説明

エレクトロルミネセントランプのための黄色発光燐光体混合物

【課題】本発明の目的はELランプのための黄色発光燐光体ブレンドを提供することによってELランプ製造者に利用可能なカラーパレットを拡張する。
【解決手段】緑発光エレクトロルミネセント燐光体及び赤色発光光ルミネセント燐光体を含むエレクトロルミネセントランプのための燐光体混合物であって、電場によって刺激されたときに0.220〜0.350のx色座標、及び0.450〜0.475のy色座標を呈する燐光体混合物を提供することによって上述の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネセントランプのための黄色発光燐光体混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンスは電場の励起状態の下での光の放出である。このメカニズムに基づいたエレクトロルミネセント(EL)ランプは携帯電話やポータブル計算装置等の民生用電子製品に対する需要の増加により、フラットパネルディスプレイの分野の多くの用途で利用されつつある。ELランプはまた、見る角度にかかわらず均一な発光を与えるとともに、機械的な衝撃や振動の影響を受けにくい。それらは約50〜1000Hzの周波数を有する約100〜300V(最高最低振幅)のAC電圧を変換するインバーターを使用することによって1.5〜9.0ボルトのDC電圧で容易に駆動することができる。
【0003】
ELランプには2つの主要な構造が存在し、それらは一般に、薄膜及び厚膜と呼ばれている。薄膜ELランプはCVD等の蒸着技術を使用してガラス基板上に誘電材、燐光体、及び電導性酸化物の薄膜を交互に付着させることによって作製される。厚膜ELランプは樹脂材料中に粉末材料を浮遊させ、通常のスクリーン印刷技術を使用してプラスチック膜上にそれらの材料を層状に適用することによって作製される。したがって、厚膜ELランプは薄く、しなやかで、かつ頑丈に作製することができるので、それらは多様な範囲のライト製品に適したものにすることができる。
【0004】
厚膜ELランプに適した燐光体は主に、Cu、Au、Ag、Mn、Br、I、及びCl等の多様な活性剤をドープした硫化亜鉛から構成される。これらの燐光体の例は特許文献1〜4に開示されている。また、商業上のEL燐光体の例はOSRAM SYLVANIA Type 813、青色発光ZnS:Cu燐光体、OSRAM SYLVANIA Type 723、青‐緑発光ZnS:Cu,Cl燐光体、及びOSRAM SYLVANIA Type 523、黄‐オレンジZnS:Cu,Mn発光体を含む。通常、EL燐光体の個々の粒子は水分によって誘発される劣化に対する耐性を高めるために非有機的な被膜によって封入される。そのような被膜の例は特許文献5〜8に開示されている。
【0005】
厚膜ELランプに対する最も明るい燐光体は主に約400nm〜約550nmの波長の、青から緑のスペクトル領域で発光する。このため、ELランプの製造者に対して利用可能なカラーパレットは比較的制限されたものとなっている。したがって、EL燐光体は白色光を生成するために光ルミネセント燐光体と組合わされている。EL燐光体とは異なり、光ルミネセント燐光体はELランプ中の電場によって刺激されることはない。その代わりに、光ルミネセント燐光体はEL燐光体によって放射される光によって励起される。そして、これらの燐光体はEL燐光体からの残りの放射と組合わさり、白色光を生成する可視光線を生成する。
【0006】
例えば、特許文献9は青及び青‐緑発光EL燐光体をセリウムによって活性化されたイットリウム‐アルミニウム‐ガーネット燐光体Y3Al512:Ce,(YAG:Ce)と混合することを開示している。YAG:Ce燐光体は青及び青‐緑発光EL燐光体によって放射される波長によって励起される光ルミネセント燐光体である。YAG:Ce燐光体からの黄色発光及びEL燐光体からの青または青‐緑発光は白色光を生成する。また、他の例は青または青‐緑発光エレクトロルミネセント燐光体及び概略的に化学式Sr1-xCaxS:Eu(ここで、0≦x≦1)を有するユーロピウム活性アルカリ土類燐光体を含む燐光体ブレンドを使用する白色発光エレクトロルミネセントランプを開示している米国特許出願No.11/164153、並びに青または青‐緑発光EL燐光体をユーロピウム活性アルカリ土類窒化ケイ素燐光体と組み合わせることによって作製される高CRIエレクトロルミネセントランプを開示している米国特許出願No.10/711,682を含む。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5009808号明細書
【特許文献2】米国特許第5702643号明細書
【特許文献3】米国特許第6090311号明細書
【特許文献4】米国特許第5643496号明細書
【特許文献5】米国特許第5220243号明細書
【特許文献6】米国特許第5244750号明細書
【特許文献7】米国特許第6309700号明細書
【特許文献8】米国特許第6064150号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第1340590A号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的はELランプのための黄色発光燐光体ブレンドを提供することによってELランプ製造者に利用可能なカラーパレットを拡張する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好まれるものとして、本発明のブレンドは電場によって刺激されたときに0.220〜0.350のx色座標、及び0.450〜0.475のy色座標を呈する。詳細に述べると、本発明人は多様な赤発光光ルミネセント燐光体を励起させるためにEL燐光体からの緑発光を使用することができることを見出した。これらの燐光体をブレンドし、それらをELランプに組み込むことにより、光ルミネセント燐光体と緑発光EL燐光体との組合わされた放射は黄色光を生成する。
【0010】
好まれるものとして、緑発光EL燐光体は470nm〜550nmの間で放射する銅によって活性化された硫化亜鉛(ZnS:Cu,Cl)燐光体である。好ましい光ルミネセント燐光体はSr1-xCaxS:Eu(ここで、0≦x≦1)(以降、(Sr,Ca)S:Euと記す)及び(M1-xM'x)Si58:Eu(ここで、M及びM'はCa、Sr、及びBaのうちの少なくとも1つであり、かつ0≦x≦1)である。好まれるものとして、光ルミネセント燐光体は0.570〜0.695のx色座標、及び0.325〜0.430のy色座標を有する赤色発光を有する。
【0011】
好まれるものとして、緑発光EL燐光体は重量パーセントで全ブレンド中の85〜96%であり、光ルミネセント燐光体は4〜15%である。さらに好まれるものとして、本発明のブレンドは電場によって刺激されたときに0.235〜0.335のx色座標、及び0.460〜0.465のy色座標を呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の他の目的、長所、能力とともに本発明をより理解するために付随する図面への参照とともに本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1及び2には、通常の緑発光ZnS:Cu,Clエレクトロルミネセント燐光体(例えば、OSRAM SYLVANIA Type 728)の発光が示されている。電場によって刺激されたとき、これらの燐光体は約500nmでピーク放射を呈する。図1において、この放射は(Sr,Ca)S:Eu燐光体の吸収及び放射曲線と比較されている。重ねられた曲線は、EL燐光体の緑発光が(Sr,Ca)S:Euの比較的強い吸収領域にあることを示している。すなわち、(Sr,Ca)S:Eu燐光体は緑発光の一部を吸収し、それを約615nmにピークを有する赤色発光に変換する能力を有する。燐光体が適当な比率でブレンドされた場合、緑発光の残りの部分は赤色発光と組合わさり、全体として黄色の発光を生成するだろう。
【0014】
同様に、図2において、ZnS:Cu,Cl燐光体の緑発光は(Sr,Ca)Si58:Eu燐光体の吸収及び放射曲線上に重ねられている。図1の場合と同様に、EL燐光体の緑発光は約600nmのピーク放射を呈する(Sr,Ca)Si58:Eu燐光体の比較的強い吸収領域にある。したがって、これらの燐光体を適当な比率でブレンドすることにより、これらの燐光体から黄色発光を生成することができる。
【0015】
実施例
緑発光ZnS:Cu,Cl燐光体(OSRAM SYLVANIA Type 728)及び赤色発光(Sr,Ca)S:Euを使用した。燐光体は米国特許No.5,220,243に開示されている方法に従って加水分解されたトリメチルアルミニウム(TMA)被膜によって被膜されていた。これらの燐光体の多様な量をプラスチック容器に加え、攪拌器で20分間ブレンドすることによって、これらの燐光体の複数のブレンドを準備した。被膜された(Sr,Ca)S:Eu燐光体の量は重量比で4〜15%の間で変化させた。ブレンドの残りの部分は被膜された緑発光EL燐光体から成る。これらの燐光体とともに通常の厚膜構造を有する試験用ランプを作製し、100V、400Hzで動作させた。以下の表にランプ試験の結果を示す。ここで使用されているx,y色座標は1931年のCommission Internationale de I'Eclairage (CIE) Standard Observer (2°)に対するものである。
【0016】
【表1】

【0017】
ここまで、現在のところ好まれる実施例として考えられている本発明の実施例を説明してきたが、付随する請求の範囲によって規定される本発明の範囲から外れることなく多様な変更及び改良を実施することができることは当業者にとって明白であるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(Sr,Ca)S:Eu及びZnS:Cu,Cl燐光体の発光スペクトル上に重ねられた(Sr,Ca)S:Euの吸収スペクトルを示している。
【図2】(Sr,Ca)Si58:Eu及びZnS:Cu,Cl燐光体の発光スペクトル上に重ねられた(Sr,Ca)Si58:Euの吸収スペクトルを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑発光エレクトロルミネセント燐光体及び赤色発光光ルミネセント燐光体を含むエレクトロルミネセントランプのための燐光体混合物であって、電場によって刺激されたときに0.220〜0.350のx色座標、及び0.450〜0.475のy色座標を呈する燐光体混合物。
【請求項2】
電場によって刺激されたときに0.235〜0.335のx色座標、及び0.460〜0.465のy色座標を呈する、請求項1に記載の燐光体混合物。
【請求項3】
前記緑発光エレクトロルミネセント燐光体がZnS:Cu,Clであり、前記赤色発光光ルミネセント燐光体が:
(Sr,Ca)S:Eu;
(M1-xM'x)Si58:Eu(ここで、M及びM'はCa、Sr、及びBaのうちの少なくとも1つであり、かつ0≦x≦1);、または、
それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の燐光体混合物。
【請求項4】
前記緑発光エレクトロルミネセント燐光体が470nm〜550nmの間で放射し、前記赤色発光光ルミネセント燐光体が前記緑発光エレクトロルミネセント燐光体からの前記放射によって刺激されたときに0.570〜0.695のx色座標及び0.325〜0.430のy色座標を有する赤色発光を呈する、請求項1に記載の燐光体混合物。
【請求項5】
前記緑発光EL燐光体が重量比で全ブレンド中の85〜96%であり、赤色発光光ルミネセント燐光体が4〜15%である、請求項1に記載の燐光体混合物。
【請求項6】
エレクトロルミネセントランプのための燐光体混合物であって:
緑発光エレクトロルミネセント燐光体及び赤色発光光ルミネセント燐光体を含み、電場によって刺激されたときに0.220〜0.350のx色座標、及び0.450〜0.475のy色座標を呈し;
前記緑発光エレクトロルミネセント燐光体がZnS:Cu,Clであり、前記赤色発光光ルミネセント燐光体が:
(Sr,Ca)S:Eu;
(M1-xM'x)Si58:Eu(ここで、M及びM'はCa、Sr、及びBaのうちの少なくとも1つであり、かつ0≦x≦1);、または、
それらの組み合わせから選択され;そして、
前記緑発光EL燐光体が重量比で全ブレンド中の85〜96%であり、赤色発光光ルミネセント燐光体が4〜15%である燐光体混合物。
【請求項7】
電場によって刺激されたときに0.235〜0.335のx色座標、及び0.460〜0.465のy色座標を呈する、請求項6に記載の燐光体混合物。
【請求項8】
前記赤色発光光ルミネセント燐光体が(Sr,Ca)S:Euである、請求項7に記載の燐光体混合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−38148(P2008−38148A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196347(P2007−196347)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】