩衝液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、
pH6.9±0.2
洗浄緩衝液: 10mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.9±0.2
溶離緩衝液: 10mMTRIS−HCl、0.5mM CaCl2、
10mMリン酸カリウム、
pH6.9±0.2
【0102】
実施例5
ヒドロキシアパタイトウルトロゲルクロマトグラフィー
ヒドロキシアパタイトウルトロゲル(BioSepra)は、その機械的および流体力学的性質を改善するためにアガロース骨格に組み込まれたヒドロキシアパタイトで構成される。エリスロポエチンはこのマトリックスに結合し、殆どのタンパク質性不純物よりも低いリン酸濃度で溶出する。
【0103】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP440x500または同等品)に30〜40lのヒドロキシアパタイトウルトロゲルを充填し、0.5N NaOHで再生する。続いてこのカラムを少なくとも4CVの平衡化緩衝液で平衡化する。精製しようとするエリスロポエチン溶液を、温度約15℃および流速500〜1200ml/分でカラムに吸着させる。カラムを、約1CVの平衡化緩衝液、次いで約2CVの洗浄緩衝液により、同じ温度および流速で再洗浄する。次いで約3CVの溶離緩衝液で溶出する。タンパク質ピーク全体を集め(約10〜18l)、さらなる加工を行うまで15℃で保存する。このクロマトグラフィーにおいて95%を超える純度が達成される。
【0104】
平衡化緩衝液: 20mM酢酸Na、5mM CaCl2、0.1M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液1: 20mM酢酸Na、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
pH5.0±0.2
洗浄緩衝液2: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、
pH6.5±0.3
溶離緩衝液: 100mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、1M NaCl、
pH9.0±0.2
【0105】
実施例6
ヒドロキシアパタイトファストフロークロマトグラフィー
この材料は製造者から固体で供給された。適当量の材料を秤量し、標準洗浄緩衝液に懸濁した。粒子の表面全体を濡らすため、粉末を緩衝液中で数時間インキュベートした。希薄なゲルスラリー(約20%(v/v))を充填に使用した。このゲル材料を2日間沈殿させることにより、圧力をかけずにカラムに充填した。ゲルが完全に沈殿した後、カラムを流速0.5ml/分(0.64cm/分)で5CVによりすすいだ。その後カラムを再生した。
【0106】
クロマトグラフィーを実施例4に記載のように実施した。
【0107】
実施例7
ヒドロキシアパタイトCHTクロマトグラフィー
このセラミック材料(CHT1型および2型)は製造者から固体で供給された。満たすべき量を秤量し、充填緩衝液CHT1、2型に懸濁した。この材料の全面を濡らすため、CHTを充填緩衝液中で数時間インキュベートした。希薄なゲルスラリー(約20%(v/v))を充填に使用し、スラリー全体をカラムに満たし、流速1ml/分(1.3cm/時)で充填した。ゲルが完全に沈殿した後、カラムを再生した。
【0108】
クロマトグラフィーを実施例4に記載のように実施した。
【0109】
実施例8
CaCl2を使用しない、本発明に係るヒドロキシアパタイトCHTクロマトグラフィー
実施例7に記載のようにカラムを充填し、実施例4に記載のようにクロマトグラフィーを実施した。
【0110】
実施例4とは対照的に、以下の溶液を使用した:
第二溶液: 20mMTRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
第三溶液: 20mMTRIS−HCl、0.25M NaCl、
9%(v/v)2−プロパノール、pH6.9±0.2
第四溶液: 10mM TRIS−HCl、pH6.9±0.2
第五溶液: 10mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、
10mMリン酸カリウム、pH6.9±0.2
【0111】
実施例9
逆相HPLC(RP−HPLC)
RP−HPLC材料、例えばヴィダックC4(Vydac, USA)は、その表面にC4アルキル鎖を担持するシリカゲル粒子で構成されている。エリスロポエチンは疎水性相互作用の結果このマトリックスに結合し、希トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配で選択的に溶出される。
【0112】
22±4℃の温度でMerck Prepbar 100分離系(または同等品)を用いて分取HPLCを実施した。分離カラム(100mm x 400mm、3.2l)にヴィダックC4材料を充填した。使用前に緩衝液Aから100%溶媒に至る勾配を数回適用することにより、カラムを再生し、その後緩衝液Aで平衡化した。このヒドロキシアパタイトカラムの溶出液をトリフルオロ酢酸で約pH2.5に酸性化し、濾過滅菌した。その後、温度22±4℃および流速250〜310ml/分でエリスロポエチンをカラムに吸収させる。このカラムを同じ温度および流速で、緩衝液Aから緩衝液Bに至る直線勾配で溶出した。溶出ピークを画分として集める。HPLC希釈緩衝液4容量を添加することにより、溶出液を直ちに中和する。
【0113】
分析用HPLCで少なくとも99%純度を有する画分をプールする(プール容量約4〜6l)。このクロマトグラフィーにおいて微量の不純物が分離され、99%を上回る純度が達成される。
【0114】
緩衝液A: 水中0.1%トリフルオロ酢酸
緩衝液B: 80%アセトニトリル、水中0.1%トリフルオロ酢酸
HPLC希釈緩衝液: 10mM リン酸Na/K、pH7.5±0.2
【0115】
実施例10
DEAEセファロースFFクロマトグラフィー
DEAEセファロースファストフロー(Pharmacia)は、セファロースビーズ表面に共有結合させたDEAE基で構成されている。エリスロポエチンはイオン相互作用の結果このマトリックスに結合し、イオン強度を上げることにより溶離する。
【0116】
クロマトグラフィーカラム(アミコンP90 x 250または同等品)に、適用された試料中のエリスロポエチン1gあたり100〜200mlのゲルを満たし、0.5M NaOHで再生した。続いてこのカラムを、100mMNa/K緩衝液(pH7.5)、その後少なくとも12CVの平衡化緩衝液で平衡化する。HPLCカラムの溶出液を、温度5±4℃および流速約150ml/分でカラムに吸収させる。カラムを同じ温度および流速で、少なくとも5CVの平衡化緩衝液、次いで約10CVの洗浄緩衝液で洗浄した。続いて、カラムを約10CVの平衡化緩衝液で再洗浄し、約7CVの溶離緩衝液でエリスロポエチンを溶離した。全タンパク質ピークを集め(約2〜5l)、濾過滅菌し分注する。
【0117】
このクロマトグラフィーにおいてHPLC工程由来の溶媒が分離され、微量の不純物が除去される。純度は99%を上回る。
【0118】
平衡化緩衝液: 10mMリン酸Na/K、pH7.5±0.2
洗浄緩衝液: 30mM酢酸Na、pH4.5±0.1
溶離緩衝液: 10mMリン酸Na/K、80mMNaCl、pH7.5±0.2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)エリスロポエチンおよびii)第一濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を提供すること、
b)ヒドロキシアパタイト含有固定相を含むクロマトグラフィーカラムを提供すること、
c)第二濃度でカルシウムイオンを含有する溶液をb)のカラムに適用すること、
d)a)の溶液をc)で得られたカラムに適用すること、
e)第三濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を、d)で得られたカラムに適用すること、および、
f)第四濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を、e)で得られたカラムに適用することにより、精製されたエリスロポエチンを回収すること、
を含む、エリスロポエチンの精製方法であって、
該第一および第二カルシウムイオン濃度は、同じであり、そして該第三および第四カルシウムイオン濃度は、同じであって、該第一および第二カルシウムイオン濃度より低い、エリスロポエチンの精製方法。
【請求項2】
該第三および第四カルシウムイオン濃度が、0.5mMまたはそれ以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一および第二カルシウムイオン濃度が、5mMであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
工程c)およびe)の溶液が、2−プロパノールを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程e)およびf)の溶液が、好ましくはリン酸ナトリウムまたは同カリウムの形態である、濃度5mMのリン酸イオンを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の溶液が、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)の溶液が、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)の溶液が、20mM TRIS−HCl、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)の溶液が、10mM TRIS−HCl(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下のような一連のクロマトグラフィー工程:
i)アフィニティークロマトグラフィー、
ii)疎水性相互作用クロマトグラフィー、
iii)ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー、
を用いる、エリスロポエチンの生産方法であって、
ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィーは、前記請求項のいずれか1項に従って実施する、エリスロポエチンの生産方法。
【請求項11】
EPOをコードしている核酸を含む細胞を培養し、その細胞または培地からエリスロポエチンを単離することを含む、エリスロポエチンの生産方法であって、エリスロポエチンの単離が、以下の工程:
i)細胞上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
ii)場合により、i)由来のエリスロポエチンを含有する画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
iii)i)またはii)由来のエリスロポエチンを含有する画分を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、および請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いてエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
を含むことを特徴とする、エリスロポエチンの生産方法。
【請求項12】
以下の工程:
i)20kDa〜40kDaの分子量を有する活性化PEGを用いてエリスロポエチンをPEG化すること、
ii)工程i)で得られたPEG化エリスロポエチンを、同じ固定相を用いる2つの連続する陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製すること、
iii)第二の固定相からモノPEG化エリスロポエチンを回収し、それによりモノPEG化エリスロポエチンを生産すること、
を含む、モノ−PEG化エリスロポエチンの生産方法であって、
工程i)で使用されるエリスロポエチンは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により得られる、モノ−PEG化エリスロポエチンの生産方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得られたエリスロポエチン。
【請求項14】
エリスロポエチン1分子あたり6以上17以下のシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比が83:14:2〜74:21:6の範囲である、エリスロポエチンイソ型の混合物であることを特徴とする、エリスロポエチン。
【請求項15】
エリスロポエチン1分子あたり6以上17以下のシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲である、エリスロポエチンイソ型の混合物であることを特徴とする、エリスロポエチン。
【請求項16】
場合により薬学的希釈剤、助剤および/または担剤と共に、請求項13または請求項14または請求項15に記載のエリスロポエチンを含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒドロキシアパタイトを含有する固定相を使用するクロマトグラフィー工程であって、EPO含有画分の収集が、15mAU〜75mAUの吸収で始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する280nmでの光吸収により調節され、そして、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトであり、そして、溶液は、5mMのリン酸イオン濃度を有する、
を含む、エリスロポエチン中のCHO細胞タンパク質を涸渇させる方法。
【請求項1】
a)i)エリスロポエチンおよびii)第一濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を提供すること、
b)ヒドロキシアパタイト含有固定相を含むクロマトグラフィーカラムを提供すること、
c)第二濃度でカルシウムイオンを含有する溶液をb)のカラムに適用すること、
d)a)の溶液をc)で得られたカラムに適用すること、
e)第三濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を、d)で得られたカラムに適用すること、および、
f)第四濃度でカルシウムイオンを含有する溶液を、e)で得られたカラムに適用することにより、精製されたエリスロポエチンを回収すること、
を含む、エリスロポエチンの精製方法であって、
該第一および第二カルシウムイオン濃度は、同じであり、そして該第三および第四カルシウムイオン濃度は、同じであって、該第一および第二カルシウムイオン濃度より低い、エリスロポエチンの精製方法。
【請求項2】
該第三および第四カルシウムイオン濃度が、0.5mMまたはそれ以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一および第二カルシウムイオン濃度が、5mMであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
工程c)およびe)の溶液が、2−プロパノールを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程e)およびf)の溶液が、好ましくはリン酸ナトリウムまたは同カリウムの形態である、濃度5mMのリン酸イオンを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の溶液が、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)の溶液が、20mM TRIS−HCl、5mM CaCl2、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)の溶液が、20mM TRIS−HCl、0.25M NaCl、9%(v/v)2−プロパノール(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)の溶液が、10mM TRIS−HCl(pH6.9±0.2)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下のような一連のクロマトグラフィー工程:
i)アフィニティークロマトグラフィー、
ii)疎水性相互作用クロマトグラフィー、
iii)ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィー、
を用いる、エリスロポエチンの生産方法であって、
ヒドロキシアパタイトを含有する固定相によるクロマトグラフィーは、前記請求項のいずれか1項に従って実施する、エリスロポエチンの生産方法。
【請求項11】
EPOをコードしている核酸を含む細胞を培養し、その細胞または培地からエリスロポエチンを単離することを含む、エリスロポエチンの生産方法であって、エリスロポエチンの単離が、以下の工程:
i)細胞上清をアフィニティークロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
ii)場合により、i)由来のエリスロポエチンを含有する画分を疎水性相互作用クロマトグラフィー材料に適用すること、およびエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
iii)i)またはii)由来のエリスロポエチンを含有する画分を、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相に適用すること、および請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いてエリスロポエチンを含有する画分を回収/収集すること、
を含むことを特徴とする、エリスロポエチンの生産方法。
【請求項12】
以下の工程:
i)20kDa〜40kDaの分子量を有する活性化PEGを用いてエリスロポエチンをPEG化すること、
ii)工程i)で得られたPEG化エリスロポエチンを、同じ固定相を用いる2つの連続する陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製すること、
iii)第二の固定相からモノPEG化エリスロポエチンを回収し、それによりモノPEG化エリスロポエチンを生産すること、
を含む、モノ−PEG化エリスロポエチンの生産方法であって、
工程i)で使用されるエリスロポエチンは、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により得られる、モノ−PEG化エリスロポエチンの生産方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得られたエリスロポエチン。
【請求項14】
エリスロポエチン1分子あたり6以上17以下のシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリー:トリアンテナリー:バイアンテナリーグリコシル型の比が83:14:2〜74:21:6の範囲である、エリスロポエチンイソ型の混合物であることを特徴とする、エリスロポエチン。
【請求項15】
エリスロポエチン1分子あたり6以上17以下のシアル酸残基数を有し、テトラアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:2リピートを有するテトラアンテナリーグリコシル型:トリアンテナリーグリコシル型:1リピートを有するトリアンテナリーグリコシル型:バイアンテナリーグリコシル型の比率が43:28:12:8:6:2〜45:21:7:14:7:6の範囲である、エリスロポエチンイソ型の混合物であることを特徴とする、エリスロポエチン。
【請求項16】
場合により薬学的希釈剤、助剤および/または担剤と共に、請求項13または請求項14または請求項15に記載のエリスロポエチンを含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒドロキシアパタイトを含有する固定相を使用するクロマトグラフィー工程であって、EPO含有画分の収集が、15mAU〜75mAUの吸収で始まり、最大ピークが過ぎ去った後に200mAU〜40mAUの吸収で終了する280nmでの光吸収により調節され、そして、ヒドロキシアパタイトを含有する固定相は、純粋な結晶性ヒドロキシアパタイトであり、そして、溶液は、5mMのリン酸イオン濃度を有する、
を含む、エリスロポエチン中のCHO細胞タンパク質を涸渇させる方法。
【図1】
【図3】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−502939(P2012−502939A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527252(P2011−527252)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006783
【国際公開番号】WO2010/034442
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006783
【国際公開番号】WO2010/034442
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]