説明

エレベータのかごドア駆動装置

【課題】本発明はひとつの構成要素で高速ドアと低速ドアの同時駆動を行う簡易な駆動機構を有するエレベータのかごドア駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】低速ドア2aと高速ドア2bと、かご出入口の上方に設けられるベース1と、ベース1に設けられるモータ9と、ベース1に取り付けられるドアレール4の上を動くローラ17に取り付けられかごドア2a、2bのそれぞれを吊り下げるドアハンガー3a、3bと、ドアハンガー3aにプーリ取付ブラケット5を介して取り付けられる一対のプーリ6a、6bと、プーリ6a、6bに取り付けられるベルト7と、ベルト7に接触するように設けられる駆動プーリ8と、ドアハンガー3bとベルト7とを結合させるベルト掴みブラケット10と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な機構で戸開閉を実現できるエレベータのかごドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高速ドアと低速ドアを有するエレベータのかごドアにおいては、タイミングベルトとモータで駆動されるプーリでかごドアに駆動力を与える駆動部と、高速ドアと低速ドアを連動させ、速度制御を行うロープ式の減速機構とが設けられている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−168957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で述べたような、従来のエレベータのドア駆動装置では高速ドアと低速ドアに駆動力を与える駆動部と、高速ドアと低速ドアの各移動距離にあわせて速度制御を行うロープ式の減速機構とは別々に構成されている。それぞれの機構が別要素で構成されているため、部品点数も増え、省スペース化の弊害となっていた。
【0005】
したがって本発明は、ひとつの簡易な駆動機構で高速ドアと低速ドアを同時に駆動することができるエレベータのかごドア駆動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るエレベータのかごドア駆動装置は、エレベータの低速に移動する低速かごドアと、前記第1のかごドアよりも高速に移動する高速かごドアと、かご出入口の上方でかご本体に固定され前記かご出入口の戸開閉方向に沿って設けられるベースと、前記ベースに取り付けられるモータと、前記ベースに取り付けられ、戸開閉方向に沿って設けられた低速かごドア用レールおよび高速かごドア用レールと、前記低速かごドア用レールおよび高速かごドア用レール上を移動する低速かごドア用ローラおよび高速かごドア用ローラと、前記低速かごドアおよび前記高速かごドアのそれぞれを吊り下げるために前記低速かごドア用ローラおよび高速かごドア用ローラにそれぞれ取り付けられる低速かごドア用ハンガーおよび高速かごドア用ハンガーと、前記低速かごドア用ハンガーに第1のブラケットを介して取り付けられる一対のプーリと、前記プーリに取り付けられ固定具により一部を前記ベースに固定されるベルトと、前記モータにより駆動され、前記ベルトを駆動させる駆動プーリと、前記高速かごドア用ハンガーと前記ベルトとを固定させる第2のブラケットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ひとつの簡易な駆動機構によって高速ドアと低速ドアを同時に駆動することができるエレベータのかごドア駆動装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置の乗場側からの正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を横からみた断面図である。
【図3】(a)本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた戸閉時を示すX−X断面図である。(b)本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた戸閉動作中を示すX−X断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るモータ取り付けの異なる実施形態を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るアイドラプーリ取り付けの異なる実施形態を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1ないし図3を参照して、以下第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置の乗場側から見た正面図である。図2は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を横からみた断面図である。図3(a)は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた戸閉時を示すX−X断面図であり、図3(b)は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた戸閉動作中を示すX−X断面図である。
【0012】
まず、本実施形態におけるエレベータのかごドア駆動装置の構成を説明する。なお、本実施形態におけるかごドアは後述する高速ドアと低速ドアからなる。
【0013】
図1に示すように、ベース1はかご16の支柱15a、15bに取り付けられる。ベース1には高速ドア用ドアレールと低速ドア用ドアレールとが一体となったドアレール4が設けられ、ドアレール4上を動くローラ17を備えたドアハンガー3a、3bを介してそれぞれ高速ドア2a、低速ドア2bが吊り下げられている。
【0014】
図2に示すように乗場から見て、乗場側に設けられるのが高速ドア2aであり、かご16側に設けられるのが低速ドア2bであるように、ドアハンガー3a、3bをそれぞれドアレール4に設ける。
【0015】
高速ドア2a、と低速ドア2bおよびドアハンガー3aとドアハンガー3bは戸開時に出入口方向に対して前後に重なるように収納されるように配置してある。
【0016】
図1に戻り、低速ドア2bを吊り下げるドアハンガー3bにプーリ取付ブラケット5を設け、このプーリ取付ブラケット5を介して一対のプーリ6(6a、6b)の軸が垂直方向になるようにプーリ6、6bが設けられている。このプーリ取付ブラケット5は、ドアハンガー3bと一体な構成としてもよいし、複数のパーツに分割して構成したものでもよい。
【0017】
プーリ6a、6bには両面歯付きのタイミングベルト7が備えられ、タイミングベルト7の一部が図2および図3に示すように、固定具14を介してベース1に固定されている。プーリ6a、6bにはタイミングベルト7とかみ合うように歯型が設けられている。また、タイミングベルト7にはベルト掴みブラケット10の一端が取り付けられ、他端はドアハンガー3aに固定される。
【0018】
タイミングベルト7と一対のプーリ6a、6bからなる駆動機構に駆動力を与えるために、プーリ6a、6bを挟んでこの固定具14とは反対側のタイミングベルト7の外側面に駆動プーリ8を接触させる。駆動プーリ8はモータ9に直結し、モータ9からの駆動力によって駆動する。
【0019】
図2に示すようにモータ9はベース1の上部折り曲げ部上面に設置固定される。ドアハンガー3aは、ベルト掴みブラケット10を介し、駆動プーリ8の接触面と同一方向にタイミングベルト7に固定される。
【0020】
次に、図3(a)、図3(b)に示すX−X断面の模式図を用いて本実施形態の動作について説明する。
【0021】
まず、低速ドア2bの動作について説明する。
【0022】
図3には図示しないモータの回転駆動は駆動プーリ8に伝達され、その駆動力は駆動プーリ8からタイミングベルト7に伝わりプーリ6a、6bを介してタイミングベルト7が回動する。ここで、駆動プーリ8については、プーリ6と同様にタイミングベルト7とかみ合うように歯形を備えるものとしてもよい。
【0023】
タイミングベルト7の一部が固定具14によりベース1に固定されているため、固定具14を支点として、プーリ6a、6bとタイミングベルト7とからなる駆動機構が戸開閉方向に移動する。詳細を図3(a)(b)に示すようにプーリ取付ブラケット5を介してプーリ6a、6bと低速ドア2bは固定されているため、低速ドア2bは駆動機構の移動とともに同じ移動距離Lだけ戸開閉動作を行う。
【0024】
次に、高速ドア2aの動作について説明する。
【0025】
図3(a)から図3(b)への状態の変化に示すように、タイミングベルト7が回動すると、タイミングベルト7の回動に伴って高速ドア2aを固定しているベルト掴みブラケット10が移動することになる。
【0026】
ここで、低速ドア2bが距離Lだけ移動した場合、タイミングベルト7にベルト掴みブラケット10を介して固定されている高速ドア2aは、タイミングベルト7の移動とともに同じ移動距離2Lだけ戸開閉を行う。
【0027】
つまり、駆動機構の構成関係から高速ドア2aの速度は低速ドア2bの2倍となる。
【0028】
なお、本発明におけるかごドア駆動装置におけるプーリ6a、6bの設置距離および設置箇所については、高速ドア2a、低速ドア2bともにかご出入口幅に合致した戸開移動を行うような位置に配置するとし、かごドア収納部(図示せず)に収納される際、高速ドア2a、低速ドア2bが重なるようにして収納されるように構成する。本発明はかごドアのサイズに応じて種々の構成が可能である。
【0029】
また、本実施形態ではモータ9はベース1の折り曲げ部上面に直立配置されているため、図3に示すようにモータ9の直径がベース1の折り曲げ部上面よりも小さければ、かご16上面からの投影図上にモータ9が映ることはない。このためかご16とかごドア駆動装置が干渉を気にすることなく設計することが可能となり、設計の自由度が増す利点も得られる。
【0030】
ただし、本実施形態ではモータ9はベース1の折り曲げ部上面に設置固定されるとしたが、ベース内部に設置することも可能である。詳細には、上記モータ9の設置はベース1の折り曲げ部上面に直立配置されるが、モータ9に図示しない交差軸歯車を取り付け、図4に示すように、ベース1内部に水平に設置してもよい。ベース1内部にモータ9を設置することにより、乗場ドアを開放させて乗場からメンテナンスを行うことができるエレベータのかごドア駆動装置となる。つまりベース1の外側面にモータ9等が設けられているときに比べて、保守性が高い構成となる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
【0032】
図5は本発明の第2の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置を上方からみた断面図である。図6は本発明の第2の実施形態に係るアイドラプーリの取り付けの異なる実施形態を示す図である。
【0033】
図5および図6が図2と異なる点は、駆動機構にアイドラプーリ11(11a、11b)を加えて、駆動プーリ8とタイミングベルト7との巻きつけ角を大きくした点である。
【0034】
図5に示すように、アイドラプーリ11は、駆動プーリ8とタイミングベルト7との接触面とは反対の面に接触するように、図示しないアイドラプーリ取付ブラケットを介して、もしくは直接、ベース1に設けられる。駆動プーリ8とアイドラプーリ11との距離が近いほど、駆動プーリ8へのタイミングベルト7の巻きつけ角は大きくなる。
【0035】
同様に、プーリ6と駆動プーリ8とアイドラプーリ11の順にそれぞれの距離が近くなるように設けられている場合ほど駆動プーリ8へのタイミングベルト7への巻きつけ角は大きくなる。
【0036】
なお、既述の第1の実施形態および第2に実施形態において、タイミングベルト7は両面歯付きのタイミングベルト7を用いたが、図6に示すように、アイドラプーリ11a、11bを用いることで、内面のみに歯形を有するタイミングベルト7でも本発明を構成することができる。
【0037】
詳細には、まず既述の駆動機構を内側が歯面であるタイミングベルト7と、プーリ6a、6bにより構成する。駆動プーリ8はタイミングベルト7の歯面に接触するように設ける。そして、タイミングベルト7の歯面とは反対側の面であって且つ駆動プーリ8の両側にアイドラプーリ11a、11bを設ける。
【0038】
このようにすることで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係るエレベータのかごドア駆動装置の正面図である。図7は、かごドアを省略して、かごドア駆動装置の詳細について図示する。
【0040】
本実施形態では、駆動機構におけるプーリ6a、6bの軸がそれぞれ水平方向になるようにプーリ6a、6bを配置し、さらにモータとして薄型モータ13を、駆動機構とベース1との間に設けることにより薄型モータ13をベース1内に配置している。その他の構成については、上記第1の実施形態と同様である。
【0041】
詳細には、ドアハンガー3bにプーリ取付ブラケット5を介してプーリ6a、6bの軸が正面方向になるようにプーリ6a、6bを取り付ける。つまり駆動プーリ8等を含む駆動機構の軸方向は正面方向となる。ここでいう、プーリ取付ブラケット5はZ字型ブラケットとしてもよい。
【0042】
さらに、本実施形態でのプーリ取付ブラケット5は図7に示すように駆動プーリ8やアイドラプーリ11に接触しないように切り欠き部を有している構造とする。
【0043】
以上より、第1の実施形態の図4についての説明でも述べたが、かごドア駆動装置のメンテナンスを行う際、乗場ドアを開放させて乗場からメンテナンスを行うことができるエレベータのかごドア駆動装置となる。つまりベース1の外側面にモータ9等が設けられているときに比べて、保守性が高い構成となる。
【0044】
なお、本発明における駆動機構ではタイミングベルト7を使用すると記載したが、ロープやVベルトを使用し、プーリ6a、6bのトラクションで駆動されることとしてもよいし、またはチェーン等を使用してスプロケットで駆動されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ベース
2a…高速ドア
2b…低速ドア
3a、3b…ドアハンガー
4…ドアレール
5…プーリ取付ブラケット
6a、6b…プーリ
7…タイミングベルト
8…駆動プーリ
9…モータ
10…ベルト掴みブラケット
11、11a、11b…アイドラプーリ
12…アイドラプーリ取付ブラケット
13…薄型モータ
14…固定具
15a、15b…支柱
16…かご
17…ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの低速に移動する低速かごドアと、
前記第1のかごドアよりも高速に移動する高速かごドアと、
かご出入口の上方でかご本体に固定され前記かご出入口の戸開閉方向に沿って設けられるベースと、
前記ベースに取り付けられるモータと、
前記ベースに取り付けられ、戸開閉方向に沿って設けられた低速かごドア用レールおよび高速かごドア用レールと、
前記低速かごドア用レールおよび高速かごドア用レール上を移動する低速かごドア用ローラおよび高速かごドア用ローラと、
前記低速かごドアおよび前記高速かごドアのそれぞれを吊り下げるために前記低速かごドア用ローラおよび高速かごドア用ローラにそれぞれ取り付けられる低速かごドア用ハンガーおよび高速かごドア用ハンガーと、
前記低速かごドア用ハンガーに第1のブラケットを介して取り付けられる一対のプーリと、
前記プーリに取り付けられ固定具により一部を前記ベースに固定されるベルトと、
前記モータにより駆動され、前記ベルトを駆動させる駆動プーリと、
前記高速かごドア用ハンガーと前記ベルトとを固定させる第2のブラケットと、
を備えることを特徴とするエレベータのかごドア駆動装置。
【請求項2】
前記ベルトは両面に歯形を有するタイミングベルトであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごドア駆動装置。
【請求項3】
前記ベルトは片面にのみ歯形を有するタイミングベルトであり、前記ベルトの歯形を有する面を前記プーリにまきつけ、前記駆動プーリを前記ベルトの歯形を有する面に接触させて前記ベルトを駆動させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごドア駆動装置。
【請求項4】
前記駆動プーリの近傍に少なくとも1つのアイドラプーリを設けることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごドア駆動装置。
【請求項5】
前記モータの駆動軸に交差軸歯車を用いて、前記モータを前記ベース内部に水平方向に配置することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごドア駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207570(P2011−207570A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76506(P2010−76506)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】