説明

エレクトロルミネセンス物質およびデバイス

スピンコーティングの前にポリマーで被覆したアノードに、エレクトロルミネセンス有機金属錯体を、スピンコーティングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス物質(electroluminescent material)と、エレクトロルミネセンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通したときに発光する物質は、よく知られており、ディスプレイ用途に広く用いられている。無機半導体系(inorganic semiconductor systems)に基づいたデバイスが広く用いられている。しかしながら、これらはエネルギー消費が高いこと、生産コストが高いこと、量子効率が低いこと、および、フラットパネルディスプレイを生産することができないこと、という欠点を持っている。有機ポリマーは、エレクトロルミネセンスデバイスに用いるのに有用であるとして提案されているが、純色を得ることができず、生産コストが高い上に効率が比較的低い。提案されている他のエレクトロルミネセンス化合物には、アルミニウムキノラート(aluminium quinolate)があるが、色の範囲を得るために使用するにはドーパント(dopant)が必要である上、比較的効率が低い。
【0003】
特許出願「WO98/58037」には、改善された特質を有し、より優れた実験結果を与えるエレクトロルミネセンスデバイスに使用することが可能な、一連の遷移金属錯体およびランタニド錯体が記載されている。特許出願「PCT/GB98/01773」、「PCT/GB99/03619」、「PCT/GB99/04030」、「PCT/GB99/04024」、「PCT/GB99/04028」および「PCT/GB00/00268」には、希土類キレートを用いたエレクトロルミネセンス錯体、構造、およびデバイスが記載されている。「US Patent 5128587」には、仕事関数が高い透明電極と仕事関数が低い第二電極との間に挟まれたランタニド系列の希土類元素の有機金属錯体、エレクトロルミネセンス層と透明高仕事関数電極(transparent high work function electrode)との間に入れられた正孔伝導層(hole conducting layer)、およびエレクトロルミネセンス層と低仕事関数電子注入アノード(electron injecting low work function anode)との間に入れられた電子伝導層(electron conducting layer)とから成る、エレクトロルミネセンスデバイスが開示されている。正孔伝導層と電子伝導層はデバイスの仕事と効率を向上させるために必要である。正孔輸送層(hole transporting layer)は、正孔を輸送して電子を遮断する役割を果たす。その結果、電子が正孔と再結合(recombining)しないで電極中に移動するのを防ぐ。このキャリアーの再結合は主に発光層(emitter layer)で起こる。
【0004】
エレクトロルミネセンスデバイスに有用なものとして開示されているエレクトロルミネセンス化合物は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金の有機金属錯体である。これらのデバイスを形成するために層が順番に基板(通常はインジウム-スズ酸化物などの導電性の透明基板(transparent substrate))に蒸着(deposit)される。
【0005】
エレクトロルミネセンスデバイスに有用なものとして開示されている他の化合物は、発光の色を変えるために色素(dye)と共にドープすることができる、アルミニウムキノラート(aluminium quinolate)である。
【0006】
エレクトロルミネセンス層は、厚みを調整した均一な層を生成する真空蒸着(vacuum deposition)によって蒸着される。しかしながら、エレクトロルミネセンスデバイスを大規模に製造するには、真空蒸着は高価であるし、非常に良く調整されている特殊な設備が必要である。
【0007】
表面の上に物質の膜を堆積させる(depositing)ためのあるシステムでは、スピンコーティング法が用いられる。スピンコーティング法では被覆される表面をスピンコーター中で物質の溶液にさらし、遠心作用によって層を堆積させる。
【0008】
しかしながら、インジウム-スズ酸化物ガラス基板のスピンコーティング法は、何種類かのエレクトロルミネセンス物質について実用的ではないことが分かっている。また、正孔輸送物質の層が基板に堆積されたとしても、有機金属ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金の層を十分にスピンコートすることができるかということや、ジルコニウムキノラートを堆積させられるかということについては分かっていない。
【発明の開示】
【0009】
ところで、我々は、基板が適切なポリマー層で被覆されていれば、有機金属エレクトロルミネセンス層をスピンコーティング法により十分に堆積させることができることを見出した。
【0010】
本発明によれば、基板(ポリマーの層で被覆された基板である)上への有機金属錯体のスピンコーティングによってアノード、エレクトロルミネセンス有機金属錯体、および、カソードから成るエレクトロルミネセンスデバイスを形成する方法が提供される。
【0011】
用いることができる好ましいポリマーは、溶媒に溶解可能な導電性のポリマー(electrically conductive polymer)であって、例えば正孔輸送物質として後述するような共役高分子などである。
【0012】
用いることができる他のポリマー類は、エレクトロルミネセンスデバイスの中の緩衝物質(buffer material)として用いることができる化合物であり、例えば溶媒に可溶なフタロシアニン類、以下のようなポルフィリン類、
【0013】
【化4】

【0014】
および以下の構造のような金属ジアミノジアントラセン類(metal diamino dianthracenes)である。
【0015】
【化5】

【0016】
特に適切なポリマー類はポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート類(polyethylene dioxythiophene polystyrene sulphonates)である。
【0017】
好ましいエレクトロルミネセンスデバイスには、(1) ポリマー層が表面に堆積している透明導電性アノード(transparent electrically conductive anode)、(2)正孔輸送物質の層、(3)エレクトロルミネセンス有機金属錯体の層、(4)電子輸送物質(electron transmitting material)の層、(5)カソードがある。
【0018】
好ましいポリマー層の厚さは50ナノメーターから150ナノメーターであって、かつ、ポリマー層は好ましくはスピンコーティング法で基板の上に被覆される。
【0019】
好ましい有機金属錯体の一例としては、ルテニウム錯体、ロジウム錯体、パラジウム錯体、オスミウム錯体、イリジウム錯体、もしくは、白金イリジウム錯体(platinum iridium complexes)があり、特にイリジウム錯体が好ましい。
【0020】
【化6】

【0021】
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、同じ基であっても異なる基であっても良く、水素、ならびに、置換および非置換の脂肪族基、置換および非置換の芳香族、複素環および多環の環状構造を有する基のような置換および非置換のヒドロカルビル基、トリフルオリルメチル基(trifluoryl methyl groups)のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン、もしくは、チオフェニル基から選択され、また、R1、R2およびR3は、置換または非置換の縮合した芳香族、複素環および多環の環状構造を形成してもよく、モノマー(例えば、スチレン)と共重合をすることができ、さらに、ここでR4およびR5は、同じ基であっても異なる基であっても良く、水素、ならびに、置換および非置換の脂肪族基、置換および非置換の芳香族、複素環および多環の環状構造を有する基のような置換および非置換のヒドロカルビル基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン、もしくは、チオフェニル基、から選択されてもよく、また、R1、R2およびR3は、置換または非置換の縮合した芳香族、複素環および多環の環状構造を形成してもよく、モノマーと共重合をすることもでき、Mは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、もしくは、白金であり、n+2はMの価数である)
【0022】
好ましくは、Mはイリジウムである。
【0023】
イリジウム錯体もしくはその他の金属錯体はホスト物質と混合することができる。ドーパントは後述するものを用いることができる。
【0024】
好ましいエレクトロルミネセンス有機金属錯体の厚さは50ナノメーターから150ナノメーターである。
【0025】
その他の好ましい有機金属錯体は、M(L)nおよびMO(L)n-2の構造であって、ここで、Mはn価の金属であり(nは3より大きな数)、Lは有機配位子であり、例えばM(L1)(L2)(L3)(L4)...、もしくは、MO(L1)(L2)....のように、Lは同じであっても異なるものであっても良い。
【0026】
好ましくは、金属Mが4価のチタン、ジルコニウム、もしくはハフニウム、または、5価のバナジウム、ニオブ、もしくはタンタル等の遷移金属であり、特には金属Mはジルコニウムキノラートである。
【0027】
この参照により本開示に含まれる特許出願「WO 2004/058913」には本発明に用いることができる、ドープされたジルコニウムキノラート類が開示されている。
【0028】
好ましくは、エレクトロルミネセンス化合物が少量のドーパントとしての蛍光物質と共ドープされており、好ましくはドープされた混合物の重さの5%〜15%である。
【0029】
この参照により本開示に含まれる「US4769292」で論じているように、蛍光物質が存在すると広い範囲から発光波長を選択することができる。
【0030】
有用な蛍光物質は有機金属錯体と混ぜて、本発明に係るELデバイスのルミネセンス領域(the luminescent zones)を構成する前述の厚みの範囲を満たす薄膜中に配合することができる物質である。結晶有機金属錯体(crystalline organo metallic complexes)が薄膜形成(thin film formation)に有用なものでなくても、有機金属錯体中に制限された量の蛍光物質を存在させて、単独では薄膜形成できない蛍光物質を使用することができる。好ましい蛍光物質は、有機金属錯体と共通相(common phase)を形成する化合物である。色素は有機金属錯体中での分子レベルでの分配(molecular level distribution)に役立つので、蛍光色素は好ましい種類の蛍光物質を構成する。有機金属錯体中に蛍光色素を分散させる任意の便利な技術を用いることができるが、好ましい蛍光色素は、その有機金属錯体物質とともに真空蒸着することができるものである。前述の想定したその他の判断基準が満たされ、蛍光レーザー色素(fluorescent laser dyes)は本発明に係る有機ELデバイスに用いるのに特に有用な蛍光物質であることが認識された。用いることができるドーパントには、ジフェニルアクリジン、クマリン類、ペリレンおよびそれらの誘導体が含まれる。
【0031】
有用な蛍光物質は「US4769292」で開示されている。
【0032】
有機金属錯体は、ドーパントと混合でき、ドーパントと共蒸着(co-deposited)(好ましくは、ドーパントおよび有機金属錯体を溶媒に溶解させて混合溶液をスピンコーティングすることによって)させることができる。
【0033】
エレクトロルミネセンス物質のスピンコーティングはスピンコーティング用に市販されている不活性溶媒を用いたその物質の溶液で行うことができる。適切な溶媒は、1,4,ジオキサンである。
【0034】
正孔輸送物質は、エレクトロルミネセンスデバイスに用いられる任意の正孔輸送物質とすることができる。
【0035】
正孔輸送物質は、α-NBP、ポリ(ビニルカルバゾール)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、非置換もしくは置換のアミノ置換芳香族化合物のポリマー、ポリアニリン、置換ポリアニリン類、ポリチオフェン類、置換ポリチオフェン類、ポリシラン類ならびに置換ポリシラン類などのような、アミン錯体(amine complex)とすることができる。ポリアニリン類の例としては以下のポリマーがあり、
【0036】
【化7】

【0037】
ここでRはオルト位、もしくはメタ位にあり、水素、C1-18アルキル基、C1-6アルコキシ基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ヒドロキシル基もしくは以下に示す基である。
【0038】
【化8】

【0039】
ここでRはアルキル基もしくはアリール基で、R'は水素、前述の構造式(V)に示した他のモノマーの少なくとも一つを含むC1-6アルキル基もしくはC1-6アリール基である。
【0040】
またあるいは、正孔輸送物質は、ポリアニリン、ポリアニリン類とすることができる。本発明で用いることができるポリアニリン類は、以下の一般的構造を有している。
【0041】
【化9】

【0042】
ここでpは1〜10、nは1〜20、Rは先に定義したとおりであり、かつXがアニオンであり、好ましくは、Cl、Br、SO4、BF4、PF6、H2PO3、H2PO4、アリールスルホン酸イオン(arylsulphonate)、アレーンジカルボン酸イオン(arenedicarboxylate)、ポリスチレンスルホン酸イオン(polystyrenesulphonate)、ポリアクリル酸イオン(polyacrylate)、アルキルスルホン酸イオン(alkylsulphonate)、ビニルスルホン酸イオン(vinylsulphonate)、ビニルベンゼンスルホン酸イオン(vinylbenzene sulphonate)、セルローススルホン酸イオン(cellulose sulphonate)、ショウノウスルホン酸イオン(camphor sulphonate)、セルロース硫酸イオン(cellulose sulphate)、もしくは、全フッ素置換ポリアニオン(perfluorinated polyanion)から選択される。
【0043】
アリールスルホン酸類イオンの例としては、p-トルエンスルホン酸イオン(p-toluenesulphonate)、ベンゼンスルホン酸イオン(benzenesulphonate)、9,10-アントラキノン-スルホン酸イオン(9,10-anthraquinone-sulphonate)およびアントラセンスルホン酸イオン(anthracenesulphonate)がある。アレーンジカルボン酸イオンの例としてフタル酸イオン(phthalate)があり、アレーンカルボン酸の例として、安息香酸イオン(benzoate)がある。
【0044】
我々は、ポリアニリンなどの、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーの、プロトン化されたポリマーは、蒸発(evaporate)しにくいか、または蒸発しないことを発見した。しかしながら、驚くべきことに、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーが脱プロトン化されると、簡単に蒸発できるようになること、すなわちポリマーが蒸発可能(evaporable)であることを、我々は見出した。
【0045】
好ましくは、蒸発可能な、アミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換ポリマーの脱プロトン化されたポリマーが用いられる。そのアミノ置換芳香族化合物の非置換もしくは置換の脱プロトン化されたポリマーは、水酸化アンモニウムのようなアルカリ、または水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物で、処理して脱プロトン化することにより生成できる。
【0046】
プロトン化の程度は、プロトン化したポリアニリンの形成と脱プロトン化で調節することができる。ポリアニリン類の調製方法は、「A. G. MacDiarmid and A. F. Epstein, Faraday Discussions, Chem Soc.88 P319, 1989」の文献に記載されている。
【0047】
ポリアニリンの伝導率はプロトン化の程度に依存し、伝導率が最大となるのは、例えば約50%のように、プロトン化の程度が40%と60%の間であるときである。
【0048】
好ましくは、ポリマーは実質的に完全に脱プロトン化されている。
【0049】
ポリアニリンは、例えば以下のようなオクタマー単位(octamer unit)、すなわちpが4であるようなもの、を形成する可能性がある。
【0050】
【化10】

【0051】
ポリアニリン類は1 x 10-1 Siemen cm-1 の桁以上の導電率を有する可能性がある。
【0052】
芳香族環は非置換であるか、もしくは例えばエチル基のようなC1から20のアルキル基などで置換されている可能性がある。
【0053】
ポリアニリンはアニリンの共重合体である可能性があり、好ましい共重合体は、アニリンとo-アニシジン、m-スルファニル酸もしくはo-アミノフェノールとの共重合体、またはo-トルイジン(o-toluidine)とo-アミノフェノール、o-エチルアニリン、o-フェニレンジアミン、もしくはアミノアントラセン類との共重合体である。
【0054】
使用することができるその他のアミノ置換芳香族化合物のポリマーには、置換もしくは非置換のポリアミノナフタレン類、ポリアミノアントラセン類、ポリアミノフェナントレン類など、さらには、任意の他の縮合ポリ芳香族化合物のポリマーが含まれる。ポリアミノアントラセン類、および、それらを作る方法は「US Patent 6153726」に開示されている。芳香族環は非置換であっても良いし、例えば先に定義したR基で置換されているものでも良い。
【0055】
その他の正孔輸送物質は共役高分子(conjugated polymer)で、用いることができる共役高分子は、「US 5807627」、「WO90/13148」、および「WO92/03490」に開示もしくは参照されている、任意の共役高分子とすることができる。
【0056】
好ましい共役高分子は、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)および、PPVを含む共重合体である。その他の好ましい高分子は、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[(2-メトキシペンチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)]などのポリ(2,5-ジアルコシキフェニレンビニレン)、ならびに、長鎖可溶化性アルコキシ基(long chain solubilising alkoxy group)であるアルコキシ基、ポリフルオレン類およびオリゴフルオレン類、ポリフェニレン類およびオリゴフェニレン類、ポリアントラセン類およびオリゴアントラセン類、ポリチオフェン類およびオリゴチオフェン類のうちの少なくとも一つを含む、他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)類 である。
【0057】
PPVのフェニレン環は、任意に1箇所以上置換することができ、例えば個々に、アルキル基(好ましくはメチル基)、またはアルコキシ基(好ましくはメトキシ基もしくはエトキシ基)から独立に選択することができる。
【0058】
ポリフルオレンでは、フルオレン環を任意に1箇所以上置換することができ、例えば個々に、アルキル基(好ましくはメチル基)、またはアルコキシ基(好ましくはメトキシ基もしくはエトキシ基)から独立に選択することができる。
【0059】
任意のポリ(アリーレンビニレン)(poly(arylenevinylene))には、用いることができるその置換誘導体も含まれ、ポリ(p-フェニレンビニレン) のフェニレン環は、アントラセン環もしくはナフタレン環のような縮合環系に置き換えることができ、それぞれのポリ(フェニレンビニレン)部分のビニレン基の数は例えば7つ以上のように増やすこともできる。
【0060】
共役高分子は「US 5807627」、「WO90/13148」、および「WO92/03490」に開示された方法で作ることができる。
【0061】
正孔輸送層(hole transporting layer)の厚さは20nm〜200nmが好ましい。
【0062】
前述のポリアニリン類などのアミノ置換芳香族化合物のポリマーは、他の正孔輸送物質とともに、もしくは組み合わせて、例えばアノードと正孔輸送層の間などの、緩衝層としても用いることができる。他の緩衝層は、フタロシアニン銅のようなフタロシアニン類から形成することができる。
【0063】
その他のいくつかの正孔輸送物質の構造式を図3、4、5、6および7の図に示した。ここで、R、R1、R2、R3およびR4は同じであっても異なっていても良く、水素、置換および非置換の脂肪族基、置換および非置換の芳香族基、複素環基ならびに多環の環状構造のような置換および非置換のヒドロカルビル基(hydrocarbyl)、トリフルオロメチル基のようなフルオロカーボン基(fluorocarbon group)、フッ素原子などのハロゲン類あるいはチオフェニル基から選択されるものであり、R、R1、R2、R3およびR4は置換および非置換の縮合芳香族環、複素環、および多環の環構造を形成する可能性もあり、スチレンなどのモノマーと共重合体を作る可能性がある。XはSe、SもしくはOであり、Yは水素、置換および非置換の芳香族基、複素環基、ならびに多環の環状構造のような、置換もしくは非置換のヒドロカルボキシル基(hydrocarboxyl group)、トリフルオロメチル基のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン類、チオフェニル基もしくはニトリル基である可能性がある。
【0064】
Rおよび/もしくはR1および/もしくはR2および/もしくはR3および/もしくはR4の例には、脂肪族基、芳香族基および複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基およびカルボキシ基、置換ならびに非置換のフェニル基、フルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基(anthracenyl)およびフェナントレニル基(phenanthrenyl)、t-ブチル基のようなアルキル基、ならびにカルバゾール基のような複素環基が含まれる。
【0065】
オプションとして、電子注入物質(electron injecting material)の層が、アノードとエレクトロルミネセンス物質の層との間に存在する。電子注入物質は電流が通ったときに電子を輸送する物質である。電子注入物質には、例えばアルミニウムキノラート、リチウムキノラート、ジルコニウムキノラート(Zrq4)などの金属キノラート(metal quinolate)のような金属錯体、9,10-ジシアノアントラセンのようなシアノアントラセン、シアノ置換芳香族化合物、テトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane)、ポリスチレンスルホン酸(polystyrene sulphonate)、または、図1もしくは2の図に示した構造式の化合物、あるいはMx(DBM)nが含まれる。ここでMxは金属であり、DBMはジベンゾイルメタンで、nはMxの価数である。例えばMxはアルミニウムもしくはクロムである。シッフ塩基をDBM部分の代わりに用いることもできる。
【0066】
別々の層とする代わりに、電子注入物質をエレクトロルミネセンス物質と混合して共蒸着(co-deposited)させることもできる。
【0067】
オプションとして、正孔輸送物質をエレクトロルミネセンス物質と混合して共蒸着させ、かつ、電子注入物質とエレクトロルミネセンス物質を混合することもできる。正孔輸送物質、エレクトロルミネセンス物質、および電子注入物質を一緒に混ぜて一つの層を形成することもでき、これによって構成を単純化することができる。
【0068】
第一電極は、好ましくはアノードとして作用する導電ガラス(conductive glass)もしくは導電性のプラスチック物質などの透明基板(transparent substrate)である。好ましい基板は、インジウム-スズ酸化物被覆ガラス(indium tin oxide coated glass)などの導電ガラスであるが、任意の導電性を有するガラス、または、金属もしくは導電性ポリマーなどの導電層を有するガラスを用いることができる。導電性ポリマー類、ならびに、導電性ポリマーで被覆されたガラスもしくはプラスチック物質も、基板として用いることができる。
【0069】
カソードは好ましくは、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、希土類金属、遷移金属、マグネシウム、および、銀/マグネシウム合金、希土類金属合金などのような、それらの合金などの仕事関数の低い金属で、アルミニウムが好ましい金属である。フッ化リチウムなどのアルカリ金属のフッ化物、または希土類金属のフッ化物、もしくはそれらの合金などの、金属フッ化物(metal fluoride)を第二電極として用いることができ、例えば金属フッ化物の層をその表面に有する金属を用いることができる。
【0070】
本発明に係るデバイスはビデオディスプレイ、携帯電話、ポータブル・コンピュータ、および、電気的に制御されている視覚的イメージ(visual image)が用いられる任意の他の用途に用いられるディスプレイに用いることができる。本発明に係るデバイスは、このようなディスプレイのアクティブ用途(active applications)とパッシブ用途(passive applications)の両方に用いることができる。
【0071】
既知のエレクトロルミネセンスデバイスでは、一方もしくは両方の電極をシリコン、および、エレクトロルミネセンス物質で形成することができ、正孔輸送物質および電子輸送物質(electron transporting material)の中間層(intervening layers)をピクセル(pixel)としてシリコン基板上に形成することができる。好ましくは、各ピクセルには、基板から離れたほうの端で有機層に接触している、少なくとも一つのエレクトロルミネセンス物質の層、および、透明電極(少なくとも半透明)が含まれる。
【0072】
好ましくは、基板がシリコン結晶(crystalline silicon)でできていて、電極もしくはエレクトロルミネセンス化合物を蒸着する(deposition)前に平らな表面を作るために、基板の表面は磨かれもしくは平らにされることがある。また、あるいは、平滑化していない(non-planarised)シリコン基板に、さらに物質を蒸着する前に、平滑な面を作るために、導電性ポリマーの層で被覆して平らな面を作ることができる。
【0073】
ある実施例では、各ピクセルは基板に接触している金属電極を含んでいる。金属電極と透明電極の相対的な仕事関数によって、一方がアノードとして機能し、他方がカソードとして機能することがある。
【0074】
シリコン基板がカソードの場合、インジウム-スズ酸化物被覆ガラスをアノードとして作用させることができ、光はアノードを通して発光する。シリコン基板がアノードとして作用するとき、カソードは、適切な仕事関数を有する透明電極で構成される可能性がある。例えばインジウム-亜鉛酸化物被覆ガラス(indium zinc oxide coated glass)は、インジウム-亜鉛酸化物が低い仕事関数を有するため、用いることができる。このアノードの上に金属の透明被覆(transparent coating of a metal)をして適切な仕事関数を与えるようにすることが可能である。これらのデバイスは、トップエミッティングデバイス(top emitting devices)もしくはバックエミッティングデバイス(back emitting devices)と呼ばれることがある。
【0075】
金属電極は多数の金属層から構成されることがある。例えば、アルミニウムのように高い仕事関数を有する金属を基板の上に蒸着して、カルシウムのように低い仕事関数を有する金属を、より高い仕事関数を有する金属の上に蒸着することがある。他の例としては、さらに導電性のポリマーの層が、アルミニウムなどの安定な金属の上に位置する。
【0076】
好ましくは、電極は各ピクセルの裏側が鏡としても機能し、電極が表面を平坦化された基板の上に蒸着され、もしくは表面を平坦化された基板中に沈められる。しかしながら、もう一つの方法として、吸光黒色層(light absorbing black layer)を基板に隣接させることができる。
【0077】
さらに他の実施例では、選択された範囲の下端の導電性ポリマー層を、適切な水溶液にさらして導電性をなくすことによって、ピクセル電極の下端接触部(the bottom contacts)として機能するピクセルパッド(pixel pads)の配列(arrays)を構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
〔実施例〕
実施例において、デバイスは、インジウム-スズ被覆ガラスアノードにポリマーを塗装し、その後、正孔輸送物質を真空蒸着(vacuum deposition)し、エレクトロルミネセンス物質の層をスピンコーティングし、電子輸送物質および金属カソードを真空塗装(vacuum coating)して作成した。
【0079】
〔実施例1 化合物Pを用いてスピンコーティングされたデバイス〕
化合物Pは
【0080】
【化11】

とした。
【0081】
化合物PはCBPと混合した。ここでCBPは、添付図面の図4bでRが水素であるものである。
【0082】
{実験の詳細}
<スピンコーター>
スピンコーターは6インチプレートを備えたSemitec CPS 10を用いた。
【0083】
<インジウム-スズ酸化物被覆ガラス(ITO)の調製>
ITO(100Ω/□,〜20nm)被覆ガラスは以下の手順で洗浄した。
1.エタノール中で10分間、超音波処理。
2.2-プロパノン(アセトン)中で10分間、超音波処理。
3.2-プロパノール(イソプロパノール)中で10分間、超音波処理。
4.脱イオン水中で10分間、超音波処理。
5.100℃の乾燥機中で8時間、乾燥。
【0084】
<PEDOT-PSS層のスピンコーティング>
ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート(PEDOT-PSS)の層は、水溶液(BayerのBaytron P VPCH 8000)から、ITO/ガラスの上にスピンコーティングした。
1.ITO基板の表面全体にPEDOT-PSS溶液の薄膜(88nm)を塗布した。
2.高温噴霧装置(hot air-gun)(1500W)を基板の表面に向けた。基板の温度は55℃であった。
3.直ちに基板を300rpmで5秒間回転させた後、3000rpmで15秒間回転させた後に、熱気流を直ちに止めた。
【0085】
【表1】

4.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0086】
<α-NPB層の真空塗装>
正孔輸送物質(図7の構造であるα-NPB)の40nmの層を、ITO/PEDOT-PSS基板の表面に真空塗装した。
【0087】
<化合物PのCBP中の12.5%(w/w)混合物>
0.35gのCBPおよび0.05gの化合物Pを混合して、20mlの1,4-ジオキサンに溶解した。
スピンコーティング用に、溶解していない微粒子を全て取り除くために、その溶液を濾過した。
【0088】
<化合物P/CBP混合物の層のスピンコーティング>
1.ITO/PEDOT-PSS/α-NPB基板の表面全体にエミッター溶液(emitter solution)の薄膜(80nm)を塗布した。
2.直ちに基板を200rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで15秒間回転させた。
【0089】
【表2】

3.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0090】
<BCP層、アルミニウムキノラート(Alq3)層、およびLiF層の真空塗装>
バソキュプロン(bathocupron、BCP)の層(6nm)、40nmのAlq3の層、その後0.5nmのLiFの層を、ITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物P基板の表面に真空塗装した。
【0091】
<カソードの真空塗装>
アルミニウム(Al、100nm)をITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物P/BCP/Alq3/LiF基板の表面に真空塗装した。
【0092】
<デバイス構成>
ITO (20 nm)/PEDOT-PSS (88 nm)/α-NPB (40 nm)/CBP: 化合物P (12.5%; 80 nm)/BCP (6 nm)/Alq3 (40 nm)/LiF (0.5 nm)/Al (100 nm)
【0093】
このデバイスの特性を測定し、その結果を図8、9、および10に示す。
【0094】
〔実施例2 ジルコニウムキノラート(Zrq4)を用いてスピンコーティングされたデバイス〕
<スピンコーター>
スピンコーターは6インチプレートを備えたSemitec CPS 10を用いた。
【0095】
<ITOの調製>
ITO(100Ω/□,〜20nm)被覆ガラスは以下の手順で洗浄した。
1.エタノール中で10分間、超音波処理。
2.2-プロパノン(アセトン)中で10分間、超音波処理。
3.2-プロパノール(イソプロパノール)中で10分間、超音波処理。
4.脱イオン水中で10分間、超音波処理。
5.100℃の乾燥機中で8時間、乾燥。
【0096】
<PEDOT-PSS層のスピンコーティング>
ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート(PEDOT-PSS)の層は、水溶液(BayerのBaytron P VPCH 8000)から、ITO/ガラスの上にスピンコーティングした。
1.ITO基板の表面全体にPEDOT-PSS溶液の薄膜(88nm)を塗布した。
2.高温噴霧装置(hot air-gun)(1500W)を基板の表面に向けた。基板の温度は55℃であった。
3.直ちに基板を300rpmで5秒間回転させた後、3000rpmで15秒間回転させた後に、熱気流を直ちに止めた。
【0097】
【表3】

4.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0098】
<α-NPB層の真空塗装>
α-NPBの40nmの層を、ITO/ PEDOT-PSS基板の表面に真空塗装した。
【0099】
<DPQAのZrq4中の12.5%(w/w)混合物>
0.175gのZrq4および0.025gのDPQAを混合して、20mlの1,4-ジオキサンに溶解した。スピンコーティングを行うために、その溶液を濾過して、溶解していない微粒子を全て取り除いた。
DPQAはジフェニルキナクリジン(diphenylquinacridine)である。
【0100】
<DPQA/Zrq4混合物の層のスピンコーティング>
1.ITO/PEDOT-PSS/α-NPB基板の表面全体にエミッター溶液の薄膜(15nm)を塗布した。
2.直ちに基板を200rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで15秒間回転させた。
【0101】
【表4】

3.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0102】
<Zrq4層およびLiF層の真空塗装>
Zrq4の層(20nm)の後、0.5nmのLiFの層を、ITO/PEDOT-PSS/α-NPB/Zrq4:DPQA基板の表面に真空塗装した。
【0103】
<カソードの真空塗装>
アルミニウム(Al、100nm)をITO/PEDOT-PSS/α-NPB/Zrq4:DPQA/Zrq4/LiF基板の表面に真空塗装した。
【0104】
<デバイス構成>
ITO (20 nm)/PEDOT-PSS (88 nm)/α-NPB (40 nm)/Zrq4:DPQA (12.5%; 15 nm)/Zrq4 (20 nm)/LiF (0.5 nm)/Al (100 nm)
このデバイスの特性を測定し、その結果を図11、12、および13に示す。
【0105】
〔実施例3 化合物Qを用いてスピンコーティングされたデバイス〕
化合物Qは
【0106】
【化12】

である。
【0107】
<スピンコーター>
スピンコーターは6インチプレートを備えたSemitec CPS 10を用いた。
【0108】
<ITOの調製>
ITO(100Ω/□,〜20nm)被覆ガラスは以下の手順で洗浄した。
1.エタノール中で10分間、超音波処理。
2.2-プロパノン(アセトン)中で10分間、超音波処理。
3.2-プロパノール(イソプロパノール)中で10分間、超音波処理。
4.脱イオン水中で10分間、超音波処理。
5.100℃の乾燥機中で8時間、乾燥。
【0109】
<PEDOT-PSS層のスピンコーティング>
ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート(PEDOT-PSS)の層は、水溶液(BayerのBaytron P VPCH 8000)から、ITO/ガラスの上にスピンコーティングした。
1.ITO基板の表面全体にPEDOT-PSS溶液の薄膜(88nm)を塗布した。
2.高温噴霧装置(hot air-gun)(1500W)を基板の表面に向けた。基板の温度は55℃であった。
3.直ちに基板を300rpmで5秒間回転させた後、3000rpmで15秒間回転させた後に、熱気流を直ちに止めた。
【0110】
【表5】

4.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0111】
<α-NPB層の真空塗装>
α-NPBの40nmの層を、ITO/PEDOT-PSS基板の表面に真空塗装した。
【0112】
<化合物QのCBP中の12.5%(w/w)混合物>
0.35gのCBPおよび0.05gの化合物Qを混合して、20mlの1,4-ジオキサンに溶解した。
スピンコーティングを行うために、その溶液を濾過して溶解していない微粒子を全て取り除いた。
【0113】
<化合物Q/CBP混合物の層のスピンコーティング>
1.ITO/PEDOT-PSS/α-NPB基板の表面全体にエミッター溶液の薄膜(80nm)を塗布した。
2.直ちに基板を200rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで15秒間回転させた。
【0114】
【表6】

3.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0115】
<BCP層、アルミニウムキノラート(Alq3)層、およびLiF層の真空塗装>
BCPの層(6nm)、40nmのAlq3の層、その後0.5nmのLiFの層を、ITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物Q基板の表面に真空塗装した。
【0116】
<カソードの真空塗装>
アルミニウム(Al、100nm)をITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物Q/BCP/Alq3/LiF基板の表面に真空塗装した。
【0117】
<デバイス構成>
ITO (20 nm)/PEDOT-PSS (88 nm)/α-NPB (40 nm)/CBP:化合物Q (12.5%; 80 nm)/BCP (6 nm)/Alq3 (40 nm)/LiF (0.5 nm)/Al (100 nm)
このデバイスの特性を測定し、その結果を図14、15、および16に示す。
【0118】
〔実施例4 化合物Rを用いてスピンコーティングされたデバイス〕
化合物Rは
【0119】
【化13】

である。
【0120】
<スピンコーター>
スピンコーターは6インチプレートを備えたSemitec CPS 10を用いた。
【0121】
<ITOの調製>
ITO(100Ω/□,〜20nm)被覆ガラスは以下の手順で洗浄した。
1.エタノール中で10分間、超音波処理。
2.2-プロパノン(アセトン)中で10分間、超音波処理。
3.2-プロパノール(イソプロパノール)中で10分間、超音波処理。
4.脱イオン水中で10分間、超音波処理。
5.100℃の乾燥機中で8時間、乾燥。
【0122】
<PEDOT-PSS層のスピンコーティング>
ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート(PEDOT-PSS)の層は、水溶液(BayerのBaytron P VPCH 8000)から、ITO/ガラスの上にスピンコーティングした。
1.ITO基板の表面全体にPEDOT-PSS溶液の薄膜(88nm)を塗布した。
2.高温噴霧装置(hot air-gun)(1500W)を基板の表面に向けた。基板の温度は55℃であった。
3.直ちに基板を300rpmで5秒間回転させた後、3000rpmで15秒間回転させた後に、熱気流を直ちに止めた。
【0123】
【表7】

4.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0124】
<α-NPB層の真空塗装>
α-NPBの40nmの層を、ITO/ PEDOT-PSS基板の表面に真空塗装した。
【0125】
<化合物RのCBP中の12.5%(w/w)混合物>
0.35gのCBPおよび0.05gの化合物Rを混合して、20mlの1,4-ジオキサンに溶解した。
スピンコーティングを行うために、その溶液を濾過して溶解していない微粒子を全て取り除いた。
【0126】
<化合物R/CBP混合物の層のスピンコーティング>
1.ITO/PEDOT-PSS/α-NPB基板の表面全体にエミッター溶液(emitter solution)の薄膜(75nm)を塗布した。
2.直ちに基板を200rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで15秒間回転させた。
【0127】
【表8】

3.塗った薄膜にむらが無いかをチェックし、その後、100℃で1時間、減圧乾燥機中で乾燥した。
【0128】
<E101層およびLiF層の真空塗装>
E101の層(10nm)の後、0.5nmのLiFの層を、ITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物R基板の表面に真空塗装した。
【0129】
<カソードの真空塗装>
アルミニウム(Al、100nm)をITO/PEDOT-PSS/α-NPB/CBP:化合物R/E101/LiF基板の表面に真空塗装した。
【0130】
<デバイス構成>
ITO (20 nm)/PEDOT-PSS (88 nm)/α-NPB (40 nm)/CBP: 化合物R (12.5%; 75 nm)/E101 (10 nm)/LiF (0.5 nm)/Al (100 nm)
このデバイスの特性を測定し、その結果を図17、18、および19に示す。
【図面の簡単な説明】
【0131】
原文に記載なし。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図6】

【図7】

【図5】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンコーティング法によってエレクトロルミネセンス有機金属錯体の層を、アノードである基板の上に堆積させることによりエレクトロルミネセンスデバイスを形成する方法であって、
前記基板がポリマーの層で被覆されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、溶媒に溶解可能な導電性ポリマーであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーは共役高分子であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーがフタロシアニン、ポルフィリン、以下の構造を有する化合物、
【化1】

もしくは以下の構造の金属ジアミノジアントラセンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【化2】

(ここで、Ar1、Ar2、Ar3、およびAr4は同じ芳香族基であっても異なる芳香族基であっても良い。)
【請求項5】
前記ポリマーがポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホナート(polyethylene dioxythiophene polystyrene sulphonate)であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前述のいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネセンスデバイスを形成する方法であって、
透明アノードの上に、(1)ポリマー層、(2)正孔輸送物質の層、(3)エレクトロルミネセンス有機金属錯体の層、(4)電子輸送物質(electron transmitting material)の層、および(5)カソードを順番に堆積するステップを含み、
少なくともエレクトロルミネセンス有機金属錯体の層がスピンコーティング法で堆積されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、
ポリマー層の厚さが50ナノメーターから150ナノメーターであって、ポリマー層が好ましくはスピンコーティング法で基板の上に被覆されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記有機金属錯体は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、もしくは、白金の錯体であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、
有機金属錯体が以下のものであることを特徴とする方法。
【化3】

(ここで、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、同じ基であっても異なる基であっても良く、水素、ならびに、置換および非置換の脂肪族基、置換および非置換の芳香族、複素環および多環の環状構造を有する基のような置換および非置換のヒドロカルビル基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン、もしくは、チオフェニル基から選択され、また、R1、R2およびR3は、置換または非置換の縮合した芳香族、複素環および多環の環状構造を形成してもよく、モノマー(例えば、スチレン)と共重合をすることができ、さらに、ここでR4およびR5は、同じ基であっても異なる基であっても良く、水素、ならびに、置換および非置換の脂肪族基、置換および非置換の芳香族、複素環および多環の環状構造を有する基のような置換および非置換のヒドロカルビル基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン基、フッ素のようなハロゲン、もしくは、チオフェニル基、から選択されてもよく、また、R1、R2およびR3は、置換または非置換の縮合した芳香族、複素環および多環の環状構造を形成してもよく、モノマーと共重合をすることもでき、Mは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、もしくは、白金であり、n+2はMの価数である)
【請求項10】
前記金属がイリジウムであることを特徴とする、請求項8もしくは9記載の方法。
【請求項11】
前記有機金属錯体は、M(L)nおよびMO(L)n-2の構造であって、
ここで、Mは3より大きな数のn価の金属であり、Lは有機配位子であり、例えばM(L1)(L2)(L3)(L4)、もしくは、MO(L1)(L2)....のように、Lは同じであっても異なるものであっても良い
ことを特徴とする請求項1〜4記載の方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記金属Mが4価のチタン、ジルコニウム、もしくはハフニウム、または、5価のバナジウム、ニオブ、もしくはタンタル等の遷移金属であることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記金属Mがジルコニウムキノラートであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
エレクトロルミネセンス化合物が少量のドーパントとしての蛍光物質と共ドープされていることを特徴とする、請求項11〜13記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ドーパントを、ドープされた混合物の重さの5%〜15%で含むことを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記第一電極と前記エレクトロルミネセンス層の間に正孔輸送物質の層があることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記正孔輸送物質が芳香族アミン錯体(aromatic amine complex)であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記正孔輸送物質がポリ芳香族アミン錯体(polyaromatic amine complex)であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記正孔輸送物質が、α-NBP、ポリ(ビニルカルバゾール)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)、ポリアニリン、置換ポリアニリン類、ポリチオフェン類、置換ポリチオフェン類、ポリシラン類および置換ポリシラン類から選択された、ポリマーの膜であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記正孔輸送物質が、本明細書の構造式(V)もしくは(VI)の化合物、または図3から7に示された化合物の膜であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記正孔輸送物質が、アニリンの共重合体、アニリンとo-アニシジン、m-スルファニル酸、もしくはo-アミノフェノールとの共重合体、またはo-トルイジンとo-アミノフェノール、o-エチルアニリン、o-フェニレンジアミンもしくはアミノアントラセンとの共重合体であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記正孔輸送物質が、共役高分子であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記共役高分子がポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ならびに、PPV、ポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシ-5-(2-メトキシペンチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシペンチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2-メトキシ-5-(2-ドデシルオキシ-1,4-フェニレンビニレン) および、長鎖可溶化性アルコキシ基であるアルコキシ基、ポリフルオレン類およびオリゴフルオレン類、ポリフェニレン類およびオリゴフェニレン類、ポリアントラセン類およびオリゴアントラセン類、ポリチオフェン類(plolythiophenes)およびオリゴチオフェン類のうちの少なくとも一つを含む、他のポリ(2,5-ジアルコキシフェニレンビニレン)類 を含む共重合体とから選択された共役高分子であることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記エレクトロルミネセンス化合物が前記正孔輸送物質に混合されていることを特徴とする、請求項16〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記カソードと前記エレクトロルミネセンス化合物の層の間に、電子輸送物質の層があることを特徴とする、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記電子輸送物質が金属キノラートであることを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記金属キノラートがアルミニウムキノラート、ジルコニウムキノラート、もしくはリチウムキノラートであることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記電子輸送物質の構造がMx(DBM)nであることを特徴とし、
ここでMxは金属で、DBMはジベンゾイルメタンであり、nはMxの価数である、
請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記電子輸送物質が9,10-ジシアノアントラセンのようなシアノアントラセン、ポリスチレンスルホン酸(polystyrene sulphonate)、または図1もしくは図2の図で示された構造式の化合物であることを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記電子輸送物質が前記エレクトロルミネセンス化合物と混合されていることを特徴とする、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記アノードが透明導電性ガラス電極であることを特徴とする、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記カソードが、アルミニウム、バリウム、希土類金属、遷移金属、カルシウム、リチウム、マグネシウム、および、それらの合金、ならびに銀/マグネシウム合金から選択されたものであることを特徴とする、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第二電極が、金属フッ化物の層をその表面に有する金属から選択されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記金属フッ化物がフッ化リチウム、もしくは希土類のフッ化物であることを特徴とする、請求項33記載の方法。

【公表番号】特表2008−529212(P2008−529212A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551736(P2007−551736)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000169
【国際公開番号】WO2006/077402
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(505347488)オーエルイーディー−ティー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】