説明

エレクトロルミネッセンス画面を含む多色電子表示装置

発明は、エレクトロルミネッセンス画面、特に、有機発光ダイオード(OLED)を備える多色電子表示装置であって、エレクトロルミネッセンス放射面と、装置の内側に向かって、画素マトリクスで覆われた少なくとも1つの基板(2)とを備え、各画素が異なる色を有する少なくとも3つのサブ画素を備える複数のエレクトロルミネッセンスセル(U及びU)のスタックを含む、多色電子装置に関する。発明によれば、各画素に対し、最小放射波長λを有するサブ画素、すなわち、臨界サブ画素は、上記放射面に隣接する外部ユニット(U)だけに位置し、λより高い波長で放射する他のサブ画素の1つずつは、上記外部ユニットと相対的に、かつ、基板に隣接する内部ユニット(U)だけに位置し、この臨界サブ画素の表面積は他のサブ画素の1つずつの表面積より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネッセンス画面付きの多色電子表示装置に関する。本発明は、特に、OLED(有機発光ダイオード)画面に適用される。
【背景技術】
【0002】
知られているように、OLEDを使用する表示装置は、各画素が典型的に複数の別々に着色されたサブ画素(RGB:一般に、赤色、緑色及び青色で構成されている)画素のマトリクスから形成された放射領域と、このアクティブ領域に隣接して配置されている電気的接続領域とを備える。このOLEDマトリクスの各画素は、通常は、アノード及びカソードとしての役目を果たしかつ一方が放射された光に対して透明又は半透明であり、他方がほぼ反射性である上部及び下部の2つの電極の間に介挿された有機膜を備えた多層発光構造体を組み込む。
【0003】
これらの画面を製造するため、有機層は、シャドウマスクを用いて各サブ画素(1タイプのレイヤ、又は、色毎の多層スタック)に堆積される。このシャドウマスクのアパーチャの最小寸法は、したがって、これらのサブ画素の最小サイズを画定する。この各サブ画素の最小サイズは、上記接続領域を介して電力を各サブ画素に供給するため使用されるアドレス指定回路の寸法によってさらに課されることがある。したがって、これらの2つのパラメータ、すなわち、シャドウマスクのアパーチャのサイズ、あるいは、限定因子である場合アドレス指定回路のサイズ、のうちの一方を利用することにより、画面の解像度を高めることが求められている。
【0004】
OLEDユニットのスタックを生成してこのような画面の解像度を改善する他の方法がこれまでに研究されている。このタイプのスクリーンでは、ある特定のサブ画素及びこれらの対応する放射構造体は、放射側に隣接する、いわゆる外部OLEDユニットに位置し、それ以外は、基板に隣接する、いわゆる内部OLEDユニットに位置し、このように形成された画素の電極は、おそらく2つの重ね合わされたユニットに共通である。
【0005】
さらに求められているのは、これらのスタックにおいて、経年変化に最も敏感であるサブ画素、すなわち、最短波長、RGBの場合に、典型的に青色を有するサブ画素の中を流れる電流密度を最小化し、その結果、他のサブ画素の放射面積を犠牲にして、青色の放射面積を増大することにより、この臨界サブ画素、したがって、装置全体の耐用年限を増加することである。
【0006】
たとえば、外部ユニットに位置している赤色及び緑色の2つのサブ画素と、内部ユニットに位置し、赤色サブ画素の面積と緑色サブ画素の面積との和より大きい放射面積をもつ青色サブ画素とを含むスタックが図8に表されている特許文献1を挙げることができる。さらに、赤色サブ画素及び青色サブ画素が同じ内部ユニット又は外部ユニットに位置し、緑色サブ画素がもう一方のユニットに位置し、その耐用年限を増加させるように青色サブ画素の放射面積が他のサブ画素の放射面積より大きいことを依然として確実にしているスタックについて記載する特許文献2を挙げることができる。
【0007】
これらの文献に提案されているOLDEユニットのスタックの主要な欠点は、これらのスタックが、各画素において、臨界サブ(典型的に、青色)サブ画素に対し、サブ画素の放射構造体の面積を最大化することにより獲得する耐用年限の増加は、画面の解像度が最適化されることを可能とせず、より小さい寸法のサブ画素の堆積のために使用されるシャドウマスクによって解像度が相変わらず制限されることである。
【0008】
臨界(たとえば、青色)サブ画素が内部OLEDユニットに位置している公知のスタックの別の欠点は、サブ画素が放射する光子が外部OLEDユニット内の他のサブ画素の放射構造体によって再吸収され、画面の放射側でこれらの光子のフラックスの損失を生じることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6747618−B号明細書
【特許文献2】米国特許第7250722−B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、エレクトロルミネッセンス放射面と、装置の内側へ向かって、画素のマトリクスで覆われた少なくとも1つの基板とを備え、エレクトロルミネッセンスユニットのスタックを備え、各画素が少なくとも3つの別々に着色されたサブ画素により構成されている、上記の欠点を軽減する多色表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、発明による装置は、画素毎に、最短放射波長λを有するサブ画素、すなわち、臨界サブ画素がユニットの一方、すなわち、この放射面に隣接する外部ユニットだけに位置し、λより長い波長で放射する各他のサブ画素は、この外部ユニットに対して相対的に内部にあり、(基板と相対的に遠くにある外部ユニットとは対照的に)この基板に隣接するユニットだけに位置し、この臨界サブ画素の面積が各他のサブ画素の面積より大きいような装置である。
【0012】
発明によるエレクトロルミネッセンスユニットのスタックの内部のサブ画素のこの配置は、獲得された画素のマトリクスの解像度及び耐用年限の両方が改善されることを可能にすることに注意を要する。特に、これらのサブ画素の1つずつに対して同一の視覚的輝度(cd/m単位)を提供し、サブ画素の中で(最短波長、たとえば、RGBの場合に青色着色、藍色又は紫色を有する)臨界サブ画素は、寸法制限なしに、1つずつの下にある他のサブ画素の放射面積より大きい放射面積を有することがあり、表示装置にとって非常に顕著に増大し得る耐用年限という結果をもたらすことが可能である。
【0013】
さらに、より小さい寸法を有するサブ画素(RGBの場合に、赤色及び緑色)は、基板の上に直接的に位置しているので、マイクロエレクトロニクスからの従来的な技術がこれらの製造のため使用されることを可能にし、したがって、より小型サイズのパターンの生成を可能にする(改善された解像度を提供する)。
【0014】
好ましくは、この臨界サブ画素の面積Aは、他のサブ画素の面積の和に少なくとも等しく(すなわち、Ablue≧Ared+Agreen)、画面の解像度及び耐用年限がさらに改善されることを可能にする。さらにより好ましくは、臨界サブ画素は、下にある他のサブ画素の組のエッジの向こうに延びる(すなわち、越える)ことがある。
【0015】
さらに、放射面の方へ向けられたユニット内の臨界サブ画素の場所は、各画素の範囲内で、臨界サブ画素によって放射された光束の損失の上記影響を阻止することを可能にする。
【0016】
有利な点として、臨界サブ画素は、各他のサブ画素から独立に活性化されることがあり、臨界サブ画素は、活性化されていないときには透明であり、活性化されているとき、必要に応じて、各他のサブ画素によって放射された放射線に加えて、上記波長λで放射する。
【0017】
発明の別の特徴によれば、各画素は、サブ画素をそれぞれに形成するOLEDのような有機放射線放射構造体を備え、前記有機放射線構造体は、対応する放射構造体のためのアノード及びカソードとしての役目をそれぞれに果たす2つの電極の間に介挿され、2つの電極と電気的に接触し、これらの電極のうちの一方は透明又は半透明であり、もう一方の電極はおそらく反射性である点で有利である。
【0018】
好ましくは、上記スタックは、外部ユニット及び内部ユニットである2つのエレクトロルミネッセンスユニットで構成され、上記臨界サブ画素は上記外部ユニット内で放射し、上記内部ユニット内ですべて放射する他のサブ画素の上に積み重ねられている。
【0019】
発明の第1の実施形態によれば、この表示装置は、単一のアクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板を備え、各画素は、上記臨界サブ画素の放射構造体、又は、臨界構造体に設けられた外部電極と、離間している他のサブ画素の放射構造体、又は、非臨界構造体が堆積されている基板に設けられた複数の内部電極とによって画定され、少なくとも1つの中間電極が非臨界構造体の上、及び/又は、臨界構造体の下に設けられている。
【0020】
この第1の実施形態によれば、本装置は、画素毎に、上記臨界構造体の下と、この臨界構造体が実質的に位置合わせされている上記非臨界構造体の上との両方に設けられている単一の中間電極を備えることがある。
【0021】
一変形として、この第1の実施形態による装置は、好ましくはALD(原子層堆積)技術を使用して堆積され、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、及び、窒化珪素よりなる群から選択された材料で作られている少なくとも1つの無機透明電気的絶縁層によって分離され、かつ、重ね合わされている内部電極及び外部電極の2つの中間電極を備えることがあり、これらの中間電極は、それぞれ、画素毎に、臨界構造体の下、及び、非臨界構造体の組の上に設けられる。本変形では、内部電極、及び、外部中間電極は、それぞれが、(半)透明アノードを形成することがあり、内部中間電極及び外部電極は、この場合、それぞれが、反射カソードを形成することがある。この層の厚さは、内部ユニット及び外部ユニットから引き出される光束を最大化するようにシミュレーションを使用して最適化され得る。
【0022】
この場合、各エレクトロルミネッセンスユニットに対し、下部アノードと上部カソードとの間に介挿されている放射構造体の好ましい配置が再び見つけられる。
【0023】
本変形で使用される絶縁層を形成する上記無機透明材料は、発明による画面の封止のためにも使用できることに注意を要する。
【0024】
発明の第2の実施形態によれば、表示装置は、それぞれがアクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板であり、装置のための密閉封止を形成する接着剤のビードによってそれぞれの周囲で互いに接合されている外部及び内部の2つの基板を備え、外部基板には、それぞれが臨界サブ画素を形成する規則的に離間した臨界放射構造体が設けられ、内部基板には、それぞれが他のサブ画素のうちの少なくとも1つを形成し、電気的絶縁体によってこれらの臨界構造体から分離されている規則的に離間した非臨界放射構造体が設けられ、これらの基板によって形成されている2つのマトリクスは、独立した電気的電源回路に接続されている。
【0025】
放射構造体が堆積されているこれらの2つの基板の使用は、この第2の実施形態では、互いに反対側に堆積された臨界放射構造体と非臨界放射構造体とを正確に位置合わせすることが必要ではなく、そして、特に、画面の封止は密閉封止を形成する上記の接着剤のビードだけによって実現されるので、発明による表示装置を製造するプロセスを全く複雑化しないことに注目されたい。
【0026】
本装置は、以下で説明されるように、非常に高い解像度とより低い破壊的動作モードとをエレクトロルミネッセンスユニットにさらに提供する。
【0027】
この第2の実施形態によれば、上記絶縁体は、これらの臨界構造体と非臨界構造体との間の光干渉を制御することにより各臨界サブ画素の効率を限定する因子を解決するように、これらの臨界構造体及び非臨界構造体を分離する真空間隙によって形成される。
【0028】
有利な点として、この第2の実施形態によれば、上記基板は、隣接する非臨界構造体へ向かう非臨界構造体からの放射を最小化し、反対側の臨界構造体へ向かう放射を最大化するように、2μm未満の距離によって互いに分離されている。
【0029】
発明の別の一般的な特徴によれば、上記サブ画素は、たとえば、1つずつが赤色、緑色、及び、青色である3つのサブ画素で構成されることがあり、上記外部ユニットだけに位置している上記臨界サブ画素は青色で放射するサブ画素であり、上記内部ユニットだけに位置している他のサブ画素は赤色及び/又は緑色で放射するサブ画素である。
【0030】
特に第1の実施形態及び第2の実施形態に共通している発明の別の特徴によれば、上記臨界サブ画素以外のサブ画素の1つずつの放射構造体は、連続して、少なくとも二色の非臨界サブ画素を形成するように、この放射構造体に印加される電圧に依存して、両方共に臨界サブ画素の波長より高い波長を有している少なくとも2つの異なる放射線を選択的に放射することが可能である。
【0031】
青色、赤色、及び、緑色で放射するサブ画素の上記実施例では、各非臨界サブ画素の放射構造体は、この場合、二色サブ画素を実現するように、低電圧では赤色で放射し、より高い電圧では緑色で放射する2つの異なる放射材料を備えることがある。
【0032】
これらの少なくとも二色の非臨界サブ画素は、発明の第1の実施形態では、対応するエレクトロルミネッセンスユニットのための内部電極の半数を必要とすることによりエレクトロルミネッセンスユニットのアドレス指定を簡略化し、発明の第2の実施形態では、内部基板の構造をもまた簡略化する利点を有していることに注目されたい。
【0033】
一般に、本発明による表示装置全体として、表示装置は種々の手段、特に、
第1の実施形態の場合、たとえば、ガラス又はプラスチックで作られ、光学カラーフィルタが画面に接合された面に設けられるか、又は、画面が上記無機透明材料から形成され得る1つ以上の封止層によって覆われている透明保護シートの結合と、
第2の実施形態の場合、2つの基板の間に堆積され、上記密閉封止を形成する接着剤のビードと、
を含む種々の手段によって密閉封止されることに注目されたい。
【0034】
発明の他の利点、特徴及び詳細は、単に一例として挙げられた添付図面を参照して、後に続く明細書の残りの部分から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】エレクトロルミネッセンス画面の赤色、緑色及び青色の3つのサブ画素の従来技術による配置の略平面図である。
【図2】エレクトロルミネッセンス画面の2つの重ね合わされたユニットに分散した3つのサブ画素の発明の原理による配置の略平面図である。
【図3】図2のスタッキング技術を使用する発明の第1の実施形態による表示装置の部分略断面図である。
【図4】図3の変形による表示装置のスタックの基本コンポーネントの略平面図である。
【図5】発明の第2の実施形態による表示装置の部分略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図2〜5を参照して後述される発明による表示装置1、1’、101は、既知の方法で、通常はシリコン製であり、各画素をアドレス指定する役目を果たす集積回路構造体の上に載る画素のマトリクスで被覆されている少なくとも1つの基板2、102a、102bを備え、おそらく、たとえば、画素毎に、2つのトランジスタとコンデンサ又はより複雑な回路を備え、その構造体は介挿されている有機膜(単層又は多層、図示せず)多層放射構造体と接触している電極3〜6の間に電位差を確立するために電気接続領域(図示せず)に接続されている、OLED表示装置である。後述されるように、これらの電極3〜6は、それぞれが、アノード又はカソードとしての役目を果たし、これらのうちの少なくとも1つは画素によって放射された光を透過し、この放射された光を装置1、1’、101の外部へ放射することができる。これらの電極3〜6の間に介挿されている有機膜に関して、有機膜は、電極3〜6に由来し、励起子、したがって、発光を生成するように再結合される電子及び正孔を移動させるために設計されている。
【0037】
図1に示されるのは、3つのサブ画素R、G、B(それぞれ、赤色、緑色及び青色)の既知配置であり、OLED画面マトリクスの各画素に対し、これらのサブ画素の堆積、及び/又は、各サブ画素の電源のためのアドレス指定回路の堆積のため使用されるシャドウマスクのアパーチャのサイズによって課される寸法限界1まで縮小されているサブ画素R及びサブ画素Gの波長を犠牲にして、最短波長を有しているサブ画素Bのサイズを最大化することが求められている。このようにして、知られているように、経年変化に対して最も敏感であるサブ画素B内の電流密度は、最大放射面積を有しているこのサブ画素Bの耐用年限を最大化するように最小化され、そして、一連の3つのサブ画素R、G及びBの方向における寸法Lをもつ画素が得られる。
【0038】
図2に示されているのは、内部(すなわち、画面の放射面の反対側)及び外部(すなわち、この放射面に隣接する側)の2つのOLEDユニットのスタックを使用する発明による一般的な原理であり、各画素に対して、青色サブ画素B’は外部ユニットだけに位置し、赤色サブ画素R及び緑色サブ画素Gは内部ユニットだけに位置し、サブ画素B’の放射面積は、2つの他のサブ画素R及びGのそれぞれの放射面積の和以上である。図2において分かるように、このサブ画素B’は、各端部で、サブ画素R及びGの組のエッジを越える点と、サブ画素B’は、図1の対応する寸法Lに対して縮小された寸法L’を有している点が有利である。
【0039】
望ましい色に依存して、サブ画素R、G及びB’は、独立に、又は、同時に誘起されることがあり、この場合、重ね合わされたサブ画素B’は、活性化されていないとき、サブ画素R及びGの放射を変更しないように透明である。一旦活性化されると、サブ画素B’は、必要に応じて、サブ画素R及びGの放射線に加えられる放射線を放射する。
【0040】
このスタックにおけるサブ画素R、G及びB’のこの特有の配置は、サブ画素B’の最大面積の選択と組み合わされて、この青色サブ画素の耐用年限を最適化すること、及び、解像度を増加させることの両方を可能にする。特に、画面の放射面に隣接するこのサブ画素B’の場所は、サブ画素R及びGによる青色光子のフラックスの再吸収を回避することにより、青色光子のフラックスがそのまま保存されることを可能にする。
【0041】
指摘として、発明による画面における各サブ画素の面積は、約400μmから約90,000μmまで変化することがある。
【0042】
図3に示された発明の第1の実施形態による表示装置1は、単一のアクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板2を備え、各画素は、
サブ画素B’の放射構造体Eに適用され、かつ、たとえば、反射カソードを形成する外部電極3と、
この基板2に適用され、離間した(好ましくは、ある間隙によって分離されている)サブ画素R及びGの放射構造体E及びEがそれぞれ堆積され、かつ、たとえば、透明アノード又は半透明アノードを形成する2つの内部又は裏面電極4及び5と、
これらの放射構造体E及びEの上に載せられ、放射構造体Eが適用され、かつ、たとえば、内部OLEDユニットUのためのカソード及び外部OLEDユニットUのためのアノードの両方を形成する中間電極6と、
によって画定されている。
【0043】
図3において認められるように、放射構造体Eのエッジは、放射構造体Eのエッジ及び放射構造体Eのエッジと実質的に位置合わせされているが、図4に示されるように、この位置合わせは、装置1’に対する近似に過ぎない。この問題に関して、この正確な位置合わせは、(サブ画素R、G、B’の輝度は誘起された所望の色及び画素に応じてアドレス指定することによって調節されることがあるので)比色分析の観点でも、又は、(照明される最大基本面積は画素のサイズより大きくないので)解像度の観点でも不可欠(本質)ではないことに注目されたい。
【0044】
変形として、表示装置1又は1’は、1つではなく、重ね合わされ、そして、無機透明電気的絶縁層によって分離され、各画素に対し、放射構造体Eの下、及び、2つの構造体E及びEの上にそれぞれ塗布されている2つの内部及び外部の中間電極を備えることができる。好ましくはALD技術を使用して堆積されるこの絶縁層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、及び、窒化珪素からなる群より選択された材料で作られる場合に有利であり得る。
【0045】
このスタック構造において、2つの内部電極及び外部中間電極はそれぞれに透明又は半透明アノードを形成し、内部中間電極及び外部電極は、その場合に、それぞれ、反射カソードを形成することがあり、エレクトロルミネッセンスユニットU及びU毎に、下部アノードと上部アノードとの間に介挿される放射構造体E、E又はEの好ましい配置見つけることを可能にする。
【0046】
この第1の実施形態の別の変形によれば、サブ画素R及びGは、低電圧では赤色で放射し、より高い電圧では緑色で放射する特性を有している単一の二色サブ画素R/Gとして作られる。この目的のため、各二色サブ画素に対し、赤色及び緑色のそれぞれで放射する少なくとも2つの異なる材料で構成されている多層放射構造体が使用され、この多層放射構造体は、たとえば、
アノード/pドープトHTM014/NPB/IrppyドープトTMM004/TER04ドープトTMM004/Alq3/nドープトBphen/カソード、
のように構成され、ここで、材料Alq3及びBphenはAldrichから入手可能であり、他の材料はMerck Germanyから入手可能である。
【0047】
R/G二色サブ画素を用いるこの変形は、4個の独立した電極を必要とする図3及び4のユニットと比較して、OLEDユニットの1つずつのアドレス指定が簡略化されることを可能にすることに注意を要する。
【0048】
一般に、発明の第1の実施形態を参照して、実現されたスタックは、出力光カップリングを増加するように青色サブ画素の光キャビティを特に最適化することを可能にすると共に、共通の透明層の堆積を望む場合、他の下にある赤色サブ画素及び緑色サブ画素に対して妥協点が見出されることに注意されたい。
【0049】
さらにまた、発明の第1の実施形態に対し、中間電極又は各中間電極は構造化されるべきであり、この構造化は、たとえば、従来型のシャドウマスクを用いるこの電極の堆積により実現可能であることに注意を要する。
【0050】
図5に示された発明の第2の実施形態による装置101は、密閉封止を形成する接着剤110の周辺ビードによって結合されている外部及び内部の2つの外部アクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板102a及び内部アクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板102b(一般に、当業者によってバックプレーンと称される)を備える。外部基板102aには、他の基板102bに向けられた面に、規則的に離間し、それぞれが電極のペア(図示せず)と接触する青色サブ画素を形成する青色で放射する構造体E’が設けられ、内部基板には、規則的に離間し、それぞれが電極のペア(図示せず)と接触する赤色及び/又は緑色サブ画素を形成し、電気絶縁体を形成する間隙によって構造体E’から離間している放射構造体E’及びE’が設けられている。これらの基板102a及び102bによって形成された2つのマトリクスは、それぞれ、独立した電気的電源回路(図示せず)に接続されている。
【0051】
放射構造体E’と放射構造体E’及びE’との間のこの空間的分離は、各青色サブ画素の効率を限定する因子がこれらの構造体E’、E’及びE’の間の光干渉を制御することによって解決されることを可能にする点で有利である。
【0052】
前述されているように、放射構造体E’、E’及びE’が堆積されている2つの基板102a及び102bの使用は、これらの構造体E’、E’及びE’を正確に位置合わせすることが必要ではなく、かつ、画面の封止が接着剤110のビードだけを用いて非常に簡単に実現されるので、装置101の製造に全く不利益を課すことはない。
【0053】
この装置101は、また、ユニットU及びUに非常に高い解像度及び低い破壊的動作モードを提供する。なぜならば、これらの2つのユニットU及びUの放射構造体の空間的分離が、一方で、放射構造体E’に対し特に顕著である効率を限定する因子が解決されることを可能にし、そして、他方で、これらの非常に敏感な構造体E’がより低い電流密度、したがって、より長い耐用年限で並列に作動させられることを可能にする。
【0054】
有利な点として、基板102a及び102bは、2μm未満の距離によって互いに分離され、その結果、反対側にある構造体E’に放射を集中するように隣接する構造体E’又はE’へ向かう構造体E’又はE’の放射を最小化することにより視差誤差を回避する。
【0055】
当然ながら、図5のこの表示装置101は、基板102a及び102bに堆積された2つのマトリクスに固有である電気的電源回路、すなわち、単一マトリクスを有している装置1、1’と比較して2倍の数の素線(strands)を用いる電気的電源回路(ドライバと称される)の接続を必要とする。
【0056】
発明の第1の実施形態の変形として、そして、前述されているように、有利な点として、バックプレーン102b上の赤色サブ画素及び緑色サブ画素の離間した配置の代わりに、そして、代用して、印加電圧に依存して赤色又は緑色のいずれかでR/G二色サブ画素放射を行うことが可能である。このようなR/G二色放射構造体は、たとえば、以下の構造:
バックプレーン/反射電極/pドープトHTL/EBL/緑色EL/赤色EL/HBL/nドープトETL/(半)透明電極
を有することがあり、ここで、HTLは正孔移動層の略語であり、EBLは電子阻止層の略語であり、ELは発光層の略語であり、HBLは正孔阻止層の略語であり、ETLは電子移動層の略語である。
【0057】
青色で放射する構造体E’に関して、この構造体は、たとえば、以下の構造;
バックプレーン/(半)透明電極/pドープトHTL/EBL/青色EL/HBL/nドープトETL/(半)透明電極
を有することがある。
【0058】
上記実施例では、2つの放射構造体(青色外部構造体及び赤色/緑色内部構造体)の移動層(HTL及びETL)はドープされているが、これは必須ではないことに注意を要する。よって、たとえば、2つの放射構造体(青色構造体が有利である)のうちの少なくとも一方は非ドープでもよい。
【0059】
半透明電極、及び、これらのサブ画素を受承する光空洞は、電極間の間隙及びダイオード間の距離を用いて、これらのOLEDユニット及び発光コーンの効率を最大化するように、最適化され得る。
【0060】
これらの2つのバックプレーン102a及び102bの放射構造体正確な位置合わせは、上部マトリクス102aの画素間領域が下部マトリクス102bの画素によって放射されたフラックスを隠すので、単一バックプレーン画面ほど、総輝度の最適化の考慮を除いて、不可欠ではないことに注意を要する。しかし、間違った位置合わせは、装置101における解像度の損失を誘発しない。
【0061】
付加的に、有利な点として、各青色サブ画素に対し、各緑色サブ画素又は赤色サブ画素の放射面積の2倍の大きさである放射面積が選択される。画面の解像度は、この場合、各青色サブ画素のサイズに対応し、画面のアドレス指定は、2つのバックプレーン102a及び102bの解像度差を補償するようにサブ画素間のこのサイズ差を考慮する。
【0062】
要約すると、本装置101の主要な利点は、サブ画素の正確な位置合わせの必要性による不利益を課されることなく、これらの2つのバックプレーン102a及び102bによってもたらされるかなりの精細度の増加と、さらにOLEDユニット耐用年限のかなりの増加である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンス放射面と、装置の内側へ向かって、画素のマトリクスで覆われた少なくとも1つの基板(2、102a、102b)とを備え、複数のエレクトロルミネッセンスユニット(U及びU)のスタックを備え、各画素が少なくとも3つの別々に着色されたサブ画素(R、G、B’)により構成されている多色電子表示装置(1、1’、101)であって、
画素毎に、最短放射波長λを有する前記サブ画素、すなわち、臨界サブ画素(B’)は、前記ユニットのうちの一方、すなわち、前記放射面に隣接する外部ユニット(U)だけに位置付けられ、λより長い波長で放射する各他のサブ画素(R、G)は、前記外部ユニットに対して内部にあり、前記基板に隣接するユニット(U)だけに位置付けられ、
前記臨界サブ画素(B’)の面積は、各他のサブ画素(R、G)の面積より大きいことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記臨界サブ画素(B’)は、活性化されていないときには透明であり、活性化されているとき、必要に応じて、各他のサブ画素によって放射された放射線に加えて、前記波長λで放射するように設計されることによって、各他のサブ画素(R、G)から独立に活性化が可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項3】
前記臨界サブ画素(B’)の面積は、少なくとも前記他のサブ画素(R及びG)の面積の和以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項4】
各画素は、前記サブ画素(R、G、B’)をそれぞれに形成するOLED(有機発光ダイオード)のような有機放射線放射構造体(E又はE’、E又はE’、E又はE’)を備え、前記有機放射線放射構造体のそれぞれは、2つの電極(4および6、5および6、6および3)の間に介挿され、これらの2つの電極と電気的に接触し、前記電極のうちの一方(4、5)は透明または半透明であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項5】
前記スタックは、それぞれ外部ユニット(U)及び内部ユニット(U)である2つのエレクトロルミネッセンスユニットで構成され、前記臨界サブ画素(B’)は前記外部ユニット内で放射し、前記内部ユニット内ですべて放射する前記他のサブ画素(RおよびG)の上に積み重ねられていることを特徴とする、請求項4に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項6】
単一のアクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板(2)を備え、各画素は、前記臨界サブ画素(B’)の放射構造体、又は、臨界構造体(E)上に設けられた外部電極(3)と、離間している前記他のサブ画素(R及びG)の前記放射構造体、又は、非臨界構造体(E及びE)が堆積されている基板上に設けられた複数の内部電極(4及び5)とによって画定され、少なくとも1つの中間電極(6)が前記非臨界構造体の上、及び/又は、前記臨界構造体の下に塗布されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置(1、1’)。
【請求項7】
画素毎に、前記臨界構造体(E)の下と、該臨界構造体が実質的に位置合わせされている前記非臨界構造体(E及びE)の上との両方に設けられている単一の中間電極(6)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の装置(1、1’)。
【請求項8】
好ましくは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、及び、窒化珪素よりなる群から選択された材料で作られている少なくとも1つの透明電気的絶縁層によって分離され、かつ、重ね合わされている内部電極及び外部電極の2つの中間電極を備え、前記中間電極は、それぞれ、画素毎に、前記臨界構造体(E)の下、及び、前記非臨界構造体(EおよびE)の組の上に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記内部電極及び前記外部中間電極は、それぞれが、透明アノード又は半透明アノードを形成し、前記内部中間電極及び前記外部電極は、それぞれが、反射カソードを形成することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各々がアクティブマトリクス基板又はパッシブマトリクス基板のいずれかであり、前記装置のための密閉封止を形成する接着剤(110)のビードによってそれらの周囲で互いに接合されている2つの基板である外部基板(102a)及び内部基板(102b)を備え、前記外部基板には、それぞれが臨界サブ画素(B’)を形成する規則的に離間した臨界放射構造体(E’)が設けられ、前記内部基板には、それぞれが前記他のサブ画素(R、G)のうちの少なくとも1つを形成し、電気的絶縁体によって前記臨界構造体から分離されている規則的に離間した非臨界放射構造体(E’、E’)が設けられ、これらの基板によって形成されている前記2つのマトリクスは独立した電源供給回路に接続されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置(101)。
【請求項11】
前記基板(102a及び102b)は、隣接する非臨界構造体へ向かう非臨界構造体(E’、E’)からの放射を最小化し、反対側にある前記臨界構造体(E’)へ向かう放射を最大化するように、2μm未満の距離で互いに分離されていることを特徴とする、請求項10に記載の装置(101)。
【請求項12】
前記臨界サブ画素(B’)以外の前記サブ画素(R、G)の各々の前記放射構造体(E又はE’、E又はE’)は、連続して、少なくとも二色の非臨界サブ画素を形成するように、前記放射構造体に印加される電圧に依存して、両方共に前記臨界サブ画素の波長(λ)より高い波長を有している少なくとも2つの異なる放射線を選択的に放射することができることを特徴とする、請求項5から11のいずれか一項に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項13】
前記サブ画素は、それぞれが赤色、緑色、及び、青色である3つのサブ画素(R、G、B’)で構成され、前記外部ユニット(U)だけに位置付けられている前記臨界サブ画素(B’)は青色で放射するサブ画素であり、前記内部ユニット(U)だけに位置付けられた前記他のサブ画素(R及びG)は赤色及び/又は緑色で放射するサブ画素であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1、1’、101)。
【請求項14】
各非臨界サブ画素(R、G)の前記放射構造体は、低電圧では赤色で放射し、より高い電圧では緑色で放射することができる2つの異なる放射材料を含むことを特徴とする、請求項12及び13に記載の装置(1、1’、101)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−526723(P2011−526723A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515519(P2011−515519)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000714
【国際公開番号】WO2010/000976
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】