説明

エレクトロルミネッセンス装置の製造方法

【課題】補助電極の形成時などに付着する異物による悪影響を防止した、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板20上の補助電極115を覆って基板20上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程と、感光性ドライフィルムを補助電極115のパターンに対応させて露光し現像することによりパターニングする工程と、感光性ドライフィルムからなるパターン61aをマスクにして熱発泡性樹脂をパターニングする工程と、パターン61aを覆って基板20上に発光機能層110の形成材料を気相成膜法で成膜し、画素領域Xに発光機能層110を形成する工程と、熱発泡性樹脂のパターン60aを加熱してこれを発泡させ、このパターン60a及び感光性ドライフィルムからなるパターン61aを剥離して補助電極115を露出させる工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロルミネッセンス装置として、例えば有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと記す)装置が知られている。この有機EL装置は、基板上に複数の回路素子、陽極、正孔注入層や有機EL層(発光層)を含む発光機能層、陰極等を積層し、これらを封止基板などによって封止した構成となっている。また、このような有機EL装置としては、発光機能層で発光した光を回路素子が形成された基板側から取り出すボトムエミッション型と、発光機能層を封止する封止基板側から取り出すトップエミッション型とが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、前記の有機EL装置では、絶縁材料によって形成された隔壁(バンク)により、画素領域間が区画され電気的に分離されている。すなわち、一般に有機EL装置では、回路素子等を形成する基板側に陽極としての画素電極(第1電極)が形成されており、これら画素電極間を前記隔壁によって絶縁するようにしている。そして、画素電極の上に発光機能層を介して陰極として機能する共通電極(第2電極)を形成することにより、各画素領域毎に独立して発光駆動を行えるようにしている。
【0004】
また、特にトップエミッション型では、陰極(第2電極)が透明電極である必要上、Al等の低抵抗な金属を直接使用できないことから、その抵抗を下げる目的で、隔壁上にAl等からなる補助電極を形成することがある。
このような補助電極を形成する場合、通常は、蒸着法等によって全面に発光機能層を形成した後、マスクを用いて、隔壁上に選択的にAl等を蒸着し、所望パターンの補助電極を形成している。
【特許文献1】特開2005−285977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したようにマスクを用いて蒸着法で補助電極を形成すると、蒸着装置内には異物(パーティクル)が多く存在することなどから、マスクを基板(基体)上に配置し密着させた際、これらの間に異物を噛み込んでしまうことがある。そして、このように異物を噛み込んでしまうと、その後の工程でも除去されずに残ってしまうことにより、この異物に起因して、得られる有機EL装置にパネル点灯時のショートや輝線の発生などが生じてしまうことがある。
すなわち、発光機能層の形成後では、この発光機能層への悪影響を避けるため洗浄などを行うことができず、したがって異物が発光機能層上などに噛み込まれてそのまま残留してしまっても、後の工程でこれを除去できず、前述したショートや輝線などの欠陥が引き起こされてしまうのである。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、補助電極の形成時などに付着する異物による悪影響を防止した、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、基板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた発光機能層と、該発光機能層上に設けられた第2電極とを備え、前記基板上に設けられた隔壁によって区画された複数の画素領域にそれぞれ前記発光機能層を有し、前記隔壁上に前記第2電極と接合する補助電極を有してなるエレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板上に第1電極と隔壁とを形成する工程と、
前記隔壁上に前記補助電極を形成する工程と、
前記補助電極を覆って前記基板上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程と、
前記感光性ドライフィルムを前記補助電極のパターンに対応させて露光し現像することによりパターニングする工程と、
前記感光性ドライフィルムからなるパターンをマスクにして前記熱発泡性樹脂をパターニングする工程と、
前記感光性ドライフィルムからなるパターンを覆って前記基板上に前記発光機能層の形成材料を気相成膜法で成膜し、前記画素領域に発光機能層を形成する工程と、
前記熱発泡性樹脂からなるパターンを加熱してこれを発泡させ、これにより該熱発泡性樹脂を含む感光性ドライフィルムパターンを剥離して前記補助電極を露出させる工程と、
前記補助電極及び前記発光機能層を覆って前記第2電極を形成する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このエレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、発光機能層の形成に先立って感光性ドライフィルム及び熱発泡性樹脂を補助電極のパターンに対応させてパターンニングしておくので、発光機能層の形成材料を蒸着法等の気相成膜法で成膜した後、熱発泡性樹脂を含む感光性ドライフィルムパターンを剥離して補助電極を露出させると、発光機能層の形成材料の成膜時などに付着した異物(パーティクル)が感光性ドライフィルムパターンの剥離に伴われて基板上から除去される。したがって、異物の付着・残留に起因するショートや輝線などの欠陥を防止することができる。
【0009】
また、前記のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法においては、前記熱発泡性樹脂は、前記感光性ドライフィルムの裏面に予め一体に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、補助電極を覆って基板上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程を、熱発泡性樹脂が一体化された感光性ドライフィルムをそのまま貼設すればよいことから、工程が容易になる。
【0010】
また、前記のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法においては、前記基板上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程では、基板上に形成された駆動回路部も覆って前記感光性ドライフィルムを貼設し、
前記感光性ドライフィルムをパターニングする工程では、得られるパターンを、前記駆動回路部を覆ったパターンにするのが好ましい。
このようにすれば、発光機能層の形成材料の成膜時などに駆動回路部上に異物が付着してしまっても、感光性ドライフィルムパターンを剥離することによってこの異物も基板上から容易に除去することができ、したがって駆動回路部での異物に起因するショートなどを防止することもできる。
【0011】
また、前記のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法においては、前記発光機能層の発光する光が白色光であり、
前記第2電極上に封止部を介して着色部を有する封止基板を貼着する工程を備えているのが好ましい。
このようにすれば、発光機能層からの白色光が着色部を透過することによって着色部の色に着色されることにより、カラー表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに適宜縮尺を異ならせてある。
まず、本発明のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法の説明に先立ち、本発明に係るエレクトロルミネッセンス装置の構造について説明する。なお、ここで説明するエレクトロルミネッセンス装置は、トップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と記す)とする。
【0013】
図1は、本発明に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図であり、図1において符号1は有機EL装置である。
この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とからなる配線構成を有し、走査線101…と信号線102…との各交点付近に画素領域X…を形成したものである。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0014】
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(スイッチング素子)112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT(スイッチング素子)123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極;第1電極)23と、該画素電極23と共通電極(陰極;第2電極)50との間に挟み込まれた発光機能層110とが設けられている。
【0015】
次に、本発明に係る有機EL装置1の具体的な態様を、図2〜図4を参照して説明する。ここで、図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図であり、図3は有機EL装置1を模式的に示す断面図、図4は、図3の要部を示す図であって、表示単位画素内の画素領域の構成及び作用を説明するための断面図である。
【0016】
図2に示すように本実施形態の有機EL装置1では、基板20上に各種配線、TFT、画素電極、各種回路を形成したことにより、発光機能層110を発光させる基体20Aを構成している。この基体20Aは、電気絶縁性を備える基板20と、スイッチング用TFT112に接続された画素電極23が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素領域X(図1参照)と、画素領域Xの周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線103…と、少なくとも画素領域X上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを備えて構成されている。
なお、本実施形態において画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0017】
実表示領域4においては、画素領域Xに対応して設けられた表示領域RGBが紙面左右方向に規則的に配置されている。また、表示領域RGBの各々は、紙面縦方向において同一色で配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。なお、この表示領域RGBについては、本例では後述するカラーフィルタ(着色部)によって規定されるようになっている。すなわち、表示領域RGBの各々に対応する各画素領域Xには、発光機能層110が設けられており、この発光機能層110は、TFT112、123の動作によって白色光を発光するようになっている。そして、発光機能層110で発光した白色光がカラーフィルタを透過することによってこのカラーフィルタの色に着色され、カラー表示をなすようになっているのである。また、表示領域RGBは一つの基本単位となって表示単位画素を構成しており、これによって該表示単位画素は、RGBの発光を混色させてフルカラー表示を行うようになっている。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80、80が配置されている。
【0018】
また、実表示領域4の図2中上方側には検査回路90が配置されている。この検査回路90は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であり、例えば、検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機EL装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。
【0019】
走査線駆動回路80および検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80及び検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、この有機EL装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0020】
次に、図3を参照して、有機EL装置1の断面構造を説明する。
有機EL装置1は、大きく分けると、前記の基体20Aと、封止基板30と、これら基板20Aと封止基板30との間を封止する封止部31とから構成されている。
ここで、基体20Aは、基板20上に設けられた層間絶縁膜21と、層間絶縁膜21上に設けられた隔壁22と、この隔壁22内に設けられた発光機能層110などを備えて構成されている。
【0021】
基板20は、透明性材料あるいは非透明性材料からなる基板である。透明性基板としては、ガラス基板や透明性の樹脂基板等が採用され、非透明性基板としては、金属基板や非透明性の樹脂基板が採用される。なお、本例では、前述したようにトップエミッション構造であることから、基板20としては、透明性基板、非透明性基板のいずれも採用可能である。
【0022】
層間絶縁膜21は、酸化シリコン膜(SiO)等によって形成されたもので、基板20上に設けられた走査線101…、信号線102…、電源線103…、スイッチング用TFT112、及び駆動用TFT123(以上図1記載)を覆って形成されたものである。この層間絶縁膜21は、その材料自身によってTFT112、123や各種配線101、102、103を埋設して平坦化させていることから、平坦化膜としても機能する層膜となっている。なお、本実施形態においては、層間絶縁膜21として酸化シリコン膜を採用したが、これに限定することなく、窒化シリコン膜(SiN)や酸窒化シリコン膜(SiON)などの絶縁材料を採用してもよい。
【0023】
また、層間絶縁膜21上には、前記駆動用TFT123にそれぞれ対応して画素電極(第1電極)23が形成されている。画素電極23は、Al等の光反射性金属からなる反射膜23aと、インジウム錫酸化物(ITO)等からなる透明導電膜23bとが積層された構造となっている。ただし、この画素電極23としては、光反射性金属のみの単層構造としてもよい。また、この画素電極23は、前記層間絶縁膜21に形成されたコンタクトホール内のプラグ(図示せず)を介して、前記の駆動用TFT123と電気的に接続されている。
【0024】
また、層間絶縁膜21上には、隣り合う前記画素電極23、23間の間隙を覆い、さらに画素電極23の周辺部に乗り上げた状態で、これら画素電極23、23間を絶縁し、画素領域Xを区画する隔壁22が形成されている。この隔壁22は、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の有機絶縁材料によって形成されたもので、非感光性樹脂あるいは感光性樹脂からなっている。また、この隔壁22には、前記画素電極23を露出させ、画素領域Xを形成する開口部22aが形成されている。
【0025】
このような開口部22a内に露出した画素電極23上、及び隔壁22の上面上には、これらを覆って発光機能層110が設けられている。この発光機能層110は、図示しないものの、画素電極23側から順に、正孔輸送層、正孔注入層、有機EL層、電子注入層、電子輸送層が積層され、形成されたものである。これら各層は、本例では蒸着法等の気相成膜法によって成膜され形成されたものである。なお、この発光機能層110の層構成については、必要に応じて適宜に変えることができ、例えば有機EL層を、複数の層からなる積層構造としてもよい。
【0026】
ここで、正孔輸送層や正孔注入層は、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の材料によって形成される。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が形成材料として例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0027】
有機EL層は、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質、Alq(アルミキレート錯体)などの有機エレクトロルミネッセンス材料によって形成される。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン又はポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。低分子発光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0028】
ただし、本例では、前述したようにこの有機EL層を含む発光機能層110は白色光を発光するようになっているため、前記材料としては、発光光が白色になるように適宜選択され用いられる。すなわち、白色光は、複数のピーク波長の色波長が合成された光であることから、このような複数のピーク波長の色波長が合成されるよう、前記材料が選択される。
【0029】
電子注入層や電子輸送層は、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等の材料によって形成される。具体的には、先の正孔輸送層や正孔注入層の場合と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が形成材料として例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0030】
このような構成からなる発光機能層110上には、特に前記隔壁22の上面上に、Al等の金属からなる補助電極115が形成されている。そして、この補助電極115を覆って前記発光機能層110上には、共通電極としての陰極(第2電極)50が形成されている。この陰極50は、蒸着法等によって形成されたMgAg等の薄膜からなるもので、発光機能層110で発光した光が良好に透過するよう、十分な透明度を有して形成されている。
【0031】
さらに、陰極50上には、これを覆ってSiON等からなる透明なパッシベーション膜55が形成されている。このパッシベーション膜55は、水分や酸素が外部から発光機能層110内に侵入するのを抑制するとともに、発光機能層110で発光した光を封止基板30側に透過させるよう、機能するものである。したがって、不透明な金属製のものは使用できず、前記の透明で緻密な酸化窒化膜が好適に用いられる。
【0032】
また、このパッシベーション膜55上には、透明接着層57を介して前記封止基板30が貼着されている。透明接着層57は、熱硬化型樹脂、または紫外線照射硬化型樹脂によって形成されたもので、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂からなるものである。そして、これらパッシベーション膜55及び透明接着層57により、基板20Aと封止基板30との間を封止する封止部31が形成されている。
【0033】
封止基板30は、光透過性と電気絶縁性とを備えた材質のもので、例えばガラス基板からなるものである。また、この封止基板30には、その内面、すなわち前記透明接着層57側の面にブラックマトリクス35とカラーフィルタ(着色部)37(37R、37G、37B)とが形成されている。
ブラックマトリクス35は、実表示領域4における画素領域Xの相互間、すなわち、前記隔壁22の直上に形成配置されたもので、Cr等の遮光性金属や樹脂ブラック等によって格子状に形成されたものである。このような構成によってブラックマトリクス35に囲まれた領域は、前記の画素領域Xとそれぞれ対応するようになっている。そして、このブラックマトリクス35に囲まれた領域に、カラーフィルタ37が形成配置されている。
【0034】
カラーフィルタ37は、画素領域Xとそれぞれ対応した位置、すなわち画素領域Xのほぼ直上に形成配置されたことにより、前述したように表示領域RGBを規定したものとなっている。つまり、本実施形態では、前述したように発光機能層110は白色光を発光するため、発光した白色光はカラーフィルタ37(37R、37G、37B)を透過することで着色され、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの波長域にピークをもつ光として出射する。したがって、前述したように発光機能層110で発光した白色光は、表示領域RGBが一つの基本単位となって表示単位画素を構成していることから、前記のRGBの発光が混色されることにより、この表示単位画素毎にフルカラー表示をなすようになっているのである。
【0035】
次に、このような構成からなる有機EL装置1の製造方法を基に、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態を説明する。
まず、従来と同様にして、基板20上に走査線101、信号線102、電源線103、スイッチング用TFT112、及び駆動用TFT123(以上図1に記載)を形成する。このようなTFTや各種配線の形成方法は、CVD法やスパッタ法等によって各種層膜を形成した後に、公知のフォトリソグラフィ法及びエッチング法等を用いてパターニングを行う。また、半導体層におけるソース領域及びドレイン領域を形成するには、イオンドーピング法等が採用される。
【0036】
次に、これらを覆って層間絶縁膜21を形成し、さらに、この層間絶縁膜21にコンタクトホールを形成し、その後、このコンタクトホール内に導電材料を埋め込んでプラグ(図示せず)を形成する。
次いで、層間絶縁膜21上に反射膜23aと透明導電膜23bとからなる画素電極(第1電極)23を形成し、前記プラグを介して該画素電極23と駆動用TFT123とを導通させる。この画素電極23の形成についても、スパッタ法、蒸着法等の気相成膜法による成膜法と、フォトリソグラフィ法及びエッチング法等を用いたパターニング法が採用される。
【0037】
次いで、画素電極23の側方に隔壁22を形成する。この隔壁22の形成方法としては、スピンコート法、ディップ法、スリットコート法等の湿式成膜法が好適に採用される。また、成膜後には、熱処理等を施して樹脂の硬化を行い、公知のフォトリソグラフィ法及びエッチング法によってパターニングすることで、開口部22aを形成する。また、液滴吐出法を用いて隔壁22を形成してもよい。
このような工程を経ることにより、図4(a)に示すように前記基板20上に画素電極23と隔壁22とを形成する。なお、図4(a)では、駆動用TFT123等の図示を省略している(以下、同様)。
【0038】
次いで、本実施形態では、スパッタ法等により補助電極材料としてのAlを全面に成膜する。そして、公知のレジスト法、及びフォトリソグラフィ法によってレジストマスクを作製し、さらにこのレジストマスクを用いてエッチングを行うことにより、図4(b)に示すように隔壁22上に補助電極115を形成する。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、前記補助電極115を覆って前記基板20上の全面に熱発泡性樹脂60を介して感光性ドライフィルム61を貼設する。すなわち、図2に示した走査線駆動回路(駆動回路部)80や検査回路90、さらにはその外側に位置する各種配線等をも覆って感光性ドライフィルム61を貼設する。この感光性ドライフィルム61は、レジスト材料と同じ機能を有するもので、露光処理によって露光部あるいは非露光部が選択的に現像され、除去されるものである。このような感光性ドライフィルム61としては、東京応化工業株式会社製の「ORDYL E4025(商品名)」(25μm膜厚用)や「ORDYL E4040(商品名)」(40μm膜厚用)が好適に用いられる。また、熱発泡性樹脂60は、加熱により発泡する発泡剤を含有したもので、例えば日東電工株式会社製の「リバアルファ」(商品名)が好適に用いられる。
【0040】
ここで、これら感光性ドライフィルム61及び熱発泡性樹脂60としては、感光性ドライフィルム61の裏面に熱発泡性樹脂60が予め一体に付着させられたもの、すなわちラミネートされたものが好適に用いられる。このようにラミネートされたものを用いることにより、感光性ドライフィルム61の貼設工程を容易にすることができる。
【0041】
次いで、前記感光性ドライフィルム61を前記補助電極115のパターンに対応させ、露光し現像することによってパターニングする。すなわち、図2に示した実表示領域4においては、前記補助電極115と同じ平面形状となるように感光性ドライフィルム61をパターニングする。また、図2に示した実表示領域4以外の箇所については、現像によって除去することなく、前記走査線駆動回路80(駆動回路部)等を覆ったままにしておく。感光性ドライフィルム61の露光・現像処理については、例えば200mJ/cmの強度で露光し、その後現像液(例えばADS−2000U[商品名])に90秒浸漬し、さらに流水で5分洗浄することで行う。
【0042】
次いで、図5(a)に示すように、このようにして得られた感光性ドライフィルム61からなるパターン61aをマスクにして熱発泡性樹脂60をパターニングし、前記パターン61aと同じ平面形状のパターン60aを形成する。この熱発泡性樹脂60のパターニングについては、例えばRIE処理装置によるOプラズマ処理によって行うことができる。具体的には、処理雰囲気の圧力を0.2Torrとし、Oの流量を30sccmとし、200Wで20分アッシング処理することで行う。
【0043】
次いで、図5(b)に示すように、感光性ドライフィルム61からなるパターン61aを覆って基板20上の全面に、発光機能層110の形成材料を蒸着法(気相成膜法)で成膜する。すなわち、正孔輸送層、正孔注入層、有機EL層、電子注入層、電子輸送層の各形成材料を、蒸着法によってこの順に成膜する。これにより、前記パターン61aに覆われることなく露出した隔壁22の開口部22a内に、発光機能層110が形成される。すなわち、図2に示した実表示領域4の各画素領域Xに、それぞれ発光機能層110が形成される。なお、この成膜により、感光性ドライフィルム61からなるパターン61a上にも、発光機能層110の形成材料が成膜される。
【0044】
このとき、このように蒸着法で成膜を行うと、蒸着装置内には異物(パーティクル)などが多く存在することなどから、図5(b)に示したように、発光機能層110上に異物(パーティクル)Pが付着してしまうことがある。また、これに先立って搬送した際に、異物Pが付着してしまうこともある。
そこで、この成膜工程の後、基板20を適宜な温度に加熱することで、前記熱発泡性樹脂60からなるパターン60aを加熱し、これを発泡させる。すると、このパターン60aを形成している熱発泡性樹脂60は、発泡によってその接着力が大幅に低下する。これにより、このパターン60aを介すことで補助電極115等の上に貼着されていた感光性ドライフィルム61からなるパターン61aは、補助電極115等から容易に剥離可能となる。
【0045】
そして、このようにして加熱によりパターン61aを剥離可能にしたら、このパターン61aを剥離する。これにより、図5(c)に示すようにこのパターン61aを、熱発泡性樹脂60からなるパターン60aとともに、補助電極115上(基板20上)から除去し、補助電極115を露出させる。このとき、感光性ドライフィルム61からなるパターン61aの剥離に伴われて、発光機能層110上などに付着した異物(パーティクル)Pも基板20上から除去される。すなわち、補助電極115上においてパターン61a上に直接載っている異物Pはもちろん、発光機能層110上にあっても一部がパターン61a上に載っている比較的大きな異物Pなども、パターン61aの剥離に伴われ、基板20上から除去されるのである。また、このパターン61aの剥離により、図2に示した実表示領域4以外の箇所についても、ここに載った異物Pが除去される。
【0046】
次いで、前記補助電極115及び前記発光機能層110を覆って陰極材料としてのMgAgを蒸着法によって成膜し、補助電極115に導通する陰極(共通電極;第2電極)50を形成する。
次いで、この陰極50上にパッシベーション膜55をCVD法等によって形成する(図3参照)。その後、ブラックマトリクス35及びカラーフィルタ37を形成した状態で別に用意した封止基板30を、透明接着層57を介して前記基板20のパッシベーション膜55上に貼着し、図3に示した有機EL装置1を得る。
【0047】
このような有機EL装置1の製造方法にあっては、熱発泡性樹脂60のパターン60aを加熱により発泡させた後、このパターン60aとともに感光性ドライフィルム61のパターン61aを剥離して補助電極115を露出させるようにしたので、発光機能層110の形成材料の成膜時などに付着した異物(パーティクル)Pをパターン61aの剥離によって基板20上から除去することができ、したがって、異物Pの付着・残留に起因するショートや輝点・輝線などの欠陥を防止することができる。
【0048】
また、感光性ドライフィルム61のパターン61aを、走査線駆動回路(駆動回路部)80等を覆ったパターンに形成しているので、発光機能層110の形成材料の成膜時などに走査線駆動回路(駆動回路部)80等の上に異物Pが付着してしまっても、パターン61aを剥離することによってこの異物Pも基板20上から容易に除去することができる。したがって、走査線駆動回路(駆動回路部)80等での異物に起因するショートなどを防止することもできる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば前記実施形態では、発光機能層110として特にその有機EL層を、発光した光が白色光となるように形成したが、この有機EL層(発光機能層110)を、各画素領域X毎に赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの波長域にピークをもつ光、すなわち着色光として発光させるようにしてもよい。その場合に、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)の色については、対応する位置の画素領域Xの発光機能層110での発光光(着色光)と同じ色とする。このように構成することにより、発光機能層110での発光光(着色光)の色とこれが透過するカラーフィルタ37(37R、37G、37B)の色とが同じ色であることから、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)を透過した光はその色純度がさらに高いものとなり、表示性能がより一層向上する。
【0050】
また、このように有機EL層(発光機能層110)で着色された光が発光するように構成した場合には、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)を設けることなく、必要に応じてブラックマトリクス35のみを設けることで、封止基板を形成してもよい。このようにしても、着色された光が直接封止基板から出射することにより、フルカラー表示が可能となる。
また、カラーフィルタ37についても、前記実施形態ではRGBの3色系のものを用いるようにしたが、多色系、すなわちRGBにW(白)を加えた4色系のものや、さらには6色系のものなどを用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、本発明のEL装置をトップエミッション型の有機EL装置に適用したが、本発明は無機EL装置にも適用可能であり、さらにボトムエミッション型にも適用可能である。
【0051】
次に、本発明に係る電子機器について説明する。
本発明によって得られた有機EL装置1は、特に電子機器における表示部として用いることができる。このような電子機器としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
図6(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6(a)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図6(b)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理本体、符号602は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図6(c)において、符号700は時計本体を示し、符号701は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(a)〜(c)に示す電子機器は、先の実施形態に示したように、ショートや輝点・輝線などの欠陥が防止された有機EL装置1が備えられたものであるので、高い表示特性を有する良好な電子機器となる。
【0052】
なお、電子機器としては、前記電子機器に限られることなく、種々の電子機器に本発明を適用することができる。例えば、ディスクトップ型コンピュータ、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本発明に係る有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明に係る有機EL装置を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の製造方法を説明するための要部断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の製造方法を説明するための要部断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明に係る有機EL装置を備える電子機器を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1…有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)、20…基板、20A…基体、22…隔壁、23…画素電極(陽極;第1電極)、37、37R、37G、37B…カラーフィルタ(着色部)、30…封止基板、50…共通電極(陰極;第2電極)、60…熱発泡性樹脂、60a…パターン、61…感光性ドライフィルム、61a…パターン、110…発光機能層、115…補助電極、X…画素領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた発光機能層と、該発光機能層上に設けられた第2電極とを備え、前記基板上に設けられた隔壁によって区画された複数の画素領域にそれぞれ前記発光機能層を有し、前記隔壁上に前記第2電極と接合する補助電極を有してなるエレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板上に第1電極と隔壁とを形成する工程と、
前記隔壁上に前記補助電極を形成する工程と、
前記補助電極を覆って前記基板上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程と、
前記感光性ドライフィルムを前記補助電極のパターンに対応させて露光し現像することによりパターニングする工程と、
前記感光性ドライフィルムからなるパターンをマスクにして前記熱発泡性樹脂をパターニングする工程と、
前記感光性ドライフィルムからなるパターンを覆って前記基板上に前記発光機能層の形成材料を気相成膜法で成膜し、前記画素領域に発光機能層を形成する工程と、
前記熱発泡性樹脂からなるパターンを加熱してこれを発泡させ、これにより該熱発泡性樹脂を含む感光性ドライフィルムパターンを剥離して前記補助電極を露出させる工程と、
前記補助電極及び前記発光機能層を覆って前記第2電極を形成する工程と、を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱発泡性樹脂は、前記感光性ドライフィルムの裏面に予め一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板上に熱発泡性樹脂を介して感光性ドライフィルムを貼設する工程では、基板上に形成された駆動回路部も覆って前記感光性ドライフィルムを貼設し、
前記感光性ドライフィルムをパターニングする工程では、得られるパターンを、前記駆動回路部を覆ったパターンにすることを特徴とする請求項1又は2記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項4】
前記発光機能層の発光する光が白色光であり、
前記第2電極上に封止部を介して着色部を有する封止基板を貼着する工程を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−165215(P2007−165215A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362852(P2005−362852)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】