エレクトロルミネッセンス素子
【課題】発光効率が高く低電圧駆動が可能な有機EL素子を提供。
【解決手段】エレクトロルミネッセンス素子は、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分、および第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3成分の混合物を含有する発光層とを備える。第1、第2および第3成分の少なくとも1つは、他の第1、第2および第3成分とタイプIIの半導体界面を形成する。
【解決手段】エレクトロルミネッセンス素子は、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分、および第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3成分の混合物を含有する発光層とを備える。第1、第2および第3成分の少なくとも1つは、他の第1、第2および第3成分とタイプIIの半導体界面を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子に関し、一層詳細には、発光成分が有機材料であるエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光成分が有機材料であるエレクトロルミネッセンス素子は、その記述内容を参照して本明細書の一部としたPCT/WO90/13148号および米国特許第4,539,507号の両文献に記載されている。これらの素子の基本構造は、2つの電極間に介装された発光有機層、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の膜にある。一方の電極(陰極)は負電荷キャリア(電子)を注入し、他方の電極(陽極)は正電荷キャリア(正孔)を注入する。電子と正孔は、有機層で結合して光子を発生する。PCT/WO90/13148号においては、有機発光材料はポリマーである。米国特許第4,539,507号においては、有機発光材料は、低分子材料として知られる部類の材料、例えば、(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム(Alq)である。実際の素子では、典型的には電極の一方が透明であり、このため、光子を素子外へと導出することができる。
【0003】
これらの素子は、ディスプレイ用として大きな可能性を秘めている。しかしながら、種々の重大な問題がある。その1つは、具体的には電力効率および外部効率として測定される素子の効率である。その他の問題点は、ピーク効率が得られる際の電圧を低減することである。
【0004】
前置きとして、本明細書でエネルギ準位、仕事関数等に関して述べる値は、一般的に、絶対的な値よりもむしろ例示的な値である。ITOの仕事関数は広範囲に変動可能である。文献に記載された数字は、4〜5.2eVの間の範囲であることを示唆している。本明細書で用いた4.8eVは、絶対値ではなく例示的な数値である。本出願人はケルビンプローブ測定を行なったが、その測定により得られた4.8eVは妥当な数値であると思われる。しかしながら、実際の数値は、ITO成膜過程や履歴に依存することは良く知られている。有機半導体にとって重要な特性は、電子エネルギ準位の真空準位を基準に測定された結合エネルギ、特に、最高被占分子軌道(HOMO)準位および最低空分子軌道(LUMO)準位である。これらは、光電子放出を測定することや、特に酸化還元に関する電気化学的ポテンシャルを測定することから概算することができる。そのようなエネルギは、種々の因子、例えば、界面近傍の局所環境等に影響されることはこの分野で周知であり、数値が決定される点は、曲線(ピーク)上、例えば、ピーク、ピーク基底、中間点であるので、かかる数値の使用は定量的よりもむしろ例示的である。しかしながら、相対値は重要である。
【0005】
緑色光を発光する典型的素子の断面を図1aに示す。図1bは素子に沿うエネルギ準位を示す。陽極1は、仕事関数4.8eVを有する透明なインジウム−スズ酸化物(ITO)層である。陰極2は、仕事関数2.4eVを有するLiAl層である。両電極の間はPPVの発光層3であり、該発光層3は、2.7eV付近のLUMOエネルギ準位5と、5.2eV付近のHOMOエネルギ準位6を有する。素子に注入された正孔と電子は、PPV層で放射的に再結合する。素子の本質的ではないが有用な特徴は、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)の正孔輸送層4である(欧州特許第0686662号およびベイヤーAG(Bayer AG)社の「トライアル製品Al 4071に関する暫定的情報シート(Provisional Product Information Sheet for Trail Product Al 4071)」参照)。これは、4.8eVで中間エネルギ準位を与え、ITOから注入された正孔がPPVでHOMO準位に到達することを支援する。
【0006】
他の色の光を発生させるために、異なる光学ギャップを有する他の有機発光材料をPPVに代替して使用することが可能である。しかしながら、大きな光学ギャップでは、可視スペクトルの青色端の近傍になるに従い、HOMO準位はITOの対応エネルギ準位よりも一般的にかなり低くなる。このため、正孔の発光層への注入が困難となる。すなわち、正孔の半導体層への注入を促進するために高い電界を必要とする。この問題の解決法の1つは陽極に他の材料を選択することであるが、ITOが良好な透明性を有すること、低いシート抵抗を有すること、その成膜方法が確立していることから、好適な代替物を見出すことは困難である。別の解決法は、正孔輸送層をさらに付加することにより、陽極と発光層との間に一連の中間エネルギ段階を設けることである。しかしながら、溶液から層を成膜する場合、1つの層が次の層の成膜時に損傷されるのを回避することが困難であり、また、空隙が発生したり、または、増加した中間層の境界の間で材料が取り込まれる(trapped)という問題が惹起される。
【0007】
ダイオード構造内に複数の有機半導体を使用することでかなりの利点が得られる。このような構造の機能に重要なのは、相互に接触する2つの成分の間における界面の電子的構造の性質である。かかる説明の通常の出発点は、エピタキシャル成長第III−V族半導体中に形成されたヘテロ接合でよく知られている。ヘテロ接合は、図2aに示すように、1つの材料(材料A)のHOMO準位およびLUMO準位が第2材料(材料B)のLUMO−HOMOエネルギギャップ内にあるタイプI(図2a)と、図2bに示すように、最高HOMO状態と最低LUMO状態との間の最小エネルギ差がヘテロ接合の異なる側で中間準位であるタイプIIとを含む類に分類される。このようなヘテロ接合の最近傍にある電子−正孔対は、電子が最低LUMO準位を占有し、正孔が最高HOMO準位を占めるように配列すると一般的に考えられる。したがって、電子と正孔は、タイプIヘテロ接合では界面を境として同一側に存在するが、タイプIIヘテロ接合では別々に存在する。このことから、タイプIヘテロ接合では電子−正孔捕獲およびそれに続く発光が予期されるが、タイプIIヘテロ接合では発光が予期されないという重要な結果が導かれる。
【0008】
青色発光層で成分を結合させる試みが種々行なわれた。ホソカワ(Hosokawa)らの「新規なドーパントを有するジスチリルアリーレン発光層からの高効率の青色エレクトロルミネッセンス(Highly Efficient Blue Electroluminescence from a Distyrylarylene Emitting Layer with A new Dopant)」(Appl.Phys.Lett.67 (26),25 December 1995,pp3853-5)では、低分子素子は、BCzVBまたはBczBiが混合されたDPVBiからなる発光層を有する。ドーパントは、ホスト材料に比して僅かに小さなバンドギャップと位置が置き換わったHOMOを有する。
【0009】
観察された発光は、ドーパントからのみである。これは、ドーパント分子に関して励起子の小さなエネルギによりフェルスターエネルギ輸送が惹起されたためと著者らは説明している。ビーガーソン(Birgerson)らの「共役ポリマー混合物からの効率的な青色発光素子(Effective Blue-Light Emitting Device from Conjugated Polymer Blends)」(Adv.Mater.1996,8,No.12,pp982-5)には、共役ポリマー混合物を用いる青色発光素子が記載されている。この素子の発光層は、PDHPTとPDPPとの混合物からなる。これらの材料は、タイプI半導体界面(図2a参照)を形成するので、PDHPTのみから発光が起こる。この文献は、「発光(ゲスト)ポリマーのHOMO−LUMOギャップがホストポリマーのそれよりも小さいことは必要条件であるが、充分条件ではない。付加的な条件は…ゲストポリマーのHOMOエネルギ準位がホストポリマーのそれよりも低位の結合エネルギである必要があり、かつゲストポリマーのLUMOエネルギ準位はホストポリマーのそれよりも高位の結合エネルギでなければならない」と強調する。発光層にタイプI界面を有する他の素子が、欧州特許公開公報第0532798A1号(モリ(Mori)ら)および米国特許第5,378,519号(キクチ(Kikuchi)ら)により記述されている。
【0010】
PPVのシアノ誘導体の高電子親和力を利用する2層EL素子は、米国特許第5,514,878号に記載されているように、高い効率を示した。しかしながら、CN−PPVと可溶性PPV、MEH−PPVで混合物を生成させると、ルミネッセンスの強い消光が観察される。これはホール(J.J.M.Hall)らの「相互浸透性ポリマーネットワークによる効率的なフォトダイオード(Efficient Photodiodes from Interpenetrating Polymer Networks)」(Nature,Vol.376,10 August 1995,pp498-500および米国特許第5,670,791号)に記載されている。
【0011】
ペン(Peng)らの「発光ダイオードのためのオキサジアゾール含有共役ポリマー(Oxadiazole-containing Conjugated Polymers for Light-Emitting Diodes)」(Adv.Mater.1998,10,No.9)には、発光層がオキサジアゾール含有PPVポリマーからなる発光素子が記載されている。オキサジアゾールは、電子輸送を支援するために存在する。「PPVセグメントは、正孔輸送および発光の両方として機能する」ことが言及されている。
【0012】
ガーテン(Garten)らの「2重層構造における部分共役Si含有PPVコポリマーからの効率的な青色発光ダイオード(Efficient Blue LEDs from a Partially Conjugated Si-Containing PPV Copolymer in a double-Layer Configuration)」(Adv.Mater.1997,9,No.2,pp127-131)では、発光素子は、Si−PPVがPVKで稀釈されて凝集が低減された発光層を有する。凝集が低減した際に、この素子の発光効率の増加が観察される。
【0013】
シムロワ(Cimrova)らの「新規なポリマー混合物に基づく青色発光素子(Blue Light-Emitting Devices Based on Novel Polymer Blends)」(Adv.Mater.1998,10,No.9)では、発光層が「殆ど同一のHOMO準位」を有する2種類のポリマーの混合物からなる発光素子が記載されている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3の成分との混合物を含有する発光層とを備え、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0015】
電荷キャリアを受け取り結合させる過程は、他の成分から励起子を受け取ることおよび/または後に励起子を生成する分離した正電荷キャリアと負電荷キャリアを受け取ることを包含する。
【0016】
発光層の上記の1つまたは全ての成分は、好ましくは、発光層においてある程度(例えば、部分的または全体的に)分離した相である。発光層は上記成分のそれぞれの領域を適宜に包含し、その成分は発光層の全体に亘って分散していることが好適である。これらの領域のそれぞれは適切には上記成分の実質的に1つだけを含み、好ましくはその成分によって与えられた電子的特性を有する。その成分は、発光層内で均一に分布していてもよいし、または不均一に分布していてもよい。1種類以上の成分が、発光層と第1または第2電荷キャリア注入層との界面近傍に濃縮していてもよい。濃縮は、その界面近傍でその成分が混合物の他の成分によって実質的に稀釈されていないようであってもよい。したがって、その成分は、その界面で充分な濃度に適切に接近または到達することができる。第1電荷キャリア注入層との界面近傍に、発光層の中央領域および/または第2電荷キャリア注入層との界面近傍に比して第1成分が著しく濃縮していることが好ましい。第2電荷キャリア注入層との界面の近傍に、発光層の中央領域および/または第1電荷キャリア注入層との界面近傍に比して第2成分が著しく濃縮していることが好ましい。発光層における第1成分の濃度は、第1電荷キャリア注入層に指向して増加することもある。発光層における第2成分の濃度は、第2電荷キャリア注入層に指向して増加することもある。
【0017】
発光層が成膜される層を、その濃縮に影響を与えるように処理することもある。発光層が直接的または間接的に第1注入層上に成膜されると、次に第1層を処理することにより、その近傍に第1成分が著しく濃縮することを増進させることができる。発光層が直接的または間接的に第2注入層上に成膜されると、次に第1層を処理することにより、その近傍に第1成分が著しく濃縮することを増進させることができる。この処理は、例えば、表面修飾(例えば、酸素プラズマの適用)または他の層、例えば、第1成分が第2成分よりも大きな親和力を有する材料または第2成分が第1成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層の成膜であってもよい。このような材料は、第1成分または第2成分を含有していてもよい。表面修飾は、発光層が成膜される表面の表面自由エネルギに適切な影響を与える。
【0018】
発光層の2種類以上の成分が前記単一分子の官能性化学ユニットまたは部分として供給されてもよい。層のさらなる成分が上記の単一分子と物理的に混合された1以上のさらなる分子によって供給されてもよい。別の選択肢として、発光層の全成分が物理的にともに混合されるそれぞれの異なる分子によって供給されることも挙げることができる。単一分子が1を超える成分を供給する場合、これらの分子は、コポリマーとして(例えば、主鎖、側鎖、ブロックまたはランダムな形で)結合されることもある。1以上の成分が、他の1以上の成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることもある。単一分子が1を超える成分を供給する場合、その分子によって供給される成分は第3成分を包含することが好ましい。第3成分と、第1成分または第2成分の少なくとも1つとは、コポリマーとして供給されることが適切である。第3成分は、第1および/または第2成分のポロマー鎖のペンダント基として供給されることが適切である。第1および/または第2成分は、第3成分のポリマー鎖の1以上のペンダント基として供給されることが適切である。
【0019】
発光層は、好ましくは第1、第2および第3成分がともに成膜されて形成されたものである。発光層の全成分が可溶性であることが好ましく、全部が同一溶媒または同一溶媒混合物に可溶であることが最も好ましい。これにより各成分を溶液からともに簡便に成膜することができる。発光層は、第1、第2および第3成分をそれぞれ含有する2以上のサブ層を具備することもある。
【0020】
1以上の第1、第2および第3成分は、好ましくは、他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する。電荷を分離しないタイプII界面(ルミネッセンスタイプII界面と呼ぶ)と、電荷を分離してこの機構または他の機構でルミネッセンスを消光する傾向にあるタイプII界面(非ルミネッセンスタイプII界面と呼ぶ)とを区別することができる。本明細書で呼称するタイプII界面は、ルミネッセンスタイプであると好適である。ルミネッセンス界面と非ルミネッセンス界面は、好適な界面を形成すること(2重層または溶液から生成された混合物のように)およびそのルミネッセンス挙動を光学的励起の下で測定することによって容易に特徴付けることができる。ルミネッセンスの絶対的効率を測定する方法は、既に引用したホール(Hall)らの文献に言及されている。
【0021】
本出願人は、このようなタイプII界面の挙動を支配する根源的な原理は、電子と正孔との間の結合エネルギの役割を中性な励起電子の状態(励起子)として生成したときに、考慮に入れることで理解することができると考察する。この「励起子結合エネルギ」は、電子と正孔との間の静電引力に部分的に由来し、分子および重合性半導体において著しく強いと思われる。重合性半導体は、1以上の第1、第2および第3成分を供給するものとして本発明の実施例で第III−V族材料の無機半導体よりも好んで用いられる。励起子結合エネルギは、電子および正孔の両方をヘテロ接合の同一側に保持する作用をする。したがって、電荷の分離を実現するためには、タイプIIの場合につき図2bに例示するように、HOMO準位とLUMO準位(適切な)との間のヘテロ接合でのエネルギのオフセットが励起子結合エネルギよりも大きいことが好適である。
【0022】
全ての第1、第2および第3成分が他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することが最も好ましい。第1成分が第2成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。第2成分が第3成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。第1成分が第3成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。上述したように、これらのいずれかまたは全てが「ルミネッセンスタイプII界面」であることが好適である。このような界面の1つの潜在的な物的構造は、タイプII界面である構造であり、この界面では一方の成分(ルミネッセンス成分が好ましいが、必ずしもそうでなくてもよい)上で形成する励起子が、別々の成分上に解離する電子/正孔対よりも、エネルギ的により有利である。これは通常、比較的小さなオフセットが素子の成分のHOMO準位および/またはLUMO準位の間に存在することに由来すると思われる。多くの好適な実際的な状態では、これは一方の成分のHOMO準位と、この第1成分上における励起子の結合エネルギよりも小さなHOMO準位を有する別の成分のHOMO準位との間のエネルギギャップに由来すると思われる。このような系では、電子は上記した別の成分の低いHOMO準位に注入され、正孔は上記した一方の成分の高いLUMO準位に注入される。しかしながら、電子および正孔にとって、上記した一方の成分上で結合して励起子を生成することは、エネルギ的に効率的なことであるはずである。したがって、素子からの発光を維持しながら、上記の低いHOMO準位と高いLUMO準位で効率的に注入することにより利点がもたらされると思われる(素子の電極に関して材料の選択が大きく広がる)。本出願人は、この効果が発光素子の効率に顕著な増加をもたらすことを見出した。
【0023】
発光層は、他の材料から構成することも、または第1、第2および第3成分と任意の不純物とから構成することも(あるいは本質的に構成することも)可能である。
【0024】
第3成分は、好ましくはスペクトルの可視領域(たとえば赤、緑または青色光)および/または近赤外および/または近紫外領域で発光性である材料である。第3成分の光学ギャップは、1.8eVよりも大きいことが好ましい。素子が使用状態の場合、第1および第2成分からの発光が起こらない(または実質的に起こらない)ことが好ましい。第3成分は、第1および第2成分の光学ギャップよりも小さなギャップを有することが好適である。材料の「光学ギャップ」は、材料が強い光学吸収を示す時の光子エネルギとして測定される。第3材料は、好ましくは、高度に効率的なルミネッセンス材料である。
【0025】
ある条件下では、第1成分が第2成分のLUMOエネルギ準位と第3成分のLUMOエネルギ準位との間のLUMOエネルギ準位を有することが、第2成分と第3成分との間の負電荷キャリアの移動を適切に促進することに有利となることがある。第1成分は、第2成分のHOMOエネルギ準位と第3成分のHOMOエネルギ準位との間のHOMOエネルギ準位を持つことが好適であり、この場合、第2成分および/または第3成分への正電荷キャリアの移動を適切に促進する。第1成分は、第1電荷注入層のエネルギ準位と等しいか、あるいは大きなHOMOエネルギ準位を有することが好ましい。
【0026】
第1、第2および第3成分は、それぞれ有機材料であってもよく、ポリマーが好適であり、共役または部分共役ポリマーであることが好ましい。好適な材料には、PPV、ポリ(2−メトキシ−5(2’−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン)(MEH−PPV)、PPV誘導体(例えば、ジ−アルコキシ誘導体またはジ−アルキル誘導体)、ポリフルオレンおよび/またはポリフルオレンセグメントを取り込んだコポリマー、PPV類および/または関連するコポリマー類が包含される。第1および第2成分は、(第3成分に加えて)発光材料でもよい。第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、その主鎖中におよび/またはペンダント基としてアミン基を含有することが好適である。代替材料には、有機分子発光材料、例えば、Alq3、あるいは従来技術で周知な他の如何なる低昇華分子または共役ポリマーエレクトロルミネッセンス材料が含まれる。第1成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−第2級ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン(TFB)であってもよい。第2成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)(F8)であってもよい。第3成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−メチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン−((4−メチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(PFM)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−メトキシフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン−((4−メトキシフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(PFMO)、あるいはポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)であってもよい(図3参照)。第3成分は、可溶性PPVであってもよい。その他の材料も使用することができる。
【0027】
第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陽極層であってもよい。第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層でもよいし、あるいは陰極層であってもよい。如何なる電極層および/または電荷輸送層も光透過性であることが好適であり、素子からの発光周波数で透明であることが好ましい。
【0028】
陽極層は、4.0eVより大きな仕事関数を有することが好適である。陰極層は、3.5eV未満の仕事関数を有することが好適である。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取りかつ第2発光成分から負電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生させる第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から正電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分の混合物を含有する発光層を備え、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成するエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0030】
上記のタイプII半導体界面は、好ましくは、ルミネッセンスタイプII界面である。
【0031】
発光層の上記した成分は、発光層内である程度(例えば、部分的にまたは完全に)相分離していてもよい。発光層は、上記成分のそれぞれの領域を包含することが好適であり、上記成分が発光層全体にわたって分散していることが好ましい。これらの領域のそれぞれは実質的に上記成分の1つだけから構成されることが好適であり、その成分によって与えられる電子的特性を有することが好適である。その成分は、発光層内で均一にあるいは不均一に分布していてもよい。1つの成分は、発光層と第1または第2電荷キャリア注入層との一方または両方の界面近傍で濃縮していてもよい。その成分は、第1成分であることが好ましい。その成分の濃縮は、これらの界面の一方または両方近くで、混合物の他の成分によって実質的に稀釈されていないような濃縮であってもよい。したがって、その成分は、その界面の一方または両方で充分な濃度に適切に接近または到達することができる。
【0032】
発光層の成分は、単一分子の官能性化学ユニットまたは部分として、あるいは物理的な混合物または異なる分子として供給されてもよい。単一分子が1を超える成分を供給する場合、それらの成分は、コポリマーとして(例えば、主鎖、側鎖、ブロックまたはランダム形で)結合していることもある。1つの成分(第1成分または第2成分のいずれか)が他の成分(第2成分または第1成分のいずれか)のポリマー鎖のペンダント基として供給されることもある。
【0033】
発光層の両方の成分は可溶性であることが好ましく、両方とも同一溶媒に、あるいは同一溶媒混合物に可溶性であることが最も好ましい。これにより、成分を溶液からともに成膜することが容易になる。
【0034】
第1成分は、第2成分のHOMOエネルギより上位の準位のHOMOエネルギを有することが好適である。第2成分は、第3成分のLUMOエネルギよりも上位のLUMOエネルギを有することが好適である。
【0035】
発光層は、他の材料で構成されていてもよいし、または第1および第2成分と任意の不純物とから構成されていても(あるいは、本質的に構成されていても)よい。
【0036】
第1および第2成分のいずれかまたは両方がスペクトルの可視領域(赤、緑または青色)および/または近赤外領域および/または近紫外領域で発光性である材料であることが好ましい。第1および第2成分のいずれか、または両方の光学ギャップは、1.8eVより大きいことが好ましい。
【0037】
第1および第2成分はそれぞれが有機材料であってもよく、ポリマーであることが好適で、共役または部分共役ポリマーであることが好ましい。好適な材料には、PPV、ポリ(2−メトキシ−5(2’−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン)(MEH−PPV)、PPV誘導体(例えば、ジ−アルコキシ誘導体またはジ−アルキル誘導体)、ポリフルオレンおよび/またはポリフルオレンセグメントを取り込んだコポリマー、PPV類および/または関連するコポリマー類が包含される。代替材料には、有機分子光放射材料、例えばAlq3、あるいは従来技術で周知な他の如何なる低昇華分子または共役ポリマーエレクトロルミネッセンス材料が含まれる。第2成分は、例えば、F8またはポリフリンでもよい。第1成分は、例えば、TFBであってもよい。第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができ、主鎖におよび/またはペンダント基としてアミン基を含有する共役ポリマーでよい。その他の材料を用いることもできる。
【0038】
第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陽極層であってもよい。第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陰極層であってもよい。如何なる電極層および/または電荷輸送層も光透過性であることが好適であり、素子からの発光周波数で透明であることが好ましい。
【0039】
陽極層は、4.0eVより大きな仕事関数を有することが好適である。陰極層は、3.0eV未満の仕事関数を有することが好適である。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置する有機発光層と、発光層と1つの電荷キャリア注入層との間に位置する有機電荷輸送層とを備え、輸送層と発光層との間に形成されたヘテロ接合がルミネッセンスタイプIIヘテロ接合であるエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0041】
本発明の第4の態様によれば、第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から反対極性の電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する第3成分である有機発光成分との混合物を含有し、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する発光層を第1電荷キャリア注入層上に成膜する工程と、前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を発光層の上に成膜する工程と、を有するエレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷を受け取りかつ第2発光成分から反対極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から前記反対極性の電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から第1の極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有し、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成する発光層を成膜する工程と、前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を成膜する工程とを有するエレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
【0043】
本発明の第4および第5の態様においては、第1、第2および第3(存在する場合)の成分がともに成膜されることが好ましい。上記第1の極性は正であることが好ましいが、負であってもよい。上記反対極性は負であることが好ましいが、正であってもよい。上記した製造方法は、発光層の相構造に影響を与えるように、発光層を成膜する前に第1電荷キャリア注入層の処理を行なう工程を有することが好ましい。これにより、第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起させることができる。
【0044】
本発明の全ての態様に関し、素子が最大電力効率または外部効率を有する印加電圧は10V以下、好ましくは7V以下、最も好ましくは4V以下である。本発明の両側面につき、素子は、1lm/Wよりも大きく、好ましくは2lm/Wよりも大きく、最も好ましくは6lm/Wよりも大きく緑色発光素子と同等なピーク出力効率を有することが好ましい。本発明の両側面につき、素子は2Cd/Aより大きく、好ましくは5Cd/Aより大きく、最も好ましくは7Cd/Aより大きく緑色発光素子と同等なピーク外部効率を有することが好ましい。
【0045】
本発明の全ての態様に関し、発光層の厚みは、好ましくは400nmよりも小さく、最も好ましくは40〜160nmの範囲である。
【0046】
本発明の評価に重要な側面は、以下にさらに考察するように、慣例的なヘテロ接合の説明が一般的に本明細書で説明する分子および重合性半導体に適用されないことである。より具体的には、タイプIIヘテロ接合は電荷の分離(発光を伴わない)時に有効であるが、効率的な発光を与えることができる場合に重要な状況が存在することが見出された。以下に説明するように、「タイプII」ヘテロ接合の望ましい特性に関するこの可能性は、本出願人が知る限り、従来技術では認められない。さらに、タイプII接合を備え、種々の半導体成分が存在することにより操作電圧が低減することが認められるELダイオードの実現をもたらすような従来技術は、本出願人が知る限り見受けられない。
【0047】
本発明に係る素子は、混合物ではない形態の発光層の発光成分(例えば、第3成分)のフォトルミネッセンス効率を著しく下回ることのないフォトルミネッセンス効率を有する。そのフォトルミネッセンス効率は、30%より大きいことが適切である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1aは、緑色光を発光する典型的素子の断面であり、図1bは、素子に沿うエネルギ準位を示す図である。
【図2】図2a及び図2bは、それぞれ、タイプI、タイプIIのヘテロ接合の半導体界面を示す図である。
【図3】本明細書で説明した幾つかの材料の化学構造である。
【図4】エレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図5】図4の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図6】第2のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図7】図6の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図8】図6の素子の発光スペクトルである。
【図9】第3のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図10】図9の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図11】図9の素子の発光スペクトルである。
【図12】第4のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図13】図12の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図14】図12の素子の発光スペクトルである。
【図15】第5のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図16】図15の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図17】第6のエレクトロルミネッセンス素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図18】図17の素子の発光スペクトルである。
【図19】第7のエレクトロルミネッセンス素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図20】第8のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図21】第9のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図22】さらなる2つのエレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図23】8画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図24】別の8画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図25】TFBを0%から20%含有する一組の素子の特性をプロットしたグラフである。
【図26】発光層がTPDポリマーを含む4画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図27】Bis−DMOS PPVの構造を示す図である。
【図28】さらなる2つの素子の特性を示すグラフである。
【図29】TPD側鎖ポリマーのサイクリックボルタンメトリー分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
添付した図面を参照して本発明を例示的に説明する。
【0050】
幾つかの発光材料の特性を表に示す。
【0051】
【表1】
表1の注記事項:
1.ホール(Hall)ら(上記参照)の方法を用いて測定したフォトルミネッセンス(PL)効率
2.ホール(Hall)らの方法に基づく改良法を用いての測定
3.以下に説明する図25の考察を参照
【0052】
HOMOの位置は電気化学的測定から推定した。光学ギャップはUV/可視光吸収スペクトルから決定した。LUMO位置は、HOMO位置と光学ギャップから概算した。5F8BTは、5%F8BTと95%F8との混合物(重量比)の略記である。
【0053】
青色発光体のうち、F8は、これらの材料中最も高いPL効率を有する。したがって、これらの材料のうち、F8が青色発光層に選択される材料であると思われる。図4は、発光層がF8である素子のバンドダイアグラムを示す。ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−(4−イミノ(ベンジル酸)))−1,4−フェニレン−(4−イミノ(ベンジル酸))−1,4−フェニレン))(BFAの層)を中間正孔輸送層として備える。BFAの代替物としては、PEDOT−PSS(ベーカー AG(Bayer AG))社の製品で英国特許出願第9703172.8号に記載されており、導電率を改良するためにポリスチレンスルホン酸エステルがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、PVK等が挙げられる。正孔輸送層は、電子が陽極へと通過することを阻止する作用をも営む。BFAとF8との間には、タイプII半導体界面が存在する。図5に、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。F8のHOMO準位(5.8eV)がITOの対応するエネルギ準位(4.8eV)に比べ深いので、素子は高い駆動電圧を必要とし、BFAの中間層を有していても電力効率は低い。電力効率は約0.03lm/Wでピークを示し、これは実際の素子で受容される効率より著しく低い。さらに、電力効率が低いために、素子内に激しい加熱があり、その耐用寿命が短い(数分)。図5のデータを測定する間においても、素子は、加熱の結果による再結晶に由来すると確信される急速な減衰を蒙ることが判明した。これは、高いエネルギ発光に比して低いエネルギ発光の増加を伴いながら、素子の発光スペクトルのシフトを引き起す。
【0054】
図6は、第2の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は84%F8、16%PFMの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面がBFAとF8、BFAとPFMとの間およびPFMとF8との間にある。図7は、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。図4と図5の素子とを比較すると、この素子のピーク時の電力効率は増加している(0.03lm/Wに対し0.33lm/W)が、ピーク電力効率時の電圧は低減していない。これは、この素子においては、正孔がF8ホストポリマーに注入され(図4、図5の素子と同様に)、次にPFMセグメント上に局在化したことを示唆する。図8にこの素子の発光スペクトル(ライン10)をF8のスペクトル(ライン11)と比較して示す。図8は、充分な再結合がF8上で起こることを示し、正孔がBFAの正孔輸送層からF8内に注入されたことを示唆するが、正孔と電子の再結合の大部分がF8上でなくむしろPFM上で起こることを示す。それゆえ、局在化した正孔は、電子がPFM領域に励起される適切な確率で電子−正孔対を形成する。この素子のピーク外部効率(図7参照)は略1Cd/Wで、図4および5の素子の略10倍良好である。
【0055】
図9は、第3の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は84%F8、16%TFBの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面が少なくともBFAとF8、TFBとF8との間にある。図10は、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。図4と図5の素子と比較すると、ピーク外部効率の僅かな増加(0.38Cd/Aに)があり、したがってピーク電力効率が低下する(略0.15lm/W)。駆動電圧の低減は、TFBのHOMO準位が正孔輸送材料(BFA)の対応するエネルギ準位に略一致することに由来し、これが発光層のマトリックスへの正孔注入を容易にするものと考えられる。図11にこの素子の放射スペクトルを示す。図は、素子からの発光、すなわち、素子内の放射性再結合がTFBとF8ポリマーとの間で略等しく分割していることを示す。
【0056】
図12は第4の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は、78%F8、15%TFB、7%PFMの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面が少なくともBFAとF8、BFAとPFM、TFBとPFM、TFBとF8およびPFMとF8との間にある。図13は駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。この素子は、著しく向上した性能を示す。ピーク外部効率は約2.4Cd/A、ピーク電力効率は約1.05lm/Wである。ピーク電力効率は約6.5Vでのみ起きる。図14は素子からの発光スペクトルを示し、全ての発光がPMFから起こっていることを示す。これらの結果を図4〜図11の素子の結果と比較して以下の表に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
図12〜図14の素子の高効率は、意外なことに、表1に示すように使用された材料のうち最低のPL効率を有するPFMに起因する発光である。
【0059】
図12〜図14の素子では、TFBが正孔輸送層から発光層のポリマーマトリックスへの正孔を受け取る作用をし、こうして正孔がPFMセグメント上に局在化すると考えられる。したがって、TFBは正孔の発光層への注入を促進する働きをする。TFBのLUMO準位がF8とPFMのLUMO準位の概ね中間であるので、TFBのLUMO準位も、素子がバイアス状態にあるときに、電子のPFMへの輸送速度を促進する中間エネルギ段階を提供するものと思われる。PFMもF8またはTFBよりも僅かに低い光学ギャップを有し、励起子がPFM領域で生成するのをエネルギ的に有利にしている。
【0060】
図12〜図14の素子は、PFMをPFMOで置き換えることによって改作することができる。PFMOは40%のPL効率を有し(表1参照)、得られた素子は、PFMOからの発光を伴う1.5lm/Wまでの電力効率を有する。PFMOはF8およびTFBと同じ光学ギャップを有するので(表1参照)、この結果は、フェルスター輸送が効率を増強すると思料されはするものの、励起子をPFMOポリマーに閉じ込める支配的な機構でないことを示唆する。それよりも、バイアス状態下で正孔輸送層とTFBとの間に整列したエネルギが正孔の発光層マトリックスへの注入を促進させるものと考えられる。これに続いてPFMOの低エネルギHOMO準位への輸送が起こる。しかしながら、TFBが存在する場合、LUMOにPFMOとF8のLUMO準位の略中間のエネルギ段階が存在する。したがって、素子がバイアス状態のとき、TFBはPFMOポリマーセグメントへの電子の輸送を促進する。実際には、図12のように単純に図示されるものではなく、ポリマー界面近傍にエネルギ準位の歪みがあるようである。
【0061】
この解釈は、陰極をLiAlからCaAlに変更した結果から支持される。CaAlは、LiAlに比して高い仕事関数を持つ。発光層マトリックスからの電子の輸送がF8を経由する場合においては、PFMまたはPFMOへの励起が続いて起こるのであれば、仕事関数の高い材料の使用は、仕事関数が依然としてF8のLUMO準位に近いために、効率に影響を及ぼさないはずである。しかしながら、電子がLiAl陰極から注入され、TFBを経由して主としてPFMへ輸送されるのであれば、CaAlとTFBとの間に電子を注入するために障壁を乗り越えるのに高い駆動電圧を必要とすると推察されるので、電力効率は低下すると予想される。本出願人は、LiAlまたはCaAl陰極を有する素子の間に著しい性能の差を観察しなかった。
【0062】
図15は、発光層が別の2成分ポリマーの混合物である緑色発光素子のバンドダイアグラムである。この素子では、発光層は95%F8、5%F8BTの混合物である。ドーパントであるF8BTは、ホストF8とタイプI半導体界面を形成するが、F8とF8BTはともにBFAとタイプII半導体界面を形成する。図16は、駆動電圧に対するこの素子の電力効率と外部高率を示す。電力効率は約2.0〜2.5lm/Wである。図17は、図15および図16に示した素子に類似した素子の駆動電圧に対する電力効率と外部効率を示す。この素子の発光層は、まずF8とF8BTとを19:1の割合で混合し、次にその混合物をTFBと4:1の割合で混合させた(すなわち、(F8:F8BT[0.95:0.05]):TFB[0.75:0.25])3成分混合物の層である。図18は、この素子のバンドダイアグラムを示す。図19は、図15および16に示した素子と類似した素子の駆動電圧に対する電力効率と外部効率を示す。この素子の発光層は、(F8:F8BT[0.95:0.05]:TFB[0.5:0.5])の混合物である。これら3つの素子の結果を以下の表に併せて示す。
【0063】
【表3】
【0064】
TFBの量が50%と60%との間に近づくにつれ、ピーク効率が減少する。TFBを原則的に0%から20%に亘って添加したときに、外部効率が増加する。これは実用上の用途に貴重である。
【0065】
20lm/Wより大きな効率は、正孔輸送層としてPEDOT:PSSの80:20の5F8BT:TFB構造を用いて達成される(図22参照)。
【0066】
上記の青色発光3成分混合物と同様に、TFBは、正孔の発光層ポリマーマトリックスへの注入を促進し、エキシプレックスが生成することを可能にする。緑色発光素子では、内部電界が高いことや、励起子を生成することでエキシプレックスがフェレスター輸送によるエネルギを減少させることから(F8BTはマトリックスで最も狭い光学ギャップを有する)、エキシプレックスはF8BTポリマー上で比較的高い励起子の生成確率を有する。これにより、外部効率と電力効率の向上がもたらされる。
【0067】
この素子の効率は、HOMO準位がTFBとF8の間にある(例えば約5.5eV)1つ以上の他のポリマーを発光層に含有させることによってさらに改善することができる。これは、TFBから発光材料への正孔の励起を惹起させるはずであり、高いバイアス電界では、発光層自身のマトリックスへの正孔の注入を促進する。
【0068】
PFMを緑色発光混合物に含有させる場合、素子効率は著しく減少することに留意すべきである。これは比較的浅いHOMO準位に由来するものと考えられ、浅いHOMO準位は中間としてよりむしろ深い正孔トラップとして作用して、F8BTポリマー上における励起子の生成を阻害する。
【0069】
図20〜図27には、上述した原理の幾つか他の実施例が図示されている。
【0070】
図20では、発光層はF8BT、F8およびPPVの混合物である。F8BT:F8混合物は、PPV上を被覆する陰極とPPVの導電帯との間の電子の輸送を可能にする電子輸送層として作用する。F8BTとF8のPPVへの添加は、通常のAlLi陰極に比して高い仕事関数を有するものであっても、AlLi陰極に比してさらに安定な陰極の使用を可能にする。図18では、陰極はMgであり、その仕事関数は3.5eVである。別の選択肢はAlであり、その仕事関数は4.2eVである。混合物にLUMO準位がF8BT(3.4eV)とF8(2.8eV)との間である第3ポリマーを含めることにより、さらなる改善を実現することができる。
【0071】
図21では、発光層はポリ(パラフェニレン)(PPP)、TFBおよびF8との混合物であり、CaAl陰極を有する。正孔注入の改善に関連する上述の原理が電子注入を改善するためにこの素子に応用されている。
【0072】
図22に、フルオレン系発光系にTFBを添加した効果を示す。図22の上図は、発光層が5F8BTである素子の電圧範囲における輝度と発光強度を示す。図22の下図は、発光層が20%TFBを含む5F8BTである素子の対応するデータを示す。両方の素子ともPEDOT:PSS正孔輸送層を持つ。発光層へのTFBの添加は、ピーク効率を約3.5lm/Wから約20lm/Wに向上させるという結果が得られた。PEDOT:PSSは、上記した素子において、特に「電子グレード」PEDOT:PSSが使用された際に、正孔輸送層としてBFAに比して優れていることが判明した。
【0073】
図23〜図25は、発光成分がフルオレン系でない素子に関するデータを示す。図23は発光層が可溶性PPV発光ビス−DMOS PPV(フェニル環の両側に構造式SiMe2C8H17の2個の側ユニットを有するビスジメチルオクチルシリルポリフェニレンビニレン、図27参照)である8画素素子に関する電圧範囲と輝度(Cd/m2)、電流密度(mA/cm2)、発光効率(lm/W)および外部効率(Cd/A)のプロットを示す。正孔輸送層PEDOT:PSS上に発光層をスピン塗布した。図24は、発光層が25%TFBを含むビス−DMOS PPVである素子に関する対応するデータを示す。TFBの添加は、ターンオン電圧を約3.5Vから約2.5Vに改善し、効率を略2.0lm/Wに増加することが判明した。図25は、発光層がTFBを0%、2%、10%または20%添加した別の可溶性PPV(表1のPPV A)から形成された一連の素子に関する特性プロットを示す。図25の上図は、電圧に対するこれらの素子の電流密度プロットである。図25の中央の図は、電圧に対する素子の輝度のプロットである。図25の下図は、一定電圧5.6Vにおける上記素子の輝度を示す。輝度および電流密度は、TFB含有量の増加と共に増加することが判明した。5.6VにおけるTFBの20%添加は、輝度を0%TFBの素子の約400%以上増加させることが判明した。
【0074】
図26は、発光層が70%の5F8BTとTPDベースの側鎖を持つポリエチレン系ポリマー30%との混合物から形成された4画素素子に関する電圧範囲と輝度(Cd/m2)、電流密度(mA/cm2)、発光効率(lm/W)および外部効率(Cd/A)のプロットを示す。最大効率は8lm/Wであること、その一方で、発光層が5F8BTのみからなることを除いて同様の素子は、最大効率2lm/Wを有することが判明した。図29は、TPDベースの側鎖を有するポリエチレン系ポリマーのサイクリックボルタンメトリー酸化スイープを示し、そのHOMO準位が5.25eV領域、すなわち、発光成分のHOMO準位と正孔注入層のHOMO準位との間にあることを示す。
【0075】
一部の場合では、発光層材料と隣接表面との相互作用に由来する発光層表面近傍で一種類以上の発光層成分の濃縮増加を伴う、ある程度の表面相分離が起こることが期待される。かかる分離の検出に用いられる方法には、タップモードの原子力顕微鏡およびその他の類似の方法が含まれる。
【0076】
図28は、発光層が正孔輸送層PEDOT:PSS上に成膜された5F8BT:TFB(4:1)の混合物から形成された一対の素子に関する電圧範囲と輝度のプロットを示す。一方の素子(ラインA)では、発光混合物を直接PEDOT:PSS上に成膜した。他方の素子(ラインB)では、TFBの中間層をPEDOT:PSS上に直接成膜し、次に発光混合物をその層の上に成膜した。図28から、TFB中間層を有する素子が固定電圧で著しい輝度の増加を示すことが諒解される。これは、TFB成分の中間TFB層への引力が5F8BTへの引力よりも大きいため、結果として、ブレンド内にTFBの濃度勾配が生成することに由来すると考えられる。TFBは、混合物内で正孔輸送/捕獲成分として作用するので、そのような成分が発光層の正孔注入層側に指向して、すなわちPEDOT:PSSとの界面のより近傍に多く濃縮することは有利であると予想される。このような濃度勾配を増進させる他の方法や発光層の電子注入層側に指向して電子輸送/捕獲成分の類似した濃度勾配を創出することにより類似した結果が得られると考えられる。
【0077】
TFB中間層の有効性の例示として、以下の試験を行った4種類の素子に見出されたピーク発光効率を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
上述したような多成分層は、単一層として成膜されることが好ましい。これを実現するためには、成膜前または成膜時に層の構成成分を結合させることが好ましい。この場合、結合には、例えば、成分を物理的に混合すること、あるいは(例えば)1種類以上の成分を取り込んだ分子を生成させることで化学的混合物を形成することによって、成分を含有する材料を調製することが包含される。
【0080】
成分が化学的に結合している材料の一例は、F8、F8BTおよびTFBのターポリマー、例えば、(5F8BT):TFB[80:20]である。この材料は、次の方法によって調製することができる。還流凝縮器(窒素ラインに接続した)と機械的撹拌器とを装着した容積500mlの丸底フラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−二ボロン酸1,2エチレングリコールジエステル(4.773g、9.0mmol)、2,7−ジブロモベンゾチアジアゾール(0.1504g、0.51mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(3.584g、6.54mmol)、N,N’−ジ−(4−ブロモ)フェニル−4−(第2級ブチル)アニリン(0.8923g、1.945mmol)、90mlのトルエン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(31.2mg)および炭酸ナトリウム2モル溶液20mlを導入する。混合物を迅速に撹拌し、115℃(油浴温度)で18時間加熱する。さらに、100mlのトルエンをブロモベンゼン(1ml)とともに添加した後、混合物を油浴115℃で3時間撹拌する。次に、フェニルボロン酸(1.5g)を加え、混合物を1時間その温度で撹拌して、室温まで冷却する。反応混合物を4リットルのメタノールにゆっくり注入してポリマーを析出させる。次に、ポリマーを成膜させて(例えば、溶液から)発光素子の発光層を作成する。一般的に、適切なターポリマーを調製する1つの過程では、2成分を提供するモノマーを部分的に反応させて、次に第3成分を提供するモノマーを加えて重合反応を継続させる。コポリマーは如何なる適宜な形態、例えば、ランダム、ブロック、分枝コポリマーであってもよい。
【0081】
発光成分に加えて電荷輸送成分のいずれか、または発光成分に加えて両方の電荷輸送成分を単一分子に結合させることもできる。2成分を結合させた場合、コポリマーが形成され、3成分全てを結合させるとターポリマーが得られる。成分を物理的に混合した場合、相分離が起こるために成分の混合は均質でなく、電荷輸送成分のいずれかまたは両方から発光成分への電荷輸送には効果的ではないと思われる。電荷輸送成分と発光成分とを結合した分子では、これらのユニットは化学的に連結されるために電荷の輸送は、物理的な結合の場合に比して促進されると予想される。正孔輸送成分と発光成分の両方を含有する分子は、電子輸送種と物理的に結合して効率的な発光層を生成する。一方、電子輸送成分と発光成分の両方を含有する分子は正孔輸送種と物理的に結合することができる。電極の一方が特に効果的であれば、その電極に対応する電荷輸送成分を省くことや適切な反対電荷の輸送成分と発光成分とからなる2成分分子を発光層に用いることで、効率的なLED構造を生成することができる。
【0082】
発光層の2成分を化学的に単一分子内に混合した後、その材料と、第2分子によって供給される第3成分とを物理的に混合させることもできる。
【0083】
上述した素子は、通常の方法、すなわち、市販のガラス/ITO基板上にポリマー層を溶液から成膜し、次に、陰極を蒸着することによって作製することができる。例として、図4および図5に示した素子の作製を詳細に説明する。まず、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の濃度0.8%の溶液から、BFAを市販のガラス/ITO基板上にスピンコートで成膜する。試料を、窒素ガス中において80℃で30分間加熱してポリマー層を乾燥する。次に、溶媒としてキシレンが混合された濃度1.6%の溶液から発光層をスピンコートする。BFA層および発光層の目標厚みは、それぞれ、10〜80nmおよび60〜200nmであり、標準的な厚みはそれぞれ65nmおよび95nmである。最後に、厚みが20nmのLi層、続いてAlの200nm層を蒸着することにより陰極を形成する。窒素等の不活性ガス雰囲気中で、素子をガラス/エポキシ封入剤内に封入する。
【0084】
上述した原理を具体化する素子に代替材料を使用することもできる。例えば、陽極の代替材料には、酸化スズ(TO)およびフッ素化TOが含まれる。また、正孔輸送層の代替材料にはPEDOT:PSSおよびポリアミンが含まれ、発光層の代替材料にはPPVおよびMEH−PPVが含まれ、陰極の代替材料にはLi、Ba、Mg、Ca、Ce、Cs、Eu、Rb、K、Sm、Na、Sm、Sr、Tb、Ybおよびこれらの金属の2種以上の合金、これらの金属の1種以上のフッ化物、炭化物、酸化物または窒化物(例えば、CsF、LiF)、これら金属の1種以上とAl、Zr、Si、Sb、Sn、Zn、Mn、Ti、Cu、Co、W、Pb、In、Agの1種以上の金属との合金(例えば、LiAl)が含まれる。陰極は透明であってもよい。正孔輸送層はなくともよく、あるいは1を超える正孔輸送層があってもよい。陰極と発光層との間に1以上の電子輸送層があってもよく、該電子輸送層は、陰極から発光層への電子の輸送を促進し、かつ/または正孔が陰極へ通過することを阻止する働きをする。
【0085】
正孔輸送層の構成材料は、混合物でもよい。例えば、PFM様ポリマー、ただしカルボン酸基を包含させることによってBFAとしての溶液の溶解力が調整されたポリマー、が混合されたBFAでもよい。また、電子輸送層も、F8とF8BTとの混合物等、混合物から構成されていてもよい。
【0086】
高効率的な青色および緑色発光素子を提供することに加え、上述した原理は、長波長(例えば、赤色)発光素子にも用いることができる。LUMO準位が深いポリマーは、より高い仕事関数を有するとともにより安定な金属を陰極に使用することを可能にし、高いPL効率を可能にするので、上記したような素子に極めて望ましい。しかしながら、これらのポリマーは、それ相応の深いHOMO準位を有する。上述した原理は、その深いHOMO準位にもかかわらず、これらのポリマーを利用可能にするものである。
【0087】
多成分発光層を有する素子を製造する場合、成分を成膜する前に混合することが適切である。しかしながら、成分の電子効果を最適化して上述した原理を活用するためには、発光層中にそれぞれの成分が分散した領域が存在するように、発光層の成分が部分的または完全に相分離していることが好ましい(米国特許第5,760,791号を参照し、該米国特許第5,760,791号の開示内容を本明細書に盛り込むものとする)。電荷キャリアが一方の成分から他方の成分へ移動することが所望される場合、混合層の構造(特に、これら成分の割合およびそれぞれの領域の大きさ)は、好ましくは、これらの成分の間に適切な界面を供給するようなものでなければならない。それぞれの成分の領域は、層の全体に亘って均一に分散していることもあり、1種類以上の成分が発光層の電荷キャリア注入層との一方または他方の界面近傍に濃縮していても有利であることもある。発光層の陽極側近傍で正孔注入材料の濃度が大きい(かつ陰極側近傍で少ない)ことが望ましいと思われる。また、発光層の陰極側近傍で電子注入材料の濃度が大きい(かつ陽極側近傍で少ない)ことが望ましいと思われる。
【0088】
混合層の分散特性(層全体にわたる種々の成分のプロファイルを含めて)に影響を与えるために、幾つかの技術が用いられる。1種類以上の成分と素子の他方の層(特に、発光層がその上に成膜された層)との間の表面の相互作用は、発光層にある程度の相分離を促進させる。正孔輸送材料または電子輸送材料の適切な一方が、発光層が成膜される層上に優先的に引き寄せられるように、あるいは優先的に排斥されるように、成膜条件を整えることが好ましい。したがって、発光層が正孔注入陽極層上に成膜される場合、正孔注入材料が優先的にその表面に引き寄せられること、および/または電子注入材料が表面から優先的に排斥されることが好ましい。これに対して、発光層が電子注入陰極層上に成膜される場合、上記と反対の現象を引き起こさせることが好ましい。発光層がその上に成膜される材料の表面は、優先的な効果を引き起すように処理されるか、あるいはそのように選択される。発光層の2種類以上の成分が同一分子内で結合する場合、相分離(または凝縮)あるいは均一性の望ましい状態を促進させるために、それらの成分が結合する方法が使用される。例えば、望ましい効果を達成するために、結合分子は、適切なランダムコポリマー、ブロックコポリマーあるいは分枝コポリマーとして合成される。相分離に関連するその他の因子には、使用される溶媒(例えば、クロロホルムまたはキシレン)、溶媒の蒸気圧、分子量、成分の表面エネルギ(相互に関しておよび/または発光層が成膜される自由表面に関して)、多分散性、成分体積分率、構造的特徴などが含まれる。
【0089】
本発明は本明細書に明示的または暗示的に開示された如何なる特徴あるいは特徴の組み合わせ、またはその一般化をここに記載された発明との関連に関係なく包含するものである。これまでの説明から、種々の変更が本発明の範囲内において為されることは当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0090】
1…陽極 2…陰極
3…発光層 4…正孔輸送層
5…LUMOエネルギ準位 6…HOMOエネルギ準位
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子に関し、一層詳細には、発光成分が有機材料であるエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光成分が有機材料であるエレクトロルミネッセンス素子は、その記述内容を参照して本明細書の一部としたPCT/WO90/13148号および米国特許第4,539,507号の両文献に記載されている。これらの素子の基本構造は、2つの電極間に介装された発光有機層、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の膜にある。一方の電極(陰極)は負電荷キャリア(電子)を注入し、他方の電極(陽極)は正電荷キャリア(正孔)を注入する。電子と正孔は、有機層で結合して光子を発生する。PCT/WO90/13148号においては、有機発光材料はポリマーである。米国特許第4,539,507号においては、有機発光材料は、低分子材料として知られる部類の材料、例えば、(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム(Alq)である。実際の素子では、典型的には電極の一方が透明であり、このため、光子を素子外へと導出することができる。
【0003】
これらの素子は、ディスプレイ用として大きな可能性を秘めている。しかしながら、種々の重大な問題がある。その1つは、具体的には電力効率および外部効率として測定される素子の効率である。その他の問題点は、ピーク効率が得られる際の電圧を低減することである。
【0004】
前置きとして、本明細書でエネルギ準位、仕事関数等に関して述べる値は、一般的に、絶対的な値よりもむしろ例示的な値である。ITOの仕事関数は広範囲に変動可能である。文献に記載された数字は、4〜5.2eVの間の範囲であることを示唆している。本明細書で用いた4.8eVは、絶対値ではなく例示的な数値である。本出願人はケルビンプローブ測定を行なったが、その測定により得られた4.8eVは妥当な数値であると思われる。しかしながら、実際の数値は、ITO成膜過程や履歴に依存することは良く知られている。有機半導体にとって重要な特性は、電子エネルギ準位の真空準位を基準に測定された結合エネルギ、特に、最高被占分子軌道(HOMO)準位および最低空分子軌道(LUMO)準位である。これらは、光電子放出を測定することや、特に酸化還元に関する電気化学的ポテンシャルを測定することから概算することができる。そのようなエネルギは、種々の因子、例えば、界面近傍の局所環境等に影響されることはこの分野で周知であり、数値が決定される点は、曲線(ピーク)上、例えば、ピーク、ピーク基底、中間点であるので、かかる数値の使用は定量的よりもむしろ例示的である。しかしながら、相対値は重要である。
【0005】
緑色光を発光する典型的素子の断面を図1aに示す。図1bは素子に沿うエネルギ準位を示す。陽極1は、仕事関数4.8eVを有する透明なインジウム−スズ酸化物(ITO)層である。陰極2は、仕事関数2.4eVを有するLiAl層である。両電極の間はPPVの発光層3であり、該発光層3は、2.7eV付近のLUMOエネルギ準位5と、5.2eV付近のHOMOエネルギ準位6を有する。素子に注入された正孔と電子は、PPV層で放射的に再結合する。素子の本質的ではないが有用な特徴は、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)の正孔輸送層4である(欧州特許第0686662号およびベイヤーAG(Bayer AG)社の「トライアル製品Al 4071に関する暫定的情報シート(Provisional Product Information Sheet for Trail Product Al 4071)」参照)。これは、4.8eVで中間エネルギ準位を与え、ITOから注入された正孔がPPVでHOMO準位に到達することを支援する。
【0006】
他の色の光を発生させるために、異なる光学ギャップを有する他の有機発光材料をPPVに代替して使用することが可能である。しかしながら、大きな光学ギャップでは、可視スペクトルの青色端の近傍になるに従い、HOMO準位はITOの対応エネルギ準位よりも一般的にかなり低くなる。このため、正孔の発光層への注入が困難となる。すなわち、正孔の半導体層への注入を促進するために高い電界を必要とする。この問題の解決法の1つは陽極に他の材料を選択することであるが、ITOが良好な透明性を有すること、低いシート抵抗を有すること、その成膜方法が確立していることから、好適な代替物を見出すことは困難である。別の解決法は、正孔輸送層をさらに付加することにより、陽極と発光層との間に一連の中間エネルギ段階を設けることである。しかしながら、溶液から層を成膜する場合、1つの層が次の層の成膜時に損傷されるのを回避することが困難であり、また、空隙が発生したり、または、増加した中間層の境界の間で材料が取り込まれる(trapped)という問題が惹起される。
【0007】
ダイオード構造内に複数の有機半導体を使用することでかなりの利点が得られる。このような構造の機能に重要なのは、相互に接触する2つの成分の間における界面の電子的構造の性質である。かかる説明の通常の出発点は、エピタキシャル成長第III−V族半導体中に形成されたヘテロ接合でよく知られている。ヘテロ接合は、図2aに示すように、1つの材料(材料A)のHOMO準位およびLUMO準位が第2材料(材料B)のLUMO−HOMOエネルギギャップ内にあるタイプI(図2a)と、図2bに示すように、最高HOMO状態と最低LUMO状態との間の最小エネルギ差がヘテロ接合の異なる側で中間準位であるタイプIIとを含む類に分類される。このようなヘテロ接合の最近傍にある電子−正孔対は、電子が最低LUMO準位を占有し、正孔が最高HOMO準位を占めるように配列すると一般的に考えられる。したがって、電子と正孔は、タイプIヘテロ接合では界面を境として同一側に存在するが、タイプIIヘテロ接合では別々に存在する。このことから、タイプIヘテロ接合では電子−正孔捕獲およびそれに続く発光が予期されるが、タイプIIヘテロ接合では発光が予期されないという重要な結果が導かれる。
【0008】
青色発光層で成分を結合させる試みが種々行なわれた。ホソカワ(Hosokawa)らの「新規なドーパントを有するジスチリルアリーレン発光層からの高効率の青色エレクトロルミネッセンス(Highly Efficient Blue Electroluminescence from a Distyrylarylene Emitting Layer with A new Dopant)」(Appl.Phys.Lett.67 (26),25 December 1995,pp3853-5)では、低分子素子は、BCzVBまたはBczBiが混合されたDPVBiからなる発光層を有する。ドーパントは、ホスト材料に比して僅かに小さなバンドギャップと位置が置き換わったHOMOを有する。
【0009】
観察された発光は、ドーパントからのみである。これは、ドーパント分子に関して励起子の小さなエネルギによりフェルスターエネルギ輸送が惹起されたためと著者らは説明している。ビーガーソン(Birgerson)らの「共役ポリマー混合物からの効率的な青色発光素子(Effective Blue-Light Emitting Device from Conjugated Polymer Blends)」(Adv.Mater.1996,8,No.12,pp982-5)には、共役ポリマー混合物を用いる青色発光素子が記載されている。この素子の発光層は、PDHPTとPDPPとの混合物からなる。これらの材料は、タイプI半導体界面(図2a参照)を形成するので、PDHPTのみから発光が起こる。この文献は、「発光(ゲスト)ポリマーのHOMO−LUMOギャップがホストポリマーのそれよりも小さいことは必要条件であるが、充分条件ではない。付加的な条件は…ゲストポリマーのHOMOエネルギ準位がホストポリマーのそれよりも低位の結合エネルギである必要があり、かつゲストポリマーのLUMOエネルギ準位はホストポリマーのそれよりも高位の結合エネルギでなければならない」と強調する。発光層にタイプI界面を有する他の素子が、欧州特許公開公報第0532798A1号(モリ(Mori)ら)および米国特許第5,378,519号(キクチ(Kikuchi)ら)により記述されている。
【0010】
PPVのシアノ誘導体の高電子親和力を利用する2層EL素子は、米国特許第5,514,878号に記載されているように、高い効率を示した。しかしながら、CN−PPVと可溶性PPV、MEH−PPVで混合物を生成させると、ルミネッセンスの強い消光が観察される。これはホール(J.J.M.Hall)らの「相互浸透性ポリマーネットワークによる効率的なフォトダイオード(Efficient Photodiodes from Interpenetrating Polymer Networks)」(Nature,Vol.376,10 August 1995,pp498-500および米国特許第5,670,791号)に記載されている。
【0011】
ペン(Peng)らの「発光ダイオードのためのオキサジアゾール含有共役ポリマー(Oxadiazole-containing Conjugated Polymers for Light-Emitting Diodes)」(Adv.Mater.1998,10,No.9)には、発光層がオキサジアゾール含有PPVポリマーからなる発光素子が記載されている。オキサジアゾールは、電子輸送を支援するために存在する。「PPVセグメントは、正孔輸送および発光の両方として機能する」ことが言及されている。
【0012】
ガーテン(Garten)らの「2重層構造における部分共役Si含有PPVコポリマーからの効率的な青色発光ダイオード(Efficient Blue LEDs from a Partially Conjugated Si-Containing PPV Copolymer in a double-Layer Configuration)」(Adv.Mater.1997,9,No.2,pp127-131)では、発光素子は、Si−PPVがPVKで稀釈されて凝集が低減された発光層を有する。凝集が低減した際に、この素子の発光効率の増加が観察される。
【0013】
シムロワ(Cimrova)らの「新規なポリマー混合物に基づく青色発光素子(Blue Light-Emitting Devices Based on Novel Polymer Blends)」(Adv.Mater.1998,10,No.9)では、発光層が「殆ど同一のHOMO準位」を有する2種類のポリマーの混合物からなる発光素子が記載されている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3の成分との混合物を含有する発光層とを備え、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0015】
電荷キャリアを受け取り結合させる過程は、他の成分から励起子を受け取ることおよび/または後に励起子を生成する分離した正電荷キャリアと負電荷キャリアを受け取ることを包含する。
【0016】
発光層の上記の1つまたは全ての成分は、好ましくは、発光層においてある程度(例えば、部分的または全体的に)分離した相である。発光層は上記成分のそれぞれの領域を適宜に包含し、その成分は発光層の全体に亘って分散していることが好適である。これらの領域のそれぞれは適切には上記成分の実質的に1つだけを含み、好ましくはその成分によって与えられた電子的特性を有する。その成分は、発光層内で均一に分布していてもよいし、または不均一に分布していてもよい。1種類以上の成分が、発光層と第1または第2電荷キャリア注入層との界面近傍に濃縮していてもよい。濃縮は、その界面近傍でその成分が混合物の他の成分によって実質的に稀釈されていないようであってもよい。したがって、その成分は、その界面で充分な濃度に適切に接近または到達することができる。第1電荷キャリア注入層との界面近傍に、発光層の中央領域および/または第2電荷キャリア注入層との界面近傍に比して第1成分が著しく濃縮していることが好ましい。第2電荷キャリア注入層との界面の近傍に、発光層の中央領域および/または第1電荷キャリア注入層との界面近傍に比して第2成分が著しく濃縮していることが好ましい。発光層における第1成分の濃度は、第1電荷キャリア注入層に指向して増加することもある。発光層における第2成分の濃度は、第2電荷キャリア注入層に指向して増加することもある。
【0017】
発光層が成膜される層を、その濃縮に影響を与えるように処理することもある。発光層が直接的または間接的に第1注入層上に成膜されると、次に第1層を処理することにより、その近傍に第1成分が著しく濃縮することを増進させることができる。発光層が直接的または間接的に第2注入層上に成膜されると、次に第1層を処理することにより、その近傍に第1成分が著しく濃縮することを増進させることができる。この処理は、例えば、表面修飾(例えば、酸素プラズマの適用)または他の層、例えば、第1成分が第2成分よりも大きな親和力を有する材料または第2成分が第1成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層の成膜であってもよい。このような材料は、第1成分または第2成分を含有していてもよい。表面修飾は、発光層が成膜される表面の表面自由エネルギに適切な影響を与える。
【0018】
発光層の2種類以上の成分が前記単一分子の官能性化学ユニットまたは部分として供給されてもよい。層のさらなる成分が上記の単一分子と物理的に混合された1以上のさらなる分子によって供給されてもよい。別の選択肢として、発光層の全成分が物理的にともに混合されるそれぞれの異なる分子によって供給されることも挙げることができる。単一分子が1を超える成分を供給する場合、これらの分子は、コポリマーとして(例えば、主鎖、側鎖、ブロックまたはランダムな形で)結合されることもある。1以上の成分が、他の1以上の成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることもある。単一分子が1を超える成分を供給する場合、その分子によって供給される成分は第3成分を包含することが好ましい。第3成分と、第1成分または第2成分の少なくとも1つとは、コポリマーとして供給されることが適切である。第3成分は、第1および/または第2成分のポロマー鎖のペンダント基として供給されることが適切である。第1および/または第2成分は、第3成分のポリマー鎖の1以上のペンダント基として供給されることが適切である。
【0019】
発光層は、好ましくは第1、第2および第3成分がともに成膜されて形成されたものである。発光層の全成分が可溶性であることが好ましく、全部が同一溶媒または同一溶媒混合物に可溶であることが最も好ましい。これにより各成分を溶液からともに簡便に成膜することができる。発光層は、第1、第2および第3成分をそれぞれ含有する2以上のサブ層を具備することもある。
【0020】
1以上の第1、第2および第3成分は、好ましくは、他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する。電荷を分離しないタイプII界面(ルミネッセンスタイプII界面と呼ぶ)と、電荷を分離してこの機構または他の機構でルミネッセンスを消光する傾向にあるタイプII界面(非ルミネッセンスタイプII界面と呼ぶ)とを区別することができる。本明細書で呼称するタイプII界面は、ルミネッセンスタイプであると好適である。ルミネッセンス界面と非ルミネッセンス界面は、好適な界面を形成すること(2重層または溶液から生成された混合物のように)およびそのルミネッセンス挙動を光学的励起の下で測定することによって容易に特徴付けることができる。ルミネッセンスの絶対的効率を測定する方法は、既に引用したホール(Hall)らの文献に言及されている。
【0021】
本出願人は、このようなタイプII界面の挙動を支配する根源的な原理は、電子と正孔との間の結合エネルギの役割を中性な励起電子の状態(励起子)として生成したときに、考慮に入れることで理解することができると考察する。この「励起子結合エネルギ」は、電子と正孔との間の静電引力に部分的に由来し、分子および重合性半導体において著しく強いと思われる。重合性半導体は、1以上の第1、第2および第3成分を供給するものとして本発明の実施例で第III−V族材料の無機半導体よりも好んで用いられる。励起子結合エネルギは、電子および正孔の両方をヘテロ接合の同一側に保持する作用をする。したがって、電荷の分離を実現するためには、タイプIIの場合につき図2bに例示するように、HOMO準位とLUMO準位(適切な)との間のヘテロ接合でのエネルギのオフセットが励起子結合エネルギよりも大きいことが好適である。
【0022】
全ての第1、第2および第3成分が他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することが最も好ましい。第1成分が第2成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。第2成分が第3成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。第1成分が第3成分とタイプII半導体界面を形成してもよい。上述したように、これらのいずれかまたは全てが「ルミネッセンスタイプII界面」であることが好適である。このような界面の1つの潜在的な物的構造は、タイプII界面である構造であり、この界面では一方の成分(ルミネッセンス成分が好ましいが、必ずしもそうでなくてもよい)上で形成する励起子が、別々の成分上に解離する電子/正孔対よりも、エネルギ的により有利である。これは通常、比較的小さなオフセットが素子の成分のHOMO準位および/またはLUMO準位の間に存在することに由来すると思われる。多くの好適な実際的な状態では、これは一方の成分のHOMO準位と、この第1成分上における励起子の結合エネルギよりも小さなHOMO準位を有する別の成分のHOMO準位との間のエネルギギャップに由来すると思われる。このような系では、電子は上記した別の成分の低いHOMO準位に注入され、正孔は上記した一方の成分の高いLUMO準位に注入される。しかしながら、電子および正孔にとって、上記した一方の成分上で結合して励起子を生成することは、エネルギ的に効率的なことであるはずである。したがって、素子からの発光を維持しながら、上記の低いHOMO準位と高いLUMO準位で効率的に注入することにより利点がもたらされると思われる(素子の電極に関して材料の選択が大きく広がる)。本出願人は、この効果が発光素子の効率に顕著な増加をもたらすことを見出した。
【0023】
発光層は、他の材料から構成することも、または第1、第2および第3成分と任意の不純物とから構成することも(あるいは本質的に構成することも)可能である。
【0024】
第3成分は、好ましくはスペクトルの可視領域(たとえば赤、緑または青色光)および/または近赤外および/または近紫外領域で発光性である材料である。第3成分の光学ギャップは、1.8eVよりも大きいことが好ましい。素子が使用状態の場合、第1および第2成分からの発光が起こらない(または実質的に起こらない)ことが好ましい。第3成分は、第1および第2成分の光学ギャップよりも小さなギャップを有することが好適である。材料の「光学ギャップ」は、材料が強い光学吸収を示す時の光子エネルギとして測定される。第3材料は、好ましくは、高度に効率的なルミネッセンス材料である。
【0025】
ある条件下では、第1成分が第2成分のLUMOエネルギ準位と第3成分のLUMOエネルギ準位との間のLUMOエネルギ準位を有することが、第2成分と第3成分との間の負電荷キャリアの移動を適切に促進することに有利となることがある。第1成分は、第2成分のHOMOエネルギ準位と第3成分のHOMOエネルギ準位との間のHOMOエネルギ準位を持つことが好適であり、この場合、第2成分および/または第3成分への正電荷キャリアの移動を適切に促進する。第1成分は、第1電荷注入層のエネルギ準位と等しいか、あるいは大きなHOMOエネルギ準位を有することが好ましい。
【0026】
第1、第2および第3成分は、それぞれ有機材料であってもよく、ポリマーが好適であり、共役または部分共役ポリマーであることが好ましい。好適な材料には、PPV、ポリ(2−メトキシ−5(2’−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン)(MEH−PPV)、PPV誘導体(例えば、ジ−アルコキシ誘導体またはジ−アルキル誘導体)、ポリフルオレンおよび/またはポリフルオレンセグメントを取り込んだコポリマー、PPV類および/または関連するコポリマー類が包含される。第1および第2成分は、(第3成分に加えて)発光材料でもよい。第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、その主鎖中におよび/またはペンダント基としてアミン基を含有することが好適である。代替材料には、有機分子発光材料、例えば、Alq3、あるいは従来技術で周知な他の如何なる低昇華分子または共役ポリマーエレクトロルミネッセンス材料が含まれる。第1成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−第2級ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン(TFB)であってもよい。第2成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)(F8)であってもよい。第3成分は、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−メチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン−((4−メチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(PFM)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−メトキシフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン−((4−メトキシフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(PFMO)、あるいはポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)であってもよい(図3参照)。第3成分は、可溶性PPVであってもよい。その他の材料も使用することができる。
【0027】
第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陽極層であってもよい。第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層でもよいし、あるいは陰極層であってもよい。如何なる電極層および/または電荷輸送層も光透過性であることが好適であり、素子からの発光周波数で透明であることが好ましい。
【0028】
陽極層は、4.0eVより大きな仕事関数を有することが好適である。陰極層は、3.5eV未満の仕事関数を有することが好適である。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取りかつ第2発光成分から負電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生させる第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から正電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分の混合物を含有する発光層を備え、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成するエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0030】
上記のタイプII半導体界面は、好ましくは、ルミネッセンスタイプII界面である。
【0031】
発光層の上記した成分は、発光層内である程度(例えば、部分的にまたは完全に)相分離していてもよい。発光層は、上記成分のそれぞれの領域を包含することが好適であり、上記成分が発光層全体にわたって分散していることが好ましい。これらの領域のそれぞれは実質的に上記成分の1つだけから構成されることが好適であり、その成分によって与えられる電子的特性を有することが好適である。その成分は、発光層内で均一にあるいは不均一に分布していてもよい。1つの成分は、発光層と第1または第2電荷キャリア注入層との一方または両方の界面近傍で濃縮していてもよい。その成分は、第1成分であることが好ましい。その成分の濃縮は、これらの界面の一方または両方近くで、混合物の他の成分によって実質的に稀釈されていないような濃縮であってもよい。したがって、その成分は、その界面の一方または両方で充分な濃度に適切に接近または到達することができる。
【0032】
発光層の成分は、単一分子の官能性化学ユニットまたは部分として、あるいは物理的な混合物または異なる分子として供給されてもよい。単一分子が1を超える成分を供給する場合、それらの成分は、コポリマーとして(例えば、主鎖、側鎖、ブロックまたはランダム形で)結合していることもある。1つの成分(第1成分または第2成分のいずれか)が他の成分(第2成分または第1成分のいずれか)のポリマー鎖のペンダント基として供給されることもある。
【0033】
発光層の両方の成分は可溶性であることが好ましく、両方とも同一溶媒に、あるいは同一溶媒混合物に可溶性であることが最も好ましい。これにより、成分を溶液からともに成膜することが容易になる。
【0034】
第1成分は、第2成分のHOMOエネルギより上位の準位のHOMOエネルギを有することが好適である。第2成分は、第3成分のLUMOエネルギよりも上位のLUMOエネルギを有することが好適である。
【0035】
発光層は、他の材料で構成されていてもよいし、または第1および第2成分と任意の不純物とから構成されていても(あるいは、本質的に構成されていても)よい。
【0036】
第1および第2成分のいずれかまたは両方がスペクトルの可視領域(赤、緑または青色)および/または近赤外領域および/または近紫外領域で発光性である材料であることが好ましい。第1および第2成分のいずれか、または両方の光学ギャップは、1.8eVより大きいことが好ましい。
【0037】
第1および第2成分はそれぞれが有機材料であってもよく、ポリマーであることが好適で、共役または部分共役ポリマーであることが好ましい。好適な材料には、PPV、ポリ(2−メトキシ−5(2’−エチル)ヘキシルオキシフェニレン−ビニレン)(MEH−PPV)、PPV誘導体(例えば、ジ−アルコキシ誘導体またはジ−アルキル誘導体)、ポリフルオレンおよび/またはポリフルオレンセグメントを取り込んだコポリマー、PPV類および/または関連するコポリマー類が包含される。代替材料には、有機分子光放射材料、例えばAlq3、あるいは従来技術で周知な他の如何なる低昇華分子または共役ポリマーエレクトロルミネッセンス材料が含まれる。第2成分は、例えば、F8またはポリフリンでもよい。第1成分は、例えば、TFBであってもよい。第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができ、主鎖におよび/またはペンダント基としてアミン基を含有する共役ポリマーでよい。その他の材料を用いることもできる。
【0038】
第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陽極層であってもよい。第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であってもよいし、あるいは陰極層であってもよい。如何なる電極層および/または電荷輸送層も光透過性であることが好適であり、素子からの発光周波数で透明であることが好ましい。
【0039】
陽極層は、4.0eVより大きな仕事関数を有することが好適である。陰極層は、3.0eV未満の仕事関数を有することが好適である。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、電荷キャリア注入層の間に位置する有機発光層と、発光層と1つの電荷キャリア注入層との間に位置する有機電荷輸送層とを備え、輸送層と発光層との間に形成されたヘテロ接合がルミネッセンスタイプIIヘテロ接合であるエレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0041】
本発明の第4の態様によれば、第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から反対極性の電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する第3成分である有機発光成分との混合物を含有し、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する発光層を第1電荷キャリア注入層上に成膜する工程と、前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を発光層の上に成膜する工程と、を有するエレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷を受け取りかつ第2発光成分から反対極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から前記反対極性の電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から第1の極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有し、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成する発光層を成膜する工程と、前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を成膜する工程とを有するエレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
【0043】
本発明の第4および第5の態様においては、第1、第2および第3(存在する場合)の成分がともに成膜されることが好ましい。上記第1の極性は正であることが好ましいが、負であってもよい。上記反対極性は負であることが好ましいが、正であってもよい。上記した製造方法は、発光層の相構造に影響を与えるように、発光層を成膜する前に第1電荷キャリア注入層の処理を行なう工程を有することが好ましい。これにより、第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起させることができる。
【0044】
本発明の全ての態様に関し、素子が最大電力効率または外部効率を有する印加電圧は10V以下、好ましくは7V以下、最も好ましくは4V以下である。本発明の両側面につき、素子は、1lm/Wよりも大きく、好ましくは2lm/Wよりも大きく、最も好ましくは6lm/Wよりも大きく緑色発光素子と同等なピーク出力効率を有することが好ましい。本発明の両側面につき、素子は2Cd/Aより大きく、好ましくは5Cd/Aより大きく、最も好ましくは7Cd/Aより大きく緑色発光素子と同等なピーク外部効率を有することが好ましい。
【0045】
本発明の全ての態様に関し、発光層の厚みは、好ましくは400nmよりも小さく、最も好ましくは40〜160nmの範囲である。
【0046】
本発明の評価に重要な側面は、以下にさらに考察するように、慣例的なヘテロ接合の説明が一般的に本明細書で説明する分子および重合性半導体に適用されないことである。より具体的には、タイプIIヘテロ接合は電荷の分離(発光を伴わない)時に有効であるが、効率的な発光を与えることができる場合に重要な状況が存在することが見出された。以下に説明するように、「タイプII」ヘテロ接合の望ましい特性に関するこの可能性は、本出願人が知る限り、従来技術では認められない。さらに、タイプII接合を備え、種々の半導体成分が存在することにより操作電圧が低減することが認められるELダイオードの実現をもたらすような従来技術は、本出願人が知る限り見受けられない。
【0047】
本発明に係る素子は、混合物ではない形態の発光層の発光成分(例えば、第3成分)のフォトルミネッセンス効率を著しく下回ることのないフォトルミネッセンス効率を有する。そのフォトルミネッセンス効率は、30%より大きいことが適切である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1aは、緑色光を発光する典型的素子の断面であり、図1bは、素子に沿うエネルギ準位を示す図である。
【図2】図2a及び図2bは、それぞれ、タイプI、タイプIIのヘテロ接合の半導体界面を示す図である。
【図3】本明細書で説明した幾つかの材料の化学構造である。
【図4】エレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図5】図4の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図6】第2のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図7】図6の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図8】図6の素子の発光スペクトルである。
【図9】第3のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図10】図9の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図11】図9の素子の発光スペクトルである。
【図12】第4のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図13】図12の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図14】図12の素子の発光スペクトルである。
【図15】第5のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図16】図15の素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図17】第6のエレクトロルミネッセンス素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図18】図17の素子の発光スペクトルである。
【図19】第7のエレクトロルミネッセンス素子の効率を電圧に対してプロットしたグラフである。
【図20】第8のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図21】第9のエレクトロルミネッセンス素子のバンドダイアグラムである。
【図22】さらなる2つのエレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図23】8画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図24】別の8画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図25】TFBを0%から20%含有する一組の素子の特性をプロットしたグラフである。
【図26】発光層がTPDポリマーを含む4画素エレクトロルミネッセンス素子の特性をプロットしたグラフである。
【図27】Bis−DMOS PPVの構造を示す図である。
【図28】さらなる2つの素子の特性を示すグラフである。
【図29】TPD側鎖ポリマーのサイクリックボルタンメトリー分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
添付した図面を参照して本発明を例示的に説明する。
【0050】
幾つかの発光材料の特性を表に示す。
【0051】
【表1】
表1の注記事項:
1.ホール(Hall)ら(上記参照)の方法を用いて測定したフォトルミネッセンス(PL)効率
2.ホール(Hall)らの方法に基づく改良法を用いての測定
3.以下に説明する図25の考察を参照
【0052】
HOMOの位置は電気化学的測定から推定した。光学ギャップはUV/可視光吸収スペクトルから決定した。LUMO位置は、HOMO位置と光学ギャップから概算した。5F8BTは、5%F8BTと95%F8との混合物(重量比)の略記である。
【0053】
青色発光体のうち、F8は、これらの材料中最も高いPL効率を有する。したがって、これらの材料のうち、F8が青色発光層に選択される材料であると思われる。図4は、発光層がF8である素子のバンドダイアグラムを示す。ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−(4−イミノ(ベンジル酸)))−1,4−フェニレン−(4−イミノ(ベンジル酸))−1,4−フェニレン))(BFAの層)を中間正孔輸送層として備える。BFAの代替物としては、PEDOT−PSS(ベーカー AG(Bayer AG))社の製品で英国特許出願第9703172.8号に記載されており、導電率を改良するためにポリスチレンスルホン酸エステルがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、PVK等が挙げられる。正孔輸送層は、電子が陽極へと通過することを阻止する作用をも営む。BFAとF8との間には、タイプII半導体界面が存在する。図5に、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。F8のHOMO準位(5.8eV)がITOの対応するエネルギ準位(4.8eV)に比べ深いので、素子は高い駆動電圧を必要とし、BFAの中間層を有していても電力効率は低い。電力効率は約0.03lm/Wでピークを示し、これは実際の素子で受容される効率より著しく低い。さらに、電力効率が低いために、素子内に激しい加熱があり、その耐用寿命が短い(数分)。図5のデータを測定する間においても、素子は、加熱の結果による再結晶に由来すると確信される急速な減衰を蒙ることが判明した。これは、高いエネルギ発光に比して低いエネルギ発光の増加を伴いながら、素子の発光スペクトルのシフトを引き起す。
【0054】
図6は、第2の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は84%F8、16%PFMの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面がBFAとF8、BFAとPFMとの間およびPFMとF8との間にある。図7は、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。図4と図5の素子とを比較すると、この素子のピーク時の電力効率は増加している(0.03lm/Wに対し0.33lm/W)が、ピーク電力効率時の電圧は低減していない。これは、この素子においては、正孔がF8ホストポリマーに注入され(図4、図5の素子と同様に)、次にPFMセグメント上に局在化したことを示唆する。図8にこの素子の発光スペクトル(ライン10)をF8のスペクトル(ライン11)と比較して示す。図8は、充分な再結合がF8上で起こることを示し、正孔がBFAの正孔輸送層からF8内に注入されたことを示唆するが、正孔と電子の再結合の大部分がF8上でなくむしろPFM上で起こることを示す。それゆえ、局在化した正孔は、電子がPFM領域に励起される適切な確率で電子−正孔対を形成する。この素子のピーク外部効率(図7参照)は略1Cd/Wで、図4および5の素子の略10倍良好である。
【0055】
図9は、第3の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は84%F8、16%TFBの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面が少なくともBFAとF8、TFBとF8との間にある。図10は、駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。図4と図5の素子と比較すると、ピーク外部効率の僅かな増加(0.38Cd/Aに)があり、したがってピーク電力効率が低下する(略0.15lm/W)。駆動電圧の低減は、TFBのHOMO準位が正孔輸送材料(BFA)の対応するエネルギ準位に略一致することに由来し、これが発光層のマトリックスへの正孔注入を容易にするものと考えられる。図11にこの素子の放射スペクトルを示す。図は、素子からの発光、すなわち、素子内の放射性再結合がTFBとF8ポリマーとの間で略等しく分割していることを示す。
【0056】
図12は第4の素子のバンドダイアグラムを示し、この素子の発光層は、78%F8、15%TFB、7%PFMの混合物である。BFA層を中間正孔輸送層として備える。タイプII半導体界面が少なくともBFAとF8、BFAとPFM、TFBとPFM、TFBとF8およびPFMとF8との間にある。図13は駆動電圧に対する素子の電力効率と外部効率を示す。この素子は、著しく向上した性能を示す。ピーク外部効率は約2.4Cd/A、ピーク電力効率は約1.05lm/Wである。ピーク電力効率は約6.5Vでのみ起きる。図14は素子からの発光スペクトルを示し、全ての発光がPMFから起こっていることを示す。これらの結果を図4〜図11の素子の結果と比較して以下の表に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
図12〜図14の素子の高効率は、意外なことに、表1に示すように使用された材料のうち最低のPL効率を有するPFMに起因する発光である。
【0059】
図12〜図14の素子では、TFBが正孔輸送層から発光層のポリマーマトリックスへの正孔を受け取る作用をし、こうして正孔がPFMセグメント上に局在化すると考えられる。したがって、TFBは正孔の発光層への注入を促進する働きをする。TFBのLUMO準位がF8とPFMのLUMO準位の概ね中間であるので、TFBのLUMO準位も、素子がバイアス状態にあるときに、電子のPFMへの輸送速度を促進する中間エネルギ段階を提供するものと思われる。PFMもF8またはTFBよりも僅かに低い光学ギャップを有し、励起子がPFM領域で生成するのをエネルギ的に有利にしている。
【0060】
図12〜図14の素子は、PFMをPFMOで置き換えることによって改作することができる。PFMOは40%のPL効率を有し(表1参照)、得られた素子は、PFMOからの発光を伴う1.5lm/Wまでの電力効率を有する。PFMOはF8およびTFBと同じ光学ギャップを有するので(表1参照)、この結果は、フェルスター輸送が効率を増強すると思料されはするものの、励起子をPFMOポリマーに閉じ込める支配的な機構でないことを示唆する。それよりも、バイアス状態下で正孔輸送層とTFBとの間に整列したエネルギが正孔の発光層マトリックスへの注入を促進させるものと考えられる。これに続いてPFMOの低エネルギHOMO準位への輸送が起こる。しかしながら、TFBが存在する場合、LUMOにPFMOとF8のLUMO準位の略中間のエネルギ段階が存在する。したがって、素子がバイアス状態のとき、TFBはPFMOポリマーセグメントへの電子の輸送を促進する。実際には、図12のように単純に図示されるものではなく、ポリマー界面近傍にエネルギ準位の歪みがあるようである。
【0061】
この解釈は、陰極をLiAlからCaAlに変更した結果から支持される。CaAlは、LiAlに比して高い仕事関数を持つ。発光層マトリックスからの電子の輸送がF8を経由する場合においては、PFMまたはPFMOへの励起が続いて起こるのであれば、仕事関数の高い材料の使用は、仕事関数が依然としてF8のLUMO準位に近いために、効率に影響を及ぼさないはずである。しかしながら、電子がLiAl陰極から注入され、TFBを経由して主としてPFMへ輸送されるのであれば、CaAlとTFBとの間に電子を注入するために障壁を乗り越えるのに高い駆動電圧を必要とすると推察されるので、電力効率は低下すると予想される。本出願人は、LiAlまたはCaAl陰極を有する素子の間に著しい性能の差を観察しなかった。
【0062】
図15は、発光層が別の2成分ポリマーの混合物である緑色発光素子のバンドダイアグラムである。この素子では、発光層は95%F8、5%F8BTの混合物である。ドーパントであるF8BTは、ホストF8とタイプI半導体界面を形成するが、F8とF8BTはともにBFAとタイプII半導体界面を形成する。図16は、駆動電圧に対するこの素子の電力効率と外部高率を示す。電力効率は約2.0〜2.5lm/Wである。図17は、図15および図16に示した素子に類似した素子の駆動電圧に対する電力効率と外部効率を示す。この素子の発光層は、まずF8とF8BTとを19:1の割合で混合し、次にその混合物をTFBと4:1の割合で混合させた(すなわち、(F8:F8BT[0.95:0.05]):TFB[0.75:0.25])3成分混合物の層である。図18は、この素子のバンドダイアグラムを示す。図19は、図15および16に示した素子と類似した素子の駆動電圧に対する電力効率と外部効率を示す。この素子の発光層は、(F8:F8BT[0.95:0.05]:TFB[0.5:0.5])の混合物である。これら3つの素子の結果を以下の表に併せて示す。
【0063】
【表3】
【0064】
TFBの量が50%と60%との間に近づくにつれ、ピーク効率が減少する。TFBを原則的に0%から20%に亘って添加したときに、外部効率が増加する。これは実用上の用途に貴重である。
【0065】
20lm/Wより大きな効率は、正孔輸送層としてPEDOT:PSSの80:20の5F8BT:TFB構造を用いて達成される(図22参照)。
【0066】
上記の青色発光3成分混合物と同様に、TFBは、正孔の発光層ポリマーマトリックスへの注入を促進し、エキシプレックスが生成することを可能にする。緑色発光素子では、内部電界が高いことや、励起子を生成することでエキシプレックスがフェレスター輸送によるエネルギを減少させることから(F8BTはマトリックスで最も狭い光学ギャップを有する)、エキシプレックスはF8BTポリマー上で比較的高い励起子の生成確率を有する。これにより、外部効率と電力効率の向上がもたらされる。
【0067】
この素子の効率は、HOMO準位がTFBとF8の間にある(例えば約5.5eV)1つ以上の他のポリマーを発光層に含有させることによってさらに改善することができる。これは、TFBから発光材料への正孔の励起を惹起させるはずであり、高いバイアス電界では、発光層自身のマトリックスへの正孔の注入を促進する。
【0068】
PFMを緑色発光混合物に含有させる場合、素子効率は著しく減少することに留意すべきである。これは比較的浅いHOMO準位に由来するものと考えられ、浅いHOMO準位は中間としてよりむしろ深い正孔トラップとして作用して、F8BTポリマー上における励起子の生成を阻害する。
【0069】
図20〜図27には、上述した原理の幾つか他の実施例が図示されている。
【0070】
図20では、発光層はF8BT、F8およびPPVの混合物である。F8BT:F8混合物は、PPV上を被覆する陰極とPPVの導電帯との間の電子の輸送を可能にする電子輸送層として作用する。F8BTとF8のPPVへの添加は、通常のAlLi陰極に比して高い仕事関数を有するものであっても、AlLi陰極に比してさらに安定な陰極の使用を可能にする。図18では、陰極はMgであり、その仕事関数は3.5eVである。別の選択肢はAlであり、その仕事関数は4.2eVである。混合物にLUMO準位がF8BT(3.4eV)とF8(2.8eV)との間である第3ポリマーを含めることにより、さらなる改善を実現することができる。
【0071】
図21では、発光層はポリ(パラフェニレン)(PPP)、TFBおよびF8との混合物であり、CaAl陰極を有する。正孔注入の改善に関連する上述の原理が電子注入を改善するためにこの素子に応用されている。
【0072】
図22に、フルオレン系発光系にTFBを添加した効果を示す。図22の上図は、発光層が5F8BTである素子の電圧範囲における輝度と発光強度を示す。図22の下図は、発光層が20%TFBを含む5F8BTである素子の対応するデータを示す。両方の素子ともPEDOT:PSS正孔輸送層を持つ。発光層へのTFBの添加は、ピーク効率を約3.5lm/Wから約20lm/Wに向上させるという結果が得られた。PEDOT:PSSは、上記した素子において、特に「電子グレード」PEDOT:PSSが使用された際に、正孔輸送層としてBFAに比して優れていることが判明した。
【0073】
図23〜図25は、発光成分がフルオレン系でない素子に関するデータを示す。図23は発光層が可溶性PPV発光ビス−DMOS PPV(フェニル環の両側に構造式SiMe2C8H17の2個の側ユニットを有するビスジメチルオクチルシリルポリフェニレンビニレン、図27参照)である8画素素子に関する電圧範囲と輝度(Cd/m2)、電流密度(mA/cm2)、発光効率(lm/W)および外部効率(Cd/A)のプロットを示す。正孔輸送層PEDOT:PSS上に発光層をスピン塗布した。図24は、発光層が25%TFBを含むビス−DMOS PPVである素子に関する対応するデータを示す。TFBの添加は、ターンオン電圧を約3.5Vから約2.5Vに改善し、効率を略2.0lm/Wに増加することが判明した。図25は、発光層がTFBを0%、2%、10%または20%添加した別の可溶性PPV(表1のPPV A)から形成された一連の素子に関する特性プロットを示す。図25の上図は、電圧に対するこれらの素子の電流密度プロットである。図25の中央の図は、電圧に対する素子の輝度のプロットである。図25の下図は、一定電圧5.6Vにおける上記素子の輝度を示す。輝度および電流密度は、TFB含有量の増加と共に増加することが判明した。5.6VにおけるTFBの20%添加は、輝度を0%TFBの素子の約400%以上増加させることが判明した。
【0074】
図26は、発光層が70%の5F8BTとTPDベースの側鎖を持つポリエチレン系ポリマー30%との混合物から形成された4画素素子に関する電圧範囲と輝度(Cd/m2)、電流密度(mA/cm2)、発光効率(lm/W)および外部効率(Cd/A)のプロットを示す。最大効率は8lm/Wであること、その一方で、発光層が5F8BTのみからなることを除いて同様の素子は、最大効率2lm/Wを有することが判明した。図29は、TPDベースの側鎖を有するポリエチレン系ポリマーのサイクリックボルタンメトリー酸化スイープを示し、そのHOMO準位が5.25eV領域、すなわち、発光成分のHOMO準位と正孔注入層のHOMO準位との間にあることを示す。
【0075】
一部の場合では、発光層材料と隣接表面との相互作用に由来する発光層表面近傍で一種類以上の発光層成分の濃縮増加を伴う、ある程度の表面相分離が起こることが期待される。かかる分離の検出に用いられる方法には、タップモードの原子力顕微鏡およびその他の類似の方法が含まれる。
【0076】
図28は、発光層が正孔輸送層PEDOT:PSS上に成膜された5F8BT:TFB(4:1)の混合物から形成された一対の素子に関する電圧範囲と輝度のプロットを示す。一方の素子(ラインA)では、発光混合物を直接PEDOT:PSS上に成膜した。他方の素子(ラインB)では、TFBの中間層をPEDOT:PSS上に直接成膜し、次に発光混合物をその層の上に成膜した。図28から、TFB中間層を有する素子が固定電圧で著しい輝度の増加を示すことが諒解される。これは、TFB成分の中間TFB層への引力が5F8BTへの引力よりも大きいため、結果として、ブレンド内にTFBの濃度勾配が生成することに由来すると考えられる。TFBは、混合物内で正孔輸送/捕獲成分として作用するので、そのような成分が発光層の正孔注入層側に指向して、すなわちPEDOT:PSSとの界面のより近傍に多く濃縮することは有利であると予想される。このような濃度勾配を増進させる他の方法や発光層の電子注入層側に指向して電子輸送/捕獲成分の類似した濃度勾配を創出することにより類似した結果が得られると考えられる。
【0077】
TFB中間層の有効性の例示として、以下の試験を行った4種類の素子に見出されたピーク発光効率を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
上述したような多成分層は、単一層として成膜されることが好ましい。これを実現するためには、成膜前または成膜時に層の構成成分を結合させることが好ましい。この場合、結合には、例えば、成分を物理的に混合すること、あるいは(例えば)1種類以上の成分を取り込んだ分子を生成させることで化学的混合物を形成することによって、成分を含有する材料を調製することが包含される。
【0080】
成分が化学的に結合している材料の一例は、F8、F8BTおよびTFBのターポリマー、例えば、(5F8BT):TFB[80:20]である。この材料は、次の方法によって調製することができる。還流凝縮器(窒素ラインに接続した)と機械的撹拌器とを装着した容積500mlの丸底フラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−二ボロン酸1,2エチレングリコールジエステル(4.773g、9.0mmol)、2,7−ジブロモベンゾチアジアゾール(0.1504g、0.51mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(3.584g、6.54mmol)、N,N’−ジ−(4−ブロモ)フェニル−4−(第2級ブチル)アニリン(0.8923g、1.945mmol)、90mlのトルエン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(31.2mg)および炭酸ナトリウム2モル溶液20mlを導入する。混合物を迅速に撹拌し、115℃(油浴温度)で18時間加熱する。さらに、100mlのトルエンをブロモベンゼン(1ml)とともに添加した後、混合物を油浴115℃で3時間撹拌する。次に、フェニルボロン酸(1.5g)を加え、混合物を1時間その温度で撹拌して、室温まで冷却する。反応混合物を4リットルのメタノールにゆっくり注入してポリマーを析出させる。次に、ポリマーを成膜させて(例えば、溶液から)発光素子の発光層を作成する。一般的に、適切なターポリマーを調製する1つの過程では、2成分を提供するモノマーを部分的に反応させて、次に第3成分を提供するモノマーを加えて重合反応を継続させる。コポリマーは如何なる適宜な形態、例えば、ランダム、ブロック、分枝コポリマーであってもよい。
【0081】
発光成分に加えて電荷輸送成分のいずれか、または発光成分に加えて両方の電荷輸送成分を単一分子に結合させることもできる。2成分を結合させた場合、コポリマーが形成され、3成分全てを結合させるとターポリマーが得られる。成分を物理的に混合した場合、相分離が起こるために成分の混合は均質でなく、電荷輸送成分のいずれかまたは両方から発光成分への電荷輸送には効果的ではないと思われる。電荷輸送成分と発光成分とを結合した分子では、これらのユニットは化学的に連結されるために電荷の輸送は、物理的な結合の場合に比して促進されると予想される。正孔輸送成分と発光成分の両方を含有する分子は、電子輸送種と物理的に結合して効率的な発光層を生成する。一方、電子輸送成分と発光成分の両方を含有する分子は正孔輸送種と物理的に結合することができる。電極の一方が特に効果的であれば、その電極に対応する電荷輸送成分を省くことや適切な反対電荷の輸送成分と発光成分とからなる2成分分子を発光層に用いることで、効率的なLED構造を生成することができる。
【0082】
発光層の2成分を化学的に単一分子内に混合した後、その材料と、第2分子によって供給される第3成分とを物理的に混合させることもできる。
【0083】
上述した素子は、通常の方法、すなわち、市販のガラス/ITO基板上にポリマー層を溶液から成膜し、次に、陰極を蒸着することによって作製することができる。例として、図4および図5に示した素子の作製を詳細に説明する。まず、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の濃度0.8%の溶液から、BFAを市販のガラス/ITO基板上にスピンコートで成膜する。試料を、窒素ガス中において80℃で30分間加熱してポリマー層を乾燥する。次に、溶媒としてキシレンが混合された濃度1.6%の溶液から発光層をスピンコートする。BFA層および発光層の目標厚みは、それぞれ、10〜80nmおよび60〜200nmであり、標準的な厚みはそれぞれ65nmおよび95nmである。最後に、厚みが20nmのLi層、続いてAlの200nm層を蒸着することにより陰極を形成する。窒素等の不活性ガス雰囲気中で、素子をガラス/エポキシ封入剤内に封入する。
【0084】
上述した原理を具体化する素子に代替材料を使用することもできる。例えば、陽極の代替材料には、酸化スズ(TO)およびフッ素化TOが含まれる。また、正孔輸送層の代替材料にはPEDOT:PSSおよびポリアミンが含まれ、発光層の代替材料にはPPVおよびMEH−PPVが含まれ、陰極の代替材料にはLi、Ba、Mg、Ca、Ce、Cs、Eu、Rb、K、Sm、Na、Sm、Sr、Tb、Ybおよびこれらの金属の2種以上の合金、これらの金属の1種以上のフッ化物、炭化物、酸化物または窒化物(例えば、CsF、LiF)、これら金属の1種以上とAl、Zr、Si、Sb、Sn、Zn、Mn、Ti、Cu、Co、W、Pb、In、Agの1種以上の金属との合金(例えば、LiAl)が含まれる。陰極は透明であってもよい。正孔輸送層はなくともよく、あるいは1を超える正孔輸送層があってもよい。陰極と発光層との間に1以上の電子輸送層があってもよく、該電子輸送層は、陰極から発光層への電子の輸送を促進し、かつ/または正孔が陰極へ通過することを阻止する働きをする。
【0085】
正孔輸送層の構成材料は、混合物でもよい。例えば、PFM様ポリマー、ただしカルボン酸基を包含させることによってBFAとしての溶液の溶解力が調整されたポリマー、が混合されたBFAでもよい。また、電子輸送層も、F8とF8BTとの混合物等、混合物から構成されていてもよい。
【0086】
高効率的な青色および緑色発光素子を提供することに加え、上述した原理は、長波長(例えば、赤色)発光素子にも用いることができる。LUMO準位が深いポリマーは、より高い仕事関数を有するとともにより安定な金属を陰極に使用することを可能にし、高いPL効率を可能にするので、上記したような素子に極めて望ましい。しかしながら、これらのポリマーは、それ相応の深いHOMO準位を有する。上述した原理は、その深いHOMO準位にもかかわらず、これらのポリマーを利用可能にするものである。
【0087】
多成分発光層を有する素子を製造する場合、成分を成膜する前に混合することが適切である。しかしながら、成分の電子効果を最適化して上述した原理を活用するためには、発光層中にそれぞれの成分が分散した領域が存在するように、発光層の成分が部分的または完全に相分離していることが好ましい(米国特許第5,760,791号を参照し、該米国特許第5,760,791号の開示内容を本明細書に盛り込むものとする)。電荷キャリアが一方の成分から他方の成分へ移動することが所望される場合、混合層の構造(特に、これら成分の割合およびそれぞれの領域の大きさ)は、好ましくは、これらの成分の間に適切な界面を供給するようなものでなければならない。それぞれの成分の領域は、層の全体に亘って均一に分散していることもあり、1種類以上の成分が発光層の電荷キャリア注入層との一方または他方の界面近傍に濃縮していても有利であることもある。発光層の陽極側近傍で正孔注入材料の濃度が大きい(かつ陰極側近傍で少ない)ことが望ましいと思われる。また、発光層の陰極側近傍で電子注入材料の濃度が大きい(かつ陽極側近傍で少ない)ことが望ましいと思われる。
【0088】
混合層の分散特性(層全体にわたる種々の成分のプロファイルを含めて)に影響を与えるために、幾つかの技術が用いられる。1種類以上の成分と素子の他方の層(特に、発光層がその上に成膜された層)との間の表面の相互作用は、発光層にある程度の相分離を促進させる。正孔輸送材料または電子輸送材料の適切な一方が、発光層が成膜される層上に優先的に引き寄せられるように、あるいは優先的に排斥されるように、成膜条件を整えることが好ましい。したがって、発光層が正孔注入陽極層上に成膜される場合、正孔注入材料が優先的にその表面に引き寄せられること、および/または電子注入材料が表面から優先的に排斥されることが好ましい。これに対して、発光層が電子注入陰極層上に成膜される場合、上記と反対の現象を引き起こさせることが好ましい。発光層がその上に成膜される材料の表面は、優先的な効果を引き起すように処理されるか、あるいはそのように選択される。発光層の2種類以上の成分が同一分子内で結合する場合、相分離(または凝縮)あるいは均一性の望ましい状態を促進させるために、それらの成分が結合する方法が使用される。例えば、望ましい効果を達成するために、結合分子は、適切なランダムコポリマー、ブロックコポリマーあるいは分枝コポリマーとして合成される。相分離に関連するその他の因子には、使用される溶媒(例えば、クロロホルムまたはキシレン)、溶媒の蒸気圧、分子量、成分の表面エネルギ(相互に関しておよび/または発光層が成膜される自由表面に関して)、多分散性、成分体積分率、構造的特徴などが含まれる。
【0089】
本発明は本明細書に明示的または暗示的に開示された如何なる特徴あるいは特徴の組み合わせ、またはその一般化をここに記載された発明との関連に関係なく包含するものである。これまでの説明から、種々の変更が本発明の範囲内において為されることは当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0090】
1…陽極 2…陰極
3…発光層 4…正孔輸送層
5…LUMOエネルギ準位 6…HOMOエネルギ準位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、
第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3成分との混合物を含有する発光層と、
を備え、
第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプIIの半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分、第2成分および第3成分が発光層内で少なくとも部分的に相分離していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1または2記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分の濃度が発光層内で第1電荷キャリア注入層に指向して増加することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項3記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第1電荷キャリア注入層との間に、第1成分が第2成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項4記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第1電荷キャリア注入層との間の層が第1成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層中の第2成分の濃度が第2電荷キャリア注入層に指向して増加することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項6記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第2電荷キャリア注入層との間に、第2成分が第1成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項7記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第2電荷キャリア注入層との間の層が第2成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分と、第1および第2成分の少なくとも一方とが同一分子の官能基部分として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分と、第1および第2成分の少なくとも一方とがコポリマーとして供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分が第1成分および/または第2成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および/または第2成分が第3成分のポリマー鎖の1以上のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分が異なる分子として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層が第1、第2および第3成分をともに成膜することにより形成されたものであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層が第1、第2および第3成分をそれぞれ含有する2以上のサブ層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の全てが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分の光学ギャップが1.8eVより大きいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、かつ主鎖および/またはペンダント基にアミン基を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分がF8であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分は、第2および第3成分の各LUMOエネルギ準位の間にLUMOエネルギ準位を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分がPFMであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分の光学ギャップが第1および第2成分の光学ギャップに比して小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
請求項1〜19または22のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分がF8BTまたは可溶性PPVであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが有機材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが共役ポリマー材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項27】
請求項26記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層が発光層とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、陽極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子におて、陽極層が4.3eVより大きな仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項31】
請求項30記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層が発光層とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項32】
請求項1〜29のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層が陰極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陰極層が3.5eV未満の仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項34】
請求項26〜33のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、電極層または少なくとも一方の電極層が光透過性であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記第1、第2および第3成分の少なくとも1つと他の第1、第2および第3成分との間の前記タイプII界面がルミネッセンスタイプII界面であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項36】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取りかつ第2発光成分から負電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から正電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有する発光層と、
を備え、
第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項37】
請求項36記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分および第2成分が発光層内で少なくとも部分的に層分離していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項38】
請求項36または37記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分が同一分子の官能基部分として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分がコポリマーとして供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項40】
請求項39記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分が第2成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項41】
請求項39記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分が第1成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項42】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分が異なる分子として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の光学ギャップが1.8eVより大きいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項44】
請求項36〜43のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分がF8であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項45】
請求項36〜44のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分が第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、主鎖および/またはペンダント基にアミン基を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項46】
請求項36〜45のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の少なくとも1つが有機材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項47】
請求項36〜46のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の少なくとも1つが共役ポリマー材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項48】
請求項36〜47のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項49】
請求項29〜47のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、陽極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項50】
請求項48または49記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陽極層が4.3eVより大きい仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項51】
請求項36〜50のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項52】
請求項36〜50のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、陰極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項53】
請求項51または52記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陰極層が3.5eV未満の仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項54】
請求項48〜53のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、電極層または少なくとも一方の電極層が光透過性であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項55】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置する光放射有機層と、
発光層と1つの電荷キャリア注入層との間に位置する有機電荷輸送層と、
を備え、
輸送層と発光層との間に形成されたヘテロ接合がルミネッセンスタイプIIヘテロ接合であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項56】
第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から反対極性の電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する第3成分である有機発光成分との混合物を含有し、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する発光層を第1電荷キャリア注入層上に成膜する工程と、
前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を発光層の上に成膜する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項57】
請求項56に記載の製造方法において、第1、第2および第3成分がともに成膜されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項58】
請求項56または57記載の製造方法において、発光層を成膜する前に、発光層の相構造に影響を与えるように第1電荷キャリア注入層を処理する工程を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項59】
請求項58記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、第1電荷キャリア注入層を処理する工程が第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起することであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項60】
第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷を受け取りかつ第2発光成分から反対極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から前記反対極性の電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から第1の極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有し、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成する発光層を成膜する工程と、
前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項61】
請求項60記載の製造方法において、第1および第2成分がともに成膜されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項62】
請求項60または61記載の製造方法において、発光層を成膜する前に、発光層の相構造に影響を与えるように第1電荷キャリア注入層を処理する工程を有することを特徴とすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項63】
請求項62記載の方法において、第1電荷キャリア注入層を処理する工程が第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起することであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項1】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、
第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する有機発光成分である第3成分との混合物を含有する発光層と、
を備え、
第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプIIの半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分、第2成分および第3成分が発光層内で少なくとも部分的に相分離していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1または2記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分の濃度が発光層内で第1電荷キャリア注入層に指向して増加することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項3記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第1電荷キャリア注入層との間に、第1成分が第2成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項4記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第1電荷キャリア注入層との間の層が第1成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層中の第2成分の濃度が第2電荷キャリア注入層に指向して増加することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項6記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第2電荷キャリア注入層との間に、第2成分が第1成分よりも大きな親和力を有する材料からなる層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項7記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層と第2電荷キャリア注入層との間の層が第2成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分と、第1および第2成分の少なくとも一方とが同一分子の官能基部分として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分と、第1および第2成分の少なくとも一方とがコポリマーとして供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分が第1成分および/または第2成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項9記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および/または第2成分が第3成分のポリマー鎖の1以上のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分が異なる分子として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層が第1、第2および第3成分をともに成膜することにより形成されたものであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、発光層が第1、第2および第3成分をそれぞれ含有する2以上のサブ層を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の全てが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分の光学ギャップが1.8eVより大きいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分は、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、かつ主鎖および/またはペンダント基にアミン基を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分がF8であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分は、第2および第3成分の各LUMOエネルギ準位の間にLUMOエネルギ準位を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分がPFMであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分の光学ギャップが第1および第2成分の光学ギャップに比して小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
請求項1〜19または22のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第3成分がF8BTまたは可溶性PPVであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが有機材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが共役ポリマー材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項27】
請求項26記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層が発光層とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、陽極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子におて、陽極層が4.3eVより大きな仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項31】
請求項30記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層が発光層とタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項32】
請求項1〜29のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層が陰極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陰極層が3.5eV未満の仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項34】
請求項26〜33のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、電極層または少なくとも一方の電極層が光透過性であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記第1、第2および第3成分の少なくとも1つと他の第1、第2および第3成分との間の前記タイプII界面がルミネッセンスタイプII界面であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項36】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取りかつ第2発光成分から負電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から負電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から正電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有する発光層と、
を備え、
第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項37】
請求項36記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分および第2成分が発光層内で少なくとも部分的に層分離していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項38】
請求項36または37記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分が同一分子の官能基部分として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分がコポリマーとして供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項40】
請求項39記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分が第2成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項41】
請求項39記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分が第1成分のポリマー鎖のペンダント基として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項42】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分が異なる分子として供給されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の光学ギャップが1.8eVより大きいことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項44】
請求項36〜43のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2成分がF8であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項45】
請求項36〜44のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1成分が第1電荷キャリア注入層から正電荷キャリアを受け取ることができる共役ポリマーであり、主鎖および/またはペンダント基にアミン基を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項46】
請求項36〜45のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の少なくとも1つが有機材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項47】
請求項36〜46のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1および第2成分の少なくとも1つが共役ポリマー材料であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項48】
請求項36〜47のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、発光層と陽極層との間に位置する正電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項49】
請求項29〜47のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第1電荷キャリア注入層は、陽極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項50】
請求項48または49記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陽極層が4.3eVより大きい仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項51】
請求項36〜50のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、発光層と陰極層との間に位置する負電荷キャリア輸送層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項52】
請求項36〜50のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、第2電荷キャリア注入層は、陰極層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項53】
請求項51または52記載のエレクトロルミネッセンス素子において、陰極層が3.5eV未満の仕事関数を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項54】
請求項48〜53のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、電極層または少なくとも一方の電極層が光透過性であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項55】
正電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層と、
負電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層と、
電荷キャリア注入層の間に位置する光放射有機層と、
発光層と1つの電荷キャリア注入層との間に位置する有機電荷輸送層と、
を備え、
輸送層と発光層との間に形成されたヘテロ接合がルミネッセンスタイプIIヘテロ接合であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項56】
第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷キャリアを受け取る第1成分と、第2電荷キャリア注入層から反対極性の電荷キャリアを受け取る第2成分と、第1および第2成分からの電荷キャリアが結合することにより光を発生する第3成分である有機発光成分との混合物を含有し、第1、第2および第3成分の少なくとも1つが他の第1、第2および第3成分とタイプII半導体界面を形成する発光層を第1電荷キャリア注入層上に成膜する工程と、
前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を発光層の上に成膜する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項57】
請求項56に記載の製造方法において、第1、第2および第3成分がともに成膜されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項58】
請求項56または57記載の製造方法において、発光層を成膜する前に、発光層の相構造に影響を与えるように第1電荷キャリア注入層を処理する工程を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項59】
請求項58記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、第1電荷キャリア注入層を処理する工程が第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起することであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項60】
第1の極性の電荷キャリアを注入するための第1電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
電荷キャリア注入層の間に位置するとともに、第1電荷キャリア注入層から第1の極性の電荷を受け取りかつ第2発光成分から反対極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第1有機発光成分と、第2電荷キャリア注入層から前記反対極性の電荷キャリアを受け取りかつ第1発光成分から第1の極性の電荷キャリアを受け取って結合させ光を発生する第2有機発光成分との混合物を含有し、第1および第2成分が相互にタイプII半導体界面を形成する発光層を成膜する工程と、
前記反対極性の電荷キャリアを注入するための第2電荷キャリア注入層を成膜する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項61】
請求項60記載の製造方法において、第1および第2成分がともに成膜されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項62】
請求項60または61記載の製造方法において、発光層を成膜する前に、発光層の相構造に影響を与えるように第1電荷キャリア注入層を処理する工程を有することを特徴とすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項63】
請求項62記載の方法において、第1電荷キャリア注入層を処理する工程が第1電荷キャリア注入層の近傍に第1成分の著しい濃縮を惹起することであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−45383(P2010−45383A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233821(P2009−233821)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【分割の表示】特願2004−98825(P2004−98825)の分割
【原出願日】平成11年3月12日(1999.3.12)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【分割の表示】特願2004−98825(P2004−98825)の分割
【原出願日】平成11年3月12日(1999.3.12)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】
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