説明

エレクトロクロミック表示デバイス

【課題】表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができるエレクトロクロミック表示デバイスを提供する。
【解決手段】第1基板10と、第1電極20…と、第2基板30と、第2電極40…と、エレクトロクロミック組成物層50と、を備え、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間に表示のための通電とは逆方向の通電によって表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイス100において、エレクトロクロミック組成物層50は、電子供与性染料前駆体としてのロイコ染料52aを含み、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報ネットワークの普及に伴い、従来の印刷技術による書籍に代わり、電子書籍の形での出版、すなわち電子出版が盛んに行われるようになってきた。こうしたネットワークで配信される電子情報を表示する装置として、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやバックライト型液晶ディスプレイが用いられている。しかしながら、これらのディスプレイを用いた表示は、紙に印刷した慣用の表示に比べ、読む場所が制限され、取り扱いの面においても重量、大きさ、形状、携帯性の点で劣る。また、これらのディスプレイは消費電力が大きいため、電池による駆動であれば表示時間にも制限が生じてしまう。さらに、これらのディスプレイは、何れも発光型のディスプレイであり、長時間凝視すると高度の疲労を招くことがあるという問題もある。
【0003】
したがって、上記のような問題を解決できる表示デバイス、さらには、書き換え可能な表示デバイスが望まれている。このような表示デバイスとして、ペーパーライクディスプレイ或いは電子ペーパーと称するものが提案されている。具体的には、例えば、反射型液晶方式の表示デバイス、電気泳動方式の表示デバイス、二色性の粒子を電場で回転させる方式の表示デバイス、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(例えば、特許文献1〜3参照)、などがこれまでに提案されている。
【0004】
ところで、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(エレクトロクロミック表示デバイス)においては、表示材料として、例えば、電極の表面で発色する染料などを必須成分とするエレクトロクロミック組成物が用いられている。そして、例えば、(1)通電により表示→(2)表示のための通電量よりも小さな通電量を連続通電することにより表示を維持→(3)通電の遮断により表示を消去、というプロセスを経て、表示動作を実施するようになっている。(1)及び(2)の工程においては、通電量によって所望の表示を定量的に制御するようになっている。その一方で、(3)の工程においては、自然放置によって消去するようになっており、表示発色の状態によって消去時間のばらつきや消去動作のばらつきが生じ、大部分が消去されても低濃度の画像が残存し、完全な消去には時間がかかるという問題がある。
【0005】
この問題を解決する手法としては、例えば、表示のための通電とは逆方向に通電をすることによって消去を実施する手法が考えられる(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2006−119344号公報
【特許文献2】特開昭58−038782号公報
【特許文献3】特開平05−098251号公報
【特許文献4】特開昭57−11323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4の手法においては、消去のための通電の通電量を厳密に制御しないと、染料が表示電極と反対側の電極に移動して発色表示を形成してしまい、結果として表示が消去されないことがあるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができるエレクトロクロミック表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、前記消去のための通電時に前記電子供与性染料前駆体を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが添加されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記第1電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記消去のための通電時に前記電子供与性染料前駆体を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む吸着層を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物は、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物並びに下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物が添加されていることを特徴とする。
【化1】

(式中R1、R2、R3、R4は、水素原子、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R1とR2及び/又は式中R3とR4は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R1、R2、R3、R4のすべてが水素原子であることは無い。)
【化2】

(式中R5、R6、R7、R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R5とR6、式中R6とR7及び/又は式中R7とR8は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R5、R6、R7、R8のすべてが水素原子であることは無い。)
【化3】

(式中R9、R10、R11、R12は、水素原子を表す。或いは、式中R9とR10又は式中R11とR12は、互いに結合して形成された二重結合を表す。)
【化4】

(式中Z及び点線は、環を形成している状態を表し、当該環が脂肪族の環の場合は、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基を表し、当該環が芳香族の環の場合は、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基を表す。)
【0011】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記電子供与性染料前駆体は、ロイコ染料であり、
前記エレクトロクロミック組成物には、ヒンダードフェノール類が添加されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記支持電解質は、下記の一般式(5)で表される化合物及び/又は下記の一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする。
【化5】

(式中Mは、Li、Na、K、Rb、Cs又はNHを表す。式中Xは、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。)
【化6】

(式中R13は、アルキル基又はアリール基を表す。式中R14は、アルキル基を表す。式中Nは、窒素原子を表す。式中Xは、Cl、Br、I、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。式中nは、0、1又は2を表し、式中mは、4−nを表す。)
【0014】
請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の電極であり、
前記第1電極と前記第2電極の透明表示電極部とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、
請求項1〜9の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、金属電極であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、
請求項1〜9の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、透明電極であることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の電極であり、
前記第1電極の透明表示電極部と前記第2電極の透明表示電極部とが相対して立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、
請求項1〜12の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、
請求項1〜13の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
パッシブマトリックス駆動によって表示のための駆動をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1基板と、第1基板の上面に設けられた第1電極と、第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、第1基板と第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、第1電極と第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極と第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、エレクトロクロミック組成物には、消去のための通電時に染料を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが添加されている。
すなわち、消去のための通電時には、染料は酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに吸着されるため、染料が表示電極と反対側の電極に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
【0023】
また、本発明によれば、第1基板と、第1基板の上面に設けられた第1電極と、第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、第1基板と第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、第1電極と第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極と第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、第1電極とエレクトロクロミック組成物層との間に、消去のための通電時に電子供与性染料前駆体を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む吸着層を備えている。
すなわち、消去のための通電時には、染料は酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに吸着されるため、染料が表示電極と反対側の電極に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図を参照して、本発明にかかるエレクトロクロミック表示デバイスの最良の形態を詳細に説明する。なお、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0025】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100について説明する。
【0026】
<エレクトロクロミック表示デバイスの構成>
図1は、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられた第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40…と、第1基板10と第2基板20との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するようになっている。
第1電極20…は、例えば、並行して延びる複数の電極である。第2電極40…は、例えば、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極である。そして、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素60…が形成されている。
【0027】
第1基板10は、例えば、平面状に形成されており、エレクトロクロミック表示デバイス100の基体としての機能を有する。
【0028】
第1基板10の材質は、電気的に絶縁性であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類などが挙げられる。
【0029】
第1基板10は、白色に見えるのが好ましい。したがって、第1基板10の材質をガラスやプラスチックとした場合、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カオリンなどの白色顔料を配合することによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。また、透明基板の下面に、前記白色顔料を塗布したり、白色紙や白色PETシートなどの白色シートを配置したりすることによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。
【0030】
第1電極20…は、例えば、幅を有するライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20…は、第2電極40…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20…は、第2電極40…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0031】
第1電極20…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材質や透明電極を構成する材質を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO、ZnO、FTOなどが挙げられる。
【0032】
第2基板30は、例えば、平面状に形成された透明基板であり、第2電極40…の支持体としての機能を有する。
【0033】
第2基板30の材質は、電気的に絶縁性の透明基板であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類などが挙げられる。
【0034】
第2電極40…は、例えば、幅を有するライン状に形成された透明電極であり、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第2電極40…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40…は、第1電極20…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40…は、第1電極20…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0035】
第2電極40…の材質は、透明電極を構成可能な材質であれば、特に限定されるものではない。透明電極を構成可能な材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、第2電極40…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
【0036】
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔51a…を有する多孔質体51と、多孔質体51の細孔51a…内に導入されたエレクトロクロミック組成物52と、などを備えて構成される。
【0037】
多孔質体51は、第1基板10と第2基板30との間に、一定の体積で、エレクトロクロミック組成物52を保持する役割を有する。すなわち、多孔質体51は、エレクトロクロミック組成物52を含むことによって、エレクトロクロミック組成物52を第1基板10と第2基板30との間で支えるとともに、多孔質体51の厚みによって、エレクトロクロミック組成物52の量を均一に制御するスペーサの役割を有する。
【0038】
多孔質体51の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm〜500μm、より好ましくは30μm〜200μmに設定することによって、エレクトクロミック組成物52の表示機能を効果的に発現させることができる。
【0039】
多孔質体51の細孔51aのサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、図2に示すように、画素60のサイズよりも小さいのが好ましい。すなわち、例えば、図2に示すように、細孔51aの形状が円形であるとともに、画像60の形状(図2においては一点破線で示す)が正方形である場合は、多孔質体51の細孔51aの直径(孔径)は、画素60の幅(すなわち、第1電極20の幅や第2電極40の幅)よりも小さいのが好ましい。
無論、細孔51aの形状は、円形に限ることはなく、矩形などの多角形であっても良い。また、画素60の形状は正方形に限ることはなく、その他の多角形であっても良いし、円形であっても良い。
【0040】
例えば、多孔質体51の細孔51aのサイズが大きい場合(具体的には、例えば、孔径が画素60の幅の1/5以上である場合)、或いは、例えば、多孔質体51の細孔51a,51a同士の間の距離が短い場合(具体的には、例えば、開孔率が50%以上である場合)、エレクトロクロミック表示デバイス100による表示画像は、高濃度で、コントラストが高い画像となる。一方、多孔質体51の細孔51aのサイズが小さい場合(具体的には、例えば、孔径が画素60の幅の1/50以下である場合)、或いは、例えば、多孔質体51の細孔51a,51a同士の間の距離が長い場合(具体的には、例えば、開孔率が20%以下である場合)、エレクトロクロミック表示デバイス100による表示画像は、解像力の高い、鮮鋭度に優れたクリアな画像となる。
【0041】
多孔質体51の材質は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではなく、無機材料及び有機材料の何れも用いることができる。
【0042】
好ましい材質としては、例えば、電気的に絶縁性の無機材料としてアルミナ(特に陽極酸化アルミナ)、シリカ、酸化ジルコニウム、SiC、ガラス等、電気的に絶縁性の有機材料及び高分子物質としてテフロン(米国デュポン社の登録商標)、ナイロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等、半導体を含む金属酸化物材料としてTiO、SrTiO、ZnO、SnO、InSnO、Nb、WO、CuO、CoO、MnO、V等、化合物半導体を含む金属カルコゲナイド及び他元素複合化合物としてCdS、ZnS、GaP、GaAs、InP、FeS、PbS、CuInS、CuInSe等に代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物や複合化合物等、金属及び半金属材料として金、白金、銀、銅、クロム、亜鉛、錫、チタン、タングステン、アルミニウム、ニッケル、鉄、シリコン、ゲルマニウム等、炭素材料としてグラファイト、グラシーカーボン、ダイヤモンド等、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
多孔質体51は、単一の材料から構成されていても良く、複数の材料から構成されていても良い。複数の材料から構成される場合は、細孔51a…の壁部分とその他の部分、細孔51a…の上部と下部、といったように部分毎に材料を変えて構成しても良い。
多孔質体51の細孔51a…の内部の少なくとも一部(多孔質体51の細孔51a…の壁)を構成している材料は、絶縁体材料又は半導体材料が好ましい。具体的には、金属のカルコゲナイド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物など)、シリコンが好ましく、金属酸化物がより好ましく、アルミニウム、アルミナ、所定の繊維(例えば、テフロン、ナイロン(米国デュポン社の登録商標)、ポリエステルなど)が最も好ましい。
【0044】
多孔質体51の作成方法は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0045】
好ましい作成方法の一例として、例えば、量産のために、広い面積にわたって細孔ピッチを制御しながら作成する方法、具体的には、例えば、化学反応において、イオンや分子の拡散及び輸送が関わる自己組織化反応を制御することで多孔質体51を作成する方法が挙げられる。この自己組織化によって規則的細孔配列を持つ多孔質体51(多孔性ナノ構造体、多孔質膜)を作成する方法としては、下記に示すような公知の技術を応用することができる。
公知の技術としては、例えば、(1)陽極電解酸化によって作成される陽極酸化アルミナ(例えば、Science,268,1466(1995))、(2)ダイヤモンドフィルム上にポーラスアルミナ膜を鋳型として置いてプラズマエッチングを行い、その後、ソフトエッチング(例えば、リン酸によるソフトエッチング等)によりポーラスアルミナ膜を溶かすことによって作成されるダイヤモンド多孔性ナノ構造体(例えば、Advanced Materials,12,444(2000))、(3)転写によって作成される金属多孔性構造体(例えば、特開平6−200378号公報)、(4)スパッタリング法によって基板上にアルミニウムシリコン混合膜を成膜し、混合膜中のアルミニウム領域(アルミニウムを含む柱状構造体領域)のみを選択的にエッチング(エッチング法としては、アルミニウムのみを選択的に溶解する酸やアルカリを用いたウエットエッチングが好ましい。)することによって作成されるシリコン多孔質膜(例えば、特開平8−186245号公報)、(5)自己組織化により作製した陽極酸化アルミナを用いて、細孔の凹凸構造をポリメタクリル酸メチルなどの重合体に一度転写した後、転写体上にゾルゲル反応などにより無機金属酸化物の層を形成させることによって作成される各種材料からなる多孔性ナノ構造体(例えば、特開平6−32675号公報)、(6)ブロック共重合体を利用して、数十ナノメートル間隔で膜方向に垂直に配向したミクロ相分離構造を形成することによりミクロ相分離構造膜を作成し、例えばシリンダー部分を溶解することによって作成される多孔質膜(例えば、特開2004−124088号公報、特開2005−314526号公報)、(7)高分子、金属、プラスチックなどに選択的エッチングにより細孔を形成することによって作成される多孔質膜、若しくは、作成された多孔質膜を鋳型として用い、他の高分子、金属、プラスチックなどに転写することによって作成される多孔質膜、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
また、好ましい作成方法の一例として、例えば、スクリーン印刷法やフォトリソグラフィー法を用いて、適宜、格子状などに形成された多孔質体51を作成する方法が挙げられる。
【0047】
スクリーン印刷法による場合は、細孔51a,51a同士の間の距離に制限(およそ30μm以上)があるとともに、開孔率に制限があるが、上述した厚みや形状を有する多孔質体51を作成することができる。
好ましい材料としては、エレクトロクロミック組成物52は極性溶剤を構成成分としていることから、その極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、例えば、ガラスペーストや極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂などを用いることができる。ガラスペーストとしては、例えば、旭硝子株式会社製AP誘電体ペーストAP5346G,AP5695BD、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124、日本電気硝子株式会社製粉末ガラスLS−0241などが挙げられるが、これに限定されるものではない。極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂としては、例えば、1液性のエポキシ樹脂(具体的には、例えば、株式会社スリーボンド製スリーボンド2200シリーズのうち、2217,2217B,2219Dなど)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
フォトリソグラフィー法による場合は、微細な構造を有する多孔質体51を作成することができる。
好ましい材料としては、上述のとおり極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、具体的には、例えば、アスペクト比の高い多孔質体51を、1回露光で得ることができる東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
また、多孔質体51は、上述した厚みや形状を有するものであれば、市販のものであっても良い。市販の多孔質体51としては、例えば、Whatman社製アノディスクメンブレン
フィルタとして入手できる酸化アルミニウムによるメンブレンフィルタ(厚み:60μm、孔径:0.2μm,0.1μm,0.02μm)、ミリポア社製オム二ポアメンブレン(厚み:80μm,100μm、孔径:0.1μm,0.2μm,0.45μm,1.0μm,5μm,10μm)、ミリポア社製ナイロンネットフィルタ(厚み:55μm、目開き(糸と糸との間の隙間の大きさ):11μm,20μm,41μm,60μm,80μm)、ミリポア社製アイソポアメンブレン(厚み:10μm、孔径:0.05μm,0.1μm,0.22μm,0.4μm,0.6μm,0.8μm,1.2μm,2μm,3μm,5μm,8μm,10μm,12μm)、日東電工株式会社製超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムサンマップ(厚み:100μm,200μm、孔径:17μm)、Sefar Inc.製NYTAL(ナイロンメッシュクロス)NY−20HC(厚み55μm、目開き:20μm),21T−53(厚み100μm、目開き:53μm),ASTM270−53(厚み60μm、目開き:53μm),NY5−HC(厚み100μm、目開き:5μm),NY1−HD(厚み75μm、目開き:1μm)、Sefa Inc.製PETEX(
ポリエステルメッシュクロス)PET51HC(厚み60μm、目開き:51μm),PET24(厚み70μm、目開き:24μm),PET11HC(厚み60μm、目開き:11μm)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
エレクトロクロミック組成物52は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体としてのロイコ染料52aと、を含んでいる。
そして、エレクトロクロミック組成物52には、第1電極20…と第2電極40…との間の消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53が添加されている。
また、エレクトロクロミック組成物52に添加可能な成分としては、例えば、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制するための化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)と、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、増粘など)を調整するためのポリマー化合物と、ロイコ染料52aの発色を促すためのヒンダードフェノール類と、などが挙げられる。
【0051】
エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示にかかる発色及び消色の機能を有する。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって発色し、発色のための通電とは逆方向の通電によって、又は、発色のための通電を遮断することによって消色する。
エレクトロクロミック組成物52は、流動性があれば良く、例えば、低粘度の液体状であっても良いし、高粘度のペースト状であっても良いし、流動性の小さいゲル状であっても良い。
【0052】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分であるロイコ染料52aは、無色又は淡色の電子供与性染料前駆体であり、フェノール性化合物などの顕色剤、酸性物質、電子受容性物質によって発色する化合物である。
ロイコ染料52aとしては、例えば、部分骨格にラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン、エステル又はアミド構造を有する実用上無色となりうる化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
ロイコ染料52aは、前記化合物の中から適宜選択することによって、各種カラーの発色を行うことができる。したがって、ロイコ染料52aを用いたエレクトロクロミック表示デバイス100の表示色は、ロイコ染料52aによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、ブラックに発色するロイコ染料52aを用いる場合は、白黒及びグレー表示が可能となる。
【0054】
ロイコ染料52aの配合量は、ロイコ染料52aの溶解度に依存するため、一概に表すことは難しいが、ロイコ染料52aは、発色のために充分な量が配合されている必要がある。溶解度が小さいロイコ染料52aの場合は、必要な量が含まれるように、例えば、各画素60に対応するエレクトロクロミック組成物層50(多孔質体51)の体積を大きくするなどして、ロイコ染料52aの配合量を調節すると良い。
例えば、ロイコ染料52aが下記の式(17)で表される化合物、下記の式(18)で表される化合物及び下記の式(20)で表される化合物であれば、配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体に対して3〜40重量%とすることができる。
【0055】
以下に、ロイコ染料52aの例を、その発色によって分類して示すが、これらは例示であり、ロイコ染料52aを限定するものではない。
【0056】
下記の式(7)及び式(8)は、イエローに発色するロイコ染料52aである。
【化7】

【0057】
下記の式(9)〜式(11)は、マゼンダに発色するロイコ染料52aである。
【化8】

【0058】
下記の式(12)〜式(15)は、シアンに発色するロイコ染料52aである。
【化9】

【0059】
下記の式(16)及び式(17)は、レッドに発色するロイコ染料52aである。
【化10】

【0060】
下記の式(18)は、ブルーに発色するロイコ染料52aである。
【化11】

【0061】
下記の式(19)及び式(20)は、ブラックに発色するロイコ染料52aである。
【化12】

【0062】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する。支持電解質は、一般に溶融塩と称する化合物を含む。支持電解質は、各化合物を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.01〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、0.1〜20重量%となるように添加することがより好ましい。
【0063】
具体的には、支持電解質は、前記機能を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、一般式が上記の式(5)で表される化合物及び/又は上記の式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
以下に、一般式が上記の式(5)で表される化合物と、上記の式(6)で表される化合物と、の例を示すが、これらは例示であり、支持電解質を限定するものではない。
一般式が上記の式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、NaClO、LiClO、KClO、RbClO、CsClO、NHClO、LiBF、LiPFなどが挙げられる。
また、一般式が上記の式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、(CHNClO、(CNClO、(n−CNClO、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CHNCl、(CNCl、(CHNBr、(CNBr、(n−CNBr、(n−CNI、C(CHNClO、C(CNClO、C17(CHNClO、(CNPF、(n−CNPF、(CHNCFSO、(CNCFSOなどが挙げられる。
【0065】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であり、ロイコ染料52aの発色、消色を電圧及び/又は電流の遮断によって行うことができるよう、通電を促進する機能を有する。また、極性溶剤は、エレクトロクロミック組成物52にポリマー化合物を添加する場合に、そのポリマー化合物の溶剤としての機能も果たす。極性溶剤は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0066】
以下に、好適な極性溶剤の例を示すが、これらは例示であり、極性溶剤を限定するものではない。
極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどが挙げられる。例示した極性溶剤は、何れもエレクトロクロミック組成物52の構成成分として用いる極性溶剤として好ましいものであるが、特に好ましいものとしてはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0067】
エレクトロクロミック組成物52に添加される吸着剤53は、例えば、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムである。
吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の添加の態様は、特に限定されるものではないが、エレクトクロミック組成物52中に粉末で添加し、超音波やボールミル、ホモミキサーなどのホモジナイザーを用いて均一に分散し、エレクトロクロミック組成物52溶液の分散液として用いることが好ましい。
【0068】
吸着剤53の添加量は、用いる酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムの活性度、粒径などにより異なる。
αアルミナのように表面積の小さい酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する大きな酸化アルミニウム、表面積の小さい水酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する水酸化アルミニウムは、ロイコ染料52aの吸着効果が小さく、十分な吸着動作を発現するためには、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.5グラム〜5グラム、好ましくは1グラム〜3グラムの添加が好ましい。
また、γアルミナのように表面積の大きい酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウム、表面積の大きい水酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウムは、ロイコ染料52aの吸着効果が大きいため、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
また、薄層クロマトグラフィなどに用いられる活性アルミナの類は、数10μmの粒径を有する大粒子であっても、1グラムのロイコ染料52aに対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
【0069】
ロイコ染料52aを吸着する吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)は、化成品にて容易に入手できる。
以下に、好適な市販の吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の例を示すが、これらは例示であり、吸着剤53を限定するものではない。
市販の吸着剤53の具体例としては、例えば、メルク社製薄層クロマト用酸化アルミニウム60GNeutral(粒径4μm〜50μm)、日本軽金属製ローソーダアルミナLS235(粒径0.47μm),活性アルミナC200(粒径4.4μm),水酸化アルミニウムB1403(粒径1.5μm)、住友化学製γアルミナKC501(粒径1μm)などが挙げられる。
【0070】
エレクトロクロミック組成物52に添加される化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)は、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する、白色の化合物である。
これらの化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%となるように添加することが好ましい。
【0071】
以下に、これらの化合物の例を示すが、これらは例示であり、これらの化合物を限定するものではない。
【0072】
下記の式(21)〜式(35)は、一般式が上記の式(1)で表される化合物の例である。
【化13−1】

【化13−2】

【化13−3】

【0073】
下記の式(36)〜式(51)は、一般式が上記の式(2)で表される化合物の例である。
【化14−1】

【化14−2】

【化14−3】

【0074】
下記の式(52)及び(53)は、一般式が上記の式(3)で表される化合物の例である。
【化15】

【0075】
下記の式(54)〜(56)は、一般式が上記の(4)で表される化合物の例である。
【化16】

【0076】
エレクトロクロミック組成物52には、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物に代えて、一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物を添加しても良い。
一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物は、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する化合物である。
【化17】

【0077】
ここで、式(57)中のMは、周期律表15族の元素であって、窒素を含まない。式(57)中のR15、R16及びR17は、置換基を有するアリル基又は置換基を有さないアリル基であって、互いに同一でも異なっていても良い。
式(58)中のR18、R19、R20及びR21は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基及びアルコキシカルボニル基の中から選択される基を表す。ただし、R18、R19、R20及びR21は、すべてが同時に水素原子であることはない。隣り合うR18とR19は、互いに縮合し、5員又は6員の縮合環を形成しても良い。隣り合うR20とR21は、互いに縮合し、5員又は6員の縮合環を形成しても良い。
式(59)中のR22、R23、R24及びR25は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基及びアルコキシカルボニル基の中から選択される基を表す。ただし、R22、R23、R24及びR25は、すべてが同時に水素原子であることはない。隣り合うR22とR23及び隣り合うR24とR25は、一方又は両方が5員又は6員の縮合環を形成する。隣り合うR22とR23及び隣り合うR24とR25の一方が縮合環を形成する場合は、他方の2つの基は、共に水素原子である。
【0078】
一般式が上記の式(57)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜50重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、10〜50重量%となるように添加することがより好ましい。
また、一般式が上記の式(58)で表される化合物及び/又は上記の式(59)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜20重量%とすることが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%とすることがより好ましい。
【0079】
以下に、これらの化合物の例を示すが、これらは例示であり、これらの化合物を限定するものではない。
【0080】
下記の式(60)〜式(66)は、一般式が上記の式(57)で表される化合物の例である。
【化18−1】


【化18−2】

【0081】
下記の式(67)〜式(72)は、一般式が上記の式(58)で表される化合物の例である。
【化19−1】


【化19−2】

【0082】
下記の式(73)〜式(77)は、一般式が上記の式(59)で表される化合物の例である。
【化20】

【0083】
エレクトロクロミック組成物52に添加されるポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する。ポリマー化合物は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高めるために用いるが、この場合のエレクトロクロミック組成物52の性状は、低粘度の液体状、高粘度のペースト状、流動性の小さいゲル状、とすることができる。
ポリマー化合物の好ましい配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.1〜80重量%とすることが好ましい。
【0084】
以下に、好適なポリマー化合物の例を示すが、これらは例示であり、ポリマー化合物を限定するものではない。
ポリマー化合物の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、又は、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンスルフィドの繰返し単位を有する高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールのごときポリビニルホルマールなどが挙げられる。特に好ましいものとしては、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0085】
エレクトロクロミック組成物52に添加されるヒンダードフェノール類は、表示発色を効果的に促す機能を有する。ヒンダードフェノール類は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0086】
以下に、好適なヒンダードフェノール類の例を示すが、これらは例示であり、ヒンダードフェノール類を限定するものではない。
ヒンダードフェノール類の具体例としては、例えば、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、2,2´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−sec−ブチリデンジフェノール、ビスフェノールA、4,4´−シクロへキシリデンジフェノール、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシフェニル−3´,4´−ジメチルフェニルスルホン、4−(4´−イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノール、4,4´−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、1,4−ビス−(4´−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,3−ビス−(4´−ヒドロキクミル)ベンゼン、4,4´−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−di−tert−ペンチルフェニル)エチル]-4,6−di−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2,2´−メチレンビス(6−tert-ブチル−4−メチルフェノール)、4,4´−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスペンなどが挙げられる。
【0087】
また、以下に、好適な市販のヒンダードフェノール類の例を示すが、これらは例示であり、ヒンダードフェノール類を限定するものではない。
市販のヒンダードフェノール類(酸化防止剤)の具体例としては、例えば、住友化学社製のスミライザーGP,スミライザーMDP,スミライザーWXR,スミライザーGA80、チバスペシャリティケミカルズ社製のIrganox245,Irganox259,Irganox1222,Irganox1035FF,Irganox1098などを挙げることができる。
【0088】
例示したヒンダードフェノール類は、何れもエレクトロクロミック組成物52に添加するヒンダードフェノール類として好ましいものであるが、特に好ましいものとしては、2,2´−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスペン(スミライザーGP)を挙げることができる。
【0089】
以上に説明したエレクトロクロミック組成物52は、一例であり、その他にも電気化学的な発色が可能な組成物であれば、これを多孔質体51に含ませたものをエレクトロクロミック組成物層50として用いることが可能である。
【0090】
<エレクトロクロミック表示デバイスの製造方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100の製造方法は、以下の[1]〜[6]の工程を含む。
【0091】
[1]第1基板準備工程
第1基板準備工程は、第1基板10を準備する工程である。
【0092】
[2]第1の蒸着工程
第1の蒸着工程は、第1基板10の片方の面に第1電極20…を設ける工程である。第1電極20…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状に形成される。
【0093】
[3]第2基板準備工程
第2基板準備工程は、第2基板30を準備する工程である。
【0094】
[4]第2の蒸着工程
第2の蒸着工程は、第2基板30の片方の面に第2電極40…を設ける工程である。第2電極40…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状に形成される。
【0095】
[5]多孔質体設置工程
多孔質体設置工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2基板40…が形成された第2基板20と、の間に多孔質体51を設置する工程である。
具体的には、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板20と、の間に、前述の材料(例えば、ミリポア社製ナイロンネットフィルタ(厚み:55μm、目開き:11μm))を挟みこむことによって、多孔質体51を形成する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板20における電極が形成された面に、ガラスペースト(例えば、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124)などをスクリーン印刷することによって、多孔質体51を設置する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板20における電極が形成された面に、例えば、東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000をスピナーなどによって付与し、次いで、所定のマスクを用いて、フォトリソグラフィー法によりパターン状に立体成形することによって多孔質体51を形成して設置する。
【0096】
[6]貼りあわせ工程
貼りあわせ工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板20と、を電極を内側にして貼りあわせ、所定の添加物(吸着剤53、化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)、ポリマー化合物、ヒンダードフェノール類など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を封入する工程である。なお、エレクトロクロミック組成物52には、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物に代えて、一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物を添加しても良い。
具体的には、例えば、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50の両面に、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、貼りあわせる。
或いは、例えば、一方の基板(例えば、第1電極20…が形成された第1基板10)に設置された多孔質体51に所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52を浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50に他方の基板(例えば、第2電極40…が形成された第2基板30)を貼りあわせる。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の空隙に、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、ピペット等を用い注入する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の空隙に、ガラスキャピラリなどを別途あらかじめ形成しておき、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、そのガラスキャピラリなどを用いて多孔質体51内へと吸引することによって封入する。
【0097】
<エレクトロクロミック表示デバイスの駆動方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、パッシブマトリックス駆動によって、以下のように駆動される。
【0098】
エレクトロクロミック表示デバイス100の各画素60は、第1電極20…と第2電極40…とによって挟まれたエレクトロクロミック組成物層50によって構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによってエレクトロクロミック組成物52に通電すると、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40…との界面(第2電極40…の表面)にてエレクトロクロミック組成物52が電気化学的な変化を起こすことによって行われる。また、エレクトロクロミック表示デバイス100の消色は、発色のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、発色のための通電を遮断して放置することによって行われるが、発色のための通電とは逆方向の通電の方が、速やかに消去動作を実施することができる。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色濃度は、通電する電気量(通電量)によって任意に調整することができる。さらに、通電は、電流の連続的な供給によっても、電流の間歇的な供給によっても可能である。電流の間歇的な供給とは、例えば、パルスによる駆動を指す。一方、エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、通電の遮断によっても消色するが、電子ペーパーとして利用する場合には、発色を維持する必要がある。エレクトロクロミック表示デバイス100の表示の維持は、例えば、表示のために供給した電流よりも小さい電流の供給によって行うことができる。例えば、連続的な電流の供給であれば、発色の維持は、電圧又は電流を発色時の半分以下にして行うことができる。また、間歇的な電流の供給、すなわち、パルス駆動であれば、発色の維持は、例えば、通電期間を発色時よりも短くしたり、パルスの強度、幅、又は間隔を発色時よりも小さくしたりして行うことができる。
【0099】
ここで、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51の細孔51aに導入すると、表示デバイスは、画素60,60間のクロストークによる表示性能の低下が抑制されるとともに、表示のメモリ性を有することになる。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に含浸して、多孔質体51の細孔51a…内にエレクトロクロミック組成物52を導入した場合、エレクトロクロミック組成物52内のロイコ染料52aは、例えば、図3に示すように、多孔質体51の細孔51a…内からエレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面(第2電極40の表面)の表示領域へと移動して発色し、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面(第2電極40の表面)から多孔質体51の細孔51a…内へと移動して消色する。したがって、本発明においては、ロイコ染料52aによる第2電極40の表面からの離脱は、ロイコ染料52aが多孔質体51の細孔51a…内へと移動しないと達成できないため、本発明におけるロイコ染料52aは、多孔質体51を利用しない表示デバイスのロイコ染料52aと比較して、第2電極40の表面からの離脱に時間がかかる。
したがって、ロイコ染料52aを即座に第2電極40の表面から離脱させて消色するためには、発色のための通電とは逆方向の通電を行う必要がある。
【0100】
吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)が添加されていないエレクトロクロミック組成物52を使用する従来の表示デバイスでは、消去のための通電の通電量を厳密に制御する必要があった。これは、消去のための通電によって、ロイコ染料52aがエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との界面(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまい、結果として表示が消去されないことがあるからである。
【0101】
これに対して、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、従来の表示デバイスのように消去のための通電の通電量を厳密に制御しなくても、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)に吸着されるため、ロイコ染料52aがエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との界面(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまうことを防止することができる。
具体的には、ロイコ染料52aは溶液中で分極している。吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)は、比表面積が大きく吸着能力が高いという特徴を有するとともに、表面が分極している。発色表示のための通電においては、第2電極40は正帯電することから、電子供与性であるロイコ染料52aは、電子を第2電極40に供与して発色し、表示を行う。一方、消去のための通電では、表示と反対方向に通電を行うため、第2電極40は負帯電する。ロイコ染料52aは、その負帯電した第2電極40から電子を受容して消色し、発色は消去される。そして、無色となったロイコ染料52aは、第1電極20の方向へ移動するが、高い吸着能力を有するとともに表面が分極した吸着剤53の存在によって、第1電極20へは到達せずに、吸着剤53へと移動して、捕捉吸着される。これにより、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、消去のための通電時に、ロイコ染料52aが、エレクトロクロミック組成物層50と第1電極20の界面(第1電極20の表面)に移動して発色することを防止することができる。
【0102】
<実施例1>
以下に、具体的な実施例によって本発明(第1の実施の形態)を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
(エレクトロクロミック表示デバイスの作成)
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(下面)に、第2電極40…としてITOをスパッタ形成した。スパッタされたITOは、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITOを、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、ストライプ状に、パターン形成した。
同様に、第1基板10として、矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(上面)に、第1電極20…としてITOをスパッタ形成した。スパッタされたITOは、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITOを、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、128ラインのストライプ状に、パターン形成した。
【0104】
次いで、第1電極20…と第2電極40…との間に多孔質体51として、矩形状のSefar Inc.製PETEX(ポリエステルメッシュクロス)PET51HCを挟み、第1電極20…が、第2電極40…に対して直交する形で重ね合わせた。そして、第1電極20…と第2の電極40…の直交部が画素60…となるように調整し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの3つを接着剤(例えば、熱硬化性のエポキシ)で接着封止した。
【0105】
次いで、接着剤未接着部分から、ピペットを用いて所定の添加物(吸着剤53、化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)、ポリマー化合物、ヒンダードフェノール類など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52(以下、「エレクトロクロミック組成物A」と呼ぶ)を注入し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの接着剤未接着部分を接着剤で接着封止した。そして、第1基板10の下面に200μm厚のホワイトペットを貼り付け、エレクトロクロミック表示デバイス100(以下、「表示デバイスA」と呼ぶ)を作成した。
【0106】
比較のために、吸着剤53が添加されていないエレクトロクロミック組成物を2種類用意し、それぞれを用いて、表示デバイスAと同様にして、エレクトロクロミック表示デバイスを作成した。
以下、吸着剤53が添加されていないエレクトロクロミック組成物を、「エレクトロクロミック組成物B」、「エレクトロクロミック組成物C」と呼び、エレクトロクロミック組成物Bを備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイスB」と呼び、エレクトロクロミック組成物Cを備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイスC」と呼ぶ。
【0107】
エレクトロクロミック組成物Aの組成は、
ロイコ染料(上記の式(20))400mg、
一般式が上記の式(1)で表される化合物(上記の式(21);2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン)40mg、
一般式が上記の式(3)で表される化合物(上記の式(52);コハク酸イミド)40mg、
ヒンダードフェノール類(住友化学社製のスミライザーGP)20mg、
一般式が上記の式(6)で表される化合物((n−CNBF)40mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0g、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)50mg、
吸着剤53(酸化アルミニウム;日本軽金属製活性アルミナC200)100mgである。
【0108】
エレクトロクロミック組成物Bの組成は、
ロイコ染料(上記の式(20))400mg、
一般式が上記の式(1)で表される化合物(上記の式(21);2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン)40mg、
一般式が上記の式(3)で表される化合物(上記の式(52);コハク酸イミド)40mg、
ヒンダードフェノール類(住友化学社製のスミライザーGP)20mg、
一般式が上記の式(6)で表される化合物((n−CNBF)40mg、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)50mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0gである。
【0109】
エレクトロクロミック組成物Cの組成は、
ロイコ染料(上記の式(20))400mg、
一般式が上記の式(6)で表される化合物((n−CNBF)40mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0g、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)50mgである。
【0110】
(表示動作)
表示デバイスA、表示デバイスB、表示デバイスCのそれぞれに、パターン作製回路を接続した。そして、電圧2.0Vを印加し、パッシブマトリックス駆動表示によって、2値の表示パターンを形成した。すなわち、表示デバイスA、表示デバイスB、表示デバイスCのそれぞれについて、パッシブマトリックス回路の駆動により、第1電極20と第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素を生成させ、ブラックのパターンを得た。
【0111】
(消去動作)
ブラックのパターンが表示された表示デバイスA、表示デバイスB、表示デバイスCのそれぞれに対し、電圧印加(通電)を止め、そのまま放置し、消去動作を実施した。
所定のタイミングで、2405型マイクロデンシトメーター(サカタインクスエンジアニリング)にて、最大反射濃度(OD値)を測定し、図4の結果を得た。
【0112】
表示されたブラックのパターンは、表示デバイスA、表示デバイスB、表示デバイスCのいずれにおいても3分間の放置で大部分が消滅したが、3分間の放置では完全には消滅せず、わずかに残存することが分かった。完全に消滅するためには、7分間以上放置する必要があることが分かった。
【0113】
(表示−消去動作)
表示デバイスA、表示デバイスB、表示デバイスCのそれぞれに、電圧2.0Vを印加して表示動作を実施し、その後、表示のための電圧印加とは逆方向に電圧2.0Vを印加し消去動作を実施した。この表示動作及び消去動作を1000回繰り返した。
電圧印加の度に、2405型マイクロデンシトメーター(サカタインクスエンジアニリング)にて、最大反射濃度(OD値)を測定し、図5の結果を得た。
図5の「+2.0V」は表示のための電圧印加を示し、「−2.0V」は消去のための電圧印加を示す。
【0114】
表示デバイスAでは、繰り返し回数1回目において、表示されたブラックパターンが、消去のための電圧印加によって完全に消去されることが分かった。また、繰り返し回数300回目においても、1000回目においても、表示されるパターンの濃度は一定であり、そのパターンは、消去のための電圧印加によって完全に消去されることが分かった。
すなわち、表示デバイスAは、消去のための電圧印加(通電)によって完全に表示を消去できるとともに、繰り返し使用しても性能が劣化しないことが分かった。
【0115】
表示デバイスBでは、繰り返し回数1回目において、消去のための電圧印加によって、第1電極20と第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成し、ブラックのパターンが形成されてしまうことが分かった。また、繰り返し回数300回目においても、1000回目においても、表示されるパターンの濃度は一定であったが、消去のための電圧印加によって、第1電極20側でパターンが形成され、結果として表示が消去されないことが分かった。
すなわち、表示デバイスBは、繰り返し使用しても表示濃度は一定であるが、表示を消去することができないことが分かった。
【0116】
表示デバイスCでは、繰り返し回数1回目において、消去のための電圧印加によって、第1電極20と第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成し、ブラックのパターンが形成されてしまうことが分かった。また、繰り返し回数が増加するにつれて、表示されるパターンの濃度が低下し、繰り返し回数1000回目においては、パターンが表示されないことが分かった。これは、表示デバイスCのエレクトロクロミック組成物Cには、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(2)で表される化合物並びに一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(4)で表される化合物が含有されていないことなどが原因であると考えられる。
すなわち、表示デバイスCは、表示を消去することができないとともに、繰り返し使用すると表示濃度が低下してしまうことが分かった。
【0117】
以上説明した第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板30と、第2基板30の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備え、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するようになっている。そして、エレクトロクロミック組成物層50は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与製染料前駆体としてのロイコ染料52aと、を含むエレクトロクロミック組成物52を備え、エレクトロクロミック組成物52には、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)が添加されている。
すなわち、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着剤53に吸着されるため、ロイコ染料52aが表示電極(第2電極40)と反対側の電極(第1電極20)に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
【0118】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、エレクトロクロミック組成物52には、上記の一般式(1)で表される化合物及び/又は上記の一般式(2)で表される化合物並びに上記の一般式(3)で表される化合物及び/又は上記の一般式(4)で表される化合物が添加されている。すなわち、エレクトロクロミック組成物52には、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する、白色の化合物が添加されているため、好適である。
【0119】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、エレクトロクロミック組成物52には、ヒンダードフェノール類が添加されている。すなわち、エレクトロクロミック組成物52には、ロイコ染料52aの発色を促すための化合物が添加されているため、好適である。
【0120】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種である。すなわち、エレクトロクロミック組成物52は、ロイコ染料52aの発色、消色を電圧及び/又は電流の遮断によって行うことができるよう、通電を促進する機能を有する化合物を含んでいるため、好適である。
【0121】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、支持電解質は、上記の一般式(5)で表される化合物及び/又は上記の一般式(6)で表される化合物である。すなわち、エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する化合物を含んでいるため、好適である。
【0122】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、エレクトロクロミック組成物52には、ポリマー化合物が添加されている。すなわち、エレクトロクロミック組成物52には、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する化合物が添加されているため、好適である。
【0123】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、第1電極20…は、並行して延びる複数の電極であり、第2電極40…は、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素が形成され、エレクトロクロミック組成物層50は、第1基板20…及び第2基板40…に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体51を備え、所定の添加物(吸着剤53、化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)、ポリマー化合物、ヒンダードフェノール類など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52は、多孔質体51の細孔内に導入されている。
すなわち、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51の細孔51a…内に導入するだけで、緻密で煩雑な工程を経て形成される隔壁を備えなくても、画素60,60間のクロストークを抑えることができる。さらに、多孔質体51に形成された細孔51a…は、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通しているため、細孔がランダムに形成された多孔質体を使用する場合と比較して、解像力やコントラストが高くなり、簡易な構成で、高い表示性能を有することができる。
【0124】
また、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、パッシブマトリックス駆動によって表示のための駆動をするようになっている。したがって、構造がシンプルなものとなって好適である。
【0125】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200について説明する。
【0126】
<エレクトロクロミック表示デバイスの構成>
なお、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200は、エレクトロクロミック組成物層50を構成するエレクトロクロミック組成物52に吸着剤53が添加(分散)されておらず、その代わりに、吸着剤53を含む吸着層70が、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に備えられている点のみが、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100と異なる。したがって、異なる箇所のみについて説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して説明する。
【0127】
図6は、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200は、例えば、第1基板10と、第1電極20…と、第2基板30と、第2電極40…と、エレクトロクロミック組成物層50と、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に設けられた吸着層70と、を備えて構成される。
【0128】
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、細孔51a…を有する多孔質体51と、細孔51a…内に導入されたエレクトロクロミック組成物52と、などを備えて構成される。
【0129】
エレクトロクロミック組成物52は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体としてのロイコ染料52aと、を含んでいる。
そして、エレクトロクロミック組成物52に添加可能な成分としては、例えば、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制するための化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)と、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、増粘など)を調整するためのポリマー化合物、ロイコ染料52aの発色を促すためのヒンダードフェノール類と、などが挙げられる。
【0130】
ここで、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200において、エレクトロクロミック組成物52には、吸着剤53は添加されていない。
なお、エレクトロクロミック組成物52には、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物に代えて、一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物を添加しても良い。
【0131】
吸着層70は、例えば、第1電極20…と第2電極40…との間の消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する機能を有する。
吸着層70は、例えば、第1電極20…上に堆積されて、エレクトロクロミック組成物層50と接している。
【0132】
吸着層70は、例えば、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)と、水溶性バインダーと、などにより構成されている。
具体的には、吸着層70は、例えば、吸着剤53や水溶性バインダーなどを水等の媒体中に均一に分散させて分散液を作成し、その分散液を第1電極20…上に塗布して乾燥させることによって形成される。
【0133】
吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)は、特に限定されるものではないが、吸着効果等の観点から、γアルミナのように表面積の大きい酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウム、表面積の大きな水酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい水酸化アルミニウムを好ましく用いることができる。
【0134】
また、バインダーとして用いられる水溶性バインダーは、特に限定されるものではなく、例えば、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)等を用いることができる。中でもポリビニルアルコールを好ましく用いることができる。
水溶性バインダーの添加量は、特に限定されるものではないが、吸着剤53に対して、0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。水溶性バインダーの添加量が少なすぎると、塗布、形成された吸着層70が、接触等で剥がれやすくなる等の物理的損傷を受けやすい。一方、水溶性バインダーの添加量が多すぎると、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の吸着効果を阻害する。また、水溶性バインダーの添加量が多すぎると、電気抵抗を高める原因となり、通電量の低下等、エレクトロクロミック表示デバイス200の発色表示動作及び消去動作に、不都合な影響を与える。
【0135】
酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムは、化成品にて容易に入手できる。
以下に、好適な市販の酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの例を示すが、これらは例示であり、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムを限定するものではない。
市販の吸着剤53の具体例としては、例えば、メルク社製薄層クロマト用酸化アルミニウム60GNeutral(粒径4μm〜50μm)、日本軽金属製ローソーダアルミナLS235(粒径0.47μm),活性アルミナC200(粒径4.4μm),水酸化アルミニウムB1403(粒径1.5μm)、住友化学製γアルミナKC501(粒径1μm)などが挙げられる。
【0136】
<エレクトロクロミック表示デバイスの製造方法>
エレクトロクロミック表示デバイス200の製造方法は、以下の[1]〜[7]の工程を含む。
【0137】
[1]第1基板準備工程
第1基板準備工程は、第1基板10を準備する工程である。
【0138】
[2]第1の蒸着工程
第1の蒸着工程は、第1基板10の片方の面に第1電極20…を設ける工程である。
【0139】
[3]第2基板準備工程
第2基板準備工程は、第2基板30を準備する工程である。
【0140】
[4]第2の蒸着工程
第2の蒸着工程は、第2基板30の片方の面に第2電極40…を設ける工程である。
【0141】
[5]吸着層設置工程
吸着層設置工程は、第1基板に形成された第1電極20…の表面に、吸着層70を設置する工程である。
具体的には、例えば、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)を、ポリビニルアルコール等の水溶性バインダーとともに、ボールミリング、ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散機等を用いて、水等の媒体中に分散させて分散液を作成する。そして、その分散液を、第1電極20…の表面に、マイヤーバー、アプリケーターなどを用いて、塗布することによって、吸着層70を形成する。
【0142】
[6]多孔質体設置工程
多孔質体設置工程は、吸着層70及び第1電極20…が形成された第1基板10と、第2基板40…が形成された第2基板20と、の間に多孔質体51を設置する工程である。
【0143】
[7]貼りあわせ工程
貼りあわせ工程は、吸着層70及び第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板20と、を貼りあわせ、所定の添加物(化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)、ポリマー化合物、ヒンダードフェノール類など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を封入する工程である。なお、エレクトロクロミック組成物52には、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物並びに上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物に代えて、一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物を添加しても良い。
【0144】
<エレクトロクロミック表示デバイスの駆動方法>
エレクトロクロミック表示デバイス200は、例えば、パッシブマトリックス駆動によって駆動される。
第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200の駆動は、第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100の駆動と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0145】
ここで、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200においては、従来の表示デバイスのように消去のための通電の通電量を厳密に制御しなくても、消去のための通電時には、ロイコ染料52aは吸着層70に含まれる吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)に吸着されるため、ロイコ染料52aが第1電極20の表面へと移動して発色してしまうことを防止することができる。
具体的には、ロイコ染料52aは溶液中で分極している。吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)は、比表面積が大きく吸着能力が高いという特徴を有するとともに、表面が分極している。発色表示のための通電においては、第2電極40は正帯電することから、電子供与性であるロイコ染料52aは、電子を第2電極40に供与して発色し、表示を行う。一方、消去のための通電では、表示と反対方向に通電を行うため、第2電極40は負帯電する。ロイコ染料52aは、その負帯電した第2電極40から電子を受容して消色し、発色は消去される。そして、無色となったロイコ染料52aは、第1電極20の方向へ移動するが、高い吸着能力を有するとともに表面が分極した吸着剤53の存在によって、吸着層70へと移動して、捕捉吸着される。これにより、第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200においては、消去のための通電時に、ロイコ染料52aが、第1電極20の表面に移動して発色することを防止することができる。
【0146】
<実施例2>
以下に、具体的な実施例によって本発明(第2の実施の形態)を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
(エレクトロクロミック表示デバイスの作成)
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(下面)に、第2電極40…としてITOをスパッタ形成した。スパッタされたITOは、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITOを、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、60ラインのストライプ状に、パターン形成した。
同様に、第1基板10として、矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(上面)に、第1電極20…としてITOをスパッタ形成した。スパッタされたITOは、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITOを、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、60ラインのストライプ状に、パターン形成した。
【0148】
次いで、酸化アルミニウム(住友化学社製のKC501)2gとポリビニルアルコール(関東化学製試薬特級#2000)0.1gとを、ボールミリングを用いて、20gの水に分散させて分散液を作成し、その分散液を、第1電極20…の表面(上面)に、200μmのアプリケーターを用いて塗布し、70℃のオーブンにて30分間乾燥させることによって、吸着層70を形成した。
【0149】
次いで、吸着層70と第2電極40…との間に多孔質体51として、矩形状のSefar Inc.製PETEX(ポリエステルメッシュクロス)PET51HCを挟み、第1電極20…が、第2電極40…に対して直交する形で重ね合わせた。そして、第1電極20…と第2の電極40…の直交部が画素60…となるように調整し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの3つを接着剤(例えば、熱硬化性のエポキシ)で接着封止した。
【0150】
次いで、接着剤未接着部分から、ピペットを用いて所定の添加物(化合物(一般式が下記の式(57)で表される化合物並びに下記の式(58)で表される化合物及び/又は下記の式(59)で表される化合物)、ポリマー化合物など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52(以下、「エレクトロクロミック組成物D」と呼ぶ)を注入し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの接着剤未接着部分を接着剤で接着封止した。そして、第1基板10の下面に200μm厚のホワイトペットを貼り付け、エレクトロクロミック表示デバイス200(以下、「表示デバイスD−1」と呼ぶ)を作成した。
【0151】
比較のために、エレクトロクロミック組成物Dを用いて、吸着層70を備えていないエレクトロクロミック表示デバイス(以下、「表示デバイスD−2」)を作成した。
【0152】
エレクトロクロミック組成物Dの組成は、
ロイコ染料(上記の式(20))400mg、
一般式が上記の式(58)で表される化合物(上記の式(67);2,5−ジ−tert−アミルキノン)40mg、
一般式が上記の式(57)で表される化合物(上記の式(60);トリフェニルアンチモン)35mg、
一般式が上記の式(6)で表される化合物((n−CNBF)40mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0g、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)50mgである。
【0153】
(表示デバイスD−1による表示−通電による消去動作)
表示デバイスD−1に、パターン作製回路を接続した。そして、パッシブマトリックス駆動法を用いて、表示のための通電を行った。具体的には、1ライン当たり10m秒の速度で電圧5.0Vを印加し、0.6秒間で図7に示すようなブラックパターン(市松模様のパターン)を形成した。その後、印加する電圧を2.5Vにして、図7に示すようなブラックパターンを60秒間保持した。
次いで、図7に示すようなブラックパターンが表示された表示デバイスD−1に対し、表示と反対方向に通電(消去のための通電)を行った。具体的には、1ライン当たり10m秒の速度で電圧7.0Vを印加し、1秒間通電した。
【0154】
表示デバイスD−1においては、消去のための通電によって、ブラックのパターンが完全に消え、速やかな消去動作を実施することができた。
【0155】
(表示デバイスD−1による表示−放置による消去動作)
表示デバイスD−1に、パターン作製回路を接続した。そして、パッシブマトリックス駆動法を用いて、表示のための通電を行った。具体的には、1ライン当たり10m秒の速度で電圧5.0Vを印加し、0.6秒間で図7に示すようなブラックパターンを形成した。その後、印加する電圧を2.5Vにして、図7に示すようなブラックパターンを60秒間保持した。
次いで、図7に示すようなブラックパターンが表示されたD−1に対し、電圧印加(通電)を止め、そのまま放置し、消去動作を実施した。
【0156】
表示デバイスD−1においては、表示のための通電を停止した後、約1分間放置することによって、ブラックのパターンが完全に消えた。
これにより、通電による消去動作は、放置による消去動作よりも速やかな消去動作を実施できることが分かった。
【0157】
(表示デバイスD−2による表示−通電による消去動作)
表示デバイスD−2に、パターン作製回路を接続した。そして、パッシブマトリックス駆動法を用いて、表示のための通電を行った。具体的には、1ライン当たり10m秒の速度で電圧5.0Vを印加し、0.6秒間で図7に示すようなブラックのパターンを形成した。その後、印加する電圧を2.5Vにして、図7に示すようなブラックのパターンを60秒間保持した。
次いで、図7に示すようなブラックパターンが表示された表示デバイスD−2に対し、表示と反対方向に通電(消去のための通電)を行った。具体的には、1ライン当たり10m秒の速度で電圧7.0Vを印加し、1秒間通電し、さらに3秒間通電した。
【0158】
表示デバイスD−2においては、1秒間の消去のための通電によって、ブラックのパターンの表示濃度の減少は確認されたが、完全には消滅せず、わずかに残存した。
さらに、表示デバイスD−2においては、引き続き行った3秒間の消去のための通電によって、ブラックのパターンの表示濃度が増加し、ロイコ染料52aが表示電極(第2電極40)と反対側の電極(第1電極20)に移動することを確認した。
これにより、吸着層70を備えていないと、確実に表示を消去できないことが分かった。
【0159】
以上説明した第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200によれば、第1電極20…とエレクトロクロミック組成物層50との間に、消去のための通電時にロイコ染料52aを吸着する吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)を含む吸着層70を備えている。
すなわち、消去のための通電時には、染料は酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに吸着されるため、染料が表示電極と反対側の電極に移動して発色表示を形成してしまうことを防止することができる。したがって、表示のための通電とは逆方向に通電することによって表示を消去する際、通電量を厳密に制御しなくても、確実に表示を消去することができる。
【0160】
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0161】
(変形例1)
第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによって、多孔質体51の細孔51a内に導入された、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、例えば、図8に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Aのように、多孔質体51の細孔51a…の底部を閉じる導電性部材54Aを備えていても良い。
第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200も同様である。
【0162】
具体的には、エレクトロクロミック表示デバイス100Aは、例えば、第1基板10と、第1電極20…と、第2基板30と、第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50Aと、を備えて構成される。
【0163】
エレクトロクロミック組成物層50Aは、例えば、多孔質体51と、多孔質体51の細孔51a内に導入された、所定の添加物(吸着剤53など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52と、多孔質体51の細孔51aの底部を閉じる導電性部材54Aと、を備えて構成される。
【0164】
導電性部材54Aは、例えば、平面状に形成されており、導電性部材54Aの上面には多孔質体51が積層されている。
【0165】
導電性部材54Aの材質は、特に限定されるものではなく、例えば、導電性の金属や炭素材料などを用いることができる。また、導電性部材54Aは、例えば、単独の材料からなる1つの層により構成されていても良いし、互いに異なる材料からなる2つ以上の層により構成されていても良い。
【0166】
(変形例2)
第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによって、多孔質体51の細孔51a内に導入された、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、第1電極20…と第2電極40…は、例えば、図9に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Bの第1電極20B…と第2電極40B…であっても良い。
第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス200も同様である。
【0167】
具体的には、エレクトロクロミック表示デバイス100Bは、例えば、第1基板10と、第1電極20B…と、第2基板30と、第2電極40B…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成される。
【0168】
第1電極20B…は、例えば、ライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20B…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40B…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20B…は、第2電極40B…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20B…は、第2電極40B…の透明表示電極部41Bと立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0169】
第1電極20B…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材質や透明電極を構成する材質を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO、ZnO、FTOなどが挙げられる。
【0170】
第2電極40B…は、例えば、画素60…に対応する位置に設けられた透明表示電極部41B…と、ライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられたライン状電極部42B…と、などを備えて構成される。透明表示電極部41B…は、ライン状電極部42Bと接続されている。
第2電極40B…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20B…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40B…は、第1電極20B…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40B…の透明表示電極41B…は、第1電極20B…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0171】
透明表示電極部41B…の材質は、透明電極を構成可能な材質であれば、特に限定されるものではない。透明電極を構成可能な材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、透明表示電極部41B…は、その材質が金又は白金などであっても薄膜であれば機能を果たすことができる。
【0172】
ライン状電極部42B…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材質や透明電極を構成する材質を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO、ZnO、FTOなどが挙げられる。
【0173】
なお、第2電極40B…は、上述した[4]第2の蒸着工程(第2基板30の片方の面に第2電極40B…を設ける工程)において、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法によって成膜され、次いで、フォトリソグラフ法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって形成されるが、透明表示電極部41B…とライン状電極部42B…とは、1回の蒸着法、メッキ法、スパッタ法による成膜によって同時に形成しても良いし、2回の蒸着法、メッキ法、スパッタ法による成膜によって別個に形成しても良い。
【0174】
変形例2のエレクトロクロミック表示デバイス100Bによれば、第1電極20B…は、並行して延びる複数のライン状電極であり、第2電極40B…は、透明表示電極部41B…と、透明表示電極部41B…に接続されたライン状電極部42B…とにより構成されている。したがって、第2電極40B…(透明表示電極部41B…)を薄くすることができるため、発色の度合いを向上させることができるとともに、エレクトロクロミック表示デバイスの表示の明るさを向上させることができる。また、ライン状の電極(第1電極20B…と第2電極40B…のライン状電極部42B…)に通電することによって、エレクトロクロミック組成物52に通電することができるため、画素60,60間の電位差が小さくなり、省電力化を図ることができる。
【0175】
なお、変形例2においては、第1電極20B…も、透明表示電極部と、透明表示電極部に接続されたライン状電極部とにより構成されていても良い。この場合、第1電極20B…の透明表示電極部と第2電極40B…の透明表示電極部41B…とが相対して立体交差する領域に画素が形成されることになる。
【0176】
上記した第1及び第2の実施の形態並びに変形例1及び2において、エレクトロクロミック組成物52を構成する染料は、ロイコ染料52aに限ることはなく、電子供与性染料前駆体であれば任意である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図2】画素のサイズと、多孔質体の細孔のサイズと、の関係を説明するための図である。
【図3】エレクトロクロミック組成物の発色を説明するための図である。
【図4】第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイスA)と比較のためのエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイスB及びC)において、表示のための通電を遮断した後、放置した場合の表示濃度の変化を示す図である。
【図5】第1の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイスA)と比較のためのエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイスB及びC)において、表示のための通電と、表示消去のための通電と、を繰り返した場合の表示濃度の変化を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図7】実施例2の表示デバイスに表示したブラックパターンの一例を示す図である。
【図8】変形例1のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す図である。
【図9】変形例2のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0178】
10 第1基板
20,20B 第1電極
30 第2基板
40,40B 第2電極
50,50A エレクトロクロミック組成物層
51 多孔質体
51a 細孔
52 エレクトロクロミック組成物
52a ロイコ染料(電子供与性染料前駆体)
53 吸着剤(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)
60 画素
70 吸着層
100,200,100A,100B エレクトロクロミック表示デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、前記消去のための通電時に前記電子供与性染料前駆体を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項2】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、支持電解質と、極性溶剤と、電子供与性染料前駆体と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記第1電極と前記エレクトロクロミック組成物層との間に、前記消去のための通電時に前記電子供与性染料前駆体を吸着する酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む吸着層を備えることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物は、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物並びに下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【化1】

(式中R1、R2、R3、R4は、水素原子、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R1とR2及び/又は式中R3とR4は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R1、R2、R3、R4のすべてが水素原子であることは無い。)
【化2】

(式中R5、R6、R7、R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R5とR6、式中R6とR7及び/又は式中R7とR8は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R5、R6、R7、R8のすべてが水素原子であることは無い。)
【化3】

(式中R9、R10、R11、R12は、水素原子を表す。或いは、式中R9とR10又は式中R11とR12は、互いに結合して形成された二重結合を表す。)
【化4】

(式中Z及び点線は、環を形成している状態を表し、当該環が脂肪族の環の場合は、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基を表し、当該環が芳香族の環の場合は、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記電子供与性染料前駆体は、ロイコ染料であり、
前記エレクトロクロミック組成物には、ヒンダードフェノール類が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記支持電解質は、下記の一般式(5)で表される化合物及び/又は下記の一般式(6)で表される化合物であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【化5】

(式中Mは、Li、Na、K、Rb、Cs又はNHを表す。式中Xは、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。)
【化6】

(式中R13は、アルキル基又はアリール基を表す。式中R14は、アルキル基を表す。式中Nは、窒素原子を表す。式中Xは、Cl、Br、I、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。式中nは、0、1又は2を表し、式中mは、4−nを表す。)
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の電極であり、
前記第1電極と前記第2電極の透明表示電極部とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、金属電極であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項11】
請求項1〜9の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、透明電極であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項12】
請求項1〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、透明表示電極部と、当該透明表示電極部に接続されたライン状電極部と、から構成される、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の電極であり、
前記第1電極の透明表示電極部と前記第2電極の透明表示電極部とが相対して立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
パッシブマトリックス駆動によって表示のための駆動をすることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−98632(P2009−98632A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213745(P2008−213745)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】