説明

エレトリプタンと重炭酸ナトリウムを含む医薬組み合わせ物

本発明は、(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、および(b)重炭酸ナトリウムから成る組み合わせ物を提供する。前記組み合わせ物は、経口で摂取された時にエレトリプタンの迅速な吸収を提供する。前記組み合わせ物は、5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレトリプタンまたはその医薬として許容される塩と、重炭酸ナトリウムを含む組み合わせ物、5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防のためのそのような組み合わせ物の使用、およびそのような組み合わせ物を含む製剤または物(product)に関する。
【背景技術】
【0002】
エレトリプタン、3-{[1-メチルピロリジン-2(R)-イル]メチル}-5-(2-フェニルスルフォニルエチル)-1H-インドールと、その製造方法が、米国特許第5,607,951号で開示される。
【0003】
エレトリプタンは、強力な5-HT1アゴニストであり、そして高血圧、うつ病、不安、摂食障害、嘔吐、薬物乱用、群発性頭痛、(月経偏頭痛および再発性偏頭痛を含む)偏頭痛、疼痛、慢性発作性片頭痛、または血管障害に関係する頭痛の治療に使用される(US-B-5,607,95、WO-A-96/06842、およびWO-A-00/32589を参照のこと)。
【0004】
エレトリプタンは、子供の頭痛の治療、緩やかな偏頭痛の治療、月経偏頭痛および初期偏頭痛(early migrain)の治療、そして外傷後の頭部と頸部の損傷、混合性頭痛および、緊張性頭痛の治療において有用である。
WO-A-00/06161で開示されるように、エレトリプタンは再発偏頭痛の予防にも有用である。
【0005】
エレトリプタンの経口投与に好適な医薬組成物、または医薬として許容されるその塩、例えば錠剤もしくはカプセルは、例えば接着剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、または加湿薬のような医薬として許容される賦形剤を用いた伝統的な手段によって準備されることが知られる。
【0006】
そのような組成物は、胃腸管内で溶けて、そして放出された薬物は特定のタイムラグの後に血流中に吸収される。例えば、エレトリプタンがWO-A-96/06842で開示されたα-多型臭化水素酸塩の形態で投与される時、標準的な錠剤と、血流(Tmax)中の薬物の最大の血漿濃度は、断食した患者における約1時間から食事をした患者における約4時間までの範囲にわたることが観察される。
【0007】
問題として、胃部の体液流停止を引き起こすことによって、偏頭痛の発作が、薬物吸収を遅らせるTmaxをさらに増やしうる。例えば30mgのエレトリプタンを34匹の断食対象に投与して偏頭痛のありとなしのある研究において、偏頭痛がない患者と比べた場合に(Tmax 1.3±1.3h)、Tmaxは、偏頭痛の患者において大幅に遅くなった(Tmax 2.8±2.1h)。
【0008】
明らかに、経口によるエレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩の投与と、血流による着目の組織への薬物のデリバリーによって引き起こされる症状の軽減の間のタイムラグを最小限にすべき必要性が存在する。
【発明の開示】
【0009】
エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩が経口経路を介して重炭酸ナトリウムとの組み合わせ物として投与される場合、経口投与と薬物の最大血漿レベルの間のタイムラグが劇的に短縮され、いくつかのケースで30分ほどに短く短縮されることがここで驚いたことに発見された。症状の相応に速い改良に起因する患者の利益は自明である。
従って、本発明はエレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、重炭酸ナトリウムの組み合わせ物を提供する。
【0010】
本発明は、薬剤としての使用のための、エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、重炭酸ナトリウムの組み合わせ物をさらに提供する。
本発明は、5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防における使用、特に偏頭痛の治療、または偏頭痛再発の予防における使用のための、エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、重炭酸ナトリウムの組み合わせ物をさらに提供する。
【0011】
本発明は、5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防のための薬剤の製造のために、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防のために、(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、または(b)重炭酸ナトリウムの使用をさらに提供する、ここで、(a)と(b)は、経口経路によって、別々に、連続して、または同時に摂取される。
【0012】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、5-HT1アゴニストの適応がある病気を治療するかまたは予防する方法、特に偏頭痛を治療するかまたは偏頭痛再発を予防する方法であって、(a)効果的な量のエレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、(b)効果的な量の重炭酸ナトリウムの経口経路による同時に、別々に、または連続した投与を含む前記方法をさらに提供する。
【0013】
本発明は、エレトリプタンか、または医薬として許容されるその塩、重炭酸ナトリウム、および医薬として許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む経口投与に好適な医薬組成物をさらに提供する。
本発明は、5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防において経口投与によって同時に、別々に、または連続した使用のための複合製剤としての、(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、(b)重炭酸ナトリウムを含む物をさらに提供する。
エレトリプタンの医薬として許容されるその塩が、その酸付加塩およびその塩基性塩を含む。
【0014】
好適な酸付加塩が、無毒の塩を形成する酸から形成される。例は、酢酸、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシレート、重炭酸塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、メチル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メチル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素リン酸塩/二水素リン酸塩、サッカラート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシレート、およびトリフルオロ酢酸塩を含む。
【0015】
好適な塩基性塩は、無毒の塩を形成する塩基から形成される。例は、アルミニウム、アルギニン、ベンザシン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛の塩を含む。
【0016】
好適な塩に対する論評については、StahlとWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照のこと。
本発明に照らして好ましいエレトリプタンの塩は、臭化水素酸塩およびヘミ硫酸塩(WO-A-96/06842とWO-A-01/23377を参照のこと)、特に臭化水素酸塩である。
【0017】
エレトリプタンの医薬として許容されるその塩は、必要に応じて、エレトリプタンと所望の酸または塩基を一緒に混ぜることによって容易に準備ができる。前記塩は、溶液から沈殿して、そしてろ過によって回収されるか、または溶剤の留去によって回収される。
同様に、水和物、および結晶化溶剤が同位体的に置換されうる溶媒和化合物(例えば、D2O、d6-アセトン、d6-DMSO)を含むエレトリプタンの医薬として許容される溶媒和化合物が、本発明の範囲内にある。
【0018】
同様に、包接複合体、前述の溶媒和化合物とは対照的に、薬物および宿主が化学量論的または非化学量論的な量で存在する薬物-宿主包接複合体(drug-host inclusion complexes)が、本発明の範囲内にある。そのような複合体の概説のために、HaleblianによるJ. Pharm. Sci. 64(8), 1269-1288(1975年8月)を参照のこと。
【0019】
エレトリプタンのあらゆる多型体、または医薬として許容されるその塩が、本発明で使われうる。特に好ましいものは、WO-A-96/06842に記載の臭化水素酸エレトリプタンのα-多型、およびWO-A-01/23377の請求項によって規定されたヘミ硫酸エレトリプタン(eletriptan hemisulphate)の多型であり、特に前者である。
【0020】
同様に、エレトリプタンと医薬として許容されるその塩のいわゆる「プロドラッグ」が本発明の範囲内にある。このように、それら自体は少ししか、または少しの薬理活性も持っていないエレトリプタンとその塩の特定の誘導体は、身体内または身体上への投与によって、例えば代謝または加水分解開裂によってエレトリプタンそれ自体に変換されることができる。そのような誘導体が「プロドラッグ」と呼ばれる。プロドラッグの使用についての詳細が、'Pro-drugs as Novel Delivery Systems', Vol. 14, ACS Symposium Series (T Higuchi and W Stella) and 'Bioreversible Carriers in Drug Design', Pergamon Press, 1987 (ed. E B Roche, American Pharmaceutical Association)に見られる。
【0021】
本発明によるプロドラッグは、例えば、エレトリプタン内にある適切な官能性を、例えばH Bundgaardによる"Design of Prodrugs"(Elsevier, 1985)に「プロ部分(pro-moieties)」と記載の当業者に知られる特定の部分と置き換えることによって製造されることができる。
【0022】
エレトリプタンの場合に、特別重要なプロドラッグは、例えば水素原子の(C1-C10)アルカノイルによる置換による、インドールNH基の誘導体である。
【0023】
同様に、本発明は、エレトリプタンのあらゆる医薬として許容される同位体的な変異体、および医薬として許容されるその塩を含む。同位体的な変異体は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号をもつが、天然に通常見られる原子質量と異なる原子質量をもつ原子と置き換えられたものと規定される。可能な同位元素の例は、水素の同位元素、例えば2Hと3H、炭素の同位元素、例えば13Cと14C、窒素の同位元素、例えば15N、酸素の同位元素、例えば17Oと18O、リンの同位元素、例えば、32P、硫黄の同位元素、例えば35S、フッ素の同位元素、例えば18F、ならびに塩素の同位元素、例えば36CIを含む。
【0024】
例えば重水素、すなわち2Hのような同位元素での置換は、より大きな新陳代謝安定性、例えば長いin vivoでの半減期または低い投与量要求、から得られる特定の治療のための利点を与え、それ故にいくつかの情況において好ましいであろう。
例えば、放射性同位体を内蔵しているもののような特定の同位体的な変異体は、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体、トリチウム、すなわち3H、と炭素14、すなわち14Cは、容易な取り込みおよび検出の即座の検出手段の観点からこの目的に特に有用である。
【0025】
エレトリプタンとその塩の同位体的変異体は、当業者に知られる伝統的な技術、または好適な試薬の適切な同位体的変異体を使ったエレトリプタンの準備のために当該技術分野で説明されるものと類似した方法によって一般に作製されることができる。
エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、重炭酸ナトリウム(これからは、「本発明の化合物」)は、凍結乾燥されるか、スプレードライされるか、または留去により乾かされて、結晶性または非結晶性の材料の固形プラグ、粉末、またはフィルムを提供する。マイクロ波または高周波乾燥がこの目的のために使われうる。
【0026】
本発明の化合物は単独で投与されうるが、1種類以上の医薬として許容される賦形剤を伴う製剤として一般に投与される。用語「賦形剤」は、本発明の化合物以外の全ての成分について述べるために本明細書中で使用される。
本発明の化合物は経口投与される。経口投与に好適な製剤は、例えば錠剤のような固形製剤、(微粒子、液体、または粉末を含む)カプセル、(液体入りを含む)ロゼンジ、チューズ、マルチ-およびナノ-微粒子、ゲル、(粘膜接着剤を含む)フィルム、オビュール(ovules)、噴霧剤、ならびに液剤を含む。
【0027】
液剤は、懸濁液剤、溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。そのような製剤は、ソフトまたはハード・カプセル内に充填剤として利用され、担体、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または好適なオイル、ならびに1種類以上の乳化剤および/または懸濁化剤を一般に含むかもしれない。同様に、液剤は、固体、例えばサシェ(sachet)からもどすことによって準備されうる。
同様に、本発明の化合物は、すぐに解ける、すぐに崩壊する剤形、例えばLiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents, 11(6), 981-986(2001)に記載のもの、が使用されるかもしれない。
【0028】
錠剤は崩壊剤を一般に含む。崩壊剤の例は、グリセリン・デンプン・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、クロスカメロース・ナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微細結晶性セルロース、低級アルキルによって置換されたヒドロキシプロピル・セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムを含む。一般的に、崩壊剤は、剤形の1wt%〜25wt%、好ましくは5wt%〜20wt%を含む。本発明に従って作製された錠剤が崩壊剤として微細結晶性セルロースを含むべきであることが好ましい。
【0029】
結合剤は、錠剤製剤に凝集性特質を加えるために一般に使用される。好適な結合剤は、微細結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピル・セルロース、およびヒドロキシプロピル・メチルセルロースを含む。同様に、錠剤は、例えば (一水和物、スプレードライされた一水和物、無水などの)ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、微細結晶性セルロース、デンプン、およびリン酸水素カルシウム二水和物のような希釈剤を含むかもしれない。本発明によって作製される錠剤は結合剤として微細結晶性セルロースを含むべきであることが好ましい。
【0030】
同様に、錠剤は場合により、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80のような界面活性剤、ならびに例えば二酸化ケイ素および滑石のような流動促進剤を含むかもしれない。提供される時に、界面活性剤を錠剤の0.2wt%〜5wt%含み、そして流動促進剤を錠剤の0.2wt%〜1wt%含むかもしれない。
【0031】
同様に、錠剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリル・フマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物のような潤滑剤を一般に含む。潤滑剤を錠剤の0.25wt%〜10wt%、好ましくは0.5wt%〜3wt%一般に含む。本発明により作製される錠剤が潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含むべきであることは好ましい。
他の考えられる成分は、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および調味料(taste-making agents)を含む。
【0032】
典型的な錠剤は、最大で約80%の薬物、約10wt%〜約90wt%の結合剤、約0wt%〜約85wt%の希釈剤、約2wt%〜約10wt%の崩壊剤、そして約0.25wt%〜約10wt%の潤滑剤を含む。
錠剤混合物は、直接またはローラーによって圧縮されて、錠剤を形成する。あるいは、錠剤混合物または混合物の一部は、打錠前に、湿-、乾-、または融解-粒状にされるか、融解-凝固されるか、あるいは押し出されるかもしれない。最終的な剤形は、1以上の層を含むか、またはコートされるかまたはコートされないかもしれない;それはカプセル化されることさえできる。
錠剤の剤形は、"Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1", by H. Lieberman and L. Lachman, Marcel Dekker, N.Y., N.Y., 1980 (ISBN 0-8247-6918-X)に記載されている。
【0033】
本発明の化合物は、それらの溶解度、崩壊速度、調味、生物学的利用能、および/または安定性を改善するために、例えばシクロデキストリンまたはポリエチレングリコール含有ポリマーのような可溶性高分子体と組合されうる。包接複合体も非包接複合体も使用されうる。薬物との直接的な複合体形成の代わりとして、シクロデキストリンが補助添加剤として、すなわち、担体、希釈剤または可溶化剤として使用されうる。例が国際特許出願WO-A-91/11172、WO-A-94/02518、およびWO-A-98/55148に見られるように、アルファ-、ベータ-、およびガンマ-シクロデキストリンがこれらの目的のために最も一般に使用される。
【0034】
ヒト患者への投与のために、エレトリプタンの全日用量は、一般に単回または分割用量で0.1mg〜4mg/kgの範囲内にある。40mgの単回の1服目が現在推薦される。とにかく、内科医はあらゆる個々の患者に最も好適な実際の投与量を決定して、そしてそれは特定の患者の年齢、体重および応答によって変化するであろう。当然、上述の投与量が平均的なケースの模範的であって、高いかまたは低い投与量範囲がふさわしい個々の例があるかもしれず、そのようなものは本発明の範囲内にある。
【0035】
よって、本発明による錠剤またはカプセルは、必要に応じて、単回または2回以上の投与に関して、5〜240mg、好ましくは5〜100mgのエレトリプタンを一般に含む。特に好ましい本発明の態様において、(a)単独での投与のためのその臭化水素酸塩の形態の40mgのエレトリプタン、または(b)一度に2つの投与のためのその臭化水素酸塩の形態の20mgのエレトリプタンを含む錠剤が提供される。
【0036】
血清(150mM)とほぼ等張の十二指腸の濃度を得るために、好ましくは、十分な重炭酸ナトリウムが投与されるべきである。それで、例えば、本発明の組み合わせ物が断食したボランティアにタンブラー半分の水(100ml)と一緒に摂取されるべき場合に、そのような等張溶液を提供するのに1260mgの重炭酸ナトリウムが必要とされる。そのような量の重炭酸ナトリウムは、都合よく1つの錠剤に組み入れられるのには多すぎる。よって、組み合わせ物は、同時に錠剤の形態で投与されることになっている場合、一度に2つを投与するための約630mgの重炭酸ナトリウムを含む錠剤が提供されるのが好ましい。あるいは、本発明の組み合わせ物が50mlの水と一緒に摂取されることになっている場合、約630mgの重炭酸ナトリウムを含む1つの錠剤が好ましい。
【0037】
1の態様において、本発明による組み合わせ物または製剤(特に錠剤)は、50重量%超(より好ましくは55%超)の重炭酸ナトリウムを含む。
好ましくは両方の化合物を含む錠剤の形態で、エレトリプタンまたはその塩と、重重炭酸イオンが同時に投与されることが好ましい。
好ましくは、そのような錠剤は、300〜1300mg、最も好ましくは約630mgの重炭酸ナトリウムとの組み合わせ物で、(その臭化水素酸塩の形態で)20〜40mgのエレトリプタン)を含む。
好ましくは、そのような錠剤は、約630mgの重炭酸ナトリウムとの組み合わせ物で、(その臭化水素酸塩の形態で)20〜40mg、最も好ましくは20または40mgのエレトリプタンを含む。
【0038】
同様に、エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩と、重炭酸ナトリウムの当該組み合わせ物は、1つ以上のさらなる有効成分との組み合わせ物で投与されうる。そのようなさらなる有効成分の例は、以下のものを含む:
(a) さらなる抗偏頭痛薬、特に、例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、アビトリプタン、フロバトリプタン、またはゾルミトリプタンといったさらなるトリプタン;
(b) 運動促進剤、例えばWO-A-02/070070に記載のもの、例えばメトクロプラミド;
(c) 例えば、カフェイン、テオフィリン、またはテオブロミンのようなアルキルキサンチン化合物、特にカフェイン;そして
(d) 例えばCOX−2抑制因子、例えばセレコキシブまたはバルデコキシブといった非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)。
【0039】
本発明のさらなる態様において、同様に、エレトリプタンまたはその塩と、重炭酸ナトリウムの組み合わせ物は、水性媒質にさらされた場合に、上記組み合わせ物が発泡性の様式で溶けるように、さらに医薬として許容される酸性の剤を含むかもしれない。好適な医薬として許容される酸性の剤の例は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、メソシュウ酸、コハク酸、および酒石酸を含む。クエン酸およびアジピン酸が好ましい。
【0040】
治療に対する本明細書中の全ての参考文献が、治療法、苦痛緩和、予防処置を含むことは認識されるべきである。
本発明の組み合わせ物は、錠剤が一緒に摂取されうる好適な量の水と一緒に、錠剤の形態で都合よく提供されるかもしれない。
従って、本発明がさらに(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、(b)重炭酸ナトリウム、(c)水、ならびに(d)好適な包装を含む物を提供する。
【0041】
好ましくは、そのような物は、(a)各々が(その臭化水素酸塩の形態の)20mgのエレトリプタンと、約630mgの重炭酸ナトリウム、そして約100mlの水を含む2錠の錠剤、あるいは(b)(その臭化水素酸塩の形態の)40mgのエレトリプタンと、約630mgの重炭酸ナトリウムと、約50mlの水を含む1錠の錠剤のどちらかを含む。
【0042】
本発明が単にエレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩に関してだけ先に記載されたが、あらゆる5-HT1アゴニストが、経口経路でデリバリーされる時に胃腸管内吸収率の増加を得るために、原則として重炭酸ナトリウムと組み合わされることができることが示された。そのような5-HT1アゴニストは、アルモトリプタン、アルナトリプタン(alnatriptan)、アビトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタンを含む。
従って、本発明は、5-HT1アゴニストと重炭酸ナトリウムを含む、経口投与および胃腸管内薬物吸収のために適合させた非発泡性組成物をさらに提供する。
【0043】
この文脈において、非発泡性は、上記組成物がpH7の水中に溶かされた時に、発泡が観察されないことを意味する。
先に記載のとおり、エレトリプタンと重炭酸ナトリウムの組み合わせ物に関連する全ての好ましい特徴は、5-HT1アゴニストと重炭酸ナトリウムを含む非発泡性組成物に同じく適用される。特に、1つの態様において、上記組成物は、50重量%超(より好ましくは55%超)の重炭酸ナトリウムを含む。
以下の実施例は本発明を説明する。
【実施例】
【0044】
実施例1-4
臭化水素酸エレトリプタンと重炭酸ナトリウムを含む錠剤
臭化水素酸エレトリプタン(24.24mg、20mgのエレトリプタン遊離塩基に相当物)、重炭酸ナトリウム(USP、630mg)、および微細結晶性セルロース(Avicel PH 102、Ph. Eur.、137.76mg)の混合物を、10分間混ぜ合わせ、500μMのふるいを通して、そしてさらに10分間混ぜ合わせた。ふるいにかけた粒内ステアリン酸マグネシウム(Ph. Eur.、8mg)を加え、そしてその混合物を5分間滑らかにした。そうして得られた混合物が、約200μm〜1mmの粒径範囲を持ち、かつ、優れた流動特性を持つことが判明した。前記混合物を、直接打錠法によって錠剤にした。そうやって製造された錠剤は、優れた重量均一性と破砕性を持っていた。
【0045】
驚いたことに、2.5%w/wの錠剤組成物でのエレトリプタンは、錠剤に割り増しの強度を与えることができ、プラシーボ混合物から製造された錠剤と比べて0.7kpの錠剤硬度の増加によって証明される。
【0046】
表1の実施例2〜4は、実施例1の方法に従って作製されたさらなる錠剤を説明する。実施例3および4の場合に、ラクトースおよびクロスカメロース・ナトリウムを混ぜ合わせる前に最初の混合物に加えた。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例5
標準的な臭化水素酸エレトリプタン錠剤と比較した臭化水素酸エレトリプタン/重炭酸ナトリウム錠剤の薬物動態学的評価
この研究の目的は、単回の経口用量として重炭酸ナトリウムありおよびなしのエレトリプタンを含む錠剤の投与後の4匹のビーグル犬におけるエレトリプタン血漿濃度を計測し、それによりエレトリプタンの吸収および暴露の速度に対する重炭酸ナトリウム判断を決定する。
【0049】
以下の2つの製剤を比較した:
(a) 50mlの水と一緒に摂取される臭化水素酸エレトリプタンを含む市販の20mg錠剤;と
(b) 50mlの水と一緒に摂取される実施例1の錠剤。
【0050】
雄2匹と雌2匹の4匹のビーグルを研究で使用した。各々のビーグルに研究製剤の一方を与えて、その後引き続き24時間(最初の45分間は5分ごと)血液サンプルを採取してエレトリプタンの血漿レベルを監視した。前記ビーグルに続いてもう一方の剤形を与えて、血液サンプルを同じやり方で採取した。処置と処置の間で少なくとも1週間を経過させた。
【0051】
前記研究の結果を表2に載せた。主要な薬物動態学的パラメータTmax(最大血漿濃度までの時間)、Cmax(最大血漿濃度)、およびAUC(薬物への暴露の合計−0〜無限値の曲線下の領域)の平均値を、各々のイヌの平均値として与えた。剤形(b)の場合に、1匹の犬が処置の15分後に嘔吐し、計算に含まれなかった変則的な結果をもたらした。同様に、平均値からの標準偏差を載せた。
【0052】
【表2】

【0053】
前記結果は、2.8時間(±2.2)の平均から1.2時間の平均(±0.3)へのTmaxの短縮、すなわち57%のTmaxの平均短縮、によって示されるように、50mlの水を伴う20mgのエレトリプタンと630mgの重炭酸ナトリウムを含む錠剤の投与が50mlの水を伴う商業的な20mgのエレトリプタンの錠剤の投与よりも薬物のより迅速な吸収をもたらすことを示した。Cmaxの対応する増加は、22.6ng/mlの平均から31.8ng/mlの平均までである。AUCによって計測される全般的な曝露は類似している。さらに、動物間の変動性は、標準的な剤形(a)の投与と比べた場合に、重炭酸ナトリウムを含む剤形(b)の投与の後に大きく減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、および(b)重炭酸ナトリウムから成る組み合わせ物。
【請求項2】
前記(a)が臭化水素酸エレトリプタンまたはヘミ硫酸エレトリプタンである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
薬剤として使用するための、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防に使用するための、請求項1または2に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防のための薬剤の製造のための(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、あるいは(b)重炭酸ナトリウムの使用であって、上記(a)と(b)が経口経路によって別々に、連続して、または同時に摂取されるべきである前記使用。
【請求項6】
ヒトを含む哺乳動物において5-HT1アゴニストの適応がある病気を治療または予防する方法、特に偏頭痛を治療するかまたは偏頭痛再発を予防する方法であって、(a)効果的な量のエレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩および(b)効果的な量の重炭酸ナトリウムを経口経路によって同時に、別々に、または連続して投与することを含む前記方法。
【請求項7】
前記(a)が臭化水素酸エレトリプタンまたはヘミ硫酸エレトリプタンである、請求項5に記載の使用または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の組み合わせ物、および医薬として許容される賦形剤を含む経口投与に適合させた医薬組成物。
【請求項9】
錠剤の形態の請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
臭化水素酸エレトリプタン、重炭酸ナトリウム、微細結晶性セルロース、およびステアリン酸マグネシウムを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
5-HT1アゴニストの適応がある病気の治療または予防、特に偏頭痛の治療または偏頭痛再発の予防において経口投与による同時に、別々に、または連続して使用するための複合製剤としての(a)エレトリプタンまたは医薬として許容されるその塩、および(b)重炭酸ナトリウムを含む物。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物のいずれか1つを含む、請求項11に記載の物。
【請求項13】
前記エレトリプタンまたはその塩および重炭酸ナトリウムの経口投与を容易にするのに好適な一定量の水をさらに含む、請求項11または12に記載の物。
【請求項14】
(a)20mgの(その臭化水素酸塩の形態の)エレトリプタンおよび約630mgの重炭酸ナトリウム、ならびに約100mlの水を各々が含む2錠の錠剤、または(b)40mgの(その臭化水素酸塩の形態の)エレトリプタンおよび約630mgの重炭酸ナトリウム、ならびに約50mlの水を含む1錠の錠剤のいずれかを含む、請求項13に記載の物。
【請求項15】
5-HT1アゴニストおよび重炭酸ナトリウムを含む、経口投与および胃腸管内薬物吸収に適合させた非発泡性組成物。

【公表番号】特表2006−522790(P2006−522790A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506461(P2006−506461)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001115
【国際公開番号】WO2004/089365
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】