エレベータの位置検出装置
【課題】
エレベータの位置検出装置において、信頼性の向上と高精度化のより一層の両立を図る。
【解決手段】
乗りかご100が昇降する昇降路に被検出体8を設け、乗りかごに設置された位置検出器で被検出体を検出することにより、乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、乗りかご100に設置され、被検出体8を検出する第1位置検出器1と、第1位置検出器1とは検知方式が異なり、乗りかごの位置を検出する第2位置検出器2と、を備え、第2位置検出器2の検出信号が得られる場合、第1位置検出器1の検出信号を有効とする。
エレベータの位置検出装置において、信頼性の向上と高精度化のより一層の両立を図る。
【解決手段】
乗りかご100が昇降する昇降路に被検出体8を設け、乗りかごに設置された位置検出器で被検出体を検出することにより、乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、乗りかご100に設置され、被検出体8を検出する第1位置検出器1と、第1位置検出器1とは検知方式が異なり、乗りかごの位置を検出する第2位置検出器2と、を備え、第2位置検出器2の検出信号が得られる場合、第1位置検出器1の検出信号を有効とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式,磁気式,渦電流式等の位置検出装置に関し、特に昇降路内で乗りかごの位置を検出するものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの位置検出装置において、光電式の着床検出器の誤動作を防止し、検出精度を向上するため、かごドア敷居側に光電式の着床検出スイッチ、乗り場ドア敷居側には着床検出スイッチ射出した光を反射する着床検出板、を取り付け、乗り場ドア敷居には、着床検出板部が反射した着床検出スイッチの光以外(外乱光)が着床検出スイッチに入光するのを阻止する誤動作防止カバーを取り付けることが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、エレベータ乗りかごのある検知方式の位置検出手段に故障や誤動作などが発生した場合でも、エレベータの誤作動や停止を防止するため、複数の検知方式の位置検出手段からの検出信号を比較し、一致するときは精度の良い第一位置検出手段の検出信号を、一致しないときは誤動作しにくい第二位置検出手段の検出信号を制御に利用することが知られ、例えば特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−224529号公報
【特許文献2】特開2008−24395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、単に外乱光を阻止するものでは、昇降路内は設置場所や時間帯で外乱光の入射環境及び反射環境が変化するので、外乱光の精度への影響を防ぐことは困難である。
また、複数の検知方式の位置検出手段からの検出信号が一致するときは第一位置検出手段の検出信号を、一致しないときは第二位置検出手段の検出信号を利用するものでは、一致しないときまで位置検出信号の精度を保証することができるものではない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、信頼性の向上と高精度化のより一層の両立を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、乗りかごが昇降する昇降路に被検出体を設け、前記乗りかごに設置された位置検出器で前記被検出体を検出することにより、前記乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、前記乗りかごに設置され、前記被検出体を検出する第1位置検出器と、前記第1位置検出器とは検知方式が異なり、前記乗りかごの位置を検出する第2位置検出器と、を備え、前記第2位置検出器の検出信号が得られる場合、前記第1位置検出器の検出信号を有効とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1位置検出器とは検知方式が異なり、乗りかごの位置を検出する第2位置検出器を備え、第2位置検出器の検出信号が得られる場合、第1位置検出器の検出信号を有効とするので、第1位置検出器をより高精度(あるいはそのための高感度化)しても誤検出を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
エレベータの位置検出装置は、図18で説明すれば、通常エレベータの乗りかご100の上に設置される。位置検出装置は、位置検出器114で被検出体8を検出することにより、乗りかご100の昇降路内における絶対位置を検出し、乗りかご100の床面と乗り場の床面の位置合わせを行う。
【0010】
位置検出器には、光電式,磁気式,渦電流式などの検出器が利用されている。光電式検出器は、その特性上被検出体を高精度に検出することが可能であるが、光を利用するため、太陽光を中心とする外乱光や埃,水滴などに弱い。逆に磁気式や渦電流式の検出器は、検出器の検出範囲に光電式のような強い指向性はないが、外乱光,水,埃,油等に強いため、悪環境下で使用するエレベータ、例えば昇降路壁がガラス張りであるシースルー型エレベータ等の位置検出器に適している。
【0011】
また、展望用のエレベータなどで見られる、シースルー型エレベータでは、特に強い外乱光が入射するため、光電式検出器が誤動作する恐れがある。つまり、光電式検出器を利用する位置検出装置は高精度であるが、外乱光により影響が大きい。
【0012】
図1は一実施例によるシステム構成を示し、位置検出精度の高い位置検出器、たとえば光電式検出器1と、その信号をマスクするためのマスク手段、例えば磁気式検出器2と、その2出力からマスクを実施するマスク実施手段3と、マスク実施手段3から出力されるマスクされた位置検出信号7Sに基づきエレベータを制御するエレベータ制御手段4を備える。
【0013】
マスク実施手段3は、ロジックICのAND回路、またマイクロコンピュータ,FPGAなどが良い。また、磁気式検出器2に代えて、渦電流式検出器を用いても良い。
【0014】
図2において、矢印9は位置検出器の進行方向を示し、昇降路内の鉛直方向となる。光電式検出器1と磁気式検出器2の進行方向9には、各階に着床するための被検出体8が、光電式検出器1と磁気式検出器2の進行方向9に対し平行に取り付けられている。被検出体8は、磁気式検出器2として、例えば、金属体や、表面上に位置決めを行うための磁石などが貼り付けられたものが良い。光電式検出器1と磁気式検出器2は、被検出体8を通過することで、0から1,0[V]から5[V]等、出力が二値的に変化し、被検出体8の存在を検出する。なお、本例では、0[V]から1[V]に変化するとした。
【0015】
次に、マスク処理の動作例について、図3から図6を用いて説明する。図3から図6は、図2において光電式検出器1と磁気式検出器2が進行方向9に移動した時の様子を、矢印10より見たものである。つまり、第1位置検出器である光電式検出器1と第2位置検出器である磁気式検出器2は、進行方向9に対して左右に隣接されて配置されている。
【0016】
図3から図6は、左側に光電式検出器1と磁気式検出器2と被検出体の位置関係を、右側に左側位置関係時の各検出器,マスク実施手段3の出力信号を示している。一点鎖線33は光電式検出器1と磁気式検出器2の中心を通る線であり、各検出器位置と各出力信号の対応を示す。
【0017】
また、光電式検出器1中にある丸30は、光電式検出器1の出力する光軸を示す。また、各検出器の動作は、被検出体8を検出した場合、正論理である1[V]を出力し、検出しない場合は負論理である0[V]を出力する。マスク実施手段3については、ロジックICによる単純なAND回路とし、光電式検出器1と磁気式検出器2のANDが取れた場合1[V]を出力し、そうでない場合は0[V]を出力する。
【0018】
図3では、光電式検出器1と磁気式検出器2はまだ被検出体8に充分に接近していないため、いずれの検出器,マスク実施手段3においても信号は出力されていない。
【0019】
図4は、磁気式検出器2が被検出体8に接近したため、出力6Sが立ち上がった状態を示す。この出力6Sが立ち上がる位置は、磁気式検出器2と被検出体8のギャップや、対向度合いによって変動する。このように、一般に磁気式検出器2は光電式検出器1に対し指向性が弱いため、被検出体8のエッジを正確に検出するには困難がある。この状態では光電式検出器1は被検出体8上に到達していないため、検出器出力5Sは0[V]のままとなる。ゆえに、マスク実施手段3の出力7Sも0[V]のままである。
【0020】
図5は、光電式検出器1の光軸30が、ちょうど被検出体8の板端部に到達した状態を示す。磁気式検出器2の出力6Sは前段階の図4の状態そのままに、光電式検出器1が被検出体8を検出したことで出力5Sは1[V]になり、従って両出力5S及び6SのANDを取ったマスク実施手段3の出力7Sが1[V]になる。
【0021】
図6は、光電式検出器1及び磁気式検出器2が、完全に被検出体8上に到達した状態を示す。この状態では、両検出器,マスク実施手段3の出力はいずれも1[V]となっている。
【0022】
以上によれば、磁気式検出器2をマスク手段とすることで、被検出体8の近傍でのみ光電式検出器1の出力を有効にすることが可能となる。したがって、被検出体8の近傍のみで光電式検出器1の出力が有効になるので、被検出体8近傍以外では光電式検出器1が、外乱光や粉塵などの影響を受け誤動作することはない。
また、光電式検出器1の出力が有効となる被検出体8上においても、反射型の光電式検出器を利用する場合、光電式検出器1と被検出体8のギャップが短いほど、被検出体8自体が遮光板としての機能を果たすことになるので、外乱光の影響を受けにくい状態となる。
【0023】
さらに、光電式検出器1の検出距離が長い場合、昇降路内において梁やドアのポケット機構などを誤検出してしまう可能性が生じるが、このマスク処理を利用することで、梁やドアポケットの誤検出も防ぐことが可能となる。
【0024】
なお、マスク手段2と位置検出器1は一対一の関係となっているが、図7に示すように、マスク手段2と位置検出器1を複数個組み合わせることで、更に信頼性を向上させることも可能である。
【0025】
図8は他の実施例のシステム構成を示し、高信頼なマスク手段である磁気式検出器2と、3つの位置検出器である光電式検出器1A,1B,1Cと、各検出器と磁気式検出器2からマスク処理を実行するマスク実施手段3と、そのマスク実施手段3の合理性を判定するマスク合理性判定手段40と、合理性判定を行うための各位置検出器の信号パターンを記憶している位置検出信号モード記憶装置41と、マスク実施手段3とマスク合理性判定手段40の出力信号からエレベータを制御するエレベータ制御手段を備える。
【0026】
マスク実施手段3はロジックICによるAND回路やマイクロコンピュータなどで構成し、マスク合理性判定手段40はマイクロコンピュータやFPGAなどで実施する。
【0027】
マスク実施手段3には複数の光電式検出器出力が入力されている。
【0028】
つぎに、マスク合理性判定手段40周辺の動作について説明する。
マスクの合理性判定の必要性について、図9を用いて説明する。図9は、マスク手段である磁気式検出器2の出力が1[V]になる位置と、光電式検出器1が1[V]になる位置の間の状態を表している。この状態で、外乱光が光電式検出器1に入射し、光電式検出器1が誤動作した場合、光電式検出器1の出力5Sと、マスク実施手段3の出力7Sは図9の右図のように、光電式検出器1で検出したい被検出体8の板端部は、外乱光の入射により正確に検出することが出来ず、実際の板端部の位置に対し検出誤差51が生じることになる。エレベータの着床合わせの動作は、板端部を通過した際の信号で位置情報の補正を行うため、この誤差はそのまま乗り場と乗りかごの着床誤差となる。位置検出器を複数組み合わせて微小な着床誤差を修正する、マイクロ運転のような様々なサービス機能を利用する場合では、外乱光で信号が書き換えられ、予期せぬ動作モードでエレベータが動く恐れもある。位置検出器の安定した動作を確保するためには、マスク処理だけでは完全に外乱光の影響を抑えることは難しく、マスク処理の合理性を判定し、適宜補正を行う。
【0029】
マスク処理の合理性を判定するために、被検出体8の形状を変更し、各光電式検出器1A,1B,1CからON/OFFの組み合わせによる複数の信号モードを検出できる構成にする。この被検出体8の形状の一例を図10に示す。図10は、被検出体8の形状を検出した際の、各検出部位における各光電式検出器1A,1B,1Cの信号の遷移(以下検出信号モード)を示したものである。
【0030】
以下、この被検出体8の形状を利用した、マスク処理の合理性判定について説明する。なお、この検出信号モードを記憶する図8中の位置検出信号モード記憶装置41は、マスク合理性判定手段40であるマイクロコンピュータに接続されたRAM,ROMなどで実装する。
【0031】
外乱光によって光電式検出器1が誤動作するということは、検出信号モードが本来検出されるモードから有り得ないモードへ遷移をする場合である。たとえば、モードM1からモードM4へ検出信号モードが変化した場合は、外乱光の影響か、各検出器が故障したと判定することが出来る。検出器が故障した場合は、定常的にONかOFFになるので、検出信号モードが一時的な変化で遷移したならば、それは外乱光による影響で誤動作したものと判断できる。このように、被検出体8の形状からシーケンシャルに検出信号モードを追い、有り得ないモード遷移の場合は排除することで、外乱光の影響を取り除くことが可能となる。
【0032】
次に、マスク合理性判定手段40であるマイクロコンピュータと、位置検出信号モード記憶装置41であるRAMの動作について、図11から図13を用いて説明する。
【0033】
信号検出モードの遷移を見るため、マイクロコンピュータ40はRAM41の所定アドレスに、今回検出する検出信号モードの一回前のモードを保持している。まず、マイクロコンピュータ内のタイマ割込みによりマスク合理性判定を開始する(S100)。そして、一回前の検出信号モードをRAM41から読み出す(S101)。そして、読み出した検出信号モードがM1だった場合はM1時合理性確認処理(S200)へ、そうでない場合はステップS103へ移行する(S102)。以降、読み出した検出信号モードに対応した合理性確認処理へ移行するための同様のステップを繰り返す(S103〜S105)。
【0034】
読み出した検出信号モードがM1だった場合のM1時合理性確認処理S200について、図12を用いて説明する。まず、現在の検出信号モードを、マイクロコンピュータ40に接続されている各入力ポートからサンプリングし、メモリへ記憶する(S201)。過去3回分のサンプリングした検出信号モードが同一であった場合、そのまま次の処理へ移行するが、そうでなかった場合は、再び現在の検出信号モードのサンプリングを行い、過去三回分のサンプリングした検出信号モードと、現在の検出信号モードが同一であるか確認する(S202)。過去3回分のサンプリングした検出信号モードが同一であった場合、現在の検出信号モードを過去三回分と同一であったモードに設定する(S203)。ステップS201,ステップS202及びステップS203の処理は、サンプリング周期に近いもしくはそれ以上の周期で光電検出器の受光部に入射する外乱光の影響による、光電式検出器1A,1B,1Cのチャタリング対策としての一つである。
【0035】
現在の信号検出モードがM1であるか判定を行う(S204)。現在のモードがM1でない場合、引き続き現在のモードがM2であるか判定を行う(S205)。ステップS204及びS205において、現在の検出信号モードがM1もしくはM2であれば、マスク処理の合理性が図10のモード遷移に基づき、シーケンシャルに正しく行われているので、合理性判定出力42Sから1[V]を出力する(S206)。現在の検出信号モードがM1,M2以外であった場合は、マスク処理の合理性は図10のモード遷移から異常であると判定される、合理性判定出力42Sから0[V]を出力する。
【0036】
読み出した検出信号モードがM2だった場合のM2時合理性確認処理S300について、図13を用いて説明する。
基本的な処理については、読み出した検出信号モードがM1であった場合の、M1時合理性確認処理S200と同じとなる。M1時合理性確認処理S200との大きな違いは、図10のモード遷移より、検出信号モードがM2であった場合は、M2からM1,M2からM2,M2からM3への計3つの遷移となる点である。M1時合理性確認処理S200に対し、単純な判定処理S306を一つ追加しただけであるため、詳細な動作説明は省略する。
【0037】
読み出した信号検出モードがM3,M4,M5であった場合も、M2時と同様、遷移するモードは3つであり、図13のステップS304,S305,S306の判定部分を変えるのみで対応可能であるため、詳細な動作説明は省略する。
【0038】
合理性判定出力42Sを利用し、高信頼に位置検出を行うエレベータ制御手段4(マイクロコンピュータ)の動作について、図14を用いて説明する。一連の動作は、マイクロコンピュータのタイマ割込みを利用して実行される。まず、マスク実施手段3から出力される出力信号44AS,44BS,44CSを取り込む(S401)。この時点では、マスク処理後の出力ではあるが、外乱光の影響を受け正しく機能していない可能性がある。
【0039】
次に、合理性判定出力42Sを取り込み(S402)、マスク実施手段3の合理性に基づき、取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを有効にするか判定する。取り込んだ出力が正論理(1[V])であれば、マスク実施手段3は正しく機能しているので、今回取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを有効にし、次回以降の位置検出で過去の検出信号モードとして利用するため、出力状態を記憶する(S404)。取り込んだ出力が負論理(0[V])であれば、マスク実施手段3の出力は外乱光による影響を受けていると判断し、今回取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを破棄する(S405)。
【0040】
以上によれば、複数の信号パターンを利用し、マスク処理の合理性を確認することで、光電式検出器の出力が有効となっている場所においても、外乱光の影響による誤動作の可能性を排除し、高信頼に位置を検出することができる。
【0041】
被検出体8の形状は、より検出信号モードを細かく分けたい場合は光電式検出器の数を増やすことや、シーケンシャルに検出信号を追うために取り込み信号を1から順に加算していくような被検出体形状にしてもよい。
【0042】
図15はさらに、他の実施例のシステム構成であり、光電式検出器の数を減らし、マスク処理の合理性確認に被検出体8の絶対位置情報50を利用する。被検出体8の絶対位置情報を検出する、被検出体の絶対位置情報50の一例は、図16に示すガバナエンコーダ72を利用する。被検出体8の絶対位置情報を検出するために、各階間の距離をデジタルデータとして測定する、階高測定運転をエレベータ設置時などに行う。これより得た被検出体8の位置情報を元に、マスク処理の合理性を確認する処理を行う。
【0043】
マスク合理性判定手段40(マイクロコンピュータ)の動作について、図14を用いて説明する。マイクロコンピュータ40の動作は、光電式検出器1の出力のエッジを検出することによる割込み処理で実施する(S501)。次に、ガバナエンコーダ72より現在の乗りかごの位置情報を取り込み(S502)、現在の位置が被検出体8の存在する位置であるか判定する(S503)。存在位置を判定する閾値については、ガバナロープ71の温度変化や、張力変化により位置検出精度に誤差が生じる可能性がある。このため、閾値には温度変化や張力変化分に対応した、位置検出の誤差を見積もった一定量のマージンを設けておくことが好ましい。
【0044】
乗りかごの現在の位置が被検出体8の存在する位置であれば、合理性判定出力S42に正論理(1[V])を出力し(S504)、被検出体が存在しないのであれば、合理性判定出力S42に負論理(1[V])を出力する。
【0045】
高信頼に位置検出を行うエレベータ制御手段4(マイクロコンピュータ)の動作については、図14で説明したと同じである。
【0046】
以上によれば、エレベータの絶対位置情報を利用して被検出体8の存在する位置であるかを判定することで、マスク実施手段に入力する検出器の数を必要最低限の数に抑えたままで、外乱光の入射により検出器が誤動作したかどうかを判定することが可能となる。
【0047】
以上、外乱光の影響をより少なくすると共に、外乱光だけでなく、検出距離が長い光電式検出器を利用する際に生じ得る、昇降路内に存在する被検出体以外の背景物の誤検出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明における一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】一実施例の位置検出部を示す構成図。
【図3】一実施例による位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図4】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図5】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図6】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図7】一実施例において位置検出器を複数組み合わせた構成を示すブロック図。
【図8】本発明における他の実施例の構成を示すブロック図。
【図9】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図10】他の実施例における被検出体の形状と検出信号の遷移を示す動作図。
【図11】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図12】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図13】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図14】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図15】本発明におけるさらに他の実施例の構成を示すブロック図。
【図16】さらに他の実施例における全体構成を示す構成図。
【図17】さらに他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図18】本発明における実施例の全体構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0049】
1 第1位置検出器(光電式検出器)
2 第2位置検出器(磁気式検出器,マスク手段)
3 マスク実施手段
4 エレベータ制御手段
8 被検出体
40 マスク合理性判定手段(マイクロコンピュータ)
41 位置検出信号モード記憶装置
100 乗りかご
105 電動機
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式,磁気式,渦電流式等の位置検出装置に関し、特に昇降路内で乗りかごの位置を検出するものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの位置検出装置において、光電式の着床検出器の誤動作を防止し、検出精度を向上するため、かごドア敷居側に光電式の着床検出スイッチ、乗り場ドア敷居側には着床検出スイッチ射出した光を反射する着床検出板、を取り付け、乗り場ドア敷居には、着床検出板部が反射した着床検出スイッチの光以外(外乱光)が着床検出スイッチに入光するのを阻止する誤動作防止カバーを取り付けることが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、エレベータ乗りかごのある検知方式の位置検出手段に故障や誤動作などが発生した場合でも、エレベータの誤作動や停止を防止するため、複数の検知方式の位置検出手段からの検出信号を比較し、一致するときは精度の良い第一位置検出手段の検出信号を、一致しないときは誤動作しにくい第二位置検出手段の検出信号を制御に利用することが知られ、例えば特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−224529号公報
【特許文献2】特開2008−24395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、単に外乱光を阻止するものでは、昇降路内は設置場所や時間帯で外乱光の入射環境及び反射環境が変化するので、外乱光の精度への影響を防ぐことは困難である。
また、複数の検知方式の位置検出手段からの検出信号が一致するときは第一位置検出手段の検出信号を、一致しないときは第二位置検出手段の検出信号を利用するものでは、一致しないときまで位置検出信号の精度を保証することができるものではない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、信頼性の向上と高精度化のより一層の両立を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、乗りかごが昇降する昇降路に被検出体を設け、前記乗りかごに設置された位置検出器で前記被検出体を検出することにより、前記乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、前記乗りかごに設置され、前記被検出体を検出する第1位置検出器と、前記第1位置検出器とは検知方式が異なり、前記乗りかごの位置を検出する第2位置検出器と、を備え、前記第2位置検出器の検出信号が得られる場合、前記第1位置検出器の検出信号を有効とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1位置検出器とは検知方式が異なり、乗りかごの位置を検出する第2位置検出器を備え、第2位置検出器の検出信号が得られる場合、第1位置検出器の検出信号を有効とするので、第1位置検出器をより高精度(あるいはそのための高感度化)しても誤検出を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
エレベータの位置検出装置は、図18で説明すれば、通常エレベータの乗りかご100の上に設置される。位置検出装置は、位置検出器114で被検出体8を検出することにより、乗りかご100の昇降路内における絶対位置を検出し、乗りかご100の床面と乗り場の床面の位置合わせを行う。
【0010】
位置検出器には、光電式,磁気式,渦電流式などの検出器が利用されている。光電式検出器は、その特性上被検出体を高精度に検出することが可能であるが、光を利用するため、太陽光を中心とする外乱光や埃,水滴などに弱い。逆に磁気式や渦電流式の検出器は、検出器の検出範囲に光電式のような強い指向性はないが、外乱光,水,埃,油等に強いため、悪環境下で使用するエレベータ、例えば昇降路壁がガラス張りであるシースルー型エレベータ等の位置検出器に適している。
【0011】
また、展望用のエレベータなどで見られる、シースルー型エレベータでは、特に強い外乱光が入射するため、光電式検出器が誤動作する恐れがある。つまり、光電式検出器を利用する位置検出装置は高精度であるが、外乱光により影響が大きい。
【0012】
図1は一実施例によるシステム構成を示し、位置検出精度の高い位置検出器、たとえば光電式検出器1と、その信号をマスクするためのマスク手段、例えば磁気式検出器2と、その2出力からマスクを実施するマスク実施手段3と、マスク実施手段3から出力されるマスクされた位置検出信号7Sに基づきエレベータを制御するエレベータ制御手段4を備える。
【0013】
マスク実施手段3は、ロジックICのAND回路、またマイクロコンピュータ,FPGAなどが良い。また、磁気式検出器2に代えて、渦電流式検出器を用いても良い。
【0014】
図2において、矢印9は位置検出器の進行方向を示し、昇降路内の鉛直方向となる。光電式検出器1と磁気式検出器2の進行方向9には、各階に着床するための被検出体8が、光電式検出器1と磁気式検出器2の進行方向9に対し平行に取り付けられている。被検出体8は、磁気式検出器2として、例えば、金属体や、表面上に位置決めを行うための磁石などが貼り付けられたものが良い。光電式検出器1と磁気式検出器2は、被検出体8を通過することで、0から1,0[V]から5[V]等、出力が二値的に変化し、被検出体8の存在を検出する。なお、本例では、0[V]から1[V]に変化するとした。
【0015】
次に、マスク処理の動作例について、図3から図6を用いて説明する。図3から図6は、図2において光電式検出器1と磁気式検出器2が進行方向9に移動した時の様子を、矢印10より見たものである。つまり、第1位置検出器である光電式検出器1と第2位置検出器である磁気式検出器2は、進行方向9に対して左右に隣接されて配置されている。
【0016】
図3から図6は、左側に光電式検出器1と磁気式検出器2と被検出体の位置関係を、右側に左側位置関係時の各検出器,マスク実施手段3の出力信号を示している。一点鎖線33は光電式検出器1と磁気式検出器2の中心を通る線であり、各検出器位置と各出力信号の対応を示す。
【0017】
また、光電式検出器1中にある丸30は、光電式検出器1の出力する光軸を示す。また、各検出器の動作は、被検出体8を検出した場合、正論理である1[V]を出力し、検出しない場合は負論理である0[V]を出力する。マスク実施手段3については、ロジックICによる単純なAND回路とし、光電式検出器1と磁気式検出器2のANDが取れた場合1[V]を出力し、そうでない場合は0[V]を出力する。
【0018】
図3では、光電式検出器1と磁気式検出器2はまだ被検出体8に充分に接近していないため、いずれの検出器,マスク実施手段3においても信号は出力されていない。
【0019】
図4は、磁気式検出器2が被検出体8に接近したため、出力6Sが立ち上がった状態を示す。この出力6Sが立ち上がる位置は、磁気式検出器2と被検出体8のギャップや、対向度合いによって変動する。このように、一般に磁気式検出器2は光電式検出器1に対し指向性が弱いため、被検出体8のエッジを正確に検出するには困難がある。この状態では光電式検出器1は被検出体8上に到達していないため、検出器出力5Sは0[V]のままとなる。ゆえに、マスク実施手段3の出力7Sも0[V]のままである。
【0020】
図5は、光電式検出器1の光軸30が、ちょうど被検出体8の板端部に到達した状態を示す。磁気式検出器2の出力6Sは前段階の図4の状態そのままに、光電式検出器1が被検出体8を検出したことで出力5Sは1[V]になり、従って両出力5S及び6SのANDを取ったマスク実施手段3の出力7Sが1[V]になる。
【0021】
図6は、光電式検出器1及び磁気式検出器2が、完全に被検出体8上に到達した状態を示す。この状態では、両検出器,マスク実施手段3の出力はいずれも1[V]となっている。
【0022】
以上によれば、磁気式検出器2をマスク手段とすることで、被検出体8の近傍でのみ光電式検出器1の出力を有効にすることが可能となる。したがって、被検出体8の近傍のみで光電式検出器1の出力が有効になるので、被検出体8近傍以外では光電式検出器1が、外乱光や粉塵などの影響を受け誤動作することはない。
また、光電式検出器1の出力が有効となる被検出体8上においても、反射型の光電式検出器を利用する場合、光電式検出器1と被検出体8のギャップが短いほど、被検出体8自体が遮光板としての機能を果たすことになるので、外乱光の影響を受けにくい状態となる。
【0023】
さらに、光電式検出器1の検出距離が長い場合、昇降路内において梁やドアのポケット機構などを誤検出してしまう可能性が生じるが、このマスク処理を利用することで、梁やドアポケットの誤検出も防ぐことが可能となる。
【0024】
なお、マスク手段2と位置検出器1は一対一の関係となっているが、図7に示すように、マスク手段2と位置検出器1を複数個組み合わせることで、更に信頼性を向上させることも可能である。
【0025】
図8は他の実施例のシステム構成を示し、高信頼なマスク手段である磁気式検出器2と、3つの位置検出器である光電式検出器1A,1B,1Cと、各検出器と磁気式検出器2からマスク処理を実行するマスク実施手段3と、そのマスク実施手段3の合理性を判定するマスク合理性判定手段40と、合理性判定を行うための各位置検出器の信号パターンを記憶している位置検出信号モード記憶装置41と、マスク実施手段3とマスク合理性判定手段40の出力信号からエレベータを制御するエレベータ制御手段を備える。
【0026】
マスク実施手段3はロジックICによるAND回路やマイクロコンピュータなどで構成し、マスク合理性判定手段40はマイクロコンピュータやFPGAなどで実施する。
【0027】
マスク実施手段3には複数の光電式検出器出力が入力されている。
【0028】
つぎに、マスク合理性判定手段40周辺の動作について説明する。
マスクの合理性判定の必要性について、図9を用いて説明する。図9は、マスク手段である磁気式検出器2の出力が1[V]になる位置と、光電式検出器1が1[V]になる位置の間の状態を表している。この状態で、外乱光が光電式検出器1に入射し、光電式検出器1が誤動作した場合、光電式検出器1の出力5Sと、マスク実施手段3の出力7Sは図9の右図のように、光電式検出器1で検出したい被検出体8の板端部は、外乱光の入射により正確に検出することが出来ず、実際の板端部の位置に対し検出誤差51が生じることになる。エレベータの着床合わせの動作は、板端部を通過した際の信号で位置情報の補正を行うため、この誤差はそのまま乗り場と乗りかごの着床誤差となる。位置検出器を複数組み合わせて微小な着床誤差を修正する、マイクロ運転のような様々なサービス機能を利用する場合では、外乱光で信号が書き換えられ、予期せぬ動作モードでエレベータが動く恐れもある。位置検出器の安定した動作を確保するためには、マスク処理だけでは完全に外乱光の影響を抑えることは難しく、マスク処理の合理性を判定し、適宜補正を行う。
【0029】
マスク処理の合理性を判定するために、被検出体8の形状を変更し、各光電式検出器1A,1B,1CからON/OFFの組み合わせによる複数の信号モードを検出できる構成にする。この被検出体8の形状の一例を図10に示す。図10は、被検出体8の形状を検出した際の、各検出部位における各光電式検出器1A,1B,1Cの信号の遷移(以下検出信号モード)を示したものである。
【0030】
以下、この被検出体8の形状を利用した、マスク処理の合理性判定について説明する。なお、この検出信号モードを記憶する図8中の位置検出信号モード記憶装置41は、マスク合理性判定手段40であるマイクロコンピュータに接続されたRAM,ROMなどで実装する。
【0031】
外乱光によって光電式検出器1が誤動作するということは、検出信号モードが本来検出されるモードから有り得ないモードへ遷移をする場合である。たとえば、モードM1からモードM4へ検出信号モードが変化した場合は、外乱光の影響か、各検出器が故障したと判定することが出来る。検出器が故障した場合は、定常的にONかOFFになるので、検出信号モードが一時的な変化で遷移したならば、それは外乱光による影響で誤動作したものと判断できる。このように、被検出体8の形状からシーケンシャルに検出信号モードを追い、有り得ないモード遷移の場合は排除することで、外乱光の影響を取り除くことが可能となる。
【0032】
次に、マスク合理性判定手段40であるマイクロコンピュータと、位置検出信号モード記憶装置41であるRAMの動作について、図11から図13を用いて説明する。
【0033】
信号検出モードの遷移を見るため、マイクロコンピュータ40はRAM41の所定アドレスに、今回検出する検出信号モードの一回前のモードを保持している。まず、マイクロコンピュータ内のタイマ割込みによりマスク合理性判定を開始する(S100)。そして、一回前の検出信号モードをRAM41から読み出す(S101)。そして、読み出した検出信号モードがM1だった場合はM1時合理性確認処理(S200)へ、そうでない場合はステップS103へ移行する(S102)。以降、読み出した検出信号モードに対応した合理性確認処理へ移行するための同様のステップを繰り返す(S103〜S105)。
【0034】
読み出した検出信号モードがM1だった場合のM1時合理性確認処理S200について、図12を用いて説明する。まず、現在の検出信号モードを、マイクロコンピュータ40に接続されている各入力ポートからサンプリングし、メモリへ記憶する(S201)。過去3回分のサンプリングした検出信号モードが同一であった場合、そのまま次の処理へ移行するが、そうでなかった場合は、再び現在の検出信号モードのサンプリングを行い、過去三回分のサンプリングした検出信号モードと、現在の検出信号モードが同一であるか確認する(S202)。過去3回分のサンプリングした検出信号モードが同一であった場合、現在の検出信号モードを過去三回分と同一であったモードに設定する(S203)。ステップS201,ステップS202及びステップS203の処理は、サンプリング周期に近いもしくはそれ以上の周期で光電検出器の受光部に入射する外乱光の影響による、光電式検出器1A,1B,1Cのチャタリング対策としての一つである。
【0035】
現在の信号検出モードがM1であるか判定を行う(S204)。現在のモードがM1でない場合、引き続き現在のモードがM2であるか判定を行う(S205)。ステップS204及びS205において、現在の検出信号モードがM1もしくはM2であれば、マスク処理の合理性が図10のモード遷移に基づき、シーケンシャルに正しく行われているので、合理性判定出力42Sから1[V]を出力する(S206)。現在の検出信号モードがM1,M2以外であった場合は、マスク処理の合理性は図10のモード遷移から異常であると判定される、合理性判定出力42Sから0[V]を出力する。
【0036】
読み出した検出信号モードがM2だった場合のM2時合理性確認処理S300について、図13を用いて説明する。
基本的な処理については、読み出した検出信号モードがM1であった場合の、M1時合理性確認処理S200と同じとなる。M1時合理性確認処理S200との大きな違いは、図10のモード遷移より、検出信号モードがM2であった場合は、M2からM1,M2からM2,M2からM3への計3つの遷移となる点である。M1時合理性確認処理S200に対し、単純な判定処理S306を一つ追加しただけであるため、詳細な動作説明は省略する。
【0037】
読み出した信号検出モードがM3,M4,M5であった場合も、M2時と同様、遷移するモードは3つであり、図13のステップS304,S305,S306の判定部分を変えるのみで対応可能であるため、詳細な動作説明は省略する。
【0038】
合理性判定出力42Sを利用し、高信頼に位置検出を行うエレベータ制御手段4(マイクロコンピュータ)の動作について、図14を用いて説明する。一連の動作は、マイクロコンピュータのタイマ割込みを利用して実行される。まず、マスク実施手段3から出力される出力信号44AS,44BS,44CSを取り込む(S401)。この時点では、マスク処理後の出力ではあるが、外乱光の影響を受け正しく機能していない可能性がある。
【0039】
次に、合理性判定出力42Sを取り込み(S402)、マスク実施手段3の合理性に基づき、取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを有効にするか判定する。取り込んだ出力が正論理(1[V])であれば、マスク実施手段3は正しく機能しているので、今回取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを有効にし、次回以降の位置検出で過去の検出信号モードとして利用するため、出力状態を記憶する(S404)。取り込んだ出力が負論理(0[V])であれば、マスク実施手段3の出力は外乱光による影響を受けていると判断し、今回取り込んだマスク実施手段出力44AS,44BS,44CSを破棄する(S405)。
【0040】
以上によれば、複数の信号パターンを利用し、マスク処理の合理性を確認することで、光電式検出器の出力が有効となっている場所においても、外乱光の影響による誤動作の可能性を排除し、高信頼に位置を検出することができる。
【0041】
被検出体8の形状は、より検出信号モードを細かく分けたい場合は光電式検出器の数を増やすことや、シーケンシャルに検出信号を追うために取り込み信号を1から順に加算していくような被検出体形状にしてもよい。
【0042】
図15はさらに、他の実施例のシステム構成であり、光電式検出器の数を減らし、マスク処理の合理性確認に被検出体8の絶対位置情報50を利用する。被検出体8の絶対位置情報を検出する、被検出体の絶対位置情報50の一例は、図16に示すガバナエンコーダ72を利用する。被検出体8の絶対位置情報を検出するために、各階間の距離をデジタルデータとして測定する、階高測定運転をエレベータ設置時などに行う。これより得た被検出体8の位置情報を元に、マスク処理の合理性を確認する処理を行う。
【0043】
マスク合理性判定手段40(マイクロコンピュータ)の動作について、図14を用いて説明する。マイクロコンピュータ40の動作は、光電式検出器1の出力のエッジを検出することによる割込み処理で実施する(S501)。次に、ガバナエンコーダ72より現在の乗りかごの位置情報を取り込み(S502)、現在の位置が被検出体8の存在する位置であるか判定する(S503)。存在位置を判定する閾値については、ガバナロープ71の温度変化や、張力変化により位置検出精度に誤差が生じる可能性がある。このため、閾値には温度変化や張力変化分に対応した、位置検出の誤差を見積もった一定量のマージンを設けておくことが好ましい。
【0044】
乗りかごの現在の位置が被検出体8の存在する位置であれば、合理性判定出力S42に正論理(1[V])を出力し(S504)、被検出体が存在しないのであれば、合理性判定出力S42に負論理(1[V])を出力する。
【0045】
高信頼に位置検出を行うエレベータ制御手段4(マイクロコンピュータ)の動作については、図14で説明したと同じである。
【0046】
以上によれば、エレベータの絶対位置情報を利用して被検出体8の存在する位置であるかを判定することで、マスク実施手段に入力する検出器の数を必要最低限の数に抑えたままで、外乱光の入射により検出器が誤動作したかどうかを判定することが可能となる。
【0047】
以上、外乱光の影響をより少なくすると共に、外乱光だけでなく、検出距離が長い光電式検出器を利用する際に生じ得る、昇降路内に存在する被検出体以外の背景物の誤検出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明における一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】一実施例の位置検出部を示す構成図。
【図3】一実施例による位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図4】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図5】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図6】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図7】一実施例において位置検出器を複数組み合わせた構成を示すブロック図。
【図8】本発明における他の実施例の構成を示すブロック図。
【図9】位置検出器と被検出体の位置に対する検出信号を示す動作図。
【図10】他の実施例における被検出体の形状と検出信号の遷移を示す動作図。
【図11】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図12】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図13】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図14】他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図15】本発明におけるさらに他の実施例の構成を示すブロック図。
【図16】さらに他の実施例における全体構成を示す構成図。
【図17】さらに他の実施例による検出信号の処理手順を示すフローチャート。
【図18】本発明における実施例の全体構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0049】
1 第1位置検出器(光電式検出器)
2 第2位置検出器(磁気式検出器,マスク手段)
3 マスク実施手段
4 エレベータ制御手段
8 被検出体
40 マスク合理性判定手段(マイクロコンピュータ)
41 位置検出信号モード記憶装置
100 乗りかご
105 電動機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごが昇降する昇降路に被検出体を設け、前記乗りかごに設置された位置検出器で前記被検出体を検出することにより、前記乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、
前記乗りかごに設置され前記被検出体を検出する第1位置検出器と、
前記第1位置検出器とは検知方式が異なり、前記乗りかごの位置を検出する第2位置検出器と、
を備え、前記第2位置検出器の検出信号が得られる場合、前記第1位置検出器の検出信号を有効とすることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記第2位置検出器は前記被検出体を検出することを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記被検出体は金属体、前記第1位置検出器は光電式、前記第2位置検出器は磁気式とされ、前記第1位置検出器と前記第2位置検出器は進行方向の左右に隣接されて配置されたことを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記被検出体は金属体、前記第1位置検出器は光電式、前記第2位置検出器は磁気式とされ、前記第2位置検出器は前記被検出体を検出すると共に、前記第1位置検出器を遮光することを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記第1位置検出器は光電式とされ、複数設けられることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記第1位置検出器は光電式とされ、前記第2位置検出器は前記被検出体の絶対位置情報を検出し、前記絶対位置情報に基づいて前記第1位置検出器の検出信号を有効とすることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項1】
乗りかごが昇降する昇降路に被検出体を設け、前記乗りかごに設置された位置検出器で前記被検出体を検出することにより、前記乗りかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置において、
前記乗りかごに設置され前記被検出体を検出する第1位置検出器と、
前記第1位置検出器とは検知方式が異なり、前記乗りかごの位置を検出する第2位置検出器と、
を備え、前記第2位置検出器の検出信号が得られる場合、前記第1位置検出器の検出信号を有効とすることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記第2位置検出器は前記被検出体を検出することを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記被検出体は金属体、前記第1位置検出器は光電式、前記第2位置検出器は磁気式とされ、前記第1位置検出器と前記第2位置検出器は進行方向の左右に隣接されて配置されたことを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記被検出体は金属体、前記第1位置検出器は光電式、前記第2位置検出器は磁気式とされ、前記第2位置検出器は前記被検出体を検出すると共に、前記第1位置検出器を遮光することを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記第1位置検出器は光電式とされ、複数設けられることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記第1位置検出器は光電式とされ、前記第2位置検出器は前記被検出体の絶対位置情報を検出し、前記絶対位置情報に基づいて前記第1位置検出器の検出信号を有効とすることを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−70325(P2010−70325A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240158(P2008−240158)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
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