説明

エレベータの保守装置

【課題】 保守・故障修理が必要な時に通信を許可するマイコン制御エレベータ用として好適なエレベータの保守装置を得る。
【解決手段】 保守端末通信回路2及びデータ表示・解析機能3等を内蔵した保守端末装置1と、エレベータの昇降路或いは最下階乗場に設けられた保守端末通信回路4と、点検・故障修理関連情報6、故障検出回路7、通信期間制御手段8、及び保守端末通信回路を介して保守端末装置に接続された通信許可制御回路9等を有するエレベータ制御盤5とを備え、エレベータを保守・点検モードにした時或いはエレベータが故障した時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイコン制御エレベータ用として好適なエレベータの保守装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイコン制御エレベータの点検・故障修理は、専用の保守端末装置を接続して行っている。点検・故障修理に関する情報は保守会社のノウハウが蓄積されており、第三者に容易に盗聴されないようにする必要がある。そのため、保守端末装置とエレベータの接続は、専用の有線通信で行っているのが現状である。図5はその従来のエレベータの保守装置を示すステム構成図である。図において、保守端末装置21は、保守端末通信回路22及びデータ表示・解析機能23を内蔵しており、被保守機器であるエレベータの昇降路或いは最下階乗場に設置された保守端末通信回路24を介して、最下階等に設置されたエレベータ制御盤25に接続されている。エレベータ制御盤25は、点検・故障修理関連情報26及び故障検出回路27等を有しており、保守端末との通信バッファ28を介して、保守端末通信回路24に接続されている。
また、保守端末装置の接続に係る作業の合理化要望があり、赤外線、無線LAN通信等の活用が考えられている。従来技術として、携帯端末装置に保守プログラムをインストールし、被保守機器との間、及び保守のためのホストコンピュータとの間で、少なくとも現場では無線でデータ送受信を行うエレベータ等のエレベータの保守装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−37558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの保守装置では、点検・故障修理に関するノウハウ情報の漏洩防止の観点から、必要時のみ通信可能な構成が必要であった。また、無線LANは公共性が高い反面、チャンネル数が有限(現状4ch)であり、他機器への干渉を防ぐために、不要な発信は規制する必要があるという問題があった。また、現状では無線LAN環境を使ったシステムは少ないが、今後増えることが容易に想定され、無線LAN環境を使ったシステムが増えた場合、干渉が発生し、通信速度低下が発生する恐れがあり、不用意な通信は極力避けるべきであると考えられる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、保守・故障修理が必要な時に通信を許可するマイコン制御エレベータ用として好適なエレベータの保守装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの保守装置においては、保守端末通信回路及びデータ表示・解析機能等を内蔵した保守端末装置と、エレベータの昇降路或いは最下階乗場に設けられた保守端末通信回路と、点検・故障修理関連情報、故障検出回路、通信期間制御手段、及び保守端末通信回路を介して保守端末装置に接続された通信許可制御回路等を有するエレベータ制御盤とを備え、エレベータを保守・点検モードにした時或いはエレベータが故障した時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えるものである。
【0007】
また、保守端末通信回路及びデータ表示・解析機能等を内蔵した保守端末装置と、エレベータの昇降路或いは最下階乗場に設けられた保守端末通信回路と、点検・故障修理関連情報、故障検出回路、通信期間制御手段、及び保守端末通信回路を介して保守端末装置に接続された通信許可制御回路等を有するエレベータ制御盤と、エレベータの最下階乗場の操作盤に設けられ、保守・点検モードにした時に操作されてエレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与える点検モードスイッチとを備えたものである。
【0008】
また、エレベータの保守・点検時に操作されるかご操作盤が開けられた時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えるものである。
【0009】
また、エレベータの保守・点検時に通常運行ではあり得ない動作があった時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えるものである。
【0010】
また、保守端末装置からの通信遮断要求を受け付けた時、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信遮断機能を与えるものである。
【0011】
また、保守端末装置からの通信要求が一定期間途絶えた時、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信遮断機能を与えるものである。
【0012】
また、保守端末装置からの通信要求があった後、一定期間経過前に新たな通信要求があった時、通信許可を更に所定時間延長するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のエレベータの保守装置によれば、保守会社のノウハウが第三者に盗聴されることなく、また、不用意な通信を極力避けることができ、干渉の発生が少なく、通信速度の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明を実施するための実施の形態1におけるマイコン制御エレベータ用として好適なエレベータの保守装置を示すシステム構成図、図2及び図3は保守端末装置とエレベータ制御盤との通信許可制御と通信遮断制御の態様をそれぞれ示すタイムチャートである。
図1において、携帯保守端末装置1は、保守端末通信回路2及びデータ表示・解析機能3を内蔵しており、被保守機器であるエレベータの昇降路或いは最下階乗場に設置された保守端末通信回路4を介して、最下階等に設置されたエレベータ制御盤5に接続されている。エレベータ制御盤5は、点検・故障修理関連情報6、故障検出回路7及び通信期間制御手段8等を有しており、保守端末との通信許可制御回路9を介して、保守端末通信回路4に接続されている。この通信許可制御回路9は、所定の条件を満たした時に通信を許可する通信許可機能と、通信を不許可にする通信遮断機能とを併せ持つものである。10はエレベータの最下階乗場の操作盤に設けられた点検モードスイッチで、保守員によって操作される鍵のかかった蓋の中に設けられており、通信許可制御回路9に接続されている。
すなわち、上記通信許可制御回路9の通信許可機能は、保守員が訪問し、点検モードスイッチ10の操作により、エレベータを保守・点検モードに設定した時、或いは保守時に操作するかご操作盤を開けた時、或いは通常の運行ではあり得ない動作、例えば戸開釦、戸閉釦を同時に数秒間隔で数回操作後、セーフティドアエッジ(ドア安全装置)を数秒間隔で数回操作した時、或いは携帯電話、無線端末装置等の別の携帯端末装置と組み合わせて許可を行う時、或いはエレベータが故障した時、等に設定されるものである。なお、エレベータ故障時は、保守・点検モードの設定を行えないケースが存在するため設けておくものである。すなわち、エレベータが中間階で故障した時、アクセスが不可能なためである。
また、通信許可制御回路9の通信遮断機能は、携帯保守端末装置1からの通信遮断要求を受け付けた時、携帯保守端末装置1からの通信要求が一定時間途絶えた時、上記保守・点検モードが解除された時、等に設定されるものである。上記の携帯保守端末装置1からの通信要求が一定時間途絶えた時とは、無制限の通信を放置しないために、通信中はエレベータ制御盤5に実装された通信期間制御手段8により、通信許可制御回路9を制御するものであり、図2にその実際の態様をタイムチャートで示してある。また、図3に示すように、携帯保守端末装置1からの通信要求があった後、一定時間(通信許可期間)経過前に新たな通信要求を受け付けた時よりカウントを開始し、例えば5分間のみ通信許可状態を更に延長するものであっても良い。
したがって、実施の形態1によれば、保守会社のノウハウが第三者に盗聴されることなく、また、不用意な通信を極力避けることができ、干渉の発生が少なく、通信速度の低下を防ぐことができる。
【0015】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの保守装置を示すシステム構成図である。
図4において、携帯保守端末装置1は、保守端末通信回路2及びデータ表示・解析機能3を内蔵しており、被保守機器であるエレベータの昇降路或いは最下階乗場に設置された保守端末通信回路4を介して、最下階等に設置されたエレベータ制御盤5に接続されている。エレベータ制御盤5は、点検・故障修理関連情報6、故障検出回路7及び通信期間制御手段8等を有しており、保守端末との通信許可制御回路9を介して、保守端末通信回路4に接続されている。この通信許可制御回路9は、所定の条件を満たした時に通信を許可する通信許可機能と、通信を不許可にする通信遮断機能とを併せ持つものである。11はエレベータ乗場に設けられたエレベータ呼び登録インターフェースを含む携帯端末インターフェース装置で、エレベータ利用者が持つICタグ内蔵の携帯電話12或いはICタグ内臓の鍵13を携帯端末インターフェース装置11にかざすことにより、目的階のかご呼びを自動登録する。14は携帯端末インターフェース装置11に接続された利用者別サービス機能であり、エレベータの一般利用者には専用呼び登録機能を提供し、かつ保守員には保守端末通信許可制御回路9を有効化するキー機能が入っている。
したがって、実施の形態2によれば、今後、エレベータへの適用が考えられているICタグ内蔵の携帯電話或いはICタグ内臓の鍵を利用した専用呼び登録装置に、保守員専用の保守端末通信許可制御回路を有効化させることで、将来の対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの保守装置を示すシステム構成図である。
【図2】保守端末装置とエレベータ制御盤との通信許可制御と通信遮断制御の態様を示すタイムチャートである。
【図3】保守端末装置とエレベータ制御盤との通信許可制御と通信遮断制御の他の態様を示すタイムチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2におけるエレベータの保守装置を示すシステム構成図である。
【図5】従来のエレベータの保守装置を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0017】
1 携帯保守端末装置
2 保守端末通信回路(保守端末側)
3 データ表示・解析機能
4 保守端末通信回路(エレベータ側)
5 エレベータ制御盤
6 点検・故障修理関連情報
7 故障検出回路
8 通信期間制御手段
9 保守端末との通信許可制御回路
10 点検モードスイッチ
11 携帯端末インターフェース装置
12 ICタグ内蔵の携帯電話
13 ICタグ内蔵の鍵
14 利用者別サービス機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守端末通信回路及びデータ表示・解析機能等を内蔵した保守端末装置と、
エレベータの昇降路或いは最下階乗場に設けられた保守端末通信回路と、
点検・故障修理関連情報、故障検出回路、通信期間制御手段、及び前記保守端末通信回路を介して前記保守端末装置に接続された通信許可制御回路等を有するエレベータ制御盤とを備え、
エレベータを保守・点検モードにした時或いはエレベータが故障した時に、前記エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えることを特徴とするエレベータの保守装置。
【請求項2】
保守端末通信回路及びデータ表示・解析機能等を内蔵した保守端末装置と、
エレベータの昇降路或いは最下階乗場に設けられた保守端末通信回路と、
点検・故障修理関連情報、故障検出回路、通信期間制御手段、及び前記保守端末通信回路を介して前記保守端末装置に接続された通信許可制御回路等を有するエレベータ制御盤と、
エレベータの最下階乗場の操作盤に設けられ、保守・点検モードにした時に操作されて前記エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与える点検モードスイッチと、
を備えたことを特徴とするエレベータの保守装置。
【請求項3】
エレベータの保守・点検時に操作されるかご操作盤が開けられた時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの保守装置。
【請求項4】
エレベータの保守・点検時に通常運行ではあり得ない動作があった時に、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信許可機能を与えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの保守装置。
【請求項5】
保守端末装置からの通信遮断要求を受け付けた時、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信遮断機能を与えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータの保守装置。
【請求項6】
保守端末装置からの通信要求が一定期間途絶えた時、エレベータ制御盤の通信許可制御回路に対し通信遮断機能を与えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータの保守装置。
【請求項7】
保守端末装置からの通信要求があった後、一定期間経過前に新たな通信要求があった時、通信許可を更に所定時間延長することを特徴とする請求項7記載のエレベータの保守装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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