説明

エレベータの制御装置

【課題】かご内カメラと映像解析装置によりかご内乗客の人数カウントを行い、それぞれの階での乗車人数、降車人数を常時カウントすることにより、かご内で動けなくなった乗客を発見した場合、その時点で最も人数の多い階床にかごを運転させるエレベータの制御装置を得る。
【解決手段】かご内画像を撮影するかご内カメラ1と、かご内カメラで撮影されたカメラの映像信号1aを解析する画像解析装置2と、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出して滞留検知情報2b−1を出力する滞留検知部2bと、カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報2c−1を出力する人物カウント部2cと、エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置4とを備え、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアの順にエレベータを運転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご内で動けない乗客を発見した場合、その時点で最も人数が多いと思われる階床にかごを運転するエレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータかご内に設置され、かご内の人物を撮影する監視カメラと、監視カメラが撮影した記録画像を採取し解析することによりかご内の急病人の有りを検出する異常人物有無検出装置と、エレベータ乗場に設置された乗場報知手段と、異常人物有無検出装置がかご内の急病人の有りを検出し、一定時間経過して長時間かご内に人が乗っていると判断される場合、エレベータを予め登録された人通りの多い階に走行させてから戸開を継続し、乗場報知手段によりエレベータ周囲の通行者にかご内に急病人が居ることを報知するエレベータの監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−91462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの監視装置では、かご内で動けなくなった急病人を発見した場合、通常はロビー階である主階床に運転し、かご内に急病人が居ることを報知するようになっている。しかしながら、一日のうち、どの時間帯でも主階床に人が多いとは限らない。例えば学校の校舎であったり、来客が比較的少なくないビルであったりした場合、時間帯によっては、主階床に運転しても、その乗場には人が殆どおらず、かご内で動けなくなった急病人を発見するのが遅くなるという恐れがあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、かご内カメラと映像解析装置によりかご内乗客の人数カウントを行い、それぞれの階での乗車人数、降車人数を常時カウントすることにより、かご内で動けなくなった乗客を発見した場合、その時点で最も人数の多い階床にかごを運転させるようにしたエレベータの制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの制御装置においては、かご内画像を撮影するかご内カメラと、かご内カメラで撮影されたカメラの映像信号を解析する画像解析装置と、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出して滞留検知情報を出力する滞留検知部と、カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報を出力する人物カウント部と、エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置とを備え、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアの順にエレベータを運転させるものである。
【0007】
また、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアへエレベータを運転させる場合、フロア毎の用途情報及び利用形態を数値換算して配点した情報を事前に登録しておくものである。
【0008】
また、フロア毎の用途情報及び利用形態を数値換算して配点した情報に加えて、各フロアの停止可能時間帯情報を事前に登録しておくものである。
【0009】
また、カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報を出力する人物カウント部は、一定時間かごが運転されない場合は、カウントをリセットするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、かご内カメラと、かご内カメラで撮影されたカメラの映像信号を解析する画像解析装置と、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出して滞留検知情報を出力する滞留検知部と、カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報を出力する人物カウント部と、エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置とを備え、カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアの順にエレベータを運転させるので、かご内で動けなくなった乗客を発見した場合、その時点で最も発見され易い階床にかごを運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施例1におけるエレベータの制御装置の概略構成を示すシステム構成図である。
【図2】この発明の実施例1におけるエレベータの制御装置のかご内滞留検知時の運転の流れを説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の実施例1におけるエレベータの制御装置の人数カウントリセットの流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1において、1はエレベータのかご内画像を撮影し、カメラの映像信号1aを送信するかご内カメラ、2はかご内カメラ1に接続され、かご内カメラ1で撮影されたカメラの映像信号1aを解析する画像解析装置で、画像解析部2aを有している。画像解析部2aは、カメラの映像信号1aから乗客の滞留(例えば、かご内で動けなくなる急病人等の発生)を検出して滞留検知情報2b−1を出力する滞留検知部2bと、カメラの映像信号1aからかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報2c−1を出力する人物カウント部2cとを備えている。人物カウント部2cは、エレベータが停止する度に、停止・戸開直前(扉は閉まった状態)のかご内人数と、戸閉・出発直前のかご内人数をカウントし、フロア毎に人数をプラス・マイナスする。3は監視装置で、演算部3aと、フロア毎の人数記憶部3bと、各フロアの情報部3cとを備えている。フロア毎の人数記憶部3bは、フロアと人数のテーブルからなる。また各フロアの情報部3cは、フロアと、停止可能時間帯、用途及び配点等のテーブルからなるフロア毎の利用形態を事前に登録しておく。ここで、フロア毎の利用形態とは、人数の多少に係わらず、エレベータの乗場付近に人が通ることが良くあるかどうかを示し、人が一番多くても他の階を優先するかどうかの判定の一つに使用する。その一例として、学校や会議室フロアなどでは、一度教室や会議室にかごから降車した乗客が入ると、一定時間はそこから出てこないため、エレベータ乗場付近に人が通ることが余り無いと想定されるので、人が一番多くても他の階を優先するといった運転が考えられる。この利用形態を数値に換算し、エレベータの乗場付近に人が通ることが良くある階は配点を高く、エレベータ乗場付近に人が通ることが余りない階は配点を低く設定する。また、フロア毎に停止可能時間帯を事前に登録し、設定された時間帯以外の場合は停止させないように制御する。4はエレベータ制御装置である。上記滞留検知部2bは、かご内の乗客の滞留を検知する都度、監視装置3の演算部3aに滞留検知情報2b−1を送信する。人物カウント部2cは、かご内の乗客人数の変化を検出する都度、監視装置3の演算部3aに人物増減情報2c−1を送信する。この人物増減情報2c−1は、かごから降車した場合は“XX人マイナス”、かごに乗車した場合は“YY人プラス”とする。監視装置3の演算部3aは、滞留検知情報2b−1又は人物増減情報2c−1が送信されたら、エレベータ制御装置4に対し、現在のかご位置、すなわちフロア情報4aを要求し取得する。演算部3aは、(フロア情報4a+人物増減情報2c−1)3a−1をフロア毎の人数記憶部3bに送信する。人物増減情報2c−1が“XX人マイナス”であれば、その時のフロア情報+XX人プラスを送信し、人物増減情報2c−1が“YY人プラス”であれば、その時のフロア情報+YY人マイナスを送信する。すなわち、かご内に乗車すると、その階の人数が減る(マイナス)するという計算を実施し、かご内から降車すると、その階の人数が増える(プラス)するという計算を常時実施する。また、演算部3aは、滞留検知情報2b−1が送信されたら、フロア毎の人数記憶部3bにフロア毎の人数情報3b−1を要求する。また、演算部3aは、滞留検知情報2b−1が送信されたら、各フロアの情報部3cに各フロアの停止可能時間帯情報と配点3c−1を要求する。ここで、配点は、各フロアのエレベータ乗場に人が居る可能性が高いフロア(例えば、店舗が多いフロア)は配点を大きく、可能性が低いフロア(例えば、会議室しかないフロアでは、一度会議室に入ってしまうと暫く出てこないため、乗場前の通行は少ない)は配点を小さく設定する。演算部3aは、フロア毎の人数情報3b−1と各フロアの停止可能時間帯情報と配点3c−1を入手したら、フロア毎の人数と配点を組み合わせ、例えば、人数+配点=得点として、人数が最大のフロア又は得点が高い順番に運転するフロアの優先順位を決定する。更に、そのフロアが停止可能時間帯内であれば、エレベータ制御装置4へそのフロアへの運転指令3a−2を送信する。すなわち、滞留検知情報2b−1が送信されたら、その時点の全ての階の人数とフロア毎の運用情報を用いて、かご内で動けなくなった急病人等を見つける可能性の一番高い階にかごを運転させる。なお、一定時間(例えば5時間以上)かごが運転されない場合は、その建物に誰もいなくなった(全ての人がその建物を出た)と見なして、一旦カウントをリセット(全ての階で0人とする)し、これにより、誤カウント状態になってもその状態が継続することを防止できる。
【0013】
次に、かご内滞留検知時の運転フローについて、図2により説明する。
先ず、画像解析装置2の画像解析部2aが、かご内カメラ1で撮影されたカメラの映像信号1aから乗客のかご内滞留(例えば、かご内で動けなくなる急病人等の発生)を検知すると(ステップS1)、監視装置3の演算部3aは、人数記憶部3bへフロア毎の人数情報3b−1を問い合わせる(ステップS2)。次に、演算部3aは、各フロア情報部3cへ各フロアの停止可能時間帯情報と配点3c−1を問い合わせる(ステップS3)。次に、演算部3aは、フロア毎に人数情報と配点を組み合わせて、停止可能時間帯であるフロアへの運転する優先順位を決定する(ステップS4)。次に、演算部3aは、エレベータ制御装置4へ優先順位が一番のフロアへの運転指令3a−2を出す(ステップS5)。そして、エレベータは指定されたフロアへ運転する(ステップS6)。エレベータ停止後、戸開状態で例えば3分間ブザー鳴動動作中に乗場又はかご呼びがあれば(ステップS7)、エレベータは呼びができたフロアへ運転し(ステップS8)、通常運転に戻る(ステップS9)。また、ステップS7で、エレベータ停止後、戸開状態で例えば3分間ブザー鳴動動作中に乗場又はかご呼びがなければ、エレベータは優先順位が次のフロアへ運転し(ステップS10)、優先順位が最後のフロアになるまで継続する(ステップS11)。
【0014】
次に、人数カウントリセットのフローについて、図3により説明する。
先ず、エレベータが停止すると(ステップS21)、停止した状態が設定時間(例えば5時間)以上経過したか否かを判定する(ステップS22)。停止した状態が設定時間(例えば5時間)以上経過していれば、人物カウント結果をクリアし、人数記憶部3bの全てのフロアを0人にセットする(ステップS23)。
【符号の説明】
【0015】
1 かご内カメラ
1a カメラの映像信号
2 画像解析装置
2a 画像解析部
2b 滞留検知部
2c 人物カウント部
2b−1 滞留検知情報
2c−1 人物増減情報
3 監視装置
3a 演算部
3b 人数記憶部
3c 各フロアの情報部
3a−1 フロア情報+人物増減情報
3a−2 フロアへの運転指令
3b−1 各フロアの人数情報
3c−1 各フロアの停止可能時間帯情報、配点
4 エレベータ制御装置
4a フロア情報(かご位置情報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内画像を撮影するかご内カメラと、
前記かご内カメラで撮影されたカメラの映像信号を解析する画像解析装置と、
前記カメラの映像信号から乗客の滞留を検出して滞留検知情報を出力する滞留検知部と、
前記カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報を出力する人物カウント部と、
エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置とを備え、
前記カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアの順にエレベータを運転させることを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
カメラの映像信号から乗客の滞留を検出した時、その時点のフロアの人数情報とフロア毎の運用情報を用いて、人が居る可能性の高いフロアへエレベータを運転させる場合、フロア毎の用途情報及び利用形態を数値換算して配点した情報を事前に登録しておくことを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
フロア毎の用途情報及び利用形態を数値換算して配点した情報に加えて、各フロアの停止可能時間帯情報を事前に登録しておくことを特徴とする請求項2記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
カメラの映像信号からかご内乗客の人数を常時カウントして人物増減情報を出力する人物カウント部は、一定時間かごが運転されない場合は、カウントをリセットすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−32087(P2011−32087A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183053(P2009−183053)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】